説明

核医学イメージング装置、シンチレータアレイ及びシンチレータアレイ製造方法

【課題】シンチレータの光漏れを簡単に防止可能である核医学イメージング装置を提供することである。
【解決手段】核医学イメージング装置は、一つの実施形態において、シンチレータアレイを備える。核医学イメージング装置が備えるシンチレータアレイは、一つの実施形態において、反射材として金属が表面に蒸着されたシンチレータが配列されることで形成される。金属は、一つの実施形態において、アルミニウムと、銀と、アルミニウムを含む合金と、銀を含む合金とのうち、いずれかとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、核医学イメージング装置、シンチレータアレイ及びシンチレータアレイ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体の生体組織における機能診断を行うことができる核医学イメージング装置として、陽電子断層撮影装置(PET装置、PET:Positron Emission Tomography)がある。また、PET装置と、形態情報を提供するX線コンピュータ断層撮影装置(X線CT装置、CT: Computed Tomography)とが一体化されたPET―CT装置もある。
【0003】
PET装置を用いた検査であるPET検査について簡単に説明する。PET検査を実行する際には、陽電子放出核種で標識された標識化合物が被検体に予め投与される。被検体に予め投与される標識化合物から放出される陽電子は、電子と結合して消滅する際に、略反対方向に511keVの一対のガンマ線を放出する。電子と結合して消滅する際に放出される一対のガンマ線を「対消滅ガンマ線」とも称する。ここで、PET装置は、被検体の周囲に配置されたフォトンカウンティング(Photon Counting)方式の検出器を用いて、対消滅ガンマ線を同時計数する。そして、PET装置は、同時計数したガンマ線のデータを演算処理することで、PET画像を再構成する。
【0004】
PET装置の検出器は、シンチレータが配列されたシンチレータアレイを有する。シンチレータアレイのシンチレータ各々は、ガンマ線が入射されると、入射されたガンマ線を可視光に変換して出力する。図10は、従来のPET装置の検出器が有するシンチレータアレイの一例について示す図である。図10に示す例では、シンチレータアレイ700は、6×8個のシンチレータ701が配列されたものである場合を例に示した。
【0005】
また、シンチレータアレイにおいて、シンチレータとシンチレータとの間に、周囲にある他のシンチレータへの光漏れを防ぐ反射材を設ける手法がある。例えば、L字型の反射材を用いる手法がある。また、例えば、複数のL字型の反射材が予め連結しておくことで、シンチレータアレイにおいて2次元に配列されたシンチレータの列ごとに用いられる反射材を用いる手法もある。また、例えば、格子状の冶具の上に反射材を配置する手法などもある。なお、説明の便宜上、以下では、複数のL字型の反射材が連結されてシンチレータの列ごとに用いられる反射材を「ジグザグ型の反射材」とも称する。
【0006】
図11−1は、従来のL字型の反射材を用いる手法について簡単に示す図である。図11−1に示す例では、4つのL字型の反射材710と、4つのシンチレータ711とを例に示した。図11−1に示すように、L字型の反射材710各々が重なるように配置される。なお、図11−1において、矢印712は、L字型の反射材710が重なる箇所を示す。
【0007】
図11−2は、従来のジグザグ型の反射材を用いる手法について簡単に示す図である。図11−2に示す例では、2つのジグザグ型の反射材720と、8つのシンチレータ721とを例に示した。図11−2に示すように、2つのジグザグ型の反射材720が重なるように配置される。なお、図11−2において、矢印722は、2つのジグザグ型の反射材720が重なる箇所を示す。
【0008】
図11−3は、従来の格子状の冶具の上に反射材を配置する手法について簡単に示す図である。図11−3に示す例では、格子状に溝が予め作成された冶具732を例に示した。図11−3に示す例では、格子状の冶具732が、シンチレータ731が設けられる箇所を10箇所有する場合を示した。なお、図11−3に示す例では、記載の便宜上、シンチレータ731を1つ示した。また、図11−3に示す例では、記載の便宜上、反射材730を3つ示した。図11−3に示すように、反射材730が、冶具732の溝に設けられる。
【0009】
ここで、図11−1や図11−3に示した手法では、反射材やシンチレータを配置するのに手間がかかる。また、図11−1や図11−3に示した手法では、反射材の位置がずれることで反射材と反射材との間に隙間ができ、シンチレータの光漏れが起こることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−107995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、シンチレータの光漏れを簡単に防止可能である核医学イメージング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施の形態の核医学イメージング装置は、シンチレータアレイを備える。シンチレータアレイは、反射材として金属が表面に蒸着されたシンチレータが配列されることで形成される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、第1の実施形態におけるPET−CT装置の構成の全体像について示す図である。
【図2】図2は、第1の実施形態におけるPETスキャナとX線CTスキャナとの関係の一例を示す図である。
【図3】図3は、第1の実施形態におけるPETスキャナの構成について示す図である。
【図4】図4は、第1の実施形態における検出器の構造の一例を示す図である。
【図5】図5は、第1の実施形態におけるアンガー型の検出器により検出される情報を示す図である。
【図6】図6は、第1の実施形態におけるシンチレータの一例について示す図である。
【図7】図7は、第1の実施形態におけるシンチレータアレイの製造方法の流れの一例を示すフローチャートである。
【図8】図8は、第2の実施形態における金属を蒸着する面の一例を示す図である。
【図9−1】図9−1は、第2の実施形態における金属を蒸着する面の一例を示す図である。
【図9−2】図9−2は、第2の実施形態における金属を蒸着する面の一例を示す図である。
【図10】図10は、従来のPET装置の検出器が有するシンチレータアレイの一例について示す図である。
【図11−1】図11−1は、従来のL字型の反射材を用いる手法について簡単に示す図である。
【図11−2】図11−2は、従来のジグザグ型の反射材を用いる手法について簡単に示す図である。
【図11−3】図11−3は、従来の格子状の冶具の上に反射材を配置する手法について簡単に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下では、核医学イメージング装置の一例として、PET−CT装置を用いて説明する。ただし、これに限定されるものではなく、例えば、PET−MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置でも良く、PET装置であっても良く、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置などであっても良い。
【0015】
図1は、第1の実施形態におけるPET−CT装置の構成の全体像について示す図である。図1に示すように、PET−CT装置100は、PETスキャナ200と、X線CTスキャナ300と、寝台400と、コンソール装置500とを有する。なお、図1に示す例では、説明の便宜上、PET検査の対象となる被検体402を併せて示した。被検体402は、寝台400に載せられる。図1におけるX軸方向は、図1の天板401に載せられた被検体402の体軸方向を示す。Y軸方向は、X軸方向と直行する水平面上の方向を示す。Z軸方向は、垂直方向を示す。
【0016】
なお、PET検査の対象となる被検体402は、陽電子放出核種で標識された標識化合物が予め投与される。標識化合物は、例えば、陽電子放出核種である「18F(フッ素)」で標識された18F標識デオキシグルコースが該当する。標識化合物は、PET−CT装置100による測定前に被検体402に投与される。ただし、標識化合物は、18F標識デオキシグルコースに限定されるものではなく、任意の標識化合物を用いて良い。
【0017】
寝台400は、被検体402が載せられる天板401を有する。また、図1には図示していないが、寝台400は、天板401を移動させる寝台制御部を有する。寝台制御部は、コンソール装置500により制御され、天板401を移動させることで、天板401に載せられた被検体402をPET−CT装置100の撮影口内に移動させる。
【0018】
PETスキャナ200は、PET画像を再構成するためのガンマ線を検出する検出器210を複数有する。また、複数ある検出器210は、被検体402の体軸を中心としてリング上に配置される。
【0019】
ここで、PETスキャナ200は、被検体402の生体組織内に取り込まれた標識化合物から放出された一対のガンマ線を検出する。具体的には、PETスキャナ200は、検出器210がガンマ線を検出するごとに、ガンマ線を検出した検出器210の位置を示す検出位置と、ガンマ線が検出器210に入射した時点におけるエネルギー値と、検出器210がガンマ線を検出した検出時間とを収集する。PETスキャナ200により収集される情報を「計数情報」とも称する。なお、検出器210は、例えば、10−10秒〜10−12秒の精度にて検出時刻を収集する。
【0020】
なお、PETスキャナ200は、例えば、ガンマ線の検出時間として検出時刻(絶対時間)を収集する。ただし、これに限定されるものではなく、PETスキャナ200は、例えば、ガンマ線の検出時間として、PET画像の撮影を開始してからの経過時間(相対時間)を収集しても良く、任意の時間を収集して良い。
【0021】
X線CTスキャナ300は、X線CT画像を再構成するためのX線を照射するX線管301と、X線管301により照射されたX線を検出するX線検出器302とを有する。X線CTスキャナ300では、X線管301がX線を被検体402に照射し、被検体402を透過したX線をX線検出器302が検出する。
【0022】
具体的には、X線CTスキャナ300は、被検体402の体軸を中心として回転しながら、X線管301がX線を照射し、X線検出器302がX線を検出する。言い換えると、X線CTスキャナ300は、被検体402の体軸を中心として回転しながら多方向からX線を被検体402に照射し、被検体402を透過することで被検体402に吸収されて減弱したX線を検出する。X線検出器302により検出されたX線に対して増幅処理やAD変換処理などを行うことで生成されるデータを「X線投影データ」とも称する。X線CTスキャナ300は、X線投影データと、X線投影データを生成する際に用いられたX線を検出した検出位置とを収集する。
【0023】
図2は、第1の実施形態におけるPETスキャナとX線CTスキャナとの関係の一例を示す図である。図2では、Y軸方向に見た場合におけるPETスキャナ200とX線CTスキャナ300との断面図を示した。図2では、説明の便宜上、PETスキャナ200とX線CTスキャナ300とに加えて、天板401を併せて示した。
【0024】
図2に示すように、PETスキャナ200では、X軸方向に複数の検出器210が配置される。また、複数の検出器210は、被検体402の体軸をリング状に取り囲むように配置される。図2に示すように、X線CTスキャナ300は、X線管301とX線検出器302とを有する。X線管301とX線検出器302とは、診断時に被検体402が載せられる天板401を挟んで対向する位置に配置される。また、図2に示すように、X線管301は、X線303を照射する。また、X線検出器302は、X線303により照射されたX線を検出する。
【0025】
図3は、第1の実施形態におけるPETスキャナの構成について示す図である。図3では、X軸方向に見たPETスキャナ200の断面図である。図3では、説明の便宜上、PETスキャナ200に加えて、被検体402と、寝台400と、天板401とを併せて示した。図3に示すように、PETスキャナ200は、複数の検出器210が被検体402の周囲をリング状に取り囲むように配置される。検出器210は、例えば、フォトンカウンティング(Photon Counting)方式の検出器が該当する。
【0026】
図4は、第1の実施形態における検出器の構造の一例を示す図である。図4に示すように、ガンマ線に由来する光を計数する検出器210は、シンチレータアレイ220と、ライトガイド230と、複数の光電子増倍管(PMT:Photo Multiplier Tube)240とを有する。また、シンチレータアレイ220は、複数のシンチレータ221が2次元に配列されることで形成される。
【0027】
なお、シンチレータ221は、例えば、ガンマ線を可視光に変換するNaIやBGOなどで形成される。なお、シンチレータ221やシンチレータアレイ220の詳細については、後述する。また、ライトガイド230は、例えば、光透過性に優れたプラスチック素材などで形成される。
【0028】
ここで、シンチレータ221と、ライトガイド230と、光電子増倍管240との関係について簡単に説明する。シンチレータ221は、被検体402から放出されて検出器210に入射されたガンマ線を可視光に変換し、可視光を出力する。シンチレータ221により出力された可視光を「シンチレーション光」とも称する。ライトガイド230は、シンチレータ221から出力された可視光を光電子増倍管240に伝達する。光電子増倍管240は、シンチレータ221によって出力された可視光をライトガイド230を介して受信し、受信した可視光を電気信号に変換する。
【0029】
光電子増倍管240について更に説明する。光電子増倍管240は、シンチレーション光を受信して光電子を発生させる光電陰極と、光電陰極により発生された光電子を加速する電場を与える多段のダイノードと、電子の流れ出し口である陽極とを有する。光電効果により光電陰極から放出された電子は、ダイノードに向かって加速されてダイノードの表面に衝突し、複数の電子を出力する。ダイノードの表面にて複数の電子が出力される現象が多段のダイノードに渡って繰り返されることで、電子の数がなだれ的に増える。
【0030】
例えば、陽極がシンチレーション光を1つ受信した場合を用いて説明する。この場合、陽極は、例えば、約100万もの電子を出力する。シンチレーション光を1つ受信した場合に陽極から得られる電子の数を「光電子増倍管の利得率」とも称する。つまり、シンチレーション光を1つ受信した場合に100万個の電子を陽極が出力する場合には、光電子増倍管240の利得率は、「100万倍」となる。なお、電子数をなだれ的に増やす際には、ダイノードと陽極との間には、通常、1000ボルト以上の電圧が印加される。
【0031】
このように、検出器210では、シンチレータ221がガンマ線を可視光に変換し、光電子増倍管240が可視光を電気信号に変換することで、被検体402から放出されたガンマ線を検出する。
【0032】
上述したように、PETスキャナ200は、検出器210がガンマ線を検出するごとに、検出器210の計数結果として、検出位置とエネルギー値と検出時刻とを収集する。ここで、複数の隣接する検出器210が同時にガンマ線を検出した場合における検出位置とエネルギー値とを計算する処理の一例について簡単に説明する。例えば、PETスキャナ200は、アンガー型位置計算処理を行うことで、検出位置を確定する。また、例えば、PETスキャナ200は、光電子増倍管240が位置検出型の光電子増倍管である場合には、位置検出型の光電子増倍管240を用いて検出位置を収集する。
【0033】
図5は、第1の実施形態におけるアンガー型の検出器により検出される情報を示す図である。図5の(1)に示すように、3つの光電子増倍管240が、同じタイミングにてシンチレーション光を電気信号に変換して出力した場合を用いて説明する。この場合、PETスキャナ200は、同時に電気信号を出力した光電子増倍管240の位置を取得し、同時に電気信号を出力した光電子増倍管240から出力された電気信号のエネルギー値各々を取得する。そして、PETスキャナ200は、取得したエネルギー値から重心の位置を算出し、算出した重心の位置に対応するシンチレータ221を特定する。また、PETスキャナ200は、同じタイミングにてシンチレーション光を電気信号に変換して出力した各光電子増倍管240が出力した電気信号のエネルギー値を積分し、積分結果となるエネルギー値を検出器210に入射したガンマ線のエネルギー値とする。
【0034】
また、図5の(2)に示すように、検出器210がガンマ線を検出するごとに、PETスキャナ200は、シンチレータ221を一意に識別する「シンチレータ番号」と、「エネルギー値」と、「検出時刻」とを収集する。図5の(2)に示す例では、「シンチレータ番号」「エネルギー値」「検出時刻」に加えて、更に、複数ある検出器210を一意に特定する情報である「モジュールID」を出力する場合を示した。
【0035】
図1の説明に戻り、第1の実施形態におけるPET−CT装置100がPET画像とX線CT画像とを再構成する場合における処理の流れについて簡単に説明する。PET−CT装置100は、PETスキャナ200とX線CTスキャナ300とが、図1や図2において右から左に移動したり、天板401が左から右に移動したりすることで、X線CTスキャナ300がX線投影データを収集し、その後、PETスキャナ200が計数情報を収集する。そして、コンソール装置500が、収集した情報に基づいてPET画像とX線CT画像とを再構成する。ただし、これに限定されるものではなく、PET−CT装置100では、PETスキャナ200とX線CTスキャナ300とが、図1や図2において左から右に移動しても良く、天板401が右から左に移動しても良い。
【0036】
コンソール装置500は、X線CTスキャナ300により収集された情報によりX線CT画像を再構成する。また、コンソール装置500は、PETスキャナ200により収集された計数情報を用いて同時計数情報を生成し、生成した同時計数情報に基づいてPET画像を再構成する。なお、以下では、コンソール装置500によるPET画像を再構成する処理やX線CT画像を再構成する処理については、任意の手法を用いて実行して良い。
【0037】
ここで、第1の実施形態におけるシンチレータ221は、ライトガイド230と接する面を除く面に金属が蒸着される。具体的には、シンチレータ221は、可視光を反射する金属が蒸着される。例えば、シンチレータ221は、アルミニウムと、銀と、アルミニウムを含む合金と、銀を含む合金とのうち、いずれかの金属が表面に蒸着される。この結果、第1の実施形態におけるシンチレータアレイ220は、反射材として金属が表面に蒸着されたシンチレータ221が配列されることで形成される。なお、以下では、アルミニウムと、銀と、アルミニウムを含む合金と、銀を含む合金とのうち、いずれかの金属を用いる場合を例に説明するが、これに限定されるものではなく、可視光を反射する任意の金属を用いても良い。
【0038】
シンチレータ221に金属を蒸着する意義について簡単に説明する。上述したように、シンチレータ221は、ガンマ線が入射されると、ガンマ線を可視光に変換し、可視光をライトガイド230に出力する。ここで、シンチレータ221では、ガンマ線から変換された可視光は、シンチレータ221の表面で乱反射することでライトガイド230に向かう。ここで、シンチレータ221は、2次元に配列されてシンチレータアレイ220を形成しており、隣接する他のシンチレータ221に可視光が漏れることがある。このことを踏まえ、第1の実施形態では、シンチレータ221の表面に可視光を反射する金属を蒸着し、シンチレータ221を配列することで形成されたシンチレータアレイ220を用いる。この結果、シンチレータ221の光漏れを防止可能となる。また、別途用意した反射材がシンチレータ間に位置するように反射材とシンチレータとを組み合わせることでシンチレータアレイを形成する従来の手法と比較して、第1の実施形態におけるシンチレータアレイ220は、シンチレータ221とは別の反射材を用いることなくシンチレータ221を配列することで形成される結果、シンチレータ221の光漏れを簡単に防止可能となる。
【0039】
また、ライトガイド230と接する面を除く面に金属が蒸着される点について簡単に説明する。上述したように、シンチレータ221は、ライトガイド230にシンチレーション光を出力する。このため、ライトガイド230と接する面に金属が蒸着された場合には、シンチレータ221からシンチレーション光が出力されず、検出器210が機能しない。このことを踏まえ、シンチレータ221のライトガイド230と接する面には、金属が蒸着されない。
【0040】
図6は、第1の実施形態におけるシンチレータの一例について示す図である。図6におけるX軸方向は、図1の天板401に載せられた被検体402の体軸方向を示す。Y軸方向は、X軸方向と直行する水平面上の方向を示す。Z軸方向は、垂直方向を示す。また、図6に示す例では、Z軸方向において、矢印方向に天板401が位置し、矢印とは逆の方向にライトガイド230が位置する場合を用いて説明する。
【0041】
図6に示すように、シンチレータ221は、金属が蒸着された表面250と、金属が蒸着されていない表面251とを有する。図6に示す例では、XY平面にある2つの面のうち、Z軸方向において矢印の向きとは逆側にある面がライトガイド230と接する面となり、Z軸方向において矢印の向き側にある面が、被検体402と対する面となる。図6に示す例では、ライトガイド230と接する面を除くすべての面は、金属が蒸着された表面250となる。また、ライトガイド230と接する面は、金属が蒸着されていない表面251となる。
【0042】
ここで、図6に示す例において、被検体402と対する面にも金属を蒸着する点について補足する。被検体402と対する面は、対消滅ガンマ線が入射する面となる。ここで、アルミニウムや銀、アルミニウムを含む合金、又は銀を含む合金などの金属を、被検体402と対する面に蒸着したとしても、対消滅ガンマ線がシンチレータ221に入射する際の妨げにならないことに着目し、被検体402と対する面にも金属を蒸着する。この結果、シンチレータ221に入射したガンマ線が変換された可視光を確実にライトガイド230に出力することが可能となる。
【0043】
すなわち、上述したように、シンチレータ221では、ガンマ線から変換された可視光は、シンチレータ221の表面で乱反射することでライトガイド230に向かう。ここで、可視光が、被検体402と対する面に進み、被検体402と対する面に反射した後にライトガイド230と接する面に進む場合も考えられる。第1の実施形態におけるシンチレータ221によれば、被検体402と対する面にも金属を蒸着しておくことで、被検体402と対する面に可視光が反射したとしても、可視光が漏れることなく確実に反射され、シンチレータ221に入射したガンマ線が変換された可視光を確実にライトガイド230に出力することが可能となる。
【0044】
(シンチレータアレイの製造方法)
図7は、第1の実施形態におけるシンチレータアレイの製造方法の流れの一例を示すフローチャートである。図7に示すように、シンチレータアレイ220を製造する場合には、金属を蒸着する任意の蒸着装置が、シンチレータ221の表面に金属を蒸着する(ステップS101)。例えば、蒸着装置は、アルミニウムと、銀と、アルミニウムを含む合金と、銀を含む合金とのうち、いずれかの金属を表面に蒸着する。
【0045】
また、ここで、蒸着装置は、ライトガイド230と接する面を除く面に金属を蒸着する。例えば、蒸着装置は、ライトガイド230と接する面がマスクされたシンチレータ221を蒸着することで、マスクされた面となるライトガイド230と接する面に金属を蒸着しない。また、例えば、蒸着装置は、ライトガイド230と接する面が底部となるように配置されたシンチレータ221に金属を蒸着することで、隠れた面となるライトガイド230と接する面に金属を蒸着しない。
【0046】
そして、シンチレータを配列する任意の配列装置は、蒸着装置により金属が蒸着されたシンチレータ221を2次元に配列することで、シンチレータアレイ220を形成する(ステップS102)。
【0047】
なお、蒸着装置は、例えば、スパッタリング法や真空蒸着法を用いて金属を蒸着する。ただし、これに限定されるものではなく、任意の手法を用いて金属を蒸着して良く、例えば、イオンプレーティング法や抵抗加熱法を用いても良い。
【0048】
なお、上述した説明では、金属を蒸着する蒸着装置と、シンチレータを配列する配列装置とを別装置として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、蒸着装置と配列装置とを統合した1つの製造装置を用いてシンチレータアレイ220を製造しても良い。
【0049】
(第1の実施形態の効果)
上述したように、第1の実施形態によれば、反射材として金属が表面に蒸着されたシンチレータが配列されることで形成されたシンチレータアレイを有するので、シンチレータ221の光漏れを簡単に防止可能である。
【0050】
また、第1の実施形態によれば、金属は、アルミニウムと、銀と、アルミニウムを含む合金と、銀を含む合金とのうち、いずれかであるので、可視光を効率的に反射可能である。すなわち、アルミニウムや銀、アルミニウムを含む合金、銀を含む合金などは、他の金属と比較して可視光を効率的に反射することを踏まえ、シンチレータアレイ220は、アルミニウムや銀などが表面に蒸着されたシンチレータ221で形成される。
【0051】
また、第1の実施形態によれば、シンチレータの表面のうち、ライトガイドと接する面を除く面に金属が蒸着されるので、シンチレ−ション光を確実にライトガイド230に出力可能である。
【0052】
また、第1の実施形態によれば、シンチレータ221の表面に金属を蒸着し、その後、金属が蒸着されたシンチレータ221を配列することでシンチレータアレイ220を形成する。この結果、光漏れを確実に防止可能なシンチレータアレイ220を簡単に形成可能である。
【0053】
例えば、シンチレータの光漏れを防ぐ手法として、シンチレータとシンチレータとの間に反射材を配置する手法がある。しかしながら、シンチレータとシンチレータとの間に反射材を配置する手法では、反射材を精度良く加工することが要求され、更に、反射材とシンチレータとをあわせて配列するのに手間がかかる。これに対して、第1の実施形態によれば、可視光を反射する金属が蒸着されたシンチレータ221をそのまま配列することで、光漏れを確実に防止可能なシンチレータアレイ220を形成できる。この結果、シンチレータアレイ220の製造を簡単にすることが可能である。また、シンチレータを配列するのに要する時間を短縮可能であり、シンチレータアレイ220を形成するコストを低減することも可能である。また、反射材を別途加工する必要がなくなり、反射材の加工精度が低い結果起こる光漏れを防止可能であり、加工精度に起因する検出器の位置分解能やエネルギー分解能などの性能劣化を防止可能である。また、反射材を別途用いない結果、反射材と反射材との隙間からの光漏れを防止可能である。
【0054】
(第2の実施形態)
さて、上述した実施形態以外にも、その他の実施形態にて実施されても良い。そこで、以下では、その他の実施形態を示す。
【0055】
(金属を蒸着する面)
例えば、上述した実施形態では、ライトガイド230と接する面以外のすべての面について、シンチレータに金属を蒸着する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ライトガイド230と接する面以外の面のうち、任意の面について金属を蒸着するようにしても良い。
【0056】
図8は、第2の実施形態における金属を蒸着する面の一例を示す図である。例えば、図8に示すように、シンチレータ601のうち、被検体402と対する面と、2つあるXZ平面のうち一方の面と、2つあるYZ平面のうち一方の面について、金属が蒸着された表面250としても良い。言い換えると、2つあるXZ平面のうち他方の面と、2つあるYZ平面のうち他方の面について、金属が蒸着されていない表面251としても良い。
【0057】
すなわち、図8に示す例では、シンチレータアレイ600は、2つあるXZ平面のうち一方の面と、2つあるYZ平面のうち一方の面とに金属が蒸着されたシンチレータ601が、蒸着された面が同一の向きとなるように配列される。シンチレータ601−1とシンチレータ601−2とを例に説明する。図8に示すように、シンチレータ601−1とシンチレータ601−2とは、隣接している。ここで、シンチレータ601−1については、シンチレータ601−2と接する面が金属で蒸着された表面250となる。一方、シンチレータ601−2については、シンチレータ601−1と接する面は、金属で蒸着されていない表面251となる。この場合、シンチレータ601−1とシンチレータ601−2との間には、シンチレータ601−1の表面251に蒸着された金属が存在することとなり、シンチレータ601−1とシンチレータ601−2との間における光漏れが確実に防止される。
【0058】
図9−1と図9−2とは、第2の実施形態における金属を蒸着する面の一例を示す図である。図9−1や図9−2に示すように、金属を蒸着するか否かを面ごとに変えなくても良く、同一面内において、金属を蒸着した部分と蒸着していない部分とがあっても良い。言い換えると、同一面内において、任意のパターンにて金属を蒸着しても良い。また、図8や図9−1や図9−2に示す例において、被検体402と対する面についても、金属を蒸着しなくても良い。このように、金属を蒸着する面を少なくすることで、金属の使用量を抑えることが可能である。また、金属蒸着面にバリエーションを持たせることで、様々なパターンのアレイを容易に作成することができ、性能向上を容易に図ることが可能となる。また、従来手法を用いて作成する場合には、精度よく作成することができない結果反射材がずれるなどの問題が発生する可能性が考えられるが、蒸着を用いて作成することで、精度よく作成することが可能となる。
【0059】
(システム構成)
また、本実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。例えば、金属が蒸着されたシンチレータを配列する作業を手動にて行っても良い。この他、上述文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については(図1〜図9−2)、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0060】
(その他)
なお、本実施形態で説明したシンチレータアレイ220を製造する製造方法は、コンピュータによって実行されるプログラムとして実現されても良い。本実施形態で説明したシンチレータアレイ220を製造する製造方法を実行するためのプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、本実施形態で説明したシンチレータアレイ220を製造する製造方法を実行するためのプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0061】
(実施形態の効果)
以上述べた少なくとも1つの実施形態の核医学イメージング装置によれば、反射材として金属が表面に蒸着されたシンチレータが配列されることで形成されたシンチレータアレイを有することで、シンチレータの光漏れを簡単に防止可能となる。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0063】
100 PET−CT装置
200 PETスキャナ
210 検出器
220 シンチレータアレイ
221 シンチレータ
230 ライトガイド
250 表面
251 表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射材として金属が表面に蒸着されたシンチレータが配列されることで形成されたシンチレータアレイを有する核医学イメージング装置。
【請求項2】
前記金属は、アルミニウムと、銀と、アルミニウムを含む合金と、銀を含む合金とのうち、いずれかであることを特徴とする請求項1に記載の核医学イメージング装置。
【請求項3】
前記シンチレータの表面のうち、ライトガイドと接する面を除く面に前記金属が蒸着されることを特徴とする請求項1に記載の核医学イメージング装置。
【請求項4】
反射材として金属が表面に蒸着されたシンチレータが配列されることで形成された核医学イメージング装置のシンチレータアレイ。
【請求項5】
シンチレータの表面に反射材として金属を蒸着する蒸着工程と、
前記蒸着工程により金属が蒸着されたシンチレータを配列することで、シンチレータアレイを形成する形成工程と
を含んだことを特徴とするシンチレータアレイ製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図11−3】
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【公開番号】特開2013−7569(P2013−7569A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138357(P2011−138357)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】