説明

核医学イメージング装置及び核医学イメージングシステム

【課題】被検体に投与された放射性医薬品の放射能を正確に把握することを課題とする。
【解決手段】PET装置100は、時計部16を有する。時計部16は、時間を計測する時間計測部16aと、基準時間を受信する基準時間受信部16bとを有する。また、PET装置100は、検出時間補正部27aを有する。検出時間補正部27aは、時間計測部16aによって計測された時間を用いて記録された検出時間を、基準時間受信部16bによって受信された基準時間を用いて補正する。例えば、検出時間補正部27aは、時間計測部16aによって計測された時間及び基準時間受信部16bによって受信された基準時間を用いて所定の撮影における撮影時間内に生じた時間誤差を算出し、算出した時間誤差を該撮影時間内に記録された検出時間それぞれに配分することにより、検出時間を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、核医学イメージング装置及び核医学イメージングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、核医学イメージング装置として、陽電子放出コンピュータ断層撮影装置(以下、PET(Positron Emission computed Tomography)装置)が知られている。PET装置は、例えば人体内組織の機能画像を生成する。具体的には、PET装置による撮影においては、まず陽電子放出核種で標識された放射性医薬品が被検体に投与される。すると、被検体内の生体組織に選択的に取り込まれた陽電子放出核種が陽電子を放出し、放出された陽電子は、電子と結合して消滅する。このとき、陽電子は、一対のガンマ線をほぼ反対方向に放出する。一方、PET装置は、被検体の周囲にリング状に配置された検出器を用いてガンマ線を検出し、検出結果から同時計数情報(Coincidence List)を生成する。そして、PET装置は、生成した同時計数情報を用いて逆投影処理による再構成を行い、PET画像を生成する。
【0003】
ここで、放射性医薬品とは、放射性同位元素(RI(Radio Isotope))を使用した医薬品のことである。PET装置による撮影においては、被検体に投与された放射性医薬品の放射能を正確に把握することが求められる。もっとも、放射性医薬品の放射能は時間経過とともに減衰するため(図12を参照)、通常は、放射性医薬品の放射能を計測した時刻を示す検定時間と、PET装置においてガンマ線が検出された時刻を示す検出時間とを用いて把握する。例えば、放射能測定装置において計測された検定時間と、PET装置においてガンマ線が検出された検出時間との間の時間差を求め、求めた時間差と検定時間における放射能の値とを用いて減衰曲線を参照することにより、ガンマ線検出時の放射能を推測する。なお、図12は、放射性医薬品の放射能減衰を説明するための図である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】(社)日本画像医療システム工業会編集「医用画像・放射線機器ハンドブック」名古美術印刷株式会社 平成13年、P.190−191
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、放射能測定装置において検定時間の計測に用いられる時計と、PET装置において検出時間の計測に用いられる時計とは異なる。このため、例えばPET装置の時計が正確でなければ、そもそも検出時間が正確に計測されていないことになり、検定時間と検出時間との間の時間差を求めたとしても、求めた時間差は不正確なものとなってしまう。このようなことから、従来技術では、被検体に投与された放射性医薬品の放射能を必ずしも正確に把握することができないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施の形態の核医学イメージング装置は、被検体に投与された核種が放出する放射線を検出して核医学画像を再構成する核医学イメージング装置であって、時間計測部と、基準時間受信部と、検出時間記録部と、補正部とを有する。時間計測部は、時間を計測する。基準時間受信部は、前記計測の基準となる基準時間を受信する。検出時間記録部は、前記時間計測部によって計測された時間を用いて、放射線が検出された検出時間を記録する。補正部は、前記検出時間記録部によって記録された検出時間を、前記基準時間受信部によって受信された基準時間を用いて補正する。
【0007】
また、実施の形態の核医学イメージング装置は、被検体に投与された核種が放出する放射線を検出して核医学画像を再構成する核医学イメージング装置であって、時間計測部と、基準時間受信部と、修正部と、検出時間記録部とを有する。時間計測部は、時間を計測する。基準時間受信部は、前記計測の基準となる基準時間を受信する。修正部は、前記基準時間受信部によって受信された基準時間に従って、前記時間計測部によって計測された時間を修正する。検出時間記録部は、前記時間計測部により計測された時間を用いて、放射線が検出された検出時間を記録する。
【0008】
また、実施の形態の核医学イメージングシステムは、被検体に投与される核種の放射能を測定する測定装置と、該核種が放出する放射線を検出して核医学画像を再構成する核医学イメージング装置とを含む核医学イメージングシステムである。前記測定装置は、信号送信部を備える。信号送信部は、前記放射能を測定する検定時間に対応するタイミングを示す信号を前記核医学イメージング装置に送信する。前記核医学イメージング装置は、信号受信部と、時間計測部と、検出時間記録部とを備える。信号受信部は、前記信号送信部によって送信された信号を受信する。時間計測部は、前記信号受信部によって受信された信号によって示されるタイミングを起点として、時間を計測する。検出時間記録部は、前記時間計測部によって計測された時間を用いて、前記放射線が検出された検出時間を記録する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施例1に係るPET装置の構成を示すブロック図である。
【図2A】図2Aは、実施例1に係る検出器モジュールを説明するための図である。
【図2B】図2Bは、実施例1に係る検出器モジュールを説明するための図である。
【図3】図3は、実施例1に係るデータ記憶部を説明するための図である。
【図4】図4は、実施例1に係る計数情報記憶部が記憶する計数情報の一例を示す図である。
【図5】図5は、実施例1に係る同時計数情報記憶部が記憶する同時計数情報の一例を示す図である。
【図6】図6は、ダイナミック撮影とタイムアクティビティカーブとの関係を説明するための図である。
【図7】図7は、実施例1に係る検出時間補正処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】図8は、実施例2に係るPETシステムの構成を示すブロック図である。
【図9】図9は、時間差の補正を説明するための図である。
【図10】図10は、実施例3に係るPETシステムの構成を示すブロック図である。
【図11】図11は、実施例3におけるタイミング信号の送受信を説明するための図である。
【図12】図12は、放射性医薬品の放射能減衰を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施の形態に係る核医学イメージング装置の一例として、実施例1及び2に係るPET装置100を説明する。
【実施例1】
【0011】
実施例1に係るPET装置100は、被検体に投与された放射性医薬品の放射能を正確に把握するために、検出時間を正確に計測する構成を備える。具体的には、実施例1に係るPET装置100は、まず、基準時間を受信し、受信した基準時間を用いて「検出時間を計測する時計自体」を修正する構成を備える。後述する時計部16が主に相当する。なお、基準時間には、標準電波やラジオの時報などの標準時間や、タイムサーバによってネットワーク上の装置に配信される基準時間を含み、実施例1に係るPET装置100は、そのいずれを適用することも可能であるが、以下では、標準時間を例に挙げて説明する。また、実施例1に係るPET装置100は、受信した標準時間を用いて「検出時間自体」を補正する構成を備える。後述する補正部27が主に相当する。なお、実施例1に係るPET装置100はこれらの構成双方を備えるが、一方の構成のみを備えるものであってもよい。
【0012】
[実施例1に係るPET装置100の構成]
図1〜6を用いて、実施例1に係るPET装置100の構成を説明する。図1は、実施例1に係るPET装置100の構成を示すブロック図である。図1に例示するように、実施例1に係るPET装置100は、架台装置10と、コンソール装置20とを有する。
【0013】
架台装置10は、陽電子から放出された一対のガンマ線を検出し、検出結果に基づいて計数情報を収集する。図1に例示するように、架台装置10は、天板11と、寝台12と、寝台駆動部13と、検出器モジュール14と、計数情報収集部15とを有する。なお、架台装置10は、図1に例示するように、撮影口となる空洞を有する。
【0014】
天板11は、被検体Pが横臥するベッドであり、寝台12の上に配置される。寝台駆動部13は、後述する寝台制御部23による制御のもと、天板11を移動させる。例えば、寝台駆動部13は、天板11を移動させることにより、被検体Pを架台装置10の撮影口内に移動させる。
【0015】
検出器モジュール14は、被検体Pから放出されるガンマ線を検出する。図1に例示するように、検出器モジュール14は、架台装置10において、被検体Pの周囲をリング状に取り囲むように複数配置される。
【0016】
図2A及び2Bは、実施例1に係る検出器モジュール14を説明するための図である。図2Aに例示するように、検出器モジュール14は、フォトンカウンティング(photon counting)方式、アンガー型の検出器であり、シンチレータ141と、光電子増倍管(PMT(Photomultiplier Tube)とも称する)142と、ライトガイド143とを有する。なお、図2Bは、図2Aに例示する矢印方向から検出器モジュール14を観察した様子を示す。
【0017】
シンチレータ141は、被検体Pから放出されて入射したガンマ線を可視光に変換し、変換した可視光(以下、シンチレーション光)を出力する。シンチレータ141は、例えばNaI(Sodium Iodide)、BGO(Bismuth Germanate)、LYSO(Lutetium Yttrium Oxyorthosilicate)、LSO(Lutetium Oxyorthosilicate)、LGSO(Lutetium Gadolinium Oxyorthosilicate)等のシンチレータ結晶によって形成され、図2Aに例示するように、2次元に配列される。また、光電子増倍管142は、シンチレータ141から出力されたシンチレーション光を増倍して電気信号に変換する。図2Aに例示するように、光電子増倍管142は、複数配置される。ライトガイド143は、シンチレータ141から出力されたシンチレーション光を光電子増倍管142に伝達する。ライトガイド143は、例えば光透過性に優れたプラスチック素材等によって形成される。
【0018】
なお、光電子増倍管142は、シンチレーション光を受光し光電子を発生させる光電陰極、発生した光電子を加速する電場を与える多段のダイノード、及び、電子の流れ出し口である陽極を有する。光電効果により光電陰極から放出された電子は、ダイノードに向って加速されてダイノードの表面に衝突し、複数の電子を叩き出す。この現象が多段のダイノードに渡って繰り返されることにより、なだれ的に電子数が増倍され、陽極での電子数は、約100万にまで達する。かかる例では、光電子増倍管142の利得率は、100万倍となる。また、なだれ現象を利用した増幅のためにダイノードと陽極との間には、通常1000ボルト以上の電圧が印加される。
【0019】
このように、検出器モジュール14は、被検体Pから放出されたガンマ線をシンチレータ141によってシンチレーション光に変換し、変換したシンチレーション光を光電子増倍管142によって電気信号に変換することで、被検体Pから放出されたガンマ線を検出する。
【0020】
図1に戻り、計数情報収集部15は、検出器モジュール14による検出結果に基づいて計数情報を収集する。具体的には、計数情報収集部15は、検出器モジュール14に入射したガンマ線の検出位置と、検出器モジュール14に入射した時点におけるガンマ線のエネルギー値と、検出器モジュール14に入射したガンマ線の検出時間とを、検出器モジュール14毎に収集し、収集したこれらの計数情報を、コンソール装置20に送信する。
【0021】
まず、計数情報収集部15は、検出器モジュール14による検出結果から検出位置を収集するために、アンガー型位置計算処理を行う。具体的には、計数情報収集部15は、シンチレータ141から出力されたシンチレーション光を同じタイミングで電気信号に変換した光電子増倍管142を特定する。そして、計数情報収集部15は、特定した各光電子増倍管142の位置及び電気信号の強度に対応するガンマ線のエネルギー値を用いて重心の位置を演算することで、ガンマ線が入射したシンチレータ141の位置を示すシンチレータ番号(P)を決定する。なお、光電子増倍管142が位置検出型光電子増倍管である場合には、光電子増倍管142が検出位置の収集を行ってもよい。
【0022】
また、計数情報収集部15は、各光電子増倍管142によって出力された電気信号の強度を積分演算することで、検出器モジュール14に入射したガンマ線のエネルギー値(E)を決定する。また、計数情報収集部15は、検出器モジュール14によってガンマ線が検出された検出時間(T)を収集する。例えば、計数情報収集部15は、10−12秒(ピコ秒)単位の精度にて検出時間(T)を収集する。なお、検出時間(T)は、絶対時刻であってもよいし、例えば撮影開始時点からの経過時間であってもよい。
【0023】
このように、計数情報収集部15は、計数情報として、シンチレータ番号(P)、エネルギー値(E)、及び検出時間(T)を収集する。
【0024】
ここで、実施例1に係るPET装置100は、後述するように、時計部16を有し、時計部16の時間計測部16aが、PET装置100における時間を計測する。このため、計数情報収集部15が収集した検出時間(T)は、時間計測部16aによって計測された時間に基づく情報である。
【0025】
時計部16は、時間の計測を行う。図1に例示するように、時計部16は、時間計測部16aと、標準時間受信部16bと、計測時間修正部16cとを有する。
【0026】
時間計測部16aは、PET装置100における時間を計測する時計である。また、時間計測部16aが計測した時間は、計数情報収集部15による処理に用いられる。すなわち、上述したように、計数情報収集部15は、時間計測部16aによって計測された時間を用いて、検出時間(T)を収集する。なお、計数情報収集部15によって収集された検出時間(T)は、後述する同時計数情報生成部25によって同時計数情報に記録される。
【0027】
標準時間受信部16bは、標準電波やラジオの時報を受信する等、標準時間を受信する。また、標準時間受信部16bが受信した標準時間は、計測時間修正部16cによる処理や、後述する検出時間補正部27aによる処理に用いられる。実施例1において、標準時間受信部16bは、例えば1日に1回、また例えば1日に数回、標準時間を受信する。
【0028】
計測時間修正部16cは、標準時間受信部16bによって受信された標準時間に従って、時間計測部16aによって計測された時間を修正する。実施例1に係る計測時間修正部16cは、例えば、PET装置100の起動時に時間を修正する。また、計測時間修正部16cは、例えば、標準時間受信部16bによって標準時間が受信されたタイミングと同期して、時間を修正する。また、計測時間修正部16cは、例えば、操作者が特に必要であると判断した時に、操作者からの指示を受け付けることにより、時間を修正する。なお、標準時間受信部16bによって標準時間が受信されたタイミングと、計測時間修正部16cが時間を修正するタイミングとは必ずしも同期する必要はない。
【0029】
ここで、実施例1に係る計測時間修正部16cは、以下に説明する2つの手法のいずれかひとつ又は両方を採ることにより、撮影中に時間が修正される事態を回避する。すなわち、PET装置100において撮影が行われ、計数情報収集処理等が行われている際に、時間計測部16aによって計測された時間が修正されてしまうと、撮影において収集された一連のデータから検出時間の整合性が失われてしまい、被検体に投与された放射性医薬品の放射能を正確に把握することができなくなってしまうからである。
【0030】
このようなことから、実施例1に係る計測時間修正部16cは、まず、時間計測部16aによって計測された時間の修正を行うにあたり、修正を行うか否かを確認する確認画面を表示部22に表示し、入力部21を介して修正の許可を受け付けたことを条件として、時間の修正を行う手法を採る。
【0031】
例えば、計測時間修正部16cは、時間の修正を行うにあたり、「時計の指針を標準時間に合わせてもよいですか?」といった文章と、「OK」及び「NG」ボタンとが表示された確認画面を表示部22に表示する。そして、計測時間修正部16cは、PET装置100の操作者によって「OK」ボタンが押下されたことを条件として、時間の修正を行う。
【0032】
また、実施例1に係る計測時間修正部16cは、時間計測部16aによって計測された時間の修正を行うにあたり、撮影に影響が及ぶタイミングであるか否かを判定し、撮影に影響が及ぶタイミングである場合には、時間の修正を中止する手法を採る。
【0033】
例えば、計測時間修正部16cは、時間の修正を行うにあたり、システム制御部28に問い合わせを送信し、撮影計画に設定されている撮影開始時刻を取得する。次に、計測時間修正部16cは、取得した撮影開始時刻と、時間計測部16aによって計測された時間とを比較し、現に撮影中であるか、あるいは所定時間内に撮影が開始されるか否かを判定する。そして、計測時間修正部16cは、現に撮影中でなく、かつ所定時間内に撮影が開始される予定もないと判定すると、時間の修正を行う。
【0034】
図1に戻り、コンソール装置20は、操作者によるPET装置100の操作を受け付け、PET画像の撮影を制御するとともに、架台装置10によって収集された計数情報を用いてPET画像を再構成する。具体的には、コンソール装置20は、図1に例示するように、入力部21と、表示部22と、寝台制御部23と、データ記憶部24と、同時計数情報生成部25と、画像再構成部26と、補正部27と、システム制御部28とを有する。なお、コンソール装置20が有する各部は、内部バスを介して接続される。
【0035】
入力部21は、PET装置100の操作者によって各種指示や各種設定の入力に用いられるマウスやキーボード等であり、入力された各種指示や各種設定を、システム制御部28に転送する。表示部22は、操作者によって参照されるモニタ等であり、システム制御部28による制御のもと、PET画像を表示したり、操作者から各種指示や各種設定を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。寝台制御部23は、寝台駆動部13を制御する。
【0036】
データ記憶部24は、PET装置100において用いられる各種データを記憶する。図3は、実施例1に係るデータ記憶部24を説明するための図である。図3に例示するように、データ記憶部24は、計数情報記憶部24aと、同時計数情報記憶部24bと、PET画像記憶部24cとを有する。なお、データ記憶部24は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(flash memory)等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等で実現される。
【0037】
計数情報記憶部24aは、計数情報収集部15によって収集された検出器モジュール14毎の計数情報を記憶する。具体的には、計数情報記憶部24aは、計数情報収集部15から送信された検出器モジュール14毎の計数情報を記憶する。また、計数情報記憶部24aが記憶する計数情報は、同時計数情報生成部25による処理に利用される。なお、計数情報記憶部24aが記憶する計数情報は、同時計数情報生成部25による処理に利用された後に削除されてもよいし、所定期間記憶されていてもよい。
【0038】
図4は、実施例1に係る計数情報記憶部24aが記憶する計数情報の一例を示す図である。図4に例示するように、計数情報記憶部24aは、検出器モジュール14を識別するモジュールIDに対応付けて、シンチレータ番号(P)と、エネルギー値(E)と、検出時間(T)とを記憶する。
【0039】
同時計数情報記憶部24bは、同時計数情報生成部25によって生成された同時計数情報を記憶する。具体的には、同時計数情報記憶部24bは、同時計数情報生成部25によって格納されることで、同時計数情報を記憶する。また、同時計数情報記憶部24bが記憶する同時計数情報は、画像再構成部26による処理に利用される。なお、同時計数情報記憶部24bが記憶する同時計数情報は、画像再構成部26による処理に利用された後に削除されてもよいし、所定期間記憶されていてもよい。
【0040】
図5は、実施例1に係る同時計数情報記憶部24bが記憶する同時計数情報の一例を示す図である。図5に例示するように、同時計数情報記憶部24bは、同時計数情報が生成された順序を時系列に示すカウントNo.に対応付けて、計数情報の組合せを記憶する。
【0041】
PET画像記憶部24cは、画像再構成部26によって再構成されたPET画像を記憶する。具体的には、PET画像記憶部24cは、画像再構成部26によって格納されることで、PET画像を記憶する。また、PET画像記憶部24cが記憶するPET画像は、システム制御部28によって表示部22に表示される。
【0042】
図1に戻り、同時計数情報生成部25は、計数情報収集部15によって収集された計数情報を用いて同時計数情報を生成する。具体的には、同時計数情報生成部25は、計数情報記憶部24aに格納された計数情報を読み出し、エネルギー値及び検出時間に基づいて、陽電子から放出された一対のガンマ線が同時に計数された計数情報の組合せを検索する。また、同時計数情報生成部25は、検索した計数情報の組合せを同時計数情報として生成し、生成した同時計数情報を同時計数情報記憶部24bに格納する。
【0043】
例えば、同時計数情報生成部25は、操作者によって入力された同時計数情報生成条件に基づいて同時計数情報を生成する。同時計数情報生成条件には、エネルギーウィンドウ幅と時間ウィンドウ幅とが指定される。例えば、同時計数情報生成部25は、エネルギーウィンドウ幅「350keV〜550keV」及び時間ウィンドウ幅「600ピコ秒」に基づいて同時計数情報を生成する。
【0044】
例えば、同時計数情報生成部25は、計数情報記憶部24aを参照し、図4に例示したエネルギー値(E)及び検出時間(T)を参照する。そして、同時計数情報生成部25は、検出時間(T)の差が時間ウィンドウ幅「600ピコ秒」以内であり、かつ、エネルギー値(E)が共にエネルギーウィンドウ幅「350keV〜550keV」にある計数情報の組合せを、検出器モジュール14間で検索する。そして、同時計数情報生成部25は、同時計数生成条件を満たす組合せとして「P11、E11、T11」と「P22、E22、T22」との組合せを検索すると、同時計数情報として生成し、図5に例示するように、同時計数情報記憶部24bに格納する。
【0045】
画像再構成部26は、PET画像を再構成する。具体的には、画像再構成部26は、同時計数情報記憶部24bに格納された同時計数情報を投影データ(サイノグラムデータ)として読み出し、読み出した投影データを逆投影処理することで、PET画像を再構成する。また、画像再構成部26は、再構成したPET画像をPET画像記憶部24cに格納する。
【0046】
補正部27は、PET装置100において計測された各種時間を補正する。実施例1に係る補正部27は、図1に例示するように、検出時間補正部27aを有する。検出時間補正部27aは、同時計数情報生成部25によって同時計数情報に記録された検出時間を、標準時間受信部16bによって受信された標準時間を用いて補正する。
【0047】
すなわち、上述したように、実施例1に係る計数情報収集部15が収集した検出時間は、時間計測部16aによって計測された時間に基づく情報であり、同時計数情報生成部25によって同時計数情報に記録される。したがって、同時計数情報生成部25によって同時計数情報に記録された検出時間も、時間計測部16aによって計測された時間に基づく情報であり、必ずしも正確ではない。
【0048】
もっとも、上述したように、実施例1に係るPET装置100においては、時間計測部16aによって計測される時間は、適宜、計測時間修正部16cによって修正される。このため、時間計測部16aによって計測される時間も正確であることが多いと考えられるが、例えば操作者によって時間の修正が許可されなかった場合や、撮影中であったために時間の修正が行われなかった場合等には、事後的に検出時間を補正することが望ましい。
【0049】
ここで、実施例1に係る検出時間補正部27aは、以下に説明する2つの手法のいずれか又は両方を採ることにより、検出時間を補正する。まず、実施例1に係る検出時間補正部27aは、所定の撮影における所定のタイミング(例えば撮影開始時や撮影終了時等)に標準時間を受信し、所定のタイミングにおける時間誤差を用いて検出時間を事後的に補正する手法を採る。
【0050】
例えば、検出時間補正部27aは、撮影計画に設定された撮影開始時刻をシステム制御部28から取得し、時間計測部16aによって計測された時間が該撮影開始時刻になるタイミングで、標準時間受信部16bに標準時間を受信させる。次に、検出時間補正部27aは、時間計測部16aによって計測された時間と標準時間受信部16bによって受信された標準時間との時間誤差を算出する。そして、検出時間補正部27aは、算出した時間誤差を、同時計数情報生成部25によって生成された同時計数情報の検出時間に事後的に反映する。
【0051】
例えば、検出時間補正部27aは、時間誤差が「−3分(標準時間よりも3分遅れ)」であった場合には、同時計数情報の検出時間を一律に3分進める。放射能測定装置において検定時間の計測に用いられる時計が正確である(標準時刻と一致している)と仮定すると、補正前は、3分のずれがあったが、補正後は、ずれが改善され、被検体に投与された放射性医薬品の放射能を正確に把握することができることになる。
【0052】
次に、実施例1に係る検出時間補正部27aは、所定の撮影における撮影前後の時間を計測し、撮影時間内に生じた時間誤差を用いて検出時間を事後的に補正する手法を採る。このような補正は、例えば所定時間間隔毎にデータを収集し、所定時間間隔毎のPET画像を生成するダイナミック(Dynamic)撮影等において特に有効である。
【0053】
図6は、ダイナミック撮影とタイムアクティビティカーブとの関係を説明するための図である。図6に例示するように、ダイナミック撮影においては、PET装置100は、例えば0.5秒間隔といった間隔毎にデータを収集し、例えば0.5秒間隔毎のPET画像を再構成する。図6に例示するように、ダイナミック撮影においては、タイムアクティビティカーブを精度良く求めることが重要であり、時刻と放射能の値との対応関係を正確に求めることが重要である。
【0054】
一方、撮影時間が長時間(例えば1時間等)の場合、撮影時間内に時間誤差が生じてしまうおそれがある。すなわち、撮影開始時刻に生じていた時間誤差と、撮影終了時刻に生じた時間誤差とが異なるおそれがある。そうであるとすると、上述した手法のように同時計数情報の検出時間を一律に補正する手法では、必ずしも正確な補正をしたことにはならない。
【0055】
例えば、撮影開始時において時間誤差が「−3分(標準時間よりも3分遅れ)」であったが、撮影終了時において時間誤差が「−8分(標準時間よりも8分遅れ)」となった場合、撮影開始時の検出時間は3分進める補正が適しているといえるが、撮影終了時の検出時間は8分進めなければ正しい補正とはいえない。言い換えると、撮影時間が長時間化し、撮影時間内に徐々に標準時刻との乖離が広がるおそれがある場合には、検出時間の補正も、可能な限り乖離の傾きに合わせて補正することが望ましい。
【0056】
例えば、検出時間補正部27aは、撮影計画に設定された撮影開始時刻及び撮影終了時刻をシステム制御部28から取得し、時間計測部16aによって計測された時間が該撮影開始時刻及び撮影終了時刻になるタイミングで、標準時間受信部16bに標準時間を受信させる。次に、検出時間補正部27aは、時間計測部16aによって計測された時間と標準時間受信部16bによって受信された標準時間との時間誤差をそれぞれ算出する。そして、検出時間補正部27aは、それぞれ算出した時間誤差間の差分を算出することで、撮影時間内に生じた時間誤差を算出し、算出した時間誤差を、同時計数情報生成部25によって生成された同時計数情報の検出時間に配分するように反映する。
【0057】
例えば、検出時間補正部27aは、撮影開始時の時間誤差が「−3分(標準時間よりも3分遅れ)」であり、撮影終了時の時間誤差が「−8分(標準時間よりも8分遅れ)」であった場合には、撮影時間内に生じた時間誤差が「−5分」であると算出する。次に、検出時間補正部27aは、例えば時系列に同時計数情報記憶部24bに格納された同時計数情報に対し、「3分進める」補正から時系列に従って徐々に「8分進める」補正に近づけるように、等間隔に時間幅が増加したと仮定し、検出時間の補正を行う。
【0058】
なお、例えば撮影開始時に計測時間修正部16cによる修正処理を行うことを前提とすれば、撮影開始時において、時間計測部16aによって計測された時間と標準時間受信部16bによって受信された標準時間との時間誤差は「0分」になる。この場合には、検出時間補正部27aは、撮影終了時に、時間計測部16aによって計測された時間と標準時間受信部16bによって受信された標準時間との時間誤差を算出するだけで、撮影時間内に生じた時間誤差を算出することができる。そして、検出時間補正部27aは、算出した時間誤差を、同時計数情報生成部25によって生成された同時計数情報の検出時間に配分するように反映すればよい。
【0059】
図1に戻り、システム制御部28は、架台装置10及びコンソール装置20を制御することによって、PET装置100の全体制御を行う。例えば、システム制御部28は、PET装置100における撮影を制御する。
【0060】
なお、同時計数情報生成部25、画像再構成部26、補正部27及びシステム制御部28等の各部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の電子回路によって実現される。
【0061】
[実施例1に係るPET装置100による処理手順]
続いて、実施例1に係るPET装置100による処理手順として、特に、検出時間補正処理の処理手順を説明する。図7は、実施例1に係る検出時間補正処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0062】
図7に例示するように、実施例1に係るPET装置100において、検出時間補正部27aは、撮影が開始されたか否かを判定し(ステップS101)、撮影が開始されたと判定すると(ステップS101肯定)、標準時間受信部16bに標準時間を受信させる(ステップS102)。
【0063】
続いて、検出時間補正部27aは、撮影が終了した否かを判定し(ステップS103)、撮影が終了したと判定すると(ステップS103肯定)、標準時間受信部16bに標準時間を受信させる(ステップS104)。
【0064】
そして、検出時間補正部27aは、同時計数情報生成部25による同時計数情報生成処理が終了したか否かを判定し(ステップS105)、終了したと判定すると(ステップS105肯定)、ステップS102やステップS104において収集した標準時間を用いて検出時間を補正する(ステップS106)。
【0065】
その後、画像再構成部26が、検出時間補正部27aによって検出時間が補正された同時計数情報を用いて画像を再構成し(ステップS107)、一連の処理が終了する。
【0066】
[実施例1の効果]
上述したように、実施例1に係るPET装置100は、時計部16に、時間を計測する時間計測部16aと、標準時間を受信する標準時間受信部16bとを有する。また、PET装置100において記録される検出時間は、時間計測部16aによって計測された時間に基づく情報である。そして、PET装置100において、検出時間補正部27aが、標準時間受信部16bによって受信された標準時間を用いて検出時間を補正する。
【0067】
このようなことから、実施例1によれば、標準時間を用いて検出時間が補正されるので、検出時間は正確なものとなり、被検体に投与された放射性医薬品の放射能を正確に把握することが可能になる。短半減期の放射性医薬品であっても、その放射能を正確に把握することが可能になる。
【0068】
また、実施例1に係る検出時間補正部27aは、所定の撮影における撮影時間内に生じた時間誤差を算出し、算出した時間誤差を該撮影時間内に記録された検出時間それぞれに配分することにより、検出時間を補正する。
【0069】
このようなことから、実施例1によれば、例えば撮影時間が長時間の場合等には撮影時間内に時間誤差が生じてしまうおそれがあるが、このような場合にも、被検体に投与された放射性医薬品の放射能を正確に把握することが可能になる。例えば、ダイナミック撮影等において特に有効である。
【0070】
また、実施例1に係るPET装置100は、時計部16に、計測時間修正部16cを有する。計測時間修正部16cは、標準時間受信部16bによって受信された標準時間に従って、時間計測部16aによって計測された時間を修正する。例えば、計測時間修正部16cは、所定の間隔で修正を行う。また、例えば、計測時間修正部16cは、PET装置100の起動時に修正を行う。このように、実施例1によれば、時間計測部16aによって計測される時間は自動的に修正される。
【0071】
また、例えば、計測時間修正部16cは、修正を行うにあたり、修正を行うか否かを確認する確認画面を表示部22に表示し、修正の許可を受け付けたことを条件として、修正を行う。また、例えば、計測時間修正部16cは、修正を行うにあたり、撮影に影響が及ぶタイミングであるか否かを判定し、撮影に影響が及ぶタイミングである場合には、修正を中止する。このようなことから、実施例1によれば、撮影中に時間が修正される事態を回避することも可能になる。
【実施例2】
【0072】
次に、実施例2に係るPETシステムを説明する。実施例2に係るPETシステムは、PET装置100の他に、放射性医薬品を製造する放射性医薬品製造装置250と、放射性医薬品放射能測定装置200(以下、放射能測定装置200)とを有する。実施例1においては、少なくともPET装置100において検出時間を正確に計測することにより、検定時間と検出時間との時間差を正確に求めようとするものであった。これに対し、実施例2においては、さらに、放射能測定装置200においても検定時間を正確に計測しようとするものである。検定時間と検出時間との時間差は、より正確なものとなる。
【0073】
図8は、実施例2に係るPETシステムの構成を示すブロック図である。放射性医薬品製造装置250は、陽電子放出核種で標識された医薬品を製造する装置である。放射能測定装置200は、放射性医薬品製造装置250によって製造された放射性医薬品の放射能を測定する装置である。放射能測定装置200は、例えば、検定時間「何時、何分、何秒」に「何ミリキューリ」の放射能であるかを測定する。
【0074】
実施例2に係る放射能測定装置200は、まず、基準時間を受信し、受信した基準時間を用いて「検定時間を計測する時計自体」を修正する構成を備える。後述する時計部210が主に相当する。なお、基準時間には、標準電波やラジオの時報などの標準時間や、タイムサーバによってネットワーク上の装置に配信される基準時間を含み、実施例2に係る放射能測定装置200は、そのいずれを適用することも可能であるが、以下では、標準時間を例に挙げて説明する。また、実施例2に係る放射能測定装置200は、受信した標準時間を用いて「検定時間と標準時間との間の時間誤差」を算出する構成を備える。後述する検定時間誤差算出部212が主に相当する。なお、実施例2に係る放射能測定装置200はこれらの構成双方を備えるが、一方の構成のみを備えるものであってもよい。
【0075】
図8に例示するように、実施例2に係る放射能測定装置200は、特に、時計部210と、検定時間記録部211と、検定時間誤差算出部212とを有する。また、時計部210は、時間計測部210aと、標準時間受信部210bと、計測時間修正部210cとを有する。
【0076】
時間計測部210aは、放射能測定装置200における時間を計測する時計である。また、時間計測部210aが計測した時間は、検定時間記録部211による処理に用いられる。
【0077】
標準時間受信部210bは、標準電波やラジオの時報を受信する等、標準時間を受信する。また、標準時間受信部210bが受信した標準時間は、計測時間修正部210cによる処理や、後述する検定時間誤差算出部212による処理に用いられる。実施例2において、標準時間受信部210bは、例えば1日に1回、また例えば1日に数回、標準時間を受信する。
【0078】
計測時間修正部210cは、標準時間受信部210bによって受信された標準時間に従って、時間計測部210aによって計測された時間を修正する。実施例2に係る計測時間修正部210cは、例えば、放射能測定装置200の起動時に時間を修正する。また、計測時間修正部210cは、例えば、標準時間受信部210bによって標準時間が受信されたタイミングと同期して、時間を修正する。なお、標準時間受信部210bによって標準時間が受信されたタイミングと、計測時間修正部210cが時間を修正するタイミングとは必ずしも同期する必要はない。
【0079】
検定時間記録部211は、時間計測部210aによって計測された時間を用いて検定時間を記録する。検定時間誤差算出部212は、検定時間記録部211によって記録された検定時間と、標準時間受信部210bによって受信された標準時間との間の時間誤差を算出する。例えば、検定時間誤差算出部212は、検定時間記録部211によって検定時間が記録されるタイミングで、標準時間受信部210bによって標準時間を受信させる。そして、検定時間誤差算出部212は、検定時間記録部211によって記録された検定時間と、標準時間受信部210bによって受信された標準時間との間の時間誤差を算出し、算出した時間誤差を、検定時間とともに出力する。
【0080】
一方、PET装置100は、実施例1と同様の構成を備える他に、図8に例示するように、補正部27に、検出時間誤差算出部27bと、時間差補正部27cとを有する。上述したように、実施例2に係る放射能測定装置200は、検定時間とともに時間誤差も出力する。そこで、実施例2に係るPET装置100は、放射能測定装置200から出力されたこの時間誤差の情報も用いて、より正確に、検定時間と検出時間との時間差を求める。
【0081】
具体的には、検出時間誤差算出部27bは、同時計数情報に記録された検出時間と、標準時間受信部16bによって受信された標準時間との間の時間誤差を算出する。例えば、検出時間誤差算出部27bは、撮影が開始されるタイミングで、標準時間受信部16bによって標準時間を受信させる。そして、検出時間誤差算出部27bは、検出時間と、標準時間受信部16bによって受信された標準時間との間の時間誤差を算出する。
【0082】
時間差補正部27cは、検出時間誤差算出部27bによって算出された時間誤差と、放射能測定装置200から出力された検定時間及び時間誤差とを用いて、検定時間と検出時間との間の時間差を補正する。
【0083】
図9は、時間差の補正を説明するための図である。例えば、図9に例示するように、標準時間と検定時間との間の時間誤差が、x分(例えば+3分(標準時間よりも3分進み))であったとする。一方、標準時間と検出時間との間の時間誤差が、y分(例えば−1分(標準時間よりも1分遅れ)であったとする。また、検定時間として記録された時間は、「15:00」であり、検出時間として記録された時間は「15:05」であったとする。
【0084】
このような場合、検定時間と検出時間との時間差(z分)を求めると「5分」となるが、実施例2においては、標準時間と検定時間との間の時間誤差、及び、標準時間と検出時間との間の時間誤差を用いて、これを補正し、正確な時間差を求める。
【0085】
例えば、標準時間と検定時間との間の時間誤差(x分)を用いて検定時間を補正すると、「14:57」となる。一方、標準時間と検出時間との間の時間誤差(y分)を用いて検出時間を補正すると「15:06」となる。よって、検定時間と検出時間との時間差(z分)を求めると「9分」となり、これが正確な時間差となる。
【0086】
また、例えば、標準時間と検定時間との間の時間誤差(x分)と、標準時間と検出時間との間の時間誤差(y分)との和を求めると、「4分」である。そこで、検定時間「15:00」と検出時間「15:05」との時間差「5分」に「4分」を加算すると「9分」となり、これが正確な時間差となる。
【0087】
このように、標準時間と検定時間との間の時間誤差、及び、標準時間と検出時間との間の時間誤差が判明すれば、PET装置100において、検定時間と検出時間との時間差をより正確に求めることが可能になる。
【0088】
実施例2に係る放射能測定装置200においては、時間計測部210aによって計測される時間は、適宜、計測時間修正部210cによって修正される。このため、時間計測部210aによって計測される時間も正確であることが多いと考えられるが、例えば何らかの要因により時間の修正が行われなかった場合等には、事後的に検定時間を補正することが望ましい。実施例1に係るPET装置100において検出時間を補正したと同様の手法により検定時間を補正することも可能である。また、上述にて説明したように、検定時間とともに時間誤差を算出し、PET装置100に対して出力してもよい。なお、放射能測定装置200とPET装置100との間は、オンラインによって接続され、情報を送受信してもよいし、オフラインによって検定時間や時間誤差等がやりとりされてもよい。
【実施例3】
【0089】
次に、実施例3に係るPETシステムを説明する。実施例3に係るPETシステムは、PET装置300と、放射性医薬品放射能測定装置400(以下、放射能測定装置400)とを有する。実施例1や2においては、基準時間を用いて検出時間を正確に計測する手法や、基準時間を用いて検出時間を補正する手法などを説明した。もっとも、検定時間と検出時間との間の時間差を正確に求める手法は、これらの手法に限られるものではない。実施例3に係るPETシステムにおいては、「検定時間に対応するタイミング」、すなわち、放射能測定装置400からPET装置300に通知される「放射能の測定値」に対応するタイミングをPET装置300に知らせる手法によって、PET装置300側において検定時間と検出時間との間の時間差を正確に求めることが可能になる。
【0090】
図10は、実施例3に係るPETシステムの構成を示すブロック図である。放射能測定装置400は、信号送信部410を有する。また、PET装置300は、信号受信部310と、時間計測部311と、検出時間記録部312とを有する。なお、各装置は、図10に示す各部の他にも必要な部を備えるが、図10においては図示を省略する。例えば、PET装置300は、実施例1に係るPET装置100と同様、架台装置10やコンソール装置20を備える。もっとも、実施例3に係るPET装置300は、例えば、時計部16や補正部27を備えなくてもよい。
【0091】
信号送信部410は、放射能を測定する検定時間に対応するタイミングを示す信号(以下、タイミング信号)をPET装置300に送信する。また、信号受信部310は、信号送信部410によって送信されたタイミング信号を受信する。また、時間計測部311は、信号受信部410によって受信されたタイミング信号によって示されるタイミングを起点として、時間を計測する。また、検出時間記録部312は、時間計測部311によって計測された時間を用いて、放射線が検出された検出時間を記録する。
【0092】
図11は、実施例3におけるタイミング信号の送受信を説明するための図である。まず、放射能測定装置400は、被検体に投与される核種の放射能を測定し、図11に示すように、例えば、放射能測定値、検定時間、及び核種に関する情報を収集する。放射能測定値は、測定された放射能の値であり、例えば、『μBq』(マイクロベクレル)や『μCi』(マイクロキューリ)といった単位で示される。検定時間は、放射能測定装置400において、この放射能測定値を測定した時間(時刻)であり、例えば、『○日○日○時○分○秒』と示される。核種は、被検体に投与される核種であり、例えば、『F−18』や『O−15』などである。放射能測定装置400は、通常、被検体に投与される放射性医薬品に関する情報として、これらの情報をPET装置300側に伝達する。例えば、これらの情報は、タイミング信号とともに、PET装置300側に送信されればよい。もっとも、これらの情報は、PET装置300側に対して必ずしも通信によって送信される必要はなく、通信以外の手段で(例えば、紙に記載された情報として)、PET装置300を操作するオペレータに対して渡されてもよい。この場合、例えば、オペレータは、これらの情報のうち必要な情報を用いればよい。
【0093】
ここで、実施例3に係るPETシステムにおいて、放射能測定装置400の信号送信部410は、タイミング信号をPET装置300に送信する。このタイミング信号は、上述したように、放射能を測定する検定時間に対応するタイミングを示す信号である。なお、厳密には、放射能を測定した時間と検定時間とは、ずれる場合がある。例えば、放射能の測定に1時間を要する場合、タイミング信号を送信した後、1時間を経過してから、放射能が測定されることもある。このような場合には、例えば、既知の減衰曲線を用いて、タイミング信号を送信した時点の放射能の測定値を推定し、この推定した測定値をPET装置300側に通知すればよい。
【0094】
図11に示すように、PET装置300の時間計測部311は、信号受信部310によって受信されたタイミング信号のタイミングを起点として時間を計測する。例えば、時間計測部311は、タイミング信号の受信を契機に時間計測を開始する。その後、収集(撮影)開始から収集(撮影)終了までの間、検出時間記録部312は、時間計測部311によって計測された時間を用いて、放射線が検出された検出時間を記録する。すると、検出時間記録部312によって記録された検出時間は、検定時間を契機に開始された時間計測によって計測されたものとなるので、検出時間と検定時間との間の時間差(例えば、検定時間から検出時間までの経過時間)は、正確に計測されることとなる。この場合、放射能測定装置400側の時間計測の機能と、PET装置300側の時間計測の機能とは、全く独立して動作していてもよい。
【0095】
例えば、PET装置300においてタイミング信号を受信した時間(検定時間)から、収集開始までの経過時間が「t1秒」であるとする。この場合、t1秒後における放射能の測定値x1は、以下に示す(1)式によって計算される。なお、x0は、検定時間における放射能の測定値である。また、Tは、半減期である。
【数1】

【0096】
なお、実施例3に係るPETシステムは、実施例1や実施例2において説明した手法と併用することが可能である。例えば、実施例1においては、受信した基準時間を用いて事後的に検出時間を補正する手法を説明した。かかる手法は、実施例3においても同様に適用することが可能である。例えば、撮影時間が長時間の場合、撮影時間内に時間誤差が生じてしまうおそれがある。このような場合、PET装置300側でタイミング信号を受信するだけでは、撮影時間内に生じる時間誤差まで補正することはできないので、事後的に検出時間を補正する手法を併用することが有効である。
【0097】
なお、実施例3に係るPETシステムは、PET装置300と放射能測定装置400とを有するものとして説明してきたが、これらの装置の他に、放射性医薬品を製造する放射性医薬品製造装置を有してもよい。また、放射性医薬品製造装置と放射能測定装置400とは、物理的に同一の筐体によって実現されてもよい。この点は、他の実施例においても同様である。
【実施例4】
【0098】
なお、開示の技術は、上記実施例以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0099】
まず、上記実施例において、PET装置100の構成として図1を例示したが、開示の技術はこれに限られるものではない。例えば、計数情報収集部15がコンソール装置20側に備えられていてもよいし、反対に、同時計数情報生成部25が架台装置10側に備えられていてもよい。また、データ記憶部24に記憶された各種データも、架台装置10側に備えられていても、あるいはコンソール装置20側に備えられていてもよい。それぞれのデータがPET装置100に保持される期間も任意である。
【0100】
また、上記実施例においてはPET装置を例に挙げて説明したが、これに限られるものではなく、例えばPET−CT(Computed Tomography)装置等、検出時間の記録を伴う装置であれば、同様に適用することができる。
【0101】
また、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0102】
100 PET装置
16 時計部
16a 時間計測部
16b 標準時間受信部
16c 計測時間修正部
27 補正部
27a 検出時間補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に投与された核種が放出する放射線を検出して核医学画像を再構成する核医学イメージング装置であって、
時間を計測する時間計測部と、
前記計測の基準となる基準時間を受信する基準時間受信部と、
前記時間計測部によって計測された時間を用いて、前記放射線が検出された検出時間を記録する検出時間記録部と、
前記検出時間記録部によって記録された検出時間を、前記基準時間受信部によって受信された基準時間を用いて補正する補正部と
を備えたことを特徴とする核医学イメージング装置。
【請求項2】
前記補正部は、前記時間計測部によって計測された時間および前記基準時間受信部によって受信された基準時間を用いて前記所定の撮影における撮影時間内に生じた時間誤差を算出し、算出した時間誤差を該撮影時間内に前記検出時間記録部によって記録された検出時間それぞれに配分することにより、前記検出時間を補正することを特徴とする請求項1に記載の核医学イメージング装置。
【請求項3】
前記検出時間記録部によって記録された検出時間と、前記基準時間受信部によって受信された基準時間との間の時間誤差を算出する検出時間誤差算出部と、
前記検出時間誤差算出部によって算出された時間誤差と、医薬品の放射能を測定する測定装置にて放射能が計測された時間として記録された検定時間と前記基準時間との間の時間誤差とを用いて、前記検定時間と前記検出時間との間の時間差を補正する時間差補正部と
をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の核医学イメージング装置。
【請求項4】
被検体に投与された核種が放出する放射線を検出して核医学画像を再構成する核医学イメージング装置であって、
時間を計測する時間計測部と、
前記計測の基準となる基準時間を受信する基準時間受信部と、
前記基準時間受信部によって受信された基準時間に従って、前記時間計測部によって計測された時間を修正する修正部と、
前記時間計測部によって計測された時間を用いて、前記放射線が検出された検出時間を記録する検出時間記録部と
を備えたことを特徴とする核医学イメージング装置。
【請求項5】
前記修正部は、所定の間隔で前記修正を行うことを特徴とする請求項4に記載の核医学イメージング装置。
【請求項6】
前記修正部は、前記修正を行うにあたり、修正を行うか否かを確認する確認画面を表示部に表示し、修正の許可を受け付けたことを条件として、前記修正を行うことを特徴とする請求項4または5に記載の核医学イメージング装置。
【請求項7】
前記修正部は、前記修正を行うにあたり、撮影に影響が及ぶタイミングであるか否かを判定し、撮影に影響が及ぶタイミングである場合には、前記修正を中止することを特徴とする請求項4または5に記載の核医学イメージング装置。
【請求項8】
前記修正部は、起動時に前記修正を行うことを特徴とする請求項4に記載の核医学イメージング装置。
【請求項9】
被検体に投与される核種の放射能を測定する測定装置と、該核種が放出する放射線を検出して核医学画像を再構成する核医学イメージング装置とを含む核医学イメージングシステムであって、
前記測定装置は、
前記放射能を測定する検定時間に対応するタイミングを示す信号を前記核医学イメージング装置に送信する信号送信部を備え、
前記核医学イメージング装置は、
前記信号送信部によって送信された信号を受信する信号受信部と、
前記信号受信部によって受信された信号によって示されるタイミングを起点として、時間を計測する時間計測部と、
前記時間計測部によって計測された時間を用いて、前記放射線が検出された検出時間を記録する検出時間記録部と
を備えたことを特徴とする核医学イメージングシステム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−58230(P2012−58230A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169594(P2011−169594)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】