説明

核医学診断システム及びこの核医学診断システムの投与線量算出方法

【課題】核医学イメージング装置を用いて診断を行う際、患者に投与された放射性同位体の線量、この放射性同位体の線量測定時刻、患者の体重などの誤入力を防止することにより、常に正確な検査結果を結果画像に反映させることができる核医学診断システム及びこの核医学診断システムの投与線量算出方法を提供する。
【解決手段】放射性同位元素が投与された被検体Hの所定部位から放射されるγ線を検出し、その検出データに基づいて被検体Hの内部における放射線同位元素の分布画像を生成する核医学イメージング装置1と、被検体Hに投与された線量を算出する線量計4とを有する核医学診断システム100であって、線量計4は、患者に放射性同位体が投与された際、投与された放射性同位体の線量を測定して、この線量と投与された時刻とを示す情報を核医学イメージング装置1に送信する送信手段を備え、核医学イメージング装置1は、線量計4により送信された情報を受信する受信手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断の際に患者に放射性同位体を投与して対象部位を撮影する核医学診断システム及びこの核医学診断システムの投与線量算出方法に係り、患者に投与された放射性同位体の線量などのデータを正確に入力できる核医学診断システム及びこの核医学診断システムの投与線量算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置、MRI装置、X線CT装置及び核医学イメージング装置などを用いた医用画像診断は、コンピュータ技術の発展に伴って急速な進歩を遂げ、今日の医療において必要不可欠なものとなっている。X線診断装置やX線CT装置は、臓器や腫瘍等の輪郭を描出することによって診断を行なう、所謂形態学診断を目的としているのに対し、核医学イメージング装置は、生体組織に選択的に取り込まれた同位元素又はその標識化合物から放射されるγ線を体外から計測し、その線量分布を画像化することにより被検体に対する機能診断を可能としている。
【0003】
この核医学イメージング装置として、ガンマカメラ、シングルフォトンエミッションCT装置(SPECT装置)、ポジトロンエミッションCT装置(PET装置)などが臨床の場で使用されている。
【0004】
例えば特許文献1には、被検体の体動に伴う投影データの生成やり直しを効率よく行うことができる核医学イメージング装置が記載されている。この核医学イメージング装置は、放射性同位元素を投与した被検体から逐次放射される1対のγ線を検出器モジュールを用いて検出し、得られた検出信号に基づいてγ線検出位置とγ線入射方向を算出し、検出信号のカウント値に基づくモニタリング用投影データをγ線検出位置及びγ線入射方向に対応させて生成し、そして、隣接する2つのモニタリング期間の各々において生成されたモニタリング用投影データのカウント値を比較することにより被検体の体動指数を算出し、この体動指数が閾値を超えた場合、モニタリング用投影データの生成をやり直すための警告信号を発生するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−107995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
核医学診断システムを用いて診断を行う際、患者に投与された放射性同位元素の線量や、その線量が測定された時刻、患者の体重などを核医学診断システムに入力する必要がある。従来は、医療従事者が線量計や体重計で計測されたデータを手入力していたが、入力項目が多いために誤入力が発生してしまうおそれがあった。特にPET装置を用いて検査する場合には、一般的に、これらの値を用いて結果画像の各画素に対して正規化した値(SUV:Standard Uptake Value)を算出するため、誤入力による問題が大きくなってしまう。
【0007】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、核医学イメージング装置を用いて診断を行う際、患者に投与された放射性同位体の線量、この放射性同位体の線量測定時刻、患者の体重などの誤入力を防止することにより、常に正確な検査結果を結果画像に反映させることができる核医学診断システム及びこの核医学診断システムの投与線量算出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る核医学診断システムは、放射性同位元素が投与された被検体の所定部位から放射されるγ線を検出し、その検出データに基づいて前記被検体内部における前記放射線同位元素の分布画像を生成する核医学イメージング装置と、前記被検体に投与された線量を算出する線量計とを有する核医学診断システムであって、前記線量計は、患者に放射性同位体が投与された際、投与された放射性同位体の線量を測定して、この線量と投与された時刻とを示す情報を前記核医学イメージング装置に送信する送信手段を備え、前記核医学イメージング装置は、前記線量計の送信手段により送信された情報を受信する受信手段を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る核医学診断システムの投与線量算出方法は、放射性同位元素を投与した被検体の所定部位から放射されるγ線を検出し、その検出データに基づいて前記被検体内部における前記放射線同位元素の分布画像を生成する核医学診断システムの投与線量算出方法であって、投与前の放射性同位元素の線量を取得する取得する第1の取得ステップと、前記第1の取得ステップにて放射性同位元素の線量が取得されてからその放射性同位元素が患者に注入されるまでの時間を取得する取得する第2の取得ステップと、投与後の放射性同位元素の線量を取得する取得する第3の取得ステップと、放射性同位元素が患者に注入されてから前記第3の取得ステップにて放射性同位元素の線量が取得されるまでの時間を取得する取得する第4の取得ステップと、前記第1の取得ステップ乃至第4の取得ステップにより取得された情報に基づいて、患者に投与された放射性同位元素の線量を算出する算出ステップとを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る核医学診断システム及びこの核医学診断システムの投与線量算出方法によると、核医学イメージング装置を用いて診断を行う際、患者に投与された放射性同位体の線量、この放射性同位体の線量測定時刻、患者の体重などの誤入力を防止することにより、常に正確な検査結果を結果画像に反映させることが可能となる。これにより、特に、核医学イメージング装置としてPET装置が用いられた場合には、常に正確なSUVが算出される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る核医学診断システムを示す構成図。
【図2】本発明に係る核医学診断システムの核医学イメージング装置を示す構成図。
【図3】本発明に係る核医学診断システム注射器の機能を示す構成図。
【図4】本発明に係る核医学診断システム線量計の機能を示す構成図。
【図5】投与情報を示すデータ構成図。
【図6】本発明に係る核医学診断システムが投与線量算出処理を行う際の手順を示すフローチャート。
【図7】投与前に注射器に密封された放射性同位体の線量が測定されてからその放射性同位体が患者に注入されるまでの時間、及び、その放射性同位体が患者に投与されてから再度注射器に密封された放射性同位体の線量が測定されるまでの時間を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る核医学診断システムの実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る核医学診断システム100を示す構成図である。図1に示すように、核医学診断システム100は、核医学イメージング装置1と、核医学イメージング装置1における診断処理を統括的に制御する制御装置2と、患者(被検体H)に薬品(放射性同位体)を投与する注射器3と、注射器3の内部に密封された放射性同位体の線量を測定したり注射器3により被検体Hに投与された放射性同位体の線量を算出したりする線量計4と、複数の患者情報を管理するとともに検査や治療の際の予約から検査結果までの管理を行うRIS(Radiology Information System)5とを備えている。
【0013】
核医学イメージング装置1は、例えばPET装置であり、放射性同位元素が投与された被検体Hの所定部位から放射されるγ線を検出し、その検出データに基づいて被検体Hの内部における放射線同位元素の分布画像を生成する装置である。以下、核医学イメージング装置1としてPET装置を用いた場合について説明するが、これに限定されない。制御装置2は、例えば医療従事者の操作に基づいて、核医学イメージング装置1に設置された被検体Hの移動制御や、被検体Hの所定部位の撮影制御、被検体Hに投与された放射性同位体の線量や撮影により得られたデータから最適な画像を生成する画像生成制御などを行う。
【0014】
図2は、核医学イメージング装置1を示す構成図である。核医学イメージング装置1は、図2に示すように、被検体Hの周囲に配置され、放射性同位元素(RI;radioisotope)を投与した前記被検体Hから放射される1対のγ線を検出するリング状のデータ検出部11を備えている。
【0015】
また、核医学イメージング装置1の制御装置2は、検出されたγ線とノイズとを弁別したりγ線の検出位置及び検出時刻を設定したりするデータ処理部12と、同時検出された1対のγ線の検出信号を抽出し、これらのγ線検出位置に基づいてγ線入射方向を算出する入射方向算出部13と、所定時間内のγ線のカウント値をγ線検出位置及びγ線入射方向に対応させて順次保存しモニタリングデータ及び投影データを生成する投影データ生成部14と、隣接するモニタリング期間の各々において生成されたモニタリングデータのカウント値を比較することにより体動指数を算出する投影データモニタリング部15を備えている。
【0016】
さらに、制御装置2は、投影データ生成部14により生成された投影データを再構成処理して画像データを生成する画像データ生成部16と、生成された画像データを表示する表示部17と、被検体Hが載置された天板18から被検体Hの体重を取得する体重取得部18aと、データ検出部11が取り付けられたガントリあるいは天板18を被検体Hの体軸方向に移動する天板/ガントリ移動機構部19と、投影データ生成条件の設定や各種コマンド信号の入力等を行なう入力部20と、上述した各ユニットを統括的に制御するシステム制御部21とを備えている。
【0017】
データ検出部11は、複数(例えばNm個)の検出器モジュール22−1乃至22−Nmがリング状に配設され、被検体Hから放射されたγ線はこれらの検出器モジュール22−1乃至22−Nmによって一旦可視光に変換された後、電気信号(検出信号)に変換される。このとき、天板18に載置された被検体Hは、リング状に配置された検出器モジュール22−1乃至22−Nmの中心付近に挿入された状態で、診断部位から放射されるγ線の検出が行なわれる。
【0018】
検出器モジュール22は、リング状配列方向に所定個数、体軸方向に所定個数が短冊状に配設され、被検体Hから放射されるγ線を検出して可視光に変換するシンチレータと、リング状配列方向に所定個数、体軸方向に所定個数が配設され、シンチレータによって変換された可視光を電気信号に変換すると共に変換した微弱な電気信号を増幅する光電子増倍管と、シンチレータから出力された可視光を光電子増倍管に伝達するライトガイドを有している。
【0019】
シンチレータは、ビスマスジャーマネイド(BGO:(Bi4Ge3O12))、タリウム活性化ヨウ化ナトリウム(NaI(Tl))、フッ化バリウム(BaF2)等の材料が用いられ、特に、PET装置には、単位体積当たりのγ線光電吸収率が高いビスマスジャーマネイドや応答速度の速いフッ化バリウムが好適である。
【0020】
光電子増倍管は、例えば、数百個からなる光子を107〜1010個の電子に増幅し、増倍管の出力段である陽極にその電子を収集して電気信号に変換するものであり光電陰極と電子増倍器を備えている。光電陰極には、その波長特性がシンチレータの発光波長に略均しい多アルカリ物質、あるいは酸素やセシウムで活性化したバイアルカリ物質が用いられ、入射光子数に対する発生光電子数は通常20%乃至30%である。一方、電子増倍器は、2次電子放出現象に基づき、電子の伝搬経路に沿って配置された多段の電極と増幅された電子を収集する陽極とから構成されている。そして、管電圧が200V乃至300Vの場合の1段当たりの増幅率は約5倍であるため、上述した増幅率を得るためには10段程度の電極が設けられる。
【0021】
ライトガイドは、シンチレータと光電子増倍管を光学的にカップリングするためのものであり、シンチレータから出力された可視光を効率よく光電子増倍管に伝達するために光透過性に優れたプラスチック材が用いられる。
【0022】
データ処理部12は、検出器モジュール22−1乃至22−Nmの各々に接続されているデータ処理ユニット23−1乃至23−Nmを備えているが、ここでは被検体Hに投与された放射性同位元素から放射される1対のγ線が検出器モジュール22−a及び22−bによって検出される場合を想定し、これらの検出器モジュール22−a及び22−bに接続されているデータ処理ユニット23−a及び23−bのみを示している。
【0023】
データ処理部12のデータ処理ユニット23−aは、上述の検出器モジュール22−aが備えた所定個数の光電子増倍管から供給される所定個数のチャンネルの検出信号を加算合成する信号合成部24と、信号合成部24において合成された検出信号を用いてγ線の放射に起因する検出信号とノイズとの弁別を行なう波高弁別部25と、信号合成部24から出力された合成後の検出信号を矩形波に整形する波形整形部26と、例えば、矩形波のフロントエッジに基づいてγ線検出時刻を計測すると共に波高弁別部25において弁別された検出信号に対し前記γ線検出時刻を設定(付加)する検出時刻設定部27を備えている。さらに、データ処理ユニット23−aは、光電子増倍管から供給された所定個数のチャンネルの検出信号に基づいて検出器モジュール22−aにおけるγ線検出位置を算出する検出位置算出部28と、検出時刻設定部27においてγ線検出時刻が設定された検出信号に対しγ線検出位置を設定(付加)する検出位置設定部29を備えている。
【0024】
以上、検出器モジュール22−bに接続されたデータ処理ユニット23−bが備えた信号合成部24、波高弁別部25、波形整形部26、検出時刻設定部27、検出位置算出部28及び検出位置設定部29の各ユニットも同様の構成と機能を有している。
【0025】
次に、入射方向算出部13は、データ処理ユニット23−1乃至23−Nmに備えられた検出位置設定部29の各々から供給される検出信号の付帯情報であるγ線検出時刻に基づき、予め設定された同時検出時間τ0にて計測された検出信号(例えば、検出器モジュール22−a及び検査モジュール22−bから供給された放射性同位元素に基づく検出信号)を抽出し、これらの検出信号に付加されているγ線検出位置の情報に基づいてγ線入射方向を算出する。
【0026】
投影データ生成部14は、記憶回路を備え、入射方向算出部13から供給される検出信号のカウント値をγ線検出位置及びγ線入射方向に対応させて前記記憶回路に保存する。そして、検出器モジュール22−aと検出器モジュール22−bによるγ線の検出が行なわれる度に、検出信号のカウント値がこの記憶回路にて積算される。
【0027】
一方、他の検出器モジュール22において1対のγ線が検出された場合は、γ線検出位置とγ線入射方向を上述と同様な方法によって設定し、検出信号のカウント値をγ線検出位置及びγ線入射方向に対応させて前記記憶回路に順次保存する。即ち、投影データ生成部14における記憶回路には、複数のγ線検出位置及びγ線入射方向に対応した検出信号のカウント値がモニタリング時間の間積算されてモニタリングデータが生成される。さらに、投影データ生成部14は、所定のデータ収集時間の間に得られた複数のモニタリングデータを合成して投影データを生成する。
【0028】
投影データモニタリング部15は、記憶回路と演算回路を備え、前記記憶回路には閾値が予め保管されている。又、前記演算回路は、時間的に隣接して設定された2つのモニタリング期間の各々において得られたモニタリングデータのカウント値を比較することによって被検体の体動の影響を示す体動指数を算出する。そして、投影データモニタリング部15は、この体動指数が閾値を越えた場合には警告信号を発生するための指示信号をシステム制御部21に供給する。この場合、投影データモニタリング部15は、2つのモニタリングデータにおけるカウント値の差異をγ線検出位置及びγ線入射方向に対して算出し体動指数を求める。
【0029】
画像データ生成部16は、演算回路と記憶回路を備え、データ収集時間において投影データ生成部14が生成した投影データを用いて画像データを生成する。即ち、演算回路は、投影データにおけるγ線検出位置やγ線入射方向の情報とカウント値に基づき、例えば、X線CT装置における再構成処理で一般に用いられている逆投影処理を行ない、更に、必要に応じて平滑化処理や補間処理等の信号処理を行なって画像データを生成する。そして、得られた画像データは前記記憶回路に一旦保存される。
【0030】
表示部17は、表示データ生成回路と変換回路とモニタを備え、表示データ生成回路は、画像データ生成部16によって生成された画像データを読み出し、所定の表示フォーマットに変換して表示データを生成する。そして、変換回路は、この表示データに対しD/A変換とTVフォーマット変換を行ない、得られた映像信号をモニタに表示する。
【0031】
天板18は、寝台の上面にスライド可能に取り付けられ、被検体Hを載置した状態でその体軸方向に所定距離移動させ、データ検出部11を診断部位に設定する。又、天板/ガントリ移動機構部19は、システム制御部21から供給される制御信号に従い、天板18あるいはデータ検出部11を備えたガントリを所望の方向あるいは位置に移動させてデータ検出部11を診断部位に設定する。
【0032】
この天板18あるいはデータ検出部11を所定の間隔で移動させながら画像データを生成することによって被検体Hの広範囲な診断領域に対する検査を短時間で行なうことが可能となる。
【0033】
モニタリングデータ及び投影データの生成では、体軸方向に垂直な1つの平面内に配列されたリング状の検出器モジュール23−a乃至23−Nmを用いて1断面分の投影データを生成する場合について述べたが、データ検出部11に設けられた検出器モジュール23−a乃至23−Nmは、体軸方向に対しても所定個数のシンチレータと所定個数の光電子増倍管を備えている。このため、体軸方向に垂直な複数枚の2次元画像データあるいは3次元的な画像データ(ボリュームデータ)の生成を可能とするモニタリングデータや投影データの生成を短時間で行なうことができる。
【0034】
天板/ガントリ移動機構部19は、検出器モジュール23−a乃至23−Nmの中心を予め設定された移動間隔で順次移動させ、これらの位置を中心とした範囲においてモニタリングデータ及び投影データの生成を行なう。このようにして被検体Hに対しデータ検出部11を体軸方向に移動させることにより広範囲な診断部位における画像データを連続的に生成することが可能となる。
【0035】
入力部20は、キーボード、トラックボール、ジョイスティック、マウス等の入力デバイスや表示パネルあるいは各種スイッチを備えたインタラクティブなインターフェースであり、被検体情報の入力、データ収集時間、モニタリングデータ収集時間、データ検出部11の体軸方向移動範囲等の投影データ生成条件の設定、被検体Hに対するデータ検出部1の初期位置の設定、投影データ生成の開始あるいはやり直しを行なうためのコマンド信号の入力などを行なう。
【0036】
システム制御部21は、CPUと記憶回路を備え、入力部20から供給された入力情報や設定情報を前記記憶回路に一旦保存した後、これらの情報に基づいて上述の各ユニットを統括的に制御し、画像データの生成と表示を行なう。
【0037】
図3は、核医学診断システム100の体温計3の機能を示すブロック図である。注射器3は、一般的な注射器と同様にシリンダの内部に薬品(放射性同位体)を密封していて、医療従事者によりピストンが押されることによりこの放射性同位体が注射針の外部(被検体H)に注入されるものであり、図3に示すように、注射器3から被検体Hに放射性同位体が注入されたことを検知する注入検知部30と、現在時刻を計時する計時部31と、線量計4に対して通信を行う通信制御部32とを備えている。
【0038】
注入検知部30は、例えばシリンダの内部でピストンが移動したことを検知することにより、注射器に密封された放射性同位体が被検体Hに対して注入されたことを検知した際に、その旨を通信制御部32に通知する。計時部31は、常に現在時刻を計時していて、通信制御部32の制御に基づいて、現在時刻を示す信号を通信制御部32に通知する。
【0039】
通信制御部32は、注入検知部30により注入が検知された際に、計時部31から現在時刻を示す信号を取得して、この時刻を注入時刻として、線量計4に対して注入時刻を示す信号を送信する。信号を受信した線量計4は、被検体Hに投与された放射性同位体の線量を算出する際に、この注入時刻を使用する。
【0040】
図4は、核医学診断システム100の線量計4の機能を示すブロック図である。線量計4は、図4に示すように、現在時刻を計時する計時部40と、医療従事者により線量測定の指示が入力される測定指示部41と、線量を測定する線量測定部42と、被検体Hに投与された放射性同位体の線量に関する情報を記憶する記憶部43と、線量計4を統括的に制御する主制御部44と、注射器3や制御装置2やRIS5に対して通信する通信制御部45とを備えている。
【0041】
計時部40は、現在時刻を計時していて、主制御部44の制御に基づいて、現在時刻を主制御部に送信する。測定指示部41は、医療従事者が指示を入力するための例えば測定開始ボタン等の入力手段を備え、この入力手段により指示が入力された場合、その旨を示す信号を生成して線量測定部42に伝送する。線量測定部42は、この信号を受信したことに基づいて線量の測定を開始する。
【0042】
線量測定部42は、測定指示部41により測定が指示された旨を示す信号を受信した場合、線量計4に設置された注射器3に密封された放射性同位体の線量を計測して、計測結果を主制御部44に送信する。例えば医療従事者は、被検体Hに放射性同位体を投与する前と投与した後に、線量計4に注射器3を設置して、線量計4に線量の計測を指示する。
【0043】
記憶部43は、被検体Hに投与された放射性同位体の線量に関する情報である投与情報50を記憶している。投与情報50は、オーダー番号情報51、被検体HID情報52、患者名情報53、検査項目情報54、各種名情報55、線量を測定した日時や放射性同位体を被検体Hに注入した日時を示す日時情報56、及び線量情報57がそれぞれ対応付けられた情報である。
【0044】
例えば図5によると、投与情報50として、「XX0001」のオーダー番号情報51、「0001」の患者ID情報52、「山田太郎」の患者名情報53、「脳」の検査項目情報54、「11C」の核種名情報55、「投与前:2009/4/1 9:03:15,注入時:・・・」の日時情報56、「・・・」の線量情報57がそれぞれ対応付けられている。
【0045】
主制御部44は、線量測定部42により測定された線量や、その測定された時刻、注射器3から受信した注入時刻に基づいて、被検体Hに投与された線量を算出する。
【0046】
通信制御部45は、注射器3から被検体Hに放射性同位体が注入された時刻を受信すると、この注入時刻を記憶部43の投与情報50に記憶させる。また、通信制御部45は、主制御部44が被検体Hに投与された放射性同位体の線量を算出した際、この被検体Hに投与された線量を示す信号を制御装置2またはRIS5に送信する。
【0047】
ここで、核医学診断システム100において、診断の際に、線量計が被検体Hに投与された放射性同位体(放射性同位体)の線量を計算する処理について、図6に示すフローチャートに基づいて説明する。以下、「ステップS101」の語句を例えば「S101」のように、「ステップ」の語句を省略して説明する。
【0048】
線量計4の主制御部44は、患者情報を取得して、記憶部に記憶させる(S101)。このとき主制御部44は、例えばバーコード情報を読み取ったりRIS5から取得したりすることにより、オーダー番号、患者情報を入力する。患者情報は、患者ID情報、患者名情報、検査項目情報、核種名情報などである。
【0049】
放射性同位体を被検体Hに注入する前に、線量計4に注射器3が設置されて医療従事者により例えば開始ボタンが押されるなどにより線量計測が指示されると、線量測定部42は、注射器3に密封された放射性同位体の線量を測定する。そして、主制御部44は、計時部40から現在時刻を取得してこれを投与前時刻とし、このときの計測結果を対応付けて投与情報50として記憶部43に記憶する(S103)。
【0050】
主制御部44は、注射器3から注入情報を受信したか否かを判断する(S105)。注射器3に密封された放射性同位体が被検体Hに注入されると、注射器3から注入時刻を示す注入情報が送信され、線量計4の通信制御部45は、この注入情報を受信する。注入情報を受信していない場合(S105のNo)は、主制御部44は受信するまで待機する。注入情報を受信した場合(S105のYes)は、主制御部44は、受信した注入情報に含まれる注入時刻を投与情報50の注入時刻として記憶部43に記憶する(S107)。
【0051】
そして、放射性同位体の注入後に、再び、線量計4に注射器3が設置されて医療従事者により例えば開始ボタンが押されるなどにより線量計測が指示されると、線量計測部42は、注射器3に密封された放射性同位体の線量を測定する。そして、主制御部44は、計時部40から現在時刻を取得してこれを投与後時刻とし、このときの計測結果を対応付けて投与情報50として記憶部43に記憶する(S109)。
【0052】
主制御部44は、ステップS103にて記憶した投与前情報(投与前に計測した注射器に密封された放射性同位体の線量Dini)、ステップS107にて記憶した注入情報、ステップS109にて記憶した投与後情報(投与後に計測した注射器に密封された放射性同位体の線量Dres)を用いて、下記の(1)式により、被検体Hに投与された放射性同位体の線量Dpatを算出する(S111)。
[数1]
Dpat=Dini・e-(ln2/k)xTT1 - Dres・e-(ln2/k)xTT12 …(1)
【0053】
なお、図7に示すように、投与前に注射器3に密封された放射性同位体の線量を測定してから、その放射性同位体を被検体Hに注入するまでの時間をTT1とし、その放射性同位体を被検体Hに投与してから、再度注射器3に密封された放射性同位体の線量を測定するまでの時間をTT2とするとともに、放射性同位体の半減期をkとする。
【0054】
主制御部44は、ステップS111にて算出された、被検体Hに投与された放射性同位体の線量を、オーダー番号情報、患者ID情報、患者名情報、核種名情報とともに、核医学イメージング装置1の制御装置2またはRIS5に送信する(S113)。各種情報がRIS5に送信された場合は、これらの情報がRIS5を介して核医学イメージング装置1の制御装置2に送信される。
【0055】
核医学イメージング装置1の制御装置2は、線量計4またはRIS5からオーダー番号情報、患者ID情報、患者名情報、核種名情報、被検体Hに投与された線量の情報を受信し、それを医療従事者に対して提示し、この情報に基づいて、医療従事者が検査を開始する。
【0056】
また、核医学イメージング装置1の天板18は体重取得部18aを備えていて、この体重取得部18aは、被検体Hが核医学イメージング装置1の寝台に横たわった際に被検体Hの体重を測定して、この測定値を示す信号を生成してシステム制御部21に伝送する。信号を受信したシステム制御部21は、体重の測定値を患者情報等とともに結果画像の付帯情報として保存する。
【0057】
このようにして核医学診断システム100は、被検体Hに放射性同位体が投与される際に、投与前の放射性同位体の線量、投与後の放射性同位体の線量を測定するとともに、投与前に線量を測定してから放射性同位体を被検体Hに注入するまでの時間、放射性同位体を被検体Hに注入してから投与後に線量を測定するまでの時間を計算し、これらの情報に基づいて、被検体Hに投与された放射性同位体の線量を算出する。また、被検体Hが核医学イメージング装置1の寝台に横たわった際に、核医学イメージング装置1は被検体Hの体重を測定する。すなわち、核医学イメージング装置1は、線量計4から被検体Hに投与された放射性同位体の線量を直接取得し、被検体Hの体重を直接測定することにより、これらの情報の誤入力を防止でき、検査結果に正確な値を反映させることができる。
【0058】
本発明に係る核医学診断システム100及びこの核医学診断システム100の投与線量算出方法によると、核医学イメージング装置1を用いて診断を行う際、患者に投与された放射性同位体の線量、この放射性同位体の線量測定時刻、患者の体重などの誤入力を防止することにより、常に正確な検査結果を結果画像に反映させることが可能となる。これにより、特に、核医学イメージング装置1としてPET装置が用いられた場合には、常に正確なSUVが算出される。
【0059】
なお、実施形態として、核医学診断システムが核医学イメージング装置1の制御装置2線量計4、RIS5をそれぞれ別個に備えている例について説明したが、これに限定されず、制御装置2とRIS5が同一の装置として形成されていても良い。
【符号の説明】
【0060】
100…核医学診断システム,1…核医学イメージング装置,2…制御装置,3…注射器,4…線量計,5…RIS,11…データ検出部,12…データ処理部,13…入射方向算出部,14…投影データ生成部,15…投影データモニタリング部,16…画像データ生成部,17…表示部,18…天板,18a…体重取得部,19…天板/ガントリ移動機構部,20…入力部,21…システム制御部,22…検出器モジュール,23…データ処理ユニット,24…信号合成部,25…波高弁別部,26…波形整形部,27…検出時刻設定部,28…検出位置算出部,29…検出位置設定部,30…注入検知部,31…計時部,32…通信制御部,40…計時部,41…測定指示部,42…線量測定部,43…記憶部,44…主制御部,45…通信制御部,50…投与情報。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性同位元素が投与された被検体の所定部位から放射されるγ線を検出し、その検出データに基づいて前記被検体内部における前記放射線同位元素の分布画像を生成する核医学イメージング装置と、前記被検体に投与された線量を算出する線量計とを有する核医学診断システムであって、
前記線量計は、患者に放射性同位体が投与された際、投与された放射性同位体の線量を測定して、この線量と投与された時刻とを示す情報を前記核医学イメージング装置に送信する送信手段を備え、
前記核医学イメージング装置は、前記線量計の送信手段により送信された情報を受信する受信手段を備えることを特徴とする核医学診断システム。
【請求項2】
前記線量計は、
投与前の放射性同位元素の線量を取得する取得する第1の取得手段と、
前記第1の取得手段により放射性同位元素の線量が取得されてからその放射性同位元素が患者に注入されるまでの時間を取得する取得する第2の取得手段と、
投与後の放射性同位元素の線量を取得する取得する第3の取得手段と、
放射性同位元素が患者に注入されてから前記第3の取得手段により放射性同位元素の線量が取得されるまでの時間を取得する取得する第4の取得手段と、
前記第1の取得手段乃至第4の取得手段により取得された情報に基づいて、患者に投与された放射性同位元素の線量を算出する算出手段とを備え、
前記線量計の送信手段は、前記算出手段により算出された線量を示す情報を患者に投与された放射性同位体の線量として前記核医学イメージング装置に送信することを特徴とする請求項1記載の核医学診断システム。
【請求項3】
前記線量計は、患者に対して注射器を用いて放射性同位元素が注入された際に、この注入された時刻を注射器から取得する第5の取得手段を備え、
前記線量計の第2の取得手段は、前記第1の取得手段により放射性同位元素の線量が取得されてから前記第5の取得手段により取得された時刻までの時間を取得し、
前記線量計の第4の取得手段は、前記第5の取得手段により取得された時刻から前記第3の取得手段により放射性同位元素の線量が取得されるまでの時間を取得する取得することを特徴とする請求項2記載の核医学診断システム。
【請求項4】
前記核医学イメージング装置は、患者が寝台に横たわった際に、この患者の体重を測定する測定手段を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の核医学診断システム。
【請求項5】
前記線量計の送信手段は、前記算出手段により算出された線量を示す情報をRISに対して送信し、前記核医学イメージング装置の受信手段は、前記算出手段により算出された線量を示す情報を前記RISから受信することを特徴とする請求項1または2記載の核医学診断システム。
【請求項6】
前記線量計は、患者情報を取得する第6の取得手段を備え、
前記線量計の送信手段は、線量を示す情報に併せて、前記第6の取得手段により取得された患者情報を送信することを特徴とする請求項1または2記載の核医学診断システム。
【請求項7】
放射性同位元素が投与された被検体の所定部位から放射されるγ線を検出し、その検出データに基づいて前記被検体内部における前記放射線同位元素の分布画像を生成する核医学診断システムであって、
投与前の放射性同位元素の線量を取得する取得する第1の取得手段と、
前記第1の取得手段により放射性同位元素の線量が取得されてからその放射性同位元素が被検体Hに注入されるまでの時間を取得する取得する第2の取得手段と、
投与後の放射性同位元素の線量を取得する取得する第3の取得手段と、
放射性同位元素が患者に注入されてから前記第3の取得手段により放射性同位元素の線量が取得されるまでの時間を取得する取得する第4の取得手段と、
前記第1の取得手段乃至第4の取得手段により取得された情報に基づいて、患者に投与された放射性同位元素の線量を算出する算出手段とを備えることを特徴とする核医学診断システム。
【請求項8】
放射性同位元素を投与した被検体の所定部位から放射されるγ線を検出し、その検出データに基づいて前記被検体内部における前記放射線同位元素の分布画像を生成する核医学診断システムの投与線量算出方法であって、
投与前の放射性同位元素の線量を取得する取得する第1の取得ステップと、
前記第1の取得ステップにて放射性同位元素の線量が取得されてからその放射性同位元素が患者に注入されるまでの時間を取得する取得する第2の取得ステップと、
投与後の放射性同位元素の線量を取得する取得する第3の取得ステップと、
放射性同位元素が患者に注入されてから前記第3の取得ステップにて放射性同位元素の線量が取得されるまでの時間を取得する取得する第4の取得ステップと、
前記第1の取得ステップ乃至第4の取得ステップにより取得された情報に基づいて、患者に投与された放射性同位元素の線量を算出する算出ステップとを行うことを特徴とする核医学診断システムの投与線量算出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−256176(P2010−256176A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106791(P2009−106791)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】