説明

核医学診断装置及び画像処理装置

【課題】核医学検査における画像診断精度の向上を実現する核医学診断装置及び画像処理装置の提供。
【解決手段】検出器14は、被検体P内の放射性同位元素から放出されたガンマ線を検出する。再構成処理部32は、検出器14からの出力に基づいて被検体P内における放射性同位元素の濃度分布を表わすSPECT画像のデータを生成する。身体測定値補正部46は、生成されたSPECT学画像のデータを、被検体Pに含まれるガンマ線の吸収体量に応じて変化する身体測定値に応じて補正する。表示部52は、補正されたSPECT画像を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体内における放射性同位元素(放射性医薬品:RI(radioactive isotope))の集積を評価する核医学診断装置及び画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
核医学検査においてSPECT(single photon emission computed tomography)収集やPET(positron emission tomography)収集を行なう核医学診断装置が利用されている。この核医学診断装置は、被検体内のRIから放射されるガンマ線を収集して、被検体内のRIの濃度分布を表す画像(以下、核医学画像と呼ぶことにする)のデータを生成する(例えば、特許文献1参照)。核医学検査においては、この核医学画像を利用して画像診断が行なわれている。
【0003】
核医学検査において画像診断する場合、治療前と治療後とのそれぞれにおいて生成された核医学画像同士を比較読影する場合がある。しかし、治療前と治療後とでは、被検体の体重や胸囲/腹囲等の身体測定値、すなわち被検体内のガンマ線の吸収体の量が異なる場合がある。そのため核医学診断装置は、身体状態の経時的変化に伴うRI集積を過小あるいは過大評価してしまう。このような過小あるいは過大評価のため、RI集積の経時的変化等を精度良く診断することはとても難しく、核医学検査における画像診断精度の向上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11―153669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、核医学検査における画像診断精度の向上を実現する核医学診断装置及び画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1局面に係る核医学診断装置は、被検体内の放射性同位元素から放出されたガンマ線を検出する検出器と、前記検出器からの出力に基づいて前記被検体内における前記放射性同位元素の濃度分布を表わす核医学画像のデータを生成する生成部と、前記生成された核医学画像のデータを、前記被検体に含まれる前記ガンマ線の吸収体量に応じて変化する身体測定値に応じて補正する補正部と、前記補正された核医学画像を表示する表示部と、を具備する。
【0007】
本発明の第2局面に係る核医学診断装置は、被検体内の放射性同位元素から放出されたガンマ線を検出する検出器と、前記検出器からの出力に基づいて第1の収集時刻における前記被検体に関する第1の核医学画像のデータを生成する生成部と、前記第1の収集時刻より前の第2の収集時刻における前記被検体に関する第2の核医学画像のデータを記憶する記憶部と、前記第1の収集時刻における前記被検体に関する第1の身体測定値に応じて前記第1の核医学画像を補正し、前記第2の収集時刻における前記被検体に関する第2の身体測定値に応じて前記第2の核医学画像を補正する補正部と、前記補正された第1の核医学画像の所定領域における第1の平均画素値を計算し、前記補正された第2の核医学画像の所定領域における第2の平均画素値を計算する計算部と、前記計算された第1の平均画素値と第2の平均画素値との比を表示する表示部と、を具備する。
【0008】
本発明の第3局面に係る画像処理装置は、第1の収集時刻における被検体に関する第1の核医学画像のデータと、第2の収集時刻における前記被検体に関する第2の核医学画像のデータとを記憶する記憶部と、前記第1の収集時刻における前記被検体に関する第1の身体情報に応じて前記第1の核医学画像を補正し、前記第2の収集時刻における前記被検体に関する第2の身体情報に応じて前記第2の核医学画像を補正する補正部と、前記補正された第1の核医学画像の所定領域における第1の平均画素値を計算し、前記補正された第2の核医学画像の所定領域における第2の平均画素値を計算する計算部と、前記計算された第1の平均画素値と第2の平均画素値とを表示する表示部と、を具備する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、核医学検査における画像診断精度の向上を実現する核医学診断装置及び画像処理装置の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る核医学診断装置の構成を示す図。
【図2】本実施形態に係る身体測定値と被検体内のガンマ線の吸収体量との関係を説明するための図。
【図3】図1のシステム制御部の制御により実行される画像処理の典型的な流れを示す図。
【図4】図1の身体測定値補正部に保持されている身体測定値―吸収率テーブルの一例を示す図。
【図5】図3のステップS8において表示部に表示される表示画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係わる核医学診断装置と画像処理装置とを説明する。
【0012】
なお、本実施形態に係る核医学診断装置は、SPECT収集を行なうSPECT装置でもPET収集を行なうPET装置でもどちらにも適用可能である。しかしながら、以下の実施形態を具体的に行なうため、核医学診断装置はSPECT装置であるとする。
【0013】
図1は、本実施形態に係るSPECT装置1の構成を示す図である。図1に示すように、SPECT装置1は、互いにケーブル等で接続されるガントリ10とコンピュータ装置とを備える。
【0014】
ガントリ10は、円環又は円板状の回転フレーム12を回転軸RA周りに回転可能に支持する。回転フレーム12は、撮影領域FOV内の回転軸RAを取り囲むように複数の検出器14を搭載している。すなわち回転フレーム12は、複数の検出器14を回転軸RA回りに回動可能に支持する支持機構である。なお撮影領域FOVには、天板16に載置された被検体Pが含まれている。回転フレーム12は、回転駆動部18からの駆動信号の供給を受けて複数の検出器14を断続的に回転する。回転フレーム12は、回転駆動部18からの駆動信号の供給を受けて所定のタイミング及び所定の回転角度で検出器14を回転する。具体的には、回転フレーム12は、収集条件の1つである収集時間だけ停止し、収集時間が過ぎると回転軸RA周りに所定角度だけ回転し、再び収集時間だけ停止する。所定角度は、収集条件の1つであるビュー数に応じて決定される。なお、ビューとは1の収集時間において収集される投影データの集合である。すなわちビュー数とは、収集回数である。このようにして回転フレーム12は、停止と回転とを繰り返しながら検出器14を回転軸RA周りに1周させる。
【0015】
検出器14は、例えばNaIシンチレータに光電子増倍管やフォトダイオードが取り付けられてなる検出素子が2次元状に配列された検出器、またはCdTe(テルル化カドミウム)といった化合物半導体片にバイアス電極と信号電極とが取り付けられてなる検出素子が2次元状に配列された検出器である。各検出素子は、収集制御部28からの制御信号に応じて、被検体Pに投与されたシングルフォトン放出核種(RI)から放出されたシングルフォトンのガンマ線を検出し、ガンマ線のフォトン数に応じたアナログの電気信号を生成する。このようにして検出器14は、被検体の周囲を回転しながら放射線を繰り返し検出し、電気信号を繰り返し生成する。生成された電気信号は、コンピュータ装置20に収容される位置信号生成部22とエネルギー信号生成部24とに供給される。
【0016】
なお、本実施形態において検出器14の数は、1以上であれば幾つでも構わないが、以下の説明を具体的に行なうため、検出器14は2つであるとする。
【0017】
また、SPECT装置1には、上述のように、回転軸RA周りに回動可能に設けられた数個の検出器を回転させることによりデータを収集する回転タイプの他に、回転軸周りに固定的に設けられた多数の検出器によりデータを収集する固定タイプがある。本実施形態におけるSPECT装置は、回転タイプとして説明するが固定タイプであってもよい。
【0018】
コンピュータ装置20は、位置信号生成部22、エネルギー信号生成部24、データ収集部26、収集制御部28、前処理部30、再構成処理部32、及び画像処理装置40を備える。
【0019】
位置信号生成部22は、各検出器14からの電気信号をデジタル変換する。そして位置信号生成部22は、デジタル変換された電気信号に基づいてガンマ線の入射位置を計算し、計算された入射位置を表す位置信号を生成する。
【0020】
エネルギー信号生成部24は、各検出器14からの電気信号をデジタル変換する。そしてエネルギー信号生成部24は、デジタル変換された電気信号に基づいてガンマ線のエネルギーを表すエネルギー信号を生成する。エネルギー信号は、1つの収集時間において検出器14により検出された電気信号のカウント数に依存する。
【0021】
データ収集部26は、データを蓄積しておくための収集メモリを有する。データ収集部26は、位置信号生成部22からの位置信号に対応する収集メモリ上のアドレスを特定し、特定されたアドレスにエネルギー信号生成部24からのエネルギー信号を蓄積する。このように位置信号に関連付けられたエネルギー信号は、投影データと呼ばれている。データ収集部26は、収集制御部28からの制御信号に応じて、再構成処理に必要なビュー分の投影データ、例えば、360度分の投影データを収集する。
【0022】
収集制御部28は、収集条件に応じて回転駆動部18や検出器14、データ収集部26に制御信号を供給し、被検体内のRIから放出されたガンマ線をSPECT収集する。収集条件とは、例えば、ビュー数や、ビュー毎の収集時間、収集拡大率等である。そして収集制御部28は、再構成処理に必要なビュー分の投影データ、例えば、360度分の投影データをデータ収集部26に収集させる。
【0023】
前処理部30は、SPECT装置において一般的に行なわれている前処理、すなわち回転中心補正や散乱腺補正、均一性補正を投影データに行なう。
【0024】
再構成処理部32は、前処理部30から投影データを読み出し、読み出された投影データを再構成処理し、RIの濃度分布を表すボリュームデータを生成する。そして再構成処理部32は、生成されたボリュームデータに基づいて、被検体Pの体軸に直交する複数の断面に関する複数の断面画像(以下、SPECT画像と呼ぶことにする)のデータをそれぞれ生成する。なお再構成処理部32は、ボリュームデータを生成することなく、投影データから直接的に複数のSPECT画像のデータを生成してもよい。生成されたSPECT画像は、収集条件の1つである収集拡大率に応じて拡大されている。生成された複数のSPECT画像のデータは、画像処理装置40に搭載される記憶部42に供給される。
【0025】
画像処理装置40は、記憶部42、RI投与量・収集条件補正部44、身体測定値補正部46、ROI設定部48、集積率計算部50、表示部52、入力部54、及びシステム制御部56を備える。
【0026】
記憶部42は、ハードディスクや半導体メモリ等からなる記憶装置を含む。記憶部42は、再構成処理部32からの複数のSPECT画像のデータを記憶する。本実施形態に係る記憶部42は、治療前と治療後とにそれぞれ生成されたSPECT画像のデータにその時のRI投与量、収集条件、及び被検体の身体測定値を関連付けて記憶する。また、記憶部42は、SPECT収集を行なうための制御プログラムや、本実施形態に特有な画像処理を行なうための画像処理プログラムを記憶する。
【0027】
RI投与量・収集条件補正部44は、被検体に投与されたRIの量(以下、RI投与量と呼ぶことにする)や収集条件に応じてSPECT画像を補正する。RI投与量や収集条件での補正としては、例えば、RI投与量や、RIを投与してからデータ収集までの時間、ビュー数、収集時間等に応じてSPECT画像に補正係数を乗ずる方法がある。このRI投与量や収集条件での補正は、公知技術であるので説明は省略する。
【0028】
身体測定値補正部46は、RI投与量・収集条件補正部44により補正されたSPECT画像を、被検体に含まれるガンマ線の吸収体量に応じて変化する身体測定値に応じて補正する。具体的には、身体測定値補正部46は、被検体の身体測定値に従って被検体のガンマ線の吸収率を計算する。そして身体測定値補正部46は、計算された吸収率に従ってSPECT画像を補正する。なお身体測定値とは、被検体の体型に関する測定値であり例えば、体重、胸囲、腹囲、体脂肪率等が挙げられる。
【0029】
ROI設定部48は、ユーザにより入力部54を介して選択されたSPECT画像上の領域に関心領域(ROI:region of interest)を設定する。
【0030】
集積率計算部50は、ROI設定部48により設定されたROI内の画素の画素値に基づいて、ROI内におけるRIの集積率を計算する。集積率としては、例えば、ROI内における複数のピクセルの平均画素値が採用される。また、集積率計算部50は、2つのSPECT画像について計算された集積率の比を計算することも可能である。
【0031】
表示部52は、例えばCRTディスプレイや、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等の表示デバイスを備える。表示部52は、身体測定値補正部46により補正されたSPECT画像を表示したり、集積率計算部50により計算された集積率や集積率の比を表示したりする。
【0032】
入力部54は、キーボードやマウス、各種ボタン、タッチキーパネル等の入力デバイスを備える。入力部54は、ユーザによる入力デバイスの操作により収集条件や収集開始指示、画像処理の開始、ROI位置、身体測定値を入力したりする。
【0033】
システム制御部56は、核医学診断装置1の中枢として機能する。具体的には、システム制御部56は、記憶部42に記憶されている制御プログラムを読みだしてメモリ上に展開し、SPECT装置1の各部を制御することによってSPECT収集を実行する。また、システム制御部56は、記憶部42に記憶されている画像処理プログラムを読みだしてメモリ上に展開しコンピュータ装置(画像処理装置)の各部を制御することによって、本実施形態に特有な画像処理を実行する。
【0034】
以下、本実施形態に係るSPECT装置1の動作を、RIとして131Iを使用する副腎検査を臨床例に挙げて説明する。副腎検査においては、しばしば異なる収集時刻、典型的には治療前と治療後とに関するSPECT画像の比較読影が行なわれる。この比較読影によりRI集積の経過観察が行われている。
【0035】
まずは図2を参照しながら被検体P内のガンマ線の吸収体量と身体測定値との関係を説明する。病変部の治療前においては、131I等のRIが被検体Pに投与されSPECT収集が行われる。SPECT収集により得られたSPECT画像上で病変部が発見され、治療が行なわれると再びSPECT収集が行なわれる。なお治療後の被検体は、治療前に比して痩せているものとする。
【0036】
RIから放射されるガンマ線は、被検体P内の吸収体GKに吸収される。従って、RIから放射されるガンマ線は、吸収体GKにより減衰されて検出器14に検出される。ここで、吸収体GKがない場合のカウント数(エネルギー信号)KCに対する、吸収体GKがある場合のカウント数GCの割合(1−(GC/KC)×100)を吸収率と呼ぶことにする。吸収率は、RIから検出器14までのガンマ線の放射経路上にある吸収体量に応じて変化する。すなわち吸収体量が少なければ少ないほど、吸収率は小さくなる。換言すれば、たとえSPECT画像間で同じRI濃度であったとしても、吸収体量が少なければ少ないほど、カウント数は大きくなりSPECT画像の画素値が大きくなる。このように吸収体量は、SPECT画像の定量性を低下させている要因となっている。
【0037】
吸収体GKは、筋肉や脂肪、骨、体液等、被検体Pを形作る全ての物質にあてはまる。従って、図2の場合、被検体Pは治療前に比して治療後の方が痩せているので、治療後の吸収体GKの量は治療前に比して少ない。すなわち、吸収体GKの量は、被検体の体重や胸囲、腹囲、体脂肪率等の身体測定値に相関すると考えられる。従って、身体測定値は、SPECT画像の画素値の補正パラメータとして用いることができると考えられる。このような考えに従って本実施形態に係るSPECT装置1は、身体測定値に応じてSPECT画像を補正し、SPECT画像の定量性の低下を抑制する。
【0038】
以下、図3を参照しながら、システム制御部56の制御により実行される画像処理の典型的な動作例を説明する。なお、治療前におけるSPECT画像のデータと治療後におけるSPECT画像のデータとは予め再構成処理部32により生成され、記憶部42に記憶されているものとする。ここで、治療前に生成されたSPECT画像を治療前SPECT画像、治療後に生成されたSPECT画像を治療後SPECT画像と呼ぶことにする。なお治療前SPECT画像と治療後SPECT画像とは、同一のRI投与量、且つ同一の収集条件で収集されているものとする。
【0039】
図3に示すように、まずシステム制御部56は、ユーザからの入力部54を介した開始指示を受けると、処理対象の治療前SPECT画像のデータと治療後SPECT画像のデータとを記憶部42から読み出し(ステップS1)、RI投与量・収集条件補正部44に供給する。そしてシステム制御部56は、RI投与量・収集条件補正部44に補正処理を行なわせる(ステップS2)。
【0040】
ステップS2においてRI投与量・収集条件補正部44は、治療前SPECT画像と治療後SPECT画像とを同一のRI投与量や収集条件で補正する。例えば、RI投与量・収集条件補正部44は、治療前と治療後とのそれぞれにおけるRI投与からSPECT収集終了までの時間に応じて、治療前SPECT画像に対する補正係数と治療後SPECT画像に対する補正係数を決定する。そしてRI投与量・収集条件補正部44は、各補正係数を各SPECT画像に乗ずることにより補正する。補正された治療前SPECT画像のデータと補正された治療後SPECT画像のデータとは、身体測定値補正部46に供給される。
【0041】
ステップS2が行なわれるとシステム制御部56は、身体測定値補正部46にガンマ線の吸収率の計算処理を行わせる(ステップS3)。
【0042】
ステップS3において身体測定値補正部46は、治療前のSPECT収集時における被検体の身体測値に基づいて治療前における被検体のガンマ線の吸収率を計算する。また、治療後のデータ収集時における被検体の身体測値に基づいて治療後における被検体のガンマ線の吸収率を計算する。典型的には、身体測定値補正部46は、身体測定値と吸収率とを関連付けたテーブル(以下、身体測定値―吸収率テーブルと呼ぶことにする)を利用して吸収率を得る。
【0043】
図4は、身体測定値―吸収率テーブルの一例を示す図である。なお図4に示す身体測定値―吸収率テーブルは、身体測定値として体重[kg]と腹囲[cm]とを採用している。図4に示すように、身体測定値―吸収率テーブルは、体重[kg]と腹囲[cm]とを入力とし、吸収率[%]を出力とするテーブルである。つまり身体測定値補正部46は、治療前における被検体の体重と胸囲とをテーブルに入力し、治療前における被検体の吸収率を得る。例えば、体重100kgで胸囲90cmとすると、吸収率23%が得られる。身体測定値と吸収率との関係は、試行錯誤的に臨床実験により得ることができる。身体測定値―吸収率テーブルは、被検体によらない標準的なものであっても、被検体固有のものであってもよい。なお身体測定値―吸収率テーブルは、2つの身体測定値、すなわち体重と腹囲とを入力するとしたが、これに限定されない。例えば、身体測定値―吸収率テーブルは、1つの身体測定値を入力するものとしてもよい。
【0044】
なお身体測定値は、医師等のユーザにより入力部54を介して入力されるとよい。また他の方法として、SPECT画像に身体測定値のデータを関連付けておき、身体測定値補正部46がこの身体測定値のデータを読み取って入力してもよい。
【0045】
ステップS3が行なわれるとシステム制御部56は、身体測定値補正部46にSPECT画像の補正処理を行なわせる(ステップS4)。
【0046】
ステップS4において身体測定値補正部46は、ステップS3において計算された治療前吸収率に応じて治療前SPECT画像を補正し、治療後吸収率に応じて治療後SPECT画像を補正する。具体的には、まず身体測定値補正部46は、ステップS3において計算された吸収率に基づいて補正係数を計算する。補正係数は、例えば、以下の(1)式により計算される。
補正係数=1−吸収率 ・・・(1)
そして補正係数が計算されると身体測定値補正部46は、(1)式により計算された補正係数をSPECT画像に乗じて補正する。このようにして治療前における被検体の身体測定値で治療前SPECT画像を補正し、また、治療後における被検体の身体測定値で治療後SPECT画像を補正することができる。以下、身体測定値で補正された治療前SPECT画像を治療前補正画像、身体測定値で補正された治療後SPECT画像を治療後補正画像と呼ぶことにする。生成された治療前補正画像のデータと治療後補正画像のデータとは、ROI設定部48に供給される。
【0047】
ステップS4が行なわれるとシステム制御部56は、ROI設定部48にROIの設定処理を行なわせる(ステップS5)。
【0048】
ステップS5においてROI設定部48は、ステップS4において生成された治療前補正画像と治療後補正画像とのそれぞれにROIを設定する。なおステップS5においては、ROI設定対象のSPECT画像、すなわち治療前補正画像と治療後補正画像とが同時あるいは個別に表示部52に表示されている。ユーザは、表示された各補正画像を観察して各ROIの場所を決め、入力部54を介して各補正画像にROI位置を指定する。ROI位置が指定されるとROI設定部48は、指定されたROI位置にROIを設定する。設定されるROI同士は、解剖学的な同一位置にあるRI部分に設定される。これにより治療前補正画像上には治療前ROIが、治療後補正画像上には治療後ROIが設定される。治療前ROIのデータと治療後ROIのデータとは、集積率計算部50に供給される。
【0049】
ステップS5が行なわれるとシステム制御部56は、集積率計算部50に集積率の計算処理を行なわせる(ステップS6)。
【0050】
ステップS6において集積率計算部50は、設定された各ROI内の画素値に基づいて集積率を計算する。具体的には、集積率計算部50は、治療前ROIを構成する複数の画素の画素値の平均値を算出する。算出された平均値が治療前の被検体に関する集積率である。同様に、集積率計算部50は、治療後ROIを構成する複数の画素の画素値の平均値を、治療後の被検体に関する集積率として計算する。
【0051】
ステップS6が行なわれるとシステム制御部56は、集積率計算部50に集積率の比の計算処理を行なわせる(ステップS7)。
【0052】
ステップS7において集積率計算部50は、治療前の被検体に関する集積率と治療後の被検体に関する集積率との比、すなわち治療前の平均カウント数と治療後の平均カウント数との比を計算する。具体的には、治療前の集積率A1に対する治療後の集積率A2、すなわちA2/A1を集積率の比として計算する。治療前の集積率A1、治療後の集積率A2、比A2/A1のデータは、表示部52に供給される。
【0053】
ステップS7が行なわれるとシステム制御部56は、表示部52に表示処理を行なわせる(ステップS8)。
【0054】
ステップS8において表示部52は、治療前補正画像や治療後補正画像を所定のレイアウトで表示する。さらに表示部52は、この表示画面に治療前の集積率、治療後の集積率及び集積率の比を表示してもよい。
【0055】
図5は、表示画面のレイアウト例を示す図である。図に示すように表示画面には、治療前補正画像I1と治療後補正画像I2とが並べて表示されている。上述のように補正画像I1、I2は、SPECT収集時における身体測定値で補正されている。従って補正画像I1、I2の画素値は、SPECT収集時における吸収体量に依存せず、ガンマ線の散乱等を除けば、RI量のみに依存するということができる。つまりユーザは、補正画像I1、I2を観察することで、RI集積量を定量性良く判断することができる。またユーザは、治療前補正画像I1と治療後補正画像I2とのグレーレベルやカラーレベルの差を観察することで、RI集積量の差を定量性良く判断することができる。従って、病変部の鑑別診断や治療経過等の精度が向上する。
【0056】
また図5に示すように表示画面には、治療前の集積率A1と治療後の集積率A2とが表示される。図5においては、治療前の集積率A1は100、治療後の集積率A2は20である。集積率は、上述のように補正画像に基づいて計算されている。つまり集積率は、ガンマ線の吸収体がないものとして計算されており、すなわちROI内におけるRIの集積量を定量性良く数値化したものであるといえる。従ってユーザは、この集積率を見ることで、被検体内のRIの集積量を客観的に知ることができる。またユーザは、治療前の集積率A1と治療後の集積率A2とを比較することで、治療前と治療後とにおけるRI集積量を数字で客観的に評価することができる。
【0057】
また図5に示すように表示画面には、治療前の集積率A1と治療後の集積率A2との比Rが表示される。比Rは、治療前と治療後との間の吸収体量の差にはよらず、治療前と治療後との間のRI集積量の差のみによる。すなわちユーザは、比Rを参照することで、PET収集のFDG検査において良く利用されているSUV(standardized uptake value)のように、RIの集積率を半定量的に評価することができる。
【0058】
上記構成により本実施形態に係る核医学診断装置は、身体測定値によりSPECT画像を補正する。従ってユーザは、身体状態の経時的変化に伴うRI集積を過小あるいは過大評価することなく、RI集積の経時的変化等を精度良く診断することができる。かくして本実施形態は、核医学検査における画像診断精度の向上を実現する核医学診断装置及び画像処理装置の提供が可能となる。
【0059】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上本発明によれば、核医学検査における画像診断精度の向上を実現する核医学診断装置及び画像処理装置の提供を実現することができる。
【符号の説明】
【0061】
1…SPECT装置(核医学診断装置)、10…ガントリ、12…回転フレーム、14…検出器、16…天板、18…回転駆動部、20…コンピュータ装置、22…位置信号生成部、24…エネルギー信号生成部、26…データ収集部、28…収集制御部、30…前処理部、32…再構成処理部、40…画像処理装置、42…記憶部、44…RI投与量・収集条件補正部、46…身体測定値補正部、48…ROI設定部、50…集積率計算部、52…表示部、54…入力部、56…システム制御部、P…被検体、RA…回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内の放射性同位元素から放出されたガンマ線を検出する検出器と、
前記検出器からの出力に基づいて前記被検体内における前記放射性同位元素の濃度分布を表わす核医学画像のデータを生成する生成部と、
前記生成された核医学画像のデータを、前記被検体に含まれる前記ガンマ線の吸収体量に応じて変化する身体測定値に応じて補正する補正部と、
前記補正された核医学画像を表示する表示部と、
を具備する核医学診断装置。
【請求項2】
前記補正された核医学画像上の所定領域内の画素値に基づいて前記所定領域に関する前記放射性同位元素の集積率を計算する計算部をさらに備え、
前記表示部は、前記計算された集積率を表示する、
請求項1記載の核医学診断装置。
【請求項3】
前記補正部は、複数の身体測定値と前記複数の身体測定値に応じた前記ガンマ線の複数の吸収率とを関連付けたテーブルを保持し、前記被検体に関する身体測定値に前記テーブル上で関連付けられた特定の吸収率を特定し、前記特定された特定の吸収率で前記核医学画像を補正する、請求項1記載の核医学診断装置。
【請求項4】
被検体内の放射性同位元素から放出されたガンマ線を検出する検出器と、
前記検出器からの出力に基づいて第1の収集時刻における前記被検体に関する第1の核医学画像のデータを生成する生成部と、
前記第1の収集時刻より前の第2の収集時刻における前記被検体に関する第2の核医学画像のデータを記憶する記憶部と、
前記第1の収集時刻における前記被検体に関する第1の身体測定値に応じて前記第1の核医学画像を補正し、前記第2の収集時刻における前記被検体に関する第2の身体測定値に応じて前記第2の核医学画像を補正する補正部と、
前記補正された第1の核医学画像の所定領域における第1の平均画素値を計算し、前記補正された第2の核医学画像の所定領域における第2の平均画素値を計算する計算部と、
前記計算された第1の平均画素値と第2の平均画素値との比を表示する表示部と、
を具備する核医学診断装置。
【請求項5】
第1の収集時刻における被検体に関する第1の核医学画像のデータと、第2の収集時刻における前記被検体に関する第2の核医学画像のデータとを記憶する記憶部と、
前記第1の収集時刻における前記被検体に関する第1の身体情報に応じて前記第1の核医学画像を補正し、前記第2の収集時刻における前記被検体に関する第2の身体情報に応じて前記第2の核医学画像を補正する補正部と、
前記補正された第1の核医学画像の所定領域における第1の平均画素値を計算し、前記補正された第2の核医学画像の所定領域における第2の平均画素値を計算する計算部と、
前記計算された第1の平均画素値と第2の平均画素値とを表示する表示部と、
を具備する画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−47819(P2011−47819A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197157(P2009−197157)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】