説明

核酸の精製装置及び精製方法

【課題】レーザ吸収度の異なるビーズを用いる核酸の精製装置、及び前記装置を用いる核酸の精製方法を提供する。
【解決手段】試料導入口が形成されていて、試料導入口を通じて試料、磁性ビーズ及び固状支持体を収容する細胞溶解毛細管と、細胞溶解毛細管に装着されており、細胞溶解毛細管内で前記試料、前記磁性ビーズ、及び前記固状支持体の混合物を混合する振動器と、細胞溶解毛細管に装着されており、細胞溶解毛細管にレーザを供給するレーザ発生部と、細胞溶解毛細管に装着されており、磁性ビーズを細胞溶解毛細管の壁に固定させる磁気力発生部と、細胞溶解毛細管に装着されており、溶解液を放出する排出チャンバと、細胞溶解毛細管に装着されており、核酸が結合した固状支持体から核酸を溶出させる溶出バッファーチャンバと、細胞溶解毛細管に装着されており、溶出された核酸溶液を中和させる中和バッファーチャンバとを備える、細胞またはウイルスの核酸の精製装置、及びそれを用いた核酸の精製方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ吸収度の異なるビーズを用いる核酸の精製装置、及び前記装置を用いる核酸の精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞からのDNAの効率的な抽出は、多くの適用で必要であり、分子学的な診断、特に、病原菌の同定及び定量化に必須である。分子学的な診断は、一般的にDNA抽出工程後のDNA増幅によって行われる。DNA増幅反応には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR:Polymerase Chain Reaction)、リガーゼ連鎖反応、SDA(strand displacement amplification)法、核酸増幅、修復連鎖反応、ヘリカーゼ連鎖反応、QB複製酵素増幅、及び転写活性化連結が含まれる。
【0003】
細胞からのDNAの分離方法は、DNAを結合する傾向を有する物質を利用して行われた。DNAの分離のための物質の例は、シリカ、ガラスファイバ、陰イオン交換樹脂、及び磁性ビーズである(非特許文献1及び2参照)。手作業工程を避け、作業者の誤りを取り除くために、いくつかの自動化機械が大量DNA抽出のために開発されている。
【0004】
細胞溶解は、一般的に、機械的、化学的、熱的、電気的、超音波、及びマイクロウェーブ方法で行われる(非特許文献3参照)。
【0005】
レーザは、細胞の破壊に多くの長所を有し、LOC(Lab−On−a−Chip)によく適用されうる(非特許文献4参照)。
【0006】
特許文献1には、レーザ誘導された細胞溶解システムが記載されている。レーザのみを用いたとき、効果的な細胞溶解が起こらない。透明度の高い溶液内に入れた大腸菌を用いて実験した結果、レーザのみを照射した場合に、細胞溶解効率が低いということが確認されている。150秒間レーザを照射した後のDNA濃度は、3.77ng/μlであったが、これは、レーザエネルギーが効果的に細胞に伝達されなかったためである。一般的な加熱方法によって95℃で5分間沸騰させた後のDNA濃度は、6.15ng/μlである。
【0007】
特許文献2には、増加した組織修復のための、光を吸収するナノ粒子が記載されている。この特許は、一つ以上の波長で光を吸収する、直径が1ないし1000nmであるナノ粒子を、組織に運んで連結させ、前記ナノ粒子を、ナノ粒子によって吸収された一つ以上の波長の光に露出させることを含む、組織を連結する方法に関するものである。この方法は、レーザ及びナノ粒子を用いて細胞の機能のみを失わせる方法であり、細胞及び粒子を含む溶液を振動させて細胞を破壊する方法については記載されていない。
【0008】
従来から、固相を用いた核酸の精製方法が知られている。例えば、特許文献3には、固相に結合した核酸を用いた核酸の精製方法が開示されている。具体的には、前記方法は、出発物質、カオトロピック物質、及び固相に結合した核酸を混合する工程、前記核酸を有する固相を液体から分離する工程、及び前記固相核酸複合体を洗浄する工程を含む。
【特許文献1】米国特許公開2003/96429A1号明細書
【特許文献2】米国特許第6,685,730号明細書
【特許文献3】米国特許第5,234,809号明細書
【非特許文献1】Rudi,K.et al.、Biotechniques 22、506〜511(1997)
【非特許文献2】Deggerdal,A.et al.、Biotechniques 22、554〜557(1997)
【非特許文献3】Michael T.Taylor et al.、Anal.Chem.、73、492〜496(2001)
【非特許文献4】Huaina Li et al.、Anal Chem、73、4625〜4631(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献3に開示されている方法は、時間が長くかかり、複雑であり、それゆえLOCに適さない。また、この方法は、カオトロピック物質の使用の問題を有する。すなわち、カオトロピック物質を使用しない場合には、固相に核酸が結合しない。また、カオトロピック物質は、人体に有害な物質であるので注意して扱わなければならない。さらにカオトロピック物質は、PCRなどの後続の工程を妨害する物質として作用するので、核酸の精製中または精製後に、精製された核酸から除去しなければならない。
【0010】
LOCの実施のためには、細胞溶解後の核酸の精製工程が、効率的なPCR増幅のために必要とされる。しかし、従来の核酸の精製工程は、時間が長くかかり、別途の化学物質の使用の問題を有する。したがって、別途の化学物質を用いずに、迅速かつ効率的に核酸を精製する方法が求められている。
【0011】
本発明者らは、前記従来技術の問題点を解決するために鋭意研究を積み重ねた結果、レーザ吸収度の高い磁性ビーズを細胞溶解に用い、レーザ吸収度の低いシリコンビーズまたはシリコン基板を核酸精製に用いた場合、ビーズ間の異なるレーザ吸収度を利用することによって、核酸が効率的に精製されうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
したがって、本発明の目的は、レーザ吸収度の異なるビーズを用いた核酸の精製装置及び前記装置を用いた核酸の精製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的を達成するために、本発明の第一は、試料導入口が形成されていて、前記試料導入口を通じて試料、磁性ビーズ、及び固状支持体を収容する細胞溶解毛細管と、前記細胞溶解毛細管に装着されており、前記細胞溶解毛細管内で前記試料、磁性ビーズ、及び固状支持体を含む混合物を混合する振動器と、前記細胞溶解毛細管に装着されており、前記細胞溶解毛細管にレーザを供給するレーザ発生部と、前記細胞溶解毛細管に装着されており、磁性ビーズを前記細胞溶解毛細管の壁に固定させる磁気力発生部と、前記細胞溶解毛細管に装着されており、溶解液を排出する排水チャンバと、前記細胞溶解毛細管に装着されており、核酸が結合した固状支持体から核酸を溶出させる溶出バッファーチャンバと、前記細胞溶解毛細管に装着されており、前記溶出された核酸溶液を中和させる中和バッファーを供給する中和バッファーチャンバとを備える、細胞またはウイルスの核酸精製装置を提供する。
【0014】
本発明の第二は、細胞またはウイルスを含む溶液を、磁性ビーズ及び固状支持体を含む毛細管状の容器に注入する工程と、振動器を作動させて前記溶液、前記磁性ビーズ、及び前記固状支持体を混合する工程と、前記磁性ビーズにレーザを照射して細胞またはウイルスを破壊し、細胞またはウイルス溶解液中の化合物を前記磁性ビーズに結合させ、溶解液中の核酸を固状支持体に結合させる工程と、前記細胞またはウイルス溶解液中の化合物が結合した磁性ビーズを、磁気力発生部を通じて前記毛細管状の容器の壁に固定させる工程と、磁性ビーズが除去された前記溶解液を排出する工程と、前記固状支持体から核酸を溶出させ、中和する工程を含む、前記核酸精製装置を用いた核酸の精製方法である。
【0015】
本発明の第三は、細胞またはウイルスを含む溶液を、磁性ビーズ及び固状支持体を含む毛細管状の容器に注入する工程と、振動器を作動させて前記溶液、磁性ビーズ、及び固状支持体を混合する工程と、前記磁性ビーズにレーザを照射して細胞またはウイルスを破壊し、細胞またはウイルス溶解液中の化合物を前記磁性ビーズに結合させ、溶解液中の核酸を固状支持体に結合させる工程と、前記細胞またはウイルス溶解液中の化合物が結合した磁性ビーズを、磁気力発生部を通じて前記毛細管状の容器の壁に固定させる工程と、磁性ビーズが除去された前記溶解液を排出する工程と、前記溶解液中の核酸が結合した固状支持体から核酸を溶出させ中和する工程と、前記磁性ビーズ及び前記固状支持体が除去された溶液を得、前記溶液を、前記毛細管状の容器及び増幅チャンバを連結する流路を通して増幅チャンバに移送して増幅を行う工程を含む、前記核酸精製装置を用いて核酸の精製及び増幅を連続的に行う方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の方法によれば、PCR阻害剤が除去されてPCR収率を高めることができ、シリコン基板またはシリカビーズを用いて核酸精製が可能である。それゆえ、本発明の方法はLOCの製作に応用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付された図面を参照して本発明をさらに詳細に説明する。
【0018】
本発明の細胞またはウイルスの核酸精製装置は、試料導入口が形成されていて、前記試料導入口を通じて試料、磁性ビーズ及び固状支持体を収容する細胞溶解毛細管と、前記細胞溶解毛細管に装着されており、前記細胞溶解毛細管内で前記試料、磁性ビーズ、及び固状支持体を含む混合物を混合する振動器と、前記細胞溶解毛細管に装着されており、前記細胞溶解毛細管にレーザを供給するレーザ発生部と、前記細胞溶解毛細管に装着されており、前記磁性ビーズを前記細胞溶解毛細管の壁に固定させる磁気力発生部と、前記細胞溶解毛細管に装着されており、溶解液を排出する排水チャンバと、前記細胞溶解毛細管に装着されており、核酸が結合した固状支持体から核酸を溶出させる溶出バッファーチャンバと、前記細胞溶解毛細管に装着されており、前記溶出した核酸溶液を中和させる中和バッファーを供給する中和バッファーチャンバとを備える。
【0019】
ビーズの種類によってレーザを吸収する能力が異なる。磁性ビーズはレーザを吸収するが、シリカビーズまたはシリコン基板などの固状支持体は、近赤外線波長のレーザを吸収せずに通過させる。したがって、二つのビーズ間にレーザ吸収度の差異が生じ、これにより、熱吸収度の差異が生じる。よって、磁性ビーズは細胞溶解に使用され、シリカビーズまたはシリコン基板などの固状支持体は、核酸精製に使用される。
【0020】
本発明の装置において、試料導入口を通じて投入された試料、磁性ビーズ、及び核酸の捕捉のための固状支持体が細胞溶解毛細管内で混合され、ここにレーザを照射すれば、細胞が溶解する。細胞溶解毛細管は、レーザビームを通過させうる材質で形成されうるか、またはそのような材質で形成されたウィンドウを有しうる。前記細胞溶解毛細管は、直径と長さの比率が1:2〜1:50であり、直径が1nm〜5mmでありうる。前記細胞溶解毛細管は、磁性ビーズが効果的に固定される材質でなければならない。そのような材質の例は、重合体、有機物質、ケイ素、ガラス、及び金属を含む。
【0021】
振動器は、細胞溶解毛細管内で試料、磁性ビーズ、及び固状支持体を混合する装置であって、振動できるものであれば、いかなる装置でも適用可能である。
【0022】
レーザ発生部は、前記細胞溶解毛細管にレーザビームを照射する装置であって、特定の波長の光を放出しうる。レーザ出力が低すぎる場合、効率的にレーザアブレーション現象を起こすことができない。レーザ出力は、連続波動(CW:Continuous Wave)レーザの場合10mW〜300Wであり、パルスレーザの場合1mJ/パルス〜1J/パルスである。望ましくは、前記パルスレーザの出力が32mJ/パルス〜1J/パルスであり、CWレーザの出力が10W〜300Wである。CWの出力が10mW未満であり、パルスレーザの出力が1mJ/パルス未満の場合、細胞を破壊するための十分なエネルギーが伝達されない。CWの出力が300Wを超え、パルスレーザの出力が1J/パルスを超える場合、DNAが損傷する。
【0023】
PCR阻害剤が結合した磁性ビーズは自然に毛細管の壁に付着するが、一部の磁性ビーズは、付着し難い。それゆえ、磁気力発生部は、このような磁性ビーズを確実に毛細管の壁に固定させるために磁気力を供給する装置である。
【0024】
排水チャンバは、PCR阻害剤が磁性ビーズに結合し、核酸が固相に結合した後、細胞溶解毛細管内に存在する細胞溶解液を排出するチャンバである。前記細胞溶解液中には、PCR阻害剤が多く存在するため、これを除去するために前記排水チャンバを通じて排出する。
【0025】
排水チャンバを通じて細胞溶解液が排出された後、毛細管の下部には、核酸が結合した固状支持体が残る。溶出バッファーチャンバは、前記核酸が結合した固状支持体から核酸を分離するために、溶出バッファーを供給するチャンバである。溶出バッファーとしては、例えば、NaOH溶液を含む。
【0026】
前記溶出された核酸は、溶出バッファーの高いpHによって変性されて不安定であるため、中和バッファーチャンバは、前記核酸を安定化させるために中和バッファーを供給するチャンバである。中和バッファーとしては、例えば、トリスバッファーを含む。
【0027】
図1は、レーザ及び磁性ビーズを用いた細胞溶解の後、PCR阻害剤が付着した磁性ビーズの層、及び核酸が結合した固状支持体の層が分離するシステムの一実施形態を示す模式図である。図1に示したように、細胞が溶解した後、PCR阻害剤が付着した磁性ビーズは、レーザ吸収によって沸き上がって毛細管の上部に付着する。シリカビーズまたはシリコン基板のようなレーザを通過させる固状支持体は、細胞溶解物から分離した核酸を捕捉し、毛細管の下部に位置する。結果として、層分離が起こる。
【0028】
本発明の一実施形態において、前記振動器は、超音波発生器、磁場を利用した振動器、電場を利用した振動器、ボルテックスなどの機械式振動器、または圧電物質を含みうる。振動器は、細胞溶解毛細管に装着されており、細胞またはウイルス、磁性ビーズ、及び固状支持体の混合物を振動させうるものならば、いかなる装置でも可能である。
【0029】
本発明の一実施形態において、前記磁気力発生部は、レーザの通路の上部に位置し、前記細胞溶解毛細管内の磁性ビーズが沸騰するときに電源が入る電磁石であることが望ましい。図1に示したように、前記電磁石は、レーザの通路の上部に位置しなければならないが、これは、レーザの通路内に位置すると、磁性ビーズがPCR阻害剤を吸着する前に電磁石に付着して、PCR阻害剤の吸着の効果が減少するためである。電磁石は、細胞溶解毛細管内の磁性ビーズが沸騰するとき、電源が入ることが望ましい。磁性ビーズが沸騰する前に、電磁石の電源が入っていても、磁性ビーズ及び電磁石は空間的に分離されているため、磁性ビーズに磁気力の影響が及ばず、磁性ビーズが電磁石に付着できない。加えて、電磁石で除去するためには、ビーズは磁性を有さなければならない。
【0030】
本発明の一実施形態において、前記細胞溶解毛細管と、弁によって開閉される流路を通して連結されているDNA増幅チャンバをさらに備えうる。LOCの実施のためには、精製されたDNAを増幅するシステムが必要である。精製されたDNAは、分光光度計を利用する方法、マイクロ磁性ビーズを利用する方法、電気化学的な方法、電気化学発光法、放射線及び蛍光標識を利用する方法、リアルタイムPCR法などを用いて検出されうる。所望のDNAを十分に増幅するためには、PCR法が最も適している。他のDNAの増幅方法が適用されてもよく、リアルタイムPCR法による直接検出も可能である。
【0031】
本発明の一実施形態において、前記細胞溶解毛細管と前記DNA増幅チャンバとの間の流路内に位置し、前記固状支持体を濾過する膜をさらに含みうる。核酸を捕捉するために使われる固状支持体が、溶出バッファーによって核酸を溶出した後には、核酸のみがDNA増幅チャンバに移動し、固状支持体は除去されなければならない。したがって、核酸が溶出した固状支持体を取り除き、溶出した核酸のみをDNA増幅チャンバに移動させるためには、固状支持体を濾過する膜が必要である。前記膜は、核酸は通過させ、固状支持体を濾過できるものであれば、特に制限されない。
【0032】
本発明の一実施形態において、前記毛細管に装着され、核酸が結合した固状支持体を洗浄する洗浄バッファーチャンバをさらに備えうる。細胞またはウイルスが溶解した後、PCR阻害剤の一部は、磁性ビーズに結合し、磁性ビーズは磁気力発生部に付着して除去され、核酸は固状支持体に付着する。次いで、排水チャンバを通して細胞溶解液を排出した後、核酸が結合している残留した固状支持体を洗浄して、固状支持体に残っている不純物を除去する工程が必要である。前記工程を経れば、核酸はさらに精製され、DNA増幅効率が改良される。洗浄バッファーの例としては、固状支持体から核酸を溶出させずに、不純物を除去できるリン酸緩衝生理食塩水(PBS:Phosphate Buffered Saline)を含むが、これに制限されない。
【0033】
また本発明は、細胞またはウイルスを含む溶液を、磁性ビーズ及び固状支持体を含む毛細管状の容器に注入する工程と、振動器を作動させて前記溶液、前記磁性ビーズ、及び前記固状支持体を混合する工程と、前記磁性ビーズにレーザを照射して細胞またはウイルスを破壊し、細胞またはウイルス溶解液中の化合物を前記磁性ビーズに結合させ、溶解液中の核酸を固状支持体に結合させる工程と、前記細胞またはウイルス溶解液中の化合物が結合した磁性ビーズを、磁気力発生部を通じて前記毛細管状の容器の壁に固定させる工程と、磁性ビーズが除去された前記溶解液を排出する工程と、前記固状支持体から核酸を溶出させ、中和する工程を含む、前記核酸精製装置を用いて核酸を精製する方法に関する。
【0034】
本発明の方法において、ビーズの異なる種類の、レーザを吸収する能力の差異が利用される。磁性ビーズは、レーザを吸収するが、シリカビーズまたはシリコン基板などの固状支持体は、近赤外線波長のレーザを吸収せずに通過させる。したがって、二つのビーズ間のレーザ吸収度の差異が生じる。そのため磁性ビーズは細胞溶解に利用され、シリカビーズまたはシリコン基板などの固状支持体は核酸精製に利用される。
【0035】
この方法において、前記試料、前記磁性ビーズ、及び前記固状支持体は細胞溶解毛細管に注入され、振動器を用いてこれらを混合する間、レーザが照射される。磁性ビーズはレーザを吸収して、細胞またはウイルスを破壊する。レーザによって沸き上がった磁性ビーズは、PCR阻害剤を捕捉し、自然に毛細管の壁に付着するか、または磁気力発生部によって毛細管の壁に付着する。細胞溶解液中の核酸は、シリカビーズまたはシリコン基板などの固状支持体に結合し、毛細管の下部に位置する。次いで、核酸が結合した固状支持体のみが細胞溶解毛細管内に残るが、溶解液は排水チャンバを通して排出される。核酸が結合した固状支持体は、洗浄バッファーを用いて洗浄され、PCR阻害剤をさらに除去する。固状支持体に結合した核酸は、溶出バッファーを用いて溶出され、さらに核酸を精製するために、変性された核酸は中和バッファーを用いて中和される。得られた核酸溶液を、核酸を増幅するために増幅チャンバに移動させる。
【0036】
磁性ビーズを含む溶液にレーザを照射すれば、磁性ビーズがレーザアブレーションが起こり、衝撃波、蒸気圧、及び熱が細胞の表面に伝達される。このとき、物理的衝撃も細胞表面に加えられる。レーザアブレーションとは、レーザビームが照射された物質に発生する一般的な現象を総称する。レーザアブレーションによって、素材の表面の温度は、数百から数千度まで急速に上昇する。物質表面の温度が蒸発点以上に上昇すれば、液層の物質の蒸発と共に、表面での飽和蒸気圧が急速に上昇する。
【0037】
レーザによって加熱された磁性ビーズは、溶液の温度を上げ、細胞を直接破壊する。溶液中の磁性ビーズは、単純な熱伝導体として存在するものではなく、熱的、機械的、及び物理的影響を細胞の表面に与え、それにより細胞の表面を効果的に破壊する。破壊された細胞またはウイルスの溶解液は、PCRを妨害する化合物を含む。したがって、PCRを効率的に行うためには、前記溶解液からPCR阻害剤を除去する工程が必要であるが、これは、LOCを効率的に実施することに適していない。本発明の方法において、PCR阻害剤が付着した磁性ビーズを、磁気力発生部を通じて細胞溶解毛細管の壁に固定させ、核酸は、固状支持体に結合させることによってさらに効率的に精製され、PCRを容易にする。
【0038】
具体的には、変性された蛋白質及ぶ細胞の残骸などのPCR阻害剤が付着した磁性ビーズは、レーザによって沸き上がって容器の壁の上部に付着し、容器の下部には、磁性ビーズのない核酸が結合した固状支持体層が存在するので、PCR阻害剤が容易に除去される。この層分離は制限的な直径を有する毛細管でさらに効率的に起こる。固定された電磁石または永久磁石は、分離された層をさらに確実に固定すると共に、固定化領域を指定するために使われうる。
【0039】
また本発明は、細胞またはウイルスを含む溶液を、磁性ビーズ及び固状支持体を含む毛細管状の容器に注入する工程と、振動器を作動させて前記溶液、前記磁性ビーズ、及び前記固状支持体を混合する工程と、前記磁性ビーズにレーザを照射して細胞またはウイルスを破壊し、細胞またはウイルス溶解液中の化合物を前記磁性ビーズに結合させ、溶解液中の核酸を固状支持体に結合させる工程と、前記細胞またはウイルス溶解液中の化合物が結合した磁性ビーズを、磁気力発生部を通じて前記毛細管状の容器の壁に固定させる工程と、磁性ビーズが除去された前記溶解液を排出する工程と、前記溶解液中の核酸が結合した固状支持体から核酸を溶出させ中和する工程と、前記磁性ビーズ及び前記固状支持体が除去された溶液を得、前記溶液を、前記毛細管状の容器及び増幅チャンバを連結する流路を通して増幅チャンバに移送して増幅を行う工程を含む、前記核酸精製装置を用いて核酸の精製及び増幅を連続的に行う方法に関する。
【0040】
LOCを実施するためには、核酸の分離、精製、及び増幅を連続して行う必要がある。したがって、精製されたDNA溶液を、前記毛細管状の容器及び増幅チャンバを連結する流路を通して増幅チャンバに直ちに移送して核酸を増幅することにより、前記目的は達成される。核酸の増幅チャンバへの移送は、機械的な力を用いたポンプなどによって行われうる。
【0041】
本発明の一実施形態において、前記レーザは、パルスレーザまたはCWレーザを含みうる。
【0042】
低すぎるレーザ出力では、効率的にレーザアブレーション現象は起こらない。レーザ出力は、CWの場合10mW〜300Wであり、パルスレーザの場合1mJ/パルス〜1J/パルスである。望ましくは、前記パルスレーザが32mJ/パルス〜1J/パルスの出力を有し、CWレーザが10W〜300Wの出力を有する。CWの出力が10mW未満であり、パルスレーザの出力が1mJ/パルス未満の場合、細胞を破壊するための十分なエネルギーが伝達されない。CWの出力が300Wを超え、パルスレーザの出力が1J/パルスを超える場合、DNAが損傷する。
【0043】
本発明の一実施形態において、前記レーザは、磁性ビーズがレーザを吸収する特定の波長帯で発生するものでなければならない。前記レーザは、750nm以上の波長帯で発生することが望ましく、さらに望ましくは、750nm〜5000nmの波長帯で発生することが望ましい。750nm未満の波長では、シリカビーズによるレーザアブレーションが増加し、5000nmを超す波長では、溶液によるレーザアブレーションが増加する。それゆえ、レーザアブレーションでの明確な差異が得られない。また、前記レーザは、一つ以上の波長帯で発生しうる。すなわち、レーザは、前記波長範囲内の一つの波長、または相異なる2つ以上の波長であってもよい。
【0044】
本発明の一実施形態において、前記磁性ビーズの大きさが50nm〜1,000μmであることが望ましく、さらに望ましくは、前記磁性ビーズの大きさは、1〜50μmである。磁性ビーズの大きさが50nm未満であれば、物理的及び機械的衝撃が細胞溶解を引き起こすのに不十分である。1,000μmを超えれば、LOCに適さない。また、前記磁性ビーズは、2つ以上の大きさを有する磁性ビーズの混合物であってもよい。すなわち、前記磁性ビーズは、互いに同じ大きさでもよく、相異なる大きさの磁性ビーズの混合物であってもよい。
【0045】
本発明の一実施形態において、前記毛細管状の容器は、直径と長さの比率が1:2〜1:50であり、直径は1nm〜5mmでありうる。磁性ビーズを含む層は、ガラス壁の表面に非特異的に結合するが、これは、制限的な直径を有する毛細管で効率的に起こる。したがって、直径が前記範囲を外れた容器の場合には、層分離が難しくなって精製効果が低下する。
【0046】
本発明の一実施形態において、前記容器の材質は、重合体、有機物質、ケイ素、ガラス、及び金属からなる群より選択されうる。前記容器は、ビーズが固定されうるいかなる材質でも適用可能である。
【0047】
なお、前記毛細管状の容器として、前記細胞溶解毛細管を用いることもできる。
【0048】
本発明の一実施形態において、前記磁性ビーズは磁性を帯びるいかなるものでも適用可能である。特に、強磁性を帯びる金属であるFe、Ni、Cr、及びその酸化物からなる群より選択される少なくとも1つの物質を含むことが望ましい。
【0049】
本発明の一実施形態において、前記磁性ビーズは、強磁性を帯びる金属でコーティングされた重合体、有機物質、ケイ素、またはガラスでありうる。
【0050】
本発明の一実施形態において、前記磁性ビーズの表面は、DNAが付着しない負電荷を帯びている構造になっていることが望ましい。前記負電荷は、例えば、COOでありうる。DNAは負電荷を帯びているため、反発力によって、負電荷を帯びていた磁性ビーズの表面にDNAは付着しない。磁性ビーズの表面にDNAが付着すれば、細胞が破壊された後で磁性ビーズからDNAを分離することが難しくなり、DNAの精製がより難しくなる。
【0051】
本発明の一実施形態において、前記細胞またはウイルスを含む溶液は唾液、尿、血液、血清、及び細胞培養液からなる群より選択されうる。前記細胞またはウイルスを含む溶液は、動物細胞、植物細胞、バクテリア、ウイルス、ファージなど、核酸を有するいかなるものでも適用可能である。
【0052】
本発明の一実施形態において、前記固状支持体は、シリカビーズ、シリコン基板、ゲルマニウム、ダイヤモンド、水晶、シリコンなどを含みうる。前記固状支持体は、近赤外線波長のレーザを全く吸収しないか、またはほんの少し吸収するものでなければならず、核酸を結合できるものであれば、いかなるものでも適用可能である。望ましくは、シリカビーズまたはシリコン基板が使われる。前記シリカビーズの大きさは、50nm〜1,000μmであり、望ましくは、1〜50μmである。シリカビーズの大きさが50nm未満であれば、製造コストが増加する。1,000μmを超えれば、LOCに適さない。
【0053】
本発明の一実施形態において、前記シリカビーズが2つ以上の大きさを有するシリカビーズの混合物でありうる。すなわち、前記シリカビーズは、同じ大きさであってもよく、相異なる大きさのシリカビーズの混合物であってもよい。核酸が負電荷を帯びていることから、静電的な相互作用によって核酸を固状支持体に結合させるために、シリカビーズの表面は、正電荷を帯びた物質でコーティングされうる。正電荷を帯びる物質は、例えば、ベタイン、アミノ基などである。図2Aは、核酸を捕捉している、ベタインでコーティングされたシリカビーズの模式図である。
【0054】
本発明の一実施形態において、前記シリコン基板は、例えば、柱状またはシリカビーズが固定されている構造でありうる。これらの構造は、通常のシリコン基板より表面積が増大するので、より多くの核酸がシリコン基板に結合しうる。図2Bは、核酸を捕捉している、ベタインでコーティングされた柱状のシリコン基板の模式図である。シリコン基板の小片を、シリカビーズの代用にするか、またはシリコン基板を用いて毛細管の壁が製造されうる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を通して本発明をさらに詳細に説明する。これら実施例は、本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲はこれら実施例によって制限されるものではない。
【0056】
実施例1:本発明の装置及び方法を用いた核酸の精製
本発明の核酸の精製装置及び精製方法を用いて、組み換えB型肝炎ウイルス(rHBV)から核酸を精製した。具体的には、図1に示したように、組み換えB型肝炎ウイルス(rHBV)(30μl)、血清(5μl)、PBS(25μl)、ベタインでコーティングされたシラン化シリカビーズ(30μl)、及びマイクロ磁性ビーズ(30μl、Dynabeads(登録商標)M−270 Carboxylic Acid、ノルウェー、DYNAL社製)をLightcycler毛細管(内径:2.42mm、高さ:35.40mm、内径:高さの比率=1:14.63)内で混合した。毛細管をボルテキシングで攪拌しつつ、ウイルスを破壊するために、15秒間808nm、21.1W(HLU25F100−808、ドイツ、LIMO社製)の高出力レーザビームを照射した。ウイルス溶解後に、ウイルス溶解液を、排水ポンプを通して排出し、核酸を捕捉したシリカビーズを0.1MPBSバッファー120μlで洗浄した。次いで、0.1NNaOH溶液30μlを用いてシリカビーズから核酸を溶出させ、1Mのトリスバッファー(pH7)1μlで溶出された核酸を中和させ、PCR増幅に使用した。
【0057】
PCRを以下のプライマーを用いて実施した:プライマーTMP5−F(配列番号1)、及びプライマーTMP5−R(配列番号2)。このプライマー対は、B型肝炎ウイルス(HBV)ゲノムの2,269〜2,387ヌクレオチドに該当する部位であった。PCR増幅は、Taq重合酵素(韓国、Takara社製)を用いて40サイクル(50℃で10分及び95℃で1分間予備変性、95℃で5秒間変性、62℃で15秒間アニーリング及び伸張)行った。増幅されたDNAは、市販のDNA500アッセイサイジングの試薬セットを用いて、Agilent BioAnalyzer 2100(カリフォルニア州パロアルト、Agilent Technologies社製)で分析した。
【0058】
図3は、DNA精製方法を変えたときの、PCR産物の電気泳動の結果を示す図である。上部の矢印は、所望のPCR産物に該当するバンドを示し、下部の矢印は、PCR副産物として生成する、PCRプライマーのダイマーを示す。レーン1及び2は、本発明の方法によって核酸を精製した後にPCRを実施したものであり、レーン3ないし5は、PCR陽性コントロールとして、Qiagen Ultrasenseキットを用いて核酸を精製した後にPCRを実施したものである。レーン6は、PCR陰性コントロールとして、蒸溜水のみを用いてPCRを行ったものである。各試料の組成は、下記の表の通りである。
【0059】
【表1】

【0060】
図3から分かるように、陰性コントロール(レーン6)には、予想したようにPCR産物が観察されなかったが、本発明の方法によって核酸を精製した後にPCRを実施した場合(レーン1及び2)には、所望の位置(100bp)にPCR産物が観察された。Qiagen Ultrasenseキットを用いて核酸を精製した後にPCRを実施した場合(レーン3ないし5)にも、PCR産物が観察された。このことから、精製に長い時間及び多くの工程が必要とされる、陽性コントロールであるQiagen Ultrasenseキットを用いてDNAを精製した場合、及び本発明の方法は、同様のPCR増幅効率を示すということが分かる。本発明の方法は、DNA精製に通常利用されるQiagen法に比べて、短時間及び少ない工程で、PCRの阻害なしにPCRが効果的に行われるので、LOCに有効に適用されうる。
【0061】
図4は、DNA精製方法を変えたときの、増幅されたPCR産物の濃度を示すグラフである。縦軸は増幅されたDNA濃度(ng/μl)を表す。PCR産物の量は、Agilent BioAnalyzer 2100を用いて定量化された。試料1及び2は、本発明の方法によって核酸を精製した後にPCRを実施したものであり、試料3ないし5は、PCR陽性コントロールとして、Qiagen Ultrasenseキットを用いて核酸を精製した後にPCRを実施したものであり、試料6は、PCR陰性コントロールとして、蒸溜水のみを用いてPCRを行ったものである。各試料の組成は、前記表の通りである。図4に示したように、本発明の方法を用いたPCRの結果は、Qiagen Ultrasenseキットを用いた結果と同様であるか、または優れている。
【0062】
図5は、PCRにより生成したダイマーの濃度を示すグラフである。縦軸は、ダイマーの濃度(ng/μl)を表す。ダイマーの量は、Agilent BioAnalyzer 2100を用いて定量化された。各試料番号は、前記図4のものと同一である。ダイマーは、PCR副産物である。一般的に、PCRの結果が良ければ、所望のPCR産物の濃度は増加し、ダイマーの濃度は減少する。PCRの結果が悪ければ、所望のPCR産物の濃度は減少し、ダイマーの濃度は増加する。したがって、鋳型DNAが精製されるほど所望のPCR産物の濃度は増加し、ダイマーの濃度は減少する。図5に示したように、本発明の方法(試料1及び2)は、Qiagen法(試料3ないし5)に比べてダイマーの量が少なく、これは、本発明の方法がQiagen法に比べて、より効果的に精製されたPCR増幅用の鋳型DNAを生成させるということを示している。したがって、本発明の方法を最適化することにより、さらに良好なPCR収率が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、核酸の精製装置及び精製方法に関連した技術分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】レーザ及び磁性ビーズを用いた細胞溶解の後、PCR阻害剤が付着した磁性ビーズ層及び核酸が結合した固状支持体層が分離されているシステムの、一実施形態を示す模式図である。
【図2A】ベタインでコーティングされているシリカビーズに、核酸が捕捉されていることを示す模式図である。
【図2B】ベタインでコーティングされている柱状のシリコン基板に、核酸が捕捉されていることを示す模式図である。
【図3】DNAの精製方法を変えたときの、PCR産物の電気泳動の結果を示す図である。
【図4】DNAの精製方法を変えたときの、増幅されたPCR産物の濃度を示すグラフである。
【図5】PCRによって生成したダイマーの濃度を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料導入口が形成されていて、前記試料導入口を通じて試料、磁性ビーズ、及び固状支持体を収容する細胞溶解毛細管と、
前記細胞溶解毛細管に装着されており、前記細胞溶解毛細管内で前記試料、前記磁性ビーズ、及び前記固状支持体を含む混合物を混合する振動器と、
前記細胞溶解毛細管に装着されており、前記細胞溶解毛細管にレーザを供給するレーザ発生部と、
前記細胞溶解毛細管に装着されており、磁性ビーズを前記細胞溶解毛細管の壁に固定させる磁気力発生部と、
前記細胞溶解毛細管に装着されており、溶解液を排出する排水チャンバと、
前記細胞溶解毛細管に装着されており、核酸が結合した固状支持体から核酸を溶出させる溶出バッファーチャンバと、
前記細胞溶解毛細管に装着されており、溶出された核酸溶液を中和させる中和バッファーを供給する中和バッファーチャンバと、
を備える細胞またはウイルスの核酸精製装置。
【請求項2】
前記振動器は、超音波発生器、磁場を利用した振動器、電場を利用した振動器、機械式振動器、及び圧電物質からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記磁気力発生部は、レーザ通路の上部に位置し、前記細胞溶解毛細管内の磁性ビーズが沸騰するとき、電源が入る電磁石であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記細胞溶解毛細管と弁によって開閉される流路を通して連結されているDNA増幅チャンバをさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記細胞溶解毛細管と前記DNA増幅チャンバとの間の流路内に位置し、前記固状支持体を濾過する膜をさらに備えることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記毛細管に装着されて、核酸が結合した固状支持体を洗浄する洗浄バッファーチャンバをさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
細胞またはウイルスを含む溶液を、磁性ビーズ及び固状支持体を含む毛細管状の容器に注入する工程と、
振動器を作動させて前記溶液、前記磁性ビーズ、及び前記固状支持体を混合する工程と、
前記磁性ビーズにレーザを照射して細胞またはウイルスを破壊し、細胞またはウイルス溶解液中の化合物を前記磁性ビーズに結合させ、溶解液中の核酸を固状支持体に結合させる工程と、
前記細胞またはウイルス溶解液中の化合物が結合した磁性ビーズを、磁気力発生部を通じて前記毛細管状の容器の壁に固定させる工程と、
磁性ビーズが除去された前記溶解液を排出する工程と、
前記固状支持体から核酸を溶出させ、中和する工程と、
を含む、請求項1に記載の核酸精製装置を用いた核酸の精製方法。
【請求項8】
細胞またはウイルスを含む溶液を、磁性ビーズ及び固状支持体を含む毛細管状の容器に注入する工程と、
振動器を作動させて前記溶液、前記磁性ビーズ、及び前記固状支持体を混合する工程と、
前記磁性ビーズにレーザを照射して細胞またはウイルスを破壊し、細胞またはウイルス溶解液中の化合物を前記磁性ビーズに結合させ、溶解液中の核酸を前記固状支持体に結合させる工程と、
前記細胞またはウイルス溶解液中の化合物が結合した磁性ビーズを、磁気力発生部を通じて前記毛細管状の容器の壁に固定させる工程と、
磁性ビーズが除去された前記溶解液を排出する工程と、
前記溶解液中の核酸が結合した固状支持体から核酸を溶出させ、中和する工程と、
前記磁性ビーズ及び前記固状支持体が除去された溶液を得、前記溶液を、前記毛細管状の容器及び増幅チャンバを連結する流路を通して増幅チャンバに移送して増幅を行う工程と、
を含む、請求項4に記載の核酸精製装置を用いて核酸の精製及び増幅を連続的に行う方法。
【請求項9】
前記溶解液の排出工程後に、前記核酸が結合した固状支持体を洗浄し、洗浄液を排出する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記レーザは、パルスレーザまたは連続波動レーザを含むことを特徴とする、請求項7または8に記載の方法。
【請求項11】
前記パルスレーザが1mJ/パルス〜1J/パルスの出力を有し、前記連続波動レーザが10mW〜300Wの出力を有することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記レーザは、750nm〜5000nmの波長帯で発生することを特徴とする、請求項7または8に記載の方法。
【請求項13】
前記レーザは、一つ以上の波長帯で発生することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記磁性ビーズの大きさは、50nm〜1,000μmであることを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
【請求項15】
前記磁性ビーズは、2つ以上の大きさを有するビーズの混合物であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記毛細管状の容器は、直径と長さの比率が1:2〜1:50であることを特徴とする、請求項7または8に記載の方法。
【請求項17】
前記毛細管状の容器は、直径が1nm〜5mmであることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記毛細管状の容器の材質は、重合体、有機物質、ケイ素、ガラス、及び金属からなる群より選択されることを特徴とする、請求項7または8に記載の方法。
【請求項19】
前記磁性ビーズは、強磁性を帯びる金属であるFe、Ni、Cr、及びその酸化物からなる群より選択される1つ以上の物質を含むことを特徴とする、請求項7または8に記載の方法。
【請求項20】
前記磁性ビーズは、強磁性を帯びる金属でコーティングされた重合体、有機物質、ケイ素、またはガラスであることを特徴とする、請求項7または8に記載の方法。
【請求項21】
前記磁性ビーズの表面が、負電荷を帯びることを特徴とする、請求項7または8に記載の方法。
【請求項22】
前記細胞またはウイルスを含む溶液は、唾液、尿、血液、血清、及び細胞培養液で構成された群から選択されることを特徴とする、請求項7または8に記載の方法。
【請求項23】
前記固状支持体は、シリカビーズ、シリコン基板、ゲルマニウム、ダイヤモンド、水晶、及びシリコンからなる群より選択されることを特徴とする、請求項7または8に記載の方法。
【請求項24】
前記シリカビーズの大きさは、50nm〜1,000μmであることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記シリカビーズは、2つ以上の大きさを有するシリカビーズの混合物であることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記シリカビーズの表面が、正電荷を帯びる物質でコーティングされていることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記シリコン基板は、柱状またはシリカビーズが固定されている構造であることを特徴とする、請求項23に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−149386(P2006−149386A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−339501(P2005−339501)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】