核酸フラグメントの二次元鎖数依存及び長さ依存分離
一本鎖及び二本鎖核酸分子をそれらの鎖数及び長さに基づいて分離する方法が提供される。本方法は新規な二次元ゲル電気泳動技術に基づき、核酸分子のサンプルをゲル電気泳動装置にロードしそして前記サンプルをゲルマトリックスを通し第1組の予め定めた電気泳動条件下で第1次元において電気泳動すること;前記ゲルマトリックスを第2組の電気泳動条件下で第2次元において電気泳動すること;を包含し、これにより一本鎖と二本鎖核酸の集団が分離し、前記の第1及び第2電気泳動条件は相異し、これにより一方の次元においては電気泳動はサンプル分子を鎖数及び長さに基づいて分離し、そして他方の次元においては電気泳動は実質的に長さに基づいて分離し、ここで前記相異は核酸の鎖数依存電気泳動の泳動速度に影響を与える化学的作用因子及び/又は物理的パラメータによって確立される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸フラグメント(DNA、RNA及びDNA/RNAハイブリッド)の単純及び複合(simple and complex)調製物をスクリーニングする分野のものである。本方法は一本鎖及び二本鎖フラグメントを長さに依存した様式で分離する。各群においてフラグメントはそれらの長さに従って分離される。分離後、フラグメントを単離し、そしてさらに特長付けすることができる。適用例には以下が含まれるがこれらに限定されない:I)複合核酸サンプルの再結合効率の推定、II)一本鎖切断を含有するDNAフラグメントの検出及び単離、III)生物学的サンプル中の一本鎖及び二本鎖核酸両方の量及び長さ分布の推定、IV)PCR産物及び他のインビトロ増幅産物を含む核酸調製物の品質評価、及びVI)複合混合物中のcDNA合成効率及びRNA:DNAハイブリッド存在の推定。
【背景技術】
【0002】
核酸は、それらの鎖数(strandness)に従って、一本鎖(ss)又は二本鎖(ds)分子を包含する2つの主な群に分けられる。RNA分子はたいてい一本鎖であるが、ポリマー鎖の局所的な折りたたみの結果異なる種類の鎖内二重鎖を生じ得る。DNA分子は通常二本鎖であり、これらの鎖は相補的で、そして二重らせんを形成している。二本鎖核酸分子は、2本の鎖の間の可逆的な非共有相互作用によって形成される。核酸鎖の相補的結合の可逆性は、遺伝材料の半保存的複製及び遺伝子発現のために決定的に重要である。
【0003】
インビトロでの核酸分析は、しばしばそれらの鎖数を頼りにしている。例えば、核酸再結合(renaturation)の測定は一本鎖型から二本鎖型への遷移をモニターする能力に依存する。さらに、二重らせんの可逆性のため、インビトロ条件が二本鎖核酸分子から一本鎖分子への転換、又はその逆を容易にすることもある。再結合は分子生物学の多くの異なる方法(例えばハイブリダイゼーション、PCR及びcDNA均等化)において重要なステップである。そのため、核酸調製物の鎖数を推定する単純且つ効率のよい方法は、非常に重要である。
【0004】
一本鎖及び二本鎖核酸を両者の複合混合物から量の推定又は分離/単離するためのいくつかの方法が記載されてきた。変性又は再生の間、一本鎖型と二本鎖型の間の遷移は、淡色効果のためUV光吸収変化の観察によってモニターできる。アクリジンオレンジの蛍光の赤対緑の比率は一本鎖及び二本鎖核酸のレベルを反映するが、この比率は例えば塩濃度及び色素対核酸の比率のような因子にも依存する(McMasterとCarmichael、1977;Spano、Bondeら、2000)。これらの2方法は一本鎖型と二本鎖型の間の比率を推定させ得るのみで、これらを使用してどちらの分画も物理的に分離及び単離することはできない。またこれらを使用して複合調製物中の核酸フラグメントの鎖数と長さとの相関を分析することもできない。一本鎖核酸に勝る二本鎖核酸のヒドロキシアパタイトに対する強い結合優先は、一本鎖と二本鎖核酸の物理的分離を可能にする(SambrookとRussell、2001)。強いヒドロキシアパタイト結合に基づいて単離される二本鎖分画は、部分的に一本鎖であるか、又は完全に一本鎖だが局所的折りたたみを有することにより二本鎖構造(例;ヘアピン)を形成するフラグメントも含有することがある。一本鎖核酸のヌクレアーゼ分解は、一本鎖型と二本鎖型を両者の複合混合物中で識別するためにしばしば使用される。ここでは二本鎖分画のみを回収できるが、それはステムループのような局所的二本鎖構造を有する一本鎖核酸を含有することがある。ヌクレアーぜ分解の主な限界は、非特異性、即ち二本鎖核酸も切れ目(ニック)を入れられ、そして様々な程度に分解されることである。
【0005】
上述の方法のいずれも一本鎖又は二本鎖核酸分画の長さ組成について直接の情報を提供しない。さらに、一本鎖及び二本鎖核酸分画両方の単離を可能にするのはヒドロキシアパタイト法のみである。
【0006】
一般的に二本鎖核酸フラグメント(>50bp)は、それらの一本鎖の対応物よりもポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)において泳動速度が速い。そのため、等しい長さの二本鎖と一本鎖フラグメントは異なって泳動(migrate)し、一次元電気泳動において分解されるであろう。この周知の現象は、例えば、組み合せヘテロ二重鎖/一本鎖コンホメーション多型分析法で利用されている(Ravnik−Glavac、Glavacら、1994;Sainz、Huynhら、1994)。鎖数依存分離に基づくすべての一次元電気泳動法は、ほんのわずかの核酸フラグメントしか含有しないサンプルに限定される。もしサンプルが長さの異なる多くの核酸フラグメントを含有していると、長い二本鎖フラグメントがより短い一本鎖フラグメントと共泳動して重なり合うことがあり、それゆえ二本鎖フラグメントの集団を一本鎖フラグメントの集団から分解することはできない。このため複合核酸調製物の鎖数をモニターするためのゲル電気泳動の使用は予め除外されてきた。
【0007】
複合混合物から個々の核酸フラグメントをそれらの鎖数相異に基づいて分離する方法は非常に有益であろう。そのような方法は、もしそれらが一本鎖及び二本鎖分画の長さ分布を同時に分析することに使用できたら尚いっそう用途が広く強力であろう。そのような方法が使用され得る例は以下を含むがこれらに限定されない:I)各々のクラスの定量又は単離を可能にする一本鎖と二本鎖核酸フラグメントの物理的分離、II)生物学的サンプル中の一本鎖及び二本鎖核酸両方の相対量及び長さ分布の推定、III)時間−ポイント分析による再結合速度論の測定、IV)大量の無傷な分子からの一本鎖切断を含有する二本鎖核酸フラグメントの単離、V)PCR産物及び他のインビトロ増幅産物を含む複合核酸調製物の品質のモニター、VI)複合混合物中のcDNA合成効率及びRNA:DNAハイブリッド存在の推定、及びVII)複合核酸サンプルの標識効率のモニター。
【0008】
遺伝情報は、核酸鎖中の塩基の線状配列によって暗号化されている。核酸分子の「鎖数(strandness)」という用語は、各核酸分子中の核酸鎖の数を記述するために本明細書で使用される。核酸鎖は線状に共有結合されたポリヌクレオチドから構成される。最も頻繁には核酸分子は一本鎖又は二本鎖であり、ここで二本鎖分子は2本の一本鎖核酸分子間の可逆的な分子間水素結合によって形成される。場合によっては、核酸は多鎖、例えば三重らせん又は四重であり得る。
【0009】
本明細書中において、用語「コンホメーション」は、核酸分子の包括的な3D構造を記述する。同一の一本鎖核酸分子は、例えば分子内水素結合及び折りたたみのために様々な異なるコンホメーションをとり得る。一本鎖核酸の局所的分子内二次構造の相異もまたコンホメーションに影響を与え得る;したがってそのような相異もまた本明細書で使用されるようにコンホメーション相異という用語の範疇に入る。コンホメーション多様性は核酸の二本鎖においてはもっと制約されている。鎖数は核酸分子の全体的コンホメーションに影響を与え得るが、コンホメーションに従って分子を分離する現行の方法は、複合核酸混合物を鎖数に従って分離するために使用することができない。
【0010】
本発明者らは、以前に1つの物理化学的方法、二次元コンホメーション依存電気泳動(2D−CDE)を開発した(EP1476549参照)。この方法は、二本鎖DNAフラグメントをそれらの長さばかりでなくコンホメーションに従って分離可能にする。2D−CDEは二本鎖核酸分子のコンホメーション分離のためにデザインされており、そのため鎖数に従った分離には適さない。2D−CDEの第1次元の間に二本鎖分子のさらなるコンホメーション相異が理想的に亢進又は誘導されるが、鎖数及び長さのみに従った分離を確実にするためには、鎖数依存分離は理想的には、一本鎖又は二本鎖分画の両方においてそれぞれのコンホメーション相異を減少又は排除するべきである。
【0011】
Kovarらは「二次元一本鎖コンホメーション多型分析」(Kovar、Jugら、1991)のための方法を記述した。第1次元は折りたたみを防ぐため変性条件下で実施される(すべての二本鎖DNA分子は一本鎖にされる)。そのためすべてのフラグメントは一本鎖であり、変性条件が一本鎖核酸分子各々のコンホメーション相異バリエーションを減少させるため、長さに強く従って泳動する。第1次元はキャピラリー電気泳動システム中で実施される。第1次元の後、このキャピラリーゲルマトリックスは水平ゲル電気泳動システム中の非変性ポリアクリルアミドゲルマトリックス上に置かれる。第2次元電気泳動の間すべての核酸分子は第1次元中と同様に一本鎖である。第2次元においては変性剤の欠如のため一本鎖分子は様々なコンホメーションに適応でき、分離はフォールドバック(fold-back)コンホメーション及び長さの両方に従うであろう。しかしながらこの方法は一本鎖と二本鎖の線状核酸分子の分離には使用できない。この方法は、一本鎖フラグメントの長さ及びフォールドバックコンホメーションの相異に従った分離のみを可能にする。
【発明の開示】
【0012】
発明の概要
本発明は新規な二次元(2D)ゲル電気泳動システムに基づいて核酸フラグメントの鎖数依存及び長さ依存の分離を達成する方法を提供する。この二次元鎖数及び長さ依存電気泳動法及びシステム(本明細書では頭字語2D−SDEを使用する)は、核酸フラグメントを一次元においては長さ及び鎖数の両方に基づいて分離するが、第2次元においては長さのみに従って分離する。このシステムは一本鎖フラグメントの集団を二本鎖フラグメントの集団から両者の複合混合物中で分離可能であり、各集団内での長さ分布決定を可能にする。さらにこのシステムは片方又は両方の分画の単離という選択肢を提供する。
【0013】
理想的な2D−SDEシステムは、好ましくは、2つの異なるゲルマトリックス間での面倒な転移を排除した単一のゲルマトリックスに基づく。第1次元の後に物理的又は化学的因子を導入(又は除去)してすべての核酸フラグメントの鎖数に影響を与え、それによりすべての分子が元々のサンプル中のそれらの元々の鎖数とは独立して、第2次元電気泳動において同じ長さ依存様式で泳動するようにさせ得る。
【0014】
多くの化学的因子が核酸フラグメントの鎖数に影響を与えるとして報告されており、それには例えばホルムアミド、尿素及びDMSOのような変性剤が含まれるがこれらに限定されない。温度のような物理的因子も使用できる。効果的な変性を確実にするために、化学的及び物理的因子の両方の組み合わせがしばしば使用される。
【0015】
本発明の方法は異なる供給源から得られる核酸フラグメントに適用可能であり、また核酸フラグメントのいかなる特別な前操作をも必要としない。
本発明は、例えば以下のような、しかしこれらに限定されない異なる情況において使用できる一般的な方法を提供する:I)片方又は両方のクラスの定量及び/又は単離を可能にする一本鎖と二本鎖核酸フラグメントの物理的分離、II)生物学的サンプル中の一本鎖及び二本鎖核酸両方の量及び長さ分布の推定、III)再結合速度論の測定、IV)大量の無傷なフラグメントからの一本鎖切断を含有する二本鎖核酸フラグメントの単離、V)PCR及び他のインビトロ増幅産物を含む複合核酸調製物の品質のモニター、VI)複合混合物中のcDNA合成効率及びRNA:DNAハイブリッド存在の推定、及びVII)複合核酸サンプルの標識効率のモニター。
【0016】
本発明の方法は新規な二次元鎖数依存電気泳動システム(2D−SDE)を利用する。第1次元において、等しい長さの一本鎖と二本鎖核酸フラグメントは異なる速度で泳動する。第1次元分離の後、ゲルマトリックスを物理的及び/又は化学的作用因子(agent)処理して二本鎖核酸分子を完全に変性(鎖分離)させる。次に第2次元を好ましくは第1次元と垂直に行う。他の角度も使用し得るが、第2次元を第1次元に対して90°で行うことにより最大の解像度が得られる。第2次元において、核酸フラグメントは今やすべて一本鎖型であるので、それらの長さのみに従って分離される。
【0017】
2D−SDEシステムはその結果すべての核酸フラグメントをそれらの鎖数に基づいて分離する。一本鎖及び二本鎖核酸の各集団において、すべてのフラグメントはそれらの長さに従って分離される。一本鎖核酸フラグメントの局所的分子内二次構造は第1次元において最小化されるため、一本鎖核酸フラグメントの泳動速度は両方の次元で同じである。この結果、両方の次元で一本鎖である様々な長さの核酸フラグメントによる対角線が形成される。元々二本鎖であった核酸フラグメントの泳動速度は2つの次元間で異なる(第1次元における二本鎖泳動速度は第2次元における一本鎖泳動速度よりも相対的に速い)。相対的泳動速度の相異は長さに依存する。その結果この相異は、元々一本鎖の核酸フラグメントの対角線からは分離され且つその後方に位置する弧(arc)を形成する。分離後、両方の核酸フラグメント分画はゲル中で定量又は単離可能である。
【0018】
もしゲルが化学的変性剤を充分高濃度で含有していれば、一本鎖核酸フラグメントはPAGE中で本質的にその長さのみに従って泳動する。例えば、尿素はPAGE中でssDNAフラグメントの二次構造を強く減少させる(Viovy、2000)。一本鎖核酸フラグメントのこの挙動はDNAシークエンスの普通の技術で使用されている。そのような条件下では、ssDNAフラグメントはフレキシブルな線状多価電解質として挙動し、分子の長さに従った分離を可能にする(Tinland、Pernodetら、1996)。
【0019】
尿素のような化学的変性剤の添加は一本鎖核酸フラグメントの二次構造を強く減少させるが、二本鎖核酸フラグメントは変性(鎖分離)しない。そのため、変性剤の添加は一本鎖フラグメント及び二本鎖フラグメントの両方を本質的にそれらの長さに従って泳動させるが、長さ依存泳動因子は同じではなく、即ち等しい長さの一本鎖と二本鎖フラグメントは共泳動しない。
【0020】
発明の詳細な説明
本発明は、一本鎖及び二本鎖核酸フラグメントを両者の複合混合物から分離し、そして所望により単離する方法を提供する。本発明は核酸調製物を、それらの生物学的機能又はゲノム位置の予備知識の有無に関わらず、それらの鎖数についてスクリーニングするために使用できる。本発明は一本鎖及び二本鎖核酸フラグメントの長さ分布の決定にも使用できる。
【0021】
本明細書の記載から推測できるように、本発明は線状、即ち非環状核酸の分離のみに使用できる。
本発明に従った分析に適切な核酸サンプルは、50〜10,000bp(又はnt)の間のサイズ範囲、しかし好ましくは約100〜1000bp(又はnt)の範囲内の線状の一本鎖及び/又は二本鎖核酸フラグメントを包含してよい。核酸の供給源は、原核生物、真核生物、ウィルス又は合成物でもよい。供給源材料は、ゲノムDNA、cDNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、PNA、LNA、プラスミドDNA、又はウイルスが自然発生しているか、異なる供給源からの核酸のベクターとして働いている場合を含むウィルスDNA若しくはRNA、又はその他でよい。核酸の供給源に依存して、それらは何らかの精製、例えば細胞供給源からの単離、蛋白質からの分離、制限酵素及びPCR阻害剤の除去等を必要とするかもしれない。本方法は複合DNAサンプル、即ち多数の異なる核酸フラグメントを含有するサンプル(例えば全ゲノム又はそのサブセットのフラグメント、及び1以上の個体からのゲノム核酸の混合物等)に適用可能であるため特に有利なことは強調されるべきである。
【0022】
本発明の望ましい目標に依存して、ある所定の適用のために分析されるサンプルは、単一の個体、複数の個体、一個体からのゲノムサブセット若しくは複数の個体からの同じゲノムサブセット、又は多数のプールを組み合わせたプールでもよく、そのとき核酸は、サンプルのプール、及び/又はプールの組み合わせの、前又は後に、様々な仕方で処理、例えば切断、変性及び再結合されていてもよい。
【0023】
望ましい長さの核酸は、特にDNAの場合は、制限酵素消化、PCR又は他のインビトロ増幅技術の使用、ライゲーション、化学的又は物理的に誘導された切断その他によって提供できる。標的とする核酸は同位体又は非同位体シグナルによって標識されていてもよく、それらは分離後の特異的捕獲を可能にするためのタグを含有できる。本方法のいくつかの実施態様においては、アダプター又はリンカーが核酸フラグメントにライゲートされている。
【0024】
有用な実施態様において本発明の方法は、1又はそれを超える前記の一本鎖及び二本鎖分画内の長さ分布を、それらの分離後に推定することを包含する。これは、既知の異なる長さの一本鎖及び二本鎖核酸両方を含有し電気泳動後適切な染色によりゲル中に不連続なスポットを生じる内的標準を、電気泳動に先立ってサンプルに添加することにより容易に達成される。好ましくは、そのような内的標準は、例えば蛍光マーカー又はその他のマーカーで予め標識される。
【0025】
電気泳動後、好ましくは、異なる分画は、各分画内の長さ分布だけでなくサンプル中の一本鎖と二本鎖核酸の相対量を推定するため分析される。本明細書にさらに記載されるように、そのような分析は画像分析技術によって容易に達成され、そして自動化され得る。
【0026】
本発明はさらに、本発明の方法を使用して複合核酸サンプルの鎖数を決定するためのキットを提供する。このキットは、第1次元電気泳動に適切な変性剤を含有する予め作製された2Dゲル、又は変性剤及びゲル化学薬品を含む2Dゲル作製のための手段を含有できる。さらに、キットは第1及び第2次元電気泳動両方のために適切な緩衝液又は緩衝液成分を含有し、またすべての二本鎖分子の変性を容易にするため第2次元電気泳動の前にゲルを処理する作用因子を所望により含有できる。そのうえキットは、商業的に入手可能な電気泳動システムのために適切なアダプター及び耐熱性スペーサーを含有できる;現在入手可能なシステムと共に一般に供給されるアダプター及びスペーサーは、第1と第2電気泳動ステップの間の本発明の変性ステップにおいて望まれ得る高温(例えば約75〜95℃の範囲内)に耐えられないためである。さらにキットは、第2次元に先立つ変性ステップの間蒸発を防ぐために、その中にゲルを挟む特定の耐熱性の閉鎖容器又は袋を含有できる。有用な実施態様において、本発明のキットは、すべての鎖数分画の長さ分析及び定量を容易にするため、一本鎖及び二本鎖核酸フラグメント両方について内的標準を含有できる。そのような内的標準は、分析するためにサンプルを添加するサンプル緩衝溶液、又は電気泳動に先立ってサンプルと混合するのに適切な他の形で供給できる。さらに、各電気泳動ステップが完了したことを示すために検出可能なマーカー(例えば色素分子)を含むこともできる。
【0027】
本発明のキットは、さらに、電気泳動後にゲルマトリックス中で前記核酸を検出可能にするために、ゲルマトリックス中で1又はそれを超える分離された分画中の核酸分子と結合する検出剤を含んでもよく、それらには本明細書中に挙げられるものが含まれる。そのような検出剤は、電気泳動に先立ってサンプルと混合するか(例えばSYBR緑色色素又はUniversal Linkage Systems(ULS)の場合のように)、又は電気泳動後にゲルを処理する形で供給してもよい。
【0028】
本発明のもう1つの態様は、本明細書に記載される方法を実施するためのシステムを提供する。そのようなシステムは、支持プレートの間に挟まれたゲルを支持するための電気泳動カセットを含み、このカセットはゲルがカセット内に適切に配置されるように成型され得る;あるいは、カセット中に適合するプレキャストゲルがシステムと共に供給される。もう1つの実施態様においては、カセットは、作製され内部に挿入されたゲルを有する単回使用ユニットとして供給される。
【0029】
このシステムはカセットを挿入するための区画(compartment)を有する電気泳動装置を包含する。分析するためにサンプルをカセット中にロードするため、サンプルポートがこの区画に隣接して、又は区画内に位置している。好ましい実施態様において、この区画は供給されるカセットがその内部にぴったり適合するように成型され、電気泳動は本質的に「乾いた状態」即ち緩衝液浴中ではなく実行される;これは、電流の流れがゲルを通り易くするためのカウンターイオン供給源として緩衝液を必要としないようにゲルのサイズを最小化することにより可能である。
【0030】
さらにこの装置は、第1次元電気泳動のための第1組の電極及び第2次元電気泳動のための第2組の電極という2組の電極を包含しており、第1組は電極に電力が加えられると挿入されたカセット中のゲルを横切って第1電場を維持することができ、そして第2組の電極は電極に電力が加えられると本質的に前記第1電場と直交してゲルを横切って第2電場を維持することができる。従来の2D電気泳動と同様に、これらの電場は相互交換可能であり、そして別々に適用される。システムのより簡単な系では1組の電極を使用することもできる。この場合カセットを第2次元電気泳動に先立って回転させなければならない。
【0031】
システムはまた、前記区画内の加熱表面に接続され、ゲルマトリックス内部を予め定めた温度にする制御可能な温度システムを包含する。この配置及び適当な制御手段により、ゲルの温度を制御し実質的に段階的に調節できる;例えば第1次元電気泳動を第1温度(例えば20℃)で行った後、その中の二本鎖核酸分子を完全に変性させるためゲル温度を限られた時間(例えば1〜5分の範囲内)高い温度(例えば95℃)に上昇させ、続いて第2次元電気泳動のために温度を(例えば55℃まで)下げて、変性した(一本鎖)核酸分子の再結合を確実に排除する。
【0032】
加熱手段は好ましくは、カセットの主要表面の1つと接触する加熱表面を有する熱電性デバイス(「ペルチェ」デバイス(“Peltier” device))を包含する。この場合、カセットの前記表面はゲルそれ自体の温度を制御するために充分に熱を伝えなくてはならない。
【0033】
システムはまた好ましくは調節可能な電力を電極に提供する発電器を包含しており、特に好ましくは、システムはこのシステムの操作を制御するコンピュータと共に提供される;即ち、コンピュータは発電器及び加熱手段と接続され、負荷電圧及び電流を制御し(第1組の電極に対して第1電圧、第2組の電極に対して第2電圧)、さらに加熱デバイスの温度を制御し、そしてそれによりゲルの操作温度を制御する。
【0034】
コンピュータは好ましくは上記の制御操作のためのコンピュータソフトウェアをインストールされており、好ましくはシステムを実質的に自動で操作するように構成され得る;即ち、本明細書に示す方法に従って二次元電気泳動を完了するために、一連の適当に時間を合わせたイベントにおいて適切な電圧及び熱を供給する。
【0035】
本システムの重要な特色は、第1と第2次元電気泳動の間の短時間ゲルが加熱される状況において、装置特にゲルカセットが高温に耐えられなければならないことである。好ましくは、システムは少なくとも75℃、より好ましくは少なくとも85℃、もっと好ましくは少なくとも90℃、そしてより好ましくは少なくとも95℃のゲルの操作温度を維持し耐えることができる。
【0036】
本発明のシステムがシステムの義務サイクルのスピードを増大させるために小型化され得ることは特に評価されるであろう。約10cm2未満、好ましくは約5cm2未満、例えば約2.5cm2未満(例えば約0.5〜2.5cm2、例えば約1cm2)のようなサイズのマイクロゲルが利用できる。そのようなマイクロゲルは少量のサンプルしか必要としないが同時にサンプル中の核酸の検出限界は低くなる。さらに、システム中の温度制御は高電場を可能にし、ゲル中の分子の迅速な分離を可能にするであろう。
【0037】
本明細書に記載される方法で操作されたゲルは画像分析技術により適切に分析できる。ある実施態様において、本発明のシステムは、適切な検出剤で染色された前記ゲルの数値化された画像に基づいてそのようなゲルを分析するためにコンピュータにインストールされたコンピュータソフトウェアを包含する;このコンピュータソフトウェアは、コンピュータに実行されると、内的標準に対応するスポットを検出し、染色された領域を検出して前記領域の境界を決定し、内的標準スポットの位置に基づいて、検出された領域を一本鎖又は二本鎖核酸に割り当て、そして検出された領域の密度を推定して電気泳動されたゲル中の一本鎖対二本鎖核酸の比率、そして好ましくは各分画内の長さ分布も決定するステップが実施されるようなコードを包含する。
【0038】
好ましいシステムの概略図を図14に示す。システムは2つの主要部分により構成される。第1に電気泳動ユニット;さらに制御部(21)及び電気泳動部(22)に分けられる。この電気泳動ユニットは分離に先立って加えられるゲルカセット(23)のための温度制御された区画(22b)を含有する。区画(22b)はその下にある加熱プレート、例えばペルチェ型熱電性ヒーターと共に示される。2組の電極は電気泳動部内にあり、ゲルカセットを回転させることなく二次元分離が可能とする。第1組は陽極1(22c)及び陰極1(22d)として、第2組は陽極2(22e)及び陰極2(22f)として示される。ゲルカセット区画の周囲には、伝導性マトリックスであるか又は緩衝溶液で満たされるゾーンである緩衝液ゾーン(22a)があり、ゲル及び電極としっかり接触してゲルカセットと電極の間を接続している。
【0039】
制御ユニットは、電場1と2(21b)を切り換えるスイッチ、ゲル温度を制御するユニット(21a)、1a及び1b両方のソフトウェア制御を可能にするコンピュータ(示さず)への接続(21c)、及び発電器(示さず)への接続(21d)を含有する。
【0040】
第2にゲルカセット部が供給される(23)。このカセットは内部にゲルを適切に配置するか、又はプレキャストゲルを適合させる、いずれかに使用できる。これは、ゲルマトリックス(23b)からの蒸発を確実に制限するためその内部にゲルマトリックスを保持する2枚の耐熱性プレートから構成される。プレートの少なくとも1枚(加熱要素に面している)は、カセットが挿入されるとき加熱要素からゲルへと熱を伝えるために熱伝導性でなければならない。カセットはさらにサンプルロードスロット(23a)を包含する。プレートの周囲は緩衝液接続ゾーン(23c)であり、伝導性マトリックスが電気泳動ユニットの緩衝液ゾーンと直接接触して、荷電された電場下でゲルマトリックスに充分な電流を通すであろう。
【0041】
本発明はさらなる態様において、上述のように、ゲル中で電気泳動された分析サンプル中の一本鎖(ss)と二本鎖(ds)核酸の比率を決定するため、本明細書に記載されるように操作された二次元電気泳動ゲルの画像を分析するためにコンピュータにインストール可能なコンピュータプログラム製品を提供する。このコンピュータプログラム製品は以下のプログラム指図手段を包含する;前記サンプル中の既知の異なる長さの一本鎖及び二本鎖核酸両方を包含する内的標準を定義する入力値(それらの塩基対の長さ)を受け取り、前記画像中の前記内的標準に対応するスポットを検出し、染色された領域を検出して前記領域の境界を決定し、検出された領域を一本鎖又は二本鎖核酸に割り当て、そして検出された領域の密度を推定して電気泳動されたゲル中の一本鎖対二本鎖核酸の比率を決定する。さらに、前記領域の境界を内的標準の境界と比較して一本鎖及び二本鎖分画の長さ分布を推定できる。
【0042】
好ましくは、内的標準は染色されたサンプル核酸の色とは別の検出可能な色を生じるように標識され、それゆえ画像検出ソフトウェアは標準スポット同定のために特定の波長帯を同定するように設定できる。内的標準スポットを2D画像空間においてx−y座標に割り当てた後、スポットの位置(典型的にはy座標)と、各スポット中の標準の塩基対の長さとの関係を定義する関数が導かれる。
【0043】
サンプルのスポット/領域は、使用された検出剤(標識/染色)に対応する適当な色の波長を画像から読み取ることにより検出され、前記スポット/領域の境界が決定され、そしてこの領域は内的標準と比較されたそれらの位置に従ってss又はds核酸に割り当てられる。境界は当業者には既知の従来の方法、例えばブラックトップハット変換(black top-hat transform)を画像に適用すること、又はその他により決定される。検出された領域の密度を推定するために、領域内のバックグラウンド値が決定され、そして測定された画素の強度から差し引かれる。領域は次に一本鎖と二本鎖核酸の間の比率を定量するために積分され得る。ある条件下では、上述のように、本方法はさらにハイブリッド二重鎖(DNA:RNA)からDNA:DNA二重鎖の分離を起こすことができ、これはゲル中に第3の区域として表れ、そして、好ましくはそのようなハイブリッド分子のための適当な標準を使用して、上述のように分析し定量することができることに注目されたい。
【0044】
本発明の第1の主な態様において、非環状核酸フラグメントの鎖数及び長さの両方に依存する分離(即ち、一本鎖と二本鎖核酸フラグメントの分離、及び各群内での長さに従った分離)のための方法であって、以下を包含する方法が提供される:上述のように作製され得る上記のいずれかの供給源核酸を包含する核酸フラグメントのサンプルを提供し;サンプルをゲル電気泳動装置にロードし、そして第1次元において前記サンプルをゲルマトリックスを通して、二本鎖核酸フラグメントは無傷で残るように予め定めた第1組の電気泳動条件下で電気泳動し;そして次に第2次元電気泳動に先立って二本鎖フラグメントの完全な変性(鎖分離)が達成されるように諸条件を変更し;続いて前記ゲルを第2次元において二本鎖の再アニーリングを防ぐ第2組の電気泳動条件下で電気泳動する。本質的には、第1次元電気泳動はサンプル核酸フラグメントの鎖数及び長さに基づいた分離を可能にし、そして第2次元電気泳動はサンプルフラグメントのそれらの長さのみに基づいた分離を可能にする;前記条件の相異は、核酸フラグメント間の鎖数に基づいた泳動の相異を排除できる化学的及び/又は物理的作用因子によって確立される。
【0045】
本発明の方法において有用なポリアクリルアミドゲルは、サンプル核酸フラグメントの推定されるサイズ分布に従って適切に選択できる幅広い百分率範囲のポリアクリルアミドを含有してよい。典型的には、約2%〜約20%ポリアクリルアミドの範囲内、好ましくは約5%〜約15%ポリアクリルアミドの範囲内のゲルが使用される。ゲルのサイズ及び電気泳動中の電気的条件(電圧、電流、電解質濃度等)は、分析される核酸フラグメントの分離を最大にするために必要な泳動の程度に従って調節できる。例えばMDE及びLongRanger(商標)のようなポリアクリルアミド誘導体を含むポリアクリルアミド以外のゲルマトリックスも2D−SDEを実施するために使用できる。
【0046】
いずれの次元にとっても緩衝液系は、本発明の方法の特定の各実施態様において使用されるゲルマトリックスに従って選べる。両方の次元で同じ緩衝液系を使用する必要はない。
【0047】
典型的には、本発明で使用されるゲルマトリックスは、二本鎖核酸フラグメントの変性(鎖分離)は起こさないが一本鎖及び二本鎖核酸フラグメント両方の二次構造を減少させる濃度の変性剤を含有する。
【0048】
本方法のある実施態様においては、第1次元分離に先立ってゲルマトリックスに変性剤が添加されない。これらの実施態様においては二本鎖フラグメントの完全な変性が必要とされる第2次元電気泳動の前に、選ばれた1又はそれを超える変性剤を含有する緩衝液中でゲルをインキュベートしてもよい。
【0049】
第1次元電気泳動に先立ってゲルマトリックス中に組み込まれていてもよい変性剤は、好ましくは、1又はそれを超える脂肪族アルコール、例えばメチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、アリル、ブチル、イソブチル、及びアミルアルコール並びにエチレングリコール;環状アルコール、例えばシクロヘキシル、ベンジル、フェノール及びp−メトキシフェノールアルコール並びにイノシトール;脂環式化合物、例えばアニリン、ピリジン、プリン、1,4−ジオキサン、ブチロラクトン及びアミノトリアゾール;アミド、例えばホルムアミド、エチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、グリコールアミド、チオアセトアミド、バレロラクタム;尿素化合物、例えばカルボヒドラジド、1,3−ジメチル尿素、エチル尿素、t−ブチル尿素、チオ尿素及びアリルチオ尿素;カルバメート、例えばウレタン、N−メチルウレタン及びN−プロピルウレタン;ツイーン40及びトリトンX−100を含む界面活性剤(detergent);並びに他の化合物、例えばシアノグアニジン、スルファミド、グリシン、アセトニトリル及びDMSOである。ゲルが第1次元泳動後しかし第2次元電気泳動に先立って変性剤に浸漬される場合は、1又はそれを超える上記の作用因子を使用してよい。
【0050】
鎖数の相異を減少させるために本発明中で使用できる他の化学的作用因子及び物理的因子は、当業者によって同定又は開発されてもよい。本発明の方法中で使用される前記化学的作用因子の濃度は、その核酸結合親和性、変性力量、鎖数相異及び二次構造を減少させる能力、及びゲルマトリックス又は緩衝液中での作用因子の安定性に依存する。
【0051】
本方法の特に有用な実施態様において、変性剤である尿素が第1次元電気泳動に先立ってゲルマトリックスに添加される。ここでは尿素は3つの異なる役割を果たす:I)第1次元において、すべての核酸フラグメント(一本鎖及び二本鎖両方)の、鎖数ではなくコンホメーションによる泳動の相異を減少させる、II)第2次元に先立って、完全な温度誘導変性(鎖分離)を容易にする、及びIII)第2次元電気泳動の前又は間に再結合(再アニーリング)が起こらないことを確実にする。
【0052】
第1ゲル電気泳動ステップは巾広く異なった温度で実施され得るが、典型的な適用においては温度は5℃〜50℃の間の範囲内である。本発明の方法の典型的な実用において、一本鎖及び二本鎖核酸フラグメントの混合物は室温で分離される。
【0053】
上述したように、核酸フラグメントの長さ及び鎖数に従った両方の分離を可能にする第1次元電気泳動後、ゲルは典型的には電気泳動装置から除去されるが、本明細書にさらに記載するように装置を適当にデザインすれば、ゲルの除去は必ずしも必要でない。すべての核酸フラグメントが全部変性されるようにゲルは高温でインキュベートされる。インキュベーションの間、ゲルからの蒸発を制限するために(例えばプレートの間に保持して)ゲルは部分的又は完全に封入される。ゲルは、本方法の実施態様中で使用されるゲルのサイズ、マトリックスの型及び厚さに依存して変動し得る期間インキュベートされる。本方法の他の実施態様においては、二本鎖核酸は化学的作用因子又は物理的及び化学的作用因子の混合によって変性される。
【0054】
第2次元電気泳動ステップにおける諸条件は第1次元のそれらとは異なり、それは例えば温度又は尿素濃度のような物理的パラメータ又は化学的作用因子の変更により、これはサンプル核酸フラグメントの鎖数にさらに影響を与え得るであろう。
【0055】
ある一定期間物理的及び/又は化学的に誘導された変性を受けた後、ゲルは第2次元電気泳動のために適切な電気泳動デバイス中に配置される。すべての核酸フラグメントは今や同じ鎖数を持つ(即ち、それらはすべて一本鎖である)。そのためゲル中のすべての核酸フラグメントはそれらの長さに従って分離する。その結果、鎖数相異のために第1次元後に重なり合っていた異なる長さのフラグメントは第2次元において分解(resolve)するであろう。元々一本鎖であった核酸フラグメントは両次元において本質的に同じ泳動速度を持つので、それらはゲル中に近似的な対角線を形成する。第1次元の間二本鎖であったが第2次元の間一本鎖の核酸フラグメントは、第2次元よりも第1次元において相対的に速く泳動するため、弧を形成する。そのため本発明の方法によって一本鎖及び二本鎖核酸フラグメントの鎖数及び長さ依存分離が得られる。
【0056】
一本鎖核酸フラグメントはそれらの二本鎖の対応物よりも相対的に遅く泳動する。そのため一本鎖フラグメントの対角線は二本鎖核酸フラグメントを表す弧の前方(図中の右側)に押しやられる。もし、長さが同一で、一方が一本鎖であり他方が二本鎖である2本の核酸フラグメントをこのシステム中で分離すると、一本鎖フラグメントは二本鎖フラグメントの垂直方向上方に位置するはずである。
【0057】
ゲル中の核酸フラグメントは標準的な生化学的技術を使用して容易に検出できる。それらには、例えばエチジウムブロミド(EtBr)及びSYBR(登録商標)グリーンI又はIIのような蛍光核酸染色によりゲルを染色し、当業者にはおなじみの検出システムを使用するような周知の方法が含まれる。核酸フラグメントは、放射性又は非放射性に予め標識された核酸フラグメントと、例えばフィルム、リン酸又は蛍光イメージャーのような検出システム、又は当業者にはおなじみの類似の方法を使用して検出することもできる。
【0058】
2S−SDE分離後のゲルからの核酸の単離はゲル断片からの溶出及び電気溶出のような周知の方法を使用して行ってよい。本方法のいくつかの実施態様において核酸フラグメントは、例えばゲルマトリックスからの単離後のPCR増幅のためのアダプターを含有してもよい。
【0059】
上述の本発明の第1の主な態様に従って、本発明の方法は異なる実施態様中でも使用できる。
実施例1及び2に記載される詳細な実施態様において、2D−SDEはssDNA及びdsDNAフラグメントを鎖数及び長さ依存様式の両方で分離するのに使用される。この種類の典型的な実施態様において、分析されるサンプルはフラグメントの長さ分布が50〜10,000bpの間に調製されたゲノムサンプル又はサンプルのプールを包含する。サンプルは次に上述の方法を使用して分析される。2D−SDE分離に続いて一本鎖DNAフラグメントを表す対角線及び元々二本鎖のDNAフラグメントを表す弧を、定量及び/又は単離できる。
【0060】
以下の実施例3において詳細な実施態様で説明されるように、本発明の方法は完全マッチ(perfectly matched)DNAフラグメントからのバルジ含有DNAフラグメントの分離に使用できる。バルジ含有DNAフラグメントは、それらの完全マッチ対応物に比較して、二本鎖DNAがPAGEゲル中で7M尿素の存在下又は非存在下で分離される時、泳動速度が遅い。同じフラグメントがそれらの一本鎖型で分離される時、特に尿素を含有するゲル中では、それらはすべて本質的にそれらの長さに従って泳動する。そのため、分離後にバルジ含有フラグメントは二本鎖の完全マッチDNAフラグメントを表す弧の前方に位置するので、2D−SDEを使用してバルジ含有ヘテロ二重鎖を完全マッチDNAフラグメントから分離できる。
【0061】
以下の実施例4において詳細な実施態様で説明されるように、本方法は複合DNAサンプルの再結合効率の推定及び再結合速度論の計算のために強力である。この種類の典型的な実施態様において、分析されるサンプルは切断、変性及び再結合(再アニーリング)されたゲノムサンプル又はサンプルのプールを包含する。サンプルは次に本発明の第1の主な態様に従って上述の方法を使用して分析される。分離に続いて一本鎖DNAフラグメントを表す対角線及び元々二本鎖のDNAフラグメントを表す弧が、例えば蛍光イメージャーを使用して定量される。
【0062】
以下の実施例5において詳細な実施態様で説明されるように、本発明の方法はPCR産物及び他のインビトロ増幅方法の結果生じる産物の品質の推定に使用できる。この種類の典型的な実施態様において、分析されるサンプルは異なる種類のゲノム材料又はcDNAから増幅されたPCR産物を包含する。PCR産物の複雑さは使用されるPCR方法に従って変動することがあり、1〜数十万の異なるフラグメントであり得る。PCR反応後、産物は本発明の方法を使用して分離される。一本鎖及び二本鎖PCR産物を定量し、そして両方の分画の長さ分布を測定できる。特に有用な実施態様において、PCR増幅されたゲノム呈示物(genomic representation)の品質が推定される。本明細書中で使用される用語「ゲノム呈示物」は、関心対象である遺伝的材料を包含するゲノムのサブセットに関連する。そのためゲノム呈示物の作成は標的ゲノムの複雑さを減少させる1つの方策である。ゲノム呈示物を作成する方法は本発明者らの一人によって以前の刊行物中に記載されている。特にWO00/24935、またLucitoらによる本「DNA microarray」(BowtellとSambrook、2003)を参照。
【0063】
本発明のさらなる態様が実施例6における詳細な実施態様によって説明される。本発明の方法は特徴付けされていない核酸サンプルの構成を明らかにするために使用される。そのような核酸サンプルは様々な生物学的供給源から単離され得る。有用な実施態様の1つはヒト血漿から単離される核酸を特徴付けることである。血漿からの遊離核酸の単離は当業者に既知の標準的な方法を使用して実施できる。この仕方でサンプル中の核酸の構成をそれらの鎖数に関して明らかにし、そしてまた一本鎖及び二本鎖フラグメント両方の長さ分布を推定することができる。
【0064】
実施例7に説明されるように、本方法の有用な実施態様の1つはcDNA合成効率の測定を可能にする。この種類の典型的な実施態様においては、単離されたmRNAが当業者には既知の方法を使用して第1鎖cDNA合成続いて第2鎖合成にかけられる。第1及び第2鎖両方の合成後、一本鎖と二本鎖cDNAフラグメントを分離するために本発明の方法を使用できる。さらに、本方法は混合物中のRNA:DNAハイブリッドの同定を可能にする。そのようなハイブリッドは第1鎖合成後に形成される中間体産物である。RNA:DNAハイブリッドはA型様の二本鎖らせんを形成しており、それはdsDNAらせんによって典型的に採用される対応するB型よりも、1塩基対あたり短い。そのため本方法は第1及び第2鎖両方の形成効率、及び3つの分画、即ち一本鎖DNA、二本鎖DNA及びRNA:DNAハイブリッドの分画すべての長さ分布を測定する。この分析はcDNA分子の標識の推定も可能にする。
【0065】
本発明のもう1つの態様において核酸サンプルを均等化する(normalize)方法が提供される。遺伝子は各細胞において様々なレベルで発現される。様々なmRNAの増幅効率の相異の結果、増幅されたcDNAライブラリー作成の際にcDNA分子レベルの相異も生じ得る。増幅されたcDNAライブラリーの多くの異なる型の分析のためには、サンプル中のすべての産物が均質に豊富であることが重要である。均等化のための方法は、再結合cDNAは二次反応速度論(second-order kinetics)に従っており各フラグメントの濃度に強く依存するという事実に基づく。そのため希少な遺伝子産物は高度に濃縮された豊富な産物よりも遅く再結合する。そのため、再結合の間、残存する一本鎖分画は累進的に、より均等化され、即ち個々のcDNAフラグメントの濃度はより一様になる。部分的な再結合の後残存する一本鎖分画を単離することにより均等化されたサンプルを得ることができる。現行ではそのようなアプローチの進行を妨げる主なボトルネックは一本鎖と二本鎖産物の効率のよい分離である。標準的な科学技術は一本鎖と二本鎖DNAフラグメントのヒドロキシアパタイトカラムへの差別的結合を使用する。この技術は煩雑であり、且つ一本鎖と部分的な二本鎖DNAフラグメントを完全に識別しない。本発明の方法を使用して、一本鎖と二本鎖核酸フラグメントを物理的に分離し、続いてゲルマトリックスから例えば電気溶出により純粋な一本鎖核酸分画を直接単離すれば、核酸サンプルの均等化が非常に容易になり得る。
【0066】
本発明の第2の主な態様において、一本鎖切断(ニックを含む)を含有する核酸フラグメントを無傷な二本鎖核酸フラグメントから分離する方法が提供される。本発明の第1の態様に関連して上述されたのと同じ実験的設定が使用される。第1次元電気泳動の間、1又はそれを超える一本鎖切断を含有する二本鎖核酸フラグメントは、本質的にはそれらの無傷な二本鎖対応物と同じ泳動速度を持つ。
【0067】
すべての二本鎖DNAフラグメント(一本鎖切断の有無に関わらず)が本質的にそれらの長さに従って泳動する第1次元電気泳動の後、すべての核酸フラグメントは上述のようにゲルマトリックス中で変性される。これはゲル中のすべての核酸フラグメントの完全な変性(鎖分離)を確実にする。無傷な二本鎖核酸フラグメントは2本の等しい長さの一本鎖フラグメントを生じ、それらは相補的である。例えば1つの一本鎖切断(又はニック)を含有する二本鎖核酸は、変性(鎖分離)後3本の一本鎖フラグメントを結果として生じる。1本は元々の二本鎖フラグメントと同じ長さで無傷な鎖を表し、他の2本はより短い。2本のより短いフラグメントは長いフラグメントに相補的であり、それらは切断含有鎖を表す。
【0068】
温度又は化学的に誘導された変性の後、ゲルは第2次元電気泳動のために配置される。すべての核酸フラグメントは今や同じ鎖数である(即ち、それらはすべて一本鎖である)。そのためゲル中のすべての核酸フラグメントはそれらの元々の長さに基づいて分離するが、元々の二本鎖フラグメント中にニック又は切断を含有するDNA鎖だけは例外である。それらは今やそのより短い長さによって、より速い泳動速度を持つ。そのため一本鎖切断又はニックを含有していた核酸フラグメントは第2次元において独特の泳動速度を示す。そのような一本鎖フラグメントは無傷な二本鎖核酸フラグメントを表す弧の前方に泳動する。
【0069】
本明細書に記載されるように、本発明のこの態様に従った方法は、無傷な二本鎖核酸フラグメントを一本鎖切断又はニックを含有する二本鎖核酸フラグメントから分離するために容易に適用できる。二本鎖核酸フラグメント中の一本鎖切断は以下を含む様々な仕方で誘導される:酸化、イオン化、放射線照射、不完全複製、UVA放射、組換えDNA中の不完全ライゲーション、温度上昇、アルカリ性又は酸性緩衝液条件、配列特異的ニッキング酵素活性、エンドヌクレアーゼ活性、リアーゼ、グリコシラーゼ、リボヌクレアーゼ、又はゲノム中の特異的な損傷、バルジ若しくはミスマッチ(mismatched)を検出する他の酵素、並びに合成又は天然の化学化合物の活性、例えばオスミウム、ヒドロキシルアミン、過マンガン酸カリウム、塩化テトラエチルアンモニウム及びロジウム(III)複合体及びその他の活性。
【0070】
実施例8、9、10及び11中に詳細な実施態様で説明されるように、本発明のこの態様は異なる化学的又は物理的因子によって誘導された複合DNAサンプル中の一本鎖切断を検出するために使用できる。
【0071】
本発明のもう1つの重要な実施態様は複合サンプル中の変異又は多型を求めて迅速に走査(スキャン)する方法を提供する。スクリーニングに先立ってサンプルは変性され、そして再結合され、そして時には次に制御フラグメントが添加される。次にサンプルを酵素又は化学薬品で処理して変異又は多型が位置する場所に部位特異的な一本鎖切断を生成させ、それによりヘテロ二重鎖中にミスマッチを形成させる。少なくとも2つのエンドヌクレアーゼ(エンドヌクレアーゼV及びCEL I)が異なる8種類の1塩基対ミスマッチのすべて及びヘテロ二重鎖中のより小さな挿入/欠失バルジを切断すると報告されている(YaoとKow、1994;Oleykowski、Bronson Mullinsら、1998)。そのような方法は非特異的切断によるバックグラウンドシグナルによりしばしば害される。最近、ある熱安定性DNAリガーゼがバックグラウンドニックを再シールすることにより非特異的切断を減少させるかもしれないことが報告された(Huang、Kirkら 2002)。詳細で有用な実施態様は酵素又は化学薬品による切断検出及び上述の方法を組み合わせている。その結果は、多数のフラグメントから成る複合サンプル中のすべてのDNAバリエーションを同時に潜在的に検出する強力な方法である。この方法は酵素的及び化学的切断方法の処理量を非常に増大させ、そしてそのため分析のコストを減少させるであろう。この特別の実施態様は二次元ニック依存電気泳動(2D−NDE)と呼ばれる。2D−NDEは各単位複製配列の物理的特性に、例えば二次元ゲルスキャニング(TDGS)ほど強く依存しないはずである。例えば、単位複製配列は1つだけの融解ドメインを含有する必要はない。そのため多数の単位複製配列の生成は当業者には既知の多様なアプローチによって達成されてよい。
【0072】
他の類似の実施態様は本発明の方法をDNA中の様々な損傷、例えばUV損傷を検出し切断する他の酵素と組み合わせることによって導入される。
本発明に使用される方法及び本発明の有用性は以下の非限定的な実施例及び付随する図によって示すことができる。
【実施例】
【0073】
実施例1:λファージDNA由来の、Cy3標識された一本鎖DNAフラグメント及びCy5標識された二本鎖DNAフラグメントを含有する複合サンプルを長さ依存分離するための2D−SDE
λファージDNAを制限酵素NdeIIで消化し、その結果サイズ範囲12〜2225bpの116種類の異なるフラグメントが形成された。消化後サンプルを2つのアリコートに分けた。一方のアリコートを、クレノウフラグメント及びCy5−dCTPを使用してオーバーハングを伸長することにより標識した。他方のアリコートを同じ仕方でCy3−dCTPにより標識した。標識反応後、生成物をGFX PCR及びゲルバンド精製キットを使用して精製した。
【0074】
Cy3−及びCy5−標識DNAサンプル両方の分画を95℃で5分間変性させ、続いて素早く氷/水スラッシュへと移して一本鎖DNAフラグメントを形成させた。等量のCy3−及びCy5−標識DNAを含有する3つのサンプルプールを作製した。第1プールは変性されたCy3−標識DNA及び未処理のCy5−標識DNAを含有した。第2プールは変性されたCy3−及びCy5−標識DNAフラグメントを含有した。第3プールは未処理のCy3−及びCy5−標識DNAフラグメントを含有した。
【0075】
これら3つのサンプルプールを独立して2D−SDEにより分離した。ゲルマトリックスは、29:1 アクリルアミド:ビスアクリルアミド混合物から作製された10%ポリアクリルアミド及び7M尿素より成っていた。このゲルは1X TBE緩衝液(89mMのトリス塩基、89mMのホウ酸、及び2mMのEDTA)中で重合された。第1次元電気泳動は、BioRad Mini Protean II垂直電気泳動システム中で行われた。ゲルは室温(RT)で1時間、一定の20mAで、1X TBE緩衝液中で操作された。
【0076】
第1次元電気泳動後、ゲルサンドイッチを熱ブロック(dri−block Techne)上に置き、そして92℃で3分間インキュベートした。より良い熱分布を確実にするために、92℃の熱アルミニウムキューブの1つをゲルサンドイッチの上に置いた。変性後ゲルサンドイッチは室温まで冷やされた。
【0077】
第2次元ゲル電気泳動はPharmacia Multiphor水平電気泳動システム中で行われた。ゲルは、室温で、第1次元電気泳動に対して垂直に、1X TBE緩衝液を使用して、一定電力5Wで1時間操作された。緩衝液チャンバー中の電極とゲルマトリックスとの間の接続は紙製電極芯(paper electrode wicks)によって達成された。
【0078】
DNAフラグメントの蛍光検出はAP Biotech’s Typhoon 8600可変方式イメージャーの蛍光走査モードを使用して実施され、Cy5検出のためには励起波長633nm及び670BP30発光フィルターが、そしてCy3検出のためには励起波長532nm及び580BP30発光フィルターが使用された。
【0079】
図1Aに示すように、一本鎖DNAフラグメントはゲルを貫いて対角に横たわる線を形成した(赤色)。二本鎖DNAフラグメントは一本鎖フラグメントの線に対して左に横たわる弧を形成した(緑色)。変性されたCy5−及びCy3−DNAフラグメントのプールの2D−SDE(図1B)並びに未処理のCy5−及びCy3−DNAフラグメントのプールの2D−SDE(図1C)は、結果としてCy5−及びCy3−標識フラグメントの共泳動をおこした(それぞれ黄色の線又は弧)。もしすべてのDNAフラグメントが変性されていたら、この線は図1Aの赤色の線に匹敵した。もしすべてのDNAフラグメントが未処理であったら、この黄色の弧は図1Aの緑色の弧に匹敵した。
【0080】
実施例2:ヒトゲノムDNA由来の、Cy3標識された一本鎖DNAフラグメント及びCy5標識された二本鎖DNAフラグメントを含有する複合サンプルを、鎖数及び長さ依存分離するための2D−SDE
2D−SDEの力量をさらに試験するために、実施例1に記載される実験に対応する実験が、今度はCy5及びCy3標識されたNdeII消化ヒトDNAを使用して実施された。ゲノムDNAは全血から単離された(Puregene DNA単離キット、Gentra Systems)。
【0081】
実施例1のλファージDNAについてと類似の結果が得られた。図2Aに示すように、すべての一本鎖DNAフラグメントはゲルを貫いて対角に横たわる線を形成した(赤色)。二本鎖DNAフラグメントは、一本鎖フラグメントの線に対して左に横たわる弧を形成した(緑色)。消化されたヒトDNAの多数さ及び長さ不均一性のために、DNAバンドの分離は得られなかった。変性されたCy5−及びCy3−DNAフラグメントを含有するプール(図2B)並びに未処理のCy5−及びCy3−DNAフラグメントを含有するプール(図2C)の分離は、結果として共泳動をおこした(それぞれ黄色の線又は弧)。もしすべてのDNAフラグメントが変性されていたら、この線は図2Aの赤色の線に匹敵した。もしすべてのDNAフラグメントが未処理であったら、この黄色い弧は図2Aの緑色の弧に匹敵した。
【0082】
実施例3:複合DNAサンプル中での、バルジ含有DNAフラグメントの存在を明らかにするための2D−SDE
274bpのDNAフラグメントが、ある個体由来のC−kit遺伝子中のエキソン11から増幅された;この個体は、このエキソン中の9bpの欠失変異のためにヘテロ接合体として知られる。そのような増幅の結果4つの異なるDNAハイブリッドが生じた。2つのホモハイブリッド(265bp及び274bp)、及び各々がセンス又はアンチセンス鎖のいずれかに9塩基バルジを含有する2つの265bpのヘテロハイブリッド。PCR産物をGFX PCR及びゲルバンド精製キットを使用して精製した。
【0083】
GeneRuler(商標)100bp DNA ラダープラス(Ladder Plus)(100〜3000bpの範囲の14種類のフラグメント)をT4 DNAポリメラーゼ(Fermentas)により標識した。最初にラダーをdNTP’非存在下でT4 DNAポリメラーゼで処理した。これらの条件下でこの酵素は強い3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を持つ。次にCy5−dCTP並びに非標識dATP、dTTP及びdGTPの混合物を反応に加えて酵素が強いポリメラーゼ活性を持つようにした。次にこのラダーをGFX PCR及びゲルバンド精製キットを使用して精製した。
【0084】
このPCR産物及びCy5標識されたDNAラダーをプールし、第2次元電気泳動を55℃で実施した以外は実施例1に記載されたのと同じ条件及び設定を使用して2D−SDEにより分離した。
【0085】
2D−SDE分離後、ゲルを50mLの1X TBE中でエチジウムブロミド(EtBr)(1μg/mL)により染色した。EtBr染色された、つまりCy5標識されたDNAフラグメントの蛍光検出はAP Biotech’s Typhoon8600可変方式イメージャーで実施した。図3に示すように、完全マッチDNAフラグメントは弧を形成した。バルジを含有する2つのDNAフラグメントは完全マッチDNAの弧の前方に泳動し、そして第2次元(即ち垂直方向)においては完全マッチ対応物と並んだ。
【0086】
実施例4:λファージDNAの、再結合効率推定及び再結合速度論計算のための2D−SDE
λファージDNA(10μg)を30UのBanI(Amersham Biosciences)により50℃で60分間消化した。これにより中間の複雑さのサンプル(サイズ範囲6〜18362bpの26種類のDNAフラグメント)が作成された。次に、消化されたDNAを実施例1に記載されるようにCy5により標識した。
【0087】
BanI消化されCy5標識されたλファージDNAの同一のサンプル(10μLの0.3×SSC中に114ng)10個を95℃で5分間変性させた。次に温度を最大速度で68℃に下げた。サンプルを0、1、2、5、15、30、60、120、180及び1440分の時間ポイントで氷/水スラッシュへ直接移した。
【0088】
各サンプルを、2D−SDEを使用し、7M尿素を含有する8%PAGE中で、第1次元では45分間、そして第2次元では55℃で60分間、分離した。その他は実施例1に記載されるのと同じ設定を使用した。いくつかの時間ポイントにおける分離の例を図4に示す。
【0089】
電気泳動後すべてのゲルは実施例1に記載されるようにCy5蛍光を走査された。我々は、すべての時間ポイントにおいて、一本鎖DNA及び二本鎖DNAを表す弧の蛍光密度を、ImageQuant5.1(Amersham Biosciences)を使用して測定した。このデータから我々は各時間ポイントにおける一本鎖DNAの分率(fraction)を計算し、1/(一本鎖DNA分率)を時間に対してプロットした(図5)。もしデータが理想的な二次反応速度論を反映していれば、このプロットは直線関係を与え、直線の傾きは見かけの二次反応速度定数kを表すはずである。最適な直線式からt1/2は7110秒、そしてC0t1/2は0.24Msと計算された。この反応のC0t曲線もプロットし、理想的な二次反応C0t曲線と比較した(図6)。
【0090】
実施例5 複合PCR反応の品質を推定するための2D−SDE
全血から単離されたDNAサンプルをBstYIで消化し精製した。制限フラグメントにアダプターをライゲートした。アダプター特異的プライマー及び内的なBbsI部位を有するAlu3’特異的プライマーを使用する複合PCRは、WO00/24935(参照することによりそのまま本明細書に組み込まれる)にさらに詳細に記載されるように実施された。結果として得られたAlu3’フラグメントをGFX(商標)カラムを使用して精製した。この複合PCR中の異なるフラグメントの推定数は1〜3×105のオーダーにある。
【0091】
複合PCR反応の分画を実施例3と同じ条件を使用して2D−SDEにより分離した。分離後、ゲルをEtBrで染色し、そして実施例3に記載されるように蛍光走査した。PCR産物のかなりの分画が一本鎖であり、増幅効率のよさを証明していた(図7)。
【0092】
実施例6:特徴付けされていないDNAサンプルの構成を明らかにするための2D−SDE
高純度ウイルス核酸キット(High Pure Viral Nucleic Acid Kit)(Roche)により健康な成体の血漿から遊離核酸を単離した。すべての試薬を5倍量用いた以外は製造者のプロトコルに従った。単離後、特徴付けされていないDNAサンプルをSpeedVacを使用して濃縮した。濃縮されたDNAサンプル(23ng/mL)を実施例1に記載されるように2D−SDEを使用して分離した。2D−SDE分離の後、ゲルをEtBrで染色し、そして実施例3に記載されるように走査した。2D−SDEは、この血漿からの特徴付けされていない核酸サンプルは、様々な長さの一本鎖及び二本鎖DNAフラグメント両方を含有することを明らかにした(図8)。
【0093】
実施例7:cDNA第1鎖合成効率を推定するための2D−SDE
高レンジRNAラダー(High Range RNA ladder)(200〜6000nt)をFermentasより購入した。このラダーを、含有ランダム6量体によってcDNA合成が開始されるRevertAid H Minus第1鎖cDNA合成キット(First Strand cDNA Synthesis Kit)(Fermentas)を使用して第1鎖cDNA合成にかけた。反応混合物にCy5−dCTPを添加して合成されたcDNA鎖を標識した。第1鎖合成反応後に取り出したサンプルを100bp二本鎖DNAラダー(Fermentas)と混合し、そして2D−SDEを使用して分離した。実施例3に記載されるのと同じ条件及び設定。この混合物は予想されたように大量のRNA:DNAハイブリッドを含有することが2D−SDEで明らかになった(図9)。RNA:DNAハイブリッドを表す特異的な弧が形成された(緑色)。dsDNAを表す弧(赤色)はRNA:DNAの弧の前方に位置していた。
【0094】
実施例8:複合DNAサンプル中の部位特異的一本鎖切断を検出するための2D−SDE
我々は、2D−SDEシステム中での変性後に、ホスホジエステルDNA骨格中にニック又は一本鎖切断を含有する二本鎖DNAフラグメントは、元々の二本鎖DNAフラグメントよりも短い一本鎖DNAフラグメントを生じると仮定した。そのような一本鎖DNAフラグメントは無傷な二本鎖DNAフラグメントを表す弧の前方に泳動するであろう。複合DNAサンプル中の一本鎖切断を検出し定量するツールとして2D−SDEが使用可能かどうかテストするために、以下の実験を実施した。
【0095】
λファージDNAを実施例4に記載されるようにBanIで消化しCy5により標識した。次にCy5標識されBanI消化されたλファージDNA(500ng)を50μLの1X NE緩衝液(N.BstNBI)中で10UのニッキングエンドヌクレアーゼN.BstNBI(New England Biolabs)と共に55℃で60分間インキュベートし、部位特異的一本鎖切断を産生させた。反応混合物から、DNAをGFX精製キットを使用して精製した。
【0096】
N.BstNBI処理したDNA及び未処理の対照DNAを、実施例3に記載されるのと同じ条件及び設定を使用し、2D−SDEを使用して分離した。
DNAが特異的なニッキングエンドヌクレアーゼで処理されていると、かなりの量のDNAバンドが、二本鎖DNA分画を表す弧の前方に横たわることが検出された(図10)。
【0097】
実施例9:複合DNAサンプル中の、酸化的に誘導された一本鎖切断を検出するための2D−SDE
Cy5標識されたλファージDNA(実施例4に記載されるように作製)をフェントン様反応中でH2O2に曝して非特異的な一本鎖切断を形成させた。λファージDNA(228ng)を20μLの0.2mM H2O2(Merck)及び0.4mM CuSO4(Merck)中で、0、1、5、10、20、又は30分間インキュベートした。その次に、反応を1μLの0.5M EDTA(Sigma)添加により停止させた。
【0098】
一例としてH2O2で5分間処理したDNAフラグメントと未処理の対照DNAフラグメントを、実施例3に記載されるのと同じ条件及び設定を使用して2D−SDEで分離した。二本鎖DNAフラグメントを表す弧の前方に、いっぱいに広がった蛍光シグナルが検出されたが、強いシグナルスポットは検出されなかった。これは一本鎖切断がランダムに形成されたことを示唆していた(図11)。
【0099】
実施例10:複合DNAサンプル中の温度誘導分解をアッセイするための2D−SDE
λファージDNAを、実施例4に記載されるようにBanIで消化しCy5により標識した。Cy5標識されBanI消化されたλファージDNA(228ng)を、20μLの水中で、4℃又は60℃のいずれかで20時間インキュベートした。
【0100】
これら2つのDNAサンプルを、実施例3に記載されるのと同じ条件及び設定を使用して2D−SDEを使用し分離した。2D−SDE分離は、これらの極端な条件が、非特異的な一本鎖切断を誘導し、DNAフラグメントの鎖数を1本にし、そして2つの最小の二本鎖DNAフラグメントの完全な変性を誘導したことを明らかにした(図12)。
【0101】
実施例11:複合DNAサンプルの長期保存中のDNA分解をアッセイするための2D−SDE
λファージDNAを制限酵素NdeIIで消化し、実施例1に記載されるようにCy5により標識し、そして精製した。このサンプルを1X TE緩衝液中で、4℃で6ヵ月保持した。6ヵ月後に同一の新鮮なDNAサンプルを作製し、これら2つのサンプルを実施例1に記載されるように2D−SDEを使用して分離した。
【0102】
無傷なdsDNAフラグメントの弧の前方に横たわるDNAバンドの密度が増大したことから判断できるように、線状DNAフラグメントを長期間保存すると部位特異的な一本鎖切断が誘導されることが、2D−SDE分離で明らかになった(図13)。
参考文献
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】実施例1の2D−SDE分析の蛍光像。2D−SDEシステムは、λファージゲノムを表す一本鎖と二本鎖DNAフラグメントを分離するために使用した。 1A:Cy5標識DNAフラグメント(緑色)は未処理のため二本鎖で残っているが、Cy3標識フラグメントは一本鎖型に変性された。二本鎖フラグメント(緑色)は弧2を形成し、一本鎖フラグメント(赤色)は対角線1を形成した。分離は7M尿素を含有する10%PAGE中で実施された。1B:Cy5標識フラグメント及びCy3標識フラグメント両方が一本鎖型に変性され、共泳動して黄色の対角線3を形成した。 1C:Cy5及びCy3標識DNAフラグメント両方が未処理で残り、共泳動して黄色の弧4を形成した。DNAフラグメントの小さな分画が、一本鎖DNAフラグメントについて予想されるように泳動した。これはおそらく変性された二本鎖DNAフラグメントが、第2次元電気泳動の前にシステム中で部分的に再アニーリングしたためであろう。この分画は、第二次元分離を55℃で実行して実験を繰り返した時には見られなかった(示さず)。
【図2】実施例2に記載の2D−SDEゲル分析の蛍光像。2D−SDEは、ヒトゲノムを表す一本鎖DNAと二本鎖DNAフラグメントを分離するために使用した。 2A:未処理(二本鎖)のCy5標識ゲノムDNAフラグメント(緑色)及び変性されたCy3標識ゲノムDNAフラグメント(赤色)のプールを電気泳動した。一本鎖DNAフラグメント(赤色)は対角線6を形成し、弧5を形成した二本鎖DNAフラグメント(緑色)から分離された。 2B:変性された(一本鎖)Cy5及びCy3標識DNAフラグメントのプールを電気泳動した。すべてのDNAフラグメントが、元々のゲル中に黄色で示す1本の対角線7に共泳動した。 2C:Cy5及びCy3標識DNAフラグメントの両方が未処理(二本鎖)であり、共泳動して、元々のゲル中に黄色で示す弧8を形成した。
【図3】実施例3に記載される、14種類の完全マッチDNAフラグメントの混合物からバルジ含有へテロ二重鎖を分離するために使用された2D−SDE分析からの、EtBr染色されたPAGEゲルの蛍光像。274bpの長いPCR産物が、C−kit遺伝子中でエキソン11の対立遺伝子の1つにおいて9bpの欠失を持つ個体から増幅された。PCRの結果2つのバルジ含有へテロ二重鎖及び2つのホモ二重鎖が形成された。このPCR産物を14種類の完全マッチDNAフラグメントと混合し、2D−SDEを使用して分離した。2つのヘテロ二重鎖(9、10、図中では緑色)は完全マッチのCy5標識二本鎖DNAフラグメントを表す弧の前方に泳動した。Cy5標識フラグメントは、もしフラグメントがEtBrでしっかり染色できるくらい充分に長ければ図中赤色(R)又は黄色(Y)である。PCR反応で産生されたホモ二重鎖(11、ゲル中緑色)は14種類のCy5標識完全マッチDNAフラグメントの弧の中で予想されたように泳動した。
【図4】実施例4に記載される、再結合反応の異なる時間ポイントからのサンプルの2D−SDE分離。変性後(a)は、一本鎖DNAフラグメントを表す対角線のみが検出された。再結合時間(分で示す)が長くなるにつれて、二本鎖DNAフラグメントを表す弧の密度が増加した。未処理のDNA混合物は、(e)に示す、二本鎖DNAフラグメントを表す弧を生じた。
【図5】実施例4に記載されるように実行された再結合反応の二次反応プロット;y軸に1/(ssDNA分率)を時間の関数として示す。このプロットはデータの強い直線関係を明らかにし、そのため再結合反応から予想された二次反応速度論を反映する。最後の時間ポイント(68,400秒)のデータを含めた時も同じ傾きが観察された。
【図6】実施例4に記載される、2D−SDEによりアッセイされたDNAフラグメントの再結合速度論。再結合反応から得られたデータポイントを菱形(◆)で示す。観察されたkを使用しCについての理想二次反応方程式を解いた後、理想的なC0t曲線が得られた(赤色の線でプロットした)。C0=DNAリン酸塩の全モル濃度、t=時間(秒)。
【図7】実施例9に記載されるように実行された複合PCR反応の品質を評価するための2D−SDE分析の蛍光像。複合PCR反応からの非標識産物を2D−SDEを使用して分離した。ゲルは分離後にEtBr染色された。二本鎖DNAフラグメントを表す弧及びssDNAフラグメントを表す線の両方が得られた。これは複合PCR反応中にかなりの量のssDNA産物があることを示唆する。EtBrはより長いDNAフラグメントをより短いフラグメントよりも強く染色することに注意する。
【図8】実施例10に記載されるように実行された、健康な成体の血漿から単離された、特徴付けされていないDNAの構造を明らかにするために使用された2D−SDE分析の蛍光像。一本鎖及び二本鎖DNAフラグメントの両方が検出された。
【図9】実施例11に記載されるように実行された、第1鎖cDNA合成の効率を明らかにするために使用された2D−SDE分析の蛍光像。Cy5標識dCTP(緑色)を使用してcDNAの第1鎖を合成した後、生成物をFermentasの非標識100bp二本鎖DNAラダー(赤色)と混合した。RNA:DNAハイブリッド(12)及び一本鎖DNA分画(13)を表す2つの緑色の弧/線が得られた。EtBr染色された二本鎖DNAラダーを表す1つの赤色の弧(14)が得られた。
【図10】実施例5に従って実行された、2D−SDEによりアッセイされた複合DNAサンプル中の部位特異的一本鎖切断。 10A:Cy5標識された、未処理のBanI消化λファージDNA。 10B: 特異的なニッキングエンドヌクレアーゼN.BstNBIで処理し部位特異的一本鎖切断を形成させた10Aと同一のDNAサンプル。N.BstNBIで処理した後、10Aに示すように、無傷な二本鎖DNAフラグメントを表す弧の前方に泳動するDNAフラグメントの量が増大した。
【図11】実施例6に記載される、複合DNAサンプル中の酸化的に誘導された一本鎖切断を検出するための2D−SDE分析の蛍光像。λファージDNAをフェントン様反応中でH2O2に曝し、2D−SDEを使用して分離した。図中に見られるように、いっぱいに広がった蛍光シグナルが、二本鎖DNAを表す弧の前方に検出された。これは一本鎖切断の非特異的形成のためであった。もし一本鎖切断が部位特異的であったら、蛍光シグナルスポットの形成が予想されるであろう。
【図12】実施例7に記載される、複合DNAサンプルの温度誘導分解をアッセイするための2D−SDE分析の蛍光像。 12A:蒸留水で希釈され4℃で20時間保持された、未処理のCy5標識BanI消化λファージDNAの2D−SDE分離。二本鎖sDNAフラグメントを表す弧の前方にDNAフラグメントの微弱なスポットがいくつか検出でき、一本鎖切断の部位特異的な形成が示唆された。 12B:60℃で20時間保持された同一のDNAサンプル。そのような極端な条件下では、DNAサンプル中に少なくとも3つの異なる変化が検出された:I)一本鎖切断の非特異的な形成の結果、二本鎖DNAフラグメントを表す弧の前方にDNAのスミアが生じた、II)異なる長さの一本鎖DNAフラグメント量の増大の結果、ゲルを貫いて対角に横たわる一本鎖フラグメントの線を生じた、及びIII)分析された2つの最短DNAフラグメントの完全な変性の結果、二本鎖DNAフラグメントを表す弧の中の予測された場所よりも本質的には垂直方向上方に一本鎖フラグメントの線の内部に横たわる強いDNAスポットが生じた。
【図13】実施例8に記載される、複合DNAサンプルの時間誘導分解をアッセイするための2D−SDEの蛍光像。第2次元電気泳動を室温で実施した結果、変性ステップの後、フラグメントがかなり再結合した(二本鎖DNAフラクションを表す弧の前方の線)。13A:新しく調整されたλファージDNAサンプルの分析。二本鎖DNAフラグメントを表す弧の前方に、相対的に少ないスポットが検出された。13B:6ヵ月保持した古いλファージDNAサンプルの分析。二本鎖DNAフラグメントを表す弧の前方に増大した量のスポットが検出された。これは長期間の間のDNAの部位特異的分解を示唆する。
【図14】本発明の好ましい電気泳動システムの概略図。
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸フラグメント(DNA、RNA及びDNA/RNAハイブリッド)の単純及び複合(simple and complex)調製物をスクリーニングする分野のものである。本方法は一本鎖及び二本鎖フラグメントを長さに依存した様式で分離する。各群においてフラグメントはそれらの長さに従って分離される。分離後、フラグメントを単離し、そしてさらに特長付けすることができる。適用例には以下が含まれるがこれらに限定されない:I)複合核酸サンプルの再結合効率の推定、II)一本鎖切断を含有するDNAフラグメントの検出及び単離、III)生物学的サンプル中の一本鎖及び二本鎖核酸両方の量及び長さ分布の推定、IV)PCR産物及び他のインビトロ増幅産物を含む核酸調製物の品質評価、及びVI)複合混合物中のcDNA合成効率及びRNA:DNAハイブリッド存在の推定。
【背景技術】
【0002】
核酸は、それらの鎖数(strandness)に従って、一本鎖(ss)又は二本鎖(ds)分子を包含する2つの主な群に分けられる。RNA分子はたいてい一本鎖であるが、ポリマー鎖の局所的な折りたたみの結果異なる種類の鎖内二重鎖を生じ得る。DNA分子は通常二本鎖であり、これらの鎖は相補的で、そして二重らせんを形成している。二本鎖核酸分子は、2本の鎖の間の可逆的な非共有相互作用によって形成される。核酸鎖の相補的結合の可逆性は、遺伝材料の半保存的複製及び遺伝子発現のために決定的に重要である。
【0003】
インビトロでの核酸分析は、しばしばそれらの鎖数を頼りにしている。例えば、核酸再結合(renaturation)の測定は一本鎖型から二本鎖型への遷移をモニターする能力に依存する。さらに、二重らせんの可逆性のため、インビトロ条件が二本鎖核酸分子から一本鎖分子への転換、又はその逆を容易にすることもある。再結合は分子生物学の多くの異なる方法(例えばハイブリダイゼーション、PCR及びcDNA均等化)において重要なステップである。そのため、核酸調製物の鎖数を推定する単純且つ効率のよい方法は、非常に重要である。
【0004】
一本鎖及び二本鎖核酸を両者の複合混合物から量の推定又は分離/単離するためのいくつかの方法が記載されてきた。変性又は再生の間、一本鎖型と二本鎖型の間の遷移は、淡色効果のためUV光吸収変化の観察によってモニターできる。アクリジンオレンジの蛍光の赤対緑の比率は一本鎖及び二本鎖核酸のレベルを反映するが、この比率は例えば塩濃度及び色素対核酸の比率のような因子にも依存する(McMasterとCarmichael、1977;Spano、Bondeら、2000)。これらの2方法は一本鎖型と二本鎖型の間の比率を推定させ得るのみで、これらを使用してどちらの分画も物理的に分離及び単離することはできない。またこれらを使用して複合調製物中の核酸フラグメントの鎖数と長さとの相関を分析することもできない。一本鎖核酸に勝る二本鎖核酸のヒドロキシアパタイトに対する強い結合優先は、一本鎖と二本鎖核酸の物理的分離を可能にする(SambrookとRussell、2001)。強いヒドロキシアパタイト結合に基づいて単離される二本鎖分画は、部分的に一本鎖であるか、又は完全に一本鎖だが局所的折りたたみを有することにより二本鎖構造(例;ヘアピン)を形成するフラグメントも含有することがある。一本鎖核酸のヌクレアーゼ分解は、一本鎖型と二本鎖型を両者の複合混合物中で識別するためにしばしば使用される。ここでは二本鎖分画のみを回収できるが、それはステムループのような局所的二本鎖構造を有する一本鎖核酸を含有することがある。ヌクレアーぜ分解の主な限界は、非特異性、即ち二本鎖核酸も切れ目(ニック)を入れられ、そして様々な程度に分解されることである。
【0005】
上述の方法のいずれも一本鎖又は二本鎖核酸分画の長さ組成について直接の情報を提供しない。さらに、一本鎖及び二本鎖核酸分画両方の単離を可能にするのはヒドロキシアパタイト法のみである。
【0006】
一般的に二本鎖核酸フラグメント(>50bp)は、それらの一本鎖の対応物よりもポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)において泳動速度が速い。そのため、等しい長さの二本鎖と一本鎖フラグメントは異なって泳動(migrate)し、一次元電気泳動において分解されるであろう。この周知の現象は、例えば、組み合せヘテロ二重鎖/一本鎖コンホメーション多型分析法で利用されている(Ravnik−Glavac、Glavacら、1994;Sainz、Huynhら、1994)。鎖数依存分離に基づくすべての一次元電気泳動法は、ほんのわずかの核酸フラグメントしか含有しないサンプルに限定される。もしサンプルが長さの異なる多くの核酸フラグメントを含有していると、長い二本鎖フラグメントがより短い一本鎖フラグメントと共泳動して重なり合うことがあり、それゆえ二本鎖フラグメントの集団を一本鎖フラグメントの集団から分解することはできない。このため複合核酸調製物の鎖数をモニターするためのゲル電気泳動の使用は予め除外されてきた。
【0007】
複合混合物から個々の核酸フラグメントをそれらの鎖数相異に基づいて分離する方法は非常に有益であろう。そのような方法は、もしそれらが一本鎖及び二本鎖分画の長さ分布を同時に分析することに使用できたら尚いっそう用途が広く強力であろう。そのような方法が使用され得る例は以下を含むがこれらに限定されない:I)各々のクラスの定量又は単離を可能にする一本鎖と二本鎖核酸フラグメントの物理的分離、II)生物学的サンプル中の一本鎖及び二本鎖核酸両方の相対量及び長さ分布の推定、III)時間−ポイント分析による再結合速度論の測定、IV)大量の無傷な分子からの一本鎖切断を含有する二本鎖核酸フラグメントの単離、V)PCR産物及び他のインビトロ増幅産物を含む複合核酸調製物の品質のモニター、VI)複合混合物中のcDNA合成効率及びRNA:DNAハイブリッド存在の推定、及びVII)複合核酸サンプルの標識効率のモニター。
【0008】
遺伝情報は、核酸鎖中の塩基の線状配列によって暗号化されている。核酸分子の「鎖数(strandness)」という用語は、各核酸分子中の核酸鎖の数を記述するために本明細書で使用される。核酸鎖は線状に共有結合されたポリヌクレオチドから構成される。最も頻繁には核酸分子は一本鎖又は二本鎖であり、ここで二本鎖分子は2本の一本鎖核酸分子間の可逆的な分子間水素結合によって形成される。場合によっては、核酸は多鎖、例えば三重らせん又は四重であり得る。
【0009】
本明細書中において、用語「コンホメーション」は、核酸分子の包括的な3D構造を記述する。同一の一本鎖核酸分子は、例えば分子内水素結合及び折りたたみのために様々な異なるコンホメーションをとり得る。一本鎖核酸の局所的分子内二次構造の相異もまたコンホメーションに影響を与え得る;したがってそのような相異もまた本明細書で使用されるようにコンホメーション相異という用語の範疇に入る。コンホメーション多様性は核酸の二本鎖においてはもっと制約されている。鎖数は核酸分子の全体的コンホメーションに影響を与え得るが、コンホメーションに従って分子を分離する現行の方法は、複合核酸混合物を鎖数に従って分離するために使用することができない。
【0010】
本発明者らは、以前に1つの物理化学的方法、二次元コンホメーション依存電気泳動(2D−CDE)を開発した(EP1476549参照)。この方法は、二本鎖DNAフラグメントをそれらの長さばかりでなくコンホメーションに従って分離可能にする。2D−CDEは二本鎖核酸分子のコンホメーション分離のためにデザインされており、そのため鎖数に従った分離には適さない。2D−CDEの第1次元の間に二本鎖分子のさらなるコンホメーション相異が理想的に亢進又は誘導されるが、鎖数及び長さのみに従った分離を確実にするためには、鎖数依存分離は理想的には、一本鎖又は二本鎖分画の両方においてそれぞれのコンホメーション相異を減少又は排除するべきである。
【0011】
Kovarらは「二次元一本鎖コンホメーション多型分析」(Kovar、Jugら、1991)のための方法を記述した。第1次元は折りたたみを防ぐため変性条件下で実施される(すべての二本鎖DNA分子は一本鎖にされる)。そのためすべてのフラグメントは一本鎖であり、変性条件が一本鎖核酸分子各々のコンホメーション相異バリエーションを減少させるため、長さに強く従って泳動する。第1次元はキャピラリー電気泳動システム中で実施される。第1次元の後、このキャピラリーゲルマトリックスは水平ゲル電気泳動システム中の非変性ポリアクリルアミドゲルマトリックス上に置かれる。第2次元電気泳動の間すべての核酸分子は第1次元中と同様に一本鎖である。第2次元においては変性剤の欠如のため一本鎖分子は様々なコンホメーションに適応でき、分離はフォールドバック(fold-back)コンホメーション及び長さの両方に従うであろう。しかしながらこの方法は一本鎖と二本鎖の線状核酸分子の分離には使用できない。この方法は、一本鎖フラグメントの長さ及びフォールドバックコンホメーションの相異に従った分離のみを可能にする。
【発明の開示】
【0012】
発明の概要
本発明は新規な二次元(2D)ゲル電気泳動システムに基づいて核酸フラグメントの鎖数依存及び長さ依存の分離を達成する方法を提供する。この二次元鎖数及び長さ依存電気泳動法及びシステム(本明細書では頭字語2D−SDEを使用する)は、核酸フラグメントを一次元においては長さ及び鎖数の両方に基づいて分離するが、第2次元においては長さのみに従って分離する。このシステムは一本鎖フラグメントの集団を二本鎖フラグメントの集団から両者の複合混合物中で分離可能であり、各集団内での長さ分布決定を可能にする。さらにこのシステムは片方又は両方の分画の単離という選択肢を提供する。
【0013】
理想的な2D−SDEシステムは、好ましくは、2つの異なるゲルマトリックス間での面倒な転移を排除した単一のゲルマトリックスに基づく。第1次元の後に物理的又は化学的因子を導入(又は除去)してすべての核酸フラグメントの鎖数に影響を与え、それによりすべての分子が元々のサンプル中のそれらの元々の鎖数とは独立して、第2次元電気泳動において同じ長さ依存様式で泳動するようにさせ得る。
【0014】
多くの化学的因子が核酸フラグメントの鎖数に影響を与えるとして報告されており、それには例えばホルムアミド、尿素及びDMSOのような変性剤が含まれるがこれらに限定されない。温度のような物理的因子も使用できる。効果的な変性を確実にするために、化学的及び物理的因子の両方の組み合わせがしばしば使用される。
【0015】
本発明の方法は異なる供給源から得られる核酸フラグメントに適用可能であり、また核酸フラグメントのいかなる特別な前操作をも必要としない。
本発明は、例えば以下のような、しかしこれらに限定されない異なる情況において使用できる一般的な方法を提供する:I)片方又は両方のクラスの定量及び/又は単離を可能にする一本鎖と二本鎖核酸フラグメントの物理的分離、II)生物学的サンプル中の一本鎖及び二本鎖核酸両方の量及び長さ分布の推定、III)再結合速度論の測定、IV)大量の無傷なフラグメントからの一本鎖切断を含有する二本鎖核酸フラグメントの単離、V)PCR及び他のインビトロ増幅産物を含む複合核酸調製物の品質のモニター、VI)複合混合物中のcDNA合成効率及びRNA:DNAハイブリッド存在の推定、及びVII)複合核酸サンプルの標識効率のモニター。
【0016】
本発明の方法は新規な二次元鎖数依存電気泳動システム(2D−SDE)を利用する。第1次元において、等しい長さの一本鎖と二本鎖核酸フラグメントは異なる速度で泳動する。第1次元分離の後、ゲルマトリックスを物理的及び/又は化学的作用因子(agent)処理して二本鎖核酸分子を完全に変性(鎖分離)させる。次に第2次元を好ましくは第1次元と垂直に行う。他の角度も使用し得るが、第2次元を第1次元に対して90°で行うことにより最大の解像度が得られる。第2次元において、核酸フラグメントは今やすべて一本鎖型であるので、それらの長さのみに従って分離される。
【0017】
2D−SDEシステムはその結果すべての核酸フラグメントをそれらの鎖数に基づいて分離する。一本鎖及び二本鎖核酸の各集団において、すべてのフラグメントはそれらの長さに従って分離される。一本鎖核酸フラグメントの局所的分子内二次構造は第1次元において最小化されるため、一本鎖核酸フラグメントの泳動速度は両方の次元で同じである。この結果、両方の次元で一本鎖である様々な長さの核酸フラグメントによる対角線が形成される。元々二本鎖であった核酸フラグメントの泳動速度は2つの次元間で異なる(第1次元における二本鎖泳動速度は第2次元における一本鎖泳動速度よりも相対的に速い)。相対的泳動速度の相異は長さに依存する。その結果この相異は、元々一本鎖の核酸フラグメントの対角線からは分離され且つその後方に位置する弧(arc)を形成する。分離後、両方の核酸フラグメント分画はゲル中で定量又は単離可能である。
【0018】
もしゲルが化学的変性剤を充分高濃度で含有していれば、一本鎖核酸フラグメントはPAGE中で本質的にその長さのみに従って泳動する。例えば、尿素はPAGE中でssDNAフラグメントの二次構造を強く減少させる(Viovy、2000)。一本鎖核酸フラグメントのこの挙動はDNAシークエンスの普通の技術で使用されている。そのような条件下では、ssDNAフラグメントはフレキシブルな線状多価電解質として挙動し、分子の長さに従った分離を可能にする(Tinland、Pernodetら、1996)。
【0019】
尿素のような化学的変性剤の添加は一本鎖核酸フラグメントの二次構造を強く減少させるが、二本鎖核酸フラグメントは変性(鎖分離)しない。そのため、変性剤の添加は一本鎖フラグメント及び二本鎖フラグメントの両方を本質的にそれらの長さに従って泳動させるが、長さ依存泳動因子は同じではなく、即ち等しい長さの一本鎖と二本鎖フラグメントは共泳動しない。
【0020】
発明の詳細な説明
本発明は、一本鎖及び二本鎖核酸フラグメントを両者の複合混合物から分離し、そして所望により単離する方法を提供する。本発明は核酸調製物を、それらの生物学的機能又はゲノム位置の予備知識の有無に関わらず、それらの鎖数についてスクリーニングするために使用できる。本発明は一本鎖及び二本鎖核酸フラグメントの長さ分布の決定にも使用できる。
【0021】
本明細書の記載から推測できるように、本発明は線状、即ち非環状核酸の分離のみに使用できる。
本発明に従った分析に適切な核酸サンプルは、50〜10,000bp(又はnt)の間のサイズ範囲、しかし好ましくは約100〜1000bp(又はnt)の範囲内の線状の一本鎖及び/又は二本鎖核酸フラグメントを包含してよい。核酸の供給源は、原核生物、真核生物、ウィルス又は合成物でもよい。供給源材料は、ゲノムDNA、cDNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、PNA、LNA、プラスミドDNA、又はウイルスが自然発生しているか、異なる供給源からの核酸のベクターとして働いている場合を含むウィルスDNA若しくはRNA、又はその他でよい。核酸の供給源に依存して、それらは何らかの精製、例えば細胞供給源からの単離、蛋白質からの分離、制限酵素及びPCR阻害剤の除去等を必要とするかもしれない。本方法は複合DNAサンプル、即ち多数の異なる核酸フラグメントを含有するサンプル(例えば全ゲノム又はそのサブセットのフラグメント、及び1以上の個体からのゲノム核酸の混合物等)に適用可能であるため特に有利なことは強調されるべきである。
【0022】
本発明の望ましい目標に依存して、ある所定の適用のために分析されるサンプルは、単一の個体、複数の個体、一個体からのゲノムサブセット若しくは複数の個体からの同じゲノムサブセット、又は多数のプールを組み合わせたプールでもよく、そのとき核酸は、サンプルのプール、及び/又はプールの組み合わせの、前又は後に、様々な仕方で処理、例えば切断、変性及び再結合されていてもよい。
【0023】
望ましい長さの核酸は、特にDNAの場合は、制限酵素消化、PCR又は他のインビトロ増幅技術の使用、ライゲーション、化学的又は物理的に誘導された切断その他によって提供できる。標的とする核酸は同位体又は非同位体シグナルによって標識されていてもよく、それらは分離後の特異的捕獲を可能にするためのタグを含有できる。本方法のいくつかの実施態様においては、アダプター又はリンカーが核酸フラグメントにライゲートされている。
【0024】
有用な実施態様において本発明の方法は、1又はそれを超える前記の一本鎖及び二本鎖分画内の長さ分布を、それらの分離後に推定することを包含する。これは、既知の異なる長さの一本鎖及び二本鎖核酸両方を含有し電気泳動後適切な染色によりゲル中に不連続なスポットを生じる内的標準を、電気泳動に先立ってサンプルに添加することにより容易に達成される。好ましくは、そのような内的標準は、例えば蛍光マーカー又はその他のマーカーで予め標識される。
【0025】
電気泳動後、好ましくは、異なる分画は、各分画内の長さ分布だけでなくサンプル中の一本鎖と二本鎖核酸の相対量を推定するため分析される。本明細書にさらに記載されるように、そのような分析は画像分析技術によって容易に達成され、そして自動化され得る。
【0026】
本発明はさらに、本発明の方法を使用して複合核酸サンプルの鎖数を決定するためのキットを提供する。このキットは、第1次元電気泳動に適切な変性剤を含有する予め作製された2Dゲル、又は変性剤及びゲル化学薬品を含む2Dゲル作製のための手段を含有できる。さらに、キットは第1及び第2次元電気泳動両方のために適切な緩衝液又は緩衝液成分を含有し、またすべての二本鎖分子の変性を容易にするため第2次元電気泳動の前にゲルを処理する作用因子を所望により含有できる。そのうえキットは、商業的に入手可能な電気泳動システムのために適切なアダプター及び耐熱性スペーサーを含有できる;現在入手可能なシステムと共に一般に供給されるアダプター及びスペーサーは、第1と第2電気泳動ステップの間の本発明の変性ステップにおいて望まれ得る高温(例えば約75〜95℃の範囲内)に耐えられないためである。さらにキットは、第2次元に先立つ変性ステップの間蒸発を防ぐために、その中にゲルを挟む特定の耐熱性の閉鎖容器又は袋を含有できる。有用な実施態様において、本発明のキットは、すべての鎖数分画の長さ分析及び定量を容易にするため、一本鎖及び二本鎖核酸フラグメント両方について内的標準を含有できる。そのような内的標準は、分析するためにサンプルを添加するサンプル緩衝溶液、又は電気泳動に先立ってサンプルと混合するのに適切な他の形で供給できる。さらに、各電気泳動ステップが完了したことを示すために検出可能なマーカー(例えば色素分子)を含むこともできる。
【0027】
本発明のキットは、さらに、電気泳動後にゲルマトリックス中で前記核酸を検出可能にするために、ゲルマトリックス中で1又はそれを超える分離された分画中の核酸分子と結合する検出剤を含んでもよく、それらには本明細書中に挙げられるものが含まれる。そのような検出剤は、電気泳動に先立ってサンプルと混合するか(例えばSYBR緑色色素又はUniversal Linkage Systems(ULS)の場合のように)、又は電気泳動後にゲルを処理する形で供給してもよい。
【0028】
本発明のもう1つの態様は、本明細書に記載される方法を実施するためのシステムを提供する。そのようなシステムは、支持プレートの間に挟まれたゲルを支持するための電気泳動カセットを含み、このカセットはゲルがカセット内に適切に配置されるように成型され得る;あるいは、カセット中に適合するプレキャストゲルがシステムと共に供給される。もう1つの実施態様においては、カセットは、作製され内部に挿入されたゲルを有する単回使用ユニットとして供給される。
【0029】
このシステムはカセットを挿入するための区画(compartment)を有する電気泳動装置を包含する。分析するためにサンプルをカセット中にロードするため、サンプルポートがこの区画に隣接して、又は区画内に位置している。好ましい実施態様において、この区画は供給されるカセットがその内部にぴったり適合するように成型され、電気泳動は本質的に「乾いた状態」即ち緩衝液浴中ではなく実行される;これは、電流の流れがゲルを通り易くするためのカウンターイオン供給源として緩衝液を必要としないようにゲルのサイズを最小化することにより可能である。
【0030】
さらにこの装置は、第1次元電気泳動のための第1組の電極及び第2次元電気泳動のための第2組の電極という2組の電極を包含しており、第1組は電極に電力が加えられると挿入されたカセット中のゲルを横切って第1電場を維持することができ、そして第2組の電極は電極に電力が加えられると本質的に前記第1電場と直交してゲルを横切って第2電場を維持することができる。従来の2D電気泳動と同様に、これらの電場は相互交換可能であり、そして別々に適用される。システムのより簡単な系では1組の電極を使用することもできる。この場合カセットを第2次元電気泳動に先立って回転させなければならない。
【0031】
システムはまた、前記区画内の加熱表面に接続され、ゲルマトリックス内部を予め定めた温度にする制御可能な温度システムを包含する。この配置及び適当な制御手段により、ゲルの温度を制御し実質的に段階的に調節できる;例えば第1次元電気泳動を第1温度(例えば20℃)で行った後、その中の二本鎖核酸分子を完全に変性させるためゲル温度を限られた時間(例えば1〜5分の範囲内)高い温度(例えば95℃)に上昇させ、続いて第2次元電気泳動のために温度を(例えば55℃まで)下げて、変性した(一本鎖)核酸分子の再結合を確実に排除する。
【0032】
加熱手段は好ましくは、カセットの主要表面の1つと接触する加熱表面を有する熱電性デバイス(「ペルチェ」デバイス(“Peltier” device))を包含する。この場合、カセットの前記表面はゲルそれ自体の温度を制御するために充分に熱を伝えなくてはならない。
【0033】
システムはまた好ましくは調節可能な電力を電極に提供する発電器を包含しており、特に好ましくは、システムはこのシステムの操作を制御するコンピュータと共に提供される;即ち、コンピュータは発電器及び加熱手段と接続され、負荷電圧及び電流を制御し(第1組の電極に対して第1電圧、第2組の電極に対して第2電圧)、さらに加熱デバイスの温度を制御し、そしてそれによりゲルの操作温度を制御する。
【0034】
コンピュータは好ましくは上記の制御操作のためのコンピュータソフトウェアをインストールされており、好ましくはシステムを実質的に自動で操作するように構成され得る;即ち、本明細書に示す方法に従って二次元電気泳動を完了するために、一連の適当に時間を合わせたイベントにおいて適切な電圧及び熱を供給する。
【0035】
本システムの重要な特色は、第1と第2次元電気泳動の間の短時間ゲルが加熱される状況において、装置特にゲルカセットが高温に耐えられなければならないことである。好ましくは、システムは少なくとも75℃、より好ましくは少なくとも85℃、もっと好ましくは少なくとも90℃、そしてより好ましくは少なくとも95℃のゲルの操作温度を維持し耐えることができる。
【0036】
本発明のシステムがシステムの義務サイクルのスピードを増大させるために小型化され得ることは特に評価されるであろう。約10cm2未満、好ましくは約5cm2未満、例えば約2.5cm2未満(例えば約0.5〜2.5cm2、例えば約1cm2)のようなサイズのマイクロゲルが利用できる。そのようなマイクロゲルは少量のサンプルしか必要としないが同時にサンプル中の核酸の検出限界は低くなる。さらに、システム中の温度制御は高電場を可能にし、ゲル中の分子の迅速な分離を可能にするであろう。
【0037】
本明細書に記載される方法で操作されたゲルは画像分析技術により適切に分析できる。ある実施態様において、本発明のシステムは、適切な検出剤で染色された前記ゲルの数値化された画像に基づいてそのようなゲルを分析するためにコンピュータにインストールされたコンピュータソフトウェアを包含する;このコンピュータソフトウェアは、コンピュータに実行されると、内的標準に対応するスポットを検出し、染色された領域を検出して前記領域の境界を決定し、内的標準スポットの位置に基づいて、検出された領域を一本鎖又は二本鎖核酸に割り当て、そして検出された領域の密度を推定して電気泳動されたゲル中の一本鎖対二本鎖核酸の比率、そして好ましくは各分画内の長さ分布も決定するステップが実施されるようなコードを包含する。
【0038】
好ましいシステムの概略図を図14に示す。システムは2つの主要部分により構成される。第1に電気泳動ユニット;さらに制御部(21)及び電気泳動部(22)に分けられる。この電気泳動ユニットは分離に先立って加えられるゲルカセット(23)のための温度制御された区画(22b)を含有する。区画(22b)はその下にある加熱プレート、例えばペルチェ型熱電性ヒーターと共に示される。2組の電極は電気泳動部内にあり、ゲルカセットを回転させることなく二次元分離が可能とする。第1組は陽極1(22c)及び陰極1(22d)として、第2組は陽極2(22e)及び陰極2(22f)として示される。ゲルカセット区画の周囲には、伝導性マトリックスであるか又は緩衝溶液で満たされるゾーンである緩衝液ゾーン(22a)があり、ゲル及び電極としっかり接触してゲルカセットと電極の間を接続している。
【0039】
制御ユニットは、電場1と2(21b)を切り換えるスイッチ、ゲル温度を制御するユニット(21a)、1a及び1b両方のソフトウェア制御を可能にするコンピュータ(示さず)への接続(21c)、及び発電器(示さず)への接続(21d)を含有する。
【0040】
第2にゲルカセット部が供給される(23)。このカセットは内部にゲルを適切に配置するか、又はプレキャストゲルを適合させる、いずれかに使用できる。これは、ゲルマトリックス(23b)からの蒸発を確実に制限するためその内部にゲルマトリックスを保持する2枚の耐熱性プレートから構成される。プレートの少なくとも1枚(加熱要素に面している)は、カセットが挿入されるとき加熱要素からゲルへと熱を伝えるために熱伝導性でなければならない。カセットはさらにサンプルロードスロット(23a)を包含する。プレートの周囲は緩衝液接続ゾーン(23c)であり、伝導性マトリックスが電気泳動ユニットの緩衝液ゾーンと直接接触して、荷電された電場下でゲルマトリックスに充分な電流を通すであろう。
【0041】
本発明はさらなる態様において、上述のように、ゲル中で電気泳動された分析サンプル中の一本鎖(ss)と二本鎖(ds)核酸の比率を決定するため、本明細書に記載されるように操作された二次元電気泳動ゲルの画像を分析するためにコンピュータにインストール可能なコンピュータプログラム製品を提供する。このコンピュータプログラム製品は以下のプログラム指図手段を包含する;前記サンプル中の既知の異なる長さの一本鎖及び二本鎖核酸両方を包含する内的標準を定義する入力値(それらの塩基対の長さ)を受け取り、前記画像中の前記内的標準に対応するスポットを検出し、染色された領域を検出して前記領域の境界を決定し、検出された領域を一本鎖又は二本鎖核酸に割り当て、そして検出された領域の密度を推定して電気泳動されたゲル中の一本鎖対二本鎖核酸の比率を決定する。さらに、前記領域の境界を内的標準の境界と比較して一本鎖及び二本鎖分画の長さ分布を推定できる。
【0042】
好ましくは、内的標準は染色されたサンプル核酸の色とは別の検出可能な色を生じるように標識され、それゆえ画像検出ソフトウェアは標準スポット同定のために特定の波長帯を同定するように設定できる。内的標準スポットを2D画像空間においてx−y座標に割り当てた後、スポットの位置(典型的にはy座標)と、各スポット中の標準の塩基対の長さとの関係を定義する関数が導かれる。
【0043】
サンプルのスポット/領域は、使用された検出剤(標識/染色)に対応する適当な色の波長を画像から読み取ることにより検出され、前記スポット/領域の境界が決定され、そしてこの領域は内的標準と比較されたそれらの位置に従ってss又はds核酸に割り当てられる。境界は当業者には既知の従来の方法、例えばブラックトップハット変換(black top-hat transform)を画像に適用すること、又はその他により決定される。検出された領域の密度を推定するために、領域内のバックグラウンド値が決定され、そして測定された画素の強度から差し引かれる。領域は次に一本鎖と二本鎖核酸の間の比率を定量するために積分され得る。ある条件下では、上述のように、本方法はさらにハイブリッド二重鎖(DNA:RNA)からDNA:DNA二重鎖の分離を起こすことができ、これはゲル中に第3の区域として表れ、そして、好ましくはそのようなハイブリッド分子のための適当な標準を使用して、上述のように分析し定量することができることに注目されたい。
【0044】
本発明の第1の主な態様において、非環状核酸フラグメントの鎖数及び長さの両方に依存する分離(即ち、一本鎖と二本鎖核酸フラグメントの分離、及び各群内での長さに従った分離)のための方法であって、以下を包含する方法が提供される:上述のように作製され得る上記のいずれかの供給源核酸を包含する核酸フラグメントのサンプルを提供し;サンプルをゲル電気泳動装置にロードし、そして第1次元において前記サンプルをゲルマトリックスを通して、二本鎖核酸フラグメントは無傷で残るように予め定めた第1組の電気泳動条件下で電気泳動し;そして次に第2次元電気泳動に先立って二本鎖フラグメントの完全な変性(鎖分離)が達成されるように諸条件を変更し;続いて前記ゲルを第2次元において二本鎖の再アニーリングを防ぐ第2組の電気泳動条件下で電気泳動する。本質的には、第1次元電気泳動はサンプル核酸フラグメントの鎖数及び長さに基づいた分離を可能にし、そして第2次元電気泳動はサンプルフラグメントのそれらの長さのみに基づいた分離を可能にする;前記条件の相異は、核酸フラグメント間の鎖数に基づいた泳動の相異を排除できる化学的及び/又は物理的作用因子によって確立される。
【0045】
本発明の方法において有用なポリアクリルアミドゲルは、サンプル核酸フラグメントの推定されるサイズ分布に従って適切に選択できる幅広い百分率範囲のポリアクリルアミドを含有してよい。典型的には、約2%〜約20%ポリアクリルアミドの範囲内、好ましくは約5%〜約15%ポリアクリルアミドの範囲内のゲルが使用される。ゲルのサイズ及び電気泳動中の電気的条件(電圧、電流、電解質濃度等)は、分析される核酸フラグメントの分離を最大にするために必要な泳動の程度に従って調節できる。例えばMDE及びLongRanger(商標)のようなポリアクリルアミド誘導体を含むポリアクリルアミド以外のゲルマトリックスも2D−SDEを実施するために使用できる。
【0046】
いずれの次元にとっても緩衝液系は、本発明の方法の特定の各実施態様において使用されるゲルマトリックスに従って選べる。両方の次元で同じ緩衝液系を使用する必要はない。
【0047】
典型的には、本発明で使用されるゲルマトリックスは、二本鎖核酸フラグメントの変性(鎖分離)は起こさないが一本鎖及び二本鎖核酸フラグメント両方の二次構造を減少させる濃度の変性剤を含有する。
【0048】
本方法のある実施態様においては、第1次元分離に先立ってゲルマトリックスに変性剤が添加されない。これらの実施態様においては二本鎖フラグメントの完全な変性が必要とされる第2次元電気泳動の前に、選ばれた1又はそれを超える変性剤を含有する緩衝液中でゲルをインキュベートしてもよい。
【0049】
第1次元電気泳動に先立ってゲルマトリックス中に組み込まれていてもよい変性剤は、好ましくは、1又はそれを超える脂肪族アルコール、例えばメチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、アリル、ブチル、イソブチル、及びアミルアルコール並びにエチレングリコール;環状アルコール、例えばシクロヘキシル、ベンジル、フェノール及びp−メトキシフェノールアルコール並びにイノシトール;脂環式化合物、例えばアニリン、ピリジン、プリン、1,4−ジオキサン、ブチロラクトン及びアミノトリアゾール;アミド、例えばホルムアミド、エチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、グリコールアミド、チオアセトアミド、バレロラクタム;尿素化合物、例えばカルボヒドラジド、1,3−ジメチル尿素、エチル尿素、t−ブチル尿素、チオ尿素及びアリルチオ尿素;カルバメート、例えばウレタン、N−メチルウレタン及びN−プロピルウレタン;ツイーン40及びトリトンX−100を含む界面活性剤(detergent);並びに他の化合物、例えばシアノグアニジン、スルファミド、グリシン、アセトニトリル及びDMSOである。ゲルが第1次元泳動後しかし第2次元電気泳動に先立って変性剤に浸漬される場合は、1又はそれを超える上記の作用因子を使用してよい。
【0050】
鎖数の相異を減少させるために本発明中で使用できる他の化学的作用因子及び物理的因子は、当業者によって同定又は開発されてもよい。本発明の方法中で使用される前記化学的作用因子の濃度は、その核酸結合親和性、変性力量、鎖数相異及び二次構造を減少させる能力、及びゲルマトリックス又は緩衝液中での作用因子の安定性に依存する。
【0051】
本方法の特に有用な実施態様において、変性剤である尿素が第1次元電気泳動に先立ってゲルマトリックスに添加される。ここでは尿素は3つの異なる役割を果たす:I)第1次元において、すべての核酸フラグメント(一本鎖及び二本鎖両方)の、鎖数ではなくコンホメーションによる泳動の相異を減少させる、II)第2次元に先立って、完全な温度誘導変性(鎖分離)を容易にする、及びIII)第2次元電気泳動の前又は間に再結合(再アニーリング)が起こらないことを確実にする。
【0052】
第1ゲル電気泳動ステップは巾広く異なった温度で実施され得るが、典型的な適用においては温度は5℃〜50℃の間の範囲内である。本発明の方法の典型的な実用において、一本鎖及び二本鎖核酸フラグメントの混合物は室温で分離される。
【0053】
上述したように、核酸フラグメントの長さ及び鎖数に従った両方の分離を可能にする第1次元電気泳動後、ゲルは典型的には電気泳動装置から除去されるが、本明細書にさらに記載するように装置を適当にデザインすれば、ゲルの除去は必ずしも必要でない。すべての核酸フラグメントが全部変性されるようにゲルは高温でインキュベートされる。インキュベーションの間、ゲルからの蒸発を制限するために(例えばプレートの間に保持して)ゲルは部分的又は完全に封入される。ゲルは、本方法の実施態様中で使用されるゲルのサイズ、マトリックスの型及び厚さに依存して変動し得る期間インキュベートされる。本方法の他の実施態様においては、二本鎖核酸は化学的作用因子又は物理的及び化学的作用因子の混合によって変性される。
【0054】
第2次元電気泳動ステップにおける諸条件は第1次元のそれらとは異なり、それは例えば温度又は尿素濃度のような物理的パラメータ又は化学的作用因子の変更により、これはサンプル核酸フラグメントの鎖数にさらに影響を与え得るであろう。
【0055】
ある一定期間物理的及び/又は化学的に誘導された変性を受けた後、ゲルは第2次元電気泳動のために適切な電気泳動デバイス中に配置される。すべての核酸フラグメントは今や同じ鎖数を持つ(即ち、それらはすべて一本鎖である)。そのためゲル中のすべての核酸フラグメントはそれらの長さに従って分離する。その結果、鎖数相異のために第1次元後に重なり合っていた異なる長さのフラグメントは第2次元において分解(resolve)するであろう。元々一本鎖であった核酸フラグメントは両次元において本質的に同じ泳動速度を持つので、それらはゲル中に近似的な対角線を形成する。第1次元の間二本鎖であったが第2次元の間一本鎖の核酸フラグメントは、第2次元よりも第1次元において相対的に速く泳動するため、弧を形成する。そのため本発明の方法によって一本鎖及び二本鎖核酸フラグメントの鎖数及び長さ依存分離が得られる。
【0056】
一本鎖核酸フラグメントはそれらの二本鎖の対応物よりも相対的に遅く泳動する。そのため一本鎖フラグメントの対角線は二本鎖核酸フラグメントを表す弧の前方(図中の右側)に押しやられる。もし、長さが同一で、一方が一本鎖であり他方が二本鎖である2本の核酸フラグメントをこのシステム中で分離すると、一本鎖フラグメントは二本鎖フラグメントの垂直方向上方に位置するはずである。
【0057】
ゲル中の核酸フラグメントは標準的な生化学的技術を使用して容易に検出できる。それらには、例えばエチジウムブロミド(EtBr)及びSYBR(登録商標)グリーンI又はIIのような蛍光核酸染色によりゲルを染色し、当業者にはおなじみの検出システムを使用するような周知の方法が含まれる。核酸フラグメントは、放射性又は非放射性に予め標識された核酸フラグメントと、例えばフィルム、リン酸又は蛍光イメージャーのような検出システム、又は当業者にはおなじみの類似の方法を使用して検出することもできる。
【0058】
2S−SDE分離後のゲルからの核酸の単離はゲル断片からの溶出及び電気溶出のような周知の方法を使用して行ってよい。本方法のいくつかの実施態様において核酸フラグメントは、例えばゲルマトリックスからの単離後のPCR増幅のためのアダプターを含有してもよい。
【0059】
上述の本発明の第1の主な態様に従って、本発明の方法は異なる実施態様中でも使用できる。
実施例1及び2に記載される詳細な実施態様において、2D−SDEはssDNA及びdsDNAフラグメントを鎖数及び長さ依存様式の両方で分離するのに使用される。この種類の典型的な実施態様において、分析されるサンプルはフラグメントの長さ分布が50〜10,000bpの間に調製されたゲノムサンプル又はサンプルのプールを包含する。サンプルは次に上述の方法を使用して分析される。2D−SDE分離に続いて一本鎖DNAフラグメントを表す対角線及び元々二本鎖のDNAフラグメントを表す弧を、定量及び/又は単離できる。
【0060】
以下の実施例3において詳細な実施態様で説明されるように、本発明の方法は完全マッチ(perfectly matched)DNAフラグメントからのバルジ含有DNAフラグメントの分離に使用できる。バルジ含有DNAフラグメントは、それらの完全マッチ対応物に比較して、二本鎖DNAがPAGEゲル中で7M尿素の存在下又は非存在下で分離される時、泳動速度が遅い。同じフラグメントがそれらの一本鎖型で分離される時、特に尿素を含有するゲル中では、それらはすべて本質的にそれらの長さに従って泳動する。そのため、分離後にバルジ含有フラグメントは二本鎖の完全マッチDNAフラグメントを表す弧の前方に位置するので、2D−SDEを使用してバルジ含有ヘテロ二重鎖を完全マッチDNAフラグメントから分離できる。
【0061】
以下の実施例4において詳細な実施態様で説明されるように、本方法は複合DNAサンプルの再結合効率の推定及び再結合速度論の計算のために強力である。この種類の典型的な実施態様において、分析されるサンプルは切断、変性及び再結合(再アニーリング)されたゲノムサンプル又はサンプルのプールを包含する。サンプルは次に本発明の第1の主な態様に従って上述の方法を使用して分析される。分離に続いて一本鎖DNAフラグメントを表す対角線及び元々二本鎖のDNAフラグメントを表す弧が、例えば蛍光イメージャーを使用して定量される。
【0062】
以下の実施例5において詳細な実施態様で説明されるように、本発明の方法はPCR産物及び他のインビトロ増幅方法の結果生じる産物の品質の推定に使用できる。この種類の典型的な実施態様において、分析されるサンプルは異なる種類のゲノム材料又はcDNAから増幅されたPCR産物を包含する。PCR産物の複雑さは使用されるPCR方法に従って変動することがあり、1〜数十万の異なるフラグメントであり得る。PCR反応後、産物は本発明の方法を使用して分離される。一本鎖及び二本鎖PCR産物を定量し、そして両方の分画の長さ分布を測定できる。特に有用な実施態様において、PCR増幅されたゲノム呈示物(genomic representation)の品質が推定される。本明細書中で使用される用語「ゲノム呈示物」は、関心対象である遺伝的材料を包含するゲノムのサブセットに関連する。そのためゲノム呈示物の作成は標的ゲノムの複雑さを減少させる1つの方策である。ゲノム呈示物を作成する方法は本発明者らの一人によって以前の刊行物中に記載されている。特にWO00/24935、またLucitoらによる本「DNA microarray」(BowtellとSambrook、2003)を参照。
【0063】
本発明のさらなる態様が実施例6における詳細な実施態様によって説明される。本発明の方法は特徴付けされていない核酸サンプルの構成を明らかにするために使用される。そのような核酸サンプルは様々な生物学的供給源から単離され得る。有用な実施態様の1つはヒト血漿から単離される核酸を特徴付けることである。血漿からの遊離核酸の単離は当業者に既知の標準的な方法を使用して実施できる。この仕方でサンプル中の核酸の構成をそれらの鎖数に関して明らかにし、そしてまた一本鎖及び二本鎖フラグメント両方の長さ分布を推定することができる。
【0064】
実施例7に説明されるように、本方法の有用な実施態様の1つはcDNA合成効率の測定を可能にする。この種類の典型的な実施態様においては、単離されたmRNAが当業者には既知の方法を使用して第1鎖cDNA合成続いて第2鎖合成にかけられる。第1及び第2鎖両方の合成後、一本鎖と二本鎖cDNAフラグメントを分離するために本発明の方法を使用できる。さらに、本方法は混合物中のRNA:DNAハイブリッドの同定を可能にする。そのようなハイブリッドは第1鎖合成後に形成される中間体産物である。RNA:DNAハイブリッドはA型様の二本鎖らせんを形成しており、それはdsDNAらせんによって典型的に採用される対応するB型よりも、1塩基対あたり短い。そのため本方法は第1及び第2鎖両方の形成効率、及び3つの分画、即ち一本鎖DNA、二本鎖DNA及びRNA:DNAハイブリッドの分画すべての長さ分布を測定する。この分析はcDNA分子の標識の推定も可能にする。
【0065】
本発明のもう1つの態様において核酸サンプルを均等化する(normalize)方法が提供される。遺伝子は各細胞において様々なレベルで発現される。様々なmRNAの増幅効率の相異の結果、増幅されたcDNAライブラリー作成の際にcDNA分子レベルの相異も生じ得る。増幅されたcDNAライブラリーの多くの異なる型の分析のためには、サンプル中のすべての産物が均質に豊富であることが重要である。均等化のための方法は、再結合cDNAは二次反応速度論(second-order kinetics)に従っており各フラグメントの濃度に強く依存するという事実に基づく。そのため希少な遺伝子産物は高度に濃縮された豊富な産物よりも遅く再結合する。そのため、再結合の間、残存する一本鎖分画は累進的に、より均等化され、即ち個々のcDNAフラグメントの濃度はより一様になる。部分的な再結合の後残存する一本鎖分画を単離することにより均等化されたサンプルを得ることができる。現行ではそのようなアプローチの進行を妨げる主なボトルネックは一本鎖と二本鎖産物の効率のよい分離である。標準的な科学技術は一本鎖と二本鎖DNAフラグメントのヒドロキシアパタイトカラムへの差別的結合を使用する。この技術は煩雑であり、且つ一本鎖と部分的な二本鎖DNAフラグメントを完全に識別しない。本発明の方法を使用して、一本鎖と二本鎖核酸フラグメントを物理的に分離し、続いてゲルマトリックスから例えば電気溶出により純粋な一本鎖核酸分画を直接単離すれば、核酸サンプルの均等化が非常に容易になり得る。
【0066】
本発明の第2の主な態様において、一本鎖切断(ニックを含む)を含有する核酸フラグメントを無傷な二本鎖核酸フラグメントから分離する方法が提供される。本発明の第1の態様に関連して上述されたのと同じ実験的設定が使用される。第1次元電気泳動の間、1又はそれを超える一本鎖切断を含有する二本鎖核酸フラグメントは、本質的にはそれらの無傷な二本鎖対応物と同じ泳動速度を持つ。
【0067】
すべての二本鎖DNAフラグメント(一本鎖切断の有無に関わらず)が本質的にそれらの長さに従って泳動する第1次元電気泳動の後、すべての核酸フラグメントは上述のようにゲルマトリックス中で変性される。これはゲル中のすべての核酸フラグメントの完全な変性(鎖分離)を確実にする。無傷な二本鎖核酸フラグメントは2本の等しい長さの一本鎖フラグメントを生じ、それらは相補的である。例えば1つの一本鎖切断(又はニック)を含有する二本鎖核酸は、変性(鎖分離)後3本の一本鎖フラグメントを結果として生じる。1本は元々の二本鎖フラグメントと同じ長さで無傷な鎖を表し、他の2本はより短い。2本のより短いフラグメントは長いフラグメントに相補的であり、それらは切断含有鎖を表す。
【0068】
温度又は化学的に誘導された変性の後、ゲルは第2次元電気泳動のために配置される。すべての核酸フラグメントは今や同じ鎖数である(即ち、それらはすべて一本鎖である)。そのためゲル中のすべての核酸フラグメントはそれらの元々の長さに基づいて分離するが、元々の二本鎖フラグメント中にニック又は切断を含有するDNA鎖だけは例外である。それらは今やそのより短い長さによって、より速い泳動速度を持つ。そのため一本鎖切断又はニックを含有していた核酸フラグメントは第2次元において独特の泳動速度を示す。そのような一本鎖フラグメントは無傷な二本鎖核酸フラグメントを表す弧の前方に泳動する。
【0069】
本明細書に記載されるように、本発明のこの態様に従った方法は、無傷な二本鎖核酸フラグメントを一本鎖切断又はニックを含有する二本鎖核酸フラグメントから分離するために容易に適用できる。二本鎖核酸フラグメント中の一本鎖切断は以下を含む様々な仕方で誘導される:酸化、イオン化、放射線照射、不完全複製、UVA放射、組換えDNA中の不完全ライゲーション、温度上昇、アルカリ性又は酸性緩衝液条件、配列特異的ニッキング酵素活性、エンドヌクレアーゼ活性、リアーゼ、グリコシラーゼ、リボヌクレアーゼ、又はゲノム中の特異的な損傷、バルジ若しくはミスマッチ(mismatched)を検出する他の酵素、並びに合成又は天然の化学化合物の活性、例えばオスミウム、ヒドロキシルアミン、過マンガン酸カリウム、塩化テトラエチルアンモニウム及びロジウム(III)複合体及びその他の活性。
【0070】
実施例8、9、10及び11中に詳細な実施態様で説明されるように、本発明のこの態様は異なる化学的又は物理的因子によって誘導された複合DNAサンプル中の一本鎖切断を検出するために使用できる。
【0071】
本発明のもう1つの重要な実施態様は複合サンプル中の変異又は多型を求めて迅速に走査(スキャン)する方法を提供する。スクリーニングに先立ってサンプルは変性され、そして再結合され、そして時には次に制御フラグメントが添加される。次にサンプルを酵素又は化学薬品で処理して変異又は多型が位置する場所に部位特異的な一本鎖切断を生成させ、それによりヘテロ二重鎖中にミスマッチを形成させる。少なくとも2つのエンドヌクレアーゼ(エンドヌクレアーゼV及びCEL I)が異なる8種類の1塩基対ミスマッチのすべて及びヘテロ二重鎖中のより小さな挿入/欠失バルジを切断すると報告されている(YaoとKow、1994;Oleykowski、Bronson Mullinsら、1998)。そのような方法は非特異的切断によるバックグラウンドシグナルによりしばしば害される。最近、ある熱安定性DNAリガーゼがバックグラウンドニックを再シールすることにより非特異的切断を減少させるかもしれないことが報告された(Huang、Kirkら 2002)。詳細で有用な実施態様は酵素又は化学薬品による切断検出及び上述の方法を組み合わせている。その結果は、多数のフラグメントから成る複合サンプル中のすべてのDNAバリエーションを同時に潜在的に検出する強力な方法である。この方法は酵素的及び化学的切断方法の処理量を非常に増大させ、そしてそのため分析のコストを減少させるであろう。この特別の実施態様は二次元ニック依存電気泳動(2D−NDE)と呼ばれる。2D−NDEは各単位複製配列の物理的特性に、例えば二次元ゲルスキャニング(TDGS)ほど強く依存しないはずである。例えば、単位複製配列は1つだけの融解ドメインを含有する必要はない。そのため多数の単位複製配列の生成は当業者には既知の多様なアプローチによって達成されてよい。
【0072】
他の類似の実施態様は本発明の方法をDNA中の様々な損傷、例えばUV損傷を検出し切断する他の酵素と組み合わせることによって導入される。
本発明に使用される方法及び本発明の有用性は以下の非限定的な実施例及び付随する図によって示すことができる。
【実施例】
【0073】
実施例1:λファージDNA由来の、Cy3標識された一本鎖DNAフラグメント及びCy5標識された二本鎖DNAフラグメントを含有する複合サンプルを長さ依存分離するための2D−SDE
λファージDNAを制限酵素NdeIIで消化し、その結果サイズ範囲12〜2225bpの116種類の異なるフラグメントが形成された。消化後サンプルを2つのアリコートに分けた。一方のアリコートを、クレノウフラグメント及びCy5−dCTPを使用してオーバーハングを伸長することにより標識した。他方のアリコートを同じ仕方でCy3−dCTPにより標識した。標識反応後、生成物をGFX PCR及びゲルバンド精製キットを使用して精製した。
【0074】
Cy3−及びCy5−標識DNAサンプル両方の分画を95℃で5分間変性させ、続いて素早く氷/水スラッシュへと移して一本鎖DNAフラグメントを形成させた。等量のCy3−及びCy5−標識DNAを含有する3つのサンプルプールを作製した。第1プールは変性されたCy3−標識DNA及び未処理のCy5−標識DNAを含有した。第2プールは変性されたCy3−及びCy5−標識DNAフラグメントを含有した。第3プールは未処理のCy3−及びCy5−標識DNAフラグメントを含有した。
【0075】
これら3つのサンプルプールを独立して2D−SDEにより分離した。ゲルマトリックスは、29:1 アクリルアミド:ビスアクリルアミド混合物から作製された10%ポリアクリルアミド及び7M尿素より成っていた。このゲルは1X TBE緩衝液(89mMのトリス塩基、89mMのホウ酸、及び2mMのEDTA)中で重合された。第1次元電気泳動は、BioRad Mini Protean II垂直電気泳動システム中で行われた。ゲルは室温(RT)で1時間、一定の20mAで、1X TBE緩衝液中で操作された。
【0076】
第1次元電気泳動後、ゲルサンドイッチを熱ブロック(dri−block Techne)上に置き、そして92℃で3分間インキュベートした。より良い熱分布を確実にするために、92℃の熱アルミニウムキューブの1つをゲルサンドイッチの上に置いた。変性後ゲルサンドイッチは室温まで冷やされた。
【0077】
第2次元ゲル電気泳動はPharmacia Multiphor水平電気泳動システム中で行われた。ゲルは、室温で、第1次元電気泳動に対して垂直に、1X TBE緩衝液を使用して、一定電力5Wで1時間操作された。緩衝液チャンバー中の電極とゲルマトリックスとの間の接続は紙製電極芯(paper electrode wicks)によって達成された。
【0078】
DNAフラグメントの蛍光検出はAP Biotech’s Typhoon 8600可変方式イメージャーの蛍光走査モードを使用して実施され、Cy5検出のためには励起波長633nm及び670BP30発光フィルターが、そしてCy3検出のためには励起波長532nm及び580BP30発光フィルターが使用された。
【0079】
図1Aに示すように、一本鎖DNAフラグメントはゲルを貫いて対角に横たわる線を形成した(赤色)。二本鎖DNAフラグメントは一本鎖フラグメントの線に対して左に横たわる弧を形成した(緑色)。変性されたCy5−及びCy3−DNAフラグメントのプールの2D−SDE(図1B)並びに未処理のCy5−及びCy3−DNAフラグメントのプールの2D−SDE(図1C)は、結果としてCy5−及びCy3−標識フラグメントの共泳動をおこした(それぞれ黄色の線又は弧)。もしすべてのDNAフラグメントが変性されていたら、この線は図1Aの赤色の線に匹敵した。もしすべてのDNAフラグメントが未処理であったら、この黄色の弧は図1Aの緑色の弧に匹敵した。
【0080】
実施例2:ヒトゲノムDNA由来の、Cy3標識された一本鎖DNAフラグメント及びCy5標識された二本鎖DNAフラグメントを含有する複合サンプルを、鎖数及び長さ依存分離するための2D−SDE
2D−SDEの力量をさらに試験するために、実施例1に記載される実験に対応する実験が、今度はCy5及びCy3標識されたNdeII消化ヒトDNAを使用して実施された。ゲノムDNAは全血から単離された(Puregene DNA単離キット、Gentra Systems)。
【0081】
実施例1のλファージDNAについてと類似の結果が得られた。図2Aに示すように、すべての一本鎖DNAフラグメントはゲルを貫いて対角に横たわる線を形成した(赤色)。二本鎖DNAフラグメントは、一本鎖フラグメントの線に対して左に横たわる弧を形成した(緑色)。消化されたヒトDNAの多数さ及び長さ不均一性のために、DNAバンドの分離は得られなかった。変性されたCy5−及びCy3−DNAフラグメントを含有するプール(図2B)並びに未処理のCy5−及びCy3−DNAフラグメントを含有するプール(図2C)の分離は、結果として共泳動をおこした(それぞれ黄色の線又は弧)。もしすべてのDNAフラグメントが変性されていたら、この線は図2Aの赤色の線に匹敵した。もしすべてのDNAフラグメントが未処理であったら、この黄色い弧は図2Aの緑色の弧に匹敵した。
【0082】
実施例3:複合DNAサンプル中での、バルジ含有DNAフラグメントの存在を明らかにするための2D−SDE
274bpのDNAフラグメントが、ある個体由来のC−kit遺伝子中のエキソン11から増幅された;この個体は、このエキソン中の9bpの欠失変異のためにヘテロ接合体として知られる。そのような増幅の結果4つの異なるDNAハイブリッドが生じた。2つのホモハイブリッド(265bp及び274bp)、及び各々がセンス又はアンチセンス鎖のいずれかに9塩基バルジを含有する2つの265bpのヘテロハイブリッド。PCR産物をGFX PCR及びゲルバンド精製キットを使用して精製した。
【0083】
GeneRuler(商標)100bp DNA ラダープラス(Ladder Plus)(100〜3000bpの範囲の14種類のフラグメント)をT4 DNAポリメラーゼ(Fermentas)により標識した。最初にラダーをdNTP’非存在下でT4 DNAポリメラーゼで処理した。これらの条件下でこの酵素は強い3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を持つ。次にCy5−dCTP並びに非標識dATP、dTTP及びdGTPの混合物を反応に加えて酵素が強いポリメラーゼ活性を持つようにした。次にこのラダーをGFX PCR及びゲルバンド精製キットを使用して精製した。
【0084】
このPCR産物及びCy5標識されたDNAラダーをプールし、第2次元電気泳動を55℃で実施した以外は実施例1に記載されたのと同じ条件及び設定を使用して2D−SDEにより分離した。
【0085】
2D−SDE分離後、ゲルを50mLの1X TBE中でエチジウムブロミド(EtBr)(1μg/mL)により染色した。EtBr染色された、つまりCy5標識されたDNAフラグメントの蛍光検出はAP Biotech’s Typhoon8600可変方式イメージャーで実施した。図3に示すように、完全マッチDNAフラグメントは弧を形成した。バルジを含有する2つのDNAフラグメントは完全マッチDNAの弧の前方に泳動し、そして第2次元(即ち垂直方向)においては完全マッチ対応物と並んだ。
【0086】
実施例4:λファージDNAの、再結合効率推定及び再結合速度論計算のための2D−SDE
λファージDNA(10μg)を30UのBanI(Amersham Biosciences)により50℃で60分間消化した。これにより中間の複雑さのサンプル(サイズ範囲6〜18362bpの26種類のDNAフラグメント)が作成された。次に、消化されたDNAを実施例1に記載されるようにCy5により標識した。
【0087】
BanI消化されCy5標識されたλファージDNAの同一のサンプル(10μLの0.3×SSC中に114ng)10個を95℃で5分間変性させた。次に温度を最大速度で68℃に下げた。サンプルを0、1、2、5、15、30、60、120、180及び1440分の時間ポイントで氷/水スラッシュへ直接移した。
【0088】
各サンプルを、2D−SDEを使用し、7M尿素を含有する8%PAGE中で、第1次元では45分間、そして第2次元では55℃で60分間、分離した。その他は実施例1に記載されるのと同じ設定を使用した。いくつかの時間ポイントにおける分離の例を図4に示す。
【0089】
電気泳動後すべてのゲルは実施例1に記載されるようにCy5蛍光を走査された。我々は、すべての時間ポイントにおいて、一本鎖DNA及び二本鎖DNAを表す弧の蛍光密度を、ImageQuant5.1(Amersham Biosciences)を使用して測定した。このデータから我々は各時間ポイントにおける一本鎖DNAの分率(fraction)を計算し、1/(一本鎖DNA分率)を時間に対してプロットした(図5)。もしデータが理想的な二次反応速度論を反映していれば、このプロットは直線関係を与え、直線の傾きは見かけの二次反応速度定数kを表すはずである。最適な直線式からt1/2は7110秒、そしてC0t1/2は0.24Msと計算された。この反応のC0t曲線もプロットし、理想的な二次反応C0t曲線と比較した(図6)。
【0090】
実施例5 複合PCR反応の品質を推定するための2D−SDE
全血から単離されたDNAサンプルをBstYIで消化し精製した。制限フラグメントにアダプターをライゲートした。アダプター特異的プライマー及び内的なBbsI部位を有するAlu3’特異的プライマーを使用する複合PCRは、WO00/24935(参照することによりそのまま本明細書に組み込まれる)にさらに詳細に記載されるように実施された。結果として得られたAlu3’フラグメントをGFX(商標)カラムを使用して精製した。この複合PCR中の異なるフラグメントの推定数は1〜3×105のオーダーにある。
【0091】
複合PCR反応の分画を実施例3と同じ条件を使用して2D−SDEにより分離した。分離後、ゲルをEtBrで染色し、そして実施例3に記載されるように蛍光走査した。PCR産物のかなりの分画が一本鎖であり、増幅効率のよさを証明していた(図7)。
【0092】
実施例6:特徴付けされていないDNAサンプルの構成を明らかにするための2D−SDE
高純度ウイルス核酸キット(High Pure Viral Nucleic Acid Kit)(Roche)により健康な成体の血漿から遊離核酸を単離した。すべての試薬を5倍量用いた以外は製造者のプロトコルに従った。単離後、特徴付けされていないDNAサンプルをSpeedVacを使用して濃縮した。濃縮されたDNAサンプル(23ng/mL)を実施例1に記載されるように2D−SDEを使用して分離した。2D−SDE分離の後、ゲルをEtBrで染色し、そして実施例3に記載されるように走査した。2D−SDEは、この血漿からの特徴付けされていない核酸サンプルは、様々な長さの一本鎖及び二本鎖DNAフラグメント両方を含有することを明らかにした(図8)。
【0093】
実施例7:cDNA第1鎖合成効率を推定するための2D−SDE
高レンジRNAラダー(High Range RNA ladder)(200〜6000nt)をFermentasより購入した。このラダーを、含有ランダム6量体によってcDNA合成が開始されるRevertAid H Minus第1鎖cDNA合成キット(First Strand cDNA Synthesis Kit)(Fermentas)を使用して第1鎖cDNA合成にかけた。反応混合物にCy5−dCTPを添加して合成されたcDNA鎖を標識した。第1鎖合成反応後に取り出したサンプルを100bp二本鎖DNAラダー(Fermentas)と混合し、そして2D−SDEを使用して分離した。実施例3に記載されるのと同じ条件及び設定。この混合物は予想されたように大量のRNA:DNAハイブリッドを含有することが2D−SDEで明らかになった(図9)。RNA:DNAハイブリッドを表す特異的な弧が形成された(緑色)。dsDNAを表す弧(赤色)はRNA:DNAの弧の前方に位置していた。
【0094】
実施例8:複合DNAサンプル中の部位特異的一本鎖切断を検出するための2D−SDE
我々は、2D−SDEシステム中での変性後に、ホスホジエステルDNA骨格中にニック又は一本鎖切断を含有する二本鎖DNAフラグメントは、元々の二本鎖DNAフラグメントよりも短い一本鎖DNAフラグメントを生じると仮定した。そのような一本鎖DNAフラグメントは無傷な二本鎖DNAフラグメントを表す弧の前方に泳動するであろう。複合DNAサンプル中の一本鎖切断を検出し定量するツールとして2D−SDEが使用可能かどうかテストするために、以下の実験を実施した。
【0095】
λファージDNAを実施例4に記載されるようにBanIで消化しCy5により標識した。次にCy5標識されBanI消化されたλファージDNA(500ng)を50μLの1X NE緩衝液(N.BstNBI)中で10UのニッキングエンドヌクレアーゼN.BstNBI(New England Biolabs)と共に55℃で60分間インキュベートし、部位特異的一本鎖切断を産生させた。反応混合物から、DNAをGFX精製キットを使用して精製した。
【0096】
N.BstNBI処理したDNA及び未処理の対照DNAを、実施例3に記載されるのと同じ条件及び設定を使用し、2D−SDEを使用して分離した。
DNAが特異的なニッキングエンドヌクレアーゼで処理されていると、かなりの量のDNAバンドが、二本鎖DNA分画を表す弧の前方に横たわることが検出された(図10)。
【0097】
実施例9:複合DNAサンプル中の、酸化的に誘導された一本鎖切断を検出するための2D−SDE
Cy5標識されたλファージDNA(実施例4に記載されるように作製)をフェントン様反応中でH2O2に曝して非特異的な一本鎖切断を形成させた。λファージDNA(228ng)を20μLの0.2mM H2O2(Merck)及び0.4mM CuSO4(Merck)中で、0、1、5、10、20、又は30分間インキュベートした。その次に、反応を1μLの0.5M EDTA(Sigma)添加により停止させた。
【0098】
一例としてH2O2で5分間処理したDNAフラグメントと未処理の対照DNAフラグメントを、実施例3に記載されるのと同じ条件及び設定を使用して2D−SDEで分離した。二本鎖DNAフラグメントを表す弧の前方に、いっぱいに広がった蛍光シグナルが検出されたが、強いシグナルスポットは検出されなかった。これは一本鎖切断がランダムに形成されたことを示唆していた(図11)。
【0099】
実施例10:複合DNAサンプル中の温度誘導分解をアッセイするための2D−SDE
λファージDNAを、実施例4に記載されるようにBanIで消化しCy5により標識した。Cy5標識されBanI消化されたλファージDNA(228ng)を、20μLの水中で、4℃又は60℃のいずれかで20時間インキュベートした。
【0100】
これら2つのDNAサンプルを、実施例3に記載されるのと同じ条件及び設定を使用して2D−SDEを使用し分離した。2D−SDE分離は、これらの極端な条件が、非特異的な一本鎖切断を誘導し、DNAフラグメントの鎖数を1本にし、そして2つの最小の二本鎖DNAフラグメントの完全な変性を誘導したことを明らかにした(図12)。
【0101】
実施例11:複合DNAサンプルの長期保存中のDNA分解をアッセイするための2D−SDE
λファージDNAを制限酵素NdeIIで消化し、実施例1に記載されるようにCy5により標識し、そして精製した。このサンプルを1X TE緩衝液中で、4℃で6ヵ月保持した。6ヵ月後に同一の新鮮なDNAサンプルを作製し、これら2つのサンプルを実施例1に記載されるように2D−SDEを使用して分離した。
【0102】
無傷なdsDNAフラグメントの弧の前方に横たわるDNAバンドの密度が増大したことから判断できるように、線状DNAフラグメントを長期間保存すると部位特異的な一本鎖切断が誘導されることが、2D−SDE分離で明らかになった(図13)。
参考文献
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】実施例1の2D−SDE分析の蛍光像。2D−SDEシステムは、λファージゲノムを表す一本鎖と二本鎖DNAフラグメントを分離するために使用した。 1A:Cy5標識DNAフラグメント(緑色)は未処理のため二本鎖で残っているが、Cy3標識フラグメントは一本鎖型に変性された。二本鎖フラグメント(緑色)は弧2を形成し、一本鎖フラグメント(赤色)は対角線1を形成した。分離は7M尿素を含有する10%PAGE中で実施された。1B:Cy5標識フラグメント及びCy3標識フラグメント両方が一本鎖型に変性され、共泳動して黄色の対角線3を形成した。 1C:Cy5及びCy3標識DNAフラグメント両方が未処理で残り、共泳動して黄色の弧4を形成した。DNAフラグメントの小さな分画が、一本鎖DNAフラグメントについて予想されるように泳動した。これはおそらく変性された二本鎖DNAフラグメントが、第2次元電気泳動の前にシステム中で部分的に再アニーリングしたためであろう。この分画は、第二次元分離を55℃で実行して実験を繰り返した時には見られなかった(示さず)。
【図2】実施例2に記載の2D−SDEゲル分析の蛍光像。2D−SDEは、ヒトゲノムを表す一本鎖DNAと二本鎖DNAフラグメントを分離するために使用した。 2A:未処理(二本鎖)のCy5標識ゲノムDNAフラグメント(緑色)及び変性されたCy3標識ゲノムDNAフラグメント(赤色)のプールを電気泳動した。一本鎖DNAフラグメント(赤色)は対角線6を形成し、弧5を形成した二本鎖DNAフラグメント(緑色)から分離された。 2B:変性された(一本鎖)Cy5及びCy3標識DNAフラグメントのプールを電気泳動した。すべてのDNAフラグメントが、元々のゲル中に黄色で示す1本の対角線7に共泳動した。 2C:Cy5及びCy3標識DNAフラグメントの両方が未処理(二本鎖)であり、共泳動して、元々のゲル中に黄色で示す弧8を形成した。
【図3】実施例3に記載される、14種類の完全マッチDNAフラグメントの混合物からバルジ含有へテロ二重鎖を分離するために使用された2D−SDE分析からの、EtBr染色されたPAGEゲルの蛍光像。274bpの長いPCR産物が、C−kit遺伝子中でエキソン11の対立遺伝子の1つにおいて9bpの欠失を持つ個体から増幅された。PCRの結果2つのバルジ含有へテロ二重鎖及び2つのホモ二重鎖が形成された。このPCR産物を14種類の完全マッチDNAフラグメントと混合し、2D−SDEを使用して分離した。2つのヘテロ二重鎖(9、10、図中では緑色)は完全マッチのCy5標識二本鎖DNAフラグメントを表す弧の前方に泳動した。Cy5標識フラグメントは、もしフラグメントがEtBrでしっかり染色できるくらい充分に長ければ図中赤色(R)又は黄色(Y)である。PCR反応で産生されたホモ二重鎖(11、ゲル中緑色)は14種類のCy5標識完全マッチDNAフラグメントの弧の中で予想されたように泳動した。
【図4】実施例4に記載される、再結合反応の異なる時間ポイントからのサンプルの2D−SDE分離。変性後(a)は、一本鎖DNAフラグメントを表す対角線のみが検出された。再結合時間(分で示す)が長くなるにつれて、二本鎖DNAフラグメントを表す弧の密度が増加した。未処理のDNA混合物は、(e)に示す、二本鎖DNAフラグメントを表す弧を生じた。
【図5】実施例4に記載されるように実行された再結合反応の二次反応プロット;y軸に1/(ssDNA分率)を時間の関数として示す。このプロットはデータの強い直線関係を明らかにし、そのため再結合反応から予想された二次反応速度論を反映する。最後の時間ポイント(68,400秒)のデータを含めた時も同じ傾きが観察された。
【図6】実施例4に記載される、2D−SDEによりアッセイされたDNAフラグメントの再結合速度論。再結合反応から得られたデータポイントを菱形(◆)で示す。観察されたkを使用しCについての理想二次反応方程式を解いた後、理想的なC0t曲線が得られた(赤色の線でプロットした)。C0=DNAリン酸塩の全モル濃度、t=時間(秒)。
【図7】実施例9に記載されるように実行された複合PCR反応の品質を評価するための2D−SDE分析の蛍光像。複合PCR反応からの非標識産物を2D−SDEを使用して分離した。ゲルは分離後にEtBr染色された。二本鎖DNAフラグメントを表す弧及びssDNAフラグメントを表す線の両方が得られた。これは複合PCR反応中にかなりの量のssDNA産物があることを示唆する。EtBrはより長いDNAフラグメントをより短いフラグメントよりも強く染色することに注意する。
【図8】実施例10に記載されるように実行された、健康な成体の血漿から単離された、特徴付けされていないDNAの構造を明らかにするために使用された2D−SDE分析の蛍光像。一本鎖及び二本鎖DNAフラグメントの両方が検出された。
【図9】実施例11に記載されるように実行された、第1鎖cDNA合成の効率を明らかにするために使用された2D−SDE分析の蛍光像。Cy5標識dCTP(緑色)を使用してcDNAの第1鎖を合成した後、生成物をFermentasの非標識100bp二本鎖DNAラダー(赤色)と混合した。RNA:DNAハイブリッド(12)及び一本鎖DNA分画(13)を表す2つの緑色の弧/線が得られた。EtBr染色された二本鎖DNAラダーを表す1つの赤色の弧(14)が得られた。
【図10】実施例5に従って実行された、2D−SDEによりアッセイされた複合DNAサンプル中の部位特異的一本鎖切断。 10A:Cy5標識された、未処理のBanI消化λファージDNA。 10B: 特異的なニッキングエンドヌクレアーゼN.BstNBIで処理し部位特異的一本鎖切断を形成させた10Aと同一のDNAサンプル。N.BstNBIで処理した後、10Aに示すように、無傷な二本鎖DNAフラグメントを表す弧の前方に泳動するDNAフラグメントの量が増大した。
【図11】実施例6に記載される、複合DNAサンプル中の酸化的に誘導された一本鎖切断を検出するための2D−SDE分析の蛍光像。λファージDNAをフェントン様反応中でH2O2に曝し、2D−SDEを使用して分離した。図中に見られるように、いっぱいに広がった蛍光シグナルが、二本鎖DNAを表す弧の前方に検出された。これは一本鎖切断の非特異的形成のためであった。もし一本鎖切断が部位特異的であったら、蛍光シグナルスポットの形成が予想されるであろう。
【図12】実施例7に記載される、複合DNAサンプルの温度誘導分解をアッセイするための2D−SDE分析の蛍光像。 12A:蒸留水で希釈され4℃で20時間保持された、未処理のCy5標識BanI消化λファージDNAの2D−SDE分離。二本鎖sDNAフラグメントを表す弧の前方にDNAフラグメントの微弱なスポットがいくつか検出でき、一本鎖切断の部位特異的な形成が示唆された。 12B:60℃で20時間保持された同一のDNAサンプル。そのような極端な条件下では、DNAサンプル中に少なくとも3つの異なる変化が検出された:I)一本鎖切断の非特異的な形成の結果、二本鎖DNAフラグメントを表す弧の前方にDNAのスミアが生じた、II)異なる長さの一本鎖DNAフラグメント量の増大の結果、ゲルを貫いて対角に横たわる一本鎖フラグメントの線を生じた、及びIII)分析された2つの最短DNAフラグメントの完全な変性の結果、二本鎖DNAフラグメントを表す弧の中の予測された場所よりも本質的には垂直方向上方に一本鎖フラグメントの線の内部に横たわる強いDNAスポットが生じた。
【図13】実施例8に記載される、複合DNAサンプルの時間誘導分解をアッセイするための2D−SDEの蛍光像。第2次元電気泳動を室温で実施した結果、変性ステップの後、フラグメントがかなり再結合した(二本鎖DNAフラクションを表す弧の前方の線)。13A:新しく調整されたλファージDNAサンプルの分析。二本鎖DNAフラグメントを表す弧の前方に、相対的に少ないスポットが検出された。13B:6ヵ月保持した古いλファージDNAサンプルの分析。二本鎖DNAフラグメントを表す弧の前方に増大した量のスポットが検出された。これは長期間の間のDNAの部位特異的分解を示唆する。
【図14】本発明の好ましい電気泳動システムの概略図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合物から、一本鎖非環状核酸分子を二本鎖非環状核酸分子から分離する方法であって、以下のステップ:
− 核酸分子のサンプルを提供すること;
− 前記サンプルを電気泳動ゲル中にロードし、そして第1次元において前記サンプルを、二本鎖核酸フラグメントは無傷で残るが一本鎖核酸フラグメントの局所的分子内二次構造を含むコンホメーション相異は最小化される条件を使用し電気泳動して、等しい長さの一本鎖と二本鎖核酸分子を分離させること;
− 前記ゲルを、変性剤と共に、且つ/又はサンプル核酸フラグメントの推定融解温度以上に上昇させた温度でインキュベートすることにより、二本鎖核酸の鎖分離が得られるように前記サンプルを前記ゲル中で変性させること;
− ゲル中の一本鎖と二本鎖核酸の分画を分離するために、二本鎖の再形成を防ぐ条件下で前記ゲルを第2次元において電気泳動すること;
を包含する、前記の方法。
【請求項2】
二本鎖核酸間のコンホメーション相異は最小化されるが二本鎖核酸フラグメントは無傷で残り、且つ一本鎖核酸フラグメントの局所的分子内二次構造は最小化されるような濃度で、1又はそれを超える変性剤が、第1次元電気泳動に先立ってゲルに添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の1又はそれを超える変性剤が、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、アリル、ブチル、イソブチル、及びアミルアルコール並びにエチレングリコールを含む脂肪族アルコール;シクロヘキシル、ベンジル、フェノール及びp−メトキシフェノールアルコール並びにイノシトールを含む環状アルコール;アニリン、ピリジン、プリン、1,4−ジオキサン、ブチロラクトン及びアミノトリアゾールを含む脂環式化合物;アミド、例えばホルムアミド、エチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、グリコールアミド、チオアセトアミド、バレロラクタム;カルボヒドラジド、1,3−ジメチル尿素、エチル尿素、t−ブチル尿素、チオ尿素及びアリルチオ尿素を含む尿素又は尿素関連化合物;ウレタン、N−メチルウレタン及びN−プロピルウレタンを含むカルバメート;ツイーン40及びトリトンX−100を含む界面活性剤;シアノグアニジン、スルファミド、グリシン、ジメチルスルホキシド及びアセトニトリルより成る群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
1又はそれを超える前記一本鎖及び二本鎖分画内における長さ分布を、それらの分離後に推定することをさらに包含する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
一本鎖及び二本鎖核酸分子の相対量を、それらの分離後に分析することをさらに包含する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記の分離された核酸フラグメントの少なくとも一部をゲルから単離するステップをさらに包含する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記サンプルが、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、cDNA、PNA、PNA/DNAハイブリッド、又はPNA/RNAハイブリッド、あるいは上述の核酸のいずれかの混合物より選択される核酸フラグメントを包含する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
二本鎖DNA:DNAらせんが二本鎖DNA:RNAハイブリッドから分離される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
核酸サンプルが、1又はそれを超える個体からのゲノム又はトランスクリプトーム由来である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
核酸サンプルが、1又はそれを超える個体から作製されるcDNAを包含する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記核酸サンプルが、1又はそれを超える個体から作製されるゲノム配列のサブセットを包含するゲノム呈示物である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
変性及び再結合に供された核酸サンプルの再結合効率を測定する方法であって、請求項1〜11の方法のステップを包含し、ここにおいて、分離に続いて一本鎖及び二本鎖核酸フラグメントの観察相対量が定量される、前記の方法。
【請求項13】
核酸増幅後に産生物の鎖数を特徴付ける方法であって、ここにおいて、増幅に続いて一本鎖及び二本鎖核酸分子が請求項1〜11の方法を使用して分離され、ここにおいて、一本鎖及び二本鎖核酸フラグメントの観察相対量が定量され、そして各分画の長さ分布が決定される、前記の方法。
【請求項14】
第1鎖若しくは第2鎖のいずれか、又は両方のcDNA合成効率を推定する方法であって、ここにおいて、cDNA合成に続いてcDNAサンプルが請求項1〜11の方法を使用して分離され、ここにおいて、一本鎖cDNA、二本鎖cDNA及びRNA:DNAハイブリッドの量;並びに3つの分画各々の長さ分布が、鎖数依存分離によって明らかになる、前記の方法。
【請求項15】
核酸サンプルを均等化する方法であって、請求項1の方法によって前記サンプル中の一本鎖と二本鎖核酸分子を分離することを包含し、そしてさらに一本鎖cDNA、二本鎖核酸の量及び両分画の長さ分布を推定し、そして均等化された材料を得るためにゲルから一本鎖分画を単離する、前記の方法。
【請求項16】
複合DNAサンプルからバルジ含有DNAフラグメントを検出する方法であって、サンプルをバルジ含有二本鎖核酸分子中のバルジ鎖を切断する作用因子で処理すること、続いて請求項1の方法により一本鎖と二本鎖核酸分子を分離することを包含し、ここにおいて、バルジ含有DNAフラグメントの存在が鎖数依存分離によって明らかになる、前記の方法。
【請求項17】
複合核酸サンプル中の一本鎖切断を検出する方法であって、請求項1の方法を包含し、ここにおいて、切断を含有する鎖が、変性ステップの後に2又はそれを超えるフラグメントを生じ、それらは等しい長さの二本鎖分子由来の無傷な鎖よりも短く、そしてそれにより切断を持たない核酸フラグメントから分解される、前記の方法。
【請求項18】
複合核酸サンプルを変異走査する方法であって、以下:
− 1又はそれを超える個体からの核酸サンプル/プールを提供すること、
− 二本鎖が分離するようにDNAサンプル/プールを変性すること、
− 相同鎖を包含する核酸ヘテロ二重鎖を形成するよう前記サンプル/DNAサンプルのプールを再結合すること、
− 再結合された核酸二重鎖の前記混合物を、ミスマッチにおいて一本鎖切断を特異的に誘導するような作用因子で処理すること、
− 一本鎖切断を含有する二重鎖を無傷な二重鎖から、請求項17の方法により分離すること、
を包含する、前記の方法。
【請求項19】
複合核酸サンプル中の損傷を検出する方法であって、以下:
− 1又はそれを超える個体からの核酸を包含する核酸サンプルを提供すること、
− 核酸二重鎖の前記サンプルを、損傷の存在下で一本鎖切断を特異的に誘導するような酵素又は作用因子で処理すること、
− 一本鎖切断を含有する二重鎖を、無傷な二重鎖から請求項17の方法により分離すること、
を包含する、前記の方法。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法を使用するためのキットであって、既知の異なる長さの一本鎖核酸分子及び既知の異なる長さの二本鎖核酸分子を包含し、そして所望によりサンプルが終点まで電気泳動されたことを指示するため電気泳動の間核酸分子の前方を泳動する検出可能なマーカーを包含する内的標準を包含する、前記のキット。
【請求項21】
電気泳動に適切なサンプル緩衝溶液、又は乾燥型若しくは半乾燥型で提供され水で再コンディションすることにより適切なサンプル緩衝溶液を生成する緩衝液成分を包含する、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
前記の一本鎖及び二本鎖分子が検出可能なマーカーで標識されている、請求項20に記載のキット。
【請求項23】
前記の一本鎖及び二本鎖分子の各分画が異なる検出可能なマーカーで標識されている、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
電気泳動後、前記核酸をゲルマトリックス中で検出可能にするために、ゲルマトリックス中の1又はそれを超える分離された分画中の核酸分子に結合する検出剤を包含する、請求項20〜23のいずれか1項に記載のキット。
【請求項25】
前記方法において第1次元電気泳動に適切なゲルの作製のために、ゲルキャスティングのための変性剤及び化学薬品を包含する、請求項20〜24のいずれか1項に記載のキット。
【請求項26】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法に従う二次元電気泳動のために適切に作製されたプレキャスト電気泳動ゲルを包含する、請求項20〜24のいずれか1項に記載のキット。
【請求項27】
第1次元電気泳動後第2次元電気泳動に先立ってゲルを処理するために適切な作用因子をさらに包含する、請求項19〜26のいずれか1項に記載のキット。
【請求項28】
請求項1に記載の方法を実施するための電気泳動システムであって、以下:
− 支持プレートの間に挟まれたゲルを支持する電気泳動カセット、
− 前記電気泳動カセットを適合させる区画及びサンプルを前記カセットに導入するためのサンプルポートを備える電気泳動装置、
− 電力が電極に加えられると、挿入されたカセット中のゲルを横切る第1電場を維持する第1組の電極、
− 電力が電極に加えられると、前記第1電場に対して本質的に直交して、ゲルを横切る第2電場を維持する第2組の電極、
− 前記ゲルに熱を供給し、そして前記ゲルを実質的に予め定めた温度で維持するために、前記区画において加熱表面を有する加熱手段
を包含する、前記のシステム。
【請求項29】
請求項28に記載の電気泳動システムであって、発電器及び前記システムの操作を制御するためのコンピュータソフトウェアがインストールされたコンピュータをさらに包含し、前記制御は、ある期間前記第1組電極に第1電圧を加えること(その間ゲルは第1の予め定めた温度に維持される);ある期間ゲルの温度を第2の予め定めた温度に上昇させること;そしてある期間前記第2組電極に第2電圧を加えること;を包含する、前記の電気泳動システム。
【請求項30】
システムが、少なくとも75℃の操作温度を維持し耐えられるように成型される、請求項28又は29に記載の電気泳動システム。
【請求項31】
システムが、少なくとも90℃の操作温度を維持し耐えられるように成型される、請求項30に記載の電気泳動システム。
【請求項32】
システムが、10cm2よりも小さいサイズのマイクロゲルと操作されるように成型されるマイクロシステムである、請求項28〜31のいずれか1項に記載の電気泳動システム。
【請求項33】
請求項28〜32のいずれか1項に記載される電気泳動システムであって、請求項1の方法により電気泳動されたゲルを、適切な検出剤で染色された前記ゲルの数値化された画像に基づいて分析するためコンピュータにインストールされたコンピュータソフトウェアをさらに包含し前記コンピュータソフトウェアは、コンピュータによって実行されると、以下:
− 内的標準に対応するスポットの検出、
− 染色された領域の検出及び前記領域の境界の決定、
− 内的標準スポットの位置に基づく、検出領域の一本鎖又は二本鎖核酸への割り当て、
− 電気泳動されたゲル中の一本鎖対二本鎖核酸の比率を決定するための、検出領域の密度の推定及び積分、
を行うためのステップを実施するコードを包含する、前記のシステム。
【請求項34】
前記コンピュータソフトウェアが、検出された分画領域のゲル画像内の空間的な分布に基づいて、1又はそれを超える分離された分画の長さ分布を推定するステップを実施するようなコードをさらに包含する、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
二次元電気泳動ゲルの画像を分析して前記ゲル中で動くサンプル中の一本鎖と二本鎖核酸の比率を決定するために、コンピュータにインストール可能なコンピュータプログラム製品であって、コンピュータにインストールされ実行されると、以下:
− 前記サンプル中の、既知の異なる長さの一本鎖及び二本鎖核酸両方を包含する内的標準を定義する入力値の受け取り、
− 前記画像中の前記内的標準に対応するスポットの検出、
− 染色された領域の検出及び前記領域の境界の決定、
− 内的標準スポットの位置に基づく、検出領域の一本鎖又は二本鎖核酸への割り当て、
− 電気泳動されたゲル中の一本鎖対二本鎖核酸の比率を決定するための、検出領域の密度の推定及び積分、
を行うためにコンピュータプロセッサを指図するプログラム指図手段を包含する、前記のコンピュータプログラム製品。
【請求項36】
コンピュータにインストールされ実行されると、1又はそれを超える前記一本鎖及び二本鎖分画内の長さ分布を推定するためにコンピュータプロセッサを指図するプログラム指図手段をさらに包含する、請求項35に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項1】
混合物から、一本鎖非環状核酸分子を二本鎖非環状核酸分子から分離する方法であって、以下のステップ:
− 核酸分子のサンプルを提供すること;
− 前記サンプルを電気泳動ゲル中にロードし、そして第1次元において前記サンプルを、二本鎖核酸フラグメントは無傷で残るが一本鎖核酸フラグメントの局所的分子内二次構造を含むコンホメーション相異は最小化される条件を使用し電気泳動して、等しい長さの一本鎖と二本鎖核酸分子を分離させること;
− 前記ゲルを、変性剤と共に、且つ/又はサンプル核酸フラグメントの推定融解温度以上に上昇させた温度でインキュベートすることにより、二本鎖核酸の鎖分離が得られるように前記サンプルを前記ゲル中で変性させること;
− ゲル中の一本鎖と二本鎖核酸の分画を分離するために、二本鎖の再形成を防ぐ条件下で前記ゲルを第2次元において電気泳動すること;
を包含する、前記の方法。
【請求項2】
二本鎖核酸間のコンホメーション相異は最小化されるが二本鎖核酸フラグメントは無傷で残り、且つ一本鎖核酸フラグメントの局所的分子内二次構造は最小化されるような濃度で、1又はそれを超える変性剤が、第1次元電気泳動に先立ってゲルに添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の1又はそれを超える変性剤が、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、アリル、ブチル、イソブチル、及びアミルアルコール並びにエチレングリコールを含む脂肪族アルコール;シクロヘキシル、ベンジル、フェノール及びp−メトキシフェノールアルコール並びにイノシトールを含む環状アルコール;アニリン、ピリジン、プリン、1,4−ジオキサン、ブチロラクトン及びアミノトリアゾールを含む脂環式化合物;アミド、例えばホルムアミド、エチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、グリコールアミド、チオアセトアミド、バレロラクタム;カルボヒドラジド、1,3−ジメチル尿素、エチル尿素、t−ブチル尿素、チオ尿素及びアリルチオ尿素を含む尿素又は尿素関連化合物;ウレタン、N−メチルウレタン及びN−プロピルウレタンを含むカルバメート;ツイーン40及びトリトンX−100を含む界面活性剤;シアノグアニジン、スルファミド、グリシン、ジメチルスルホキシド及びアセトニトリルより成る群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
1又はそれを超える前記一本鎖及び二本鎖分画内における長さ分布を、それらの分離後に推定することをさらに包含する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
一本鎖及び二本鎖核酸分子の相対量を、それらの分離後に分析することをさらに包含する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記の分離された核酸フラグメントの少なくとも一部をゲルから単離するステップをさらに包含する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記サンプルが、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、cDNA、PNA、PNA/DNAハイブリッド、又はPNA/RNAハイブリッド、あるいは上述の核酸のいずれかの混合物より選択される核酸フラグメントを包含する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
二本鎖DNA:DNAらせんが二本鎖DNA:RNAハイブリッドから分離される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
核酸サンプルが、1又はそれを超える個体からのゲノム又はトランスクリプトーム由来である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
核酸サンプルが、1又はそれを超える個体から作製されるcDNAを包含する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記核酸サンプルが、1又はそれを超える個体から作製されるゲノム配列のサブセットを包含するゲノム呈示物である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
変性及び再結合に供された核酸サンプルの再結合効率を測定する方法であって、請求項1〜11の方法のステップを包含し、ここにおいて、分離に続いて一本鎖及び二本鎖核酸フラグメントの観察相対量が定量される、前記の方法。
【請求項13】
核酸増幅後に産生物の鎖数を特徴付ける方法であって、ここにおいて、増幅に続いて一本鎖及び二本鎖核酸分子が請求項1〜11の方法を使用して分離され、ここにおいて、一本鎖及び二本鎖核酸フラグメントの観察相対量が定量され、そして各分画の長さ分布が決定される、前記の方法。
【請求項14】
第1鎖若しくは第2鎖のいずれか、又は両方のcDNA合成効率を推定する方法であって、ここにおいて、cDNA合成に続いてcDNAサンプルが請求項1〜11の方法を使用して分離され、ここにおいて、一本鎖cDNA、二本鎖cDNA及びRNA:DNAハイブリッドの量;並びに3つの分画各々の長さ分布が、鎖数依存分離によって明らかになる、前記の方法。
【請求項15】
核酸サンプルを均等化する方法であって、請求項1の方法によって前記サンプル中の一本鎖と二本鎖核酸分子を分離することを包含し、そしてさらに一本鎖cDNA、二本鎖核酸の量及び両分画の長さ分布を推定し、そして均等化された材料を得るためにゲルから一本鎖分画を単離する、前記の方法。
【請求項16】
複合DNAサンプルからバルジ含有DNAフラグメントを検出する方法であって、サンプルをバルジ含有二本鎖核酸分子中のバルジ鎖を切断する作用因子で処理すること、続いて請求項1の方法により一本鎖と二本鎖核酸分子を分離することを包含し、ここにおいて、バルジ含有DNAフラグメントの存在が鎖数依存分離によって明らかになる、前記の方法。
【請求項17】
複合核酸サンプル中の一本鎖切断を検出する方法であって、請求項1の方法を包含し、ここにおいて、切断を含有する鎖が、変性ステップの後に2又はそれを超えるフラグメントを生じ、それらは等しい長さの二本鎖分子由来の無傷な鎖よりも短く、そしてそれにより切断を持たない核酸フラグメントから分解される、前記の方法。
【請求項18】
複合核酸サンプルを変異走査する方法であって、以下:
− 1又はそれを超える個体からの核酸サンプル/プールを提供すること、
− 二本鎖が分離するようにDNAサンプル/プールを変性すること、
− 相同鎖を包含する核酸ヘテロ二重鎖を形成するよう前記サンプル/DNAサンプルのプールを再結合すること、
− 再結合された核酸二重鎖の前記混合物を、ミスマッチにおいて一本鎖切断を特異的に誘導するような作用因子で処理すること、
− 一本鎖切断を含有する二重鎖を無傷な二重鎖から、請求項17の方法により分離すること、
を包含する、前記の方法。
【請求項19】
複合核酸サンプル中の損傷を検出する方法であって、以下:
− 1又はそれを超える個体からの核酸を包含する核酸サンプルを提供すること、
− 核酸二重鎖の前記サンプルを、損傷の存在下で一本鎖切断を特異的に誘導するような酵素又は作用因子で処理すること、
− 一本鎖切断を含有する二重鎖を、無傷な二重鎖から請求項17の方法により分離すること、
を包含する、前記の方法。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法を使用するためのキットであって、既知の異なる長さの一本鎖核酸分子及び既知の異なる長さの二本鎖核酸分子を包含し、そして所望によりサンプルが終点まで電気泳動されたことを指示するため電気泳動の間核酸分子の前方を泳動する検出可能なマーカーを包含する内的標準を包含する、前記のキット。
【請求項21】
電気泳動に適切なサンプル緩衝溶液、又は乾燥型若しくは半乾燥型で提供され水で再コンディションすることにより適切なサンプル緩衝溶液を生成する緩衝液成分を包含する、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
前記の一本鎖及び二本鎖分子が検出可能なマーカーで標識されている、請求項20に記載のキット。
【請求項23】
前記の一本鎖及び二本鎖分子の各分画が異なる検出可能なマーカーで標識されている、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
電気泳動後、前記核酸をゲルマトリックス中で検出可能にするために、ゲルマトリックス中の1又はそれを超える分離された分画中の核酸分子に結合する検出剤を包含する、請求項20〜23のいずれか1項に記載のキット。
【請求項25】
前記方法において第1次元電気泳動に適切なゲルの作製のために、ゲルキャスティングのための変性剤及び化学薬品を包含する、請求項20〜24のいずれか1項に記載のキット。
【請求項26】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法に従う二次元電気泳動のために適切に作製されたプレキャスト電気泳動ゲルを包含する、請求項20〜24のいずれか1項に記載のキット。
【請求項27】
第1次元電気泳動後第2次元電気泳動に先立ってゲルを処理するために適切な作用因子をさらに包含する、請求項19〜26のいずれか1項に記載のキット。
【請求項28】
請求項1に記載の方法を実施するための電気泳動システムであって、以下:
− 支持プレートの間に挟まれたゲルを支持する電気泳動カセット、
− 前記電気泳動カセットを適合させる区画及びサンプルを前記カセットに導入するためのサンプルポートを備える電気泳動装置、
− 電力が電極に加えられると、挿入されたカセット中のゲルを横切る第1電場を維持する第1組の電極、
− 電力が電極に加えられると、前記第1電場に対して本質的に直交して、ゲルを横切る第2電場を維持する第2組の電極、
− 前記ゲルに熱を供給し、そして前記ゲルを実質的に予め定めた温度で維持するために、前記区画において加熱表面を有する加熱手段
を包含する、前記のシステム。
【請求項29】
請求項28に記載の電気泳動システムであって、発電器及び前記システムの操作を制御するためのコンピュータソフトウェアがインストールされたコンピュータをさらに包含し、前記制御は、ある期間前記第1組電極に第1電圧を加えること(その間ゲルは第1の予め定めた温度に維持される);ある期間ゲルの温度を第2の予め定めた温度に上昇させること;そしてある期間前記第2組電極に第2電圧を加えること;を包含する、前記の電気泳動システム。
【請求項30】
システムが、少なくとも75℃の操作温度を維持し耐えられるように成型される、請求項28又は29に記載の電気泳動システム。
【請求項31】
システムが、少なくとも90℃の操作温度を維持し耐えられるように成型される、請求項30に記載の電気泳動システム。
【請求項32】
システムが、10cm2よりも小さいサイズのマイクロゲルと操作されるように成型されるマイクロシステムである、請求項28〜31のいずれか1項に記載の電気泳動システム。
【請求項33】
請求項28〜32のいずれか1項に記載される電気泳動システムであって、請求項1の方法により電気泳動されたゲルを、適切な検出剤で染色された前記ゲルの数値化された画像に基づいて分析するためコンピュータにインストールされたコンピュータソフトウェアをさらに包含し前記コンピュータソフトウェアは、コンピュータによって実行されると、以下:
− 内的標準に対応するスポットの検出、
− 染色された領域の検出及び前記領域の境界の決定、
− 内的標準スポットの位置に基づく、検出領域の一本鎖又は二本鎖核酸への割り当て、
− 電気泳動されたゲル中の一本鎖対二本鎖核酸の比率を決定するための、検出領域の密度の推定及び積分、
を行うためのステップを実施するコードを包含する、前記のシステム。
【請求項34】
前記コンピュータソフトウェアが、検出された分画領域のゲル画像内の空間的な分布に基づいて、1又はそれを超える分離された分画の長さ分布を推定するステップを実施するようなコードをさらに包含する、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
二次元電気泳動ゲルの画像を分析して前記ゲル中で動くサンプル中の一本鎖と二本鎖核酸の比率を決定するために、コンピュータにインストール可能なコンピュータプログラム製品であって、コンピュータにインストールされ実行されると、以下:
− 前記サンプル中の、既知の異なる長さの一本鎖及び二本鎖核酸両方を包含する内的標準を定義する入力値の受け取り、
− 前記画像中の前記内的標準に対応するスポットの検出、
− 染色された領域の検出及び前記領域の境界の決定、
− 内的標準スポットの位置に基づく、検出領域の一本鎖又は二本鎖核酸への割り当て、
− 電気泳動されたゲル中の一本鎖対二本鎖核酸の比率を決定するための、検出領域の密度の推定及び積分、
を行うためにコンピュータプロセッサを指図するプログラム指図手段を包含する、前記のコンピュータプログラム製品。
【請求項36】
コンピュータにインストールされ実行されると、1又はそれを超える前記一本鎖及び二本鎖分画内の長さ分布を推定するためにコンピュータプロセッサを指図するプログラム指図手段をさらに包含する、請求項35に記載のコンピュータプログラム製品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2008−511308(P2008−511308A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−529144(P2007−529144)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【国際出願番号】PCT/IS2005/000019
【国際公開番号】WO2006/025074
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(504321360)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【国際出願番号】PCT/IS2005/000019
【国際公開番号】WO2006/025074
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(504321360)
【Fターム(参考)】
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