説明

核酸増幅反応装置、核酸増幅反応装置に用いる基板、及び核酸増幅反応方法

【課題】簡便でより高い検出感度が得られる核酸増幅反応装置を提供すること。
【解決手段】 核酸増幅反応の反応場となる反応領域と、前記反応領域に光を照射する照射手段と、前記反射した光の光量を検出する光検出手段と、を備え、前記照射手段から光が照射された反応領域からの側方光を反射して前記光学検出手段に導光する反射部材を有する、核酸増幅反応装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸増幅反応装置、核酸増幅反応装置に用いる基板、及び核酸増幅反応方法に関する。より詳細には、核酸増幅反応の反応場となる反応領域の側方光を反射させる反射部材を備える核酸増幅反応装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
PCR(Polymerase Chain Reaction)などの、特定の核酸を増幅する手法はバイオテクノロジーにおける様々な分野で応用されている。一般に、PCRなどの核酸増幅反応では、標的とする核酸が特異的に増幅されたか否かを確認する工程が必要である。例えば、PCRなどの核酸増幅反応に供した後の反応液を、ポリイミドなどのゲルを用いてゲル電気泳動に供した後、PCR増幅により得られたDNA断片を染色することにより行なう方法がある。
また、核酸増幅反応に供した後の反応液の濁度を測定することにより増幅を確認する方法、増幅対象の核酸に特異的に結合するプローブを備えたマイクロアレイを用いる方法、二本鎖DNAに結合する蛍光標識プローブや、目的とするPCR産物に特異的に結合する蛍光標識プローブを用いて、リアルタイムに増幅を確認するリアルタイムPCR等も、従来、核酸増幅反応における核酸増幅の確認を行なう方法として用いられている。
【0003】
PCR等の核酸増幅反応は、例えば、一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism;SNP)の解析にも用いられており、上述のような核酸増幅の確認方法が用いられている。
解析対象のSNP部位を含む染色体又はその断片に、野生型用プライマー及び1種又は2種の変異型用プライマーを、同時に又は別々にDNAポリメラーゼと共に作用させ、プライマーに基づく伸長の有無を調べる解析方法が提案されており、増幅した核酸を確認する方法として、電気泳動が用いられている。
また、SNP部位を含む基準配列用及び変異配列用の2種の特異的プライマーとユニバーサルプライマーとを用いて、目的配列部分を増幅するSNP解析方法が提案されており、得られた反応液を電気泳動に供することで、増幅産物の有無を確認している。ただし、電気泳動には時間がかかりすぎてかつコンタミネーションの影響が内包している。
他方、解析対象のゲノムDNAと複数対のプライマーとを用いて、SNP部位を含む核酸を増幅し、タイピングを行なう方法が提案されている。そして、得られた増幅産物に対して、標識化したプローブ等を用いてハイブリダイゼーションすることなどにより、上記タイピングが行われている。
SNP解析を迅速かつ簡便に行なうことができれば、例えば、患者のベッドサイド等で最適な治療法、投薬法などを診断するテーラーメード医療が可能となり、有力なPOC(Point Of Care)技術となるため、そのためにも、さらに迅速かつ簡便に核酸増幅反応後の核酸増幅を確認する方法が望まれている。
【0004】
蛍光物質により標識されたハイブリダイゼーションプローブを用いる核酸の検出方法として、例えば、核酸の定量方法(リアルタイムPCR法)や一塩基多型(SNP)などの変異の検出方法(融解曲線分析)などが知られている。
これらの方法で用いる蛍光標識ハイブリダイゼーションプローブは、ハイブリダイズした状態(ハイブリダイズした後に切断された状態も含む)と遊離状態との間で蛍光強度が変化するものが用いられており、この変化を測定することにより検出が行われている。代表的なものは、FRET(fluorescence resonance energy transfer)を利用したプローブであり、このようなプローブの例としては、TaqMan(商標)プローブ、分子ビーコンなどが知られている。
FRETを利用したプローブでは、リポーター色素とクエンチャー色素の二種の蛍光色素を用いる必要があり、プローブの設計が複雑である。
そのため、より簡便に核酸を定量することを目的とし、蛍光色素で標識された核酸プローブが標的核酸にハイブリダイズしたときに、蛍光色素の発光が減少する現象を利用した、1種の蛍光色素を用いる核酸プローブが知られている(特許文献1及び2参照)。また、Alexa flour(登録商標)350, 488, 568;Pacific Blue(登録商標)及びCy3により標識したプローブについて、ハイブリダイズしたときに蛍光色素の発光が増大する場合もあることも知られている(非特許文献1参照)。
【0005】
また、電気泳動ゲルや膜等の支持体及び標識物質を使用しない検出法には、以下のような方法が知られている。
例えば、核酸増幅反応液に偏光を通過させ旋光度や円偏光二色性を測定する方法(特許文献3参照)や伸長した増幅産物の偏光成分の変化を検知する方法(特許文献4〜6参照)が知られている。
例えば、増幅反応に伴い生成するピロリン酸とマグネシウムによる不溶性物質の沈殿を観察する方法(特許文献7参照)が知られている。また、増幅産物のピロリン酸に対して、酸化酵素を含む酵素反応試薬で処理し、酸化酵素が作用する際に起こる電子移動を、電気化学的活性インターカレータの存在下で増幅し、電気化学的に電流として検出する方法(特許文献8及び9参照)が知られている。また、核酸増幅反応におけるdNTPとピロリン酸の結合能の差に基づく反応液中の金属イオン量の変化を、金属指示薬によって検知する核酸増幅の有無を検出する方法(特許文献10参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−261354号公報
【特許文献2】特開2002−119291号公報
【特許文献3】特開2002−186481号公報
【特許文献4】特開2002−171997号公報
【特許文献5】特開2002−171998号公報
【特許文献6】特開2002−171999号公報
【特許文献7】国際公開第01/83817号パンフレット
【特許文献8】特開2003−299号公報
【特許文献9】特開2003−47500号公報
【特許文献10】特開2004−283161号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Marras SAE, Kramer FR, and Tyagi S. (2002), Nucleic Acids Research, 30, e122
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の如き検出方法は多用されているものの、核酸増幅の検出の際に不利な点も多く見られる。例えば、蛍光色素を用いる核酸プローブは核酸検出において二本鎖核酸にインターカレートしたときの蛍光増感は大きいが、励起波長と蛍光波長の差が小さい、すなわちストークスシフトが小さいものが多いためクロストークや利得で不利な点も多々ある。また、ピロリン酸マグネシウムの沈殿による検出は極めて簡便で実用的であるものの、シグナルとしての認識性および訴求力にやや乏しい面もある。
このため、核酸増幅の検出(反応)において、簡便で検出感度の向上が求められている。
【0009】
そこで、本発明は、簡便で高い検出感度が得られる核酸増幅反応装置、核酸増幅反応装置に用いる基板、及び核酸増幅反応方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題解決のために、本発明は、核酸増幅反応の反応場となる反応領域と、前記反応領域に光を照射する照射手段と、前記反射した光の光量を検出する光検出手段と、を備え、前記照射手段からの光照射によって発生する反応領域の側方光を反射して前記光学検出手段に導光する反射部材を有する、核酸増幅反応装置を提供する。
また、前記反射部材が、前記反応領域からの側方光を光出射面方向及び/又は光入射面方向に導光するように前記反応領域周辺に配置されているのが好適である。
また、前記反応領域と前記反射部材との間に単数又は複数の蛍光体部材を設けるのが好適である。
【0011】
本発明の核酸増幅反応の反応場となる反応領域からの側方光を反射する反射部材を備える基板を提供する。
また、更に、前記反応領域と前記反射部材との間に蛍光体部材とを備えるのが好適である。
【0012】
本発明は、光照射によって発生する核酸反応領域の反応場となる反応領域からの側方光を、当該反応領域周辺に配置した反射部材にて光出射面方向及び/又は光入射面方向に導光し、導光された光の光量を光検出器にて検出する核酸増幅反応方法を提供する。
また、前記側方光が側方散乱光であり、当該側方散乱光を蛍光体部材に透過させた蛍光の光量を検出するのが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡便でより高い検出感度が得られる核酸増幅反応装置、基板及び核酸増幅反応方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係わる核酸増幅反応装置(第一実施形態)における概念図を示す。
【図2】本発明に係わる基板における光入射面方向−光出射面方向に沿った反応領域周辺の断面の例及びそのときの光学系路本を示す。
【図3】発明に係わる基板における反応領域周辺の斜視図を示す。
【図4】本発明に係わる基板の応領域周辺の例を示す。
【図5】本発明に係わる基板の製造手順を簡単に示す。
【図6】本発明に係わる基板の製造に用いる樹脂鋳型の作製方法の例を示す。
【図7】本発明に係わる核酸増幅反応装置(第二実施形態)における概念図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0016】
1.核酸増幅反応装置(第一実施形態)
(1)反応領域
(1−a)反射部材
(1−b)側壁部
(1−c)蛍光体部材
(2)基板
(2−a)基板の製造方法
(3)核酸増幅反応
(3−a)核酸増幅(産物)の検出方法
(4)照射手段
(5)温度制御手段
(6)光検出手段
2.核酸増幅反応装置(第一実施形態)の動作
(1)核酸増幅反応で濁度物質由来の光成分を検出する場合
(1−a)基板内に蛍光体部材を有しない場合
(1−b)基板内に蛍光体部材を有する場合
(2)核酸増幅反応で蛍光物質由来の光成分を検出する場合
(2−a)基板内に蛍光体部材を有しない場合
(2−b)基板内に蛍光体部材を有する場合
3.核酸増幅反応装置(第二実施形態)
4.核酸増幅反応装置(第二実施形態)の動作
5.変形例
(1)RT−LAMP装置の動作
(2)RT−PCR装置の動作
【0017】
<1.核酸増幅反応装置>
図1は、本発明に係わる核酸増幅反応装置1(第一実施形態)における概念図である。図2は、本発明に係わる基板における光入射面方向−光出射面方向に沿った反応領域周辺の断面図及びその光学系路の例を示す。図3は、本発明に係わる基板における反応領域周辺の斜視図を示す。図4には、本発明に係わる反応領域周辺の基板の例を示す。
なお、以下に説明する図面では、説明の便宜上、装置の構成等を簡略化等して示している。
【0018】
図1に示す本発明に係わる核酸増幅反応装置(第一実施形態)は、核酸増幅反応を制御して、核酸を増幅させ、定量するための、反応領域2、照射手段3及び光検出手段5から構成され、また温度制御手段が適宜備えられている。
本発明の核酸増幅反応装置1は、照射手段3と光検出手段5との間に温度制御手段4及び脱着可能な反応領域2(基板6)が配置されている。更に、反応領域2と照射手段3との間には、光量や光成分等を調整するために、適宜、ピンホール7、励起フィルタ8、集光レンズ9を配設してもよい。また、反応領域2と光検出手段5との間には、光量や光成分等を調整するため、適宜、蛍光フィルタ10、集光レンズ11を配設してもよい。尚、本発明の核酸増幅反応装置1には、本発明の装置に関しての各種動作(例えば、光制御、温度制御、核酸増幅反応、光検出制御、検出光量算出やモニタリング等)を制御する制御部(図示せず)が備えられているのが好適である。
以下に各構成について詳細に説明する。
【0019】
(1)反応領域
前記反応領域2は、核酸の増幅反応の反応場となるエリアであり、照射手段3からの光が照射できるような位置に配置されている(図1、2及び7参照)。この反応領域2内で増幅反応の進行に伴って核酸増幅産物が生成され、当該核酸増幅産物に照射手段3からの光が照射された際に前記反応領域2の側方に光が発生する。この側方光を前記光検出手段5に導光するように反射部材20が配置されている(図1、2及び7参照)。
前記反応領域2のエリアの形状は、内部に核酸の増幅反応の反応場となるエリアが設けられていれば、特に限定されない。例えば、円柱状、円錐台状、多角錐台(例えば四角錐台)状、立方体形状等が挙げられる。
【0020】
(1−a)反射部材
前記反射部材20は、前記反応領域2からの側方光を反射して最終的に光検出手段5に導光するように配置されていれば、特に限定されない(図1及び7参照)。図2に示すように、例えば、前記反応領域からの側方光を光出射面方向及び/又は光入射面方向に導光するように反射部材20(反射面201)を反応領域2周辺に配置するのが好適である。
このとき、反射部材20(反射面201)を複数利用して側方光の反射方向を調整してもよい(図示せず)。例えば1つの反射面により側方光を略水平に反射させ、次いでもう一つの反射面で光出射面方向及び/又は光入射面方向に側方光を反射させてもよい。
前記反射部材20の光入射面方向−光出射面方向に沿って断面した際の反射面201は、側方光が反射可能な傾斜面であればよく、例えば平面、曲面、部分的に曲面を有する平面等が挙げられる(例えば図2及び4参照)。この反射面201とこれと交わる反応領域2の面とがなす鈍角(θ)は、90度<θ≦150度程度が好適である(図2参照)。
【0021】
また、前記反応部材20の立体的形状は、光出射面方向及び/又は光入射面方向に側方光を効率よく導光することができるものであればよい(図3及び4参照)。前記立体的形状としては、例えば、ラッパ形状、円錐台形状、角錐台形状等が挙げられる。
前記立体的形状の全面(全部)を側方光の反射に用いてもよく、前記反射部材20の全面の一部分(一ブロック)を用いてもよく、立体的形状を複数のブロックに分割して各ブロックを用いてもよい。一例として、分割ブロック毎に側方光の出射方向を変えてもよく、例えば1ブロックを光出射面方向に、他のブロックを光入射面方向に出射できるように配置してもよい。このようなブロックを、反応領域の周辺に適宜単数又は複数配置してもよい。
【0022】
前記反射部材20(反射面201)が光を反射させるための材料は、側方光の反射率が高い材料であればよい。この材料としては、例えば、銀、金、アルミニウム及びロジウム等から選ばれる1種以上の金属膜材料が挙げられ、このうち銀や銀を主成分とするものが好適である。そして、この材料を用いたイオンスパッタリング法により、側方光を反射させる単層又は多層の金属膜を反射部材20(反射面201)として形成することができる。前記金属膜の厚さは、特に制限はないが、30〜200nm程度であればよく、金属膜1層当たり30〜70nm程度であればよい。
【0023】
従来透過光を利用した検出系、特に濁度検出系ではS/N比が悪く十分な判別が難しかった。これに対し、上述の如き反射部材を設けることによって、反応領域からの側方光を取り出すことが容易となり、これによって投影表面積が向上する。特に濁度検出系において、核酸増幅産物(散乱物)が少ない測定初期ではほとんど側方散乱がないので、この側方散乱光を基準とすれば、測定初期からS/N比を十分に取ることができる。よって、測定初期から判別も容易となるので、簡便でありながら、検出感度も向上させることが可能となる。
また、上述の如き反射部材(反射面)(反射型手法)を採用することによる優位点として、入射光面方向又は出射光面方向に光検出手段5(受光部)を適宜配置することが可能となる。よって、光学系の配置自由度や実装形態自由度の点で、空間設計上、有利となる。
【0024】
(1−b)側壁部
前記反応領域2と前記反射部材20との間には、側壁部21が設けられ、当該側壁部21は、側壁22で反応領域2に接している(図2〜4参照)。また、前記側壁部21(側壁22)は、複数のブロックに分けられていてもよい(図3参照)。前記側壁部21又はその各ブロックは、前記反応領域2からの側方光を、目的に応じて、通過や遮断させる素材、或いは必要な光成分を透過させる素材で形成されている。
側方光が通過できるように、側壁部21(例えば、側壁22と反応部材20との間)又はその一部は、空間であってもよいし、この空間にプラスチック素材(例えば、特定の波長選択性のない素材等)等が充填されていてもよい。波長選択性のない素材とは、少なくとも散乱光や蛍光が透過するものであればよく、例えば後述する光透過性のある素材の例示物等が挙げられる。
また、前記側壁部21又はその一部(ブロック)には、側方光が前側壁部21(側壁22)を透過した際に、反射光や不必要な光成分を低減するような、また所望の特定波長の光成分(蛍光等)となるような、蛍光体物質等を含有するプラスチック素材等が用いられるのが好適である。
また、前記側壁部21の一部(ブロック)には、光検出の際に影響を及ぼす不要な側方光が遮断されるように、光を遮断(吸収)する物質を利用した素材やこのような物質を含むプラスチック素材等が用いられていてもよい。
【0025】
(1−c)蛍光体部材
前記反応領域2と前記反射部材20との間に、単数又は複数の蛍光体部材23を設けるのが好適である。このとき、側方光を所望の特定波長の光成分とするため、上述の如き蛍光体材料を含む側壁部21(側壁22)を蛍光体部材23として使用してもよい。
前記蛍光体部材23を有する脱着可能な反応領域2(基板6)を用いることにより、核酸増幅産物の検出方法に応じて所望の特定波長の光成分(蛍光等)を簡便に取り出すことが可能となる。更に、反射光や不必要な光成分(例えば散乱光の迷光等)を低減することも可能となる。斯様に簡便でまた低コストでありながら、検出感度も向上する。
例えば、核酸増幅に生じるピロリン酸と金属塩との析出物質の側方散乱光によって蛍光体部材中の蛍光体が励起され蛍光体部材が蛍光するので、核酸増幅反応溶液の蛍光物質(蛍光プローブ)を利用しなくとも、蛍光成分の測定が可能となる。また、モニタリングに際し、初期値0%基準としやすくなるのでユーザーにとって立ち上がりがモニタリングし易いという利点もある。また、側方散乱光で蛍光すると光検出手段(受光部)にフィルタ(例えば、ノイズ除去のための蛍光(波長選択透過)フィルタ)をかけることもできるため、入射光とのS/Nを高めることも可能となる。
【0026】
また、前記蛍光体部材を複数の層として前記側壁部21に形成してもよい(例えば、図4(c)の蛍光体部材231,232参照)。
複数の蛍光体層を設けることによって、予め不要な光成分を除去することも可能となり、また装置内のノイズを除去するフィルタの数を減らすこともできるので、検出感度が向上すると共に、装置自体のスリム化も可能となる。また、例えば、図4(c)に示すように、複数の異なる層を一定間隔で形成することによって、反応領域からの側方散乱光が蛍光体部材231を透過して蛍光成分となった後に、一部の蛍光成分は反射部材にて光検出手段5に導光される。残りの蛍光成分は更に蛍光体部材232を通過して異なる蛍光成分となった後に、反射部材にて光検出手段5に導光される。すなわち、異なる蛍光成分を、それぞれ光検出手段5に導光することも可能となる。これによって、1つの検体で他の異なる情報を同時に得ることも可能となるので、作業効率を向上させることも可能となると共に装置内の蛍光(波長選択透過)フィルタを減らすことができるので装置自体も小型化できる。
【0027】
前記蛍光体部材に使用する蛍光体の材料としては、所望とする蛍光成分(300〜750nm程度)に応じて公知の蛍光体の材料を使用すればよい。蛍光体の材料として、有機蛍光体又は無機蛍光体の何れでもよいが、コストを低減し易く、また所望の波長選択にし易いので、無機蛍光体が好適である。以下に、各種無機蛍光体及び有機蛍光体を例示するが、これに限定されるものではない。
【0028】
無機蛍光体の材料としては、以下のものが挙げられ、適宜、これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
サイアロン(Si-Al-O-N)を母体とする蛍光体、特にEuで賦活したアルファサイアロンを中心としてこれにCaやY、Mg等の元素を添加した蛍光材料が挙げられる(例えば特開2009−108223号公報等参照)。そのほか、構造の異なるβサイアロンを基体とした蛍光材料やCaSiAlN3結晶と同一の結晶構造を有する無機化合物、或いはA2Si5N8と同一の結晶構造蛍光材料等も挙げられる。これらの蛍光材料に関しては、青色LEDを光源として赤色や緑色を発色することにより、白色が得やすい利点がある。
ガーネット系Y3Al5O12を基体とした酸化物蛍光体材料が挙げられる。例えば、一般式として(Re1-rSmr)3(Al1-sGas)5O12:Ce(0≦r<1、0≦s≦1、ReはY、Gdから選択される少なくとも一種)等の蛍光材料が挙げられる(例えば、特開2009−135545号公報等参照)。そのほか、アルカリ土類金属アルミン酸塩をベースとした緑色系蛍光体(一般式:(Ca1-a,Ma)O・αAl2O3・βCe2O3・Tb2O3(MはMg、Sr、Ba及びZnから選択される少なくとも1種の元素、0≦a≦0.9、0.5≦α≦5.0、0.015≦β≦0.40、0.015≦g≦0.42)など)等が挙げられる。
希土類錯体とネマティック液晶マトリックスによる蛍光層の開発やハロリン酸塩蛍光体(一般式(Ml-u-vEuuMnv)・mX2・n(PO46、(ただし、0<u/v<100、l>u+v、0<m<10、0<n<10、l>10n)、M=Mg、Ca、Sr、BaでX=F、Cl、Br、I)、あるいはケイ酸アルカリ土類蛍光体((Sra,Bab,Caz,Euw)2SiO4)等が挙げられる(特開2005−307035号公報等参照)。
Euイオンを添加したCa-Al-Si-O-N系材料、オキシ窒化物ガラス等が挙げられる(特開2008−227550号公報等参照)。そのほか酸窒化物系蛍光材料や、ガーネット構造を主体とする蛍光体にV族元素を添加した蛍光体、或いはGa、Al、Inなどの酸化物にEuを賦活剤として添加し、かつ酸化物の一部が硫化された、赤色付加黄色蛍光体や黄緑色蛍光体等が挙げられる。
黄色の「α−サイアロン」や緑色の「β−サイアロン」等の白色LED用サイアロン蛍光体が挙げられる(特開2010−116564号公報等参照)。β−サイアロンは、従来のシリケート系の緑色蛍光体に比べて、温度上昇に対して輝度と色の変化が小さいことが特徴である
異なる金属酸化物(例えばAl2O3とY3Al5O12)が連続的かつ3次元的に相互に絡み合って形成されている凝固体からなる光変換材料が挙げられる(特開2006−173433号公報等参照)。
非晶質YAG中にYAG結晶を析出させた複合材料等が挙げられる(特開2008−231218号公報等参照)。
CdS等の半導体ナノ結晶、及びナノ結晶と金属酸化物の複合体等が挙げられる(特開2010−114079号公報等参照)。ZnS等の半導体ナノ結晶をポリマーマトリックスに分散させた材料等が挙げられる(特表2010−528118号公報等参照)。
青等のLED光を吸収しない誘電性粒子(バンドギャップが大きい粒子、AlNや気泡等)と蛍光(燐光)材料を混合した誘電性燐光体粉体等が挙げられる(特開2002−261328号公報等参照)。
【0029】
有機蛍光体の材料としては、例えば、以下の分子構造低分子系、π共役系高分子材料、金属錯体、高分子系、π共役系高分子材料、σ共役系高分子材料、低分子色素含有ポリマー系材料、ドーパント等が挙げられる。適宜、これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
分子構造低分子系としては、例えば、ジスチリルビフェニル系青色発光材、ジメシチルボリル基結合アモルファス発光材、スチルベン系共役デンドリマー発光材、ジピリリルジシアノベンゼン発光材、メチル置換ベンズオキサゾール系蛍光・燐光発光材、ジスチリル系赤色発光材、耐熱性カルバゾール系緑色発光材、ジベンゾクリセン系青緑発光材、アリールアミン系発光材、ピレン置換オリゴチオフェン系発光材、ジビニルフェニル結合トリフェンニン系発光材、ペリレン系赤色発光材、PPVオリゴマー系発光材、(カルバゾール−シアノテレフタリデン)系発光材、アリールエチニルベンゼン系青色蛍光発光材、キンキピリジン系発光材、フルオレンベース星型発光材、チオフェン系アモルファス性緑青色発光材、低モル質量液晶性発光材、(アセトニトリル−トリフェニレンアミン)系赤色発光染料、ビチアゾール系発光材、(カルバゾール−ナフタルイミド)系発光染料、セキシフェニル系青色発光材、ジメシチルボリルアントラセン系発光材等が挙げられる。
また、金属錯体としては、例えば、オキサジアゾール−ベリリウム青色発光錯体、ユーロピウム系燐光発光錯体、耐熱性リチウム系青色発光錯体、燐光発光性ホスフィン−金錯体、テルビウム系発光錯体、チオフェン−アルミニウム黄色発光錯体、亜鉛系黄緑発光錯体、アモルファス性アルミニウム系緑色発光錯体、ボロン系発光錯体、テルビウム置換ユーロピウム系発光錯体、マグネシウム系発光錯体、燐光発光性ランタニド系近赤外発光錯体、ルテニウム系発光錯体、銅系燐光発光錯体等が挙げられる。
また、高分子系としては、例えば、オリゴフェニレンビニレンテトラマー発光材等が挙げられる。
また、π共役系高分子材料としては、例えば、液晶性フルオレン系青色偏光発光ポリマー、ビナフタレン含有発光ポリマー、ジシラニレンオリゴチエニレン系発光ポリマー、(フルオレン−カルバゾール)系青色発光コポリマー、(ジシアノフェニレンビニレン−PPV)系発光コポリマー、シリコン青色発光コポリマー、共役発色団含有発光ポリマー、オキサジアゾール系発光ポリマー、PPV系発光ポリマー、(チェニレン−フェニレン)系発光コポリマー、液晶性キラル置換フルオレン系青色発光ポリマー、スピロ型フルオレン系青色発光ポリマー、熱安定性ジエチルベンゼン系発光ポリマー、(ビナフチル−フルオレン)系青色発光コポリマー、ポルフィリン基グラフトPPV系発光ポリマー、液晶性ジオクチルフルオレン系発光ポリマー、エチレンオキサイド基付加チオフェン系発光ポリマー、オリゴチオフェンベース発光ポリマー、PPV系青色発光ポリマー、熱安定性アセチレン系発光ポリマー、(オキサジアゾール−カルバゾール−ナフタルイミド)系発光コポリマー、(ビニル−ピリジン)系ゲル状発光ポリマー、PPV系発光液晶性ポリマー、チオフェン系発光ポリマー、(チオフェン−フルオレン)系発光コポリマー、アルキルチオフェン系発光コポリマー、エチレンオキサイドオリゴマー付加PPV系発光ポリマー、(カルパゾイルメタクリレート−クマリン)系発光コポリマー、n−タイプ全芳香族オキサジアゾール系発光ポリマー、カルバゾイルシアノテレフタリデン系発光ポリマー、耐熱・耐放射線性ナフタルイミド系発光ポリマー、アルミニウムキレート系発光ポリマー、オクタフルオロビフェニル基含有発光ポリマー等が挙げられる。
また、σ共役系高分子材料としては、ポリシラン系発光ポリマー等が挙げられる。
また、低分子色素含有ポリマー系材料としては、カルバゾール側鎖結合PMMA系発光ポリマー、ポリシラン/色素系発光組成物等が挙げられる。
また、ドーパントとしては、Eu錯体ドープ燐光発光材、トリアリルピラゾリンドーパント化合物、コロネンドープPVK発光材、チオフェン系化合物ドープ(PVK/PBD)発光材、Ir錯体ドープPVK系発光材、ジピラゾールピリジン系化合物ドープ発光材、ピラン系化合物ドープAlq3発光材、還元ポルフィリンドープAlq3発光材、クマリンまたはキナクリドンドープAlq系発光材、アンモニウム塩ドープPVCz系発光ポリマー、ビチオフェン系化合物ドープベンズイミダゾール系発光材、(ブタジエン系化合物:TPA)Co−ドープPVK系発光材、染料(TTP:DCM)Co−ドープAlq3発光材、イオン性発光染料ドープPVK系発光材、色素ドープ型EL素子等が挙げられる。
【0030】
(2)基板
前記反応領域2は、例えば、核酸増幅反応用マイクロチップ等の反応容器(例えば、基板6)内に単数又は複数形成されているのが好適である。前記反応容器は、少なくとも反応領域2及び反射部材20(反射面201)を備えており、必要に応じて側壁部21(側壁201)及び蛍光体部材23を備えるのが好ましい。このとき、各反応領域2の周辺には、上述のような、反応領域2側から、側壁部21(側壁22)、蛍光体部材23、次いで反射部材20(反射面201)の順で、反応領域2の周辺に配置されているのが好適である(図2〜4参照)。
【0031】
(2-a)基板の製造方法
前記反応領域2及び前記反射部材20を備える核酸増幅反応用マイクロチップ(基板6)の形成方法は、特に限定されない。
前記反応領域2の基板への形成方法は、例えば、ガラス製基板層のウェットエッチングやドライエッチングによって、又はプラスチック製基板層のナノインプリントや射出形成、切削加工によって行うことが好適である。形成された反応領域2には、核酸増幅反応に必要な試薬類を予め充填していてもよい。
また、前記反射部材20の基板6への形成方法は、例えば、前記反応領域2の周辺に傾斜面を形成し、この表面に金属膜をスパッタリングすることによって行うことが好適である。
このときの前記基板6の材料は、特に限定されず、検出方法や加工容易性、耐久性等を考慮して適宜選択するのが好適である。当該材料としては、光透過性のある素材で所望の検出方法に応じて適宜選択すればよい。例えば、ガラスや各種プラスチック(ポリプロピレン、ポリカーボネイト、シクロオレフィンポリマー、ポリジメチルシロキサン(PDMS)等)が挙げられる。
【0032】
より詳細に、本発明の基板6(マイクロ流路チップ)の製造方法について、以下の(A)〜(G)の手順(プロセスフロー)にて説明する。これらは、本発明の基板6の作製方法の一例であり、これに限定されるものではない。
(A)始めにマイクロ流路チップ(基板6)の型となる反射部材形成用の透明樹脂30(例えばSU8感光樹脂)を用いる(図(A)参照)。
(B)透明樹脂30を用いてフォトリソグラフィー法で任意の形状にウェルとなる円柱構造を作製する(図(B)参照)。
(C)この後に斜面のついた透明樹脂を形成する(図(C)参照)。この図(C)に示すような透明樹脂(樹脂鋳型31)は基板6(反応領域2)の鋳型として用いる。
基板61(例えば、ガラス板)の上に、樹脂鋳型31を基に、透明樹脂62(例えば、PDMS)の混合溶液を流し込み硬化させ剥離離型させる(図(D)参照)。
(D)離型させた透明樹脂62(基板62)上にウェルとなるビア+その円周上に斜面が形成されていることを確認する。その後、基板62の全面に、例えばスパッタリング法により反射部材20(例えば、金属膜:Ag膜次いでAu膜)を形成する(図(E)参照)。このとき、反射部材20(膜)の材料には発光波長の光に対する反射率が極力高いもの、例えばAgやAgを主成分とする金属などを用いるのが好適である。これによって、端面出射光やガラス/PDMSで反射して戻ってきた循環光をこの反射膜により効率よく反射させることができ、最終的に外部に取り出されやすくなる。
(E)更に反射部材20の上にリソグラフィーにより所定の円形のレジストパターンを形成して、このレジストパターンをマスクとして反射部材20(金属膜)をエッチングする(図(E)参照)。これによって基板62(透明樹脂)上の斜面に反射部材20(Ag/Au構造の円形の反射膜)を形成する。
(F)次いで、上述のような方法で、図(B)に示すようなウェル作成用の樹脂鋳型を基に、上述の(D)に準じて、透明樹脂の混合溶液を流し込み硬化させ剥離離型させる(図(F)参照。)。これにて、側壁部21が形成される。また、このとき、蛍光体材料を混合した樹脂を、側壁部21の側壁に塗布し、蛍光体部材23(側壁)を形成してもよい(図示せず)。また、ウェル形状の形成の際に流しこむ上記混合溶液中に蛍光体材料を混合して、側壁部21全体を蛍光体部材としてもよい。
(G)反応領域2となる空間が形成されるように、基板63(例えば、ガラスやプラスチック等)を配置する。
以上のことによって、反応領域2を有する本発明のマイクロ流路チップ(基板6)が得られる。
なお、光入射面方向に反射する反射部材を有する基板(例えば図2(b)参照)は、例えば、上述の方法に準じて基板を作製し完成後に裏返すことによって得ることができる。
【0033】
上述した樹脂鋳型31の形成方法として、特に限定されないが、以下のような方法が挙げられる(図6参照)。
第1の方法(図6(A)参照)では、全面に透明樹脂をスピンコート法により塗布することで斜面をθの角度に自動的に設定する。
第2の方法(図6(B)参照)では、透明樹脂をスピンコート法などにより塗布した後、この透明樹脂を硬化収縮させることで斜面をθの角度に設定する。
第3の方法(図6(C)参照)では、透明樹脂をフォトリソグラフィー技術により形成する。具体的には、透明樹脂16としてレジスト(感光性樹脂)を用い、このレジストの塗布、露光、現像を行うことで斜面をθの角度に設定する。
第4の方法(図6(D)参照)では、所定の型を用いて透明樹脂をプレス成形することで斜面をθの角度に設定する。
第5の方法(図6(E)参照)では、透明樹脂を熱インプリントすることで斜面をθの角度に設定する。
第6の方法(図6(E)参照)では、透明樹脂をUVインプリント成形することで斜面をθの角度に設定する。
第7の方法(図6(F)参照)では、透明樹脂をスピンコート法などにより塗布した後、この透明樹脂を弾性変形可能な離型層に押し付けた状態でこの透明樹脂を硬化させることで斜面をθの角度に設定する。
【0034】
(3)核酸増幅反応
本発明において、「核酸増幅反応」には、温度サイクルを実施する従来のPCR(polymerase chain reaction)法や、温度サイクルを伴わない各種等温増幅法が含まれる。等温増幅法としては、例えば、LAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)法やSMAP(SMartAmplification Process)法、NASBA(Nucleic Acid Sequence-Based Amplification)法、ICAN(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids)法(登録商標)、TRC(transcription-reverse transcription concerted)法、SDA(strand displacement amplification)法、TMA(transcription-mediated amplification)法、RCA(rolling circle amplification)法等が挙げられる。
この他、「核酸増幅反応」には、核酸の増幅を目的とする変温あるいは等温による核酸増幅反応が広く包含されるものとする。また、これらの核酸増幅反応には、リアルタイムPCR(RT−PCR)法やRT−LAMP法などの増幅核酸鎖の定量を伴う反応も包含される。
【0035】
また、「試薬」には、上記の核酸増幅反応において、増幅核酸鎖を得るために必要な試
薬であって、具体的には、標的核酸鎖に相補的な塩基配列とされたオリゴヌクレオチドプ
ライマー、核酸モノマー(dNTP)、酵素、反応緩衝液(バッファー)溶質等が含ま
れる。
【0036】
前記PCR法は、「熱変性(約95℃)→プライマーのアニーリング(約55〜60℃)→伸長反応(約72℃)」という増幅サイクルを連続的に行う。
また、前記LAMP法とは、DNAのループ形成を利用して、一定温度でDNAやRNAからdsDNAを増幅産物として得る方法である。一例として、成分(i)、(ii)、(iii)を加え、インナープライマーが鋳型核酸上の相補的配列に対して安定的な塩基対結合を形成することができ、かつ鎖置換型ポリメラーゼが酵素活性を維持しうる温度でインキュベートすることにより進行する。このときのインキュベート温度は50〜70℃、時間は1分〜10時間程度が好適である。
成分(i)インナープラマー2種、又は更にアウタープライマー2種、又は更にループプライマー2種;成分(ii)鎖置換型ポリメラーゼ;成分(iii)基質ヌクレオチド。
【0037】
(3−a)核酸増幅(産物)の検出方法
前記核酸増幅の検出方法としては、例えば、濁度物質、蛍光物質や化学発光物質等を用いる方法が挙げられる。
【0038】
また、前記濁度物質を用いる方法としては、例えば核酸増幅反応の結果生じるピロリン酸とこれに結合可能な金属イオンにより生じた析出物質を用いる方法等が挙げられる。当該金属イオンは、一価又は二価の金属イオンであり、ピロリン酸と結合すると水に不溶又は難溶性の塩を形成して濁度物質となる。
当該金属イオンとしては、具体的には、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン及び二価遷移金属イオン等が挙げられる。このうち、例えば、マグネシウム(II)、カルシウム(II)及びバリウム(II)等のアルカリ土類金属イオン;亜鉛(II)、鉛(II)、マンガン(II)、ニッケル(II)及び鉄(II)等の二価遷移金属イオン等から選ばれる1種又は2以上が好ましい。更に好ましくは、マグネシウム(II)、マンガン(II)、ニッケル(II)及び鉄(II)である。
当該金属イオンを添加するときの濃度は、0.01〜100mMの範囲であれば好適である。検出波長は、300〜800nmとするのが好適である。
【0039】
また、前記蛍光物質や化学発光物質を用いる方法としては、例えば、二本鎖核酸に特異的に挿入されて蛍光を発する蛍光色素(誘導体)を用いるインターカレート方法、増幅する核酸配列に特異的なオリゴヌクレオチドに蛍光色素を結合させたプローブを用いる標識プローブ方法等が挙げられる。
前記標識プローブ法としては、例えばハイブリダイゼーション(Hyb)プローブ法、加水分解(TaqMan)プローブ法等が挙げられる。
前記Hybプローブ法は、予め2種のプローブが近接するようにデザインされたドナー色素でラベルされたプローブとアクセプター色素でラベルされたプローブという2種のプローブを用いる方法である。そして、当該2種のプローブが標的核酸にハイブリダイズするとドナー色素により励起されたアクセプター色素が蛍光を発する。
また、前記TaqManプローブ法は、レポーター色素とクエンチャー色素の2つが近接するようにラベルされているプローブを用いる方法である。そして、当該プローブが核酸伸長の際に加水分解され、このときクエンチャー色素とレポーター色素とが離れ、レポーター色素が励起されると蛍光を発する。
【0040】
前記蛍光物質を用いる方法に使用する蛍光色素(誘導体)としては、SYBR(登録商標) Green I、SYBR(登録商標) Green II、SYBR(登録商標)Gold、YO (Oxazole Yellow)、TO (Thiazole Orange)、PG (Pico(登録商標)Green)、臭化エチジウム等が挙げられる。
前記化学発光物質を用いる方法に使用する有機化合物としては、ルミノール、ロフィン、ルシゲニン、シュウ酸エステル等が挙げられる。
【0041】
(4)照射手段
前記照射手段3は、光源3aを備え、当該光源から出射される光L1が前記反応領域2に照射される構成であればよい。例えば、前記反応領域2の上方及び/又は下方に、支持体3bで支持されている前記光源3aを配置してもよい(図1参照)。また、例えば、前記光源3aから出射される光L1を前記反応領域2に導光する導光部材を配置してもよい(図示せず)。
このうち、照射手段3として、導光部材を備えるのが好適である。前記導光部材には、光入射端部が設けられており、当該光入射端部に、前記光源3aの単数又は複数から出射された光が入射される。当該入射された光Lを各反応領域に導光させるように部材(例えばプリズム、反射板や凹凸等)が、前記導光部材の内部には設けられている。
前記導光部材を配設することにより、光源の数を減らすことができ、かつ基板6上の単数又は複数の反応領域2に均一な光の照射を行うことができ、濁度検出における検出感度や検出精度も良好である。しかも、光源数を減らすことによって、装置全体の小型化、特に薄型化も可能となり、また低消費電力化も可能となる。
【0042】
尚、前記光源3aは、特に限定されないが、目的とする核酸増幅産物を良好に検出することができる所望の光を出射するものが好適である。前記光源3aとしては、例えば、レーザー光源、白色又は単色の発光ダイオード(LED)、水銀灯、タングステンランプ等が挙げられる。このうち、LEDが、低消費電力化や低コスト化が可能となるので、好適である。また、当該LEDは、各種フィルタを用いれば所望の光成分を得ることも可能であるので有利である。
尚、前記レーザー光源としては、レーザー光の種類によっては特に限定されないが、アルゴンイオン(Ar)レーザー、ヘリウム−ネオン(He-Ne)レーザー、ダイ(dye)レーザー、クリプトン(Cr)レーザー等を出射する光源であればよい。当該レーザー光源は、1種又は2種以上、自由に組み合わせて用いることができる。
【0043】
(5)温度制御手段
前記温度制御手段4は、前記反応領域2を加熱するためのものである。前記温度制御手段4としては、特に限定されないが、例えば、ペルチェ等のヒータや光透過性のあるITOヒータ等が挙げられる。
また、前記温度制御手段4の形状としては、例えば薄膜状や平板状等が挙げられる。
また、前記温度制御手段4は、前記反応領域2に熱が伝わりやすい位置に配設されるのが好適である。例えば近接するように配設されるのが好適であり、具体的には、前記反応領域2の上部、下部、側部や外周部等の何れの位置に配設してもよい。
このうち、前記温度制御手段4は、薄膜状や平板状の形状で、前記反応領域2の上部及び/又は下部に配設するのが、好適である。このとき、基板支持台として前記温度制御手段4を配置してもよく、また孔を設けて光を通過させてもよい。これにより、熱源からの距離を拡大する必要がなく、結果反応領域2内部の温度制御が容易であるので、検出感度や検出精度が向上する。
【0044】
(6)光検出手段
前記光検出手段5は、反応領域2からの側方光を反射部材20で反射させた光L3,L4(L5)の光量を検出することが可能な機構であればよい。当該光検出手段5には、光学検出器5aが少なくとも備えられており、当該光学検出器5aは支持体5bにて適宜支持されている。尚、各光学検出器5aは、導光される光に対応するように配置されていればよく、例えば一次元的、二次元的や三次元的に配置されていればよい。
前記光学検出器3aとしては、特に限定されず、例えば、フォトダイオード(PD)アレイ、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等のエリア撮像素子、小型光センサ、ラインセンサースキャン、PMT(光電子倍増管)等が挙げられ、これらを適宜組み合わせてもよい。当該光学検出器5aにて、核酸増幅反応によって生じる蛍光物質や濁度物質等を検出する。
【0045】
尚、本発明の核酸増幅反応装置1内に、励起フィルタや蛍光フィルタを適宜配設してもよい。励起フィルタにて、核酸増幅反応の検出方法に応じて所望の特定波長の光成分としたり、また不要な光成分を除去できる。また、蛍光フィルタにより、検出に必要な光成分(散乱光、透過光や蛍光)にする。これにより、検出感度や検出精度が向上する。
【0046】
<2.核酸増幅反応装置1の動作>
以下に、上述した核酸増幅反応装置1の動作について、及びこれを用いた核酸増幅反応方法について、説明する。
(1)核酸増幅反応の濁度物質由来の光成分を検出する場合
以下に、ピロリン酸及び金属塩から形成された濁度物質による散乱光量(蛍光量)を検出する核酸増幅反応方法について、図1及び図2(a)を参考にして、説明する。
(1−a)基板6内に蛍光体部材23を有しない場合
<1aAステップ> 前記光源3aから、光L1が出射され、励起フィルタ8により光L2(励起光)となる。この光L2は、核酸の増幅反応の反応場となる反応領域2に照射される。
<1aBステップ> このとき、核酸増幅反応において析出する物質(濁度物質)が生成されることにより光散乱の度合いが増す。そして、当該光L2は、反応領域2内で核酸増幅反応の進行に伴って生じる析出物質に照射される。このとき、反応領域2内の析出物質から散乱光L3及び側方散乱光L4が発生する。
<1aCステップ> 前記側方散乱光L4は、反応領域2の側方に配置されている反射部材20(反射面201)にて反射して光出射面方向に出射される。
<1aDステップ> 前記出射された光L4は、光検出手段5(光検出器5a)にて光量を検出される。すなわち、増幅反応の進行に伴って生じる析出物質による前記光の散乱光量を検出する。
なお、散乱光L3は、CCD等の光検出手段(図示せず)によって検出することも可能であるが、基板6内に遮光物質を配置して通過させないようにすることも可能である。
(1−b)基板6内に蛍光体部材23を有する場合
<1bAステップ> 上記<1aAステップ>と同様である。
<1bBステップ> 上記<1aBステップ>と同様である。
<1bCステップ> 反応領域2からの前記側方散乱光L4は、蛍光体部材23(蛍光体部材を含む側壁、蛍光体部材層等)を透過することにより蛍光(光L5)となる。この光L5は、反応領域2の側方に配置されている反射部材20(反射面201)で反射して光出射面方向に出射される。
<1bDステップ> 前記出射された光L5は、光検出手段5(光検出器5a)にて光量として検出される。すなわち、増幅反応の進行に伴って生じる析出物質を蛍光量にて検出する。
なお、散乱光L3については、上記(1−a)と同様である。
【0047】
(2)核酸増幅反応で蛍光物質由来の光成分を検出する場合
以下に、核酸増幅反応で生じる蛍光物質を検出する核酸増幅反応方法について、図1及び図2(a)を参考にして、説明する。
(2−a)基板6内に蛍光体部材23を有しない場合
<2aAステップ> 上記<1aAステップ>と同様である。
<2aBステップ> 前記光L2は、反応領域2内で核酸増幅反応の進行に伴って生じる蛍光物質に照射される。このとき、核酸増幅反応において蛍光物質が生じることにより蛍光量が増す。そして、反応領域2内の蛍光物質から前方の蛍光L3及び側方の蛍光L4が発生する。
<2aCステップ> 前記光L4は、反応領域2の側方に配置されている反射部材20(反射面201)で反射して光出射面方向に出射される。
<2aDステップ> 前記出射された光L4は、光検出手段5(光検出器5a)にて光量として検出される。すなわち、増幅反応の進行に伴って生じる蛍光物質による前記光の蛍光量を検出する。
なお、蛍光L3は、他の光検出手段によって検出することも可能であるが、基板6内に遮光物質を配置して通過させないようにすることも可能である。
(2−b)基板6内に蛍光体部材23を有する場合
<2bAステップ> 上記<1aAステップ>と同様である。
<2bBステップ> 反応領域2からの前記光L4は、蛍光体部材23(蛍光体部材を含む側壁、蛍光体部材層等)を透過することにより特定波長の蛍光成分(光L5)となる。この光L5は、反応領域2の側方に配置されている反射部材20(反射面201)で反射して光出射面方向に出射される。
<2bCステップ> 前記光L5は、光検出手段5(光検出器5a)にて、出射された前記光の光量を検出する。すなわち、増幅反応の進行に伴って生じる蛍光物質を特定波長の光成分の蛍光量にて検出する。
なお、蛍光L3については、上記(2−a)と同様である。
【0048】
<3.核酸増殖反応装置(第二実施形態)>
図7は、本発明に係る核酸増幅反応装置1の第二実施形態を模式的に示す模式概念図である。第一実施形態と同様な構成及び説明については省略する。
本発明に係る核酸増幅反応装置1(第二実施形態)は、少なくとも、反応領域2及び反射部材20を有する脱着可能な基板6、照射手段3、光検出手段5を備え、適宜温度制御手段4を備えていてもよい。
本発明の核酸増幅反応装置1は、照射手段3と反応領域2(基板6)との間に、光検出手段5が配置されている。
また、光検出手段5と照射手段3との間には、励起フィルタ8や集光レンズ9を適宜配置してもよい。更に、光検出手段5と反応領域2との間には、集光レンズ11、蛍光フィルタ10を適宜配置してもよい。
必要に応じて、反応領域2の光出射面方向には、光検出手段51を配置してもよく、この間に蛍光フィルタ(図示せず)を設けてもよい。これにより、照射光の初期値のイニシャライズのための検出が可能となり、検出感度、特に反応開始時からの検出感度が向上する。また、反応領域2の光入射面方向には、基板支持台(温度制御手段4)を適宜配置してもよい。
<4.核酸増殖反応装置(第二実施形態)の動作>
上述の核酸増幅反応装置1(第二実施形態)に装着する基板6(マイクロ流路チップ)は、図2(b)に示すものが好適である。反応領域2からの側方光は反射部材21(反射面201)に反射することにより、光入射面方向に折り返して出射されることとなる。
核酸増幅反応装置1(第二実施形態)の動作と共に、以下により詳述する。
照射手段3からの光L1は、励起フィルタ8を透過して光L2となる。この光L2は、光学検出手段5を支持する支持体5bを通過し、更に温度制御手段4(基板支持台)を通過して反応領域2に照射される。光L2が反応領域2内の核酸増幅産物に照射されて、側方に発生した光L4は反射部材21(反射面20)にて光入射面方向に反射する。この反射した光L4は、温度制御手段4を通過し、集光レンズ11、次いで蛍光フィルタ10を経て、光検出手段5にて光成分が検出される。
【0049】
<5.変形例>
本発明の核酸増幅反応装置は、反応終了後の反応領域2を、前記温度制御手段3等に設置して、核酸増幅検出装置としても使用可能である。
また、本発明の基板6(マイクロ流路チップ)をLAMP装置やPCR装置に装着し、反応領域内の蛍光物質や濁度物質を指標にして核酸を定量することも可能である。以下に、濁度物質を指標とした場合のこれら装置の動作について説明する。
【0050】
(1)RT−LAMP装置の動作
以下に、RT−LAMP装置において、ステップSl1の手順での核酸の検出方法について説明する。
温度制御ステップ(ステップSl1)にて、反応領域2内が一定温度(60〜65℃)になるように設定することで、各反応領域2内の核酸が増幅されてゆく。尚、このLAMP法では、一本鎖から二本鎖への熱変性が必要なく、この等温条件下、プライマーのアニーリングと核酸伸長とが繰り返り行われる。
この核酸増幅反応の結果、ピロリン酸が生成され、このピロリン酸に金属イオンが結合して不溶性又は難溶性の塩が形成され、この塩が濁度物質となる(測定波長300〜800nm)。この濁度物質に入射光(光L)が照射されることで、散乱光(光L1,L2)となる。この散乱光の散乱光量をリアルタイムに検出手段5で測定し、定量化する。また、透過光量からも定量化することは可能である。また、基板内に蛍光体部材23を備えた場合には、蛍光量から定量化することが可能となる。
なお、核酸増幅反応において蛍光物質を用いる際には、蛍光体部材23を備えた場合には、特定の蛍光成分とすることができ、この特定の蛍光成分の蛍光量から定量化することが可能となる。
【0051】
(2)RT−PCR装置の動作
ここで、RT―PCR装置において、ステップSp1(熱変性)、ステップSp2(プライマーのアニーリング)、ステップSp3(DNA伸長)の手順での核酸の検出方法について説明する。
熱変性ステップ(ステップSp1)では、反応領域2内が95℃になるように前記温度制御手段にて制御し、二本鎖DNAを変性させ一本鎖DNAとする。
続くアニーリングステップ(ステップSp2)では、反応領域2内が55℃となるように設定することで、プライマーが当該一本鎖DNAと相補的な塩基配列と結合させる。
次のDNA伸長ステップ(ステップSp3)では、反応領域2内が72℃となるように制御することで、プライマーをDNA合成の開始点として、ポリメラーゼ反応を進行させてcDNAを伸長させる。
このようなステップSp1〜Sp3の温度サイクルを繰り返すことによって、各反応領域2内のDNAは増幅されてゆく。この核酸増幅反応の結果、ピロリン酸が生成され、上述のようにして濁度物質を検出し、上述のように核酸量を定量化する。また、基板内に蛍光体部材を備えた場合には、蛍光量から定量化することが可能となる。
なお、核酸増幅反応において蛍光物質を用いる際には、蛍光体部材23を備えた場合には、特定の蛍光成分とすることができ、この特定の蛍光成分の蛍光量から定量化することが可能となる。
【0052】
なお、本発明の核酸増幅反応方法は、光照射によって発生する核酸反応領域の反応場となる反応領域からの側方光を、当該反応領域周辺に配置した反射部材にて光出射面方向及び/又は光入射面方向に導光し、導光された光の光量を光検出器にて検出するのが好適である。更に、前記側方光が側方散乱光であり、当該側方散乱光を蛍光体部材に透過させた蛍光の光量を検出するのが好適である。これにより、散乱光や蛍光を適宜簡単に取り出すことが可能となり、簡便でより高い感度で核酸増幅を測定することができる。しかも、高価な有機蛍光プローブを用いなくともよくなるため、安価に測定をすることが可能となり、また試薬の品質保持が向上する。一方で、従来の濁度検出での反応検出や有機蛍光プローブでの光学検出のどちらでも使用することに支障がないという利点がある。
【実施例】
【0053】
製造例1:反射ミラー付きマイクロチップの作製
始めにマイクロ流路チップの型となるSU8感光樹脂を用いてフォトリソグラフィー法で任意の形状にウェルとなる円柱構造を作製した。
全面に透明樹脂をスピンコート法により塗布することで斜面をθ2の角度に自動的に設定した。
上記で作製した鋳型を基にPDMSの混合溶液を流し込み硬化させ剥離離型させた。
離型させたPDMS樹脂上にウェルとなるビア+その円周上に斜面が形成されていることを確認した。その後、PDMS基板全面に例えばスパッタリング法によりAg膜およびAu膜を順次形成し、さらにその上にリソグラフィーにより所定の円形のレジストパターンを形成して、このレジストパターンをマスクとしてAg膜およびAu膜をエッチングした。これによって透明樹脂上にAg/Au構造の円形の反射膜を形成した。反射膜の材料には発光波長の光に対する反射率が極力高いもの、例えばAgやAgを主成分とする金属などを用いた。これによって、端面出射光やガラス/PDMSで反射して戻ってきた循環光をこの反射膜により効率よく反射させることができ、最終的に外部に取り出されやすくなるためである。
【0054】
試験例1:試験方法
(1)1本鎖DNAプライマー試薬の固着乾燥
LAMP用プライマー溶液を混合した。
LAMP 法プライマーの設計はTarget 配列の5′側から、F3 領域、F2 領域、F1 領域、B1 領域、B2 領域、B3 領域という6つの領域を利用して実施した。基本的なLAMP 法では4 種類(Inner primer 2 種類とOuter primer 2 種類)のプライマーを使います。Inner primer は、F1c とF2、B1c とB2 を連結します。さらにF1 領域とF2 領域の間の領域に対する相補鎖にForward側のループプライマーを設定し、B1 領域とB2 領域の間の領域の相補鎖にBackward 側のループプライマーを設定した。
F2/ B2、F3/ B3、LF/ LB の3’末端及びF1c/ B1c の5’末端の自由エネルギーが−4kcal/ mol 以下になるように設定した。
ターゲット領域全域からFIP-BIP 及びF3、B3 領域を設計し次に各々のFIP-BIP 領域に対してそれぞれ一組のF3, B3 領域を選択し組み合されたプライマーセットを設計。FIP-BIP とF3、B3 領域の組み合せは5’末端から始まり3’末端まで続く。その後、再び5’ 末端から始まり3’末端へと設計が進み、一つのFIP-BIP に対し最多で3 種類のF3-B3 が組合わされる。Primer Explorerにて設計を行ったプライマーのコードを以下の表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
(2)チップ貼り合せ作製
全ウェルに酵素とプライマーを固着させたPDMS基板をO2:10cc 100W 30secでDPアッシングして表面を親水化させ真空中でカバーガラスと貼り合せた。
【0057】
(3)LAMP反応
コピー数が定量されている反応用の抽出混合溶液を無痛針によってPDMSを貫通させチップ内の流路に導入した。次に反応領域(ウェル)ごとに蛍光検出部や加熱部を測定基板上に備えている蛍光検出装置にチップをセットした。この装置は反応と同時にLEDからなる励起光をマイクロチップ基板の各々ウェル上方から照射して、反応領域で反応副産物によって散乱された光を検出した。
ウェル内で散乱された励起光がウェル側壁の無機蛍光体に照射されて蛍光を発した。
この蛍光は励起光源の光軸上に配置されたマイクロチップ基板反応領域の下方に設けられた蛍光検出フォトディテクターで検出・測定された。
【0058】
(4)結果判定(加熱時間について)
LAMP反応開始後0.1分毎に測定した結果及びより短い間隔で測定した結果から、インフルエンザウイルスの系においては9分程度で生成物が得られ蛍光強度が強くなり始めた。ただしウェル内での白濁が目視確認できるのは反応開始後16分してからであった。
従来、透過光を利用した濁度系ではS/N比が悪く十分にピロリン酸マグネシウムコロイドの粒子径が大きくなり白濁するまで判別が難しかった。
これに対し、側方に散乱した光を取り出すことで投影表面積が上がった。散乱物がない場合での透過光学系ではほとんど側方散乱がないので十分にS/N比がとれた。
また反射型の優位点として入射光側に受光部を配置でき側方散乱光で蛍光すると受光部にフィルターをかけることが出来るため入射光とのS/Nを高めることが可能であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係わる核酸増幅反応装置は、側方光を反射部材にて反射させることで、十分にS/N比がとれ、簡便でありながら、高い検出感度の測定が可能である。しかも、蛍光体部材を用いることによって、不要な光成分を除いたり、特定の光成分としたりすることも可能となるので、低コストでありながら、簡便でかつ高い検出感度の測定が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 核酸増幅反応装置;2 反応領域;3 照射手段;4 温度制御手段;5 光検出手段;6 基板;7 ピンホール;8 励起フィルタ;9 集光レンズ;10 蛍光フィルタ;11 集光レンズ;20 反射部材;;201 反射面;21 側壁部;22 側壁;23,231,232 蛍光体部材;L,L1,L2,L3,L4,L5 光


【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸増幅反応の反応場となる反応領域と、
前記反応領域に光を照射する照射手段と、
前記反射した光の光量を検出する光検出手段と、を備え、
前記照射手段からの光照射によって発生する反応領域の側方光を反射して前記光学検出手段に導光する反射部材を有する、核酸増幅反応装置。
【請求項2】
前記反射部材が、前記反応領域からの側方光を光出射面方向及び/又は光入射面方向に導光するように前記反応領域周辺に配置されている請求項1記載の核酸増幅反応装置。
【請求項3】
前記反応領域と前記反射部材との間に単数又は複数の蛍光体部材を設ける請求項1記載の核酸増幅反応装置。
【請求項4】
核酸増幅反応の反応場となる反応領域からの側方光を反射する反射部材を備える基板。
【請求項5】
更に、前記反応領域と前記反射部材との間に蛍光体部材とを備える請求項4記載の基板。
【請求項6】
光照射によって発生する核酸反応領域の反応場となる反応領域からの側方光を、当該反応領域周辺に配置した反射部材にて光出射面方向及び/又は光入射面方向に導光し、導光された光の光量を光検出器にて検出する核酸増幅反応方法。
【請求項7】
前記側方光が側方散乱光であり、当該側方散乱光を蛍光体部材に透過させた蛍光の光量を検出する請求項6記載の核酸増幅反応方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−85605(P2012−85605A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237174(P2010−237174)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】