説明

根の発育増進による樹木の生長・発育の促進方法

本発明は、生長用媒体での苗木の発芽および苗木の根の空気根切りを含む、樹木の苗木の発育方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、根の発育増進を通した樹木の生長・発育促進の改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然の堅木の需要が益々高まっているが、この種の樹木は生長が遅く、その移植も困難であるためにその商業的育成は妨げられている。同様に、堅木による非商業的な森林再生も、遅い生長と移植の困難性のために妨げられている。オーク、ヒッコリー、トネリコ(Ash)、ナットツリー(nut tree)およびその他のような天然の堅木の”伝統的な”製造方法は、生長が有名なくらい遅く、特徴的な粗悪でニンジン様の直根を発育させる傾向にある。その直根のために、苗木畑や、特に戸外植林の状態では、死滅率がしばしば70%程度かそれ以上に高く、移植が極めて困難となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
天然の堅木やその他の移植が困難な種についての移植困難性に伴う問題に挑戦し、克服するために、その種類の植物が戸外植林のプロセスでも生存し続ける可能性をより上げるであろう”第2の根組織”が発育することを期待して、多くの養樹園では、出荷の1〜3年前、野原にいる時にそれら植物の”根切り”をすることを始めた。野原での根切りに伴われる主要な問題としては、根組織が切り離されてしまうため、その根切りが当該植物に”衝撃”を与えることだけではなく、生長を停止させ、さらに1年間またはそれ以上、生育者は根組織の再構築を”待機”しなければならなくなることが挙げられる。地中での根切りプロセスは、戸外植林後の損害を最小限に抑えることに大きく寄与するが、そのプロセスは遅く、高価であり、植物が苗木畑に留まらなければならない期間を長期化させていた。
【0004】
根切りに関する公知方法の1つは、HuangとLiang, Effects of Air-Pruning on Cutting and Seedling Growth in Container Tree Propagation, SNA Research Conference 1987, pate 134-137(参照として、本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、根組織の増進を通した樹木の生長・発育の促進方法に関する。本発明方法は、通常、以下の工程を含む。
・生長させる種の種子を、同じ気候、好ましくは同じ生長条件下の樹木から選択する
・密度、大きさおよび/または重量に基づいて、その種子を分類する
・生長用媒体の表面に、その種子を並べる
・続く戸外への移動に向けて、生長シーズン(最後の霜から最初の霜までの期間)を最長化させるために、十分な時間、その種子に低温層積貯蔵を施す
・その低温層積貯蔵を施された種子をグリーンハウスに移動させ、発芽が約30日で起こり、その苗木に約3インチの深さで空気根切りを施す
・高さおよび厚さによってその苗木を分類し、底のない容器/鉢にその苗木を移植する
・その苗木にさらに約4 1/4インチの深さで空気根切りを施して、その苗木を底のない容器の中で生長させる
・その苗木を寒さに慣れさせて、生長シーズンと生長可能性を最大化するために、できるだけ生長シーズンの最初の時期に近いときに、その苗木を戸外でのさらなる生長のために移植する
本明細書に記載またはクレームした発明の詳細を除いて、本発明の一般的な方法は、Lovelace, The Root Production Method (RPM) System for Producing Container Trees, The International Plant Propagators' Society Combined Proceedings, Vol. 48 (1998) (参照として、本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】ジェシー・アスピレーター(Jesse Aspirator)を用いて密度によって種子を等級分けするところを示す写真である。
【図2】より小さな種子のためのサベージ・サイザー(Savage Sizer)とオリバー・グラビティ・テーブル(Oliver Gravity Table)を用いて重量と大きさによって種子を等級分けするところを示す写真である。
【図3】クエアカス・ビカラー(Quercus bicolor)−スワンプホワイトオークF2果樹園の等級分けされた種子を示す写真である。大きな種子:1ポンド当たり76、中程度の種子:1ポンド当たり100、小さな種子:1ポンド当たり142。スワンプホワイトオークF2果樹園(特別の樹木#6)1ポンド当たり64。
【図4】本発明の方式に従う、根切りのために用いられる底のない平箱を示す写真である。
【図5】低温層積貯蔵の準備中の、発育用媒体の表面に現れているクエアカス・ビカラー(Quercus bicolor)の種子の写真である。
【図6】低温層積貯蔵の準備中の、発育用媒体の表面に現れている他の種の種子の写真である。
【図7】低温層積貯蔵の準備がなされた種子の積み重ねられた平箱を示す写真である。
【図8】低温層積貯蔵中の種子の積み重ねられた平箱を示す写真である。
【図9】低温層積貯蔵中の種子の積み重ねられた平箱を示す写真である。
【図10】低温層積貯蔵後の平箱が、グリーンハウスで発芽のための底のない栽培床の上に配置されたところを示す写真である。
【図11】根元が、底のない平箱を貫通し始めているところを示す写真である。
【図12】根元が、底のない平箱を貫通し始めているところを示す拡大写真である。
【図13】クエアカス・ビカラー(Quercus bicolor)の生長している苗木を示す写真である。
【図14】等級分けおよび第2の根切り工程のための移植の前の、クエアカス・ビカラー(Quercus bicolor)の生長している苗木を示す写真である。
【図15】高さと厚さよって苗木を等級分けして、より厚さが大きく、より高い個体を得る工程の間の、クエアカス・ビカラー(Quercus bicolor)の生長している苗木を示す写真である。
【図16】第2の空気根切りのために、平箱の中の底のない容器の中に移植された苗木を示す写真である。
【図17】第2の空気根切りのために移植された時点の、30日後のクエアカス・ビカラー(Quercus bicolor)の根組織を示す写真である。
【図18】第2の空気根切り工程の間に、苗木の根元が底のない容器の底を突き抜けているところを示す写真である。
【図19】第2の空気根切り工程の後、苗木の移植の準備がなされたコンテナを示す写真である。
【図20】第2の空気根切り工程の後、苗木の移植を示す写真である。
【図21】約7フィートの高さで、発芽から210日後のクエアカス・ルブラ(Quercus rubra:北部アカガシワ(northern red oak))の苗木を示す写真である。
【図22】図21に示された苗木の根組織を示す写真である。
【図23】本発明の方式に従って育てられた苗木の根の上の菌根を示す写真である。
【図24】4年後のオークの根組織の発育を示す写真である。
【図25】4年後のオークの根組織の発育を示す写真である。
【図26】本発明の方式で育てられたクエアカス・ビカラー(Quercus bicolor)の早期結実(3年)を示す写真である。
【図27】本発明の方式で育てられたクエアカス・ビカラー(Quercus bicolor)の早期結実(3年)を示す写真である。
【図28】本発明の方式で育てられたクエアカス・ムエレンベルギ(Quercus muehlenbergii)の早期結実(3年)を示す写真である。
【図29】工程1で用いられた、空気根切りのための3/8インチの穴を有する底のない平箱を示す写真である。
【図30】工程1で用いられた、3 9/16インチ×3 9/16インチ×4 1/4インチ深さの底のない鉢の写真である。
【図31】ペカンの苗木の写真である。左側の3インチの深さでの空気根切りの新しい手順によって、選択および等級分けの時点でより良い生長を示している。
【図32】2インチ(左)と3インチ(右)での空気根切りの間の違いを示す写真である。
【図33】空気根切り用平箱の中に蒔かれたペカンの写真である。
【図34】本発明の方式で育てられた、移植から160日後のヨーロッパトネリコ(European Ash)の根の写真である。
【図35】従来の方法で育てられた、移植から160日後のヨーロッパトネリコ(European Ash)の根の写真である。
【図36】従来の方法で育てられた、樹齢2〜3年のペカンの根組織の写真である。
【図37】本発明の方式で育てられた、2回空気根切りされた樹齢75日のペカンの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
発明の詳細な説明
本発明の方法は、種子の起源(由来、密度および大きさ)を含む、種子の選択を考慮することを含む。さらに、層積貯蔵、生長シーズンを延長するための発芽の時期、播種の技術(深さ)を含む、種子の取扱い方を考慮することを含む。さらに、密集した繊維性の根の塊を発達させるために、好ましくは根切りの手段として空気を使う2回の工程による、空気根切りを含む。さらには、移植時の損失を減らすために、均一性のための種族の等級付けを含む。最後に、本方法は、肥料、空気の空間についての考察、湿潤剤、成分を含む、生長用媒体の選択を含む。本発明の方法は、生長速度を促進し、早期の開花と結実を促す。
【0008】
種子の選択は、樹木の生長促進に重要な要素である。種子が、特別な木の種または変種に特有な傑出した表現型を示す優れた個々の親から選ばれていることの保障に、特別に注意を払う。生まれた地理的な範囲における姿勢および場所(通常、”由来”と言われる)を含む、起源の気候上からみた地域についても注意を払わなければならない。種子は、定められた由来の中で、その最後の場所の環境状態に基づいて選択される。同じ環境状態(例えば、氾濫原、高台)で生育した同じ種から、種子を選択することが望ましい。種子は場所特異的に集められる。これらの種子の異なる型は、エコタイプと言われる。正しい選択によって、経済的および美的な価値を付加することになる樹木の改良および植樹場所への優れた適応性が結果として得られる。
【0009】
種子の取扱いも、樹木の生長促進において重要な要素である。収集した種子に、森林の構成成分すべての除去処置を施す。続いて、アスピレーターを用いて、最も重い個々の種子を分離して取り出すための処置を施す。密度は、種子の発芽能力、および苗木の生存において最も重要な要素である。密度は、蓄えられた食物の備蓄の尺度である。最も重い種子を選択した後、例えば3から4の異なる大きさへと大きさによって種子を等級分けする、ふるいを通す処置を施す。最も大きく、最も重い種子のみが使用される。これらの要素(重さ、大きさ、密度)は本来、遺伝的なものであるため、これらの処置は子孫の遺伝的改良に明確な影響を与える。
【0010】
種子の層積貯蔵とその時期は、また樹木の生長促進に重要である。層積貯蔵に必要な期間の長さは、発芽が開始できるように(例えば、2月1日)、前もって決定される。従って、2月1日までにすべての層積貯蔵の要件が満足されるように、種子は処理されなければならない。従って、例えば90日の冷所積層貯蔵が必要とされる種子には、2月1日までに発芽できるように、11月1日に我々の冷温貯蔵庫に入れなければならなくなる。図5および6に示すように、層積貯蔵の媒体(好ましくは、後述のように、生長用媒体と同じもの)の中に、種子を前もって蒔いておく。図7、8および9に示すように、32°Fに維持された冷温貯蔵室で、種子が蒔かれたトレーが積み重ねられる。種子は生長用媒体の表面に並べられる。発芽が始まると、外種皮が割れて、種子の初生葉がむき出しになる。光にさらされると、初生葉は通常の純白色から緑色に変わる。それによって、それらが光合成を行っていること、および生長中の苗木のために付加的なエネルギーを製造していることが示される。発明者の研究によって、種子の初生葉が製造するエネルギーのほとんどが植物の根組織の製造に向かうことが示され、これによって、改良された根組織の製造と促進という第一次の目標にプラスとなっている。このことは、播種の深さは種子の直径の2倍でなければならないという確立された伝統的な規則と対照的である。一旦、発達する要件が満足すると、32°Fの温度によって種子の早期の発芽が阻害される。この32°Fの温度は、約37°Fと41°Fの間の温度という確立された伝統的な英知にも対照的である。さらに、伝統的な方法と異なるのは、種子を生長用媒体に蒔くことである。歴史的には、種子は別々に積層貯蔵されて、直に発芽前に播種されていた。
【0011】
本方法における上記工程の時期は、霜が無くなる日(ミズリー州であれば、約5月10日)までに苗木が戸外移植の準備ができているように、最後までの苗木の処置、工程1:根切りと等級分け、工程2:移植に基づいている。こうすることで、最初の秋の霜までの最長の生長シーズン、約210日の生長シーズンを苗木に与えることになる。時間経過としては、例えば、2月1日に、図10に示す通り、約30日間、68°Fと72°Fの間の温度でグリーンハウス内で発芽を開始する。3月1日に、種子の平らな根切りによって生成された側面の根に追加的な空気根きりを施すために、正方形の深い底のないコンテナに移植する。2 3/4×2 3/4×3インチのコンテナは本工程に申し分なく使用されたが、3 9/16×3 9/16×4 1/4インチのコンテナによって、図30に示すように優れた植物が製造されることを、本発明者らは確認した。工程2の最後に、苗木の高さは12インチから18インチの間となり、苗木畑の生長エリアの戸外にある、それらの最終の生長コンテナへの移植の準備が整う。
【0012】
上記の通り、底のない網目状の種子用平箱に種子を並べることで、播種がなされる。3/8インチの網目幅を有し、18 1/2インチ×14 1/2インチ×2 1/2インチ深さの種子用平箱は図29に示すように申し分なく使用されたが、3/8インチの網目幅を有し、15 3/4インチ×15 3/4インチ×5インチ深さの種子用平箱(図4)が最適であることが見出された。土壌のない播種用媒体と、生長用媒体は、好ましく使用される。播種用媒体は、堆肥にされた籾殻40%、松の樹皮40%、砂20%からなっており、それによって望ましい35%の空気の空間を有する結果となっており、申し分なく使用できた。しかし、堆肥にされた籾殻35%、松の樹皮35%、砂20%および堆肥10%からなる媒体は、望ましい35%の空気の空間を有する結果となっており、最適であることが見出された。完全にゆっくりと放出する肥料と、微量栄養素と湿潤剤が、その媒体に加えられる。その生長用媒体はまた菌根菌の胞子で接種処理され、その菌根菌の胞子は発芽して、共生関係で樹木の根の上および内部で生育する(図23参照)。研究によって、これら菌体が樹木に対して極めて重要な役割をになっていることが証明された。菌体は、樹木にとって、感染性の病気に対する免疫系を提供している。菌体は密集した塊を作り、それによって根の表面の能力を1000倍まで高め、さらに水分、栄養分、空気の取り込みを向上させ、その結果、より大きなストレスがかかる状況に抵抗でき、これから先もなお特別な活力を示してうまく育ち、生長する植物となる。
【0013】
人工(土壌のない)の生長用媒体での木性植物による正しい栄養素の取り込みについて、普遍的な問題がある。クエアカス・ビカラー(Quercus bicolor)−スワンプホワイトオークのための媒体で生長した植物の葉の分析と、媒体の分析との比較を通して、発明者らは、堆肥にされた籾殻、松の樹皮、砂、およびゆっくりと放出する肥料と、微量栄養素からなる発育用媒体に、堆肥にされた堆肥10%を追加することで、植物中の栄養素の量が向上し、ほとんどの栄養素が土壌媒体中の低い解釈から植物中の望まれる量に移動することを確認した。これによって、植物が最大限、生長し、うまく育つことになる。
【0014】
堆肥の追加により、生長用媒体の中のバランスの取れた生物学的環境の発達が促進され、多数の有益な生物の生長も促進される。これらの生物は、望ましい土壌動物相の発達を促進する。この動物相は、有機性成分を壊して極めて重要な副生成物(酵素など)を放出させ、その副生成物が、今まで媒体中に存在するが、植物が吸収できる形態では利用できなかった栄養素の取り込みを可能にすることで植物に利益を与える。この結果、肥料は50%削減され、実質的な費用が削減された。また、依然として最大限の植物の発育を達成しつつ、より少数の栄養素が濾されて無くなるため、環境への影響も減少する。
【0015】
1立方ヤードの生長用媒体当たり3/4ポンドのタルスター合成殺虫剤が取り込まれると、植物系全体に転流して、その媒体中で生長している植物が、マメコガネ(Japanese beetle)を含むがそれに限定されない多数の望ましくない害虫による攻撃を撃退するのを手助けされることも、本発明者は発見した。
【0016】
図10と11に示した通り、最初の空気根切り工程において、播種された平箱は、グリーンハウスの高く揚げられた栽培床の上に置かれて、栽培床の下から空気を循環させる。種子の発芽が上記の底のない平箱の中で生じ始めると、以下のことが相次いで起こる。苗木の根元(直根)が媒体を貫通して、3/8インチの網目を通して現れ、高く揚げられた栽培床の下から循環されている空気と接触する状態となる(図12参照)。根の先端が空気によって、3インチの深さで死滅(乾燥)する。従来の通りに生長させたペカンの苗木を示している図37と、本発明の方式に従って生長させたペカンの苗木を示している図36とを比較下さい。本発明の方法で成された浅い空気根きりによって、その樹木の頸領(root collar)の高い位置(最も望ましい位置)での急速な側面の根の発育が惹起される。その位置の作用は、樹木の繁栄へと最もよく提供されるであろう。
【0017】
この根切りは、好ましくは約2 1/2−3インチで起こる。発明者によって成された広範囲にわたる研究によって、最初の空気根切りの理想的な深さ(図31と32)は約3インチであることが確立された。
【0018】
図30に示した通り、第2の空気根切り工程において、等級分けされた苗木を3 9/16×3 9/16×4 1/4インチの底のない容器に移植する。この大きさの容器が、改良された生長を与え、製造コンテナ中の根の配置を改良することが見出された。工程2の移植された苗木の底のない容器は、付加的な空気根切りを促進するために、高く揚げられた底のない栽培床の上に置かれる。付加的な空気根切りは、二次的な側面の根の上で起こり、さらに浅い濃密な根の塊と多数の根の先端の発育を促進する。最初の2つの工程の時期は、遅い霜を避けるように5月初旬にコンテナ製造地域内の戸外に移植するのに容器の準備ができるように決められるが、生長シーズンすべての利益を取るようにも、時期は決められる。正しく取り扱われれば、樹木が一時的に末端で芽を付けることが同時に起こることもあるため、時期はさらに重要である。このことが起これば、光合成産物が葉から根に転流する。これにより、根の非常に活発な発育が促進され、コンテナ地域内への早期の設置によって生長が促進されることになる。
【0019】
発明者らの研究によって、工程2のコンテナの最適の大きさが3 9/16インチ×3 9/16インチ×4 1/4インチ深さの底のない木の容器(図30参照)であり、理想的な根の塊を最高の比(土壌に対する植物すべて)で作ることも、確認された。
【0020】
【表1】

【0021】
この浅い空気根切りは、本発明の方法の特異なところであり、根組織を拡大する。これによって、試験を行ったすべての状況で生き続けて、うまく育ち、より早く生長する優れた植物を製造できることになる。以前の根切り方法は、典型的には少なくとも5インチまたはそれ以上で根切りをする。本発明の浅い空気根切りによって、その樹木の頸領(root collar)の高い位置(最も望ましい位置)での急速な側面の根の発育が惹起される。その位置の作用は、樹木の繁栄へと最もよく提供されるであろう。
【0022】
発明者らは、最初と第2の空気根切り工程の双方について、厳格にコントロールされたグリーンハウスの環境の中で、種々の栽培床の高さ(すなわち、グリーンハウスの床から金網の保持具までの高さ)についても試験を行った。12、18、24、30および36インチの高さはすべて注意深く試験を行った。30と36インチの栽培床の高さのものではほとんど違いがなかったが、双方とも気流と続く根切りにおいて、12、18および24インチのものに対して遥かに優れていた。結果として、発明者らは、根切りの効果、建造と取付けの費用、人間工学的考慮のバランスを取ることで、30インチの高さが最適であると決定した。
【0023】
苗木は、遺伝的に優れている個体であることを確認して等級分けされる。経験および研究から、最初の芽生えの後に最も大きな苗木を選択すれば、それは、より大きく発育し、現実に戸外に移植した際、他に勝っており、生長が早く、遺伝的な優位性を示す個体を確認したことになることを証明している。等級分けをする際、特に注意しなければならないのは、高さ、厚さおよび根の発育の組合せである。大部分の木性植物の種では、上位50%のものは維持し、移植するが、残る植物は処分する。この等級分けプロセスは、樹木の改良に重要な工程であることが証明された。
【0024】
等級分けされた苗木は、その後、2 7/8インチ×2 7/8インチ×3 3/4インチ深さの底のない容器に移植される(この短い容器によって、改良された生長が得られ、製造コンテナにおける根の配置も改良される)。底のない容器の中の移植された苗木は、付加的な空気根切りを促進するために、高く揚げられた底のない栽培床の上に置かれる。付加的な空気根切りは、二次的な側面の根の上で起こり、さらに浅い濃密な根の塊と多数の根の先端の発育を促進する。最初の2つの工程の時期は、遅い霜を避けるために最後の霜の日(ミズリー州では5月初旬)の後、すぐにコンテナ製造地域内の戸外に移植するのに容器の準備ができるように決められるが、生長シーズンを最大化するようにも、時期は決められる。戸外への移植と、樹木の一時的な末端での芽生えとを調整することも、望ましい。これが起これば、光合成産物が葉から根に転流する。これにより、根の非常に活発な発育が促進され、コンテナ地域内への早期の設置によって生長が促進されることになる。
【0025】
図16に示す通り、グリンーハウスの中では、容器は好ましくは底のない平箱に収容され、その平箱には各々25個の木の容器が保持される。戸外への移植の準備において、コントロールされたグリーンハウスの環境から、よりストレスの多い戸外の環境へ適切に変化させるために、特別なやり方で植物を取り扱わなければならない。グリーンハウスのプロセスで、気孔(葉の下面に開口部)はその弾力性を失う状態になり、気孔が狭まったり、閉じたり、蒸散(水分損失)およびクチクラを管理することができず、葉の表面に形成されて葉を守る蝋状の層が形成されない。これらの状態は両方とも、完全な日光の下、戸外植林されて48時間経てば、自己で修正される。この期間の間、順化させながら、ストレスを軽減するため、植物は断続的に水を吹きかけられる。順化した後、植物はコンテナ製造地域に移されて(図20参照)、存在する前もって満たされたコンテナに移植される(図19参照)。戸外植林後、ほとんどの植物の根は土壌の上層6から8インチの深さに留まることから、浅く広い生長用コンテナが用いられる。その生長用コンテナは横10インチと深さ7インチである(図19参照)。これを用いることで、以前使用したより小さなものに比べて、側面の根の発育が25%多くなる。この製造方法によって、種子の発芽から約210日間の1回の生長シーズンで、記録的な大きさまで生長することになる(図21参照)。
【0026】
図22に示す通り、本発明の方法を用いて実現された根の塊によって、伝統的方法で生長された樹木、特にオーク、ヒッコリー、トネリコ、ナットツリー(nut tree)のような移植が困難と認められているものを用いた際、しばしば経験された損失が除かれる。発明者らは、湿地帯(洪水の起こる場所)、採掘坑の再生地、および建設地のようなストレスの多い場所であっても、本発明の方法を用いることで95%以上の安定した生存率を成就した。
【0027】
本発明の方法で製造された樹木は、伝統的方法で生長された苗木よりも、平均して3倍早く生長する。図24、25および26に示す通り、15年後でさえ、その樹木は伝統的方法で製造された樹木の3倍の速度で生長する。この加速された生長速度は、林業の価値と経済を大きく増加させる。この発明の方法を用いることで、ほとんどの樹木の製造における回転率が50%またはそれ以上増加され、また林業を利益になる実行可能な成長事業にすることができた。
【0028】
この製造方法で生長されたほとんどの種類の樹木は、早期の開花と結実という特徴を示した。その例は、スワンプホワイトオーク(クエアカス・ビカラー(Quercus bicolor))とバリオーク(クエアカス・マクロカルパ(Quercus macrocarpa))である。これらの種では、約20年から25年の樹齢で開花および結実を始めることが、文献上、一般的に受け入れられている。参照:Schopmeyer, Seeds of Wood Plants in the United States, Agriculture Handbook No. 450, Forest Service, U. S. Department of Agriculture, Washington, D. C., Table 2 (1974)(参照として、本明細書に組み込まれる)。しかしながら、図27と28に示す通り、本発明の方法で生長されたこれらの種の樹木は、着実に戸外植林後3年目で果実を結んだ。発明者らは、これらの樹木が、自然の中で生長した樹齢20〜25年の樹木と同じくらい多くの根の先端(ホルモンが製造される場所)を有していると信じている。この早期の結実は、再生と野生食物の観点から、非常に価値がある。発明者らの研究は、この同じ反応が、ナットツリー(nut tree)と果樹(fruit tree)の双方で、特にペカン、クルミ、リンゴで生じることを示す。
【0029】
本発明の方法と、以前の樹木の製造方法との特別な相違点としては、以下のものが含まれる。
(1)空気根切りの浅い深さ(約2 1/2インチ);
(2)遺伝的に優れた種子を選択する種子の等級分け;
(3)図16、17および28に示す通り、さらなる根の塊を増やすために、最初の根切りの後、底のない容器に移植すること;
(4)直根を収納できる伝統的な深いコンテナと比較して、底のない容器の浅い深さ(3 9/16インチ×3 9/16インチ×4 1/4インチ);
(5)適正な量の空気、栄養素、有益で自然界の土壌で生まれた生物が、これらを適正に使用し、吸収する、増進された根組織とバランスを取って、組み合わされた生長用媒体(図19参照)(この結果、何年間も持続する非常に促進された生長速度が得られる);
(6)ほぼあらゆる状況で戸外植林された場合はほぼ100%の生存率であり、伝統的な方法で製造された苗木が2%以下の生存率しかないストレスの高い場所で95%以上の生存率を示すという、本発明の方法で製造された樹木の高い移植可能性と生存率(試験した場所は、繰り返し洪水が起こる湿地帯、露天掘りの再生、その他の植林に問題がある場所および状況を含む)。
【0030】
発明者らは、1年に約750,000のコンテナ詰めされたオークとナットツリー(nut tree)の苗木を増殖させた。その多くは、ミズリー州の中央部または西部の放棄された鉱山地区や古い湿地地区・野原に、戸外植林された。最初の年の、コンテナに詰めた苗木の定着成功率は、横に並べた野外試験(side-by-side field trial)で、裸の根(bare-root)の苗木の成功率の約2倍である。過剰な植物生長の競争と、冬季のげっ歯類動物による損害の結果、最も多くの死滅が生じた。オーク、ヒッコリー、クルミのような直根の堅木は、底のないコンテナを用いた空気根切りによく反応した。苗木は繁殖させられ、高く揚げられ、溶接された豚または牛用のパネルの上に、4インチ四方で、木製の枠と亀甲金網でリスから守られて置かれた。
【0031】
定着の成功についての質的観察の結果、ハーフガロンの底のないコンテナ中で生長した、空気根切りされたカシ(bur oak)、ペカンの最初のシーズンの生存率は90%である。この結果は、地元の養樹園で生育された樹齢1年の裸の根の苗木の40〜50%の生存率と比較される。これらは、ミズリー州西部の保全保護区計画(Conservation Reserve Program: CRP)の農耕地で、プレーリー土壌の用意された列に移植された苗木の横に並べた野外試験であった。列は、15フィートを中心に設定され、ディスクハローで耕され、手で移植された。コンテナ詰めされた苗木は秋に移植され、裸の根の苗木は春に移植された。ベイツローム(Bates loam)(2〜5%の勾配、細かなローム性、ケイ酸を含む、セルビック性の(therrvic)、ティピック・アルギウドルス(Typic Argiudolls))として位置づけされる非常に細かな砂を含むloam土壌では、ケノマ(Kenoma)(2〜5%の勾配、細かい、モンモリロン石的な(montmorillinitic)、熱性の(thremic)、ベルティク・アルギウドルス(Vertic Argiudolls))(米国農務省(USDA)1995)と位置づけられるシルト質埴土の土壌よりも、成功率が多少高い。一般的で大きなブタクサ:オナモミ、センダングサのようなシーズン後期の雑草が古い野原の種子バンクから発芽するため、競争が真夏に激しくなった。苗木の上に陰を作るのを避けるため、7月に、列は草刈りを行った。
【0032】
第2の試験の区域は、ミズリー州西部で、粗く等級分けされた中性の採掘坑の廃物(15%の頁岩の礫層、5%の砂岩の丸い小石および少しの砂岩の丸石を含むシルト質埴土組織)の上に設置された。コンテナ詰めされたカシ(bur oak)とペカンの最初の年の定着成功率は約75%であり、裸の根の苗木の30%と比較された。D−3ブルトーザーで廃物の尾根から頂上部分を崩して、その盛り土を尾根の間の谷間に押しやることで、すべての地ならしは行ったため、圧縮は最小限となった。風播種性の種、特に、ほうきスゲは、苗木と競って、その地域にゆっくりとコロニーを作った。隣り合う採掘坑の廃物では、ひどく植物が生長し、シカが平穏に草を食べるていた。
【0033】
第3の試験の区域は、ミズリー州中央部で、19世紀に開拓され、耕され、最近数十年間は背の高いウシノケグサ(fescue)へと植林された黄土(loess)由来の森林土壌に設置された。所々で、A層位の多くが侵食され、鋤で耕されてE層位へと混合されていった。その土壌は、侵食されたウィンフィールド(Winfield)シルト質ローム(細かなシルト質の、混合された、中湿性の、Typic Hapludalfs)(米国農務省(USDA)1994)に区分された。定着までの間、競争を減らすために、各々の苗木の周りのウシノケグサの芝生は、重い鍬で取り除かれた。噴霧器をかけることも効果的であるが、苗木が休眠中でなければならない。コンテナ詰めされたカシ(bur oak)と北部アカガシワ(northern red oak)の最初の年の成功率は、90%であり、裸の根のものの25%と比較された。
【0034】
下表は、本発明の方式に従って生長された植物と従来の裸の根の植物との仮想的な費用便益分析を示す。
【0035】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗木を得るために生長用媒体の表面で種子を発芽させること;および改良された根の塊を獲得するために苗木の根を3インチの深さで空気根切りを行うことを含む、樹木の苗木の発育方法であって、
生長用媒体が、堆肥にされた籾殻35%、松の樹皮35%、砂20%、堆肥10%および空気の空間35%を含む、方法。
【請求項2】
根の空気根切りの工程が、地面から約30インチと約36インチの間の高さで、底のない平箱の中で苗木を育てることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
生長用媒体が、微量栄養素と湿潤剤をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
生長用媒体が、菌根菌の胞子で接種処理されている、請求項1記載の方法。
【請求項5】
最初の空気根切り工程の後、第2の空気根切り工程のために、苗木を幅が約3 9/16インチ、深さが約4 1/4インチのコンテナに移植することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
堆肥にされた籾殻35%、松の樹皮35%、砂20%、堆肥10%および空気の空間35%を含む生長用媒体の表面の上に種子を蒔くこと
苗木を得るために、種子を生長用媒体の上で発芽させること;および
約3インチの深さの底のないコンテナで苗木を育てることによる最初の空気根切りと、約4 1/4インチの深さの底のないコンテナで苗木を育てることによる第2の空気根切りを、苗木に施すこと
を含む、樹木の苗木の根組織を改良する方法。
【請求項7】
苗木への空気根切りの処理が、コンテナを地面から約30インチと36インチの間の高さに保持することを含む、請求項11記載の方法。
【請求項8】
生長用媒体の上の種子を32°Fで積層貯蔵させることをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
発育用媒体の上の種子を32°Fで積層貯蔵させることをさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項10】
以下の工程を含む、樹木の苗木の発育方法:
・種子の重量に基づいて、種子を選択すること;
・空気の空間35%を有する生長用媒体を得るために、堆肥にされた籾殻35%、松の樹皮35%、砂20%および堆肥10%を混合すること;
・その生長用媒体を、3インチの深さで、底のない最初のコンテナに配置すること;
・その生長用媒体の上に、その種子を並べること;
・その生長用媒体の上のその種子に32°Fで積層貯蔵を施すこと;
・苗木を得るために、その生長用媒体の上の層積貯蔵を施された種子を発芽させること;
・その苗木の根に、3インチの深さで、地面から約30と36インチの間の高さで、最初の空気根切りを施すこと;
・その空気根切りされた苗木を4 1/4インチの深さで、底の開いた第2のコンテナに移植すること;および
・その苗木に、4 1/4インチの深さで、地面から約30と36インチの間の高さで、第2の空気根切りを施すこと。
【請求項11】
生長用媒体を菌根菌の胞子で接種処理することをさらに含む、請求項10記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図3】
image rotate

【図21】
image rotate


【公表番号】特表2011−505830(P2011−505830A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537904(P2010−537904)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/025580
【国際公開番号】WO2009/078827
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(510164371)
【氏名又は名称原語表記】LOVELACE, WAYNE
【出願人】(510164393)
【氏名又は名称原語表記】LOVELACE, JUDY
【Fターム(参考)】