根切り装置及び根切り方法
【課題】低コストで製造でき、作業性が良く、低労力でスムーズに根切りを行える根切り装置を提供することにある。
【解決手段】多数の苗を収容した上面開口で扁平箱型の苗パレットの底板下面と苗パレットが載置された地面との間に挿入されて苗パレットの底板下面に沿った一方向への引き移動動作により苗の根切りを行なう根切り部材12と、根切り部材12を苗パレットの底板下面に沿って引き移動駆動する駆動部14と、を含む根切り装置10から構成される。
【解決手段】多数の苗を収容した上面開口で扁平箱型の苗パレットの底板下面と苗パレットが載置された地面との間に挿入されて苗パレットの底板下面に沿った一方向への引き移動動作により苗の根切りを行なう根切り部材12と、根切り部材12を苗パレットの底板下面に沿って引き移動駆動する駆動部14と、を含む根切り装置10から構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗パレットの底板下面より伸長した根の切断を行う根切り装置及び根切り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水田で育てられる稲は、予め種籾からある程度の大きさの苗を育てた後に、水田に移植される移植栽培方法が利用される。育苗方法は、例えば、底板に水抜き用の多数の孔が開けられた育苗箱が用いられている場合が多く、多数の育苗箱を地面に列状に並べて育苗管理が行われている。また、近年では、育苗箱が載置される地面に、予め多数の小孔が空いたビニルシートを地面に敷設しておく場合もある。しかしながら、育苗箱で苗が生長するにしたがって根も伸長するが、この育苗箱の底板の孔から根が外に出て、地面に張り付いてしまっていた。したがって、苗を水田に移植する際には、育苗箱を地面から強制的に引き剥がす作業が必要となるが、この育苗箱の引き剥がし作業では、1つ1つの育苗箱ごとに作業者は引き剥がしに大きな力を必要とするとおもに、かがんだ姿勢で行われるうえ、育苗箱は互いに近接して並列されているので重労働であった。さらに、水田面積に応じて多数の育苗箱について行う必要があるので、多くの人手を必要とし、作業時間も長時間となっていた。さらに、育苗箱を無理に引き剥がすと育苗箱が壊れたり、移植用の苗が崩れてしまって苗品質を劣化させる等の問題を生じるおそれが高く、慎重に行う必要があり、作業を煩雑なものとしていた。
【0003】
一方、例えば、特許文献1には、簡単に根切りを図れる育苗箱の技術が提案されている。特許文献1の育苗箱では、平面視形状が長方形の浅底箱型で一辺が開放する育苗受箱と、この育苗受箱内に開放部から水平方向引き出し自在に挿入される開いた状の育苗引出棚と、を備え、育苗受箱と育苗引出棚に多数の小孔を同一ピッチでそれぞれ形成されている。そして、育苗引出棚をスライドして引き出すと、育苗受箱と育苗引出棚との小孔がずれることにより自動的に伸びた根の切断を行わせるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−41498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の育苗箱は、育苗受箱と育苗引出棚とで構成された特殊な構造であるから、従来の育苗箱と比較して箱構造が複雑で極めてコストが高いものであった。そのため、農家では、既存の育苗箱とは別に新たに多数個を用意する必要があるので、購入費用が大きく負担になる問題があった。さらに、使用後の洗浄やその他メンテナンスも煩雑となっていた。また、育苗受箱から育苗引出棚を引き出して根切りする際には、作業者は腰をかがめた状態で行う必要があるので、労力がかかり、作業性も悪いものであった。よって、特殊な構造の育苗箱をしようすることなく、簡単に根切りを行う技術の開発が望まれていた。
【0006】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、低コストで製造でき、作業性が良く、低労力でスムーズに根切りを行える根切り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、多数の苗Pを収容した上面開口で扁平箱型の苗パレット100の底板下面と苗パレットが載置された地面Gとの間に挿入されて苗パレット100の底板下面に沿った一方向への引き移動動作により苗の根切りを行なう根切り部材12と、根切り部材12を苗パレット100の底板下面に沿って引き移動駆動する駆動部14と、を含む根切り装置10から構成される。本発明の根切り装置10では、特殊な構造の苗パレットを必要とせず、周知の苗パレットに対しても根切りすることができる。また、多数の小孔が形成されたシートが敷設された地面上に設置した苗パレットに対しても有効に根切りすることができる。また、1回の根切り部材の引き動作駆動で1つの苗パレットについて根切りを行わせる構成でもよいし、1回の根切り部材の引き動作駆動で複数の苗パレットについて根切りを行うように構成してもよい。また、根切り部材12は、着脱交換できるように構成するとよい。また、駆動部14は、人力駆動構造でも、動力駆動構造でもよい。駆動部14を動力駆動する際の原動部としては、例えば、モータ、エンジンやその他、電気、油圧等の原動力を利用した構造、又はトラクタ等の農業機械の動力等を利用できる構造としてもよい。
【0008】
また、駆動部14は、根切り部材12に連結されて根切り部材12から人力円滑作業長程度の長さで離間した位置に設けられた把持部16又は、根切り部材12を苗パレット100の底板下面に沿った一方向に引き移動駆動する原動部付き駆動機構50からなることとしてもよい。
【0009】
また、駆動部14は、把持部16又は原動部付き駆動機構50と連結され根切り部材を支持する枠体18であり、根切り部材12を苗パレット100の底板下面に沿って引き移動動作する際に内側に苗パレット100を通過させる通過空隙20が形成された枠体18を含むこととしてもよい。
【0010】
また、枠体18は、互いに離隔配置された縦枠部22と、根切り部材12と把持部16との中間位置で縦枠部22どうしを連結した1つ又は複数の補強部(24)と、を含むこととしてもよい。
【0011】
また、根切り部材12は、苗パレット100の一辺の長さに対応した離隔幅で配置される縦枠部22の先端側に、該根切り部材12の引き移動動作方向とは交差方向に向けて直状に張架された直状部材(38、40、42)からなることとしてもよい。直状部材としては、例えば、ワイヤ等の索条体38、薄肉厚である程度幅のある帯状体40、一方に刃先が形成された刃体42等で構成してもよい。
【0012】
また、縦枠部22の根切り部材12を支持している先端部は、根切り部材の移動方向Dと直交方向の幅が縦枠部本体側より幅狭くなるように形成されたこととしてもよい。
【0013】
また、枠体18は、根切り部材12を苗パレット100の底板下面に沿って引き移動動作させる際に地面と接触する先端部分を側面視円弧状に形成させたそり状部28を含むこととしてもよい。
【0014】
さらに、本発明は、多数の苗Pを収容した上面開口で扁平箱型の苗パレット100の底板下面と苗パレット100が載置された地面Gとの間に根切り部材12を挿入し、根切り部材12を苗パレット100の底板下面に沿った一方向(D)へ引き移動動作することにより苗の根切りを行なうことを特徴とする根切り方法から構成される。本根切り方法では、例えば、1回の根切り部材の引き動作駆動で1つの苗パレットについて根切りを行わせる構成でもよいし、1回の根切り部材の引き動作駆動で複数の苗パレットについて根切りを行う構成でもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の根切り装置によれば、多数の苗を収容した上面開口で扁平箱型の苗パレットの底板下面と苗パレットが載置された地面との間に挿入されて苗パレットの底板下面に沿った一方向への引き移動動作により苗の根切りを行なう根切り部材と、根切り部材を苗パレットの底板下面に沿って引き移動駆動する駆動部と、を含む構成であるから、苗パレットの底板下面から出た根をスムーズにかつ確実に、しかも低労力、短時間で効率的に根切りでき、実用性が高い。さらに、低コストで製造できる。また、苗パレットを壊したり、苗を傷めたりすることもない。
【0016】
また、駆動部は、根切り部材に連結されて根切り部材から人力円滑作業長程度の長さで離間した位置に設けられた把持部又は、根切り部材を苗パレットの底板下面に沿った一方向に引き移動駆動する原動部付き駆動機構からなる構成とすることにより、把持部の場合には作業者は楽な立ち姿勢で簡単にかつ低労力で根切りすることができる。また、駆動機構の構成の場合でも根切りに必要な労力は殆どいらず、手軽に根切りを行える。
【0017】
また、駆動部は、把持部又は原動部付き駆動機構と連結され根切り部材を支持する枠体であり、根切り部材を苗パレットの底板下面に沿って引き移動動作する際に内側に苗パレットを通過させる通過空隙が形成された枠体を含む構成とすることにより、苗パレットや苗を傷めることなく簡単かつスムーズに根切り作業を行える。また、装置の強度を高く維持できるとともに、簡単な構成で低コストで製造できる。
【0018】
また、枠体は、互いに離隔配置された縦枠部と、根切り部材と把持部との中間位置で縦枠部どうしを連結した1つ又は複数の補強部と、を含む構成とすることにより、枠体の構造を高い強度で製造できる。
【0019】
また、根切り部材は、苗パレットの一辺の長さに対応した離隔幅で配置される縦枠部の先端側に、該根切り部材の引き移動動作方向とは交差方向に向けて直状に張架された直状部材からなる構成とすることにより、確実に根切りを行なうことができる根切り部材を、簡単な構成で、具体的に実現できる。
【0020】
また、縦枠部の根切り部材を支持している先端部は、根切り部材の移動方向と直交方向の幅が縦枠部本体側より幅狭くなるように形成された構成とすることにより、地面に並べられた複数の苗パレットの根切りを行う際に、枠体が隣接する苗パレットに干渉しにくく、確実にかつスムーズに根切り作業を行うことができる。
【0021】
また、枠体は、根切り部材を苗パレットの底板下面に沿って引き移動動作させる際に地面と接触する先端部分を側面視円弧状に形成させたそり状部を含む構成とすることにより、枠体を地面に沿って円滑に引き動作して根切りを円滑に行える。特に、地面に根張りを抑制するための樹脂製のシート等を敷設している場合等には、該シートを枠体で傷つけたりすることがなく、実用性に優れる。
【0022】
さらに、本発明の根切り方法よれば、多数の苗を収容した上面開口で扁平箱型の苗パレットの底板下面と苗パレットが載置された地面との間に根切り部材を挿入し、根切り部材を苗パレットの底板下面に沿った一方向へ引き移動動作することにより苗の根切りを行なうことから、苗パレットの底板下面から出た根をスムーズにかつ確実に、しかも低労力、短時間で効率的に根切りでき、実用性が高い。また、根切り時に苗パレットを壊したり、苗を傷めたりすることもない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る根切り装置の正面図である。
【図2】図1の根切り装置の斜視説明図である。
【図3】図1の根切り装置の正面図の一部拡大説明図である。
【図4】図3の一部拡大斜視図である。
【図5】図1の根切り装置の側面図の一部拡大図である。
【図6】図1の根切り装置及び根切り方法の作用説明図である。
【図7】図8の要部を拡大して説明した模式図である。
【図8】図1の根切り装置の他の実施形態の正面図の一部拡大説明図である。
【図9】図8の一部拡大斜視図である。
【図10】図1の根切り装置の他の実施形態の正面図の一部拡大説明図である。
【図11】図10の一部拡大斜視図である。
【図12】図1の根切り装置の他の形態の正面説明図である。
【図13】図1の根切り装置の他の形態の正面説明図である。
【図14】図1の根切り装置の他の形態の側面図の一部拡大説明図である。
【図15】本発明の第2の実施形態に係る根切り装置の斜視図である。
【図16】図12の根切り装置の正面図である。
【図17】苗パレットの斜視図である。
【図18】苗パレットを並べて育苗した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下添付図面を参照しつつ本発明の根切り装置及び根切り方法の実施形態について説明する。本発明に係る根切り装置は、例えば、図14、図15に示すような、稲の苗やその他の植物の苗が育成された苗パレット100の底板下面から伸長して地面に張り付いた根の根切り作業を行うものである。図1ないし図7は、本発明の根切り装置及び根切り方法の第1の実施形態を示している。本実施形態において、図1、図2に示すように、根切り装置10は、根切り部材12と、駆動部14と、を含む。
【0025】
本実施形態に係る根切り装置10で根切りを行う対象の苗パレット100としては、例えば、稲苗を育てる態様の場合について説明する。本実施形態では、苗パレット100は、図17、図18に示すように、上面側に開口101が形成された有底箱状に形成されており、多数の苗Pを収容したいわゆる育苗箱である。苗パレット100は、例えば、縦×横が60cm×30cmの平面視矩形状で、深さが3cm程度の浅底の偏平矩形箱型で形成されており、底板103に多数の孔102が穿孔されている。苗パレット100内には、例えば、収容した土壌に種籾を撒いて発芽させ、図18に示すように、例えば、苗パレット100どうしを1〜3cm程度の隙間Wdをあけながら2列をセットとし、さらに、これらの2列セットの苗パレット列を、1m程度の間隔をあけて複数並べられて育苗管理される。苗パレット100を載置する地面Gの地表面には、例えば、苗パレットの底板から伸長する根が地面に活着するのをある程度抑制するために、多数の小孔が設けられたビニルシート200等の合成樹脂シートが敷設される。図7に示すように、苗Pが生長するにしたがって根Prも同時に伸びていくと、該根Prは、苗パレットの底板103の孔102から箱外に出て、さらにビニルシート200の小孔から地面に張り付くこととなる。
【0026】
図1、図2、図7に示すように、根切り装置10の根切り部材12は、苗パレット100の底板103下面と苗パレット100が載置された地面G(ビニルシート200)との間に挿入されて、苗パレット100の底板103下面に沿った一方向(D)への引き移動動作により苗の根Prの根切りを行う根切り手段である。根切り部材12は、例えば、駆動部14に支持されており、本実施形態では、後述の枠体18を介して支持されている。根切り部材12は、例えば、苗パレット100と地面Gとの間に挿入されるとともに、苗の根Prに対して圧力をできるだけ狭い面積又は線状に集中させる必要性があることから細径又は薄肉厚に形成される。本実施形態では、根切り部材12は、その移動方向Dと交差する方向に張架された直状部材からなる。具体的には、直状部材は、例えば、移動方向Dと直交方向に張架された金属製のワイヤ等の索条体38からなる。本実施形態では、索条体38の張架方向は、苗パレット100の短辺方向に沿って設定されている。そして索条体38の張架方向の長さは、苗パレット100の短辺長さより若干(例えば、1〜2cm程度)長く設定されている。さらに、根切り部材12の引き移動方向Dは、苗パレット100の長辺方向に沿った方向に設定される。なお、根切り部材12は、例えば、引き移動方向Dを苗パレット100の短辺方向に沿った方向に設定し、直状部材の張架方向の長さを苗パレット100の長辺方向に対応して設計してもよい。
【0027】
駆動部14は、根切り部材12を苗パレット100の底板103下面に沿って引き移動駆動する駆動手段あるいは引き移動手段である。本実施形態では、駆動部14は、例えば、人力で根切り部材12を引き移動駆動させる態様となっている。図1、図2に示すように、駆動部14は、例えば、根切り部材12から離間して設けられた把持部16からなり、さらに、把持部16と連結され根切り部材12を支持した枠体18を有している。
【0028】
本実施形態では、枠体18は、根切り部材12を支持する支持手段である。枠体18は、根切り部材12を苗パレット100の底板下面に沿って引き移動動作する際に、枠内側に苗パレット100を通過させる通過空隙20が形成される。すなわち、枠体18は、支持している根切り部材12に隣接して通過空隙20を有する枠組み構成となっている。本実施形態では、枠体18は、例えば、アルミニウム等の金属製の管部材又は杆状部材をハシゴ枠状に組み付けて形成されており、互いに離隔配置された縦枠部22と、縦枠部22どうしを連結した複数の横枠部24と、を含む。本実施形態では、枠体18は全体として縦長矩形枠状で、下方側の一辺を開放し、かつその開放部分となる下端側に索条体38からなる根切り部材12を張架して設置している。枠体18は、強度が高い構造を実現している。
【0029】
縦枠部22は、例えば、一端側に根切り部材12が接続され、他端側に把持部16が設けられている。縦枠部22は、例えば、70cm〜1.2m程度の長さで形成され、後述のように把持部16の根切り部材12からの離隔位置を設定しており、握り柄としても機能しうる。縦枠部22どうしは、所定の離隔幅で平行に対向して配置され、複数の横枠部24を介して強固に連結されている。縦枠部22の離隔幅すなわち横枠部24の長さは、例えば、1つの苗パレット100の短辺の長さに対応して設定されており。本実施形態では、例えば、苗パレット100の短辺の長さより1〜2cm程度長い31〜32cm程度に設定されている。横枠部24は、例えば、縦枠部22の他端部を連結する第1横枠部24aと、縦枠部22の長手方向に所定の間隔をあけた中間位置を連結する第2、第3横枠部24b、24cと、を含む。基本的には、横枠部24は、縦枠部どうしを1箇所で連結するだけでもよいが、本実施形態では、複数の位置で、かつ複数の縦枠部22の中間位置(すなわち、根切り部材12と把持部16との中間位置)で、縦枠部22どうしを連結しており枠体18を補強する補強部を構成している。第3横枠部24cは、縦枠部22の一端側の根切り部材12からある程度離隔した中間位置で配置されている。これにより、2本の縦枠部22と、第3横枠部24cと、根切り部材12と、で囲まれた矩形状の空間が苗パレット100の通過空隙20となる。なお、根切り部材12と第3横枠部24cとの離隔長さは、例えば、根切り部材が苗パレットの底板下面に沿って移動させる際に、横枠部24cが苗に当たらないように設定することが好ましく、本実施形態では、例えば、20〜30cm程度に設定される。すなわち、補強部となる横枠部は、根切り部材との間に苗パレットの通過空隙20を維持する位置に設定される。枠体18は、根切り部材を一方向(D)に向けて引き移動させる根切り動作時には、地面Gに対して所定の角度θ(例えば、約30〜50度程度)だけ傾斜させつつ、先端部の根切り部材12を苗パレット100と地面Gとの間に配置させた状態で、把持部16を介した掻き取り状の操作で引き動作される。なお、枠体の縦枠部の長さや離隔幅、又は横枠部の位置や本数等は、任意に設定してもよい。
【0030】
図5に示すように、枠体18の縦枠部22の先端部には、根切り部材12の長手方向、すなわち、根切り部材12の引き動作方向Dとは直交する方向の幅が、本体側よりも幅狭くなる細幅部26が形成されている。細幅部26は、例えば、縦枠部22を形成する管部材の一端部を圧着して薄板状に潰して形成されたり、杆部材を圧延、切削、型形成等のその他任意の加工で形成される。このように縦枠部22の先端部を幅狭く形成することにより、根切りを行う苗パレット100に隣接した苗パレットが邪魔になりにくく、確実かつスムーズに根切り部材を苗パレットの底板下面にセットして根切り動作を行なうことができる。その結果、多数の苗パレットを地面(又はビニルシート200)上に並べる際に、間隔を大きく取るなどしなくてよく、多数の苗パレットを、互いに僅かな隙間を空けて効率良く並べた態様でも利用でき、実用性が高い。
【0031】
図4、図5に示すように、縦枠部22の先端部であって、根切り部材12を引き動作駆動する際に地面G(又はビニルシート200)と接触する部分には、そり状部28が形成されている。図7に示すように、枠体18は地面Gに対して傾斜した状態で根切り部材12を地面に沿って移動させるようになっており、本実施形態では、そり状部28は、例えば、縦枠部22の先端部の隅部に形成される。このそり状部28は、例えば、縦枠部22の細幅部26部分に設けられており、該縦枠部22の先端部を直接加工して側面視円弧状に形成されている。これにより、根切り部材12を引き動作駆動する際にスムーズに引き動作させることができるとともに、地面にビニルシート200を敷設されている場合でも枠体18でビニルシートを破ることなく使用することができ、使い勝手が良い。なお、図14に示すように、そり状部28は、例えば、縦枠部とは別に、円弧状に形成した合成樹脂製の円弧状部材29を縦枠部22の地面Gと接触する先端部分に固定して構成することとしてもよい。
【0032】
図3、図4、図5に示すように、枠体18において、索条体38からなる根切り部材12を支持する支持構造30は、例えば、縦枠部22の先端側に索条体38の張架方向に貫通され索条体38の両端部を通過させる貫通孔32と、貫通孔を通過させた索条体38の端部を縦枠部22に固定させる係止部材34と、を有している。貫通孔32は、例えば、図5、図7に示すように、枠体18を地面に対して傾斜させた際に、索条体38が地面に近接しては位置されるように、そり状部28側すなわち縦枠部22の地面との接地部分側に寄った位置に形成されている。図3に示すように、貫通孔32を貫通させた索条体38の両端部は、縦枠部22の離隔幅よりもさらに外側に長く延長されており、その索条体38の延長部38aは、貫通孔32を通過した位置で上方側に向けて略L字状に曲折され縦枠部22に沿って配置されている。さらに、索条体の延長部38aの端部は、縦枠部22の中間位置に設けられた貫通孔33から枠内側の通過空隙20側に貫通させ、その端部は係止部材34を介して縦枠部22に固定されている。すなわち、係止部材34は、索条体38の固定位置を縦枠部22の先端部ではなく、縦枠部22の貫通孔32位置から上方側にずらした位置で固定している。係止部材34による索条体38の端部の固定位置は、例えば、苗パレット100の高さよりも高い位置(例えば、5〜10cm以上)に設定されており、苗パレットとの非干渉位置に設定されるといえる。いる。これにより、索条体を固定させるための係止部材34が苗パレット100と干渉しにくい構造となり、確実かつスムーズに根切り部材を苗パレットの底板下面にセットして根切り動作を行なうことができる。また、係止部材34は、索条体38の端部に対して着脱可能に固定されており、索条体38を枠体18に対して着脱交換可能としている。よって、索条体38が切れたり、劣化した際に索条体28を枠体18から取り外して、新しいものと交換することができる。なお、係止部材34による索条体38の端部の縦枠部22への固定位置は、縦枠部22の先端部側の貫通孔の位置に設定してもよい。この際、係止部材の幅を薄く構成する方が苗パレット100と干渉しにくい。また、貫通孔32の替わりに、縦枠部22に切欠きやブラケットを形成した構造でもよい。また、索条体38の端部を縦枠部22の先端側に直接固定して着脱できない構造としてもよい。
【0033】
把持部16は、作業者が手で握って操作するための人力操作入力手段であり、根切り部材12から人力円滑作業長程度の長さで離間した位置に設けられている。本実施形態では、把持部16は、例えば、大人等の作業者が立った状態で腰をかがめることなく根切り部材12を地面G側に配置させ得る程度の離隔位置に設置される。把持部16は、上述のように構成された枠体18に連結されているので、例えば、根切り部材12から70cm〜1.2m程度離隔した位置に設置されている。図2、図6に示すように、把持部16は、例えば、作業者が手で握持する棒状のハンドル杆36を含む。ハンドル杆36は、例えば、枠体18の縦枠部22と横枠部24とに交差して設けられており、根切り部材12を地面側に設置させて枠体18を地面Gに対して傾斜した状態で、該ハンドル杆36の握り軸の方向が縦方向になる向きで設定されている。なお、把持部16は、例えば、縦枠部22の一部を所定の方向に曲げてハンドル杆を形成してもよい。また、把持部16は、ハンドル杆36を枠体に別途設ける構造に限らず、例えば、枠体18の一部を把持部としてもよい。例えば、枠体18の上端側に設けられている第1横枠部24aを把持部16としてもよい。また、縦枠部22の上部側の一部を把持部16としてもよい。
【0034】
次に、本実施形態に係る根切り装置10の作用及び根切り方法について説明する。本実施形態に係る根切り装置10で苗パレット100の底板下面から伸びた根Prを根切りを行う際には、図6、図7に示すように、把持部16を手で握って枠体18を操作し、苗パレット100の短辺側端部から根切り部材12を苗パレット100と地面との間に挿入する。そして、把持部16を介して装置全体を作業者側に向けて手前に引き動作又は掻き取り状動作することにより、苗パレット100の長辺に沿った方向(D)に引き動作することにより、根切り部材12を苗パレットの底板下面に沿って引き動作駆動させる。図7に示すように、この根切り部材の引き移動に伴って根切りが行われる。すなわち、本実施形態に係る根切り方法は、多数の苗を収容した上面開口で扁平箱型の苗パレット100の底板103下面と苗パレット100が載置された地面との間に根切り部材12を挿入し、根切り部材12を苗パレット100の底板下面に沿った一方向へ引き移動動作することにより苗の根切りを行なう。これにより、簡単にかつ短時間で苗パレットから根切りすることができると同時に、根切りを立ち姿勢で楽に行え、軽労力でしかも短時間に作業を行える。また、苗パレットやその内部に収容されているマット状の苗を壊したりすることもない。なお、苗パレット100の根切り作業の終了後には、苗パレット100を地面から簡単に持ち運ぶことができ、苗パレットから離脱させた苗を田植機等を利用して水田に移植される。
【0035】
なお、根切り装置や駆動部の構成は、上述の実施形態に限らない。例えば、根切り部材12を構成する直状部材は、索条体38に限らない。直状部材は、例えば、図8、図9に示すように、ある程度硬さのある合成樹脂や金属等の素材からなり、厚みが薄く移動方向Dに細幅で広がった帯状体40で構成してもよい。帯状体40の枠体18への支持構造30は、例えば、図4で示した索条体の支持構造と略同じように、の縦枠部22の先端側に設けられた横長貫通孔41を通過させ、その延長端部40aを、縦枠部22の中間位置に固定したバックル等からなる係止部材43を介して着脱交換可能に係止されている。帯状体40は、例えば、枠体18を地面に対して傾斜させた際に水平状に向くように、縦枠部材22の長手方向に対して傾斜して設定される。また、直状部材は、例えば、図10、図11に示すように、一方に刃先が形成された刃体42で構成してもよい。刃体42の刃面は、例えば、枠体18を地面に対して傾斜させた際に水平状に向くように、縦枠部材22の長手方向に対して傾斜して設定される。また、図12に示すように、駆動部14の構成は、縦枠部22と補強部(横枠部24)とを略コ字状に組み付けた枠体18と、把持部16と、枠体18すなわち根切り部材12に対して把持部16を離隔配置させるための長柄部材44と、を有することとしてもよい。図12では、把持部16は、例えば、長柄部材44にT字状に連結されたハンドル杆36からなる。また、図13に示すように、駆動部14の構成は、例えば、2つの苗パレット100について同時に根切りを行えるように2つの根切り部材12を並列して枠体18で支持した構成としてもよい。また、例えば、枠体18や長柄部材等の長さを伸縮可能な構成とし、根切り部材12と把持部16の離隔長さを調節できる構造としてもよい。また、把持部16や枠体18等を含む駆動部14の構成は、上記した構成に限らずその他任意の構造でもよく、例えば、苗の種類、苗パレットのサイズ等に応じて、根切り装置の全体サイズ、形状、把持部16等の位置などの条件が設定されるとよい。
【0036】
次に、図15、図16を参照しつつ、本発明の第2実施形態の根切り装置及び根切り方法について説明する。上記した第1実施形態と同一構成、同一部材には、同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。図15、自16に示すように、本実施形態では、駆動部14の構成が上記実施形態と異なっており、駆動部14は、根切り部材12を苗パレット100の底板下面に沿った一方向に引き動作駆動する原動部付き駆動機構50からなる。すなわち、駆動部14は、上記実施形態のような人力駆動ではなく、原動部による動力駆動により根切り部材12を引き動作駆動する態様となっている。なお、本実施形態では、根切り部材12は、上記同様に索条体38等からなる直状部材で構成されている。
【0037】
原動部付き駆動機構50は、例えば、根切り部材12の両端を支持したスライダ52と、スライダ52を案内するレール54と、を含み、原動部によりレール54に沿ってスライダ52を同期しながら移動させて根切り部材12を一方向に引き動作させる。本実施形態では、例えば、複数の苗パレット100は、例えば、地面Gを所定の高さに設定した台56上に並べて配置されている。根切り部材12が台56上の地面Gと略同じ高さに設定されるように、レール54は支持柱58を介して所定高さに支持される。このような構成であるから、複数の苗パレットについて同時又は連続的に根切り動作することができるとともに、人力が不要で短時間に根切りすることができる。
【0038】
なお、図15、図16では、台56で所定の高さ位置に高くした地面G上に苗パレット100を設置したが、台56等を設けずに通常の地面に苗パレット100を設置し、レール等を地面に沿って設置する構造としてもよい。また、駆動部14は、例えば、駆動機構50に連結されて根切り部材12を支持する枠体を有し、枠体を駆動機構50で駆動させる構成としてもよい。また、駆動機構50は、例えば、原動部を備えた小型の農作業用機械や、枠体を自走させる構成等、その他根切り部材12を苗パレットの底板下面に沿って直線状に引き移動駆動させる構造であれば任意の駆動装置の構造でもよい。
【0039】
以上説明した本発明の根切り装置及び根切り方法は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の根切り装置は、例えば、稲や、野菜、花等その他農作物や植物の苗を苗パレットで育てる際に有効に利用できる根切り装置及びを提供できる。
【符号の説明】
【0041】
10 根切り装置
12 根切り部材
14 駆動部
16 把持部
18 枠体
20 通過空隙
22 縦枠部
24 横枠部
28 そり状部
38 索条体
40 ベルト体
42 刃体
50 駆動機構
100 苗パレット
101 開口
102 孔
103 底板
P 苗
G 地面
D 引き動作方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗パレットの底板下面より伸長した根の切断を行う根切り装置及び根切り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水田で育てられる稲は、予め種籾からある程度の大きさの苗を育てた後に、水田に移植される移植栽培方法が利用される。育苗方法は、例えば、底板に水抜き用の多数の孔が開けられた育苗箱が用いられている場合が多く、多数の育苗箱を地面に列状に並べて育苗管理が行われている。また、近年では、育苗箱が載置される地面に、予め多数の小孔が空いたビニルシートを地面に敷設しておく場合もある。しかしながら、育苗箱で苗が生長するにしたがって根も伸長するが、この育苗箱の底板の孔から根が外に出て、地面に張り付いてしまっていた。したがって、苗を水田に移植する際には、育苗箱を地面から強制的に引き剥がす作業が必要となるが、この育苗箱の引き剥がし作業では、1つ1つの育苗箱ごとに作業者は引き剥がしに大きな力を必要とするとおもに、かがんだ姿勢で行われるうえ、育苗箱は互いに近接して並列されているので重労働であった。さらに、水田面積に応じて多数の育苗箱について行う必要があるので、多くの人手を必要とし、作業時間も長時間となっていた。さらに、育苗箱を無理に引き剥がすと育苗箱が壊れたり、移植用の苗が崩れてしまって苗品質を劣化させる等の問題を生じるおそれが高く、慎重に行う必要があり、作業を煩雑なものとしていた。
【0003】
一方、例えば、特許文献1には、簡単に根切りを図れる育苗箱の技術が提案されている。特許文献1の育苗箱では、平面視形状が長方形の浅底箱型で一辺が開放する育苗受箱と、この育苗受箱内に開放部から水平方向引き出し自在に挿入される開いた状の育苗引出棚と、を備え、育苗受箱と育苗引出棚に多数の小孔を同一ピッチでそれぞれ形成されている。そして、育苗引出棚をスライドして引き出すと、育苗受箱と育苗引出棚との小孔がずれることにより自動的に伸びた根の切断を行わせるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−41498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の育苗箱は、育苗受箱と育苗引出棚とで構成された特殊な構造であるから、従来の育苗箱と比較して箱構造が複雑で極めてコストが高いものであった。そのため、農家では、既存の育苗箱とは別に新たに多数個を用意する必要があるので、購入費用が大きく負担になる問題があった。さらに、使用後の洗浄やその他メンテナンスも煩雑となっていた。また、育苗受箱から育苗引出棚を引き出して根切りする際には、作業者は腰をかがめた状態で行う必要があるので、労力がかかり、作業性も悪いものであった。よって、特殊な構造の育苗箱をしようすることなく、簡単に根切りを行う技術の開発が望まれていた。
【0006】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、低コストで製造でき、作業性が良く、低労力でスムーズに根切りを行える根切り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、多数の苗Pを収容した上面開口で扁平箱型の苗パレット100の底板下面と苗パレットが載置された地面Gとの間に挿入されて苗パレット100の底板下面に沿った一方向への引き移動動作により苗の根切りを行なう根切り部材12と、根切り部材12を苗パレット100の底板下面に沿って引き移動駆動する駆動部14と、を含む根切り装置10から構成される。本発明の根切り装置10では、特殊な構造の苗パレットを必要とせず、周知の苗パレットに対しても根切りすることができる。また、多数の小孔が形成されたシートが敷設された地面上に設置した苗パレットに対しても有効に根切りすることができる。また、1回の根切り部材の引き動作駆動で1つの苗パレットについて根切りを行わせる構成でもよいし、1回の根切り部材の引き動作駆動で複数の苗パレットについて根切りを行うように構成してもよい。また、根切り部材12は、着脱交換できるように構成するとよい。また、駆動部14は、人力駆動構造でも、動力駆動構造でもよい。駆動部14を動力駆動する際の原動部としては、例えば、モータ、エンジンやその他、電気、油圧等の原動力を利用した構造、又はトラクタ等の農業機械の動力等を利用できる構造としてもよい。
【0008】
また、駆動部14は、根切り部材12に連結されて根切り部材12から人力円滑作業長程度の長さで離間した位置に設けられた把持部16又は、根切り部材12を苗パレット100の底板下面に沿った一方向に引き移動駆動する原動部付き駆動機構50からなることとしてもよい。
【0009】
また、駆動部14は、把持部16又は原動部付き駆動機構50と連結され根切り部材を支持する枠体18であり、根切り部材12を苗パレット100の底板下面に沿って引き移動動作する際に内側に苗パレット100を通過させる通過空隙20が形成された枠体18を含むこととしてもよい。
【0010】
また、枠体18は、互いに離隔配置された縦枠部22と、根切り部材12と把持部16との中間位置で縦枠部22どうしを連結した1つ又は複数の補強部(24)と、を含むこととしてもよい。
【0011】
また、根切り部材12は、苗パレット100の一辺の長さに対応した離隔幅で配置される縦枠部22の先端側に、該根切り部材12の引き移動動作方向とは交差方向に向けて直状に張架された直状部材(38、40、42)からなることとしてもよい。直状部材としては、例えば、ワイヤ等の索条体38、薄肉厚である程度幅のある帯状体40、一方に刃先が形成された刃体42等で構成してもよい。
【0012】
また、縦枠部22の根切り部材12を支持している先端部は、根切り部材の移動方向Dと直交方向の幅が縦枠部本体側より幅狭くなるように形成されたこととしてもよい。
【0013】
また、枠体18は、根切り部材12を苗パレット100の底板下面に沿って引き移動動作させる際に地面と接触する先端部分を側面視円弧状に形成させたそり状部28を含むこととしてもよい。
【0014】
さらに、本発明は、多数の苗Pを収容した上面開口で扁平箱型の苗パレット100の底板下面と苗パレット100が載置された地面Gとの間に根切り部材12を挿入し、根切り部材12を苗パレット100の底板下面に沿った一方向(D)へ引き移動動作することにより苗の根切りを行なうことを特徴とする根切り方法から構成される。本根切り方法では、例えば、1回の根切り部材の引き動作駆動で1つの苗パレットについて根切りを行わせる構成でもよいし、1回の根切り部材の引き動作駆動で複数の苗パレットについて根切りを行う構成でもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の根切り装置によれば、多数の苗を収容した上面開口で扁平箱型の苗パレットの底板下面と苗パレットが載置された地面との間に挿入されて苗パレットの底板下面に沿った一方向への引き移動動作により苗の根切りを行なう根切り部材と、根切り部材を苗パレットの底板下面に沿って引き移動駆動する駆動部と、を含む構成であるから、苗パレットの底板下面から出た根をスムーズにかつ確実に、しかも低労力、短時間で効率的に根切りでき、実用性が高い。さらに、低コストで製造できる。また、苗パレットを壊したり、苗を傷めたりすることもない。
【0016】
また、駆動部は、根切り部材に連結されて根切り部材から人力円滑作業長程度の長さで離間した位置に設けられた把持部又は、根切り部材を苗パレットの底板下面に沿った一方向に引き移動駆動する原動部付き駆動機構からなる構成とすることにより、把持部の場合には作業者は楽な立ち姿勢で簡単にかつ低労力で根切りすることができる。また、駆動機構の構成の場合でも根切りに必要な労力は殆どいらず、手軽に根切りを行える。
【0017】
また、駆動部は、把持部又は原動部付き駆動機構と連結され根切り部材を支持する枠体であり、根切り部材を苗パレットの底板下面に沿って引き移動動作する際に内側に苗パレットを通過させる通過空隙が形成された枠体を含む構成とすることにより、苗パレットや苗を傷めることなく簡単かつスムーズに根切り作業を行える。また、装置の強度を高く維持できるとともに、簡単な構成で低コストで製造できる。
【0018】
また、枠体は、互いに離隔配置された縦枠部と、根切り部材と把持部との中間位置で縦枠部どうしを連結した1つ又は複数の補強部と、を含む構成とすることにより、枠体の構造を高い強度で製造できる。
【0019】
また、根切り部材は、苗パレットの一辺の長さに対応した離隔幅で配置される縦枠部の先端側に、該根切り部材の引き移動動作方向とは交差方向に向けて直状に張架された直状部材からなる構成とすることにより、確実に根切りを行なうことができる根切り部材を、簡単な構成で、具体的に実現できる。
【0020】
また、縦枠部の根切り部材を支持している先端部は、根切り部材の移動方向と直交方向の幅が縦枠部本体側より幅狭くなるように形成された構成とすることにより、地面に並べられた複数の苗パレットの根切りを行う際に、枠体が隣接する苗パレットに干渉しにくく、確実にかつスムーズに根切り作業を行うことができる。
【0021】
また、枠体は、根切り部材を苗パレットの底板下面に沿って引き移動動作させる際に地面と接触する先端部分を側面視円弧状に形成させたそり状部を含む構成とすることにより、枠体を地面に沿って円滑に引き動作して根切りを円滑に行える。特に、地面に根張りを抑制するための樹脂製のシート等を敷設している場合等には、該シートを枠体で傷つけたりすることがなく、実用性に優れる。
【0022】
さらに、本発明の根切り方法よれば、多数の苗を収容した上面開口で扁平箱型の苗パレットの底板下面と苗パレットが載置された地面との間に根切り部材を挿入し、根切り部材を苗パレットの底板下面に沿った一方向へ引き移動動作することにより苗の根切りを行なうことから、苗パレットの底板下面から出た根をスムーズにかつ確実に、しかも低労力、短時間で効率的に根切りでき、実用性が高い。また、根切り時に苗パレットを壊したり、苗を傷めたりすることもない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る根切り装置の正面図である。
【図2】図1の根切り装置の斜視説明図である。
【図3】図1の根切り装置の正面図の一部拡大説明図である。
【図4】図3の一部拡大斜視図である。
【図5】図1の根切り装置の側面図の一部拡大図である。
【図6】図1の根切り装置及び根切り方法の作用説明図である。
【図7】図8の要部を拡大して説明した模式図である。
【図8】図1の根切り装置の他の実施形態の正面図の一部拡大説明図である。
【図9】図8の一部拡大斜視図である。
【図10】図1の根切り装置の他の実施形態の正面図の一部拡大説明図である。
【図11】図10の一部拡大斜視図である。
【図12】図1の根切り装置の他の形態の正面説明図である。
【図13】図1の根切り装置の他の形態の正面説明図である。
【図14】図1の根切り装置の他の形態の側面図の一部拡大説明図である。
【図15】本発明の第2の実施形態に係る根切り装置の斜視図である。
【図16】図12の根切り装置の正面図である。
【図17】苗パレットの斜視図である。
【図18】苗パレットを並べて育苗した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下添付図面を参照しつつ本発明の根切り装置及び根切り方法の実施形態について説明する。本発明に係る根切り装置は、例えば、図14、図15に示すような、稲の苗やその他の植物の苗が育成された苗パレット100の底板下面から伸長して地面に張り付いた根の根切り作業を行うものである。図1ないし図7は、本発明の根切り装置及び根切り方法の第1の実施形態を示している。本実施形態において、図1、図2に示すように、根切り装置10は、根切り部材12と、駆動部14と、を含む。
【0025】
本実施形態に係る根切り装置10で根切りを行う対象の苗パレット100としては、例えば、稲苗を育てる態様の場合について説明する。本実施形態では、苗パレット100は、図17、図18に示すように、上面側に開口101が形成された有底箱状に形成されており、多数の苗Pを収容したいわゆる育苗箱である。苗パレット100は、例えば、縦×横が60cm×30cmの平面視矩形状で、深さが3cm程度の浅底の偏平矩形箱型で形成されており、底板103に多数の孔102が穿孔されている。苗パレット100内には、例えば、収容した土壌に種籾を撒いて発芽させ、図18に示すように、例えば、苗パレット100どうしを1〜3cm程度の隙間Wdをあけながら2列をセットとし、さらに、これらの2列セットの苗パレット列を、1m程度の間隔をあけて複数並べられて育苗管理される。苗パレット100を載置する地面Gの地表面には、例えば、苗パレットの底板から伸長する根が地面に活着するのをある程度抑制するために、多数の小孔が設けられたビニルシート200等の合成樹脂シートが敷設される。図7に示すように、苗Pが生長するにしたがって根Prも同時に伸びていくと、該根Prは、苗パレットの底板103の孔102から箱外に出て、さらにビニルシート200の小孔から地面に張り付くこととなる。
【0026】
図1、図2、図7に示すように、根切り装置10の根切り部材12は、苗パレット100の底板103下面と苗パレット100が載置された地面G(ビニルシート200)との間に挿入されて、苗パレット100の底板103下面に沿った一方向(D)への引き移動動作により苗の根Prの根切りを行う根切り手段である。根切り部材12は、例えば、駆動部14に支持されており、本実施形態では、後述の枠体18を介して支持されている。根切り部材12は、例えば、苗パレット100と地面Gとの間に挿入されるとともに、苗の根Prに対して圧力をできるだけ狭い面積又は線状に集中させる必要性があることから細径又は薄肉厚に形成される。本実施形態では、根切り部材12は、その移動方向Dと交差する方向に張架された直状部材からなる。具体的には、直状部材は、例えば、移動方向Dと直交方向に張架された金属製のワイヤ等の索条体38からなる。本実施形態では、索条体38の張架方向は、苗パレット100の短辺方向に沿って設定されている。そして索条体38の張架方向の長さは、苗パレット100の短辺長さより若干(例えば、1〜2cm程度)長く設定されている。さらに、根切り部材12の引き移動方向Dは、苗パレット100の長辺方向に沿った方向に設定される。なお、根切り部材12は、例えば、引き移動方向Dを苗パレット100の短辺方向に沿った方向に設定し、直状部材の張架方向の長さを苗パレット100の長辺方向に対応して設計してもよい。
【0027】
駆動部14は、根切り部材12を苗パレット100の底板103下面に沿って引き移動駆動する駆動手段あるいは引き移動手段である。本実施形態では、駆動部14は、例えば、人力で根切り部材12を引き移動駆動させる態様となっている。図1、図2に示すように、駆動部14は、例えば、根切り部材12から離間して設けられた把持部16からなり、さらに、把持部16と連結され根切り部材12を支持した枠体18を有している。
【0028】
本実施形態では、枠体18は、根切り部材12を支持する支持手段である。枠体18は、根切り部材12を苗パレット100の底板下面に沿って引き移動動作する際に、枠内側に苗パレット100を通過させる通過空隙20が形成される。すなわち、枠体18は、支持している根切り部材12に隣接して通過空隙20を有する枠組み構成となっている。本実施形態では、枠体18は、例えば、アルミニウム等の金属製の管部材又は杆状部材をハシゴ枠状に組み付けて形成されており、互いに離隔配置された縦枠部22と、縦枠部22どうしを連結した複数の横枠部24と、を含む。本実施形態では、枠体18は全体として縦長矩形枠状で、下方側の一辺を開放し、かつその開放部分となる下端側に索条体38からなる根切り部材12を張架して設置している。枠体18は、強度が高い構造を実現している。
【0029】
縦枠部22は、例えば、一端側に根切り部材12が接続され、他端側に把持部16が設けられている。縦枠部22は、例えば、70cm〜1.2m程度の長さで形成され、後述のように把持部16の根切り部材12からの離隔位置を設定しており、握り柄としても機能しうる。縦枠部22どうしは、所定の離隔幅で平行に対向して配置され、複数の横枠部24を介して強固に連結されている。縦枠部22の離隔幅すなわち横枠部24の長さは、例えば、1つの苗パレット100の短辺の長さに対応して設定されており。本実施形態では、例えば、苗パレット100の短辺の長さより1〜2cm程度長い31〜32cm程度に設定されている。横枠部24は、例えば、縦枠部22の他端部を連結する第1横枠部24aと、縦枠部22の長手方向に所定の間隔をあけた中間位置を連結する第2、第3横枠部24b、24cと、を含む。基本的には、横枠部24は、縦枠部どうしを1箇所で連結するだけでもよいが、本実施形態では、複数の位置で、かつ複数の縦枠部22の中間位置(すなわち、根切り部材12と把持部16との中間位置)で、縦枠部22どうしを連結しており枠体18を補強する補強部を構成している。第3横枠部24cは、縦枠部22の一端側の根切り部材12からある程度離隔した中間位置で配置されている。これにより、2本の縦枠部22と、第3横枠部24cと、根切り部材12と、で囲まれた矩形状の空間が苗パレット100の通過空隙20となる。なお、根切り部材12と第3横枠部24cとの離隔長さは、例えば、根切り部材が苗パレットの底板下面に沿って移動させる際に、横枠部24cが苗に当たらないように設定することが好ましく、本実施形態では、例えば、20〜30cm程度に設定される。すなわち、補強部となる横枠部は、根切り部材との間に苗パレットの通過空隙20を維持する位置に設定される。枠体18は、根切り部材を一方向(D)に向けて引き移動させる根切り動作時には、地面Gに対して所定の角度θ(例えば、約30〜50度程度)だけ傾斜させつつ、先端部の根切り部材12を苗パレット100と地面Gとの間に配置させた状態で、把持部16を介した掻き取り状の操作で引き動作される。なお、枠体の縦枠部の長さや離隔幅、又は横枠部の位置や本数等は、任意に設定してもよい。
【0030】
図5に示すように、枠体18の縦枠部22の先端部には、根切り部材12の長手方向、すなわち、根切り部材12の引き動作方向Dとは直交する方向の幅が、本体側よりも幅狭くなる細幅部26が形成されている。細幅部26は、例えば、縦枠部22を形成する管部材の一端部を圧着して薄板状に潰して形成されたり、杆部材を圧延、切削、型形成等のその他任意の加工で形成される。このように縦枠部22の先端部を幅狭く形成することにより、根切りを行う苗パレット100に隣接した苗パレットが邪魔になりにくく、確実かつスムーズに根切り部材を苗パレットの底板下面にセットして根切り動作を行なうことができる。その結果、多数の苗パレットを地面(又はビニルシート200)上に並べる際に、間隔を大きく取るなどしなくてよく、多数の苗パレットを、互いに僅かな隙間を空けて効率良く並べた態様でも利用でき、実用性が高い。
【0031】
図4、図5に示すように、縦枠部22の先端部であって、根切り部材12を引き動作駆動する際に地面G(又はビニルシート200)と接触する部分には、そり状部28が形成されている。図7に示すように、枠体18は地面Gに対して傾斜した状態で根切り部材12を地面に沿って移動させるようになっており、本実施形態では、そり状部28は、例えば、縦枠部22の先端部の隅部に形成される。このそり状部28は、例えば、縦枠部22の細幅部26部分に設けられており、該縦枠部22の先端部を直接加工して側面視円弧状に形成されている。これにより、根切り部材12を引き動作駆動する際にスムーズに引き動作させることができるとともに、地面にビニルシート200を敷設されている場合でも枠体18でビニルシートを破ることなく使用することができ、使い勝手が良い。なお、図14に示すように、そり状部28は、例えば、縦枠部とは別に、円弧状に形成した合成樹脂製の円弧状部材29を縦枠部22の地面Gと接触する先端部分に固定して構成することとしてもよい。
【0032】
図3、図4、図5に示すように、枠体18において、索条体38からなる根切り部材12を支持する支持構造30は、例えば、縦枠部22の先端側に索条体38の張架方向に貫通され索条体38の両端部を通過させる貫通孔32と、貫通孔を通過させた索条体38の端部を縦枠部22に固定させる係止部材34と、を有している。貫通孔32は、例えば、図5、図7に示すように、枠体18を地面に対して傾斜させた際に、索条体38が地面に近接しては位置されるように、そり状部28側すなわち縦枠部22の地面との接地部分側に寄った位置に形成されている。図3に示すように、貫通孔32を貫通させた索条体38の両端部は、縦枠部22の離隔幅よりもさらに外側に長く延長されており、その索条体38の延長部38aは、貫通孔32を通過した位置で上方側に向けて略L字状に曲折され縦枠部22に沿って配置されている。さらに、索条体の延長部38aの端部は、縦枠部22の中間位置に設けられた貫通孔33から枠内側の通過空隙20側に貫通させ、その端部は係止部材34を介して縦枠部22に固定されている。すなわち、係止部材34は、索条体38の固定位置を縦枠部22の先端部ではなく、縦枠部22の貫通孔32位置から上方側にずらした位置で固定している。係止部材34による索条体38の端部の固定位置は、例えば、苗パレット100の高さよりも高い位置(例えば、5〜10cm以上)に設定されており、苗パレットとの非干渉位置に設定されるといえる。いる。これにより、索条体を固定させるための係止部材34が苗パレット100と干渉しにくい構造となり、確実かつスムーズに根切り部材を苗パレットの底板下面にセットして根切り動作を行なうことができる。また、係止部材34は、索条体38の端部に対して着脱可能に固定されており、索条体38を枠体18に対して着脱交換可能としている。よって、索条体38が切れたり、劣化した際に索条体28を枠体18から取り外して、新しいものと交換することができる。なお、係止部材34による索条体38の端部の縦枠部22への固定位置は、縦枠部22の先端部側の貫通孔の位置に設定してもよい。この際、係止部材の幅を薄く構成する方が苗パレット100と干渉しにくい。また、貫通孔32の替わりに、縦枠部22に切欠きやブラケットを形成した構造でもよい。また、索条体38の端部を縦枠部22の先端側に直接固定して着脱できない構造としてもよい。
【0033】
把持部16は、作業者が手で握って操作するための人力操作入力手段であり、根切り部材12から人力円滑作業長程度の長さで離間した位置に設けられている。本実施形態では、把持部16は、例えば、大人等の作業者が立った状態で腰をかがめることなく根切り部材12を地面G側に配置させ得る程度の離隔位置に設置される。把持部16は、上述のように構成された枠体18に連結されているので、例えば、根切り部材12から70cm〜1.2m程度離隔した位置に設置されている。図2、図6に示すように、把持部16は、例えば、作業者が手で握持する棒状のハンドル杆36を含む。ハンドル杆36は、例えば、枠体18の縦枠部22と横枠部24とに交差して設けられており、根切り部材12を地面側に設置させて枠体18を地面Gに対して傾斜した状態で、該ハンドル杆36の握り軸の方向が縦方向になる向きで設定されている。なお、把持部16は、例えば、縦枠部22の一部を所定の方向に曲げてハンドル杆を形成してもよい。また、把持部16は、ハンドル杆36を枠体に別途設ける構造に限らず、例えば、枠体18の一部を把持部としてもよい。例えば、枠体18の上端側に設けられている第1横枠部24aを把持部16としてもよい。また、縦枠部22の上部側の一部を把持部16としてもよい。
【0034】
次に、本実施形態に係る根切り装置10の作用及び根切り方法について説明する。本実施形態に係る根切り装置10で苗パレット100の底板下面から伸びた根Prを根切りを行う際には、図6、図7に示すように、把持部16を手で握って枠体18を操作し、苗パレット100の短辺側端部から根切り部材12を苗パレット100と地面との間に挿入する。そして、把持部16を介して装置全体を作業者側に向けて手前に引き動作又は掻き取り状動作することにより、苗パレット100の長辺に沿った方向(D)に引き動作することにより、根切り部材12を苗パレットの底板下面に沿って引き動作駆動させる。図7に示すように、この根切り部材の引き移動に伴って根切りが行われる。すなわち、本実施形態に係る根切り方法は、多数の苗を収容した上面開口で扁平箱型の苗パレット100の底板103下面と苗パレット100が載置された地面との間に根切り部材12を挿入し、根切り部材12を苗パレット100の底板下面に沿った一方向へ引き移動動作することにより苗の根切りを行なう。これにより、簡単にかつ短時間で苗パレットから根切りすることができると同時に、根切りを立ち姿勢で楽に行え、軽労力でしかも短時間に作業を行える。また、苗パレットやその内部に収容されているマット状の苗を壊したりすることもない。なお、苗パレット100の根切り作業の終了後には、苗パレット100を地面から簡単に持ち運ぶことができ、苗パレットから離脱させた苗を田植機等を利用して水田に移植される。
【0035】
なお、根切り装置や駆動部の構成は、上述の実施形態に限らない。例えば、根切り部材12を構成する直状部材は、索条体38に限らない。直状部材は、例えば、図8、図9に示すように、ある程度硬さのある合成樹脂や金属等の素材からなり、厚みが薄く移動方向Dに細幅で広がった帯状体40で構成してもよい。帯状体40の枠体18への支持構造30は、例えば、図4で示した索条体の支持構造と略同じように、の縦枠部22の先端側に設けられた横長貫通孔41を通過させ、その延長端部40aを、縦枠部22の中間位置に固定したバックル等からなる係止部材43を介して着脱交換可能に係止されている。帯状体40は、例えば、枠体18を地面に対して傾斜させた際に水平状に向くように、縦枠部材22の長手方向に対して傾斜して設定される。また、直状部材は、例えば、図10、図11に示すように、一方に刃先が形成された刃体42で構成してもよい。刃体42の刃面は、例えば、枠体18を地面に対して傾斜させた際に水平状に向くように、縦枠部材22の長手方向に対して傾斜して設定される。また、図12に示すように、駆動部14の構成は、縦枠部22と補強部(横枠部24)とを略コ字状に組み付けた枠体18と、把持部16と、枠体18すなわち根切り部材12に対して把持部16を離隔配置させるための長柄部材44と、を有することとしてもよい。図12では、把持部16は、例えば、長柄部材44にT字状に連結されたハンドル杆36からなる。また、図13に示すように、駆動部14の構成は、例えば、2つの苗パレット100について同時に根切りを行えるように2つの根切り部材12を並列して枠体18で支持した構成としてもよい。また、例えば、枠体18や長柄部材等の長さを伸縮可能な構成とし、根切り部材12と把持部16の離隔長さを調節できる構造としてもよい。また、把持部16や枠体18等を含む駆動部14の構成は、上記した構成に限らずその他任意の構造でもよく、例えば、苗の種類、苗パレットのサイズ等に応じて、根切り装置の全体サイズ、形状、把持部16等の位置などの条件が設定されるとよい。
【0036】
次に、図15、図16を参照しつつ、本発明の第2実施形態の根切り装置及び根切り方法について説明する。上記した第1実施形態と同一構成、同一部材には、同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。図15、自16に示すように、本実施形態では、駆動部14の構成が上記実施形態と異なっており、駆動部14は、根切り部材12を苗パレット100の底板下面に沿った一方向に引き動作駆動する原動部付き駆動機構50からなる。すなわち、駆動部14は、上記実施形態のような人力駆動ではなく、原動部による動力駆動により根切り部材12を引き動作駆動する態様となっている。なお、本実施形態では、根切り部材12は、上記同様に索条体38等からなる直状部材で構成されている。
【0037】
原動部付き駆動機構50は、例えば、根切り部材12の両端を支持したスライダ52と、スライダ52を案内するレール54と、を含み、原動部によりレール54に沿ってスライダ52を同期しながら移動させて根切り部材12を一方向に引き動作させる。本実施形態では、例えば、複数の苗パレット100は、例えば、地面Gを所定の高さに設定した台56上に並べて配置されている。根切り部材12が台56上の地面Gと略同じ高さに設定されるように、レール54は支持柱58を介して所定高さに支持される。このような構成であるから、複数の苗パレットについて同時又は連続的に根切り動作することができるとともに、人力が不要で短時間に根切りすることができる。
【0038】
なお、図15、図16では、台56で所定の高さ位置に高くした地面G上に苗パレット100を設置したが、台56等を設けずに通常の地面に苗パレット100を設置し、レール等を地面に沿って設置する構造としてもよい。また、駆動部14は、例えば、駆動機構50に連結されて根切り部材12を支持する枠体を有し、枠体を駆動機構50で駆動させる構成としてもよい。また、駆動機構50は、例えば、原動部を備えた小型の農作業用機械や、枠体を自走させる構成等、その他根切り部材12を苗パレットの底板下面に沿って直線状に引き移動駆動させる構造であれば任意の駆動装置の構造でもよい。
【0039】
以上説明した本発明の根切り装置及び根切り方法は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の根切り装置は、例えば、稲や、野菜、花等その他農作物や植物の苗を苗パレットで育てる際に有効に利用できる根切り装置及びを提供できる。
【符号の説明】
【0041】
10 根切り装置
12 根切り部材
14 駆動部
16 把持部
18 枠体
20 通過空隙
22 縦枠部
24 横枠部
28 そり状部
38 索条体
40 ベルト体
42 刃体
50 駆動機構
100 苗パレット
101 開口
102 孔
103 底板
P 苗
G 地面
D 引き動作方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の苗を収容した上面開口で扁平箱型の苗パレットの底板下面と苗パレットが載置された地面との間に挿入されて苗パレットの底板下面に沿った一方向への引き移動動作により苗の根切りを行なう根切り部材と、
根切り部材を苗パレットの底板下面に沿って引き移動駆動する駆動部と、を含む根切り装置。
【請求項2】
駆動部は、根切り部材に連結されて根切り部材から人力円滑作業長程度の長さで離間した位置に設けられた把持部又は、根切り部材を苗パレットの底板下面に沿った一方向に引き移動駆動する原動部付き駆動機構からなる請求項1記載の根切り装置。
【請求項3】
駆動部は、把持部又は原動部付き駆動機構と連結され根切り部材を支持する枠体であり、根切り部材を苗パレットの底板下面に沿って引き移動動作する際に内側に苗パレットを通過させる通過空隙が形成された枠体を含むことを特徴とする請求項2記載の根切り装置。
【請求項4】
枠体は、互いに離隔配置された縦枠部と、
根切り部材と把持部との中間位置で縦枠部どうしを連結した1つ又は複数の補強部と、を含むことを特徴とする請求項3記載の根切り装置。
【請求項5】
根切り部材は、苗パレットの一辺の長さに対応した離隔幅で配置される縦枠部の先端側に、該根切り部材の引き移動動作方向とは交差方向に向けて直状に張架された直状部材からなることを特徴とする請求項4記載の根切り装置。
【請求項6】
縦枠部の根切り部材を支持している先端部は、根切り部材の移動方向と直交方向の幅が縦枠部本体側より幅狭くなるように形成されたことを特徴とする請求項4又は5記載の根切り装置。
【請求項7】
枠体は、根切り部材を苗パレットの底板下面に沿って引き移動動作させる際に地面と接触する先端部分を側面視円弧状に形成させたそり状部を含むことを特徴とする請求項3ないし6のいずれかに記載の根切り装置。
【請求項8】
多数の苗を収容した上面開口で扁平箱型の苗パレットの底板下面と苗パレットが載置された地面との間に根切り部材を挿入し、根切り部材を苗パレットの底板下面に沿った一方向へ引き移動動作することにより苗の根切りを行なうことを特徴とする根切り方法。
【請求項1】
多数の苗を収容した上面開口で扁平箱型の苗パレットの底板下面と苗パレットが載置された地面との間に挿入されて苗パレットの底板下面に沿った一方向への引き移動動作により苗の根切りを行なう根切り部材と、
根切り部材を苗パレットの底板下面に沿って引き移動駆動する駆動部と、を含む根切り装置。
【請求項2】
駆動部は、根切り部材に連結されて根切り部材から人力円滑作業長程度の長さで離間した位置に設けられた把持部又は、根切り部材を苗パレットの底板下面に沿った一方向に引き移動駆動する原動部付き駆動機構からなる請求項1記載の根切り装置。
【請求項3】
駆動部は、把持部又は原動部付き駆動機構と連結され根切り部材を支持する枠体であり、根切り部材を苗パレットの底板下面に沿って引き移動動作する際に内側に苗パレットを通過させる通過空隙が形成された枠体を含むことを特徴とする請求項2記載の根切り装置。
【請求項4】
枠体は、互いに離隔配置された縦枠部と、
根切り部材と把持部との中間位置で縦枠部どうしを連結した1つ又は複数の補強部と、を含むことを特徴とする請求項3記載の根切り装置。
【請求項5】
根切り部材は、苗パレットの一辺の長さに対応した離隔幅で配置される縦枠部の先端側に、該根切り部材の引き移動動作方向とは交差方向に向けて直状に張架された直状部材からなることを特徴とする請求項4記載の根切り装置。
【請求項6】
縦枠部の根切り部材を支持している先端部は、根切り部材の移動方向と直交方向の幅が縦枠部本体側より幅狭くなるように形成されたことを特徴とする請求項4又は5記載の根切り装置。
【請求項7】
枠体は、根切り部材を苗パレットの底板下面に沿って引き移動動作させる際に地面と接触する先端部分を側面視円弧状に形成させたそり状部を含むことを特徴とする請求項3ないし6のいずれかに記載の根切り装置。
【請求項8】
多数の苗を収容した上面開口で扁平箱型の苗パレットの底板下面と苗パレットが載置された地面との間に根切り部材を挿入し、根切り部材を苗パレットの底板下面に沿った一方向へ引き移動動作することにより苗の根切りを行なうことを特徴とする根切り方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−75422(P2012−75422A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226152(P2010−226152)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(510266653)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(510266653)
【Fターム(参考)】
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