説明

根粒菌

【課題】 低温下でも共生窒素固定活性の高いヘアリーベッチ根粒菌を提供する。
【解決手段】 ヘアリーベッチから単離された根粒菌であって、共生窒素固定活性と低温耐性とを持つことを特徴とする根粒菌を分離する。ヘアリーベッチ根粒菌(リゾビウム・レグミノサラム・ビーブイ・ビシアエ)であるこの根粒菌は、ヘアリーベッチ根粒菌Y629株である。このヘアリーベッチ根粒菌Y629株は、共生窒素固定活性が、昼間15℃の環境においても昼間22℃の環境の5割以上で一般根粒菌株の2倍以上に維持される低温耐性を持つという特徴がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な微生物及びその利用方法に関するものであり、特に有機農法に用いられる植物であるヘアリーベッチの生育を促進する根粒菌に関する。
【背景技術】
【0002】
有機農業では、従来の無機的な化学合成肥料の代わりに、緑肥(りょくひ)がよく用いられる。緑肥とは、栽培する植物のために、別の植物を栽培して収穫しないで田畑に鋤き込み肥料にすることを言う。すなわち、休閑畑や収穫後の田畑に、緑肥となる作物を植えて生育させ鋤き込むことで、後に播種し栽培する植物の肥料とすることができる。
この緑肥用の植物として、ヘアリーベッチ(Vicia villosa Roth)が注目されている。ヘアリーベッチは、マメ科ソラマメ属に属する越冬が可能な越年草で、日本名はビロードクサフジ、ナヨクサフジと言う。ヘアリーベッチは、表土の被覆力が強く、栽培には土壌をほとんど選ばず、耐寒・耐雪性に優れているという特徴があるため、緑肥用の植物として世界各地で栽培され、又は野生化している。
【0003】
また、ヘアリーベッチは、アレロパシー作用(他感作用)も持っている。
アレロパシー作用とは、Molischにより1937年に提唱された、植物相互間の生化学的な関わり合いであり、ある一種の植物が生産する化学物質が環境に放出されることによって、他植物に直接又は間接的に与える作用を指している。この作用として、植物の生育を阻害する場合がある。
アレロパシー作用をもつ植物を緑肥として使用すると、鋤き込まれた後もアレロパシー作用に関する物質が残留するため、次の栽培する作物を植える農作地の雑草を抑制することができる。つまり、ヘアリーベッチを緑肥に使用すると、雑草を抑制できるため農薬の使用を減らすことができるという優れた特性がある。
【0004】
加えて、ヘアリーベッチは、マメ科植物であるので、土壌微生物である根粒菌との共生器官である根粒を根に形成し、大気中の窒素を固定する共生窒素固定を行う。この共生窒素固定で行われる窒素固定は、年間10〜20N−kg/10aもあるため、緑肥として用いると効果が高い。
緑肥としてヘアリーベッチを作付けする場合、土壌中にヘアリーベッチに親和性が高い根粒菌が少ない場合や、窒素固定活性が低い根粒菌が多い場合は、適切な根粒菌の接種が必要となる。
【0005】
マメ科植物に根粒を形成する根粒菌としては、リゾビウム(Rhizobium)属細菌、ブラジリゾビウム(Bradyrhizobium)属細菌、アゾリゾビウム(Azorhizobium)属細菌等が知られている。
これらの根粒菌は接種資材として市販されており、マメ科作物やマメ科牧草の栽培に利用されている(以下、これを従来技術1とする。)。
【特許文献1】特開2003−079240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来技術1の根粒菌は、大豆などの作物用の根粒菌であって、ヘアリーベッチに適用しても、根粒は形成されないし、ヘアリーベッチ用の根粒菌は流通していないという問題点があった。
さらに、ヘアリーベッチは低温(15℃以下)になると根の窒素吸収活性が低下する。この場合、生育に必要な窒素源を根粒の窒素固定に大きく依存しているため、低温条件下で窒素固定能力が低い根粒菌が感染した根粒では、ヘアリーベッチは窒素欠乏になり、全体が赤みを帯び、やがて枯死していた。
したがって、低温条件下でも共生窒素固定活性が高い低温耐性ヘアリーベッチ根粒菌株が必要とされていた。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上述の課題を解消することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の根粒菌は、ヘアリーベッチから単離された根粒菌であって、低温条件下でもヘアリーベッチが健全に生長できる共生窒素固定活性を持つことを特徴とする。
本発明の根粒菌は、前記根粒菌は、ヘアリーベッチ根粒菌(リゾビウム・レグミノサラム・ビーブイ・ビシアエ)であることを特徴とする。
本発明の根粒菌は、前記根粒菌は、ヘアリーベッチ根粒菌 Y629株(NITE AP−323)であることを特徴とする。
本発明の根粒菌は、前記低温条件下でもヘアリーベッチが健全に生長できる共生窒素固定活性は、昼間15℃の環境においても0.3μmol/植物・時間以上に維持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低温条件下でも共生窒素固定活性が高いヘアリーベッチ根粒菌株を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<実施の形態>
本発明の発明者は、鋭意研究を行った結果、低温条件下でも高い窒素固定活性を有するヘアリーベッチ根粒菌(Rhizobium leguminosarum bv. viciae、リゾビウム・レグミノサラム・ビーブイ・ビシアエ)を土壌から分離し、このヘアリーベッチ根粒菌株をヘアリーベッチ種子に接種することにより、低温条件下(15℃以下)でも高い窒素固定活性を持つ根粒を形成させることができることを見いだした。
なお、本発明においては、低温条件又は低温条件下とは、日中の平均気温が15℃で、夜間の平均温度が7℃の環境のことを言う。
【0011】
上記ヘアリーベッチ根粒菌の分離方法としては、圃場に生育しているヘアリーベッチから分離する。ヘアリーベッチは、土壌から根粒内にヘアリーベッチ根粒菌を取り込んでいるためである。ここでは、粒径が大きく、内部が赤色を呈している根粒を採取する。
ここで根粒の表面を殺菌した後、内部組織液をYM(酵母エキス−マンニトール)寒天培地に塗末し、好気条件下、30℃で7日間培養する。この培地としては、同業者が使用する細菌培養用の培地ならどのようなものでも使用することができる。得られたコロニーである菌株をYM液体培地に投入し、好気条件下、30℃で7日間振とう培養して増殖させる。
上述のYM液体培地の組成は以下の表1の通りである。水としては、蒸留水又はイオン交換水を使用するのが望ましい。
【0012】
【表1】

【0013】
このYM液体培地は、そのまま使用すると液体培地となり、1.5%(w/v)のアガーを加えるとYM寒天培地として使用可能である。
【0014】
次に、培養した菌株をヘアリーベッチに接種して、無窒素培地で14日間培養する。ここで、ヘアリーベッチに根粒形成が確認された菌株をヘアリーベッチ根粒菌と判定する。根粒が形成されたヘアリーベッチを15℃で14日間栽培し、アセチレン還元法により窒素固定活性を測定する。この上で、15℃でもっとも高い窒素固定活性を示すヘアリーベッチ根粒菌株の1つであるY629株を得た。
【0015】
このようにして得られたヘアリーベッチ根粒菌株Y629株は、2007年2月23日に独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託されており、その受領番号はNITE AP−323である。
以下の実施例で、低温条件下でも高い窒素固定活性を有するヘアリーベッチ根粒菌の同定方法と、このヘアリーベッチ根粒菌株Y629株の科学的性質についてさらに詳しく説明する。
【実施例】
【0016】
<実施例1>
(ヘアリーベッチ根粒菌の分離)
ヘアリーベッチの最大繁茂期にあたる2004年6月29日に、秋田県大潟村の水田土壌である圃場に生育しているヘアリーベッチの根から根粒を採取し、ヘアリーベッチ根粒菌を分離した。図1を参照して説明すると、分離は下記の手順で行った。
1. ヘアリーベッチから根粒を採取し、水道水でよく洗浄した。
2. 根粒表面を95%エタノールで10秒間殺菌した。
3. 0.1% 次亜塩素酸で4分間殺菌した。
4. 速やかに滅菌蒸留水で繰り返し5回洗浄し、次亜塩素酸を十分に洗い流した。
6. 根粒を輪切りにし、根粒内部の赤い部分を白金耳で触れ、根粒菌をYMA+BTB平面培地に面線接種した。
7. 30℃、暗条件のインキュベーター内で一週間培養した。
8. 根粒菌の単一コロニーを取り、新しいYMA培地に移し変えた。
【0017】
上述のYMA+BTB培地は、マンニトール(C6146)10g、リン酸水素二カリウム(K2HPO4)0.5g、硫酸マグネシウム7水和物(MgSO4・7H2O)0.2g、塩化ナトリウム(NaCl)0.1g、酵母エキス(Yeast Extract)1gを蒸留水1Lに溶かし、0.1N−HClでpH6.8に調整し、寒天15g及び0.5g/100mL BTB(Bromthymol Blue)溶液を5mLを加え、オートクレーブで滅菌して使用した。
【0018】
(分離根粒菌の同定)
分離した根粒菌の全ゲノムDNAをDNA抽出キット(プロメガ社製、Wizard(登録商標)Genomic DNA Purification Kit)を用いて、抽出した。
16s−rRNA遺伝子をターゲットとしたユニバーサルプライマーを用いて、分離した根粒菌の16s−rRNA遺伝子のほぼ全塩基配列をPCR増幅した。このユニバーサルプライマーは、学術誌(Weisburg, W. G., Barns, S. M., Pelletier, D. A. & Lane, D. J. (1991). 16S ribosomal DNA amplification for phylogenetic study. J Bacteriol 173, 697−703)に記載の配列を使用した。
PCR反応にはPCR用混合液(プロメガ社製、Master Mix)を使用した。このPCR用混合液の組成は、1.5 mmol/L MgCl、200μmol/L dnTP、0.625U Taq DNA Polymerase等でpH8.5である。
図2を参照して説明すると、PCR反応は、PCR用混合液12.5μL、10μMプライマー各1.5μL、DNA抽出液(30ng/μL)1.0μL、N−F Water8.5μLを混合して、図2に記載の条件でPCR反応を行った。
このPCR反応によって生成されたPCR産物をマイクロチップ電気泳動装置(Agilent technoligy社製、Agilent 2100 Bioanalyzer DNA7500 Assy)により電気泳動を行い、増幅の確認と塩基数を調べた。
【0019】
次に、PCR産物はプロメガ社製、Wizard(登録商標)SV Gel and PCR Clean−up Systemにより精製後秋田県立大学生命科学研究支援センターのDNAシークエンス解析により塩基配列を決定した。この配列を、配列表にて示す。
その後、日本DNAデータバンク(DDBJ)の配列相同性検索ソフトであるBLAST(http://www.ddbj.nig.ac.jp/search/blast−j.html)により、塩基配列の相同性検索を行ったところ、98%の相同性があった。これにより、菌の種類をヘアリーベッチ根粒菌(Rhizobium leguminosarum bv. viciae、リゾビウム・レグミノサラム・ビーブイ・ビシアエ)と同定した。
なお、この同定法は、16s−rRNA遺伝子の全領域の解読結果から同定しているので信頼性が高く、微生物の系統と種類を十分に特定できる。
このヘアリーベッチ根粒菌株を、ヘアリーベッチ根粒菌Y629株と命名した。以下の表2を参照して、ヘアリーベッチ根粒菌Y629株の菌学的性質を述べる。
【0020】
【表2】

【0021】
表2に示したように、ヘアリーベッチ根粒菌Y629株は、ヘアリーベッチ根粒菌(Rhizobium leguminosarum bv. viciae)である。この菌はグラム陰性の桿菌で、大きさは1〜3μm。YM液体培地中で、一般的なRhizobium leguminosarum属と同様の増殖速度を示す。YM寒天培地上では表面が滑らかな白色・球状のコロニーを形成する。また、YM寒天培地上で酸を生成し、コンゴレッド含有培地では色素を吸収して赤色のコロニーを形成する。pH5.5以上・15℃〜35℃で増殖が可能である。単生条件ではインドール酢酸、硫化水素の産生は認められない。
さらに、Y629株はヘアリーベッチと親和性が高く、根粒を形成して共生窒素固定する。また、共生状態において低温条件下(15℃)でも高い窒素固定活性を有する。その他の性質については、一般的なヘアリーベッチ根粒菌の性質と相同である。
根粒菌の場合は、特定の宿主植物(ヘアリーベッチ)に目的の菌株を接種して、根粒が形成されれば間違いなく根粒菌であり、他の菌より簡易に同定が可能である。以下で、根粒が間違いなく形成されていることと、Y629株の優れた性質について実験を基に説明する。
【0022】
(ポット栽培によるヘアリーベッチ根粒菌接種試験)
[栽培条件]
図3を参照して、ポット栽培によるヘアリーベッチ根粒菌接種試験について説明する。
まず、分離したヘアリーベッチ根粒菌の窒素固定能力を調べるため、ポットによる接種試験を行った。栽培土は一般的なバーミキュライトを水でよく洗浄し、培養液を含ませた後、オートクレーブ滅菌(121℃、20分間)した。
処理区として、ヘアリーベッチ根粒菌Y629株を接種したY629株接種区と、大潟村の水田土壌100gを蒸留水1000mLとよく混合した土壌懸濁液を接種した土着根粒菌区を設定した。
【0023】
具体的な接種方法としては、Y629株接種区においては、Y629株をYM液体培地1000mLにて30℃で5日間、振とう培養し、OD(Optical Density、光学濃度)620nm=1.4となった状態で、ピートモス・パーミキュライト5kgに振りかけた。このピートモス・パーミキュライト500gを、ヘアリーベッチ種子20kgとよく混ぜ合わせ、接種した。
土着根粒菌区においては、上述の土壌懸濁液100mLをそのまま、ヘアリーベッチ種子とよく混ぜ合わせ、接種した。
【0024】
栽培は統計処理のため、4反復で行った。ヘアリーベッチは種子殺菌した後、1ポットあたり4粒ずつ播種し、発芽後(一週間後)2株とした。栽培条件として昼22℃、夜18℃の高温条件および、昼15℃、夜7℃の低温条件を設けた。
光条件は高温条件、低温条件ともに、明期は照度25000 lx(ルクス)で12時間、暗期は照度0 lxで12時間とした。
【0025】
上述の種子殺菌は、70%エタノールに浸して10秒間表面殺菌し、水でエタノールをよく洗い流した。次に0.5%次亜塩素酸ナトリウムに3分間浸した後、水でよく洗浄流水し、次亜塩素酸ナトリウムを完全に除去することで行った。
【0026】
ヘアリーベッチは播種2週間後に高温処理、低温処理を開始し、さらに2週間栽培した。栽培期間中は窒素以外の栄養塩類を補うため、無窒素培養液を適宜与えた。以上の条件で栽培した後、ヘアリーベッチの根粒着生数を計数し、感染した根粒菌の窒素固定活性を、アセチレン還元法を用いて評価した。
上述の無窒素培養液の組成を以下の表3に示す。
【0027】
【表3】

【0028】
(着生根粒数の調査)
各栽培条件のY629接種区、土着根粒菌区におけるヘアリーベッチに形成された根粒数を計数した。
この結果を図4に示す。Y629株は、高温条件下においては、土着根粒菌区に比べて半分ほどの数の根粒を着生した。低温条件下においては、Y629株は土着根粒菌と同様の着生根粒数を示した。なお、着生根粒数と共生窒素固定活性は必ずしも比例しない。
結果として、Y629株は、確かにヘアリーベッチに根粒を形成させる能力があることが分かった。
【0029】
(ヘアリーベッチに着生した根粒の観察)
低温条件における、ヘアリーベッチに着生した根粒を、カミソリを用いて輪切りにし、根粒内部の様子を実体顕微鏡(OLYMPUS社製、SZ40)により観察した。
この結果である図5を参照すると、土着根粒菌とY629株が感染した根粒には、しっかりと根粒組織が形成されていた。しかし、土着根粒菌の根粒は緑色をしていたが、Y629株の根粒は赤色を呈していた。この理由として、Y629株が感染した根粒では、宿主との親和性が高いため、赤色のレグヘモグロビンの存在が確認され、高い窒素固定活性を示していると推察できる。
レグヘモグロビンは酵素ニトロゲーナーゼの酸素による失活を防ぐ働きがあり、根粒中に鮮明赤色のレグヘモグロビンが存在することがY629株の高効率窒素固定の要因の一つとなっていると考えられる。
【0030】
(アセチレン還元法による、窒素固定活性の測定)
窒素固定酵素ニトロゲナーゼは、窒素分子(N2)をアンモニア(NH4)にする反応を触媒する。この酵素はアセチレン(C22)をエチレン(C24)する反応も触媒するため、根粒にアセチレンを投与して生成するエチレンの量を測定することにより、ニトロゲナーゼの活性を評価することが可能である。
ヘアリーベッチに付着したバーミキュライトを洗い流した後、地上部と地下部に分け(種子の下で切断)、地下部をあらかじめ容量を正確に測っておいた100mL三角フラスコに入れた。シリコン栓で密閉し、三角フラスコ内の気体容積の10%を、シリンジを用いてアセチレンガスに置換した。20分間インキュベート(15℃)した後、三角フラスコ内の気体を、1mLシリンジで0.5mL採取した。採取した気体中のエチレンをガスクロマトグラフィーにより定量した。
この結果を示す図6を参照すると、Y629株が着床した根粒は、昼間22℃の高温条件下と昼間15℃の低温条件下共に土着根粒菌の根粒に比べて2倍以上の窒素固定能力を示した。
また、低温条件下においても、高温条件下の5割以上の共生窒素固定能力が保たれ、土着根粒菌の22℃での窒素固定能力を上回る窒素固定能力があった。
【0031】
さらに、図7を参照して説明する。ヘアリーベッチ種子を低温条件下で育てた際の土着根粒菌区とY629株接種区のヘアリーベッチの状態について、それぞれ4ポットのうち2ポットを並べて比較すると、土着根粒菌区のヘアリーベッチは赤みを帯びて生育状態が悪いが、Y629株接種区のヘアリーベッチは葉が緑で艶があり順調に生育している。
すなわち、Y629株接種区のヘアリーベッチは健全に生育している。なお、本発明において健全に生育するとは、ヘアリーベッチの生育状態が良いことを言う。
【0032】
このように、低温耐性があるヘアリーベッチ根粒菌Y629株が感染した根粒は、低温条件(約15℃)でも窒素固定活性を高く維持することができる。これにより、ヘアリーベッチ植物体の窒素栄養状態を正常に保つことができるため、低温でもヘアリーベッチを健全に生育させることができる。
【0033】
なお、上記実施の形態の構成及び動作は例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実行することができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態の実施例に係るヘアリーベッチ根粒菌の分離方法の概念図である。
【図2】本発明の実施の形態の実施例に係るヘアリーベッチ根粒菌の菌種を同定するためのPCR法のプロトコルを示す図である。
【図3】本発明の実施の形態の実施例に係るポットによるヘアリーベッチ根粒菌接種試験の栽培概要を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態の実施例に係る着生根粒数の調査の結果を示すグラフである。
【図5】本発明の実施の形態の実施例に係るヘアリーベッチに着生した根粒内部の様子を実体顕微鏡で観察した図である。
【図6】本発明の実施の形態の実施例に係る低温での窒素固定活性の結果を示すグラフである。
【図7】本発明の実施の形態の実施例に係る土着根粒菌区とY629接種区のポット栽培例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘアリーベッチから単離された根粒菌であって、低温条件下でもヘアリーベッチが健全に生長できる共生窒素固定活性を持つことを特徴とする根粒菌。
【請求項2】
前記根粒菌は、ヘアリーベッチ根粒菌(リゾビウム・レグミノサラム・ビーブイ・ビシアエ)であることを特徴とする請求項1に記載の根粒菌。
【請求項3】
前記根粒菌は、ヘアリーベッチ根粒菌 Y629株(NITE AP−323)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の根粒菌。
【請求項4】
前記低温条件下でもヘアリーベッチが健全に生長できる共生窒素固定活性は、昼間15℃の環境においても0.3μmol/植物・時間以上に維持されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の根粒菌。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−228572(P2008−228572A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−68007(P2007−68007)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年9月21日 植物微生物研究会主催の「植物微生物研究会第16回研究交流会」に文書をもって発表
【出願人】(306024148)公立大学法人秋田県立大学 (74)
【Fターム(参考)】