説明

根菜類収穫機

【課題】
一人でも機体の操縦と選別を両立できると共に、選別精度の高い根菜類収穫機を提供する。
【解決手段】
フレーム20の下部に走行装置6を設け、フレーム20の左右一側に作物を引き抜き後方へ搬送する引抜搬送装置24を設け、フレーム20の左右他側に操縦座席11を備えた操縦部Bを設け、引抜搬送装置24の搬送終端側に茎葉切断装置46を設け、茎葉切断装置46の下方に茎葉部を切断された作物を搬送と作物の残葉を処理する残葉処理装置53を設け、残葉処理装置53から作物を引き継いで搬送する第1選別搬送コンベア71を設け、第1選別搬送コンベア71から作物を受けて移送する移送装置77を設け、移送装置77から作物を受けて第1選別コンベア71の下方及び操縦部Bの後側を通り収容部Hに搬送する第2選別搬送コンベア99を設け、補助作業座席105を備えた補助作業部Gを設けて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作物を圃場から引き抜き、選別して収穫する根菜類収穫機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、根菜類収穫機としては、特許文献1及び2に示されるように、引抜搬送装置で圃場から作物を引き抜き、機体左右一側から左右他側に作物を選別搬送コンベアで搬送し、搬送中の作物を選別搬送コンベアの近傍に設けた補助作業座席に搭乗する補助作業者が選別し、コンテナやフレキシブルコンテナバッグ等の収容部材で選別された作物を回収するものが存在する。
【特許文献1】特開2006−262719号公報
【特許文献2】特開2007−236334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1及び2に記載された根菜類収穫機は、操縦席と選別搬送コンベアの距離が離れているため、機体を操縦する操縦者と作物の選別作業を行う補助作業者の最低二人の人員が必要となり、作業能率が低下する問題がある。
【0004】
また、作物を機体左右一側から機体左右他側に搬送する選別搬送コンベア上で手作業で選別作業を行うので、大量の作物が選別搬送コンベアに引き継がれると、補助作業者による選別作業が間に合わず、作物が選別されずに収容部材に回収されてしまう問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、フレーム(20)の下部に左右の走行装置(6L,6R)を設け、該フレーム(20)の左右一側に圃場から作物を引き抜き機体後方へ搬送する後上がり傾斜姿勢の引抜搬送装置(24)を設け、前記フレーム(20)の左右他側の前部に操縦者が搭乗する操縦座席(11)を備えた操縦部(B)を設け、前記引抜搬送装置(24)の搬送終端側に作物の茎葉部を切断する茎葉切断装置(46,46)を設け、該茎葉切断装置(46,46)の下方に、茎葉部を切断された作物を受けて機体後方に搬送すると共にこの作物の残葉を処理する残葉処理装置(53)を設け、該残葉処理装置(53)と前記操縦部(B)との間に、残葉処理装置(53)の後端部から作物を引き継いで操縦部(B)の横側に向けて搬送する機体前後方向姿勢の第1選別搬送コンベア(71)を設け、該第1選別搬送コンベア(71)の搬送終端部から作物を受けて機体後部へ移送する移送装置(77)を設け、該移送装置(77)の移送終端部下方に、前記第1選別コンベア(71)の下方及び操縦部(B)の後側を通過して機体左右他側の収容部(H)に向けて作物を搬送する第2選別搬送コンベア(99)の搬送始端部を配置し、該第2選別搬送コンベア(99)の後側で且つ前記第1選別搬送コンベア(71)の搬送始端部の横側の位置に補助作業者が搭乗する補助作業座席(105)を備えた補助作業部(G)を設けたことを特徴とする根菜類収穫機とした。
【0006】
請求項2記載の発明は、前記操縦部(B)の前側に複数の収容部材(84)を載置する補助載置部(85)を設け、該補助載置部(85)に作物を移送する移送シュータ(86)の移送始端部となる投入部(86a)を前記操縦部(B)の側方に設け、該移送シュータ(86)の移送終端部に、作物を収容する収容部材(84)を選択する回動自在な切換シュータ(87)を設けたことを特徴とする請求項1記載の根菜類収穫機とした。
【0007】
請求項3記載の発明は、前記引継シュータ(77)の前側で且つ移送シュータ(86)の側方の位置に不要な作物や夾雑物を左右いずれか一側の走行装置(6L,6R)の前方に排出する排出シュータ(88)を設けたことを特徴とする請求項2記載の根菜類収穫機とした。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、第1選別搬送コンベア(71)を操縦部(B)の横側に機体前後方向姿勢で配置したことにより、操縦者が操縦部(B)から第1選別搬送コンベア(71)で搬送される作物の選別作業をすることができるため、操縦者一人でも機体を操縦しながら作物を選別することができるので、作業能率が向上する。
【0009】
また、第1選別搬送コンベア(71)の搬送始端側に補助作業座席(105)を設けたことによって、補助作業者は第1選別搬送コンベア(71)と第2選別搬送コンベア(99)とで選別作業を行うことができるので、第1選別搬送コンベア(71)に大量に作物が引き継がれて補助作業者による作物の選別が間に合わなくても、第2選別搬送コンベア(99)で作物を選別することができるので、作物の選別精度が向上する。
【0010】
そして、第1選別搬送コンベア(71)の下方及び操縦部(B)の後側を通過して機体左右他側の収容部(H)に向けて作物を搬送する第2選別搬送コンベア(99)を設けたことによって、操縦者は機体後側を向いて第2選別搬送コンベア(99)で搬送中の作物を選別することができるので、操縦者一人でも機体を操縦しながら選別することができ、作業の省力化が図られる。
【0011】
さらに、第2選別搬送コンベア(99)で搬送される作物を操縦者と補助作業者とで選別することができるので、第2選別搬送コンベア(99)に大量の作物が引き継がれて作物の選別が間に合わなくなることが防止され、作物の選別精度が向上する。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、操縦部(B)の側方に補助載置部(85)に作物を移送する移送シュータ(86)の移送始端部となる投入部(86a)を設けたことによって、操縦者は第1選別搬送コンベア(71)で選別した作物を操縦部(B)から移動することなく補助載置部(85)に載置した収容部材(84)に移送することができるので、作業能率が向上する。
【0013】
また、移送シュータ(86)の移送終端部に作物が収容される収容部材(84)を選択する切換シュータ(87)を設けたことによって、一つの収容部材(84)が満杯になると切換シュータ(87)を操作して他の収容部材(84)に作物を収容させることができるので、収容部材(84)を積み降ろす回数が少なくなり、作業能率が向上する。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明の効果に加えて、移送装置(77)の前側で且つ移送シュータ(86)の側方の位置に不要な作物や夾雑物を排出する排出シュータ(88)を設けたことによって、操縦者は第1選別搬送コンベア(71)で選別して不要と判断した作物や夾雑物を操縦部(B)から移動することなく圃場に排出ことができるので、作業能率が向上する。
【0015】
また、排出シュータ(88)から排出された作物や夾雑物が左右いずれか一側の走行装置(6L,6R)の前方に落下することによって、不要な作物や夾雑物を左右いずれか一側の走行装置(6L,6R)で破砕ことができるので、破砕された作物や夾雑物の腐敗が促進され、圃場への還元効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図14に示すように、実施例の一つとして示す根菜類収穫機の一種である人参収穫機は、機体を走行させる走行部Aと、操縦者が搭乗する操縦部Bと、機体左右一側で圃場から人参を引き抜いて機体後上側に搬送するとともに茎葉部を切断して人参の根部を収穫する収穫部Cと、該収穫部Cの後部から落下した人参を受けて残葉を処理しながら機体後側へ搬送する残葉処理部Dと、該残葉処理部Dから搬送される人参を引き継いで人参を機体後側から機体前側へ搬送し、搬送中の人参を操縦者と補助作業者のどちらか、あるいは両方が選別を行う第1選別搬送部Eと、該第1選別搬送部Eから人参を引き継いだ人参を第1選別搬送部Eの下方を通過して機体左右一側から左右他側に搬送し、搬送中の人参を操縦者と補助作業者のどちらか、あるいは両方が選別を行う第2選別搬送部Fと、補助作業者が搭乗する補助作業部Gと、第2選別搬送部Fから排出される人参を収容する収容部Hとから構成される。以下、各部の詳細を具体的に記載する。
【0017】
まず、走行部Aの構成について説明する。
図1〜図4で示すように、機体フレーム1の下方に機体前部側の左右駆動スプロケット2,2と機体後部側の左右従動輪3,3と、該左右駆動スプロケット2,2と左右従動輪3,3との間に取り付けた複数の転輪4,4・・・の周りに左右ベルト5,5を巻き掛けて左右のクローラ6L,6Rを構成する。そして、該左右クローラ6L,6Rの左右駆動スプロケット2,2を、エンジン7の動力が伝動されるミッションケース8から左右両側に延出させた左右ドライブシャフト9,9に取り付け、一定の左右間隔を設けて左右クローラ6L,6Rを該機体フレーム1に取り付ける。
【0018】
次に、操縦部Bの構成について説明する。
図1〜図4で示すように、前記機体フレーム1の右側上部に操縦部フレーム10を取り付け、該操縦部フレーム10には操縦座席11を回動自在に取り付けると共に、機体前側に操縦パネル12を取り付ける。そして、該操縦パネル12に機体の前後進及び走行速度を切り換える変速操作レバー13を取り付けると共に、機体の左右旋回操作及び収穫部Cの作業高さを操作する昇降操作レバー14を取り付ける。
【0019】
操縦部Bを上記のように構成したことによって、変速操作レバー13や昇降操作レバー14のような、1本で複数の操作を行える操縦部材を設けることによって、機体の操縦が容易になるため操縦者の作業を軽減することができる。
【0020】
また、操縦座席11を操縦部フレーム10に回動自在に取り付けたことによって、作業者は作業座席11を回動させて後述する第1選別搬送コンベア71または第2選別搬送コンベア99に向かい、第1選別搬送コンベア71及び第2選別搬送コンベア99で搬送中の人参の選別作業を行うことができるので、操縦者一人でも人参の収穫作業ができて省力化が図られるとともに、操縦者と補助作業者の二人で選別作業をすることができるので、収穫する人参の数が多くても選別し損なうことを防止できるので、人参の選別精度が向上する。
【0021】
次に、収穫部Cの構成について説明する。
図1〜図4で示すように、左右引抜フレーム15,15の機体前側に左右従動プーリ16,16を回転自在に装着し、機体後側に左右駆動プーリ17,17を装着し、該左右従動プーリ16,16と左右駆動プーリ17,17との間に人参を引き抜き機体後部へと搬送する左右挟持搬送ベルト18,18を巻き掛けると共に、複数のテンションローラ19・・・によって該左右挟持搬送ベルト18,18を張圧し、左右挟持搬送ベルト18,18の機体内側面を互いに圧接させて人参の引抜搬送経路Rを構成する。そして、前記機体フレーム1の上方に左右横軸21を回動支点として上下方向に回動自在な回動フレーム20を取り付け、該回動フレーム20の後端部に前記左右駆動プーリ17,17に駆動力を伝動する伝動ケース22を、回動支点Xを中心として上下回動自在に取り付ける。また、前記機体フレーム1と回動フレーム20とを昇降シリンダ23で連結し、該昇降シリンダ23を操縦部Bで操作可能に取り付けて引抜搬送装置24を構成する。
【0022】
また、該引抜搬送装置24の前方に人参の茎葉部を引き起こす縦引起し装置25と、該縦引起し装置25が引起した茎葉部を掬い上げる横引起し装置26と、該横引起し装置26の前部に設ける分草杆27と、ハンドル29を回すと上下伸縮する伸縮ロッド30の下端部に引抜搬送装置24の下り過ぎを防止する回転自在なゲージ輪31と、前記エンジン7の駆動力で回転するシャフト32の回転によって振動する振動フレーム33に取り付けた人参の左右の土を振動によって解す左右振動ソイラ34,34とを設ける。
【0023】
そして、前記シャフト32の引抜搬送装置24を配置した側の端部に駆動プーリ35を軸着し、該駆動プーリ35よりも機体左右一側寄りの回動フレーム20上で且つ引抜搬送装置24の搬送経路の下方に上下方向の長穴を一ヶ所または複数(少なくとも二ヶ所)形成した尻尾切カバー36を取り付ける。さらに、該尻尾切カバー36に複数のスリット36a…を機体上下方向に形成し、該スリット36a…の下部は機体左右一側に屈曲させる。また、前記尻尾切カバー36の内部に前記引抜搬送装置24に搬送される人参の尻尾(ひげ根)を切断する円盤に複数の切断刃を取り付けた尻尾切回転刃37を前記回動フレーム20に対して垂直方向に上下調節自在に設け、該尻尾切回転刃37の回転軸38を尻尾切カバー36の機体内側から突出させ、該回転軸38の機体内側端部に従動プーリ39を軸着する。そして、該従動プーリ39と駆動プーリ35との間に尻尾切回転刃37を回転させる駆動力を伝動する尻尾切伝動ベルト40を無端状に巻回し、駆動プーリ35と従動プーリ39との間に該尻尾切伝動ベルト40を張圧するテンションプーリ41を回転自在に設けることによって、尻尾切装置42が構成される。
【0024】
なお、尻尾切カバー36に形成した長穴に内部からボルト39aを突出させ、この突出部にナット39bを合わせ、尻尾切装置42の上下位置を決定してからナット39bを締めることによって、尻尾切装置42の上下位置が調節されるため、人参の品種や生育状況に関わらず適切な位置で人参の尻尾を切断することができるので、人参の尻尾の切り残しが減少し、作業者が収穫作業後に人参の尻尾切りを行う労力が軽減される。
【0025】
加えて、尻尾切装置42が回動フレーム20に対して垂直方向に上下動することによって、尻尾切装置42の上下位置を調節した際の尻尾切伝動ベルト40の長さの変化を短く抑えることができるので、尻尾切伝動ベルト40が弛むことが防止され、尻尾切回転刃37の回転力が足りずに人参の尻尾が切り残されることが防止され、作業者が収穫作業後に人参の尻尾切りを行う労力が軽減される。
【0026】
また、駆動プーリ35と従動プーリ39とテンションプーリ41と尻尾切伝動ベルト40とを尻尾切伝動ケース43に内装することによって、駆動プーリ35と従動プーリ39とテンションプーリ41と尻尾切伝動ベルト40とに人参や圃場の泥土、あるいは作業者が接触することが防止できるので、駆動プーリ35と従動プーリ39とテンションプーリ41と尻尾切伝動ベルト40の耐久性が向上すると共に、作業者が誤って触れてしまい、怪我をすることが防止できる。
【0027】
加えて、尻尾切伝動ケース43に上下方向の長穴を一つまたは複数形成し、テンションプーリ41の回転軸をボルト41aで構成してその端部を長穴から突出させ、ボルト41aの突出部にナット41bを合わせ、テンションプーリ41の上下位置を決めてからナット41bを締めることによって、テンションプーリ41が尻尾切伝動ベルト40を張圧する力を容易に変更することができるので、尻尾切回転刃37の回転力が足りずに人参の尻尾が切り残されることが防止され、作業者が収穫作業後に人参の尻尾切りを行う労力が軽減される。
【0028】
さらに、前記引抜搬送装置24の後下部には、左右挟持搬送ベルト19,19によって搬送されてきた人参を引き継ぎ、人参の茎葉部の切断位置を揃える左右位置揃え装置44,44と、該左右位置揃え装置44,44から茎葉部を引き継いで挟持して機体後方まで搬送する左右茎葉搬送装置45,45と、茎葉部を切断する左右切断装置46,46と、該左右切断装置46,46によって切断された茎葉を圃場に排出する排葉シュータ47とを設けて排葉搬送装置48を構成する。
【0029】
そして、前記引抜搬送装置24と尻尾切装置42と排葉搬送装置48とから、収穫部Cを構成する。
収穫部Cを上記のように構成したことにより、機体前側に分草杆27を備える横引起し装置26と、縦引起し装置28を設けることによって、圃場に倒伏した人参の茎葉を掻き上げながら収穫作業ができ、収穫する人参の視認性が向上するので引き抜き位置が合わせやすく、作物の抜き残しが減少するため作業能率が向上する。
【0030】
また、人参に左右振動ソイラ34,34等が接触して傷つくことを防止できるので、人参の商品価値が向上する。
そして、ハンドル29を回すと上下伸縮する伸縮ロッド30の下端部にゲージ輪31を設けたことによって、ゲージ輪31を圃場面に接地させるとそれ以上引抜搬送装置24が下降しなくなるので、操縦者の操縦ミスや予期せぬ地面の凹凸によって引抜搬送装置24の下端部が圃場面に接触して破損することが防止される。
【0031】
そして、機体フレーム9と左右横軸21を回動支点として上下方向に回動自在な回動フレーム20とを昇降シリンダ23で連結し、昇降シリンダ23を操縦部Bの昇降操作レバー14を操作することによって伸縮させる構成としたことによって、昇降操作レバー14の操作により収穫部C全体の上下高さを調節することができるので、収穫部Cの引抜搬送始端部の位置を上下方向に調節しするとともに圃場に植生する人参の適切な引き抜き高さに合わせて引抜搬送始端部の位置調節を行え、人参の抜き残しが防止されるので作業能率が向上する。
【0032】
また、旋回時に収穫部Cを上昇させておくと、収穫部Cの下端部が圃場に接触しにくくなるため、旋回動作がスムーズに行われて作業能率が向上する。
さらに、収穫部Cの左右切断装置46,46で人参から切断された排葉(切断された茎葉部)を圃場に排出する排葉シュータ47が、既掘り側(人参を収穫し終えた側)に茎葉を排出するように下方傾斜姿勢に設けられていることによって、排出された茎葉が未掘り側(人参を収穫していない側)の人参の上に落下し、排葉が左右挟持搬送ベルト19,19や左右従動プーリ17,17等に絡み付いて収穫部Cを停止させて収穫作業を妨げることが防止できるので、作業能率が向上すると共に、人参の上に落下した排葉が収穫する人参の視認性を妨げ、人参に左右振動ソイラ34,34等が当たって傷つくことが防止できるので、人参の商品価値が向上する。
【0033】
次に、残葉処理部Dの構成について説明する。
図1〜図6に示すように、前記左右伝動シャフト22,22の回動支点Xよりやや下方で且つ回動フレーム20よりも上方に長手方向を機体前後方向に向けた左右側壁49,49を設け、該左右側壁49,49の機体前側に前記エンジン7から駆動力を受けて回転する残葉処理駆動ローラ50を取り付け、左右側壁49,49の機体後側に残葉処理従動ローラ51を回転自在に取り付ける。そして、該残葉処理駆動ローラ50と残葉処理従動ローラ51とにゴムや軟質樹脂等で構成する残葉処理ベルト52を無端状に巻回して残葉処理コンベア53を構成する。
【0034】
また、前記残葉処理駆動ローラ50の回転軸の機体外側端部に駆動スプロケット54を軸着し、残葉処理従動ローラ51の回転軸の機体外側端部に従動スプロケット55を軸着するとともに、該駆動スプロケット54と従動スプロケット55とに第1伝動チェーン56を無端状に巻回する。さらに、前記従動スプロケット55よりも機体外側に残葉処理駆動スプロケット57を軸着し、機体外側の側壁49に残葉処理従動スプロケット58を回転自在に取り付けるとともに、該残葉処理駆動スプロケット57と残葉処理従動スプロケット58との間に第2伝動チェーン59を無端状に巻回する。そして、前記残葉処理従動スプロケット58の回転軸の機体外側端部に第1スパーギア60aを軸着し、残葉処理従動スプロケット58よりも機体前側の側壁に第2スパーギア60bを回転自在に取り付け、該第1スパーギア60aと第2スパーギア60bとを噛み合せる。また、該第2スパーギア60bの回転軸に第1ベベルギア61aを軸着し、該第1ベベルギア61aに接触して回転する第2ベベルギア61bを第1ベベルギア61aよりも上方且つ機体内側方向に斜め向きに配置し、該第2ベベルギア61bに人参の根部に残る残葉をちぎり取る残葉処理ローラ62を装着し、該残葉処理ローラ62を機体内側方向に斜め向きに配置すると共に、残葉処理ベルト52の機体内側端部から残葉処理ローラ62の機体内側端部を突出させて配置することにより、残葉処理部Dが構成される。
【0035】
残葉処理部Dを上記のように構成したことにより、残葉処理コンベア53はゴムや軟質樹脂等で構成する残葉処理ベルト52を無端状に巻回して構成しているため、収穫部Cの左右切断装置46,46で茎葉部を切断されて落下してくる人参の根部が落下の衝撃で傷付くことを防止できるので、人参の商品価値が向上する。
【0036】
また、残葉処理コンベア53に設ける残葉処理ローラ62が、左右切断装置46,46で切り残された人参の残葉をちぎり取り、人参を後述する第1選別搬送コンベア71に搬送するため、人参の商品価値が向上すると共に、収穫作業後に人手で残葉を切除する作業を省略することができるので、作業能率が向上する。
【0037】
次に、第1選別搬送部Eの構成について説明する。
図1〜図7に示すように、前記残葉処理コンベア53よりも機体左右他側に左右第1搬送側壁63,63を設け、該左右第1搬送側壁63,63の後端側の左右間で且つ残葉処理コンベア53よりも後下方に第1選別駆動ローラ64を設けるとともに、左右第1搬送側壁63,63の前端側に左右第1テンションローラ65,65を回転自在に取り付ける。また、前記左右第1搬送側壁63,63の前端両側に左右第2搬送側壁66,66の基部を取り付け、該左右第2搬送側壁66,66を前端部が後端部よりも上方に位置する前上がり傾斜姿勢に配置するとともに、左右第2搬送側壁66,66の前端部に第2テンションローラ67,67を取り付ける。さらに、前記左右第2搬送側壁66,66の前端部に左右第3搬送側壁68,68の基部を取り付け、該左右第3搬送側壁68,68を略水平に配置するとともに、該左右第3搬送側壁68,68の前端部左右間で且つ前記操縦座席11の前端部の機体左右一側方に第1選別従動ローラ69を回転自在に取り付ける。
【0038】
そして、前記第1選別駆動ローラ64と第1選別従動ローラ69とに複数の凸部70a…を形成した選別搬送ベルト70を無端状に巻回し、左右第1テンションローラ65,65を該選別搬送ベルト70の搬送作用部上面に接触させ、左右第2テンションローラ67,67を選別搬送ベルト70の搬送作用部下面に接触させて第1選別搬送コンベア71を構成する。
【0039】
なお、前記左右第1側壁63,63、左右第2側壁66,66及び左右第3側壁68,68の上端部は選別搬送ベルト70の搬送作用部上面よりも上方まで伸ばすと、搬送中の人参に付着していた泥土や夾雑物が左右第1選別搬送コンベア71から下方に落下し、エンジン7、ミッションケース8、操縦部フレーム10や回動フレーム20に溜まることを防止できるので、メンテナンス性が向上する。
【0040】
加えて、左右第1側壁63,63、左右第2側壁66,66及び左右第3側壁68,68の上端部を第1選別搬送コンベア71の搬送面に向かって折り曲げると、泥土や夾雑物の落下防止効果がさらに向上する。
【0041】
また、前記操縦部フレーム10の機体左右一側に、回動軸73を介して第1選別搬送コンベア71から人参を引き継ぎ一時的に貯留する受台72の基部を取り付け、該受台72の端部を第1選別搬送コンベア71の搬送終端部(機体前側端部)下方に配置する。さらに、該受台72の左右端部側と前記左右第3側壁68,68との間に張力の低い左右張圧スプリング74,74を取り付けて、該受台72が一定重量以上の人参を受けると人参の重量で下方に回動する構成とする。
【0042】
なお、前記左右張圧スプリング74,74の張力を強くし、受台72に人参が一定量溜まると操縦者が受台72を手で押して下方に回動させる構成としてもよい。加えて、左右張圧スプリング74,74の張力を変更する機構を加え、上記の機構を操縦者が選択できる構成としてもよい。
【0043】
さらに、前記操縦部フレーム10に切換スイッチ75を設け、該切換スイッチ75を押すと操縦部フレーム10の内部に退避する支持突起76を設け、該支持突起76が受台72を下方から支持する構成としてもよい。
【0044】
上記構成によれば、操縦者は操縦座席11に着座したまま任意のタイミングで受台72を下方に回動させることができるので、受台72に人参が溜まり過ぎて下方に落下することを防止して人参の商品価値を向上させられるとともに、後述する第2選別搬送コンベア99で選別作業を行う補助作業者の作業能率に応じて人参の搬送量を調節することができるので、作業能率が向上する。
【0045】
また、人参を搬送している第1選別搬送コンベア71に操縦者が手を伸ばす必要が無いため、操縦者が第1選別搬送コンベア71に触れて怪我をすることを防止できるので、作業の安全性が向上するとともに、操縦者の手と接触して人参が損傷することを防止できるので、人参の商品価値が向上する。
【0046】
そして、前記受台72及び第1選別搬送コンベア71の下方に、受台72から人参を受けて機体後側下方に移送する引継シュータ77を取り付けることにより、第1選別搬送部Eが構成される。
【0047】
なお、図7で示すように、引継シュータ77の始端側(機体前側)に受台72と同じ形状の切欠部を形成し、引継シュータ77の切欠部に受台72を配置し、引継シュータ77と受台72とを回動軸73で操縦部フレーム10に取り付け、引継シュータ77と回動フレーム20との間に電動シリンダや油圧シリンダ、ターンバックルなどの伸縮部材78を取り付けて、引継シュータ77を角度調節自在に構成してもよい。
【0048】
上記構成によれば、圃場の状態等によって機体が傾斜しても、引継シュータ77の角度を調節して確実に人参を機体後側下方に移送させることができるので、人参が引き継ぎシュータ77に滞留することが防止されて作業能率が向上する。
【0049】
第1選別搬送部Eを上記のように構成したことによって、第1選別搬送コンベア71の搬送始端側が残葉処理コンベア63よりも下方に配置されるので、人参が残葉処理コンベア63に滞留することなく円滑に第1選別搬送コンベア引き継がれるので、作業能率が向上する。
【0050】
また、第1選別搬送コンベア71を構成する左右第2側壁66,66を前端部が後端部よりも上方に位置する前上がり傾斜姿勢に配置するとともに、第1選別搬送コンベア71の搬送終端部を操縦座席11の前端部の左右一側方に配置したことによって、第1選別搬送コンベア71の搬送面を操縦部フレーム10よりも上方に配置することができるので、操縦者は操縦座席11に着座したまま第1選別搬送コンベア71で搬送される人参を選別でき、作業能率が向上する。
【0051】
そして、受台72を第1選別搬送コンベア71の搬送終端部の下方に配置したことによって、第1選別搬送コンベア71から排出される人参を受台72に一時的に貯留することができるので、操縦者は搬送される人参の量や補助作業者の作業状態に合わせて後述する第2選別搬送コンベア99に移送される人参の量を調節することができるので、作業能率が向上するとともに、補助作業者が人参の選別ミスをすることを防止できるので、選別精度が向上する。
【0052】
なお、人参の搬送量が少ないときや搬送量の増減が少ないとき、あるいは補助作業者の選別作業速度が速いとき等は、受台72を常時下方に回動させておき、第1選別搬送コンベア71から排出された人参が受台72を経て、あるいは受台72に接触することなく引継シュータ77に移動する状態にしておくと、いっそう作業能率が向上する。
【0053】
さらに、受台72を張力の低い左右張圧スプリング74,74で張圧し、人参が一定重量以上載ると人参の重量で受台72が下方に回動する構成とすると、操縦者が受台72の操作を忘れたり、旋回時など操縦に専念する必要がある場合でも、受台72に積載容量以上の人参が排出されて操縦部フレーム10や左右一側のクローラ6Lの前方に落下することが防止できるので、落下の衝撃やクローラ6Lに踏まれることによって人参が傷付くことが防止されて人参の商品価値が向上するとともに、第2選別搬送コンベア99に人参が送り込まれず、補助作業者が作業を行えなくなり、作業能率が低下することが防止される。
【0054】
そして、受台72及び第1選別搬送コンベア71の下方に引継シュータ77を設けたことによって、機体の左右幅を広げることなく人参の搬送経路を構成することができるので、機体の左右幅が短くなり、コンパクト化を図ることができる。
【0055】
なお、図5で示すように、前記残葉処理部Dの残葉処理従動ローラ51の回転軸の機体内側端部に第1伝動スパーギア79を軸着し、前記左側壁49の第1伝動スパーギア79よりも前側に第1伝動スパーギア79に噛み合わせて駆動力を伝動する第2伝動スパーギア80と第1伝動スプロケット81を軸着した伝道シャフト82を取り付ける。また、前記第1選別駆動ローラ64の回転軸の機体外側端部に第2伝動スプロケット82を軸着し、該第2伝動スプロケット82と第1伝動スプロケット81との間に伝動チェーン83を無端状に巻回し、エンジン7の駆動力を残葉処理部Dから第1選別搬送部Eに伝動する伝動機構を構成する。
【0056】
上記伝動機構の各部材は、泥土や夾雑物の付着防止及び操縦者や補助作業者が作業中に接触することを防止するためのカバー(図示せず)内に配置する。
そして、図1〜図3、図9で示すように、前記操縦部Bの操縦部フレーム10の前側に、収容容器84のうち箱型等のコンテナ84aを複数載置可能な補助載置台85を機体上下方向に回動自在に設け、操縦部フレーム10の機体内側前部に、操縦者が第1選別搬送コンベア71で選別した人参のうち、食材として市販される人参には相応しくないが、野菜ジュース等の加工用として使用できるもの、例えば、表面に目立つ傷があるものや二股、極端な屈曲等異常な形状のもの(以下、B級品と記載)を補助載置台85に投入する機体左右他側方向で且つ下方に向かって屈曲したスロープ形状の移送シュータ86の投入口86aを設ける。さらに、該移送シュータ86の排出口よりも下方で且つ補助載置台85よりも上方に、移送シュータ86から排出される人参を複数のコンテナ84a…のうちいずれか一つに移動させる左右方向に回動自在な切換シュータ87を取り付ける。
【0057】
上記の構成により、操縦者が選別した人参のうち、B級品を操縦座席11に座ったままでも投入口86aに投入して移送シュータ86に移動させることができるので、作業能率が向上する。
【0058】
また、移送シュータ86を通じて補助載置台85に載置するコンテナ84a…に移送することができるので、第2選別搬送コンベア99に移動するB級品の数が減少するため、補助作業者が選別する人参の数が減り、選別精度が向上する。
【0059】
なお、図9で示すように、該切換シュータ87は操縦者が手で押して人参の入るコンテナ84aを切り換える構成とし、操縦部フレーム10の上端部よりも10〜20cm程度下方に配置すると、操縦者は操縦座席11に着座したまま切換シュータ87の切換操作を行うことができるので、作業能率が向上する。
【0060】
加えて、切換シュータ87が地面に対して略水平状態であるとき、切換シュータ87と補助載置台85との間にコンテナ84aを二段積みできる程度の間隔(60〜80cm)を空けておくと、コンテナ84aの積載量を増やすことができるので、コンテナ84aの積み下ろしの回数が少なくなり、作業者の労力が軽減される。
【0061】
さらに、図1で示すように、搬送部フレーム11の左右一側方で且つ引継シュータ77よりも機体前側に、加工用としても収穫不可能な人参、例えば腐っているものや折れているもの(以下、廃棄物)や茎葉部の切れ端等の夾雑物を左側のクローラ6Lの前方に向かって排出する機体左右一側方向で且つ下方に向かって屈曲したスロープ形状の排出シュータ88を取り付ける。
【0062】
上記の構成により、選別者が選別した廃棄物や夾雑物を排出シュータ87を通じて圃場に落下させ、左側のクローラ6Lの前方に排出することができるので、廃棄物や夾雑物をクローラ6Lで踏み潰して圃場への還元が早まる。
【0063】
また、廃棄物や夾雑物が第2選別搬送コンベア99に移動することを防止できるので、第2選別搬送コンベア99に移動する廃棄物の数が減少するため、補助作業者が選別する人参の数が減るとともに、夾雑物が取り除かれているため人参が見分けやすくなるので、選別精度が向上する。
【0064】
次に、第2選別搬送部Fの構成について説明する。
図1〜図7で示すように、前記引抜搬送装置24の搬送経路Rの下方で且つ引抜搬送装置24の左右方向に亘る前後第1搬送板89,89を回動フレーム20の機体左右一側に取り付け、該前後第1搬送板89,89の左右一側端部の前後間に前後搬送駆動スプロケット90,90を装着し、該前後搬送駆動スプロケット90,90の駆動軸を回転させる駆動モータ91を前側の第1搬送板89の前部に取り付ける。そして、該前後第1搬送板89,89の左右他側端部の前後間に前後第1テンションスプロケット92,92を回転自在に装着し、前後第1搬送板89,89の左右他側端部の前後外側で且つ前記第1選別搬送コンベア71の下方に前後第2搬送板93,93の基部を装着し、該前後第2搬送板93,93を端部側が基部側よりも上方に位置する後上がり傾斜姿勢に配置する。
【0065】
また、該前後第2搬送板93,93の左右他側端部の前後間で且つ第1選別搬送コンベア71の下方に前後第2テンションスプロケット94,94を回転自在に装着し、前記操縦部フレーム10の後方近傍で且つ前後第2搬送板93,93の左右他側端部の前後外側に前後第3搬送板95,95を機体上下方向に回動自在に取り付けるとともに、前後第3搬送板95,95の左右他側端部に前後搬送従動スプロケット96,96を回転自在に取り付ける。さらに、前記前後搬送駆動スプロケット90,90と前後第1テンションスプロケット92,92と前後第2テンションスプロケット94,94と前後搬送従動スプロケット96,96とに夫々前後伝動チェーン97,97を無端状に巻回し、該前後伝動チェーン97,97の前後間に複数の搬送ローラ98…を機体左右方向に等間隔を空けて配置することによって、引継シュータ77の移送終端部から人参を引き継いで機体左右一側から左右他側の収容部Hに搬送する第2選別搬送コンベア99が構成される。該第2選別搬送コンベア99は、前記回動フレーム20の左右一側端部から左右他側端部よりも機体外側に亘り、引抜搬送装置24の搬送経路Rの下方と第1選別搬送コンベア71の下方と操縦部フレーム10の後部近傍を通過させて配置する。また、該第2選別搬送コンベア99は、前記前後第2テンションスプロケット94,94を回動中心として搬送終端側を上下動させる。
【0066】
該第2選別搬送コンベア99の搬送始端側で且つ引抜搬送装置24が人参を挟持して搬送する搬送経路Rの下方は、挟持搬送中に茎葉部がちぎれて落下した人参が受け止められる落下物受部Pである。
【0067】
なお、前記前後第1搬送板89,89と前後第2搬送板93,93と前後第3搬送板95,95の上端部は、搬送ローラ98…の上端部よりも上下方向に高く構成すると、搬送中の人参が第2選別搬送コンベア99から落下することが防止できるので、人参が傷付くことが防止されて人参の商品価値が向上する。加えて、前後第1搬送板89,89と前後第2搬送板93,93と前後第3搬送板95,95の上端部を第2選別搬送コンベア99の搬送作用域上方に向かって折り曲げると、上記の人参の落下防止効果がさらに向上する。
【0068】
そして、前記前後第3搬送板95,95の前後間で且つ搬送領域の下面に受板100aを設け、該受板100aと前記回動フレーム20との間に第2選別搬送コンベア99の搬送終端側を上下回動させる伸縮自在な昇降シリンダ100を取り付ける。なお、該昇降シリンダ100は油圧シリンダでも電動シリンダでもエアシリンダでもよく、また他の伸縮部材に置き換えてもよい。
【0069】
また、後側の第3搬送板95の搬送終端側で且つ後述する補助作業座席105の近傍に、前記昇降シリンダ100を伸縮させる操作スイッチ101を設け、前後第3搬送板95,95の終端部に収容容器84のうち袋型のフレキシブルコンテナ84bを吊り下げる前後吊下げハンガー102,102を上下回動自在に取り付けることによって、第2選別搬送部Fが構成される。
【0070】
第2選別搬送部Fを上記のように構成したことによって、第2選別搬送コンベア99を構成する前後第2搬送板93,93を後上がり傾斜姿勢で第1選別搬送コンベア71の下方を横断させて配置したことによって、機体の左右幅を広げることなく第1選別搬送コンベア71と第2選別搬送コンベア99とを平面視で十字状に交差させることができるので、人参収穫機がコンパクトに構成される。
【0071】
また、第2選別搬送コンベア99の搬送始端部を引抜搬送装置24の搬送経路Rの下方に設けたことによって、引抜搬送装置24で挟持搬送中に人参が落下しても、第2選別搬送コンベア99の搬送始端側の落下物受部Pで人参を受けて収容部Hへ搬送することができるので、人参の選別を少なくとも第2選別搬送コンベア99では行えるため、収穫作業後に操縦者または補助作業者が落下した人参を拾い集めて選別を行う必要がなくなり、作業能率が向上する。特に、晩秋〜初冬の茎葉部が霜枯れして脆くなっている時期は、上記の効果がいっそう発揮される。
【0072】
そして、第2選別搬送コンベア99の搬送終端側の回動中心となる前後第2テンションローラ94,94を第1選別搬送コンベア71の下方に配置したことによって、第2選別搬送コンベア99の搬送終端側を上下回動させても第1選別搬送コンベア71に接触しない配置構成となるので、フレキシブルコンテナ84bの人参の収容量に応じて第2選別搬送コンベア99の搬送終端側を適確な高さに上下回動させることができ、作業能率が向上する。
【0073】
さらに、第2選別搬送コンベア99が操縦部フレーム10の後部に近接して配置されていることによって、操縦者は操縦座席11を機体後側に回動させると第2選別搬送コンベア99で搬送される人参の選別作業を行うことができるので、第2選別搬送コンベア99で搬送される人参の量が多くても補助作業者と共に選別することで選別精度を向上させられる。加えて、選別作業者が収容容器84の交換作業や第2選別搬送コンベア99の搬送終端側の上下調節を行っていても選別作業を行えるので選別精度が向上する。なお、一人作業、二人作業のいずれの場合でも、操縦者が第2選別搬送コンベア99で選別作業を行う場合は、変速操作レバー13を操作して機体の走行速度を低速にしておくと安全性が向上する。
【0074】
また、複数の搬送ローラ98…を左右方向に等間隔を空けて左右伝動チェーン97,97に装着したことによって、搬送ローラ98…同士の間隔部から人参に付着していた泥土や夾雑物を下方に落下させることができるので、操縦者や補助作業者が人参の状態を目視しやすくなり、選別精度が向上する。
【0075】
そして、後側の第3搬送板95の搬送終端側で且つ補助作業座席105の近傍に操作スイッチ101を設けたことによって、補助作業者は補助作業座席105に座ったまま第2選別搬送コンベア99の搬送終端側の上下高さを変更することができるので作業能率が向上するとともに、補助作業者は選別作業を中断する必要が無くなり、選別精度が向上する。
【0076】
なお、第1選別搬送コンベア71の搬送速度をS1、第2選別搬送コンベア99の搬送速度をS2とし、第2選別搬送コンベア99の搬送速度S2は第1選別搬送コンベア71の搬送速度S1と同速もしくは搬送速度S1よりも速く(S1≦S2)設定しておくと、第1選別搬送コンベア71で搬送される人参はゆっくりと進むので、操縦者は操縦しながらでも選別作業を行うことができ、補助作業者は第2選別搬送コンベア99で搬送される人参を選別することができるので、作業能率や選別精度が向上する。
【0077】
また、収容容器84のうち、コンテナ84aを用いて作物を回収する場合は、昇降シリンダ100を最も縮んだ状態にして第2選別搬送コンベア99の搬送終端側を回動フレーム20と略水平状態にすると、第2選別搬送コンベア99とコンテナ84aとの落差が小さくなるので、落下の衝撃で人参が傷付くことを防止できるので、人参の商品価値が向上する。
【0078】
次に、補助作業部Gの構成について説明する。
図1〜図4で示すように、前記第1選別搬送コンベア71の搬送始端側の左右他側で且つ第2選別搬送コンベア99の後方の回動フレーム20上に補助作業ステップ103を設け、該補助作業ステップ103の後部で且つ第1選別搬送コンベア71の近傍に支柱104を設け、該支柱104の上端部に補助作業座席105を回動自在に取り付ける。そして、前記補助作業ステップ103上で且つ補助作業座席105の前側に前記昇降シリンダ100を伸縮させる操作ペダル106を取り付けることによって、補助作業部Gが構成される。
【0079】
補助作業部Gを上記のように構成したことによって、補助作業者は補助作業座席105に座ったままでも、補助作業座席105を回動させて第1選別搬送コンベア71及び第2選別搬送コンベア99に対面することができるので、第1選別搬送コンベア71でも第2選別搬送コンベア99でも人参の選別作業を行うことができ、作業条件が変わっても能率的に作業を行うことができる。
【0080】
また、補助作業者一人で第1選別搬送コンベア71及び第2選別搬送コンベア99の両方で搬送される人参の選別作業を行うこともできるので、操縦者は機体の操縦に専念し、補助作業者は人参の選別作業に専念することにより、作業の安全性と選別精度が向上する。
【0081】
そして、補助作業者は操作ペダル106によって補助作業座席105に座ったまま第2選別搬送コンベア99の搬送終端側の昇降操作を足で行うことができるので、両手で選別作業を行っていても昇降操作を行えるので、選別精度や作業能率が向上する。
【0082】
なお、補助作業ステップ103の機体左右他側や左右一側で且つ第1選別搬送コンベア71と残葉処理コンベア53の下方の空間部には、第1選別搬送コンベア71及び第2選別搬送コンベア99で補助作業者が選別した人参を回収するコンテナ84aやフレキシブルコンテナ84b、あるいは交換用の空のコンテナ84aやフレキシブルコンテナ84bを複数個載置することができるので、選別した人参をまとめておくことができるとともに、載置台105に載置したコンテナ84aやフレキシブルコンテナ84bが満杯になった時、補助作業者がすぐに交換を行えるので、作業能率が向上する。
【0083】
次に、収容部Hの構成について説明する。
図1〜図4並びに図13、図14で示すように、前記回動フレーム20の機体左右他側の後側に前後支持プレート107,107を機体左右方向に取り付け、該前後支持プレート107,107の機体外側端部に載置部フレーム108を、左右回動軸108aを回動支点として機体左右方向に回動自在に取り付ける。そして、該載置部フレーム108の後下部に上下回動軸109aを設け、該上下回動軸109aの上部に収容容器84のうちコンテナ84aを積載する、あるいは前記前後吊下げハンガー102,102に吊り下げられるフレキシブルコンテナ84bの底部を載置支持する載置台109を上下回動自在に取り付ける。
【0084】
また、前記載置部フレーム108の後側の左右他側端部に後側支持プレート110を設け、前記上下回動軸109aの左右他側端部に回動プレート111の下端部を機体前後方向に回動自在に軸着するとともに、該回動プレート111の上部と後側支持プレート110の上部との間に伸縮自在な伸縮ロッド112を取り付ける。さらに、該伸縮ロッド112の機体後側の端部に伸縮ロッド112を伸縮させる操作ハンドル113を取り付けるとともに、前記載置台109の左右両側及び後側に収容容器84の落下を防止する落下防止板114を取り付けることによって、収容部Hが構成される。
【0085】
なお、伸縮ロッド112は一方の棒材の表面に螺子溝を刻み、他方の中空の棒材の内面に螺子溝を刻み、互いの棒体の螺子溝を合わせて操作ハンドル113で回転させて伸縮する構成としているが、電動シリンダや油圧シリンダに置き換えてもよく、その場合は操作ハンドル113をスイッチやレバーに置き換えてもよい。
【0086】
上記のように収容部Hを構成したことによって、収穫作業中は載置台109を機体左右他側に回動してコンテナ84aやフレキシブルコンテナ84bを載置させ、作業終了後は機体左右一側に載置台109を回動させて畳んでおくことができるので、機体の左右幅がコンパクトになり、機体を軽トラック等の搬送手段に載置しやすくできると共に、倉庫等の収容場所にスペースをとり過ぎることなく収容することができる。
【0087】
また、操作ハンドル113を操作して伸縮ロッド112を伸縮させ、載置台109を上下に回動させられるため、載置台109を下方に傾斜させて人参を満載したフレキシブルコンテナ84bを下方に移動させた後、機体を後進させることによってフレキシブルコンテナ84bを圃場に移動させることができるので、操縦者や補助作業者の労力が軽減されると共に作業能率が向上する。
【0088】
なお、収容部Hの載置部フレーム108を前後逆方向に取り付け、他の構成部品を上記構成例とは前後方向反対向きに設けることによって、載置台109を機体後側に下方傾斜させ、人参を満載したフレキシブルコンテナ84bを下方に移動させた後、機体を前進させることによってフレキシブルコンテナ84bを圃場に移動させることができるので、操縦者や補助作業者の労力が軽減されると共に、機体を後進させる必要がなくなるのでいっそう作業能率が向上する。
【0089】
以下、本件人参収穫機の別実施例を説明する。
図15で示すように、尻尾切装置42の尻尾切回転刃37に駆動力を供給する従動プーリ39に中央部に孔部を開けた軸受115を軸着し、該軸受115の端部に中央部に孔部を開けた中継プレート116を軸着する。そして該軸受け115と中継プレート116との孔部に前記尻尾切回転刃37の尻尾切回転軸38の端部を挿入し、該尻尾切回転軸38を軸受115の内部に設けるナット115aで固定する構成とする。
【0090】
上記構成により、軸受115の回転に連動して尻尾切回転軸38を取り付けた中継プレート116が回転することによって尻尾切回転刃37が回転するので、尻尾切回転軸38のブレが小さくなり摩耗が軽減されるので、尻尾切回転軸38の軸径が小径でも折れたり曲がったりすることを防止できる。
【0091】
図16で示すように、側面視で尻尾切回転刃37の回転方向に等間隔に下屈曲部37aを形成し、逆回転方向に等間隔に上屈曲部37bを形成する。
上記構成により、尻尾切回転刃37の回転方向に等間隔に下屈曲部37aを形成したことによって、尻尾切回転刃37を人参のひげ根に食い込ませることができるので、人参のひげ根が確実に切断されて人参の商品価値が向上すると共に、手作業でひげ根を処理する必要が無くなるので作業者の負担が軽減される。
【0092】
また、尻尾切回転刃37の逆回転方向に上屈曲部37bを等間隔に形成したことによって、尻尾切カバー36の内部に付着した泥土を尻尾切回転刃37で削ぎ落とすことができるので、人参のひげ根が尻尾切カバー36のスリット36a…を通過しなくなることが防止され、人参のひげ根が確実に切断されて人参の商品価値が向上すると共に、手作業でひげ根を処理する必要が無くなるので作業者の負担が軽減される。
【0093】
図17、図18で示すように、中央部にスリット117aを形成した正面視V字方の尻尾切カバー117の搬送方向前側及び側面に複数の孔部118…を形成する。
上記構成により、人参に付着した泥土が尻尾切カバー117に落下しても、泥土は搬送方向前側及び側面に形成した複数の孔部118…から尻尾切カバー117の外部に落下するので、尻尾切カバー117に泥土が溜まって人参のひげ根切断が妨げられることが防止され、作業能率が向上するとともにメンテナンス性が向上する。
【0094】
また、尻尾切カバー117の中央部にスリット117aを形成したことによって、中央部に落下した泥土がそのまま下方に落下するので、尻尾切カバー117に泥土が溜まって人参のひげ根切断が妨げられることが防止され、作業能率が向上するとともにメンテナンス性が向上する。
【0095】
図19(a)及び(b)に示すように、前後吊下げハンガー102,102の左右両端部に回動軸119を夫々通してフレキシブルコンテナ84bを吊り下げる左右吊下げフック120,120を回動自在に取り付け、該左右吊下げフック120,120よりも前後吊下げハンガー102,102の左右中央寄りに左右吊下げフック119,119の回動を制限する左右ロック部材121,121を左右方向に移動自在に取り付ける。
【0096】
上記構成により、人参が満載されたフレキシブルコンテナ84bを圃場に降ろす際は、左右ロック部材121,121を前後吊下げハンガー102,102の左右中央に向かって移動させ、左右吊下げフック120,120を下方に回動させることによってフレキシブルコンテナ84bを取り外すことができるので、操縦者及び補助作業者は簡単にフレキシブルコンテナ84bを圃場に降ろすことができ、作業能率が向上する。
【0097】
また、収穫作業中は左右吊下げフック120,120に吊り下げたフレキシブルコンテナ84bの吊り下げ部を左右ロック部材121,121で挟んでおくことができるので、機体の振動でフレキシブルコンテナ84bが左右吊下げフック120,120から外れることを防止できるので作業の安全性が向上すると共に、落下の衝撃で人参が傷付くことを防止できるので、人参の商品価値が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】根菜類収穫機の平面図
【図2】根菜類収穫機の左側面図
【図3】根菜類収穫機の右側面図
【図4】根菜類収穫機の背面図
【図5】引継シュータと第2選別搬送コンベアの要部平面図
【図6】根菜類収穫機の伝動図
【図7】根菜類収穫機の要部側面図
【図8】根菜類収穫機の別実施例の要部側面図
【図9】根菜類収穫機の別実施例の要部平面図
【図10】根菜類収穫機の別実施例の要部正面図
【図11】尻尾切装置の側面図
【図12】尻尾切装置の平面図
【図13】載置部の平面図
【図14】載置部の側面図
【図15】尻尾切装置の別実施例の要部平面図
【図16】尻尾切装置の別実施例の側面図
【図17】尻尾切装置の別実施例の正面図
【図18】尻尾切装置の別実施例の側面図
【図19】(a) 吊下げハンガーの吊り下げ状態の正面図 (b) 吊下げハンガーの非吊り下げ状態の正面図
【符号の説明】
【0099】
6L,6R 左右クローラ(左右一対の走行装置)
11 操縦座席
20 回動フレーム(フレーム)
24 引抜搬送装置
46,46 茎葉切断装置
53 残葉処理コンベア(残葉処理装置)
71 第1選別搬送コンベア
77 引継シュータ
84 収容部材
85 補助載置台
86 移送シュータ
86a 投入口(投入部)
87 切換シュータ
88 排出シュータ
99 第2選別搬送コンベア
109 載置台(載置部材)
B 操縦部
G 補助作業部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム(20)の下部に左右の走行装置(6L,6R)を設け、該フレーム(20)の左右一側に圃場から作物を引き抜き機体後方へ搬送する後上がり傾斜姿勢の引抜搬送装置(24)を設け、前記フレーム(20)の左右他側の前部に操縦者が搭乗する操縦座席(11)を備えた操縦部(B)を設け、前記引抜搬送装置(24)の搬送終端側に作物の茎葉部を切断する茎葉切断装置(46,46)を設け、該茎葉切断装置(46,46)の下方に、茎葉部を切断された作物を受けて機体後方に搬送すると共にこの作物の残葉を処理する残葉処理装置(53)を設け、該残葉処理装置(53)と前記操縦部(B)との間に、残葉処理装置(53)の後端部から作物を引き継いで操縦部(B)の横側に向けて搬送する機体前後方向姿勢の第1選別搬送コンベア(71)を設け、該第1選別搬送コンベア(71)の搬送終端部から作物を受けて機体後部へ移送する移送装置(77)を設け、該移送装置(77)の移送終端部下方に、前記第1選別コンベア(71)の下方及び操縦部(B)の後側を通過して機体左右他側の収容部(H)に向けて作物を搬送する第2選別搬送コンベア(99)の搬送始端部を配置し、該第2選別搬送コンベア(99)の後側で且つ前記第1選別搬送コンベア(71)の搬送始端部の横側の位置に補助作業者が搭乗する補助作業座席(105)を備えた補助作業部(G)を設けたことを特徴とする根菜類収穫機。
【請求項2】
前記操縦部(B)の前側に複数の収容部材(84)を載置する補助載置部(85)を設け、該補助載置部(85)に作物を移送する移送シュータ(86)の移送始端部となる投入部(86a)を前記操縦部(B)の側方に設け、該移送シュータ(86)の移送終端部に、作物を収容する収容部材(84)を選択する回動自在な切換シュータ(87)を設けたことを特徴とする請求項1記載の根菜類収穫機。
【請求項3】
前記引継シュータ(77)の前側で且つ移送シュータ(86)の側方の位置に不要な作物や夾雑物を左右いずれか一側の走行装置(6L,6R)の前方に排出する排出シュータ(88)を設けたことを特徴とする請求項2記載の根菜類収穫機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−124757(P2010−124757A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302921(P2008−302921)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】