説明

格子状溝蓋の取外し装置

【課題】ベアリングバーの間隔が異なる種々のグレーチングを簡単に取り外すことができるようにする。
【解決手段】格子状溝蓋の取外し装置10は、溝Dの側方に移動可能に設置されるフレーム20の下端部からグレーチングGの上側に延出させて溝Dの方向に所定間隔を空けて配置された一対の支持アーム30、30と、各支持アーム30、30の先端部に設けられてグレーチングGの複数のベアリングバーBの間の隙間から下方に進入させてクロスバーCに下側から係止させる一対のフック40、40とを備え、これら一対のフック40、40のうち少なくとも何れか一方を溝Dの方向に遊動可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側溝等の溝の上部に装着された格子状溝蓋を取外すための格子状溝蓋の取外し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、側溝等の溝の上部に装着されて溝の幅方向に延びる複数のベアリングバーが溝の方向に所定間隔を空けて等間隔に配置されるとともにこれらベアリングバーと交差する方向に延びるクロスバーが配置されたグレーチングを着脱するためのグレーチング着脱装置であって、溝の方向に所定間隔を空けて配置された一対のアーム部材と、両アーム部材の先端にねじにより取り付けられてグレーチングの格子間の隙間に進入可能な一対のフック部材と、両アーム部材の後端に取り付けられた把手部と、アーム部材の先端側寄りに下方に向けて延設された支持脚と、支持脚の下端に取り付けられたキャスタとを備えたグレーチング着脱装置が開示されている。このグレーチング着脱装置を用いて側溝に装着されたグレーチングを取り外すときには、先ず、把手部を上方に持ち上げて両アーム部材の先端のフック部材をベアリングバーの間の隙間に進入させ、両フック部材をクロスバーに下方から係止させる。次に、把手部を下方に押し下げることで、支持脚を支点としてフック部材に係止したグレーチングを持ち上げるようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−060994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、溝に装着したときの見栄えをよくするとともに、女性用のヒールの踵部分がベアリングバーの間に挟まることのないようにすることを目的として、複数のベアリングバーの間隔を狭くする等した種々のグレーチングが開発されている。このようなベアリングバーの間隔の異なるグレーチングを上述したグレーチングの着脱装置により取り外そうとすると、一対のアーム部材の先端に取り付けられたフック部材の間隔が一定であるために、何れか一方のフックがベアリングバーに引っ掛かって、両フック部材を同時にベアリングバーの間の隙間に進入させることができないことがあった。そこで、上記のグレーチング着脱装置においては、一対のアーム部材を溝の方向に並ぶように設置したときに、フック部材に溝の方向の長穴を形成することで、フック部材を支持アームに溝の方向に位置調整可能に取り付けるようにしている。しかし、このグレーチング着脱装置を用いて、ベアリングバーの間隔の異なる種々のグレーチングを取り外そうとすると、ベアリングバーの間隔の異なるグレーチングごとにフック部材を取り付けているねじを緩めてからフック部材を溝の方向に位置調整をしなければならなくて面倒であった。さらに、グレーチングはベアリングバーの間隔が精度良く作られているわけでないので、ベアリングバーの間隔が同じように作られたグレーチングを多数取り外そうとするときでも、一方のフックがベアリングバーに引っ掛かって、両フック部材を同時にベアリングバーの間の隙間から進入させることができずに、グレーチングごとにフック部材の間隔を調整しなければならないことがあった。そこで、本発明はこのような問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するため、側溝等の溝の上部に装着されて溝の幅方向に延びる複数のベアリングバーが溝の方向に所定間隔を空けて配置されるとともにこれらベアリングバーと交差する方向に延びるクロスバーが配置された格子状溝蓋を取外すための格子状溝蓋の取外し装置であって、溝の側方に移動可能に設置されるフレームから格子状溝蓋の上側に延出させて溝の方向に所定間隔を空けて配置された一対の支持アームと、各支持アームの先端部に設けられて複数のベアリングバーの間の隙間から下方に進入させてクロスバーに下側から係止させる一対のフックとを備えた格子状溝蓋の取外し装置において、一対のフックのうち何れか一方を溝の方向に遊動可能にしたことを特徴とする格子状溝蓋の取外し装置を提供するものである。
【0006】
上記のように構成した格子状溝蓋の取外し装置においては、一対の支持アームの先端部に設けられた一対のフックのうち何れか一方を溝の方向に遊動可能としたので、一対の支持アームの先端部の各フックを複数のベアリングバーの間の隙間から下方に進入させてクロスバーに下側から係止させる際に、他方のフックをベアリングバーの間の隙間から下方に進入できる位置としてから、溝の方向に遊動可能な一方のフックをベアリングバーの間の隙間から下方に進入できる位置に移動させることで、ベアリングバーの間隔が異なる格子状溝蓋を取り外すときであっても、容易に両フックをベアリングバーの間の隙間から下方に進入させる位置にすることができ、容易に両フックをベアリングバーの間の隙間から下方に進入させてクロスバーに下側から係止させることができるようになる。
【0007】
上記のように構成した格子状溝蓋の取外し装置においては、一対の両フックを溝の方向に遊動可能とするのが好ましく、このようにすれば、両フックをベアリングバーの間の隙間から下方に進入できる位置に予め合わせる必要が無く、溝の方向に遊動可能な両方のフックをベアリングバーの間の隙間から下方に進入できる位置に移動させることで、ベアリングバーの間隔が異なる格子状溝蓋を取り外すときであっても、さらに容易に両フックをベアリングバーの間の隙間から下方に進入させてクロスバーに下側から係止させることができるようになる。
【0008】
上記のように構成した格子状溝蓋の取外し装置においては、支持アームはフレームに対して回動可能に支持されて、支持アームをフレームに沿う位置に収納可能とするのが好ましく、このようにすれば、格子状溝蓋の取外し装置を使用しないときにはコンパクトに収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の格子状溝蓋の取外し装置の斜視図である。
【図2】図1の支持アームをフレームに沿う位置に収納した状態を示す斜視図である。
【図3】支持アームの先端部の一部拡大斜視図である。
【図4】格子状溝蓋の取外し装置を用いてグレーチングを取り外す手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明による格子状溝蓋の取外し装置の一実施形態を図面を用いて説明する。本発明に係る格子状溝蓋の取外し装置10は、側溝等の溝Dの上部に装着されて溝Dの幅方向に延びる複数のベアリングバーBが溝Dの方向に所定間隔を空けて配置されるとともにこれらベアリングバーBと交差する方向に延びる複数のクロスバーCが配置された格子状溝蓋であるグレーチングGを取外すためのものであり、溝Dの側方に移動可能に設置されるフレーム20の下端部からグレーチングGの上側に延出させて溝Dの方向に所定間隔を空けて配置された一対の支持アーム30、30と、各支持アーム30、30の先端部に設けられてグレーチングGの複数のベアリングバーBの間の隙間から下方に進入させてクロスバーCに下側から係止させる一対のフック40、40とを備え、これら一対のフック40、40のうち少なくとも何れか一方を溝Dの方向に遊動可能とした。以下に、この格子状溝蓋の取外し装置10について詳述する。なお、本実施形態で説明する格子状溝蓋のグレーチングGは、ベアリングバーBの厚みが7mmで、ベアリングバーBの間隔が28.3mmのものを用いて説明する。
【0011】
図1に示すように、格子状溝蓋の取外し装置10は、下側が開いて垂直に起立したコ字形のフレーム20を備えている。フレーム20の下端部には、一対の連結ブラケット21、21を介して一対の支持アーム30、30がフレーム20の前側で垂直方向に回動可能に取り付けられている。支持アーム30、30は、図2に示すように、垂直に起立したフレーム20に沿って収納される位置である収納位置と、図1に示すように、フレーム20から140°下方に回転した位置である使用位置との間で回動するようになっている。連結ブラケット21、21の上部には、支持アーム30、30を回り止めする係止ボルト26、26が設けられており、係止ボルト26、26は、使用位置に回転した支持アーム30、30の基端部に係止して支持アーム30、30を使用位置より回転しないようにする。フレーム20の上下方向の中間部には、支持アーム30、30を収納位置に係止させる係止ピン22、22が突設されている。また、連結ブラケット21、21の後部には、シャフト23を介して車輪24、24が回転可能に取り付けられており、連結ブラケット21、21の前部には、荷物を載置して運搬するための載置台25が設けられている。載置台25の左右両端には、支持アーム30、30を回転させるための切欠き25a、25aが形成されている。
【0012】
図1及び図2に示すように、一対の支持アーム30、30の先端部には、両支持アーム30、30を貫通する連結シャフト31が嵌合固定されており、この連結シャフト31を介して一対のフック40、40が取り付けられている。図3に示すように、各フック40は、本実施形態では厚さが6mmの板金部材よりなり、複数のベアリングバーBの間の隙間から下方に進入させたときにクロスバーCに下方から係止させるための切欠き41が形成されている。図3に示すように、各フック40は、連結シャフト31に対して回転可能かつ支持アーム30の外面と連結シャフト31の先端に嵌合固定された環状のストッパ32との間で連結シャフト31の延出方向に10mmの間隔で遊動可能となっている。なお、本実施形態においては、各フック40、40は、10mmの間隔で遊動可能となっているが、本発明はこの長さに限られるものでない。両支持アーム30、30が溝Dの方向に並んでいる状態では、各フック40、40は溝Dの方向に遊動可能となっている。また、支持アーム30、30には、フック40、40より後側にフック40、40を回り止めするための係止板33、33が固定されている。これら係止板33、33は、支持アーム30、30に対して直角に垂下する位置より回転しないようにして、グレーチングGを持ち上げたときにフック40、40の回転を止めることにより持ち上げられたグレーチングGを回動させないように安定させるものである。
【0013】
上述した格子状溝蓋の取外し装置10を用いたグレーチングGの取外しの手順について説明する。格子状溝蓋の取外し装置10は、不使用時で収納されているときには、支持アーム30、30をフレーム20に沿う収納位置にして、両フック40、40の切欠き41、41をフレーム20の係止ピン22、22に係止させている。この格子状溝蓋の取外し装置10を使用してグレーチングGを取り外す作業をするときには、図4の(a)に示すように、支持アーム30、30が収納位置にある状態の格子状溝蓋の取外し装置10を、グレーチングGを装着した溝Dの側方で両支持アーム30、30が溝Dの方向に並ぶ向きとなるように移動させる。次に、両フック40、40の係止ピン22、22に対する係止を外して、図4の(b)に示すように、支持アーム30、30の先端部をグレーチングGの上側となるように回動させる。このとき、支持アーム30、30の先端部のフック40、40は、グレーチングGのベアリングバーBに当たってベアリングバーBの間の隙間から下方に進入できないことがある。本発明に係る格子状溝蓋の取外し装置10においては、両フック40、40は溝Dの方向に遊動可能となっているので、フレーム20を溝Dの方向または溝Dの幅方向に揺動させると、フック40、40が複数のベアリングバーBの間の隙間から下方に進入可能な位置となり、フック40、40を複数のベアリングバーBの間の隙間から下方に落下させて進入させることができる。このように、両フック40、40は溝Dの方向に遊動可能となっているので、両フック40、40を溝Dの方向でベアリングバーBの間の隙間となる位置に予め位置調整をすることなく、格子状溝蓋の取外し装置10を溝Dの側方に設置することができる。なお、上述した作業の手順では、フレーム20を揺動させることでフック40、40をベアリングバーBの間の隙間から下方に進入可能な位置に移動させているが、支持アーム30、30の先端部をグレーチングGの上側となるように回動させてから、フレーム20を揺動させることなくフック40、40を直接溝Dの方向に移動させてもよい。
【0014】
次に、フレーム20を前後方向に移動させながら車輪24、24を支点にして後方に傾倒させることで、図4(c)に示すように、両フック40、40の切欠き41、41をクロスバーCに係止させる。フレーム20をさらに車輪24、24を支点にして後方に傾倒させると、両支持アーム30、30の基端部が係止ボルト26、26に係止し、支持アーム30、30は使用位置で回り止めされ、グレーチングGは梃子の原理により持ち上げられる。
【0015】
グレーチングGを水平方向に移動可能な高さまで持ち上げてから、フレーム20を後方に引いて移動させると、図4(d)に示すように、グレーチングGを溝Dから取り外すことができる。このとき、フレーム20の下端部に車輪24、24が設けられているので、フレーム20を軽い力で後方に移動させることができる。なお、格子状溝蓋の取外し装置10は、上述したグレーチングの取外し作業と同様に、グレーチングGを再び溝Dに装着することもできるものである。
【0016】
近年、溝に装着したときの見栄えをよくする等の目的により、ベアリングバーの厚み及びこれらの間隔が異なる多種多様なグレーチングが販売されている。これらの一例としては、ベアリングバーの厚みが5mmでこれらの間隔が25mm、同厚みが7mmでこれらの間隔が8mm、同厚みが5mmでこれらの間隔が10mm及び同厚みが3mmでこれらの間隔が9.5mmのグレーチングがある。従来のフックが溝の方向に遊動しない格子状溝蓋の取外し装置では、これら全てのグレーチングのベアリングバーの間の隙間から一対の支持アームの先端部の両フックを進入できるように、支持アームの間隔を設定するのは困難である。また、たとえ上述した種々のグレーチングでベアリングバーの間の隙間から両フックを進入できる支持アームの間隔を設定できたとしても、グレーチングはベアリングバーの間隔を精度良く製作されるものでないので、溝の方向に固定された両フックでは同時にベアリングバーの間の隙間から進入させることができないことがある。
【0017】
上記のように構成した格子状溝蓋の取外し装置10においては、グレーチングGを装着した溝Dの側方で両支持アーム30、30を溝Dの方向に並ぶ向きとなるように設置したときに、一対の支持アーム30、30の先端部に設けた一対のフック40、40を溝Dの方向に遊動可能としたので、フレーム20を溝Dの方向または溝Dの幅方向に揺動させる等して、フック40、40をベアリングバーBの間の隙間から下方に進入できる位置に移動させることができるようになる。これにより、ベアリングバーBの間隔の異なる種々のグレーチングGを取り外すときであっても、容易に両フック40、40をベアリングバーBの間の隙間から下方に進入させる位置にすることができ、容易に両フック40、40をベアリングバーBの間の隙間から下方に進入させてクロスバーCに下側から係止させることができるようになる。
【0018】
また、従来技術で説明したグレーチング着脱装置では、一対のフックは一対のアームにねじにより溝の方向に移動可能に取り付けられており、ベアリングバーの間隔が異なるときには、ねじを緩めて各フックを溝の方向に位置調整させるようにしているが、本発明に係る格子状溝蓋の取外し装置10は、各フック40、40が、溝Dの方向に遊動可能であるので、フレーム20を揺動させる等してドライバー等の工具を用いることなく、フック40、40をベアリングバーBの間の隙間から下方に進入できる位置に移動させることができるので、従来の格子状溝蓋の取外し装置と比較して、簡単にベアリングバーBの間隔が異なるグレーチングGを取り外すことができるようになる。
【0019】
なお、本実施形態の格子状溝蓋の取外し装置10は、両フック40、40が溝Dの方向に遊動可能となっているが、何れか一方のフック40を遊動可能としてもよい。何れか一方のフック40を溝Dの方向に遊動可能とし、他方のフック40を溝Dの方向に遊動しないようにしたときには、遊動しない他方のフック40をベアリングバーBの間の隙間から下方に進入可能な位置としてから、フレーム20を溝Dの方向または溝Dの幅方向に揺動させる等して一方のフック40をベアリングバーBの間の隙間から下方に進入できる位置に移動させてもよい。この場合には、一方のフック40をベアリングバーBの間の隙間から下方に進入可能な位置とする必要があるが、上述したように、ベアリングバーBの間隔の異なる様々なグレーチングGに対応することが可能となる。
【0020】
上記のように構成した格子状溝蓋の取外し装置10においては、支持アーム30、30は連結ブラケット21、21を介してフレーム20に対して回動可能に支持されていて、支持アーム30、30をフレーム20に沿う位置に収納可能であるので、格子状溝蓋の取外し装置10を使用しないときには支持アーム30、30をフレーム20に沿うように収納位置にすることでコンパクトに収納することができる。
【符号の説明】
【0021】
10…格子状溝蓋の取外し装置、20…フレーム、30…支持アーム、40…フック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側溝等の溝の上部に装着されて前記溝の幅方向に延びる複数のベアリングバーが前記溝の方向に所定間隔を空けて配置されるとともにこれらベアリングバーと交差する方向に延びるクロスバーが配置された格子状溝蓋を取外すための格子状溝蓋の取外し装置であって、
前記溝の側方に移動可能に設置されるフレームから前記格子状溝蓋の上側に延出させて前記溝の方向に所定間隔を空けて配置された一対の支持アームと、
前記各支持アームの先端部に設けられて前記複数のベアリングバーの間の隙間から下方に進入させて前記クロスバーに下側から係止させる一対のフックとを備えた格子状溝蓋の取外し装置において、
前記一対のフックのうち何れか一方を前記溝方向に遊動可能としたことを特徴とする格子状溝蓋の取外し装置。
【請求項2】
請求項1に記載の格子状溝蓋の取外し装置において、
前記一対の両フックを前記溝方向に遊動可能としたことを特徴とする格子状溝蓋の取外し装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の格子状溝蓋の取外し装置において、
前記支持アームは前記フレームに対して回動可能に支持されて、前記支持アームを前記フレームに沿う位置に収納可能としたことを特徴とする格子状溝蓋の取外し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−106185(P2011−106185A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263258(P2009−263258)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000213231)株式会社中部コーポレーション (35)
【Fターム(参考)】