栽培施設
【課題】作物を栽培する栽培温室において、栽培温室内の温度や湿度や炭酸ガス濃度を検出して、栽培温室内の環境制御をするものがある。その栽培温室は、栽培温室全体の環境制御をするものであって、栽培温室内の一部分の作物の生育が遅れたり、徒長したり、病気になったりした場合には、その一部の作物の異変によって栽培温室全体に影響を及ぼし、適切な作物の栽培が行なえなくなるような事態が発生する恐れがあった。
【解決手段】栽培温室2を複数の栽培ゾーンZ1〜Z6に区分けし、該各栽培ゾーンZ1〜Z6毎に栽培制御する栽培制御手段C1と各栽培ゾーンZ1〜Z6別に栽培情報を蓄積する栽培情報蓄積手段C2と各栽培ゾーンZ1〜Z6で収穫された作物を各栽培ゾーンZ1〜Z6別に選別した選別情報を蓄積する選別情報蓄積手段C4とを設けた栽培施設としたものである。
【解決手段】栽培温室2を複数の栽培ゾーンZ1〜Z6に区分けし、該各栽培ゾーンZ1〜Z6毎に栽培制御する栽培制御手段C1と各栽培ゾーンZ1〜Z6別に栽培情報を蓄積する栽培情報蓄積手段C2と各栽培ゾーンZ1〜Z6で収穫された作物を各栽培ゾーンZ1〜Z6別に選別した選別情報を蓄積する選別情報蓄積手段C4とを設けた栽培施設としたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苺やトマト等の作物を栽培する栽培施設に関するものである。
【背景技術】
【0002】
作物を栽培する栽培温室において、栽培温室内の温度や湿度や炭酸ガス濃度を検出して、栽培温室内の環境制御をするものがある。
【特許文献1】特開平8−66126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の栽培温室は、栽培温室全体の環境制御をするものであって、栽培温室内の一部分の作物の生育が遅れたり、徒長したり、病気になったりした場合には、その一部の作物の異変によって栽培温室全体に影響を及ぼし、適切な作物の栽培が行なえなくなるような事態が発生する恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1記載の発明は、栽培温室2を複数の栽培ゾーンZ1〜Z6に区分けし、該各栽培ゾーンZ1〜Z6毎に栽培制御する栽培制御手段C1と各栽培ゾーンZ1〜Z6別に栽培情報を蓄積する栽培情報蓄積手段C2と各栽培ゾーンZ1〜Z6で収穫された作物を各栽培ゾーンZ1〜Z6別に選別した選別情報を蓄積する選別情報蓄積手段C4とを設けた栽培施設としたものである。
【0005】
従って、栽培温室2を複数の栽培ゾーンZ1〜Z6に区分けして該各栽培ゾーンZ1〜Z6毎に栽培制御手段C1によって栽培制御するので、各区分けされた栽培ゾーンZ1〜Z6の個々の栽培状態や栽培環境に応じて最適な栽培が行なえて、一部の作物の異変によって栽培温室2全体が影響を受けるような従来の課題を解消でき、栽培温室2全体の作物の収量を増加させ且つ品質を向上させることができる。また、各栽培ゾーンZ1〜Z6別に栽培情報を蓄積する栽培情報蓄積手段C2と各栽培ゾーンZ1〜Z6で収穫された作物を各栽培ゾーンZ1〜Z6別に選別した選別情報を蓄積する選別情報蓄積手段C4とを設けているので、収穫して出荷する作物の正確な選別情報及び栽培情報を消費者に提供することもできる。
【0006】
請求項2記載の発明は、蓄積された各栽培ゾーンZ1〜Z6別の選別情報に基づいて、各栽培ゾーンZ1〜Z6毎の栽培制御を補正する栽培制御補正手段C5を設けた請求項1記載の栽培施設としたものである。
【0007】
従って、請求項1記載の発明の作用に加えて、蓄積された各栽培ゾーンZ1〜Z6別の選別情報に基づいて、各栽培ゾーンZ1〜Z6毎の栽培制御を補正する栽培制御補正手段C5を設けたので、各栽培ゾーンZ1〜Z6毎の栽培情報と収穫物の収量情報データを逐次蓄積し、最適な栽培管理制御の基礎データの蓄積を行ない、蓄積された各栽培ゾーンZ1〜Z6別の選別情報に基づいて、最良の栽培環境を逐次求めて各栽培ゾーンZ1〜Z6毎の栽培制御を補正して、品質及び収量が最大となるようにすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の栽培施設によれば、栽培温室2全体の作物の収量を増加させ且つ品質を向上させることができ、収穫して出荷する作物の正確な選別情報及び栽培情報を消費者に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一実施の形態を図面に基づいて、詳細に説明する。
1は栽培施設であって、大型の栽培温室2と制御室3と選別室4とによって構成されている。
【0010】
栽培温室2には、中央に通路5を設け、該通路5の両側に通路側カーテン6aと間仕切り用カーテン6bとで仕切られた6つの栽培ゾーンZ1〜Z6が設けられている。また、各通路側カーテン6aと各間仕切り用カーテン6bは、必要に応じて上方に巻き上げて保持できる構成となっている。特に、各通路側カーテン6aは、必要に応じて上方に巻き上げて、作業台車7や防除ロボット8や作業者が自由に出入りできる構成となっている。尚、各間仕切り用カーテン6bは、上方に巻き上げて、例えば2つの栽培ゾーンを一つにしたりして栽培ゾーンの数を変更できるようになっている。
【0011】
各栽培ゾーンZ1〜Z6には、複数列の栽培ベッド9…が設けられており(実施例では、図1では各栽培ゾーンZ1〜Z6毎に4列配置した例を示し、図2では各栽培ゾーンZ1〜Z6毎に6列配置した例を示している。尚、施設の広さに応じて何列設けてもよい。)、該栽培ベッド9…間には作業通路10…が設けられている。また、暖房用通風口11と炭酸ガス供給口12と栽培ゾーン内の温度や湿度や炭酸ガス濃度や日射量を検出して制御室3の管理用コンピューター13にデータを送るセンサ14と駆動機構15aにより開閉される屋根部に設けられた換気窓15と駆動機構16aにより開閉される遮光カーテン16が設けられている。
【0012】
制御室3には、各栽培ゾーンZ1〜Z6の各栽培ベッド9…に養液を供給する養液供給装置17が設けられており、各栽培ゾーンZ1〜Z6毎に栽培制御する管理用コンピューター13の栽培制御手段C1にて養液供給制御を行なっている。また、各栽培ゾーンZ1〜Z6の暖房用通風口11に個別に暖房風を送って、各栽培ゾーンZ1〜Z6毎に個別に暖房できる暖房機(ボイラー)18が設けられている。また、各栽培ゾーンZ1〜Z6の炭酸ガス供給口12に個別に炭酸ガスを送って、各栽培ゾーンZ1〜Z6毎に個別に炭酸ガスを供給できる炭酸ガス発生器19が設けられている。そして、各栽培ゾーンZ1〜Z6の各センサ14…からの情報(各栽培ゾーン内の温度や湿度や炭酸ガス濃度や日射量)を所定時間毎(例えば、1分毎)に検出してデータを管理用コンピューター13の栽培情報蓄積手段C2にて蓄積し、また、養液供給装置17による各栽培ゾーンZ1〜Z6の栽培ベッド9…への養液供給情報データを栽培情報蓄積手段C2にて逐次蓄積すると共に、養液供給装置17や暖房機(ボイラー)18や炭酸ガス発生器19や換気窓15と遮光カーテン16の開閉等の作動を各栽培ゾーンZ1〜Z6の各センサ14…からの情報(各栽培ゾーン内の温度や湿度や炭酸ガス濃度や日射量)に基づいて管理用コンピューター13によって各栽培ゾーンZ1〜Z6別に栽培制御手段C1にて制御している。
【0013】
選別室4には、収穫物選別装置20が設けられている。
収穫物選別装置20には、前記各栽培ゾーンZ1〜Z6に対応して、各栽培ゾーンZ1〜Z6で収穫した収穫物Rを貯留する6つの荷受タンクTN1〜TN6が設けられており、作業者は各栽培ゾーンZ1〜Z6で収穫した収穫物Rを作業台車7で運んできて、各栽培ゾーンZ1〜Z6に対応する各荷受タンクTN1〜TN6に入れる。具体的に謂うと、栽培ゾーンZ1の収穫物RはタンクTN1に入れ、栽培ゾーンZ2の収穫物RはタンクTN2に入れ、栽培ゾーンZ3の収穫物RはタンクTN3に入れ、栽培ゾーンZ4の収穫物RはタンクTN4に入れ、栽培ゾーンZ5の収穫物RはタンクTN5に入れ、栽培ゾーンZ6の収穫物RはタンクTN6に入れる。
【0014】
各タンクTN1〜TN6の何れか選択した排出口から排出された収穫物Rは、収穫物搬送経路21を経て、収穫物の大きさを判別する等級センサ22の下方を通過し、選別コンベア23にて移動する過程で選別制御手段C3にて等級センサ22にて判別されたサイズに基づいてLサイズの貯留部24L・Mサイズの貯留部24M・Sサイズの貯留部24Sに分別される。
【0015】
作業者は、各貯留部24L・貯留部24M・貯留部24Sから収穫物Rを取出して、箱搬送ベルト25にて搬送される箱B内にサイズ別に入れて封緘する。そして、プリンタ26により箱Bに等級及び栽培ゾーンデータが印字され、出荷される。
【0016】
27は選別制御手段C3を設けた選別制御装置であって、等級センサ22で判別されたサイズに基づいてLサイズの貯留部24L・Mサイズの貯留部24M・Sサイズの貯留部24Sに分別するように選別手段Uを作動させると共に、タンクTN1〜TN6のうちの何れのタンクの排出口が開かれて選別中であるかを認識してプリンタ26を作動させ、プリンタ26により箱Bに等級及び栽培ゾーンデータを印字させる制御を行なう。また、タンクTN1〜TN6のうちの何れのタンクの排出口が開かれて選別中であるかを検出するタンク認識センサS1と等級センサ22の選別データにより、各タンクTN1〜TN6には各等級L・M・Sの収穫物が何個あったかを集計して、制御室3の管理用コンピューター13にデータを送り、各栽培ゾーンZ1〜Z6で収穫された作物を各栽培ゾーンZ1〜Z6別に選別した選別情報を管理用コンピューター13の選別情報蓄積手段C4にて蓄積している。
【0017】
従って、管理用コンピューター13は、各栽培ゾーンZ1〜Z6毎の栽培情報と収穫物の収量情報を一元管理することができ、出荷する箱B単位で正確な栽培情報を消費者に提供することができる。
【0018】
また、管理用コンピューター13は、各栽培ゾーンZ1〜Z6毎に栽培管理するシステムになっているので、各栽培ゾーンZ1〜Z6毎に養液供給装置17による適正な養液供給制御を行なえ、また、各栽培ゾーンZ1〜Z6毎に温度や湿度や炭酸ガス濃度や日射量の適正な制御を行えて、栽培温室全体での収穫物Rの品質向上及び収穫量の増加が行える。
【0019】
更に、各栽培ゾーンZ1〜Z6毎の栽培情報と収穫物の収量情報データを逐次蓄積しておくことにより、最適な栽培管理制御の基礎データの蓄積が行なわれ、以後の栽培管理制御に役立てることができる。即ち、蓄積された各栽培ゾーンZ1〜Z6別の選別情報に基づいて、最良の栽培環境を逐次求めて各栽培ゾーンZ1〜Z6毎の栽培制御を補正する栽培制御補正手段C5を管理用コンピューター13に設けて、品質及び収量が最大となるように栽培制御を補正して行く。
【0020】
細霧発生装置で細霧を発生させて栽培温室内を冷房させる技術(細霧冷房)は公知であるが、換気窓15と遮光カーテン16を閉めたままで細霧冷房をすると、細霧による急激な過湿状態となり、栽培植物の生理(生育)に悪影響を及ぼしてしまうという課題があった。そこで、該課題を解決する為に、図5は栽培ゾーンZ1〜Z6毎に細霧発生装置を設けて細霧冷房を行なう場合(又は、栽培温室全体を細霧冷房する場合)のフロー図を示し、細霧発生装置による細霧冷房を開始する際に、細霧冷房装置を運転開始する操作(ON)により、自動的に換気窓15を開き作動させ且つ遮光カーテン16を半開き状態にしてから後に、細霧冷房装置による細霧発生が開始されるように制御する。すると、換気窓15が開き且つ遮光カーテン16が半開き状態になってから、細霧冷房装置による細霧発生が開始されるので、栽培温室内の湿度が急激に過湿状態になることが防止され、栽培植物の生理(生育)に悪影響を及ぼすことがなく、適切な細霧冷房が行なえて、栽培温室内の温度を下げることができる。
【0021】
次に、栽培ベッド9の構成を詳述する。
栽培ベッド9…は、栽培ゾーンZ1〜Z6内に通路5に直交する方向に配置された長い形状をしており、パイプ材にて構成された高設架台30上に鋼板製支持枠31を配置し、該鋼板製支持枠31に栽培培地32を載せた構成となっている。
【0022】
鋼板製支持枠31は下部を排水用の溝部31aとし、中途部に左右段部31b・31bを設け、上端部の左右には外方に向けて湾曲した円弧面部31c・31cが設けられている。また、排水用の溝部31aの左右側壁面には貫通孔31dが多数設けられており、排水用の溝部31aには自由に空気が出入りできて溝部31aの湿度が高くならない風通しの良い構成となっている。
【0023】
中途部の左右段部31b・31bにエキスパンドメタル(帯鋼より構成される網状の板)33を載置し、該エキスパンドメタル33の上に不織布よりなる水耕シート34を敷き、その中にロックウールよりなる栽培培地32を載置している。
【0024】
そして、上端部の左右円弧面部31c・31cは、栽培培地32の左右両側より垂れ下がるように設けた水耕シート34を下方より受けて、該水耕シート34が緩やかな円弧状面を形成するように作用する。
【0025】
35は栽培培地32上面に配置されたビニール製の灌水用パイプであって、所定間隔に小さな孔が形成されており、栽培培地32に2列に植えられた苺の苗に養液供給装置17から供給される養液を灌水する構成となっている。
【0026】
苺の苗は苺がなる方向が決まっているので、栽培培地32に苺の苗を植えるときに、苺が栽培培地32の外側方に向けてなるように植える。
すると、苺は栽培培地32の左右両外側に垂れ下がるようにして実る。この時、鋼板製支持枠31の上端部の左右円弧面部31c・31cにて水耕シート34が下方より受けられて、水耕シート34が緩やかな円弧状面を形成して栽培培地32の左右両側で下方に垂れ下がっているので、苺のなっている茎は、この緩やかな円弧状面に受けられているから折れたり傷ついたりすることが防止されて、苺は良好に成育し良質の苺を収穫することができる。
【0027】
特に、鋼板製支持枠31には排水用の溝部31aが設けられており、栽培培地32の排水性は良く、しかも、溝部31aの左右側壁面には貫通孔31dが多数設けられており、排水用の溝部31aには自由に空気が出入りできて溝部31aの湿度が高くならない風通しの良い構成となっているので、苺の苗の根が根腐れをおこすことを防止でき、適切な苺苗の栽培が行なえる。
【0028】
次に、種籾等の種子消毒設備について説明する。
種子消毒設備は、前工程から後工程の順に温湯消毒装置X、種子冷却装置Y、乾燥装置Zを順次設けている。温湯消毒装置Xは、箱型の温湯消毒槽101を設け、温湯消毒槽101の上方には多数の種子バケット102を循環移送する循環移送装置103を設けている。尚、前記温湯消毒槽101は、11個の種子バケット102を連ねて収容できる構成となっている。また、種子バケット102には、所定量ごとに種子を収容する網状の種子袋Pを入れるようになっている。
【0029】
循環移送装置103は移送始端側にあって多数の孔を形成する種子バケット102を下降させて温湯消毒槽101内の温湯に浸漬させる下降装置103dと、温湯消毒槽101内を浸漬した状態で種子バケット102を移送する移送装置103aと、移送終端側にあって温湯消毒槽101内を浸漬した種子バケット102を上昇させる上昇装置103bと、上昇装置103bで上昇させた種子バケット102を下降装置103dまで戻す戻し装置103cとを備えている。
【0030】
移送装置103aは、種子バケット102の上端に設けた縁部102aを左右下側から受ける案内レール部104を備え、移送始端部には種子バケット102を移送させるためのチェン式の移送コンベア105を左右に設けている。移送コンベア105は、周回経路の適宜位置に種子バケット102を移送させる押し用突起105aを備え、該押し用突起105aが種子バケット102の縁部の左右に固着した左右方向の固着軸102bを移送方向に押すことで当該種子バケット102を移送し、移送下手側の種子バケット102が順次移送上手側の種子バケット102に押されて温湯消毒槽101内で種子バケット102が移送されていく構成となっている。
【0031】
上昇装置103bは、案内レール部104の終端(移送終端)にある種子バケット102の固着軸102bが引っ掛かる持上げ用突起106aを備えるチェン式の上昇コンベア106を左右に設けている。従って、該上昇コンベア106の駆動により、案内レール部104の終端(移送終端)にある種子バケット102の固着軸102bが持上げ用突起106aに持上げられ、種子バケット102が上昇する構成となっている。上昇コンベア106は、持上げ用突起106aが固着軸102bに引っ掛かる上昇始端位置から種子バケット102を上昇させるにつれて移送装置103aの移送方向に移動させる斜めの移動経路(周回経路)を備えた側面視で三角形状の周回経路で周回する。そして、前記斜めの移動経路の途中で種子バケット102を反転させる反転カム107を左右に設けており、種子バケット102の上昇で前記反転カム107が種子バケット102の縁部102aにおける固着軸102bの一方側(移送装置103aの移送方向側、種子冷却装置Y側)に上側から接触して押し下げることにより、固着軸102bを支点に種子バケット102をその上部の開口部が種子冷却装置Y側に向くように反転させ、種子バケット102内の種子袋Pを種子冷却装置Yの冷却バケット108へ排出する構成となっている。また、温湯消毒槽101の上端から反転カム107の位置にかけて、上昇あるいは反転する種子バケット102から垂れ落ちる温湯を温湯消毒槽101へ案内するガイド板109を設けている。このガイド板109により、種子バケット102から垂れ落ちる温湯を温湯消毒槽101へ戻して温湯消毒槽101内の熱の放出を抑えると共に、前記温湯が種子冷却装置Yの冷却槽110に垂れ落ちることによる冷却効率の低下を防止できる。
【0032】
戻し装置103c及び下降装置103dは、種子バケット102の固着軸102bが引っ掛かる搬送用突起111aを備えるチェン式の戻しコンベア111を左右に備えて構成されている。尚、前記搬送用突起111aは、戻しコンベア111の周回方向の前後に対向して配置され、前後の突起111aで固着軸102bを挟むようにして保持する構成となっている。従って、上昇装置103bの上昇コンベア106でその上端部に上昇した種子バケット102を、前記戻しコンベア111が、受け継いで移送装置103aの移送始端側に横移動した後、下降させてその下降経路の途中の種子袋供給位置rで待機させる。この種子袋供給位置rで、種子バケット102は温湯消毒槽101の上方に位置しており、作業者が当該種子バケット102に種子袋Pを供給するようになっている。そして、移送装置103aが作動して移送始端部に種子バケット102を収容するスペースができると、戻しコンベア111を作動させて前記種子袋供給位置rにある種子バケット102を下降させ、種子バケット102を戻しコンベア111の下端から温湯消毒槽101へ落下して供給する。尚、種子袋供給位置rで待機する種子バケット102は、下部の前側が温湯消毒槽101に取り付けたガイド112に接触し、上部の開口部が前側に向くように傾く。これにより、作業者が種子バケット102に種子(種子袋P)を容易に供給できる。更に、種子バケット102が傾いている分、種子バケット102が温湯消毒槽101の温湯に浸されない高さで且つ当該種子バケット102の前記開口部の高さを極力低く設定することができるため、種子バケット102への種子(種子袋P)の供給が容易である。
【0033】
また、種子袋供給位置rにある種子バケット102を下降させて戻しコンベア111の下端から温湯消毒槽101へ落下するとき、種子バケット102の縁部102aが案内レール部104に衝突することにより騒音が発生したり衝撃で縁部102aを変形させるおそれがある。そこで、種子バケット102の縁部102aが案内レール部104に衝突する前に種子バケット102の底部が温湯消毒槽101の底面に接触するよう、温湯消毒槽101の底面の一部に隆起させた隆起部を設け、該隆起部に落下する種子バケット102の底部が先ず接触する構成とすれば、衝突する部分が水中であるので衝撃音を抑えられ、また縁部102aの変形を防止して循環移送装置103による種子バケット102の移送の適正化が図れる。
【0034】
尚、移送装置103aは複数の種子バケット102を同時に間欠的に移送していくのに対して、戻し装置103c及び下降装置103dは単一の種子バケット102を種子袋供給位置rまで連続的に移送する構成となっている。従って、戻し装置103c及び下降装置103dの移送速度が移送装置103aの移送速度より速く設定されており、空の種子バケット102の数を減らすことにより、コストダウンが図れると共に、温湯消毒槽101の上方の空の種子バケット102の数が少ないため、作業者が温湯消毒槽101内の消毒状況や運転状況を視認するときに空の種子バケット102が邪魔になりにくい。
【0035】
また、移送装置103aで間欠的に移送される種子バケット102の移送は、移送中の時間より移送停止状態の時間の方が長くなるように設定されている。従って、温湯消毒槽101内の後述する温水噴出口113の上方に種子バケット102を長く滞留させることができ、種子の殺菌効果を高めることができる。また、移送装置103aの移送停止時間を長くすることで、これに連動する上昇装置103b及び下降装置103dの停止時間を長く設定することができるので、種子袋供給位置rでの種子バケット102の停止時間を長く設定でき、停止している種子バケット102に種子(種子袋P)を容易に供給できる。また、前記移送装置103aの移送停止時間は調節手段により変更できる構成となっており、この移送停止時間の変更により同一の種子バケット102が温湯消毒槽101に浸漬される総時間を変更できる。従って、種子の品種に応じて種子の消毒時間を変更することができる(例えば、うるち米の種籾は10分間浸漬し、もち米の種籾は6分間浸漬する等)。これにより、移送装置103aの移送中の移送速度を変えずに容易に浸漬時間を変えることができる。尚、移送装置103a、上昇装置103b、戻し装置103c及び下降装置103dは、共通の駆動源(モータ)により作動する。
【0036】
また、種子消毒作業中に装置の故障や点検等のために非常停止したときは、その非常停止時間を計測して前記の消毒時間に加算する制御がなされる。従って、非常停止した分、移送装置103aで間欠移送の停止時間が短くなる。このとき、非常停止中に設定の消毒時間に達した場合は、ランプ等の警報手段により警報する。よって、種子を必要以上に長く温湯に浸漬することにより、種子割れ等の種子の損傷を防止できる。
【0037】
温湯消毒槽101内の底部には所定間隔毎に温水噴出口113を配設し、間欠移送されながら停止している種子バケット102の停止位置下方に温水噴出口113を位置させ、種子バケット102に向けて温水を噴出し、温水が種子バケット102の孔を通過し網状の種子袋Pに収容する種子(種籾)に作用する構成としている。なお、温湯消毒槽101の底部を前後方向中間部に向けて下り傾斜に構成し、中間部に排水溝114を構成している。
【0038】
温湯消毒槽101の後工程には供給シュート115を介して種子冷却装置Yを設けている。この種子冷却装置Yには、供給シュート115の後側に前後方向に長い種子冷却槽110を設け、この種子冷却槽110には前側から後側に向けて複数の冷却バケット108を設けている。冷却バケット108は多数の孔を形成し、左右方向の軸108aにより横軸心回動自在に支持している。そして、冷却バケット108が軸108aを軸心に回動反転すると冷却バケット108内に収容する種子袋Pが次の冷却バケット108に収容される構成である。尚、冷却バケット108は、反転時に小さく2度回動して種子袋Pの排出を確実に行うようにしている。冷却槽110内には各冷却バケット108の収容部ごとに槽内を仕切る仕切り壁116を設けており、この仕切り壁116は種子の排出側(排出シュート117側)のものほど高くなっている。そして、冷却槽110に新たな水を供給する冷却用給水口118が種子冷却槽110内において種子の排出側(排出シュート117側)の端部の位置で給水する構成となっており、冷却用給水口118からの冷却水は冷却槽110内において仕切り壁116で仕切られる前記排出側の区画から順次供給されていくことになる。
【0039】
尚、種子バケット102が上昇装置103bで上昇して反転カム107で反転する直前に到達したことをセンサで検出すると、最も温湯消毒装置Xに近い冷却バケット108が反転してから元に戻り、その後種子バケット102が上昇して反転カム107で反転する構成となっている。これにより、種子バケット102から冷却バケット108に種子を供給する直前に当該冷却バケット108の種子を次の冷却バケット108に供給することができ、冷却バケット108による種子の冷却時間を長くすることができて冷却効果を高めることができる。
【0040】
また、種子バケット102の容積より冷却バケット108の容積が大きく設定されている。よって、種子バケット102の容積が小さいので、温湯消毒槽101内の種子バケット102が供給されない不要な部分を小さくして温湯を効率良く使用できる。また、冷却バケット108の容積が大きいので、後述する空気噴出口119からの空気により種子の攪拌が容易になり、冷却効果が高まる。
【0041】
また、冷却槽110の冷却バケット108の下方には、空気噴出管120をそれぞれ設け、ブロワ121により空気噴出口119に空気を供給し、浸漬中の冷却バケット108に向けて空気を噴出する構成としている。
【0042】
また、温湯消毒槽101にも空気噴出管120を設けており、この空気噴出管120は、温水噴出口113を備える温水管122の上側で平面視で交差(直交)するように配置されている。温水管122は温湯消毒槽101の長手方向(前後方向)に延び、温水噴出口113が左右に温湯を噴出するので、温湯消毒槽101の短手方向(左右方向)の対流が前後方向の全体にわたって均等に発生し、温湯消毒槽101内の温度むらを抑えることができる。空気噴出管120は、停止する各種子バケット102の下方に位置しており、各種子バケット102へ向けて空気噴出口119から空気を噴出することにより全ての種子を均等に攪拌できる。また、他の実施態様として、種子バケット102の直下に空気噴出口119を設けて直下から空気を噴出して種子バケット102内の種子を攪拌する空気噴出口119と種子バケット102の下方の側方位置に空気噴出口119を設けて種子バケット102の下方の側方位置から空気を噴出して種子バケット102内の種子を攪拌する空気噴出口119とを設けると、種子バケット102内の種子は下方の異なる方向から噴出される空気を受けてより確実に攪拌され、種子の温湯消毒が更に適切に行なえる。
【0043】
前記ブロア121は冷却槽110用と温湯消毒槽101用とで共通であり、温湯消毒槽101の空気噴出管120へは温湯消毒槽101の外面(側面)で接触する前後に長い接触管123を介して空気が供給される。この接触管123により、温湯消毒槽101へ供給する空気の温度を上昇させることができ、温湯消毒槽101内の温度低下を防止している。
【0044】
次に種子消毒の工程について説明する。
下降装置103dの途中の種子袋供給位置rに停止している種子バケット102に種子を収容した網状の種子袋Pを供給する。そして種子袋供給位置rから温湯消毒槽101内まで下降装置103dで種子バケット102を下降して温湯に浸漬する。
【0045】
温湯消毒槽101内では種子バケット102は移送装置103aで移送され、移送装置103aは間欠駆動する。そして、種子バケット102は温水噴出口113に対向する位置に停止し、停止した状態で噴出する温水に晒され、種子袋P内の種子の消毒作用を促進するものである。
【0046】
各温水噴出口113毎に設定時間停止しながら移送された種子バケット102は移送終端側で上昇装置103bによって引き上げられる。そして上昇装置103bの途中にある反転カム107で種子バケット102が反転し、種子バケット102内の種子袋Pは排出され、供給シュート115を通過して冷却槽110の始端側の冷却バケット108内に供給される。
【0047】
空になった種子バケット102は上昇装置103bで引き続いて上方に移送され、次いで、戻し装置103cで移送始端側に向けて温湯消毒槽101の上方を間欠移送され、下降装置103dで再度種子袋供給位置rに循環移送される。
【0048】
なお、循環移送装置103は間欠駆動の代わりに低速で連続的に駆動するように構成してもよい。
冷却槽110の冷却バケット108に供給された種子袋Pは冷却水により冷却される。冷却バケット108は循環移送装置103の間欠駆動と連動する構成とし、温湯消毒槽101から種子冷却槽110へ次の種子袋Pが供給される前に回動反転して次の冷却バケット108へ種子袋Pを供給し、温湯消毒槽101からの種子袋Pを受け入れる。すなわち、冷却終端側の冷却バケット108から順次駆動モータ161にて回動反転することで種子袋Pを順に次の冷却バケット108に移送すると共に、冷却始端側の冷却バケット108に温湯消毒槽101からの種子袋Pを受け入れるようにしている。
【0049】
そして、複数の冷却バケット108を順次通過した種子袋Pは排出シュート117から排出され、次工程の乾燥装置Zで乾燥される。
この種子消毒装置によると、前後に長い温湯消毒槽101により複数の種子バケット102を移送しながら連続的に能率的に温湯消毒することができ、また、温湯消毒装置Xから種子冷却装置Yに種子袋Pを簡単に供給することができる。
【0050】
また、循環移送装置103が設定時間毎に間欠駆動するため、一つの種子バケット102が温湯に浸漬する時間を一定にすることができ、かつ停止毎に温水にさらされるため、多数の種子袋Pに均一な消毒を効率よく行なうことができる。そして、冷却バケット108と循環移送装置103は連動して駆動するため、種子袋Pを冷却水に浸漬する時間をも一定にすることができ多数の種子袋Pに均一な冷却を行なうことができる。
【0051】
また、温水噴出口113を温湯消毒槽101内全体にわたって設定間隔毎に配置することで、温湯消毒槽101内の温度むらを防止し、種子バケット102内の種子袋Pの種子に温湯の浸透が均等化し、温湯殺菌効果を高めることができる。また、種子バケット102を温湯消毒槽101内で間欠移送することにより、種子の浸漬、離水が迅速になり、浸漬殺菌時間が正確となり、殺菌効果を高めることができる。すなわち、本実施の形態では1つの種子バケット102は10箇所の温水噴出口113毎にその上方で停止して浸漬される。
【0052】
また、冷却槽110内に空気を噴出させることで、冷却槽110内の冷却水の温度上昇を低減する防止することができ、冷却効果を大きくすることができる。
また、冷却バケット108を所定時間毎に駆動反転させ、冷却水内で種子袋Pを所定時間停止冷却しながら移送するので、冷却効果を高めることができる。
【0053】
次に図16に基づいて温湯消毒槽101及び冷却槽110に使用する温湯及び冷却水の供給経路について説明する。
温湯消毒槽101内には温湯オーバーフロー樋124を設け、温湯オーバーフロー樋124にオーバーフローした温湯は外部に排出される。また、温湯消毒槽101内には温湯オーバーフロー樋124とは別の温湯排出口125を設け、該温湯排出口125から戻り経路となる温湯戻り路126を介して切替弁127に供給される。従って、前記切替弁127の切替により、前記温湯排出口125から温湯を排出する状態に切り替える構成となっている。
【0054】
そして、温湯戻り路126からの温湯は、切替弁127を介して給湯経路となる給湯路128に供給される。該給湯路128には、ポンプ129及びヒータとなるインラインヒータ130を設けている。尚、前記インラインヒータ130は、ボイラ131から各種バルブを備える蒸気供給路132を介して水蒸気が供給され、熱量を得る構成である。この給湯路128を介して温湯が温水噴出口113から温湯消毒槽101へ供給される。尚、温湯消毒槽101内の温湯の温度は温湯用水温センサ133により約60℃になるよう制御する。
【0055】
また、冷却槽110からオーバーフローした冷却水を、冷却水オーバーフロー樋134、冷却水オーバーフロー経路となる還流路135を経由して回収槽136に還流するように構成している。回収槽136内の冷却水は、給水経路となる給水路137へ供給される。該給水路137は、開閉弁138を備え、前記切替弁127へ水を供給する構成となっている。そして、切替弁127の切替により、給水路137の水を給湯路128に供給する構成となっている。
【0056】
従って、切替弁127は、給水路137からの水を給湯路128へ供給する水補給状態と、温湯戻り路126からの温湯を給湯路128へ供給する温湯循環状態とに切り替わる構成となっている。また、温湯消毒槽101には、水位計139と前述した温湯用水温センサ133とを設けている。よって、水位計139の検出により温湯消毒槽101内の水位が設定値より低いことが制御部140に入力されると、制御部140からの出力により、開閉弁138が開き、前記水補給状態に切替弁127が切り替えられ、ポンプ129が作動し、ボイラ131が作動してインラインヒータ130が作動し、回収槽136内の水を加温しながら温湯消毒槽101に補給するよう制御される。このとき、温湯用水温センサ133の検出により温湯消毒槽101内の温湯の温度が所望の温度に達している場合は、ボイラ131並びにインラインヒータ130を停止して、回収槽136内の水を加温せずに温湯消毒槽101に補給するようになる。水位計139の検出により温湯消毒槽101内の水位が設定値に達したことが制御部140に入力されると、制御部140からの出力により、開閉弁138が閉じ、ボイラ131並びにインラインヒータ130を停止して、水の補給を停止する。温湯消毒槽101内の水位が設定値に達している場合に、温湯用水温センサ133の検出により温湯消毒槽101内の温湯の温度が所望より低いことが制御部140に入力されると、制御部140からの出力により、前記温湯循環状態に切替弁127が切り替えられ、ポンプ129が作動し、ボイラ131が作動してインラインヒータ130が作動して、温湯消毒槽101内の温湯を循環しながら加熱し温湯が所望の温度(約60℃)となるよう制御される。
【0057】
また、前記切替弁127は、給水路137からの水と温湯戻り路126からの温湯とを混合して給湯路128へ供給する混合状態に切り替えることができる構成となっている。更に、前記混合状態において、給水路137からの水と温湯戻り路126からの温湯との混合割合を変更して調節できるようになっている。これにより、温湯消毒槽101内の水位や水温に応じて、所望の水位及び水温に精度良く制御することができるようにしている。また、温湯消毒槽101内の水位が設定値に達している場合でも、温湯消毒槽101内の温湯が種子により汚れているときには、給水路137からの水を温湯消毒槽101内に供給するようにし、汚れた温湯を温湯オーバーフロー樋124からオーバーフローさせて外部に排出することができる。よって、温湯消毒槽101内の温湯が汚れている場合に種子消毒作業を中断して前記温湯を入れ替えるようなことをせずに、種子消毒作業をしながら温湯消毒槽101内の温湯を入れ替えることができ、種子消毒の連続作業が行えて作業能率の向上が図れる。
【0058】
この構成によると、熱効率の向上をはかり、使用水量の削減を図ることができる。特に、回収槽136に貯留する水は、次回の種子消毒作業開始時に温湯消毒槽101に水を張り込むのに使用でき、あるいは非作業時に洗浄用の水として温湯消毒槽101に張り込むことができる。
【0059】
尚、上記とは別に、温湯消毒槽101に新たな水を供給するための給水手段となる消毒用給水口141を設けている。また、前述のように、冷却槽110に新たな水を供給するための給水手段となる冷却用給水口118を設けている。冷却用給水口118は、冷却槽110内の水温を検出する冷却用の水温センサ142の検出に基づいて、水温が所定温度より高いときに冷却用の制御部143からの信号により自動的に開いて給水する構成となっている。これにより、冷却槽110内の水温を所望の温度に維持することができ、冷却効果を高めることができる。尚、冷却用給水口118は冷却槽110内において種子の排出側(排出シュート117側)の端部の位置で給水する構成となっているので、冷却用給水口118からの冷却水は冷却槽110内において仕切り壁116で仕切られる前記排出側の区画から順次供給され、前記排出側の区画ほど水温を低くして種子が順次水温が低い区画に搬送されていく構成にでき、冷却効果を高めることができる。
【0060】
ここで、冷却槽110の冷却水の供給手段の別実施例を説明する。
寒冷地でこの温湯消毒設備を用いた場合、水道水が非常に冷たい状態(1〜5℃)であるから、冷却槽110に水道水を冷却水として用いると、冷却水の温度が非常に低くなる。すると、温湯消毒槽101で消毒を終えた種子をこの非常に冷たい冷却水につけると、種子は急激に冷却されてストレスを受け、発芽率が低下する恐れがある。
【0061】
そこで、温湯消毒槽101の循環温水であるインラインヒータ130で加熱された給湯路128からの温湯の一部を制御弁を介して水道水が供給される冷却用給水口118に供給して冷却槽110に水道水と温湯を入れる構成とし、冷却槽110に温度センサを設けて冷却槽110内の水温が10〜18℃に保たれるように該制御弁を制御すれば、冷却槽110内の冷却水は適切な温度に保たれて、適切な種子の冷却が行なえ、前記のような発芽率が低下することを回避できる。
【0062】
逆に、温暖地でこの温湯消毒設備を用いた場合、冷却槽110の冷却水が適温以上に上がってしまって適切な種子の冷却が行なえず温湯障害を起こし発芽率が低下する恐れがある。
【0063】
そこで、図17は、冷却装置(チラー)170を用いた例を示す。この例は、冷却槽110の区分された最終槽110−4に冷却装置170を接続して最終槽110−4内の水を適温に冷却して水温を維持する構成とし、前3槽110−1〜110−3は冷却用給水口118から水を入れて逐次水をオーバーフローさせておく構成としている。
【0064】
このような構成にすると、温湯消毒槽101で消毒された種子は、先ず、冷却用給水口118から水が入り逐次オーバーフローしている前3槽110−1〜110−3で冷却され、最後に、冷却装置170で適温に保持されている冷却水が入った最終槽110−4にて確実に冷却することができる。従って、前記のような発芽率が低下することを適確に回避できる。また、冷却装置170は冷却槽110全体の水を冷却するのではなく、最終槽110−4内の水のみを冷却するものであるから、小型の冷却装置でよくて安価な設備構成となり、然も、小型の冷却装置で適切に対応できるので環境にも優しい設備となる。
【0065】
図18は、温湯消毒槽101内での種子バケット102の作動タイミングと冷却槽110の冷却バケット108の作動タイミングを示す図である。
即ち、図18の(a)は、温湯消毒槽101内での種子バケット102の作動タイミングと冷却槽110の冷却バケット108の作動タイミングが一致しており、温湯消毒槽101内での種子バケット102の停止時間を1分に設定しておくと、上記の温湯消毒設備では、温湯消毒槽101内での種子バケット102の停止位置が10箇所あり10分の温湯消毒が行え、消毒を終えたものから順次冷却槽110の冷却バケット108に移されて冷却され消毒作業が行なわれる。うるち米は、この作動タイミングで温湯消毒を10分間行なうと、適切に消毒が行なえる。
【0066】
一方、もち米は温湯消毒時間は5分が適切なので、図18の(b)に示す作動タイミングとし、温湯消毒槽101内での種子バケット102の停止時間を30秒に設定しておくと、上記の温湯消毒設備では、温湯消毒槽101内での種子バケット102の停止位置が10箇所あり5分の温湯消毒が行え、消毒を終えたものから順次冷却槽110の冷却バケット108に移され、冷却槽110の冷却バケット108は1分間の停止時間に設定(温湯消毒槽101内での種子バケット102の2回の移動に対して1回の作動タイミング)しているので、温湯消毒槽101から冷却槽110へともち米は停滞することなく適切に移動して、適切に消毒が行なえる。
【0067】
このように、温湯消毒槽101内での種子バケット102の作動タイミングと冷却槽110の冷却バケット108の作動タイミングを適宜調節できる構成にしておくと、色々な種子に対する温湯消毒作業が可能となり、汎用性が向上する。
【0068】
尚、戻しコンベア111を作動させて種子袋供給位置rにある種子バケット102を下降させ種子バケット102を戻しコンベア111の下端から温湯消毒槽101へ落下して供給するまでの時間(種子バケット102が温湯に浸かるまでの時間)をT1秒とし、上昇コンベア106により温湯消毒槽101内の種子バケット102を温湯から持ち上げるまでの時間(種子バケット102が温湯から出るまでの時間)をT2秒とすると、種子バケット102が停止位置から作動するタイミングT秒は、T=(600秒+T1−T2)/10で算出される値にすると、図18の(a)の作動タイミングにおいて、温湯消毒槽101内での種子バケット102の停止位置を10箇所設けて温湯消毒を正確に10分間に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】栽培施設の作用説明用の全体平面図である。
【図2】栽培温室の側断面図である。
【図3】収穫物選別装置の作用説明図である。
【図4】制御ブロック図である。
【図5】細霧冷房のフロー図である。
【図6】栽培ベッドの拡大斜視図である。
【図7】温湯消毒設備の平面図である。
【図8】温湯消毒設備の側面図である。
【図9】移送装置及び下降装置の一部を示す側面図である。
【図10】上昇装置の一部を示す側面図である。
【図11】上昇装置の一部及び戻り装置の一部を示す側面図である。
【図12】種子袋供給位置を示す側面図である。
【図13】反転カム及びガイド板を示す側面図である。
【図14】冷却槽を示す断面側面図である。
【図15】冷却槽を示す平面図である。
【図16】温湯及び冷却水の供給経路を示す図である。
【図17】冷却槽の他の例を示す側断面図である。
【図18】温湯消毒槽内での種子バケットの作動タイミングと冷却槽の冷却バケットの作動タイミングを示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1 栽培施設
2 栽培温室
3 制御室
4 選別室
13 管理用コンピューター
17 養液供給装置
18 暖房機
19 炭酸ガス発生器
20 収穫物選別装置
C1 栽培制御手段
C2 栽培情報蓄積手段
C3 選別制御手段
C4 選別情報蓄積手段
C5 栽培制御補正手段
Z1〜Z6 栽培ゾーン
【技術分野】
【0001】
本発明は、苺やトマト等の作物を栽培する栽培施設に関するものである。
【背景技術】
【0002】
作物を栽培する栽培温室において、栽培温室内の温度や湿度や炭酸ガス濃度を検出して、栽培温室内の環境制御をするものがある。
【特許文献1】特開平8−66126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の栽培温室は、栽培温室全体の環境制御をするものであって、栽培温室内の一部分の作物の生育が遅れたり、徒長したり、病気になったりした場合には、その一部の作物の異変によって栽培温室全体に影響を及ぼし、適切な作物の栽培が行なえなくなるような事態が発生する恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1記載の発明は、栽培温室2を複数の栽培ゾーンZ1〜Z6に区分けし、該各栽培ゾーンZ1〜Z6毎に栽培制御する栽培制御手段C1と各栽培ゾーンZ1〜Z6別に栽培情報を蓄積する栽培情報蓄積手段C2と各栽培ゾーンZ1〜Z6で収穫された作物を各栽培ゾーンZ1〜Z6別に選別した選別情報を蓄積する選別情報蓄積手段C4とを設けた栽培施設としたものである。
【0005】
従って、栽培温室2を複数の栽培ゾーンZ1〜Z6に区分けして該各栽培ゾーンZ1〜Z6毎に栽培制御手段C1によって栽培制御するので、各区分けされた栽培ゾーンZ1〜Z6の個々の栽培状態や栽培環境に応じて最適な栽培が行なえて、一部の作物の異変によって栽培温室2全体が影響を受けるような従来の課題を解消でき、栽培温室2全体の作物の収量を増加させ且つ品質を向上させることができる。また、各栽培ゾーンZ1〜Z6別に栽培情報を蓄積する栽培情報蓄積手段C2と各栽培ゾーンZ1〜Z6で収穫された作物を各栽培ゾーンZ1〜Z6別に選別した選別情報を蓄積する選別情報蓄積手段C4とを設けているので、収穫して出荷する作物の正確な選別情報及び栽培情報を消費者に提供することもできる。
【0006】
請求項2記載の発明は、蓄積された各栽培ゾーンZ1〜Z6別の選別情報に基づいて、各栽培ゾーンZ1〜Z6毎の栽培制御を補正する栽培制御補正手段C5を設けた請求項1記載の栽培施設としたものである。
【0007】
従って、請求項1記載の発明の作用に加えて、蓄積された各栽培ゾーンZ1〜Z6別の選別情報に基づいて、各栽培ゾーンZ1〜Z6毎の栽培制御を補正する栽培制御補正手段C5を設けたので、各栽培ゾーンZ1〜Z6毎の栽培情報と収穫物の収量情報データを逐次蓄積し、最適な栽培管理制御の基礎データの蓄積を行ない、蓄積された各栽培ゾーンZ1〜Z6別の選別情報に基づいて、最良の栽培環境を逐次求めて各栽培ゾーンZ1〜Z6毎の栽培制御を補正して、品質及び収量が最大となるようにすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の栽培施設によれば、栽培温室2全体の作物の収量を増加させ且つ品質を向上させることができ、収穫して出荷する作物の正確な選別情報及び栽培情報を消費者に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一実施の形態を図面に基づいて、詳細に説明する。
1は栽培施設であって、大型の栽培温室2と制御室3と選別室4とによって構成されている。
【0010】
栽培温室2には、中央に通路5を設け、該通路5の両側に通路側カーテン6aと間仕切り用カーテン6bとで仕切られた6つの栽培ゾーンZ1〜Z6が設けられている。また、各通路側カーテン6aと各間仕切り用カーテン6bは、必要に応じて上方に巻き上げて保持できる構成となっている。特に、各通路側カーテン6aは、必要に応じて上方に巻き上げて、作業台車7や防除ロボット8や作業者が自由に出入りできる構成となっている。尚、各間仕切り用カーテン6bは、上方に巻き上げて、例えば2つの栽培ゾーンを一つにしたりして栽培ゾーンの数を変更できるようになっている。
【0011】
各栽培ゾーンZ1〜Z6には、複数列の栽培ベッド9…が設けられており(実施例では、図1では各栽培ゾーンZ1〜Z6毎に4列配置した例を示し、図2では各栽培ゾーンZ1〜Z6毎に6列配置した例を示している。尚、施設の広さに応じて何列設けてもよい。)、該栽培ベッド9…間には作業通路10…が設けられている。また、暖房用通風口11と炭酸ガス供給口12と栽培ゾーン内の温度や湿度や炭酸ガス濃度や日射量を検出して制御室3の管理用コンピューター13にデータを送るセンサ14と駆動機構15aにより開閉される屋根部に設けられた換気窓15と駆動機構16aにより開閉される遮光カーテン16が設けられている。
【0012】
制御室3には、各栽培ゾーンZ1〜Z6の各栽培ベッド9…に養液を供給する養液供給装置17が設けられており、各栽培ゾーンZ1〜Z6毎に栽培制御する管理用コンピューター13の栽培制御手段C1にて養液供給制御を行なっている。また、各栽培ゾーンZ1〜Z6の暖房用通風口11に個別に暖房風を送って、各栽培ゾーンZ1〜Z6毎に個別に暖房できる暖房機(ボイラー)18が設けられている。また、各栽培ゾーンZ1〜Z6の炭酸ガス供給口12に個別に炭酸ガスを送って、各栽培ゾーンZ1〜Z6毎に個別に炭酸ガスを供給できる炭酸ガス発生器19が設けられている。そして、各栽培ゾーンZ1〜Z6の各センサ14…からの情報(各栽培ゾーン内の温度や湿度や炭酸ガス濃度や日射量)を所定時間毎(例えば、1分毎)に検出してデータを管理用コンピューター13の栽培情報蓄積手段C2にて蓄積し、また、養液供給装置17による各栽培ゾーンZ1〜Z6の栽培ベッド9…への養液供給情報データを栽培情報蓄積手段C2にて逐次蓄積すると共に、養液供給装置17や暖房機(ボイラー)18や炭酸ガス発生器19や換気窓15と遮光カーテン16の開閉等の作動を各栽培ゾーンZ1〜Z6の各センサ14…からの情報(各栽培ゾーン内の温度や湿度や炭酸ガス濃度や日射量)に基づいて管理用コンピューター13によって各栽培ゾーンZ1〜Z6別に栽培制御手段C1にて制御している。
【0013】
選別室4には、収穫物選別装置20が設けられている。
収穫物選別装置20には、前記各栽培ゾーンZ1〜Z6に対応して、各栽培ゾーンZ1〜Z6で収穫した収穫物Rを貯留する6つの荷受タンクTN1〜TN6が設けられており、作業者は各栽培ゾーンZ1〜Z6で収穫した収穫物Rを作業台車7で運んできて、各栽培ゾーンZ1〜Z6に対応する各荷受タンクTN1〜TN6に入れる。具体的に謂うと、栽培ゾーンZ1の収穫物RはタンクTN1に入れ、栽培ゾーンZ2の収穫物RはタンクTN2に入れ、栽培ゾーンZ3の収穫物RはタンクTN3に入れ、栽培ゾーンZ4の収穫物RはタンクTN4に入れ、栽培ゾーンZ5の収穫物RはタンクTN5に入れ、栽培ゾーンZ6の収穫物RはタンクTN6に入れる。
【0014】
各タンクTN1〜TN6の何れか選択した排出口から排出された収穫物Rは、収穫物搬送経路21を経て、収穫物の大きさを判別する等級センサ22の下方を通過し、選別コンベア23にて移動する過程で選別制御手段C3にて等級センサ22にて判別されたサイズに基づいてLサイズの貯留部24L・Mサイズの貯留部24M・Sサイズの貯留部24Sに分別される。
【0015】
作業者は、各貯留部24L・貯留部24M・貯留部24Sから収穫物Rを取出して、箱搬送ベルト25にて搬送される箱B内にサイズ別に入れて封緘する。そして、プリンタ26により箱Bに等級及び栽培ゾーンデータが印字され、出荷される。
【0016】
27は選別制御手段C3を設けた選別制御装置であって、等級センサ22で判別されたサイズに基づいてLサイズの貯留部24L・Mサイズの貯留部24M・Sサイズの貯留部24Sに分別するように選別手段Uを作動させると共に、タンクTN1〜TN6のうちの何れのタンクの排出口が開かれて選別中であるかを認識してプリンタ26を作動させ、プリンタ26により箱Bに等級及び栽培ゾーンデータを印字させる制御を行なう。また、タンクTN1〜TN6のうちの何れのタンクの排出口が開かれて選別中であるかを検出するタンク認識センサS1と等級センサ22の選別データにより、各タンクTN1〜TN6には各等級L・M・Sの収穫物が何個あったかを集計して、制御室3の管理用コンピューター13にデータを送り、各栽培ゾーンZ1〜Z6で収穫された作物を各栽培ゾーンZ1〜Z6別に選別した選別情報を管理用コンピューター13の選別情報蓄積手段C4にて蓄積している。
【0017】
従って、管理用コンピューター13は、各栽培ゾーンZ1〜Z6毎の栽培情報と収穫物の収量情報を一元管理することができ、出荷する箱B単位で正確な栽培情報を消費者に提供することができる。
【0018】
また、管理用コンピューター13は、各栽培ゾーンZ1〜Z6毎に栽培管理するシステムになっているので、各栽培ゾーンZ1〜Z6毎に養液供給装置17による適正な養液供給制御を行なえ、また、各栽培ゾーンZ1〜Z6毎に温度や湿度や炭酸ガス濃度や日射量の適正な制御を行えて、栽培温室全体での収穫物Rの品質向上及び収穫量の増加が行える。
【0019】
更に、各栽培ゾーンZ1〜Z6毎の栽培情報と収穫物の収量情報データを逐次蓄積しておくことにより、最適な栽培管理制御の基礎データの蓄積が行なわれ、以後の栽培管理制御に役立てることができる。即ち、蓄積された各栽培ゾーンZ1〜Z6別の選別情報に基づいて、最良の栽培環境を逐次求めて各栽培ゾーンZ1〜Z6毎の栽培制御を補正する栽培制御補正手段C5を管理用コンピューター13に設けて、品質及び収量が最大となるように栽培制御を補正して行く。
【0020】
細霧発生装置で細霧を発生させて栽培温室内を冷房させる技術(細霧冷房)は公知であるが、換気窓15と遮光カーテン16を閉めたままで細霧冷房をすると、細霧による急激な過湿状態となり、栽培植物の生理(生育)に悪影響を及ぼしてしまうという課題があった。そこで、該課題を解決する為に、図5は栽培ゾーンZ1〜Z6毎に細霧発生装置を設けて細霧冷房を行なう場合(又は、栽培温室全体を細霧冷房する場合)のフロー図を示し、細霧発生装置による細霧冷房を開始する際に、細霧冷房装置を運転開始する操作(ON)により、自動的に換気窓15を開き作動させ且つ遮光カーテン16を半開き状態にしてから後に、細霧冷房装置による細霧発生が開始されるように制御する。すると、換気窓15が開き且つ遮光カーテン16が半開き状態になってから、細霧冷房装置による細霧発生が開始されるので、栽培温室内の湿度が急激に過湿状態になることが防止され、栽培植物の生理(生育)に悪影響を及ぼすことがなく、適切な細霧冷房が行なえて、栽培温室内の温度を下げることができる。
【0021】
次に、栽培ベッド9の構成を詳述する。
栽培ベッド9…は、栽培ゾーンZ1〜Z6内に通路5に直交する方向に配置された長い形状をしており、パイプ材にて構成された高設架台30上に鋼板製支持枠31を配置し、該鋼板製支持枠31に栽培培地32を載せた構成となっている。
【0022】
鋼板製支持枠31は下部を排水用の溝部31aとし、中途部に左右段部31b・31bを設け、上端部の左右には外方に向けて湾曲した円弧面部31c・31cが設けられている。また、排水用の溝部31aの左右側壁面には貫通孔31dが多数設けられており、排水用の溝部31aには自由に空気が出入りできて溝部31aの湿度が高くならない風通しの良い構成となっている。
【0023】
中途部の左右段部31b・31bにエキスパンドメタル(帯鋼より構成される網状の板)33を載置し、該エキスパンドメタル33の上に不織布よりなる水耕シート34を敷き、その中にロックウールよりなる栽培培地32を載置している。
【0024】
そして、上端部の左右円弧面部31c・31cは、栽培培地32の左右両側より垂れ下がるように設けた水耕シート34を下方より受けて、該水耕シート34が緩やかな円弧状面を形成するように作用する。
【0025】
35は栽培培地32上面に配置されたビニール製の灌水用パイプであって、所定間隔に小さな孔が形成されており、栽培培地32に2列に植えられた苺の苗に養液供給装置17から供給される養液を灌水する構成となっている。
【0026】
苺の苗は苺がなる方向が決まっているので、栽培培地32に苺の苗を植えるときに、苺が栽培培地32の外側方に向けてなるように植える。
すると、苺は栽培培地32の左右両外側に垂れ下がるようにして実る。この時、鋼板製支持枠31の上端部の左右円弧面部31c・31cにて水耕シート34が下方より受けられて、水耕シート34が緩やかな円弧状面を形成して栽培培地32の左右両側で下方に垂れ下がっているので、苺のなっている茎は、この緩やかな円弧状面に受けられているから折れたり傷ついたりすることが防止されて、苺は良好に成育し良質の苺を収穫することができる。
【0027】
特に、鋼板製支持枠31には排水用の溝部31aが設けられており、栽培培地32の排水性は良く、しかも、溝部31aの左右側壁面には貫通孔31dが多数設けられており、排水用の溝部31aには自由に空気が出入りできて溝部31aの湿度が高くならない風通しの良い構成となっているので、苺の苗の根が根腐れをおこすことを防止でき、適切な苺苗の栽培が行なえる。
【0028】
次に、種籾等の種子消毒設備について説明する。
種子消毒設備は、前工程から後工程の順に温湯消毒装置X、種子冷却装置Y、乾燥装置Zを順次設けている。温湯消毒装置Xは、箱型の温湯消毒槽101を設け、温湯消毒槽101の上方には多数の種子バケット102を循環移送する循環移送装置103を設けている。尚、前記温湯消毒槽101は、11個の種子バケット102を連ねて収容できる構成となっている。また、種子バケット102には、所定量ごとに種子を収容する網状の種子袋Pを入れるようになっている。
【0029】
循環移送装置103は移送始端側にあって多数の孔を形成する種子バケット102を下降させて温湯消毒槽101内の温湯に浸漬させる下降装置103dと、温湯消毒槽101内を浸漬した状態で種子バケット102を移送する移送装置103aと、移送終端側にあって温湯消毒槽101内を浸漬した種子バケット102を上昇させる上昇装置103bと、上昇装置103bで上昇させた種子バケット102を下降装置103dまで戻す戻し装置103cとを備えている。
【0030】
移送装置103aは、種子バケット102の上端に設けた縁部102aを左右下側から受ける案内レール部104を備え、移送始端部には種子バケット102を移送させるためのチェン式の移送コンベア105を左右に設けている。移送コンベア105は、周回経路の適宜位置に種子バケット102を移送させる押し用突起105aを備え、該押し用突起105aが種子バケット102の縁部の左右に固着した左右方向の固着軸102bを移送方向に押すことで当該種子バケット102を移送し、移送下手側の種子バケット102が順次移送上手側の種子バケット102に押されて温湯消毒槽101内で種子バケット102が移送されていく構成となっている。
【0031】
上昇装置103bは、案内レール部104の終端(移送終端)にある種子バケット102の固着軸102bが引っ掛かる持上げ用突起106aを備えるチェン式の上昇コンベア106を左右に設けている。従って、該上昇コンベア106の駆動により、案内レール部104の終端(移送終端)にある種子バケット102の固着軸102bが持上げ用突起106aに持上げられ、種子バケット102が上昇する構成となっている。上昇コンベア106は、持上げ用突起106aが固着軸102bに引っ掛かる上昇始端位置から種子バケット102を上昇させるにつれて移送装置103aの移送方向に移動させる斜めの移動経路(周回経路)を備えた側面視で三角形状の周回経路で周回する。そして、前記斜めの移動経路の途中で種子バケット102を反転させる反転カム107を左右に設けており、種子バケット102の上昇で前記反転カム107が種子バケット102の縁部102aにおける固着軸102bの一方側(移送装置103aの移送方向側、種子冷却装置Y側)に上側から接触して押し下げることにより、固着軸102bを支点に種子バケット102をその上部の開口部が種子冷却装置Y側に向くように反転させ、種子バケット102内の種子袋Pを種子冷却装置Yの冷却バケット108へ排出する構成となっている。また、温湯消毒槽101の上端から反転カム107の位置にかけて、上昇あるいは反転する種子バケット102から垂れ落ちる温湯を温湯消毒槽101へ案内するガイド板109を設けている。このガイド板109により、種子バケット102から垂れ落ちる温湯を温湯消毒槽101へ戻して温湯消毒槽101内の熱の放出を抑えると共に、前記温湯が種子冷却装置Yの冷却槽110に垂れ落ちることによる冷却効率の低下を防止できる。
【0032】
戻し装置103c及び下降装置103dは、種子バケット102の固着軸102bが引っ掛かる搬送用突起111aを備えるチェン式の戻しコンベア111を左右に備えて構成されている。尚、前記搬送用突起111aは、戻しコンベア111の周回方向の前後に対向して配置され、前後の突起111aで固着軸102bを挟むようにして保持する構成となっている。従って、上昇装置103bの上昇コンベア106でその上端部に上昇した種子バケット102を、前記戻しコンベア111が、受け継いで移送装置103aの移送始端側に横移動した後、下降させてその下降経路の途中の種子袋供給位置rで待機させる。この種子袋供給位置rで、種子バケット102は温湯消毒槽101の上方に位置しており、作業者が当該種子バケット102に種子袋Pを供給するようになっている。そして、移送装置103aが作動して移送始端部に種子バケット102を収容するスペースができると、戻しコンベア111を作動させて前記種子袋供給位置rにある種子バケット102を下降させ、種子バケット102を戻しコンベア111の下端から温湯消毒槽101へ落下して供給する。尚、種子袋供給位置rで待機する種子バケット102は、下部の前側が温湯消毒槽101に取り付けたガイド112に接触し、上部の開口部が前側に向くように傾く。これにより、作業者が種子バケット102に種子(種子袋P)を容易に供給できる。更に、種子バケット102が傾いている分、種子バケット102が温湯消毒槽101の温湯に浸されない高さで且つ当該種子バケット102の前記開口部の高さを極力低く設定することができるため、種子バケット102への種子(種子袋P)の供給が容易である。
【0033】
また、種子袋供給位置rにある種子バケット102を下降させて戻しコンベア111の下端から温湯消毒槽101へ落下するとき、種子バケット102の縁部102aが案内レール部104に衝突することにより騒音が発生したり衝撃で縁部102aを変形させるおそれがある。そこで、種子バケット102の縁部102aが案内レール部104に衝突する前に種子バケット102の底部が温湯消毒槽101の底面に接触するよう、温湯消毒槽101の底面の一部に隆起させた隆起部を設け、該隆起部に落下する種子バケット102の底部が先ず接触する構成とすれば、衝突する部分が水中であるので衝撃音を抑えられ、また縁部102aの変形を防止して循環移送装置103による種子バケット102の移送の適正化が図れる。
【0034】
尚、移送装置103aは複数の種子バケット102を同時に間欠的に移送していくのに対して、戻し装置103c及び下降装置103dは単一の種子バケット102を種子袋供給位置rまで連続的に移送する構成となっている。従って、戻し装置103c及び下降装置103dの移送速度が移送装置103aの移送速度より速く設定されており、空の種子バケット102の数を減らすことにより、コストダウンが図れると共に、温湯消毒槽101の上方の空の種子バケット102の数が少ないため、作業者が温湯消毒槽101内の消毒状況や運転状況を視認するときに空の種子バケット102が邪魔になりにくい。
【0035】
また、移送装置103aで間欠的に移送される種子バケット102の移送は、移送中の時間より移送停止状態の時間の方が長くなるように設定されている。従って、温湯消毒槽101内の後述する温水噴出口113の上方に種子バケット102を長く滞留させることができ、種子の殺菌効果を高めることができる。また、移送装置103aの移送停止時間を長くすることで、これに連動する上昇装置103b及び下降装置103dの停止時間を長く設定することができるので、種子袋供給位置rでの種子バケット102の停止時間を長く設定でき、停止している種子バケット102に種子(種子袋P)を容易に供給できる。また、前記移送装置103aの移送停止時間は調節手段により変更できる構成となっており、この移送停止時間の変更により同一の種子バケット102が温湯消毒槽101に浸漬される総時間を変更できる。従って、種子の品種に応じて種子の消毒時間を変更することができる(例えば、うるち米の種籾は10分間浸漬し、もち米の種籾は6分間浸漬する等)。これにより、移送装置103aの移送中の移送速度を変えずに容易に浸漬時間を変えることができる。尚、移送装置103a、上昇装置103b、戻し装置103c及び下降装置103dは、共通の駆動源(モータ)により作動する。
【0036】
また、種子消毒作業中に装置の故障や点検等のために非常停止したときは、その非常停止時間を計測して前記の消毒時間に加算する制御がなされる。従って、非常停止した分、移送装置103aで間欠移送の停止時間が短くなる。このとき、非常停止中に設定の消毒時間に達した場合は、ランプ等の警報手段により警報する。よって、種子を必要以上に長く温湯に浸漬することにより、種子割れ等の種子の損傷を防止できる。
【0037】
温湯消毒槽101内の底部には所定間隔毎に温水噴出口113を配設し、間欠移送されながら停止している種子バケット102の停止位置下方に温水噴出口113を位置させ、種子バケット102に向けて温水を噴出し、温水が種子バケット102の孔を通過し網状の種子袋Pに収容する種子(種籾)に作用する構成としている。なお、温湯消毒槽101の底部を前後方向中間部に向けて下り傾斜に構成し、中間部に排水溝114を構成している。
【0038】
温湯消毒槽101の後工程には供給シュート115を介して種子冷却装置Yを設けている。この種子冷却装置Yには、供給シュート115の後側に前後方向に長い種子冷却槽110を設け、この種子冷却槽110には前側から後側に向けて複数の冷却バケット108を設けている。冷却バケット108は多数の孔を形成し、左右方向の軸108aにより横軸心回動自在に支持している。そして、冷却バケット108が軸108aを軸心に回動反転すると冷却バケット108内に収容する種子袋Pが次の冷却バケット108に収容される構成である。尚、冷却バケット108は、反転時に小さく2度回動して種子袋Pの排出を確実に行うようにしている。冷却槽110内には各冷却バケット108の収容部ごとに槽内を仕切る仕切り壁116を設けており、この仕切り壁116は種子の排出側(排出シュート117側)のものほど高くなっている。そして、冷却槽110に新たな水を供給する冷却用給水口118が種子冷却槽110内において種子の排出側(排出シュート117側)の端部の位置で給水する構成となっており、冷却用給水口118からの冷却水は冷却槽110内において仕切り壁116で仕切られる前記排出側の区画から順次供給されていくことになる。
【0039】
尚、種子バケット102が上昇装置103bで上昇して反転カム107で反転する直前に到達したことをセンサで検出すると、最も温湯消毒装置Xに近い冷却バケット108が反転してから元に戻り、その後種子バケット102が上昇して反転カム107で反転する構成となっている。これにより、種子バケット102から冷却バケット108に種子を供給する直前に当該冷却バケット108の種子を次の冷却バケット108に供給することができ、冷却バケット108による種子の冷却時間を長くすることができて冷却効果を高めることができる。
【0040】
また、種子バケット102の容積より冷却バケット108の容積が大きく設定されている。よって、種子バケット102の容積が小さいので、温湯消毒槽101内の種子バケット102が供給されない不要な部分を小さくして温湯を効率良く使用できる。また、冷却バケット108の容積が大きいので、後述する空気噴出口119からの空気により種子の攪拌が容易になり、冷却効果が高まる。
【0041】
また、冷却槽110の冷却バケット108の下方には、空気噴出管120をそれぞれ設け、ブロワ121により空気噴出口119に空気を供給し、浸漬中の冷却バケット108に向けて空気を噴出する構成としている。
【0042】
また、温湯消毒槽101にも空気噴出管120を設けており、この空気噴出管120は、温水噴出口113を備える温水管122の上側で平面視で交差(直交)するように配置されている。温水管122は温湯消毒槽101の長手方向(前後方向)に延び、温水噴出口113が左右に温湯を噴出するので、温湯消毒槽101の短手方向(左右方向)の対流が前後方向の全体にわたって均等に発生し、温湯消毒槽101内の温度むらを抑えることができる。空気噴出管120は、停止する各種子バケット102の下方に位置しており、各種子バケット102へ向けて空気噴出口119から空気を噴出することにより全ての種子を均等に攪拌できる。また、他の実施態様として、種子バケット102の直下に空気噴出口119を設けて直下から空気を噴出して種子バケット102内の種子を攪拌する空気噴出口119と種子バケット102の下方の側方位置に空気噴出口119を設けて種子バケット102の下方の側方位置から空気を噴出して種子バケット102内の種子を攪拌する空気噴出口119とを設けると、種子バケット102内の種子は下方の異なる方向から噴出される空気を受けてより確実に攪拌され、種子の温湯消毒が更に適切に行なえる。
【0043】
前記ブロア121は冷却槽110用と温湯消毒槽101用とで共通であり、温湯消毒槽101の空気噴出管120へは温湯消毒槽101の外面(側面)で接触する前後に長い接触管123を介して空気が供給される。この接触管123により、温湯消毒槽101へ供給する空気の温度を上昇させることができ、温湯消毒槽101内の温度低下を防止している。
【0044】
次に種子消毒の工程について説明する。
下降装置103dの途中の種子袋供給位置rに停止している種子バケット102に種子を収容した網状の種子袋Pを供給する。そして種子袋供給位置rから温湯消毒槽101内まで下降装置103dで種子バケット102を下降して温湯に浸漬する。
【0045】
温湯消毒槽101内では種子バケット102は移送装置103aで移送され、移送装置103aは間欠駆動する。そして、種子バケット102は温水噴出口113に対向する位置に停止し、停止した状態で噴出する温水に晒され、種子袋P内の種子の消毒作用を促進するものである。
【0046】
各温水噴出口113毎に設定時間停止しながら移送された種子バケット102は移送終端側で上昇装置103bによって引き上げられる。そして上昇装置103bの途中にある反転カム107で種子バケット102が反転し、種子バケット102内の種子袋Pは排出され、供給シュート115を通過して冷却槽110の始端側の冷却バケット108内に供給される。
【0047】
空になった種子バケット102は上昇装置103bで引き続いて上方に移送され、次いで、戻し装置103cで移送始端側に向けて温湯消毒槽101の上方を間欠移送され、下降装置103dで再度種子袋供給位置rに循環移送される。
【0048】
なお、循環移送装置103は間欠駆動の代わりに低速で連続的に駆動するように構成してもよい。
冷却槽110の冷却バケット108に供給された種子袋Pは冷却水により冷却される。冷却バケット108は循環移送装置103の間欠駆動と連動する構成とし、温湯消毒槽101から種子冷却槽110へ次の種子袋Pが供給される前に回動反転して次の冷却バケット108へ種子袋Pを供給し、温湯消毒槽101からの種子袋Pを受け入れる。すなわち、冷却終端側の冷却バケット108から順次駆動モータ161にて回動反転することで種子袋Pを順に次の冷却バケット108に移送すると共に、冷却始端側の冷却バケット108に温湯消毒槽101からの種子袋Pを受け入れるようにしている。
【0049】
そして、複数の冷却バケット108を順次通過した種子袋Pは排出シュート117から排出され、次工程の乾燥装置Zで乾燥される。
この種子消毒装置によると、前後に長い温湯消毒槽101により複数の種子バケット102を移送しながら連続的に能率的に温湯消毒することができ、また、温湯消毒装置Xから種子冷却装置Yに種子袋Pを簡単に供給することができる。
【0050】
また、循環移送装置103が設定時間毎に間欠駆動するため、一つの種子バケット102が温湯に浸漬する時間を一定にすることができ、かつ停止毎に温水にさらされるため、多数の種子袋Pに均一な消毒を効率よく行なうことができる。そして、冷却バケット108と循環移送装置103は連動して駆動するため、種子袋Pを冷却水に浸漬する時間をも一定にすることができ多数の種子袋Pに均一な冷却を行なうことができる。
【0051】
また、温水噴出口113を温湯消毒槽101内全体にわたって設定間隔毎に配置することで、温湯消毒槽101内の温度むらを防止し、種子バケット102内の種子袋Pの種子に温湯の浸透が均等化し、温湯殺菌効果を高めることができる。また、種子バケット102を温湯消毒槽101内で間欠移送することにより、種子の浸漬、離水が迅速になり、浸漬殺菌時間が正確となり、殺菌効果を高めることができる。すなわち、本実施の形態では1つの種子バケット102は10箇所の温水噴出口113毎にその上方で停止して浸漬される。
【0052】
また、冷却槽110内に空気を噴出させることで、冷却槽110内の冷却水の温度上昇を低減する防止することができ、冷却効果を大きくすることができる。
また、冷却バケット108を所定時間毎に駆動反転させ、冷却水内で種子袋Pを所定時間停止冷却しながら移送するので、冷却効果を高めることができる。
【0053】
次に図16に基づいて温湯消毒槽101及び冷却槽110に使用する温湯及び冷却水の供給経路について説明する。
温湯消毒槽101内には温湯オーバーフロー樋124を設け、温湯オーバーフロー樋124にオーバーフローした温湯は外部に排出される。また、温湯消毒槽101内には温湯オーバーフロー樋124とは別の温湯排出口125を設け、該温湯排出口125から戻り経路となる温湯戻り路126を介して切替弁127に供給される。従って、前記切替弁127の切替により、前記温湯排出口125から温湯を排出する状態に切り替える構成となっている。
【0054】
そして、温湯戻り路126からの温湯は、切替弁127を介して給湯経路となる給湯路128に供給される。該給湯路128には、ポンプ129及びヒータとなるインラインヒータ130を設けている。尚、前記インラインヒータ130は、ボイラ131から各種バルブを備える蒸気供給路132を介して水蒸気が供給され、熱量を得る構成である。この給湯路128を介して温湯が温水噴出口113から温湯消毒槽101へ供給される。尚、温湯消毒槽101内の温湯の温度は温湯用水温センサ133により約60℃になるよう制御する。
【0055】
また、冷却槽110からオーバーフローした冷却水を、冷却水オーバーフロー樋134、冷却水オーバーフロー経路となる還流路135を経由して回収槽136に還流するように構成している。回収槽136内の冷却水は、給水経路となる給水路137へ供給される。該給水路137は、開閉弁138を備え、前記切替弁127へ水を供給する構成となっている。そして、切替弁127の切替により、給水路137の水を給湯路128に供給する構成となっている。
【0056】
従って、切替弁127は、給水路137からの水を給湯路128へ供給する水補給状態と、温湯戻り路126からの温湯を給湯路128へ供給する温湯循環状態とに切り替わる構成となっている。また、温湯消毒槽101には、水位計139と前述した温湯用水温センサ133とを設けている。よって、水位計139の検出により温湯消毒槽101内の水位が設定値より低いことが制御部140に入力されると、制御部140からの出力により、開閉弁138が開き、前記水補給状態に切替弁127が切り替えられ、ポンプ129が作動し、ボイラ131が作動してインラインヒータ130が作動し、回収槽136内の水を加温しながら温湯消毒槽101に補給するよう制御される。このとき、温湯用水温センサ133の検出により温湯消毒槽101内の温湯の温度が所望の温度に達している場合は、ボイラ131並びにインラインヒータ130を停止して、回収槽136内の水を加温せずに温湯消毒槽101に補給するようになる。水位計139の検出により温湯消毒槽101内の水位が設定値に達したことが制御部140に入力されると、制御部140からの出力により、開閉弁138が閉じ、ボイラ131並びにインラインヒータ130を停止して、水の補給を停止する。温湯消毒槽101内の水位が設定値に達している場合に、温湯用水温センサ133の検出により温湯消毒槽101内の温湯の温度が所望より低いことが制御部140に入力されると、制御部140からの出力により、前記温湯循環状態に切替弁127が切り替えられ、ポンプ129が作動し、ボイラ131が作動してインラインヒータ130が作動して、温湯消毒槽101内の温湯を循環しながら加熱し温湯が所望の温度(約60℃)となるよう制御される。
【0057】
また、前記切替弁127は、給水路137からの水と温湯戻り路126からの温湯とを混合して給湯路128へ供給する混合状態に切り替えることができる構成となっている。更に、前記混合状態において、給水路137からの水と温湯戻り路126からの温湯との混合割合を変更して調節できるようになっている。これにより、温湯消毒槽101内の水位や水温に応じて、所望の水位及び水温に精度良く制御することができるようにしている。また、温湯消毒槽101内の水位が設定値に達している場合でも、温湯消毒槽101内の温湯が種子により汚れているときには、給水路137からの水を温湯消毒槽101内に供給するようにし、汚れた温湯を温湯オーバーフロー樋124からオーバーフローさせて外部に排出することができる。よって、温湯消毒槽101内の温湯が汚れている場合に種子消毒作業を中断して前記温湯を入れ替えるようなことをせずに、種子消毒作業をしながら温湯消毒槽101内の温湯を入れ替えることができ、種子消毒の連続作業が行えて作業能率の向上が図れる。
【0058】
この構成によると、熱効率の向上をはかり、使用水量の削減を図ることができる。特に、回収槽136に貯留する水は、次回の種子消毒作業開始時に温湯消毒槽101に水を張り込むのに使用でき、あるいは非作業時に洗浄用の水として温湯消毒槽101に張り込むことができる。
【0059】
尚、上記とは別に、温湯消毒槽101に新たな水を供給するための給水手段となる消毒用給水口141を設けている。また、前述のように、冷却槽110に新たな水を供給するための給水手段となる冷却用給水口118を設けている。冷却用給水口118は、冷却槽110内の水温を検出する冷却用の水温センサ142の検出に基づいて、水温が所定温度より高いときに冷却用の制御部143からの信号により自動的に開いて給水する構成となっている。これにより、冷却槽110内の水温を所望の温度に維持することができ、冷却効果を高めることができる。尚、冷却用給水口118は冷却槽110内において種子の排出側(排出シュート117側)の端部の位置で給水する構成となっているので、冷却用給水口118からの冷却水は冷却槽110内において仕切り壁116で仕切られる前記排出側の区画から順次供給され、前記排出側の区画ほど水温を低くして種子が順次水温が低い区画に搬送されていく構成にでき、冷却効果を高めることができる。
【0060】
ここで、冷却槽110の冷却水の供給手段の別実施例を説明する。
寒冷地でこの温湯消毒設備を用いた場合、水道水が非常に冷たい状態(1〜5℃)であるから、冷却槽110に水道水を冷却水として用いると、冷却水の温度が非常に低くなる。すると、温湯消毒槽101で消毒を終えた種子をこの非常に冷たい冷却水につけると、種子は急激に冷却されてストレスを受け、発芽率が低下する恐れがある。
【0061】
そこで、温湯消毒槽101の循環温水であるインラインヒータ130で加熱された給湯路128からの温湯の一部を制御弁を介して水道水が供給される冷却用給水口118に供給して冷却槽110に水道水と温湯を入れる構成とし、冷却槽110に温度センサを設けて冷却槽110内の水温が10〜18℃に保たれるように該制御弁を制御すれば、冷却槽110内の冷却水は適切な温度に保たれて、適切な種子の冷却が行なえ、前記のような発芽率が低下することを回避できる。
【0062】
逆に、温暖地でこの温湯消毒設備を用いた場合、冷却槽110の冷却水が適温以上に上がってしまって適切な種子の冷却が行なえず温湯障害を起こし発芽率が低下する恐れがある。
【0063】
そこで、図17は、冷却装置(チラー)170を用いた例を示す。この例は、冷却槽110の区分された最終槽110−4に冷却装置170を接続して最終槽110−4内の水を適温に冷却して水温を維持する構成とし、前3槽110−1〜110−3は冷却用給水口118から水を入れて逐次水をオーバーフローさせておく構成としている。
【0064】
このような構成にすると、温湯消毒槽101で消毒された種子は、先ず、冷却用給水口118から水が入り逐次オーバーフローしている前3槽110−1〜110−3で冷却され、最後に、冷却装置170で適温に保持されている冷却水が入った最終槽110−4にて確実に冷却することができる。従って、前記のような発芽率が低下することを適確に回避できる。また、冷却装置170は冷却槽110全体の水を冷却するのではなく、最終槽110−4内の水のみを冷却するものであるから、小型の冷却装置でよくて安価な設備構成となり、然も、小型の冷却装置で適切に対応できるので環境にも優しい設備となる。
【0065】
図18は、温湯消毒槽101内での種子バケット102の作動タイミングと冷却槽110の冷却バケット108の作動タイミングを示す図である。
即ち、図18の(a)は、温湯消毒槽101内での種子バケット102の作動タイミングと冷却槽110の冷却バケット108の作動タイミングが一致しており、温湯消毒槽101内での種子バケット102の停止時間を1分に設定しておくと、上記の温湯消毒設備では、温湯消毒槽101内での種子バケット102の停止位置が10箇所あり10分の温湯消毒が行え、消毒を終えたものから順次冷却槽110の冷却バケット108に移されて冷却され消毒作業が行なわれる。うるち米は、この作動タイミングで温湯消毒を10分間行なうと、適切に消毒が行なえる。
【0066】
一方、もち米は温湯消毒時間は5分が適切なので、図18の(b)に示す作動タイミングとし、温湯消毒槽101内での種子バケット102の停止時間を30秒に設定しておくと、上記の温湯消毒設備では、温湯消毒槽101内での種子バケット102の停止位置が10箇所あり5分の温湯消毒が行え、消毒を終えたものから順次冷却槽110の冷却バケット108に移され、冷却槽110の冷却バケット108は1分間の停止時間に設定(温湯消毒槽101内での種子バケット102の2回の移動に対して1回の作動タイミング)しているので、温湯消毒槽101から冷却槽110へともち米は停滞することなく適切に移動して、適切に消毒が行なえる。
【0067】
このように、温湯消毒槽101内での種子バケット102の作動タイミングと冷却槽110の冷却バケット108の作動タイミングを適宜調節できる構成にしておくと、色々な種子に対する温湯消毒作業が可能となり、汎用性が向上する。
【0068】
尚、戻しコンベア111を作動させて種子袋供給位置rにある種子バケット102を下降させ種子バケット102を戻しコンベア111の下端から温湯消毒槽101へ落下して供給するまでの時間(種子バケット102が温湯に浸かるまでの時間)をT1秒とし、上昇コンベア106により温湯消毒槽101内の種子バケット102を温湯から持ち上げるまでの時間(種子バケット102が温湯から出るまでの時間)をT2秒とすると、種子バケット102が停止位置から作動するタイミングT秒は、T=(600秒+T1−T2)/10で算出される値にすると、図18の(a)の作動タイミングにおいて、温湯消毒槽101内での種子バケット102の停止位置を10箇所設けて温湯消毒を正確に10分間に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】栽培施設の作用説明用の全体平面図である。
【図2】栽培温室の側断面図である。
【図3】収穫物選別装置の作用説明図である。
【図4】制御ブロック図である。
【図5】細霧冷房のフロー図である。
【図6】栽培ベッドの拡大斜視図である。
【図7】温湯消毒設備の平面図である。
【図8】温湯消毒設備の側面図である。
【図9】移送装置及び下降装置の一部を示す側面図である。
【図10】上昇装置の一部を示す側面図である。
【図11】上昇装置の一部及び戻り装置の一部を示す側面図である。
【図12】種子袋供給位置を示す側面図である。
【図13】反転カム及びガイド板を示す側面図である。
【図14】冷却槽を示す断面側面図である。
【図15】冷却槽を示す平面図である。
【図16】温湯及び冷却水の供給経路を示す図である。
【図17】冷却槽の他の例を示す側断面図である。
【図18】温湯消毒槽内での種子バケットの作動タイミングと冷却槽の冷却バケットの作動タイミングを示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1 栽培施設
2 栽培温室
3 制御室
4 選別室
13 管理用コンピューター
17 養液供給装置
18 暖房機
19 炭酸ガス発生器
20 収穫物選別装置
C1 栽培制御手段
C2 栽培情報蓄積手段
C3 選別制御手段
C4 選別情報蓄積手段
C5 栽培制御補正手段
Z1〜Z6 栽培ゾーン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培温室(2)を複数の栽培ゾーン(Z1〜Z6)に区分けし、該各栽培ゾーン(Z1〜Z6)毎に栽培制御する栽培制御手段(C1)と各栽培ゾーン(Z1〜Z6)別に栽培情報を蓄積する栽培情報蓄積手段(C2)と各栽培ゾーン(Z1〜Z6)で収穫された作物を各栽培ゾーン(Z1〜Z6)別に選別した選別情報を蓄積する選別情報蓄積手段(C4)とを設けたたことを特徴とする栽培施設。
【請求項2】
蓄積された各栽培ゾーン(Z1〜Z6)別の選別情報に基づいて、各栽培ゾーン(Z1〜Z6)毎の栽培制御を補正する栽培制御補正手段(C5)を設けたことを特徴とする請求項1記載の栽培施設。
【請求項1】
栽培温室(2)を複数の栽培ゾーン(Z1〜Z6)に区分けし、該各栽培ゾーン(Z1〜Z6)毎に栽培制御する栽培制御手段(C1)と各栽培ゾーン(Z1〜Z6)別に栽培情報を蓄積する栽培情報蓄積手段(C2)と各栽培ゾーン(Z1〜Z6)で収穫された作物を各栽培ゾーン(Z1〜Z6)別に選別した選別情報を蓄積する選別情報蓄積手段(C4)とを設けたたことを特徴とする栽培施設。
【請求項2】
蓄積された各栽培ゾーン(Z1〜Z6)別の選別情報に基づいて、各栽培ゾーン(Z1〜Z6)毎の栽培制御を補正する栽培制御補正手段(C5)を設けたことを特徴とする請求項1記載の栽培施設。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−153405(P2009−153405A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332439(P2007−332439)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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