説明

案内リングとミキサとを備えるガスタービン

タービンにより駆動されるロータ(1)と、ステータ(2)と、タービンの下流側でステータに固定されて配置された、スワールを含む高温ガス流を方向転換させるための案内リングを形成するストラット(7)と、高温ガス通路の下流側端部に配置されたミキサ(8)とを備えるガスタービンである。案内リングとミキサは構造的ならびに流体工学的に統合されており、案内リングのストラットはその半径方向外側の端部領域でミキサの壁構造と結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提項に記載されている、タービンにより駆動される少なくとも1つのロータと、ステータと、タービンもしくは最後部のタービンの下流側でステータに固定されて配置された案内リングを形成するストラットと、高温ガス通路の下流側端部に配置されたミキサとを備えるガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機用エンジンとして用いられるガスタービンでは、最後部のタービン段から吐出される通常はスワールを含む高温ガス流が、ステータに固定された案内羽根とも呼ばれる案内リングによって軸方向へ方向転換されるのが普通である。その結果として軸方向推力の増大が得られ、さらには、エンジンの懸下部およびこれに伴なう航空機胴体のトーション負荷も低減される。ターボファン・エンジンでは、異形成形されたストラットを備え、このような種類の案内リングは、場合により主推力成分を生成するファンの下流側においても「低温の」バイパス流で通常用いられている。
【0003】
航空機用エンジンおよびその他のガスタービンで騒音を低減するための公知の装置は、いわゆるミキサである。これはタービン領域から吐出される高エネルギーの高温ガス流と、エネルギーの低い、すなわち著しく温度が低く速度も低い大気とを混合する。副流/バイパスを備えるエンジンでは、高温ガス流とバイパス空気とが混合される。通常、このような混合流は混合されていない高温ガス流よりも少ない騒音しか発しない。軍事用の航空機では、航空機の位置特定をより困難にするために、排ガスジェットの赤外信号を低減するためにもミキサが利用される。ミキサは通常、独自のエネルギー供給部をもたないスタティックかつパッシブな装置である。混合度が高まるにつれて、通常、流動損失も増えていく。したがって優れたミキサとは、この両方の現象の間の妥協の結果をもたらすものである。
【0004】
もっとも多くのケースで適用されている設計形態は、後側から見たときの花びらのような幾何学形状から名づけられた、いわゆるローブ型ミキサである。この設計形態では半径方向の隆起部と陥没部が波状に連続しており、それ自体として閉じるように、少なくとも近似的に1つの中心点を中心とする複数の円軌道の間を延びている。隆起部では高温ガスが半径方向外側に向かって誘導され、陥没部では大気が半径方向内側に向かって案内される。この点に関しては、たとえば米国特許第4,819,425号明細書(特許文献1)を参照されたい。
【0005】
さらに別の設計形態は、円周全体にわたって配分された開口部を有する錐面のような形式で構成されており、ノッチ型ミキサとも呼ばれている。この点に関しては独国特許出願公開第10145489A1号明細書(特許文献2)を参照されたい。
【0006】
ローブ型ミキサとノッチ型ミキサの混合形態もあり、ならびに、流動通路が多種多様に構成されて配分されるその他の多数の設計形態もある。基本となる機能原理はそのまま維持されているのが通常である。
【0007】
ミキサのテーマに関する関連文献を見ると、ミキサはガスタービンないし航空機用エンジンに追加部材として設置される、構造的・機能的に独立した装置とみなされていることが明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,819,425号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10145489A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記に対して本発明の課題は、最後部のタービン段の下流側にある案内リング/案内羽根と、高温ガス通路の下流側端部にあるミキサとを備えるガスタービンをさらに改良して、比較的高いエンジン効率で、設計長、重量、および部品数の削減が実現されるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1の特徴部に記載された構成要件により、その前提項に記載された当分野をなす構成要件との関連で解決される。
【0011】
本発明は、案内リングとミキサが構造的、流体工学的、機能的に統合されており、流れを方向転換させる案内リングのストラットはその半径方向外側の端部領域でミキサの壁構造と結合されていることにある。このようにして案内リングとミキサからなる複合部材が成立し、この複合部材は短い設計長、少ない重量、少ない部品、構造メカニズム上の高い耐久性という特徴を有している。流れの作用を受ける通路表面が狭くなることで、効率の改善も期待することが可能である。この解決法はミキサの特定の設計形態に拘束されるものではないが、ローブ型ミキサを対象とするのが好ましい。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に特徴が記載されている。
【0012】
次に、図面を参照しながら本発明についてさらに詳しく説明する。より簡略化された概略図が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ガスタービンをその高温ガス通路の吐出領域で示す部分縦断面図である。
【図2】図1のガスタービンを軸方向後側から示す部分図である。
【図3】図1のA−A線に沿ったガスタービンの部分断面図である。
【図4】図1のB−B線に沿ったガスタービンの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
流れに影響を与える要素である案内リング6とミキサ8との組み合わせは、まず第1に、最適化されたスワールのない軸方向推力ならびに最低限に抑えられた騒音放出が重要となる、航空機用エンジンとして製作されたガスタービンについて関心の対象となる。航空機用エンジンは、特に、このような基準を満たさなくてはならない民生用のターボファン・エンジンであり、すなわちバイパス・エンジンである。ただしこのことは、定置のガスタービンないし非航空機用ガスタービンにとっても本発明が有利であり得ることを排除するものではない。
【0015】
図面には、ローブ型ミキサとして施工されたミキサ8を備える態様だけが示されている。しかしながら本発明は、これ以外のミキサ設計形態でも具体化することができ、たとえばノッチ型ミキサや、ローブ型ミキサとノッチ型ミキサの複合型ソリューションでも具体化することが可能である。
【0016】
図1に示すガスタービンないし航空機用エンジンは、少なくとも1つのロータ1と、ロータ1を収容するステータ2とを含んでいる。ロータ1を駆動するタービン3のうち動翼環4だけが示されている。複数のタービンならびにロータが設けられている場合、このタービン3は、下流側でもっとも遠くに位置決めされた低圧タービンであるのがよく、ならびに、下流側でもっとも遠くに配置された動翼環4であるのがよい。高温ガス通路5は左から右へ貫流が行われ、ミキサ8の下流側端部で終わっている。スワールすなわち関与する円周方向成分を伴なって最後部の動翼環4から出ていく高温ガスは、異形成形されて湾曲している実質的に半径方向に配置された案内リングのストラット7によって軸方向へ方向転換され、それにより、できる限りスワールを含んでいない。案内リング6とミキサ8は統合されて構造的、機能的なユニットをなしており、ストラット7の半径方向外側の端部はミキサ8の壁構造9と結合されている。ミキサ8は円周方向に連続する半径方向の隆起部10と陥没部11を有しており、これらは少なくとも近似的に回転対称な(仮想上の)境界面の間で、たとえば円錐面または円筒面の間で曲折して延びており、花びらのような幾何学形状をなしている。このとき陥没部11は高温ガス流に浸されるとともに隆起部10は周囲の空気流/バイパス流に浸され、下流側で流動媒体の所望の混合を引き起す。任意には、ミキサ8の壁構造9には、追加の混合プロセスを引き起す切欠き12(鎖線)および/または穴ならびにその他の通路要素が設けられていてもよい。各々のストラット7はその半径方向外側の端部のところで、壁構造9の陥没部11と少なくとも大部分が結合されている。陥没部11の個数は、ストラット7の個数または個数の整数倍に等しくてもよい。
【0017】
図2では、陥没部11の個数(および隆起部10の個数)はストラット7の個数と一致しており、すなわち、各々の陥没部11に1つのストラット7が付属している。ここにはミキサ8のローブ型ジオメトリーもよく見ることが可能である。
【0018】
図3は、図1のA−A線に沿った水平方向の部分切断によって得られたものである。左側には動翼環4を、その回転方向4および出口側の速度三角形とともに見ることが可能である。ステータに固定された基準系で結果として生じる速度ベクトルvsは、左下から右上に向いている。流れを方向転換させるストラット7は、速度ベクトルvsの方向がストラットの入口エッジの領域で、ストラット7の断面中心線に対してほぼ接線上を延びるように湾曲しており、それにより、できる限り損失の少ない好都合な流入が行われる。図3に示すように、ストラット7からミキサ8の壁構造9への移行領域で相応の移行半径が存在しており、そのために、ストラット7の出口エッジがこの半径方向の高さにおいて鋭いエッジ状ではなくなることを考慮すべきである。
【0019】
図4は、図1のB−B線すなわち、上記よりも低い半径方向高さで切られた水平方向の部分断面図を示している。ここに良く見られるとおり、ストラット7は、鋭い出口エッジと、ここでは水平方向である軸方向の流動出口方向とを有する、流動に好都合な断面形状を有している。このことは、各々のストラット7の半径方向高さ全体についてほぼ当てはまる。
【0020】
ストラットはその半径方向内側の端部で、たとえばリング状の部材を介して結合されていてもよく、ないしは内部のステータ構造に取り付けられていてもよく、ないしはこれに案内されていてもよい。このことは本発明の原理にとって重要ではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン(3)により駆動される少なくとも1つのロータ(1)と、ステータ(2)と、前記タービン(3)もしくは最後部の前記タービンの下流側で前記ステータに固定されて配置された、スワールを含む高温ガス流を方向転換させるための案内リング(6)を形成するストラット(7)と、高温ガス通路(5)の下流側端部に配置された、特に円周全体にわたって交代する半径方向の隆起部(10)および陥没部(11)を備えるいわゆるローブ型ミキサの形態のミキサ(8)とを備える航空機用エンジンのガスタービンにおいて、
前記案内リング(6)と前記ミキサ(8)は構造的ならびに流体工学的に統合されており、前記案内リング(6)の前記ストラット(7)はその半径方向外側の端部領域で前記ミキサ(8)の壁構造(9)と結合されていることを特徴とする、ガスタービン。
【請求項2】
ローブ型ミキサの形態のミキサ(8)を備えるガスタービンにおいて、前記案内リング(6)の各々の前記ストラット(7)はその半径方向外側の端部領域で前記ミキサ(8)の壁構造(9)の半径方向の陥没部(11)と少なくとも大部分が結合されていることを特徴とする、請求項1に記載のガスタービン。
【請求項3】
前記案内リング(6)の前記ストラット(7)は前記ミキサ(8)の上流側の部分でその壁構造(9)と結合されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のガスタービン。
【請求項4】
前記案内リング(6)の前記ストラット(7)は前記ミキサ(8)の壁構造(9)と一体的に結合されていることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のガスタービン。
【請求項5】
ローブ型ミキサの形態のミキサ(8)を備えるガスタービンにおいて、前記ミキサ(8)の半径方向の陥没部(11)の個数は前記案内リング(6)の前記ストラット(7)の個数に等しいか、またはその整数倍であることを特徴とする、請求項2ないし4のいずれか1項に記載のガスタービン。
【請求項6】
ローブ型ミキサの形態のミキサ(8)を備えるガスタービンにおいて、それぞれ半径方向の陥没部(11)から半径方向の隆起部(10)への移行領域には前記ミキサ(8)の下流側端部にまで達する楔状の切欠き(12)が前記壁構造(9)に設けられていることを特徴とする、請求項2ないし5のいずれか1項に記載のガスタービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−516946(P2010−516946A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547527(P2009−547527)
【出願日】平成20年1月26日(2008.1.26)
【国際出願番号】PCT/DE2008/000144
【国際公開番号】WO2008/092427
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(391028384)エムテーウー・アエロ・エンジンズ・ゲーエムベーハー (26)
【住所又は居所原語表記】DACHAUER STRASSE 665,80995 MUENCHEN,GERMANY