説明

案内軌条式車両用軌道上物除去装置

【課題】定められた専用軌道上を走行する案内軌条式車両の両頭に設けられた軌道上物除去装置を、簡単な構成で大きなコストを必要とせず、適切な力で軌道上物除去ブラシを軌道に押しつけられるようにすると共に、軌道上物除去ブラシが車両の走行方向後部側になったときは、容易に路面との接触を解除できるようにした、案内軌条式車両用軌道上物除去装置を提供することが課題である。
【解決手段】案内軌条式車両における車輪の走行方向前方に設けられたフレーム22と、該フレーム22に取り付けられて軌道上物除去用ブラシ12、14を保持したブラシホルダ18を上下動させる昇降機構28と、前記ブラシホルダ18と昇降機構28との間に設けられて車幅方向に回転軸を有する第1の回転機構202と、からなり、軌道上物除去用ブラシ12、14の路面38への接触点が、前記第1の回転機構202の回転軸よりも車両走行方向に対して車両中央側にあるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、案内軌条式車両用軌道上物除去装置に係り、特に、案内軌条式車両用軌道上への降雪や大量の落葉、大量の降砂、場合によってはカニや蛙等の動物などの異物を、効率良く、装置を破損することがないよう排除できるようにした、案内軌条式車両用軌道上物除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、専用軌道をゴムタイヤを使って走行して中量輸送を行なう、いわゆる新交通システムと呼ばれる輸送システムが普及している。これらの輸送システムは、大部分無人で全自動運転を行ない、例えば、案内軌条によって案内される案内輪をもつ場合もあるが、専用軌道上に降雪や、大量の落葉、大量の降砂、場合によってはカニや蛙等の動物などの異物が通行の邪魔になることがあり、排除する必要がある。
【0003】
そのため、例えば特許文献1には除雪装置としてではあるが、編成車両の両頭に設けられ、左右のタイヤの前方に位置して支持部材に支持された平面ハ字状に配置された左右のプラウと、前記支持部材に取り付けられ、前記左右のプラウを上方の浮上げ位置または下方の除雪位置に上下動させる昇降機構とを備え、左右のプラウが下方の除雪位置にある時には、前記左右のプラウの各下端がタイヤ走行路面に接触しているようにした装置が示されている。
【0004】
この特許文献1に示された除雪装置では、除雪装置を走行路面に接触させることで、車両走行前方の走行路面上の雪を車両の両側に除雪し、タイヤのスリップを防止するとともに、路面上に圧雪を残さないようにしている。また、車両の走行方向前側は除雪が必要なためにこの除雪装置を下げるが、後部は除雪後の走行路面となるため、除雪は必要ないから除雪装置は上げるようにしている。さらに除雪装置の前の雪は、ブラシのままだとブラシの束の凹凸で雪が左右に流れにくいため、サイドに雪をスムーズに流すためにブラシの前に排雪板を設けている。ブラシの材料としては、雪が付着しにくく、剛性があって摩耗しにくい材料が望まれるが、最適なものが昔より採用されている竹ブラシで、近年は合成樹脂ブラシが使われている。
【0005】
また鉄道線路内においては、トロリ線張替え、パンタグラフ回り、電柱建替え等、各種の作業があり、作業手法の改善を図って安全性の向上、省力化、効率化を推進するため、トラック式の軌道・道路両用走行方式の軌陸式作業車が提案されている。ところがJR線および各私鉄においては、標準軌道(1,435mm)、狭軌道(1,067mm)の二種類の幅を異にする軌道が用いられているため、これら各線における作業を一台の作業車で簡単に迅速に、しかも、安全に実施することができるようにした軌陸式作業車用走行装置が提案されている。
【0006】
しかしながらこのような軌陸式作業車用走行装置は、冬季に降雪があって狭軌道上を走行する際、電車等の排障器によって除雪されている場合には、狭軌道の外側方に除去されている氷雪が狭軌道の外側方に突出している後部外側のタイヤ付車輪の通過に支障を来たし、脱線等のおそれがあるため走行することができない。また、低温時において軌道上面が凍結していると、軌道走行用車輪は勿論のこと、特に、後部のタイヤ付車輪が滑る事象が発生し、走行に支障を来たす。従って、このような条件下では鉄道線路内の諸作業を能率良く行うことができない。
【0007】
そのため特許文献2には、作業用台車の前側部に回転可能な除雪歯、回転駆動用のモータ等から成る除雪装置と、回転ブラシ、回転駆動用のモータ等から成る除氷装置とを左右の軌道走行用車輪と共に移動し得るように設け、排気管の途中にバルブを介して排気吹き付け管を分岐させて、軌道走行用車輪と後部内側のタイヤ付車輪とで狭軌道上を走行する際、狭軌道の外側方に除去されている氷雪を除雪装置により除去し、狭軌道の外側方に位置している後部外側のタイヤ付車輪を支障なく通過させ、回転ブラシの回転と排気吹き付け管からの排気の吹き付けにより軌道面氷を除去して、走行時のスリップを防止するようにした、軌陸式作業車用走行装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−120037号公報
【特許文献2】特開平10−203360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら特許文献1に示された除雪装置は、ブラシが除雪のためにコンクリートの路面に常時接触している場合、押し付けられて曲げられているので簡単にバラバラになり易く、摩耗が早い。また、走行路がジョイントで接続されている部分は冬期の収縮で隙が大きくなり、ブラシが落ち込んで除雪装置そのものを破損してしまうことがある。さらに除雪しているとき、ブラシの昇降ガイド部や上昇用バネ部に雪が付着し、付着した状態で凍結してブラシが上昇しなくなる場合もある。
【0010】
一方、このように除雪ブラシをハの字に構成して車両サイドに排雪した場合、初期は良いがやがてサイドに排雪スペースが無くなった場合、雪は走行路面に戻ってきてしまうためにタイヤにより踏み固められて圧雪となり、走行路面の高さが上昇するとともにタイヤとの摩擦抵抗(μ)が低下して走行不能となることがある。また、降雪が長く続くと、ブラシが90度以下の角度で弾性体であることから、走行路面に薄い圧雪層を構成し、それが除々に堆積して厚い圧雪層を作ることになるとブラシでは除雪できなくなり、またタイヤとの摩擦抵抗も低下することから、車両の運行が不可能となる場合がある。さらに、ブラシの前で巻き上げられた雪がブラシの上を越えて昇降機構に付着し、ブラシの昇降に支障を来したり、走行路に堆積し、タイヤが踏み付けて圧雪を生成してしまうといった問題もある。
【0011】
また特許文献2の軌陸式作業車用走行装置は、回転可能な除雪歯とモータ等から成る除雪装置、回転ブラシとモータ等から成る除氷装置、これら除雪装置、除氷装置を前側左右の軌道走行用車輪と共に移動し得るようにした構成、など、複雑な構成を必要とし、装置が大がかりになると共にコストも必要になる。
【0012】
そのため本発明においては、簡単な構成で大きなコストを必要とせず、常に適切な力で軌道上物除去ブラシを軌道に押しつけられるようにすると共に、軌道上物除去ブラシが車両の走行方向後部側になったときは、容易に路面との接触を解除できるようにした、案内軌条式車両用軌道上物除去装置を提供することが課題である。
【0013】
また、軌道上物除去ブラシが簡単にバラバラになったりしないようにしたり、軌道上物除去ブラシを除雪ブラシとする場合は、サイドに排雪スペースが無くなった場合でも雪が走行路面に戻らないようにしたり、走行路ジョイント部が冬期に収縮し、隙が大きくなってもブラシが落ち込んで除雪装置そのものを破損することがないようにしたり、ブラシの昇降ガイド部や上昇用バネ部に付着した雪が、凍結することでブラシの昇降ができなくなることを防ぐ、といったことを可能とした、案内軌条式車両用軌道上物除去装置を提供することも本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため本発明になる案内軌条式車両用軌道上物除去装置は、
定められた専用軌道上を走行する案内軌条式車両の両頭に設けられた軌道上物除去装置であって、
前記案内軌条式車両における車輪の走行方向前方に設けられたフレームと、該フレームに取り付けられて軌道上物除去用ブラシを保持したブラシホルダを上下動させる昇降機構と、前記ブラシホルダと昇降機構との間に設けられて車幅方向に回転軸を有する第1の回転機構と、からなり、
前記軌道上物除去用ブラシの路面への接触点が、前記第1の回転機構の回転軸よりも車両走行方向に対して車両中央側にあることを特徴とする。
【0015】
このように本発明になる案内軌条式車両用軌道上物除去装置は、軌道上物除去用ブラシの路面への接触点が第1の回転機構の回転軸よりも車両走行方向に対して車両中央側にあるから、昇降機構により軽い力でブラシホルダを下側に押し下げると案内軌条式車両の走行に伴い、軌道上物除去用ブラシは必ず路面に接触することになり、簡単な構成で大きなコストを必要とせずに軌道上物の除去をおこなうことができる。また、軌道上物除去ブラシが車両の走行方向後部側になったときは、第1の回転機構で軌道上物除去ブラシ先端が上側に逃げ、例え昇降機構が動作しなくなっても、容易に路面との接触を解除することができる。
【0016】
また、前記ブラシホルダと前記第1の回転機構との間に設けられ、ブラシの路面への接触点より車両走行方向前方に車幅方向の回転軸を有した第2の回転機構を設けると、軌道上物除去ブラシが車両の走行方向後部側になったとき、例え昇降機構、第1と第2の回転機構のいずれか、が凍結などで動かなくなっても、容易に路面との接触を解除できる案内軌条式車両用軌道上物除去装置を提供することができる。
【0017】
さらに、前記フレームを、車両走行方向左右に回動可能に取り付け、所定の回転角度で固定可能な固定手段を設けたことで、所定の回転角度として例えば軌道上物を車両外側に排除する位置と車両内側に排除する位置とし、軌道上への大量の降雪や大量の落葉、大量の降砂等により、専用軌道のサイドに排雪スペースや落葉、降砂等を排除するスペースが無くなってしまった場合は、フレームを例えば車両内側排雪位置とすることで、排雪した雪や異物は車両における車軸方向中央部に集まり、タイヤのある走行路面に戻ったり凍結させるようなことを防止できる、案内軌条式車両用軌道上物除去装置とすることができる。
【0018】
そして、前記軌道上物除去装置フレームにラチェットレールを、前記ブラシホルダ側に前記ラチェットレールに係合するラチェット爪を設け、前記昇降機構により押し下げられたブラシホルダ側ラチェット爪が前記ラチェットレールと係合することで前記ブラシホルダ側が上昇方向に対してロックされるように構成されていることで、ブラシホルダを上下動させる昇降機構は、軽い力でブラシホルダを押し下げればブラシホルダはその位置でロックされ、それ以上の力を加えなくても軌道上物除去が可能な案内軌条式車両用軌道上物除去装置とすることができる。
【0019】
また、前記ラチェット爪はL型に構成されて一辺端部を前記昇降機構に回転可能に取り付けられ、他辺端部に爪部が設けられて、前記一辺と他辺の結合部が回転可能に前記フレームに取り付けられていることで、昇降機構によりブラシホルダを上昇させようとすると、ラチェット爪がラチェットレールから外れるから、容易にブラシホルダを上昇させることができる。
【0020】
さらに、前記軌道上物除去用ブラシは、前記ブラシホルダから接地部までを結束用紐、若しくはチューブにより束ねられていることで、ブラシが軌道上物除去のためにコンクリートの路面に常時接触していても、しっかり結束されていることで簡単にバラバラになることや、急速に摩耗することがなくなる。
【0021】
そして、前記軌道上物除去用ブラシは走行方向前後に2列設けられていることで、強力に軌道上物除去を行うと共にブラシがバラバラになるのも防ぐことができ、さらに、走行路がジョイントで接続されている部分の隙が大きくなっても、ブラシが落ち込んで壊れるようなことがなくなる。
【0022】
また、前記ブラシホルダの車両走行方向側に、上側が前方に湾曲したブラシカバーが設けられていることで、除雪の場合に雪が舞い上げられてもこのブラシカバーで車両走行方向前側に放出され、ブラシカバーと車体との間にある機構に付着して凍結するのを防いだり、路面に戻って路面を凍結させたりするのを防ぐことができる。
【0023】
さらに、前記昇降機構は、前記フレームに設けられてスプリングホルダに覆われた戻しバネによる上方への押圧力に抗し、前記ブラシホルダを押し下げられるよう配されていることで、昇降機構によるブラシを上昇させる力は小さくて済む。
【0024】
また、前記車輪とブラシとの間に、前記フレームに支持されたブラシ押さえが設けられていることで、ブラシが路面と接触して上方に逃げようとしても、前記した路面への接触点が第1の回転機構の回転軸よりも車両走行方向に対して車両中央側にあることと相俟って、ブラシを強力に路面に押しつけることが可能となり、専用軌道上に降雪や、大量の落葉、大量の降砂、場合によってはカニや蛙等の動物などの異物があっても、容易に除去できる案内軌条式車両用軌道上物除去装置とすることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上記載のごとく本発明になる案内軌条式車両用軌道上物除去装置は、軌道上物除去用ブラシの路面への接触点が第1の回転機構の回転軸よりも車両走行方向に対して車両中央側にあるから、昇降機構により軽い力でブラシホルダを下側に押し下げると案内軌条式車両の走行に伴い、軌道上物除去用ブラシは必ず路面に接触することになり、簡単な構成で大きなコストを必要とせずに軌道上物の除去をおこなうことができる。また、軌道上物除去ブラシが車両の走行方向後部側になったときは、第1の回転機構で軌道上物除去ブラシ先端が上側に逃げ、例え昇降機構が動作しなくなっても、容易に路面との接触を解除することができる。
【0026】
また、第2の回転機構を備えることで、軌道上物除去ブラシが車両の走行方向後部側になったとき、例え昇降機構、第1と第2の回転機構のいずれか、が凍結などで動かなくなっても、容易に路面との接触を解除でき、さらに、フレームを軌道上物を車両外側に排除する位置と車両内側に排除する位置に固定できるようにしたことで、軌道上への大量の降雪や大量の落葉、大量の降砂等により、専用軌道のサイドに排雪スペースや落葉、降砂等を排除するスペースが無くなってしまった場合でも、フレームを車両内側排除位置とすれば排雪した雪や異物は車両における車軸方向中央部に集まり、タイヤのある走行路面に戻ったり凍結させるようなことを防止できる、案内軌条式車両用軌道上物除去装置とすることができる。
【0027】
そして、フレームにラチェットレールを、ブラシホルダ側にラチェット爪を設けたことで、ラチェット爪がラチェットレールと係合するとブラシホルダ側が上昇方向に対してロックでき、ブラシホルダを上下動させる昇降機構は、軽い力でブラシホルダを押し下げるだけで、それ以上の力を加えなくても軌道上物除去が可能な案内軌条式車両用軌道上物除去装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明になる案内軌条式車両用軌道上物除去装置の実施例1の平面図である。
【図2】本発明になる案内軌条式車両用軌道上物除去装置の実施例1の側面図で、(A)は支持枠に設けたリンク機構部分を示した側面図、(B)は昇降機構たるシリンダ部分を示した側面図、(C)は戻しスプリング部分を示した一部破断側面図である。
【図3】本発明になる実施例1の軌道上物除去装置を備えた案内軌条式車両の平面図である。
【図4】本発明になる案内軌条式車両用軌道上物除去装置の空気回路の一例ブロック図である。
【図5】本発明になる案内軌条式車両用軌道上物除去装置の制御回路の一例ブロック図である。
【図6】本発明になる案内軌条式車両用軌道上物除去装置の実施例2の平面図である。
【図7】本発明になる案内軌条式車両用軌道上物除去装置の実施例2の側面図で、(D)は支持枠に設けたリンク機構部分を示した側面図、(E)は昇降機構たるシリンダ部分を示した側面図、(F)は戻しスプリング部分を示した一部破断側面図である。
【図8】本発明になる案内軌条式車両用軌道上物除去装置の実施例3、4の平面図である。
【図9】本発明になる案内軌条式車両用軌道上物除去装置の実施例3、4の側面図で、(G)は支持枠に設けたリンク機構部分を示した側面図、(H)は昇降機構たるシリンダ部分を示した側面図、(J)は戻しスプリング部分を示した一部破断側面図である。
【図10】本発明になる実施例3、4の軌道上物除去装置を備えた案内軌条式車両の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りはこの発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0030】
最初に本発明の概略を簡単に説明すると、本発明は、前記したように定められた専用軌道を走行する案内軌条式車両の両頭に、通常は平面ハの字状に左右に配置された軌道上物除去装置に関するものであり、特許文献1と同様、車輪の走行方向前方に設けられたフレームと、そのフレームに取り付けられて軌道上物除去用ブラシを保持したブラシホルダを上下動させる昇降機構と、ブラシホルダと昇降機構との間に設けられて車幅方向に回転軸を有する第1の回転機構とからなり、前記軌道上物除去用ブラシの路面への接触点が、第1の回転機構の回転軸よりも車両走行方向に対して車両中央側に設けられている。
【0031】
そのため、本発明になる案内軌条式車両用軌道上物除去装置は、昇降機構により軽い力でブラシホルダを下側に押し下げると、案内軌条式車両の走行に伴い、軌道上物除去用ブラシは必ず路面に接触することになり、簡単な構成で大きなコストを必要とせずに軌道上物の除去をおこなうことができる。また、軌道上物除去ブラシが車両の走行方向後部側になったときは、第1の回転機構で軌道上物除去ブラシ先端が上側に逃げ、例え昇降機構が動作しなくなっても、容易に路面との接触を解除することができる。
【0032】
また本発明では、前記ブラシホルダと第1の回転機構との間に、第1の回転機構と同様に、ブラシの路面への接触点より車両走行方向前方に車幅方向の回転軸を有した第2の回転機構を設けても良い。こうすると、軌道上物除去ブラシが車両の走行方向後部側になったとき、例え昇降機構、第1と第2の回転機構のいずれか、が凍結などで動かなくなっても、容易に路面との接触を解除できる案内軌条式車両用軌道上物除去装置を提供することができる。
【0033】
さらに本発明では、昇降機構が取り付けられたフレームを車両走行方向左右に回動可能に構成し、軌道上物を車両外側に排除する位置と車両内側に排除する位置の角度で固定できるようにして、軌道上への大量の降雪や大量の落葉、大量の降砂等により、専用軌道のサイドに排雪スペースや落葉、降砂等を排除するスペースが無くなってしまった場合でも、排雪する雪や異物を車両における車軸方向中央部に集め、それらがタイヤのある走行路面に戻ったり凍結することを防止できるようにする。
【0034】
そして、フレームの昇降機構にラチェットレールを設けると共に、ブラシホルダ側にこのラチェットレールに係合するラチェット爪を設け、前記昇降機構により押し下げられたブラシホルダ側ラチェット爪がラチェットレールと係合することで、ブラシホルダ側が上昇方向に対してロックされるように構成しても良い。こうすると、ブラシホルダを上下動させる昇降機構は軽い力でブラシホルダを押し下げれば、ブラシホルダはその位置でロックされてそれ以上の力を加えなくても、軌道上物除去が可能な案内軌条式車両用軌道上物除去装置とすることができる。
【0035】
このラチェット爪は、L型に構成して一辺端部を昇降機構に回転可能に取り付け、他辺端部に爪部を設けて一辺と他辺の結合部を回転可能にフレームに取り付けると、昇降機構によりブラシホルダを上昇させる場合、ラチェット爪がラチェットレールから外れ、容易にブラシホルダを上昇させることができる。
【0036】
そして軌道上物除去用のブラシは、ブラシホルダから接地部までを結束用紐、若しくはチューブにより束ねると、ブラシが軌道上物除去のためにコンクリートの路面に常時接触していても、簡単にバラバラになったり急速に摩耗することがなくなる。さらに軌道上物除去用ブラシを、走行方向前後に2列設けると強力に軌道上物除去を行うと共にブラシがバラバラになるのも防ぐことができ、さらに、走行路がジョイントで接続されている部分の隙が大きくなっても、ブラシが落ち込んで壊れるようなことがなくなる。
【0037】
また、前記ブラシホルダの車両走行方向側に、上側が前方に湾曲したブラシカバーを設けることも本発明の実施形態であり、こうすることで、除雪の場合に雪が舞い上げられてもこのブラシカバーで車両走行方向前側に放出され、ブラシカバーと車体との間にある機構に付着して凍結するのを防いだり、路面に戻って路面を凍結させたりするのを防ぐことができる。
【0038】
以上が本発明の概略であるが、次に図1乃至図3を用い、本発明の実施例1について説明する。最初に図3の、本発明になる実施例1の軌道上物除去装置を備えた案内軌条式車両用の平面図を用い、案内軌条式車両について簡単に説明する。
【0039】
この図3において、10は本発明の軌道上物除去装置であり、32は車両に取り付けられた案内横梁で、軌道上物除去装置10、ガイドレールに接して案内軌条式車両44を案内するための案内輪50が取り付けられる。44は車両の外形を示した線で、46は案内軌条式車両を導くためのガイドレール、48は案内軌条式車両44の走行タイヤであり、案内軌条式車両44は、図示していない駆動装置で走行タイヤ48が駆動され、ガイドレール46に案内輪50が接して専用軌道上を案内されて走行する。
【0040】
本発明の軌道上物除去装置10は、通常は図示のように案内横梁32の左右に平面ハの字状に配され、案内軌条式車両44の走行方向前方となったとき、軌道上物除去装置10の軌道上物除去ブラシが路面に接し、専用軌道上の降雪や大量の落葉、大量の降砂、場合によってはカニや蛙等の動物などの異物などの通行の邪魔になる軌道上物を除去できるようになっている。また、走行時に後側となる軌道上物除去装置10は、軌道上物除去ブラシが路面に接しないよう持ち上げられ、路面での摩耗を防ぐ。
【0041】
図1は、この案内軌条式車両用軌道上物除去装置10の実施例1の平面図であり、図2は(A)が支持枠20に設けたリンク機構200部分を示した側面図、(B)は昇降機構たるシリンダ28部分を示した側面図、(C)は戻しスプリング26部分を示した一部破断側面図である。なお、これらの図において同一構成要素には同一番号を付してある。
【0042】
まず図1において、12、14は軌道上物除去ブラシaとb、16は例えば除雪する雪などが前方に舞い上げられたとき、ブラシホルダ18を越えて軌道上物除去装置10の機構部や路面に付着し、機構部を凍結させて動かなくしたり路面で圧雪となり、運行に支障をきたしたりすることの無いよう、上側が前方に湾曲したブラシカバーである。20は支持枠プレート200に設けられた回転軸202により、軌道上物除去ブラシa12とb14とを配したブラシホルダ18を回転可能に保持し、左右両側に設けられたガイド軸24に添って昇降機構を構成するシリンダ28により上下する支持枠、22は、車両44の前記した案内横梁32に取り付けられたブラケット30に設けられた軌道上物除去装置フレーム、26は昇降機構を構成するシリンダ28により下降した支持枠20に、上に戻す方向の力を加える戻しスプリング、36は軌道上物除去ブラシa12とb14が軌道上物を排除できずに持ち上がったり、バラバラになるのを防ぐためのでブラシ押えである。
【0043】
本発明になる軌道上物除去装置10における、軌道上物を除去するブラシは、例えば竹の素線材を束ねたものや、合成樹脂の素線材を束ねた剛性のある材料を、車両44の幅方向に複数配してブラシホルダ18で挟んで保持した軌道上物除去ブラシa12と、その軌道上物除去ブラシa12のほぼ中央部分に軌道上物除去ブラシa12より狭い範囲に束ねたブラシを配してブラシホルダ18で挟んで保持した、軌道上物除去ブラシb14とでなっている。軌道上物除去ブラシb14は、走行路がジョイントで接続されている部分が冬期の収縮で隙が大きくなり、軌道上物除去ブラシa12が落ち込んで壊れるのを防止すると共に、軌道上物除去ブラシa12の剛性をさらに高めるために設けてある。
【0044】
このブラシホルダ18は、ガイド軸24に添って昇降機構を構成するシリンダ28により上下する支持枠20に設けられた支持枠プレート200に、回転軸202で回転可能に取り付けられ、後記するようにこの支持枠プレート200のストッパー204の位置から上方にのみ回転できるようになっている。そして車両44の案内横梁32から斜め前方にせり出して固定された、ブラケット30に設けられた軌道上物除去装置フレーム22における、左右に設けられたガイド軸24に支持枠20の車両側が挿通され、戻しスプリング26によって上方への力を加えられる。
【0045】
次の図2の側面図において、34は上下する支持枠20を挿通したガイド軸24などに雪が付着しないようにする、覆いとしてのジャバラ、38は走行路面、40はブラシホルダ18を回転可能に固定する回転軸202の中心線、42はブラシが路面に接触する中心線である。また、204は回転軸202で回転するブラシホルダ18がそれ以上車両側に回転するのを阻止するストッパー、206は支持枠20のシリンダ軸280との結合部、260はスプリング26に雪などが付着しないよう保護するためのスプリングホルダである。
【0046】
図2(A)に示したように、ブラシホルダ18は回転軸202で上方には自由に回転できるが、支持枠プレート200に設けられたストッパー204より車両中央方向にはそれ以上回転できない。また、2つの軌道上物除去ブラシa12、軌道上物除去ブラシb14は、例え軌道上物によって強く押されても、ブラシ押え36により押さえられて軌道上物をしっかり排除できるようになっている。そしてブラシホルダ18がストッパー204に当接したとき、及びブラシ押え36により押さえられたとき、ブラシの路面接触中心線42はブラシホルダ18の回転軸中心線40から、車両走行方向に対して距離L1だけ車両中央側となっている。
【0047】
そのため2つの軌道上物除去ブラシa12、軌道上物除去ブラシb14は、走行する前にこのブラシの路面接触中心線42が回転軸中心線40の近くにあったとしても、走行しながらブラシホルダ18を保持した支持枠20を下降させることで、先端が走行路面38に接触したとき、路面接触中心線42が必ず回転軸中心線40から距離L1だけ車両中央側となり、ストッパー204、ブラシ押え36により押さえられ、先端が走行路面38に強く押しつけられることになって、効果的に軌道上物除去をおこなうことができる。
【0048】
また、この図2(A)に120の番号を付したのは結束用紐、若しくはチューブで、この結束用紐、若しくはチューブは、軌道上物除去ブラシa12、軌道上物除去ブラシb14が長期にわたって路面に押しつけられることでバラバラになって壊れるのを防ぐため、これらブラシa12、b14を保持するブラシホルダ18から路面への接地部までを束ねて固縛するためのものである。このように、結束用紐、若しくはチューブで固縛することで、ブラシa12、b14が軌道上物除去のためにコンクリートの路面に常時接触していても、しっかり結束されていることで簡単にバラバラになることがなく、急速に摩耗することもなくなる。なお、チューブを用いる場合、熱で収縮するビニールチューブなどを用いて固縛すると、さらに効果が大きくなる。
【0049】
そしてこの軌道上物除去ブラシa12、軌道上物除去ブラシb14を保持するブラシホルダ18には、例えば除雪する雪などが前方に舞い上げられたとき、ブラシホルダ18を越えて軌道上物除去装置10の機構部や路面に付着し、機構部を凍結させて動かなくしたり路面で圧雪となり、運行に支障をきたしたりすることの無いよう、その前面の幅方向一杯に、上側が前方に湾曲したブラシカバー16が設けられている。
【0050】
図2(B)は、支持枠20を昇降させるエアシリンダ28と支持枠20との関係を示した側面図であり、支持枠20はその下部に設けられたシリンダ軸結合部206でエアシリンダ28の軸280と結合され、このエアシリンダ28に空気を送ることで支持枠20が昇降できるようになっている。さらに図2(C)は、支持枠20を上方向に押す戻しスプリング26周りの構造を示した側面図であり、図1に示したように、戻しスプリング26は軌道上物除去装置フレーム22のガイド軸24近くに設けられ、スプリングホルダ260で周りを覆われて、雪などで凍結しないようになっている。そのため、もしシリンダ28が壊れた場合、支持枠20はこの戻しスプリング26で上に押し上げられ、軌道上物除去ブラシa12、軌道上物除去ブラシb14が壊れるのを防ぐようになっている。
【0051】
このように案内軌条式車両用軌道上物除去装置を構成することで、車両が走行すると昇降機構たるエアシリンダ28は、戻しスプリング26の支持枠20を押し上げる力に抗して支持枠20を押し下げ、走行路面38に接触した軌道上物除去ブラシa12、軌道上物除去ブラシb14の接地部に作用する力はブラシ12、14を路面に押し付ける方向に作用するので、小さなエアシリンダ28でも充分にその機能を果たすことができる。また、軌道上物除去ブラシが車両の走行方向後部側になったときは、第1の回転機構で軌道上物除去ブラシ先端が上側に逃げ、例え昇降機構たるエアシリンダ28が凍結などで動作しなくなっても、容易に路面との接触を解除することができる。
【0052】
図4は、本発明になる案内軌条式車両用軌道上物除去装置の空気回路の一例ブロック図である。図中、52は減圧弁、54、56は車両の前後の軌道上物除去装置10を昇降させるシリンダにエアを送り込むため、車両の前側に設けられた軌道上物除去装置を昇降させる電磁弁前と、車両の後側に設けられた軌道上物除去装置を昇降させる電磁弁後、58、60は車両の前側に設けられた軌道上物除去装置を昇降させる左右の昇降シリンダ前Rと、昇降シリンダ前L、62、64は同じく車両の後側に設けられた軌道上物除去装置を昇降させる左右の昇降シリンダ後Rと、昇降シリンダ後L、66は締切コック、68は元圧、70はサイレンサである。
【0053】
また図5は、本発明になる案内軌条式車両用軌道上物除去装置の制御回路の一例ブロック図である。図中、72は軌道上物除去装置NFB(No Fuse Breaker:配線用遮断器)、74は除去装置スイッチ、76は制御回路、78は車両前後進信号、80は強制手動スイッチ、54、56は図4に示した電磁弁前54と電磁弁後56である。
【0054】
図4の減圧弁52の設定圧力は、戻しスプリング26、軌道上物除去装置10の自重、ガイド軸24の抵抗などを加味し、軌道上物除去時に軌道上物除去ブラシa12、軌道上物除去ブラシb14が走行路面38から離れない最低圧に設定する。その上で図5の除去装置スイッチ74をONすると、制御回路76は車両前後進信号78により車両がどちらの方向に進んでいるかを検知し、また、強制手動スイッチ80から軌道上物除去ブラシa12、軌道上物除去ブラシb14の強制上昇、強制下降の指示信号が来ているかどうかを確認し、図4の走行方向前側の電磁弁、すなわち電磁弁前54には軌道上物除去ブラシa12、軌道上物除去ブラシb14を下降させる指示を、後側の電磁弁後56には上昇の信号を送る。
【0055】
すると図4に示した電磁弁前54は、対応する昇降シリンダ前R58、昇降シリンダ前L60を下降させるよう、それぞれのシリンダの上からエアが送り込まれるように切り換えられる。また、電磁弁後56は、対応する昇降シリンダ後R62、昇降シリンダ後L64を上昇させるよう、それぞれのシリンダの下からエアが送り込まれるように切り換えられる。そして減圧弁52を介して元圧68からエアが送り込まれ、前位軌道上物除去装置10は下降され、後位軌道上物除去装置10は上昇させられて、前位軌道上物除去装置10は軌道上の降雪や大量の落葉、大量の降砂、場合によってはカニや蛙等の動物などの異物があっても容易にそれらを除去することができ、後位軌道上物除去装置10は、走行路面38にブラシが接触しないように上昇させられる。
【0056】
以上が本発明になる案内軌条式車両用軌道上物除去装置の実施例1であるが、この実施例1においてはブラシホルダ18は、支持枠20の支持枠プレート200と1つの回転軸202で接続されており、この回転軸202が凍結した場合、ブラシホルダ18が上方に回転できなくなる。すると、車両の走行方向が逆になって軌道上物除去装置10が後側になり、上昇させたいが凍結してそれもできない、という事態に陥ったとき、軌道上物除去ブラシa12、軌道上物除去ブラシb14が壊れてしまうことがある。
【0057】
それに対処したのが図6、図7に示した本発明になる案内軌条式車両用軌道上物除去装置の実施例2である。このうち図6は、前記実施例1における図1に対応した平面図であり、図7は前記実施例1における図2に対応した側面図である。図1、図2と同様な構成要素には同一番号を付してあるため、異なる構成要素について説明すると、82は回転軸820、822を有してブラシホルダ18を保持する支持枠86のリンク、84はブラシホルダ18の上昇を一定の位置で止めるための上昇時固定ピン、844は走行時にブラシホルダ18が車両中央方向に一定以上回転しないようにするリンク84のストッパー、860は支持枠86に設けられた支持枠プレート、862は支持枠86側のストッパー、864はシリンダ軸結合部、88は実施例2の軌道上物除去装置の回転軸中心線である。
【0058】
この実施例2の案内軌条式車両用軌道上物除去装置では、支持枠86に設けられた支持枠プレート860に、2つの回転軸820、822を有するリンク82によりブラシホルダ18が保持されている。それぞれの回転軸によるブラシホルダ18の回転範囲は、ストッパー844、ストッパー862により規制され、それによって例え軌道上物によって軌道上物除去ブラシa12、軌道上物除去ブラシb14が強く押されても、ブラシ押え36があることと相俟って、軌道上物をしっかり排除できるようになっている。そしてブラシホルダ18がストッパー844、862に当接したとき、及びブラシ押え36により押さえられたとき、ブラシの路面接触中心線42はブラシホルダ18の回転軸中心線88から、車両走行方向に対して距離L2だけ車両中央側となっている。
【0059】
そのため2つの軌道上物除去ブラシa12、軌道上物除去ブラシb14は、走行する前にこのブラシの路面接触中心線42が回転軸中心線40の近くにあったとしても、走行しながらブラシホルダ18を保持した支持枠86を下降させることで、先端が走行路面38に接触したとき、路面接触中心線42が必ず回転軸中心線86から距離L2だけ車両中央側となる。そのため、ストッパー844、862、ブラシ押え36により押さえられ、先端が走行路面38に強く押しつけられることになって、効果的に軌道上物除去をおこなうことができる点は実施例1と同様である。なお、120の番号を付した結束用紐、若しくはチューブでブラシa12、b14を束ねて固縛することも実施例1と同様である。
【0060】
そしてこの実施例2では、車両の走行方向が逆になって軌道上物除去装置10が後側になり、その際に昇降機構たるシリンダ28が動作しなかった場合や、リンク82の回転軸820、822のどちらかが凍結して動かなくなった場合も、凍結しなかった回転軸によりブラシホルダ18の上方への回転が可能となる。なお、先に図4、図5で説明した空気回路と制御回路は、先に説明したのと同様なので説明を省略する。これは、次の実施例3、4の場合も同様である。
【0061】
図8、図9、図10は、本発明になる案内軌条式車両用軌道上物除去装置の実施例3、4の平面図、側面図、案内軌条式車両の平面図である。実施例1、2では、軌道上物除去装置10は、走行する案内軌条式車両の両頭に平面ハの字状に左右に配置され、軌道上物をガイドレール46側に排除するようになっている。しかしながらこのようにした場合、初期は良いがやがてサイドに排雪スペースが無くなった場合、雪は走行路面に戻ってきてしまうためにタイヤにより踏み固められて圧雪となり、走行路面の高さが上昇するとともにタイヤとの摩擦抵抗(μ)が低下して走行不能となることがある。
【0062】
そのためこの実施例3においては、ブラシホルダ18を保持した軌道上物除去装置フレーム22を、車両走行方向左右に回動可能に構成すると共に、軌道上物を車両外側に排除する位置と車両内側に排除する位置、及び必要に応じて走行方向に対して直角の方向となる位置、など複数の角度で固定できるようにしたものである。
【0063】
また、実施例1、2においては、ブラシホルダ18を下降させる場合、シリンダ28は戻しスプリング26のブラシホルダ18を押し上げる力に抗して下降させ、さらに軌道上物除去ブラシa12、軌道上物除去ブラシb14が常時走行路面38に接触しているように押下力を加え続けねばならない。そのためこの実施例4においては、ブラシホルダ18を一定の位置に押し下げた後は、押下力を加え続けなくてもその位置を保持できるようにしたもので、以下、これら実施例3、4を、図8乃至図10に一緒に示したので纏めて説明する。
【0064】
図8は前記実施例1、2における図1、図6に対応した平面図であり、図9は前記実施例1、2における図2、図7に対応した側面図、図10は案内軌条式車両の平面図である。図1、図6、図2、図7、図3と同様な構成要素には同一番号を付してあるため、異なる構成要素について説明すると、90は図1、図6におけるガイド軸24の代わりにブラシホルダ18を昇降させるためのリニアガイド、92はブラシホルダ18を、車両走行方向左右に回動可能とする回転軸、94は内側排除位置決め穴940、直角排除位置決め穴942、外側排除位置決め穴944を有し、ブラシホルダ18を、軌道上物を車両外側に排除する位置、車両走行方向に対して直角の方向となる位置、車両内側に排除する位置それぞれの角度で固定できるようにした位置決め板、96はブラシホルダ18を支持枠プレート960で支持する支持枠、962はブラシホルダ18の回転角度を規制する支持枠側のストッパー、100はL型に構成されて一辺端部を昇降機構たるシリンダ軸280に回転可能に取り付け、他辺端部に爪部を設けて一辺と他辺の結合部を支持枠96に回転可能に取り付けて、シリンダ28がブラシホルダ18を下降させた位置でラチェットレール98に係合し、ブラシホルダ18を上昇方向に対してロックできるようにしたラチェット爪、964は支持枠96に設けられ、ラチェット爪100にラチェットレール98と係合する方向に力を加えるコイルバネ102を有したラチェット爪結合部、104はラチェットレール98に雪が付着して凍結するのを防止するためのジャバラ、106は実施例3、4の軌道上物除去装置である。
【0065】
図10において、106は本発明の実施例3、4の軌道上物除去装置であり、32は車両に取り付けられた案内横梁で、軌道上物除去装置106、ガイドレールに接して案内軌条式車両44を案内するための案内輪50が取り付けられる。44は車両の外形を示した線で、46は案内軌条式車両を導くためのガイドレール、48は案内軌条式車両44の走行タイヤであり、案内軌条式車両44は図示していない駆動装置で走行タイヤ48が駆動され、ガイドレール46に案内輪50が接して専用軌道上を案内されて走行する。
【0066】
そしてこの実施例3、4の軌道上物除去装置106は、通常は案内横梁32の左右に平面ハの字状に配置されるが、軌道上への大量の降雪や大量の落葉、大量の降砂等により、専用軌道のサイドに排雪スペースや落葉、降砂等を排除するスペースが無くなってしまった場合、図示のように軌道上物を車両内側に排除する位置とし、雪や異物を車両における車軸方向中央部に排除して、タイヤのある走行路面に戻ったり凍結させるようなことを防止するようにする。
【0067】
その機構を示したのが図8の平面図である。この実施例3、4の案内軌条式車両用軌道上物除去装置は、前記したようにブラシホルダ18を保持した軌道上物除去装置フレーム22を、回転軸92で車両走行方向左右に回動可能に構成すると共に、位置決め板942に所定の回転角度毎に設けた内側排除位置決め穴940、直角排除位置決め穴942、外側排除位置決め穴944に図示していないボルトとナット等を用い、軌道上物を車両外側に排除する位置と車両内側に排除する位置、及び必要に応じて走行方向に対して直角の方向となる位置、など複数の所定角度で固定できるようにしてある。
【0068】
そのため、通常は位置決め板94における外側排除位置決め穴944を用い、軌道上物除去装置106を平面ハの字状に固定してガイドレール46側に軌道上物を排除するが、前記したようにガイドレール46側に雪などが溜まってしまった場合、内側排除位置決め穴940軌道上物除去装置106を平面逆ハの字状に固定して、雪や異物を車両における車軸方向中央部に排除し、タイヤのある走行路面に戻ったり凍結させるようなことを防止するようにする。
【0069】
なお、この軌道上物除去装置フレーム22の左右回転位置決めを、位置決め板94やボルト、ナットなどを用いるのではなく、アクチュエーターにより行うようにすることもできる。すなわちブラケット30にアクチュエータを固定し、このアクチュエータにより伸縮するロッドで、軌道上物除去装置フレーム22を回転させるようにすれば、軌道上物除去角度の変更が走行中でも可能となり、除雪状況に応じて迅速に対応することが可能となる。ここで用いるアクチュエーターとしては、エアシリンダ、電動シリンダ、電動モーター等で構成できる。
【0070】
次に図8、図9を用い、ブラシホルダ18を一定の位置に押し下げた後、押下力を加え続けなくてもその位置を保持できるようにした機構について説明すると、図8、図9(G)において90はガイド軸24の代わりにブラシホルダ18を昇降させるためのリニアガイドで、図9(H)において98はラチェットレール、100はこのラチェットレール98に係合するラチェット爪である。なお、この実施例3、4の支持枠96によるブラシホルダ18の保持は、前記図6、図7で説明した回転軸820、822を有するリンク82によるものであるので説明は省略する。
【0071】
前記したようにしてシリンダ28がブラシホルダ18を、戻しスプリング26の押し上げ力に抗して下降させると、ラチェット爪100はコイルバネ102によってラチェットレール98と係合する方向の力が加えられているから、押し下げられた位置でラチェットレール98と係合し、シリンダ28は押下力を加え続けなくてもその位置を保持できる。このラチェット爪100とラチェットレール98との係合の解除は、シリンダ28のリンダ軸280を上昇させると、まずラチェット爪100が係合を解除する方向に回転し、それによって係合が解除されて支持枠96が上昇して軌道上物除去ブラシa12、軌道上物除去ブラシb14が押し上げられる。
【0072】
なお、前記したように2つの軌道上物除去ブラシa12、軌道上物除去ブラシb14は、走行する前にこのブラシの路面接触中心線が回転軸中心線の近くにあったとしても、走行しながらブラシホルダ18を保持した支持枠96を下降させることで、先端が走行路面38に接触したとき、路面接触中心線が必ず回転軸中心線から距離Lだけ車両中央側となる。そのため、ストッパー844、962、ブラシ押え36により押さえられ、先端が走行路面38に強く押しつけられることになって、効果的に軌道上物除去をおこなうことができる点は実施例1、2と同様である。なお、120の番号を付した結束用紐、若しくはチューブでブラシa12、b14を束ねて固縛することも実施例1と同様である。また、実施例3、4の機構は実施例1にも適用可能であり、軌道上物除去ブラシa12、軌道上物除去ブラシb14におけるブラシの配列方法も図示の例に限定されないことは自明である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、簡単な構成で大きなコストを必要とせず、適切な力で軌道上物除去ブラシを軌道に押しつけられて、確実に軌道上物を除去できる案内軌条式車両用軌道上物除去装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0074】
10 軌道上物除去装置
12 軌道上物除去ブラシa
120 チューブ
14 軌道上物除去ブラシb
16 ブラシカバー
18 ブラシホルダ
20 支持枠
200 支持枠プレート
202 回転軸
204 ストッパー
206 シリンダ軸結合部
22 軌道上物除去装置フレーム
24 ガイド軸
26 戻しスプリング
260 スプリングホルダ
28 シリンダ
280 シリンダ軸
30 ブラケット
32 案内横梁
34 ジャバラ
36 ブラシ押え
38 走行路面
40 回転軸中心線
42 ブラシの路面接触中心線
44 車両外形
46 ガイドレール
48 走行タイヤ
50 案内輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定められた専用軌道上を走行する案内軌条式車両の両頭に設けられた軌道上物除去装置であって、
前記案内軌条式車両における車輪の走行方向前方に設けられたフレームと、該フレームに取り付けられて軌道上物除去用ブラシを保持したブラシホルダを上下動させる昇降機構と、前記ブラシホルダと昇降機構との間に設けられて車幅方向に回転軸を有する第1の回転機構と、からなり、
前記軌道上物除去用ブラシの路面への接触点が、前記第1の回転機構の回転軸よりも車両走行方向に対して車両中央側にあることを特徴とする案内軌条式車両用軌道上物除去装置。
【請求項2】
前記ブラシホルダと前記第1の回転機構との間に設けられ、ブラシの路面への接触点より車両走行方向前方に車幅方向の回転軸を有した第2の回転機構を設けたことを特徴とする請求項1に記載した案内軌条式車両用軌道上物除去装置。
【請求項3】
前記フレームを、車両走行方向左右に回動可能に取り付け、所定の回転角度で固定可能な固定手段を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載した案内軌条式車両用軌道上物除去装置。
【請求項4】
前記軌道上物除去装置フレームにラチェットレールを、前記ブラシホルダ側に前記ラチェットレールに係合するラチェット爪を設け、前記昇降機構により押し下げられたブラシホルダ側ラチェット爪が前記ラチェットレールと係合することで前記ブラシホルダ側が上昇方向に対してロックされることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載した案内軌条式車両用軌道上物除去装置。
【請求項5】
前記ラチェット爪はL型に構成されて一辺端部を前記昇降機構に回転可能に取り付けられ、他辺端部に爪部が設けられて、前記一辺と他辺の結合部が回転可能に前記フレームに取り付けられていることを特徴とする請求項4に記載した案内軌条式車両用軌道上物除去装置。
【請求項6】
前記軌道上物除去用ブラシは、前記ブラシホルダから接地部までを結束用紐、若しくはチューブにより束ねられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載した案内軌条式車両用軌道上物除去装置。
【請求項7】
前記軌道上物除去用ブラシは走行方向前後に2列設けられていることを特徴とする請求項6に記載した案内軌条式車両用軌道上物除去装置。
【請求項8】
前記ブラシホルダの車両走行方向側に、上側が前方に湾曲したブラシカバーが設けられていることを特徴とする請求項7に記載した案内軌条式車両用軌道上物除去装置。
【請求項9】
前記昇降機構は、前記フレームに設けられてスプリングホルダに覆われた戻しバネによる上方への押圧力に抗し、前記ブラシホルダを押し下げられるよう配されていることを特徴とする請求項8に記載した案内軌条式車両用軌道上物除去装置。
【請求項10】
前記車輪とブラシとの間に、前記フレームに支持されたブラシ押さえが設けられていることを特徴とする請求項9に記載した案内軌条式車両用軌道上物除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−241312(P2010−241312A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93509(P2009−93509)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】