説明

梱包材および梱包体

【課題】架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物を梱包して、長期にわたって保管、流通しても、架橋剤の気散が抑えられ、架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体の架橋性能の低下を抑えることができる梱包材を提供する。また、その梱包材で梱包した梱包体を提供する。
【解決手段】架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1を梱包する梱包材3であって、梱包材3の酸素透過度を30ml/m/day/MPa以下とする。また、この梱包材3で、架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1を梱包した梱包体とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梱包材および梱包体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題に対する関心が益々高まっており、二酸化炭素の排出による温室効果を抑制するための検討が各方面で行われている。中でも、太陽光発電は、そのクリーン性や無公害性という点から期待が高まっている。
【0003】
太陽電池は、太陽光のエネルギーを電気に直接変換する太陽光発電システムの心臓部になるものであり、単結晶、多結晶、あるいはアモルファスシリコン系の半導体から構成されている。
【0004】
太陽電池は、通常、太陽電池素子(太陽電池セル)が、数枚〜数十枚単位でパッケージングされてモジュール化されている。具体的な太陽電池モジュールとしては、直列、並列に配線された複数の太陽電池セルと、太陽電池セルを封止する封止体と、太陽光が当たる表面側に配置された透明ガラス部材と、裏面側に配置された裏面保護用シートとを具備するものが挙げられる。ここで、封止体としては、太陽電池セルを挟むように積層された一対の封止用シートが広く使用されている。
【0005】
太陽電池モジュール用封止体には、透明ガラス部材および裏面保護用シートに対する接着性と、長期間(約20年)にわたって太陽電池セルを保護するための耐熱性・耐光性・耐候性とが求められる。接着性、耐熱性・耐光性・耐候性が高い程、太陽電池セルの劣化を防ぎ、長期間の使用に対し発電効率の低下を防止することが可能になる。
【0006】
上記の要求を満たすために、太陽電池モジュールの封止用シートとしては、有機過酸化物を架橋剤として配合したエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物のシートを使用することが多い(特許文献1,2)。
【0007】
この封止用シート(文献では、充填接着材シート)では、架橋剤として配合した有機過酸化物をモジュール製造時に分解させることで、太陽電池セル、透明ガラス部材あるいは裏面保護用シートと封止用シートとの接着性を向上させると共に、封止用シートを架橋させてエチレン−酢酸ビニル共重合体自体の耐熱性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭58−60579号公報
【特許文献2】特開昭58−63178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような封止用シートの架橋剤を含有したエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物は、保管、流通の過程で、架橋剤が気散して架橋反応が進まなくなることがあり、耐熱性などの物性が出なくなることがある。
【0010】
本発明は、架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物を梱包して、長期にわたって保管、流通しても、架橋剤の気散が抑えられ、架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体の架橋性能の低下を抑えることができる梱包材を提供することを課題とする。また
、梱包された架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物の架橋性能の低下を抑えることができる梱包体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は係る課題に鑑みなされたものであり、請求項1の発明は、架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物を梱包する梱包材であって、該梱包材の酸素透過度が30ml/m/day/MPa以下であることを特徴とする梱包材である。
【0012】
本発明の梱包材は、以上のような構成であって、酸素透過度が30ml/m/day/MPa以下であるので、架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物を梱包して放置しておいても、架橋剤の気散が抑えられ、架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体の架橋性能の低下を抑えることができる。
【0013】
本発明の請求項2の発明は、前記梱包材が、透明であることを特徴とする請求項1に記載の梱包材である。
【0014】
本発明の梱包材は、透明であるので、梱包しても、中に添付した、ラベルが見えるので、ラベルに記載された、内容物表示、ロットナンバー表示、数量表示などが読み取れ、また、架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物を視認できるので、梱包状態で梱包された内容物が確認できる。
【0015】
本発明の請求項3の発明は、請求項1または2に記載の梱包材で、架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物が、梱包されていることを特徴とする梱包体である。
【0016】
本発明の梱包体は、長期にわたって保管、流通しても、架橋剤の気散が抑えられ、梱包された架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体の架橋性能の低下を抑えることができる。
【0017】
本発明の請求項4の発明は、前記架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物が、長尺で巻芯に巻かれた巻取りになっていて、該巻取りの円筒状の外周に前記梱包材が巻かれており、前記巻取りに巻かれて円筒状となった前記梱包材の両端が前記巻取りの端部に沿って前記巻取りの側面の中心側に向かって折られ、前記梱包材の端部が止められて梱包されていることを特徴とする請求項3に記載の梱包体である。
【0018】
本発明の梱包体は、更に、架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物が、長尺で巻芯に巻かれた巻取りになっている場合に、簡単に梱包することができる。
【0019】
本発明の請求項5の発明は、前記架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物が枚葉状になっていて、該前記架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物を包むように前記梱包材が折られて梱包されていることを特徴とする請求項3に記載の梱包体である。
【0020】
本発明の梱包体は、更に、架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物が枚葉状になっている場合に、簡単に梱包することができる。
【0021】
本発明の請求項6の発明は、前記架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物が、袋状の前記梱包材の中に収納され、周縁部がシールされ密封されていることを特徴とする請求項3に記載の梱包体である。
【0022】
本発明の梱包体は、更に、架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物が、袋状
の前記梱包材の中に収納され、周縁部がシールされ密封されているので、架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体の架橋性能の低下を確実に抑えることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の梱包材は、架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物を梱包して、長期にわたって保管、流通しても、架橋剤の気散が抑えられ、架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体の架橋性能の低下を抑えることができる。また、本発明の梱包体は、梱包された架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物の架橋剤の気散が抑えられ、架橋性能の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の梱包体の第1の実施形態を模式的に示した説明図である。(A)長尺の架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物が巻芯に巻かれた巻取りの斜視図である。(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体組成物の巻取りを、梱包材で梱包した正面図である。(C)エチレン−酢酸ビニル共重合体組成物の巻取りを、梱包材で梱包した側面図である。(D)梱包に用いる固定具の正面図である。
【図2】本発明の梱包体の第2の実施形態を説明する説明図である。(A)枚葉状の架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物を梱包材の上に置いた状態を示す平面図である。(B)梱包材の対向する2辺を、エチレン−酢酸ビニル共重合体組成物が包まれるように折り重ねた状態を示す平面図である。(C)梱包材の別の対向する2辺を更に、エチレン−酢酸ビニル共重合体組成物が包まれるように折り重ねた状態を示す平面図である。
【図3】本発明の梱包体の第3の実施形態を模式的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の梱包材は、フィルム状、あるいは、袋状にした梱包材である。そして、酸素透過度が30ml/m/day/MPa以下の梱包材である。
【0026】
このような、酸素透過度が30ml/m/day/MPa以下のフィルム状のバリア素材としては、アルミニウム箔などの金箔、あるいは、アルミニウム蒸着フィルムなどの金属蒸着フィルム、更には、無機酸化物を蒸着した透明無機酸化物蒸着フィルムなどが挙げられる。また、バリア性の高い樹脂フィルムを挙げることができる。
【0027】
透明無機酸化物蒸着フィルムとしては、アルミナやシリカなど無機酸化物を樹脂フィルムに蒸着したものである。蒸着する樹脂フィルムに用いる樹脂としては、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンなどが使用できる。そして、その2軸延伸、あるいは、1軸延伸、未延伸の樹脂フィルムが好ましく使用できる。その厚さは好ましくは、12〜50μmである。
【0028】
また、蒸着以外のコーティング法によるコート液を蒸着の代わりに、樹脂フィルムにコーティングしたコートフィルムであってもよい。塩化ビニリデンコートフィルムでも良いし、また、有機−無機ハイブリッドコートフィルムなどのコートフィルムであってもよい。
【0029】
また、バリア性の高い樹脂フィルムとしては、メタキシレンジアミン/アジピン酸からなるいわゆるMXDナイロンや、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの樹脂フィルムがある。
【0030】
上記のような、酸素透過度が30ml/m/day/MPa以下のフィルム状の素材を単層で、あるいは、他の熱可塑性樹脂フィルムなどと貼りあわせた積層フィルムをフィ
ルム状、あるいは、袋状で、梱包材として用いて、酸素透過度が30ml/m/day/MPa以下の梱包材とすればよい。
【0031】
本発明の梱包材で梱包する架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物の一例としては、太陽電池モジュールの封止用シートが挙げられる。封止用シートは、通常エチレン−酢酸ビニル共重合体に架橋剤が添加されたシートになっている。
【0032】
エチレン−酢酸ビニル共重合体を架橋する際に用いる架橋剤としては、有機過酸化物が望ましく用いられる。有機過酸化物としては、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジベンゾイルパーオキサイド、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、1,1−ジ(t−アミルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−アミルパーオキシ)シクロヘキサン、t−アミルパーオキシイソノナノエート、t−アミルパーオキシノルマルオクトエート、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−アミル−パーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソノナノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ(2−t−ブチルパーオキシプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。
【0033】
有機過酸化物は、エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して0.05〜5質量部の範囲で配合することが好ましく、0.1〜2.0質量部の範囲で配合することがより好ましい。有機過酸化物の配合量が0.05質量部以上であれば、架橋構造を充分に形成でき、5質量部以下であれば、過度の反応を防止でき、発泡や分解によるエチレン−酢酸ビニル共重合体の劣化を防ぐことができる。
【0034】
エチレン−酢酸ビニル共重合体組成物には、架橋助剤が含まれていてもよい。架橋助剤は、エチレン−酢酸ビニル共重合体の架橋度を高めて、封止用シートにより得られる封止体の接着性、機械的強度、耐熱性、耐湿熱性、耐候性をより向上させるための助剤である。
【0035】
架橋助剤の具体例としては、(メタ)アクリロキシ基を含有する化合物、アリル基を含有する化合物などが挙げられる。
【0036】
(メタ)アクリロキシ基を含有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルや(メタ)アクリル酸アミドが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基としては、メチル、エチル、ドデシル、ステアリル、ラウリル等が挙げられる。
【0037】
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の代わりに、シクロヘキシル基、テトラヒドロフルフリル基、アミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル基などで置換されていてもよい。
【0038】
また、(メタ)アクリロキシ基を含有する化合物としては、(メタ)アクリル酸とエチ
レングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多官能アルコールとのエステルが挙げられる。
【0039】
アリル基含有化合物としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等が挙げられる。
架橋助剤は、エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して0.05〜5質量部の範囲で配合することが好ましく、0.1〜2.0質量部の範囲で配合することがより好ましい。架橋助剤の配合量が0.05質量部以上であれば、架橋構造を充分に形成でき、5質量部以下であれば、過度の反応を防止でき、発泡や分解によるエチレン−酢酸ビニル共重合体の劣化を防ぐことができる。
【0040】
封止用シートには、太陽電池モジュールを構成する表面側の透明ガラス部材との接着性を高めることから、シランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0041】
シランカップリング剤の含有量は、エチレン−酢酸ビニル共重合体100質量部に対して0.1〜5質量部であることが好ましい。シランカップリング剤の含有量が0.1質量部以上であれば、より接着性を向上させることができ、5質量部以下であれば、充分な耐熱性、耐光性、耐候性が得られる。
【0042】
<第1の実施形態>
以下、本発明の梱包体の第1の実施形態につき説明する。図1は、本発明の梱包体の第1の実施形態を模式的に示した説明図である。
【0043】
第1の実施形態の架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物の形状は、図1(A)のように、架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1が長尺で巻芯2に巻かれた巻取り形状のものである。
【0044】
図1(B)、(C)のように、本発明の梱包材3で、巻取りの円筒状部分の外周を巻いて、巻いた梱包材3の両端部をそれぞれ巻取りの両端より、巻取りの側面の中心側に折られたものである。この梱包材3の折り込みは、ヒダ状に折り込まれたヒダ状部31を設けて折られている。そのヒダ状の梱包材3のヒダ状部31の先端は、エチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1が巻かれた巻芯2の中に入れられ、固定具4が外側から巻芯2の端部に押し込まれていて、ヒダ状の梱包材3の端が止められている。
【0045】
固定具4は、ポリプロピレンなどのプラスチックで作られていて、図1(D)のように、巻芯2に押し込まれる円錐台形を有する挿入部41と、巻芯に入ってしまうのを防ぐ巻芯の内径より大きな鍔部42とからなっている。固定具4の内側は、挿入部41と鍔部42を貫通する、円筒状あるいは円錐台形状の中空となっている。
本実施形態では、梱包材3のヒダ状部31の先端は、固定具4が外側から巻芯2の端部に押し込まれて止められているが、片面に粘着剤が塗布されたシートあるいはテープを、梱包材3のヒダ状部31の先端を覆うように、シートあるいはテープの粘着剤で貼り付けて止めてもよい。
【0046】
また、巻取りの円筒状部分の外周を巻いて、巻いた梱包材3の両端部をそれぞれ巻取りの両端より、中心側にヒダ状に折られているが、必ずしも、ヒダ状にする必要はなく、巻取りの側面の中心側に向かって折られていればよい。
【0047】
このようにして、長尺の架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1を巻き取った巻取りを、梱包材3で梱包して梱包体とすることができる。
【0048】
この梱包体は、長期にわたって保管、流通しても、架橋剤の気散が抑えられ、梱包された架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体1の架橋性能の低下を抑えることができる。また更に、長尺で巻芯に巻かれた巻取りになっている架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1を簡単に梱包することができる。
【0049】
<第2の実施形態>
以下、本発明の梱包体の第2の実施形態につき説明する。図2は、本発明の梱包体の第2の実施形態を説明する説明図である。(A)枚葉状の架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物を梱包材の上に置いた状態を示す平面図である。(B)梱包材の対向する2辺を、エチレン−酢酸ビニル共重合体組成物が包まれるように折り重ねた状態を示す平面図である。(C)梱包材の別の対向する2辺を更に、エチレン−酢酸ビニル共重合体組成物が包まれるように折り重ねた状態を示す平面図である。
【0050】
第2の実施形態の架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1の形状は、枚葉状である。この梱包体を作るには、まず、図2(A)のように、枚葉状の架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1を、方形の梱包材3の上に置く。
【0051】
次に、図2(B)のように、梱包材3の上辺と下辺の対向する2辺を、それぞれ、エチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1が包まれるように折り重ね、上側に重ねられた端辺を粘着テープ5で止める。
【0052】
更に、梱包材3の別の対向する2辺の左右の辺を、図2(C)のように、それぞれ、エチレン−酢酸ビニル共重合体組成物が包まれるように折り重ね、それぞれの端辺を粘着テープ5で止める。このようにして、枚葉状の架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1を梱包材3で梱包して梱包体とすることができる。
【0053】
この梱包体は、長期にわたって保管、流通しても、架橋剤の気散が抑えられ、梱包された架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体1の架橋性能の低下を抑えることができる。また更に、架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物が枚葉状になっている場合に、簡単に梱包することができる。
【0054】
<第3の実施形態>
以下、本発明の梱包体の第3の実施形態につき説明する。図3は、本発明の梱包体の第3の実施形態を模式的に示した説明図である。
【0055】
第3の実施形態の架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1の形状は、枚葉状である。そして、多数の枚葉状の架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1をまとめて梱包する形態である。
【0056】
図3のように、梱包材3は、袋状になっている。袋状の梱包材3の中に、多数の枚葉状の架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1が入れられていて、梱包材3の袋は、周縁部がシール部6となるように熱シールされている。
【0057】
そのため、梱包材3は、酸素透過度が30ml/m/day/MPa以下、あるいは25ml/m/day/MPa以下のフィルム状のバリア素材に、シーラントとなる熱可塑性樹脂フィルムと貼りあわせた積層フィルムになっている。
【0058】
そして、梱包材として、酸素透過度が30ml/m/day/MPa以下、あるいは25ml/m/day/MPa以下の梱包材3となればよい。この積層フィルムを、シーラントとなる熱可塑性樹脂フィルムが内面になるように重ねて、周縁部をシールしてシール部6を設け、袋状の梱包材3としている。
【0059】
尚、本実施形態では、枚葉状の架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1を用いたが、長尺で巻芯2に巻かれた巻取り形状の架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1を袋状の梱包材3で同様に包装してもよい。
【0060】
このようにして、長尺の架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1を巻き取った巻取りを、あるいは、枚葉状の架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1を梱包材3で梱包して梱包体とすることができる。
【0061】
この梱包体は、架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物が、袋状の前記梱包材の中に収納され、周縁部がシールされ密封されているので、架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体の架橋性能の低下を確実に抑えることができる。
【実施例】
【0062】
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0063】
<実施例1>
2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム12μmにアルミニウムを蒸着したアルミニウム蒸着フィルムであるMLフィルムPET#12、(三井化学東セロ株式会社製)を用意し、この蒸着面にウレタン系接着剤を塗布してドライラミネーションにて、未延伸低密度ポリエチレン50μmのコロナ処理面と貼り合せて実施例1の梱包材を作成した。
【0064】
<実施例2>
2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム12μmにアルミナを蒸着して、蒸着面に保護層を設けたGLフィルム:GL−AE(凸版印刷株式会社製)を用意し、この保護層面にウレタン系接着剤を塗布してドライラミネーションにて、未延伸低密度ポリエチレン50μmのコロナ処理面と貼り合せて実施例2の梱包材を作成した。
【0065】
<実施例3>
5重量%のポリビニルアルコール(PVA)水溶液に、モンモリロナイトを、PVAとモンモリロナイトの重量比が1:1となるように混合し、バリアコート液を準備した。
【0066】
2軸延伸ポリプロピレンフィルム12μmを用意し、このコロナ処理面に先に準備しておいたバリアコート液を塗布し、バリアコートポリプロピレンフィルムを作成した。このバリアコートポリプロピレンフィルムのバリアコート面にウレタン系接着剤を塗布してドライラミネーションにて、未延伸低密度ポリエチレン50μmのコロナ処理面と貼り合せて実施例3の梱包材を作成した。
【0067】
<実施例4>
2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム12μmのコロナ処理面にウレタン系接着剤を塗布してドライラミネーションにて、アルミニウム箔9μmを貼り合わせ、次にこの
アルミニウム箔面に、ウレタン系接着剤を塗布してドライラミネーションにて、未延伸低密度ポリエチレン50μmのコロナ処理面と貼り合せて実施例4の梱包材を作成した。
【0068】
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0069】
<比較例1>
梱包材を用いないものを、比較例1とした。
【0070】
<比較例2>
低密度ポリエチレン50μmを用意して、比較例2の梱包材とした。
【0071】
<比較例3>
中密度ポリエチレン50μmを用意して、比較例3の梱包材とした。
【0072】
実施例、比較例のそれぞれの梱包材の酸素透過度、を測定し、それぞれの梱包材で架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物を梱包して保存した後、架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物を架橋させて、保存後の架橋率を測定した。
【0073】
架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物として、太陽電池モジュールの封止用シートを用いた。この封止用シートの原料の配合組成は、エチレン−酢酸ビニル共重合体を100重量部、架橋剤を1.3重量部、架橋助剤を0.5重量部、シランカップリング剤0.3重量部である。
【0074】
この配合組成物を押出成形にて厚さ0.45mmの太陽電池モジュールの封止用シートを成形し、シート状の架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1とした。
【0075】
尚、架橋剤には、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンを使用し、架橋助剤には、トリアリルイソシアヌレートを使用し、シランカップリング剤には、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを使用した。
【0076】
このシート状の架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物を100mm×200mmにカットし、100mm×200mmのシートとした。
【0077】
この100mm×200mmのシートを、実施例1から4、および、比較例2、3の梱包材3(200mm×300mm)で、図2のように、それぞれ梱包した。
【0078】
すなわち、枚葉状の架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1の100mm×200mmのシートを、方形のサイズが300mm×400mmの梱包材3の上に置き、次に、梱包材3の上辺と下辺の対向する2辺を、それぞれ、エチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1が包まれるように折り重ね、上側に重ねられた端辺を粘着テープ5で止める。
【0079】
更に、梱包材3の別の対向する2辺である左右の辺を、それぞれ、エチレン−酢酸ビニル共重合体組成物が包まれるように折り重ね、それぞれの端辺を粘着テープ5で止め、梱包する。
【0080】
<酸素透過度の測定>
実施例1から4、および、比較例2、3の梱包材について、モダンコントロール社製の酸素透過度計OX−TRAN2/21(MOCON社製)により、30℃−70%RH雰囲気下での酸素透過度(ml/m/day/MPa)を測定した。その結果を表1にまと
めた。
【0081】
<架橋率の測定>
実施例1から4、比較例2、3の梱包材で梱包した架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1、及び、梱包材3を使用しない比較例1の架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1を、40℃20%RHの恒温恒湿室で保存し、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、及び、保存前の架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1のシートを2枚のテフロン(登録商標)シートの間に挟み込み、真空ラミネーターを用いて、150℃で16分間ラミネート処理を行い、架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1のシートを架橋させた。
【0082】
架橋させたエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物のシートを20mm×5mmの短冊状にカットして、電子天秤で1.0gを量り取り、小数点以下3桁まで測定して初期重量とした。量り取った架橋させたエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物をガラス容器に投入し、キシレン100mlを添加して、110℃のオーブンに12時間放置した。
【0083】
12時間放置後、取り出して濾過し、濾過した残渣を回収して、110℃のオーブンで12時間乾燥させた。乾燥後の残渣の重量を電子天秤で量った。残渣の重量を初期重量で割って、100倍して架橋率(%)とした。その結果を表1にまとめた。
【0084】
【表1】

【0085】
以下に、実施例と比較例との比較結果について説明する。
【0086】
<比較結果>
比較例1の梱包材を用いなかったエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1は、保存1週間で架橋率が0.0%となり、架橋反応がまったく起こらなかった。また、酸素透過度が4000ml/m/day/MPaの比較例2、及び、酸素透過度が2500ml/m/day/MPaの比較例3の梱包材で梱包したエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1は、2週間後で架橋率の著しい低下が見られ、3週間後には架橋率が0.0%となり、架橋反応がまったく起こらなかった。
【0087】
一方、酸素透過度が10ml/m/day/MPaの実施例1、酸素透過度が5ml/m/day/MPaの実施例2、酸素透過度が25ml/m/day/MPaの実施例3、及び、酸素透過度が1ml/m/day/MPa未満の実施例4では、40℃20%RHで、4週間保存した後でも、架橋率がほとんど変わらなかった。
【0088】
以上の結果から、架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1を酸素透過度が30ml/m/day/MPa以下の梱包材で梱包することによって、架橋剤の気散が抑えられ、架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体1の架橋性能の低下を抑えることができる。
【0089】
また、このように架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1を梱包した梱包体は、梱包された架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1の架橋性能の低下を抑えることができる。
【0090】
尚、実施例2と実施例3の梱包材は透明であるので、梱包状態で梱包された架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物を視認できる、内容物が確認できる。また、ラベルを梱包材の内側に入れて梱包しても、ラベルに記載された表示も視認することが可能である。
【0091】
<湿度による架橋性能の低下への影響>
ここで、梱包材3で梱包することは、架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1の架橋性能が水蒸気の透過による影響を受けている可能性があるので、架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1の架橋性能が湿度により影響されるか否かを確認する。
【0092】
実施例で使用したものと同じシート状の架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1を梱包しないで、40℃20%RHの恒温恒湿室と、40℃90%RHの恒温恒湿室で保存して、初期と、1日後、2日後、4日後、5日後、6日後、7日後に、架橋率測定して、湿度の影響を調べた。その結果を表2にまとめた。
【0093】
【表2】

【0094】
<確認結果>
40℃20%RHの恒温恒湿室で保存した架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1と、40℃90%RHの恒温恒湿室で保存した架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1で、架橋率は大差がなく、湿度の影響はないか、あっても少ない物と判断される。
【0095】
したがって、比較結果で述べたように、架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物1を酸素透過度が30ml/m/day/MPa以下の梱包材で梱包することによって、架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体1の架橋性能の低下を抑えることができる。
【符号の説明】
【0096】
1・・・架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物
2・・・巻芯
3・・・梱包材
31・・・ヒダ状部
4・・・固定具
41・・・挿入部
42・・・鍔部
5・・・粘着テープ
6・・・シール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物を梱包する梱包材であって、該梱包材の酸素透過度が30ml/m/day/MPa以下であることを特徴とする梱包材。
【請求項2】
前記梱包材が、透明であることを特徴とする請求項1に記載の梱包材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の梱包材で、架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物が、梱包されていることを特徴とする梱包体。
【請求項4】
前記架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物が、長尺で巻芯に巻かれた巻取りになっていて、該巻取りの円筒状の外周に前記梱包材が巻かれており、前記巻取りに巻かれて円筒状となった前記梱包材の両端が前記巻取りの端部に沿って前記巻取りの側面の中心側に向かって折られ、前記梱包材の端部が止められて梱包されていることを特徴とする請求項3に記載の梱包体。
【請求項5】
前記架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物が枚葉状になっていて、該前記架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物を包むように前記梱包材が折られて梱包されていることを特徴とする請求項3に記載の梱包体。
【請求項6】
前記架橋剤を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体組成物が、袋状の前記梱包材の中に収納され、周縁部がシールされ密封されていることを特徴とする請求項3に記載の梱包体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−148790(P2012−148790A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7586(P2011−7586)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】