説明

梱包材および梱包方法

【課題】 直角に折り曲げて被梱包材のコーナー部に当てがう梱包材であって、折り曲げた際に、その折り曲げた外側面に結束バンドを全面的に略均一な押圧力でもって押し付けて梱包が容易に且つ強固に行える梱包材を提供する。
【解決手段】 ハードボードからなる一定厚みを有する板状材1に、断面V字状等の溝底から開口端に向かって徐々に拡開した溝2を設け、この溝2を外側に向けて板状材1を該溝2の対向側壁面間が拡開する方向に折り曲げることにより、溝の対向側壁面が溝底を介して滑らかに連続した面となるように変形させ、この面上とこの面を介して直角に連なる両側の板状材部上に結束バンドを全面的に押し付けた状態でもって緊結させるように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具やドア等の建築部材、電化製品等の物品を梱包する際に、物品包装箱のコーナ部や稜角部に当てがって該コーナ部等を保護するための梱包材とこの梱包材による梱包方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の梱包材としては、例えば、特許文献1に記載されているように、ダンボールシートを矩形状に裁断してなる厚紙板の表面に縦方向の折込線と横方向の折込線を入れると共にこれらの折込線の交差部から折込線の一つに沿って切欠部を設けることにより、上記折込線を介して物品包装箱のコーナー部に当てがうことができる三面枠体形状の包装物品用コーナー保護体を形成するように構成した梱包材があり、また、特許文献2には、厚紙板ではなくインシュレーションボードを利用し、このインシュレーションボードを加熱、加圧して断面L字状又はコの字状に折り曲げてなる梱包材が開示されている。
【0003】
一方、特許文献3には、比重が0.4 〜0.8 の木質繊維板を基材とし、この基材の表面に合成樹脂含浸層を設けると共に裏面にV溝、櫛目溝などの溝を形成し、この溝を中心に該溝が閉塞する裏面側に向けて基材を折り曲げ加工してなる板材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62−72956号公報
【特許文献2】実開平5−54341号公報
【特許文献3】実開昭61−175409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の発明によれば、梱包材はダンボールシートからなるものであるから、水に濡れると強度が著しく低下して梱包材としての機能を奏することができなくなる虞れがあり、さらに、ダンボールシートからなる厚紙板における上記折込線から両側の板部を直角に折り曲げると共に上記切欠部を介して隣接する板部を互いに重ねて接着することにより三面枠体形状の梱包材を形成するものであるから、製作に著しい手間を要すると共に運搬や保管をするには嵩張るために不適である。
【0006】
一方、特許文献2に記載の発明によれば、インシュレーションボードを加熱、加圧して断面L字状又はコの字状の立体的な梱包材に成形するものであるから、製造手間を要するばかりでなく、上記同様に運搬、保管するには不適である。
【0007】
上記特許文献3によれば、基材の裏面にV溝、櫛目溝などの溝を形成しておくものであるから、予め、これらの溝から基材を折り曲げて接着剤により溝の対向面を一体に接着することよって断面L字状等に成形しておくことなく、現場等で成形が可能となるため、運搬や保管が容易となるが、溝を中心に裏面側に折り曲げるものであるから、折り曲げ過ぎると溝の対向面における裏面側の角部を支点としてテコの原理により破断破断が生じる虞れがあり、また、この基材を梱包材として使用すると、V溝の場合には折り曲げた際に表面側に角部が形成されるから、その角部の先端に結束バントが集中的に押し当てられて角部を介して隣接する互いに直角な表面に強く押し付けることが困難となり、良好な梱包が行えなくなるといった問題点がある。
【0008】
このため、基材の裏面に櫛目溝を設け、この櫛目溝を介して折り曲げることにより、表面側の角部を凸円弧面となるようにしているが、このような櫛目溝の加工に手間を要するばかりでなく、基材をハードボード(硬質繊維板)によって形成しておくと、剛性が強くて櫛目溝加工の際に櫛歯が欠け易くなると共に折り曲げ時に互いの当接によって折れ易くなり、ハードボードを基材に採用することが困難である。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、通常は平板形状を保持して運搬や保管が容易であるのは勿論、構造が簡単であるにもかかわらず、折り曲げた際には結束バンドを全面的に略均一な押圧力でもって押しつけることができる面を形成して梱包が容易に且つ強固に行え、また、優れた耐水性、曲げ強度を有する梱包材とこの梱包材により梱包方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の梱包材は、請求項1に記載したように、板状材に折り曲げ加工が可能な溝加工を施してあり、この溝が外側となるように折り曲げられて使用するように構成していることを特徴とする。
【0011】
上記請求項2に記載の梱包材において、請求項2に係る発明は、上記板状材が溝から繰り返しの折り曲げが可能で、且つ、耐水性及び曲げ強度を有する硬質繊維板からなることを特徴とする。
【0012】
さらに、請求項3に係る発明は、上記溝がその溝底部から溝の開口端に向かって徐々に溝幅を広くなるように形成されていることを特徴とし、請求項4に係る発明は、溝の開口端部を面取り加工してなることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、板状材に上記溝を複数本、互いに平行に、或いは、交差状に設けていることを特徴とし、請求項6に係る発明は、板状材の一方の片面を平滑な面に、他方の片面を粗面に形成していることを特徴とする。
【0014】
また、請求項7に係る発明は、上記梱包材を用いた梱包方法であって、全長又は全幅に亘って溝を直線状に設けてなる板状材を、この溝から該溝の対向側壁面間が拡開する方向に折り曲げ、この拡開した溝を外側に向けた状態にして該溝を介して隣接する両側板状を非梱包材の角部に当てがって梱包することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、板状材に折り曲げ加工が可能な溝加工を施してあり、この溝が外側となるように折り曲げられて使用するように構成しているので、構造が簡単で多量生産に適し、また、運搬や保管等が容易に行えるのは勿論、折り曲げた際に、溝が拡開して結束バンドが当接する角部を鈍角状ないしは緩やかな円弧状に形成することができ、従って、この梱包材の外面全面を結束バンドによって均一に押圧して梱包が容易に且つ強固に行うことができる。
【0016】
さらに、請求項2に係る発明によれば、上記板状材はハードボードからなるものであるから耐水性及び曲げ強度に優れ、梱包材として使用した際に、水に濡れても圧縮強度や曲げ強度が殆ど低下することがなく、また、長繊維からなるので、溝を拡開する方向に折り曲げても溝が破断することなく繰り返し折り曲げ加工が行える梱包材を提供することができる。
【0017】
また、請求項3に係る発明によれば、板状材に設けている上記溝は、その溝底部から溝の開口端に向かって徐々に溝幅を広くなるように形成されているので、この溝から板状材を折り曲げた際に、外側に露出する溝底面から溝の開口端に向かって角部などが生じていない滑らかな面に形成することができ、結束バンドとの馴染み性が一層良好にして梱包を一層確実且つ強固に行うことができる。このような溝形状として、請求項4に記載したように、該溝の開口端部を面取り加工しておいても上記同様な効果を奏することができる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、上記板状材に上記溝を複数本、互いに平行に、或いは、交差状に設けていることを特徴とするものであるから、複数本の溝を平行に設けておくことによって、任意の溝からこの溝を挟んで設けている板状材部を互いに直角に折り曲げることにより断面L字状の梱包材を形成することができるのは勿論、所定間隔を存した互いに平行な2本の溝から同一方向に直角に折り曲げることにより断面コの字状の梱包材を形成することができ、さらに、十字形状に溝を設けて板状材をこの溝により4つの板部分に区画しておくことにより、その一つの板部分を切除したのち、他の3つの板部分を同一方向に直角に折り曲げれば、コーナー部分を梱包することができる梱包材が得られる。この場合、板状材に互いに平行な複数本の溝と、これらの溝に直交する互いに平行な複数本の溝を設けておれば、所望形状のコーナー用梱包材を形成することができる。なお、板状材としては、請求項6に記載したように、一方の片面を平滑な面に、他方の片面を粗面に形成しておいてもよい。
【0019】
請求項7に係る発明は、上記板状材を用いた梱包方法であって、全長又は全幅に亘って溝を直線状に設けている板状材からなる梱包材を、上記溝から該溝の対向側壁面間が拡開する方向に折り曲げ、この拡開した溝を外側に向けた状態にして該溝を介して隣接する両側板状部における溝の拡開側と反対側の面を非梱包材の角部に当てがって梱包することを特徴とするものであるから、この梱包材上に結束バンドを掛け渡して梱包した際に、結束バンドが拡開した滑らかな溝底面に当接して梱包材を全面的に均一に非梱包材に押し付けることができ、梱包が容易に且つ強固に行うことができる。さらに、溝を外側に向けた状態にして板状材からなる梱包材を折り曲げるので、一つの溝によって結束バンドが当接する角部を平坦ないしは緩やかな凸円弧状に形成することができる。
【0020】
従って、基材の裏面に櫛目溝を設けてこの櫛目溝を介して折り曲げることにより、表面側の角部を凸円弧面となるようにしていた従来の梱包方法では櫛歯の折損等によって採用することが困難であった梱包材として最適なハードボードの使用を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】例1の梱包材とその折り曲げ状態を示す正面図。
【図2】例2の梱包材とその折り曲げ状態を示す正面図。
【図3】例3の梱包材とその折り曲げ状態を示す正面図。
【図4】例4の梱包材とその折り曲げ状態を示す正面図。
【図5】例5の梱包材とその折り曲げ状態を示す正面図。
【図6】例6の梱包材とその折り曲げ状態を示す正面図。
【図7】例7の梱包材とその折り曲げ状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態を詳しく説明すると、図1(イ)に示す梱包材は、矩形状又は長方形状の一定厚みを有する板状材1の表面側におけるこの板状材1の幅方向又は長さ方向の中央部に断面U字状の溝2を板状材1の互いに平行な端面間に貫通するように刻設してなるものであり、図2(イ)に示す梱包材は、矩形状又は長方形状の一定厚みを有する板状材1の表面側における幅方向又は長さ方向の中央部に断面V字状の溝2Aを板状材1の互いに平行な端面間に貫通するように刻設してなるものである。また、図3(イ)に示す梱包材は、矩形状又は長方形状の一定厚みを有する板状材1の表面側における幅方向又は長さ方向の中央部に、板状材1の表面と連なる溝の開口端が凸円弧状となるように面取りされ且つ、溝の対向する側壁面3、3が緩やかな凸円弧状面に形成した断面V字状の溝2Bを板状材1の互いに平行な端面間に貫通するように刻設してなるものである。従って、上記図2(イ)、図3(イ)に示す梱包材に設けている溝2A、2Bは、溝底部から溝の開口端に向かって徐々にその溝幅が広くなるように形成されている。
【0023】
上記のように構成した梱包材は図1(ロ)、図2(ロ)、図3(ロ)に示すように、板状材1を、その溝2、2A、2Bの対向側面3、3間が拡開する方向に直角に折り曲げて使用するものであり、表面側に設けている溝2、2A、2Bを外側に向けた状態にして、該溝2、2A、2Bを設けていない板状材1の裏面における直角に屈折した両側面を物品包装箱等の非梱包材10のコーナー部や稜角部に当てがい、結束バンド11により梱包するものである。
【0024】
板状材1を、その溝2、2A、2Bの底部を支点として溝の対向側壁面3、3間が離間する方向に折り曲げて上記のように溝2、2A、2Bを拡開させると、断面がU字状の溝2を設けている図1に示す板状材1においては、その溝2の開口端部における両側壁面と板状材1の表面との直角に連なる角部4、4が互いに離間して結束バンド11をこの角部4、4間上に掛け渡たして直角に隣接する両側板状材部1a、1aの表面に圧着させることができ、また、断面がV字状の溝2Aを設けている図2に示す板状材1においては、該溝底部が表面側に移動してこの溝2Aの両側壁部3、3のなす角度が直角である場合には対向する両側壁面3、3が互いに平坦状に連なる面3'を形成すると共に、この面と両側板状材部1a、1aの表面とのなす角度が鈍角となり、結束バンド11はこの面上を介して直角に隣接する両側板状材部1a、1aの表面上に掛け渡すことができる。
【0025】
さらに、図3(イ)に示すように、対向する側壁面3、3が緩やかな凸円弧状面に形成した断面V字状の溝2Bを設けている板状材1においては、直角に折り曲げると、該溝底部が表面側に移動して対向する凸円弧状の対向側壁面3、3が互いに同じ曲面となるように連続して直角に折り曲げた板状材1の角部の表面を滑らかな凸円弧状の湾曲面3B' に形成することができ、結束バンド11をこの湾曲面上を介して直角に隣接する両側板状材部1a、1aの表面上に掛け渡すことができる。
【0026】
上記梱包材を形成する板状材1としては、溝部からの折り曲げ加工が繰り返し行っても破断しなければ、紙、木質材料のいずれであってもよいが、梱包材が水に濡れることを想定した場合には、耐水性のある材料が好ましく、従って、木質材料がよい。なお、本発明でいう耐水性とは、水に濡れて圧縮強度、曲げ強度等を失ったり、崩壊しない材料をいう。木質材料としては、合板、パーティクルボード、木質繊維板等があるが、梱包材として2〜6mm程度の厚みの板材を形成するには、合板または木質繊維板が適している。しかしながら、合板は折り曲げを繰り返し行うことができず、曲げすぎると溝部から破断してしまうので、木質繊維板が梱包材として最も好適に使用することができる。
【0027】
木質繊維板としてはインシュレーションボード、MDF、HDF、ハードボード等があるが、繰り返しの折り曲げ加工に耐えるためには、短繊維よりも長繊維の繊維板が好ましい。この点を考慮すると、上記MDFやHDF等の乾式成形木質板は、乾燥させた木質繊維表面に接着剤を吹きつけ、これを熱圧プレスして製造するものであって、乾式成形適正を考慮して比較的短い繊維が使用されるため、繰り返し使用するための梱包材としては適さない。
【0028】
従って、梱包材を形成する板状材1としては、インシュレーションボードやハードボード等の湿式抄造木質繊維板が好適に用いられる。これらのインシュレーションボードやハードボードは、抄造工程を経て製造されるため、抄造適正(抄造歩留り濾水性を両立)を向上させるために、比較的長繊維の木質繊維の割合が多い。
【0029】
ただし、インシュレーションボードは、ポリプロピレン製結束バンド等で緊結したときに、結束バンドが食い込むため、再使用が困難となるばかりでなく、溝部の底面近傍の強度が不足して繰り返しの使用ができない。従って、インシュレーションボードを使用する場合には、水打ちして高温高圧条件下で熱圧プレスし、比重をあげて使用するのが好ましい。この場合、溝の底部近傍の折り曲げられる部分の比重が0.6 以上、好ましくは0.8 以上になるように圧密化して用いる。具体的には、特開平8−224706号公報に記載されているような繊維板を使用すると、溝加工されたときの溝底部分の近傍付近の密度が0.6 〜1.0 の高密度になるので好ましい。なお、このような特殊の製法によらず、全体的に水打ち量を増やし、温度、圧力を高くすると比重が上がる。水打ち量、温度、プレス条件は所望の密度となるように適宜選択すればよい。
【0030】
具体的にはインシュレーションボードの表裏面、またはどちらか一方の面に水打ちを行い、150 〜250 ℃程度の温度で、且つ、0.5 〜5MPa 程度の圧力の高温、高圧プレスを行う。水打ち量が増えるほど、高温になるほど、さらには高圧になるほど圧密化は進みやすくなるが、水打ち量を増やしすぎたり、圧力を高くするとパンクしやすくなり、高温にすると炭化する可能性があるので、このような不具合が発生しないように水打ち量と圧力、温度、圧縮時間を調整する。
【0031】
また、安定した品質の板状材を得るためには、プレス時に厚み調整バーを使用するのが好ましい。高温、高圧条件で一気に厚み調整バーの厚みまで圧密することで、表裏層をより選択的に比重を上げることができ、溝加工時の溝底部分近傍の密度がより高くなるという効果がある。例えば、厚さ7mm、比重0.24、含水量8%のインシュレーションボードのそれぞれの面に180 g/m2の水打ちをそれぞれ行った板を1分間養生し、水が浸透した後に温度190 ℃、圧力1.0 MPa 、圧縮時間210 秒の条件で、4mmの厚み調整バーを介してプレスすると、厚さ4mm、比重0.4 の繊維板が得られる。
【0032】
また、厚さ7mm、比重0.24、含水量8%のインシュレーションボードのそれぞれの面に180 g/m2の水打ちをそれぞれ行った板を1分間養生し、水が浸透した後に温度190 ℃、圧力1.0 MPa 、圧縮時間210 秒の条件で、3mmの厚み調整バーを介してプレスすると、厚さ3mm、比重0.5 の繊維板が得られる。また、厚さ9mm、比重0.24、含水量8%のインシュレーションボードのそれぞれの面に180 g/m2の水打ちをそれぞれ行った板を1分間養生し、水が浸透した後に温度190 ℃、圧力1.5 MPa 、圧縮時間300 秒の条件で、3mmの厚み調整バーを介してプレスすると、厚さ3mm、比重0.7 の繊維板が得られる。また、パーティクルボードは、木材チップと接着剤とを熱圧成形した木質繊維板であり、板状体として使用することができる。但し、繰り返しの折り曲げができないだけでなく、曲げすぎると溝部で破断してしまう
【0033】
合板は、木質単板をメラミン系接着剤、フェノール系接着剤、酢酸ビニル接着剤等の石油系接着剤で接合している。また、MDFやHDFは、比較的短繊維の木質繊維をメラミン系接着剤、フェノール系接着剤等の石油系接着剤で結合、成形している。同様に、パーティクルボードは、細かく砕いた木材チップをメラミン系接着剤、フェノール系接着剤等の石油系接着剤で結合、成形している。これに対して、インシュレーションボードは、石油系接着剤をほとんど使用せず、スターチやポバール等の植物由来の接着剤を少量使用して抄造成形しているため、製造時、廃棄又は焼却時において環境にやさしく、好ましい。しかしながら、インシュレーションボードは軽量であり、クッション性に優れているという利点はあるものの、上述したように、ポリプロピレン製結束バンドで緊結したときにバンド部分が陥没してしまい、再使用が困難である。
【0034】
一方、ハードボードは、スラリー化された比較的長い木質繊維を抄造し、脱水後に高温、高圧プレスすることによって得られる。このとき、水が存在する条件下で高温、高圧プレスを行うものであるから、リグニン成分が軟化、可溶化し、冷却後に硬化することで、バインダーを加えることなく木質繊維同士を強固に結合、成形することができる。ハードボードの強度を向上させるために、デンプンやスターチ等の植物由来の接着剤や、耐水性をより向上させるために少量の石油系接着剤を併用する場合もあるが、一般的に接着剤の使用量が少なく、製造時、或いは廃棄又は焼却時に環境にやさしい。また、ポリプロピレン製結束バンドで緊結した場合も、バンド部分が陥没することなく、溝部で破断するまでに繰り返し数回の使用が可能となり、結束強度や保管、運搬手間等を考慮すると、梱包材として最も好適に用いることができる。
【0035】
さらに、ハードボードは水に濡れた場合も膨潤するが強度を失うことがなく、耐水性の点からも梱包材として好適な材料である。特に、水濡れが想定される場合は、少量の耐水性樹脂等を使用して成形してもよく、また、木質繊維と樹脂を混合成形した材料も使用することができる。
【0036】
また、ハードボードは、高含水率の木質板を高温、高圧でプレスするためパンクしやすい。従って、例えば、特開昭60−59200号公報に記載されているように、片面又は両面に例えば網がある状態でプレスされるのが通常である。こうして得られたハードボードは、片面又は両面に上記網による網目状の粗面が形成されている。従って、上記梱包材を形成する板状材1としては、両面網目、又は、片面網目のものは勿論、網目をサンダーによって平滑化した両面平滑な板状材1としても使用することができ、片面が平滑面、片面が粗面の板状材を使用すると、必要に応じて平滑面、粗面を使い分けできて好ましい。このように板状材の表面又は裏面に溝加工を施して梱包材を形成する。さらに、このような片面平滑、片面粗面の板状材の表裏面に溝加工を施すことによって、現場において、必要に応じて梱包形態を選択することができて一層好ましい梱包材を得ることができる。
【0037】
板状材1に施される溝加工としては単なる切削溝であっても、上述のように断面がU字状、V字状、或いは対向する両側壁面がなだらかな凸円弧状曲面の溝であってもよいが、0.5mm 〜3mm程度の厚みを残すように、好適には1〜2mm程度の厚みが残るように溝加工が行われる。この厚みは、使用する板状材1の材質により適宜選択すればよい。例えば、ハードボードのような木質繊維板を使用する場合は、1〜2mm程度の厚みが残すように溝加工され、その溝底から該溝の開口端に向かって徐々に拡開する形状がよい。加工する溝の刃物形状を変更するだけで、所望の角部形状が得られる。そして、上述したように、板状材1を溝部が外側になるように折り曲げて使用した時に、結束バンドとの当接が鈍角、或いは、滑らかな凸円弧状面になるため、均一なバンド梱包が可能となる。
【0038】
また、図4(イ)に示すように、矩形状又は長方形状の一定厚みを有する板状材1の表面に、裏面側に向かって一定深さの断面V字状の溝2Aを複数状、小間隔毎に互いに平行に幅方向又は長さ方向の全長に渡って設けておいてもよく、このように形成した梱包材によれば、図4(ロ)に示すように、任意の溝2Aから該溝2Aが外向きとなるように板状材1を直角に折り曲げて、その溝2Aの両側の板状材部1a、1aの幅或いは長さを所望寸法に変更することができる。さらに、板状材1の片面に2本以上の平行な溝を設けておいた場合に、所定間隔を存した2本の溝を拡開させながら同一方向に直角に折り曲げることにより、コの字状の梱包材を得ることができる。
【0039】
さらに、図5(イ)に示すように、矩形状又は長方形状の一定厚みを有する板状材1の表面に、裏面側に向かって一定深さの断面V字状等の溝2C、2Dを格子状に、即ち、幅方向及び長さ方向にそれぞれ複数本宛、一定間隔毎に互いに平行に設けておいてもよい。このように格子状の溝を有する板状材1を、例えば、図5(ロ)示すように、長さ方向及び幅方向に設けている溝2C、2Dのうち、それぞれ所望の1本の溝2C、2Dを互いに交差する部分までカッタによって切断してこれらの溝2C、2Dで囲まれた四角形状の板部分を切除したのち、切断することなく残存させたこれらの溝の延長部分2C' 2D' から該溝部分2C' 、2D'
が外向きとなるように板状材部分1b、1cを直角に折り曲げれば、図5(ハ)に示すように非梱包材のコーナー部における互いに直角に隣接する3面を被覆可能な三面枠体形状の梱包材を形成することができる。
【0040】
また、図6(イ)に示すように、正方形状の一定厚みを有する板状材1の表面における互いに対向する二組の角部間に、裏面に向かって一定深さの断面V字状等の溝2E、2Fを互いに十字状となるように刻設しておいてもよい。このように溝2E、2Fを形成している板状材1によれば、図6(ロ)に示すように、板状材1の一辺の両端から板状材1の中心に向かっている2本の溝2E、2Fを互いに交差する板状材1の中心まで切断してこれらの切断された溝2E、2Fで囲まれたいる二等辺三角形状の板状材部分を切除したのち、残っている溝2E’、2F’から該溝2E’、2F’が外向きとなるように板状材部分1d、1eを互いに上記切断端面が突き合わせ状に当接するまで折り曲げれば、図6(ハ)に示すような三角錐形状の梱包材を得ることができる。
【0041】
また、板状材1において、一方の面が粗面5で他方の面が平滑面6である場合には、図7(イ)に示すように、その表裏面に互いに長さ方向又は幅方向に一定間隔を存して例えば断面V字状の溝2A1 、2A2 をそれぞれ設けておけば、粗面5を外向きにして梱包したい場合には図7(ロ)に示すように、その粗面5側に設けている溝2A1 を拡開させながらこの溝2A1 を介して隣接する板状材部分1a、1aを直角に折り曲げればよく、平滑面6を外向きにして梱包したい場合には図7(ハ)に示すように、その平滑面6側に設けている溝2A2 を拡開させながらこの溝2A2 を介して隣接する板状材部分1a、1aを直角に折り曲げればよい。なお、上記溝2〜2Fは全て真っ直ぐに形成された溝である。次に、本発明の具体的な実施例を示す。
【0042】
〔実施例1〕
板状体としては、市販されている3.0mm 厚のハードボードを使用した。このハードボードを5cm×10cmの矩形状に切断し、長手方向に平行になるように、且つ、板状材の中心を通るように2.0mm の深さで且つ全長に通じる断面V字状の溝を形成することにより梱包材を得た。なお、断面V字状の溝は、対向する側壁面のなす角度が直角に形成している。
こうして得られた梱包材において、曲げ伸ばし試験及び繰り返し梱包試験を行ったが、問題はなかった。
【0043】
〔実施例2〕
板状材としては、厚さが9mm、比重0.24、含水率8%のインシュレーションボードのそれぞれの面に180 g/m2の水打ちをそれぞれ行った板を1分間養生し、水か浸透した後に温度が190 ℃、圧力が1.5MPaでもって300 秒間、3mmの厚み調整バーを介してプレスすることによって得られた比重が約0.7 の繊維板を使用した。この繊維板に上記実施例1と同じ溝を形成した。
【0044】
〔実施例3〕
板状体としては、市販されている3.0mm 厚のMDFを使用し、このMDFに上記実施例1と同じ溝を形成した。
【0045】
〔実施例4〕
板状材として、市販されている3.0mm 厚の合板を使用し、この合板に上記実施例1と同じ溝を形成した。但し、溝の加工を表面単板を残す深さで行い、溝の方向を表面単板の繊維方向に平行とした。
【0046】
〔実施例5〕
板状材としては、市販されている3.0mm 厚の合板を使用し、この合板に上記実施例1と同じ溝を形成した。但し、溝の加工を表面単板を残す深さで行い、溝の方向を表面単板の繊維方向に直交する方向とした。
【0047】
上記実施例1〜5に曲げ伸ばし試験及び繰り返し梱包試験を行った結果を表1に示す。なお、曲げ伸ばし試験とは、本実施例の梱包材を、溝部が外側となるように直角に折り曲げる状態と、真っ直ぐに元の形態に戻す状態とを20回、繰り返す試験であり、繰り返し梱包試験とは、本実施例の梱包材を溝が外側になるように直角に折り曲げ、箱体の四辺の稜角部に配置し、ポリプロピレン製結束バンドにより緊結する。次いで、ポリプロピレン製結束バンドを切断し、箱体の四辺の稜角部に配置していた梱包材を真っ直ぐな状態に戻して外観を観察する。さらに、この一度使用した梱包材を溝部が外側になるように直角に折り曲げて箱体の四辺の稜角部に配置し、ポリプロピレン製結束バンドにより緊結する。次に、ポリプロピレン製結束バンドを切断し、箱体の四辺の稜角部に配置していた梱包材を真っ直ぐな状態に戻して外観を観察する試験である。
【0048】
【表1】

【符号の説明】
【0049】
1 板状材
2 溝
3 側壁面
4 角部
5 粗面
6 平滑面
10 被梱包材
11 結束バンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状材に折り曲げ加工が可能な溝加工を施してあり、この溝が外側となるように折り曲げられて使用するように構成していることを特徴とする梱包材。
【請求項2】
上板状材が溝から繰り返しの折り曲げが可能で、且つ、耐水性及び曲げ強度を有する硬質繊維板からなることを特徴とする請求項1に記載の梱包材。
【請求項3】
溝がその溝底部から溝の開口端に向かって徐々に溝幅を広くなるように形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の梱包材。
【請求項4】
溝の開口端部を面取り加工してなることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の梱包材。
【請求項5】
板状材に溝を複数本、互いに平行に、或いは、交差状に設けていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のうち、いずれか1項に記載の梱包材。
【請求項6】
板状材の一方の片面を平滑な面に、他方の片面を粗面に形成していることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項5に記載の梱包材。
【請求項7】
全長又は全幅に亘って溝を直線状に設けてなる板状材を、この溝から該溝の対向側壁面間が拡開する方向に折り曲げ、この拡開した溝を外側に向けた状態にして該溝を介して隣接する両側板状を非梱包材の角部に当てがって梱包することを特徴とする梱包方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−136725(P2011−136725A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297313(P2009−297313)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】