説明

梱包材及びこれを用いた梱包体

【課題】開梱時において、被梱包物を進行方向に沿って梱包材から容易に取り出すことができる梱包材を提供する。
【解決手段】梱包材1は、底面61に4つキャスタ64が取り付けられた被梱包物60の底面61の中央を支持する中央支持材20と、被梱包物60の下部の側面を覆う複数の包装材32を備えている。梱包材1は、前記キャスタを非接触状態にして被梱包物60を梱包状態とするものである。このような梱包材1は、中央支持材20を挟んだ位置において、キャスタ64の車輪64aを受ける一対の受け材40をさらに備えている。また、包装材32の底面には、進行方向Pに沿って各受け材40を案内する案内溝37が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被梱包物を梱包する梱包材に係り、特に、キャスタ付きの被梱包物を開梱するのに好適な梱包材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、大型でかつ重量のある製品には、その搬送を容易に行うために、製品の底面にキャスタが取り付けられている。このような製品を被梱包物として梱包する際には、梱包材は、被梱包物(製品)の荷重がキャスタに直接的に作用しないように、被梱包物の底面を支持する構造となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、被梱包物を梱包した梱包体をより簡単に開梱するためには、被梱包物の底面から、該底面に取り付けられたキャスタに、被梱包物の荷重をシフトさせて、キャスタの車輪を回転させながら被梱包物を移動し、被梱包物を梱包材から開梱することが好ましい。
【0004】
このような観点から、例えば、被梱包物の底面の中央を支持する中央緩衝材と、中央梱包物の端部を支持する一対の端部緩衝材とを備え、少なくとも一方の端部緩衝材は、内部から外部に沿って傾斜したテーパ面により分割された上部及び下部緩衝材からなる梱包材が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
この梱包材によれば、上部緩衝材をテーパ面に沿って取り除き、その後、上部緩衝材を取り除いた空間を利用して、下部緩衝材を取り除くことができる。これにより、被梱包物の底面に作用している荷重を、取り除かれた下部緩衝材の近傍のキャスタにシフトし、キャスタの車輪を回転させながら被梱包物を取り出すことができる。
【0006】
また、別の態様では、被梱包物の底面の中央を支持する中央支持材に、空気を充填した空気収容室を設けた梱包材が提案されている(例えば、特許文献3参照)。この梱包材により梱包された被梱包物は、開梱時に、空気収容室の空気を抜き取ることにより、被梱包物の底面からキャスタに、被梱包物の荷重をシフトさせることができる。これにより、キャスタの車輪を回転させながら被梱包物を取り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平2−63335号公報
【特許文献2】実用新案登録第2604154号公報
【特許文献3】特開2006−96404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、キャスタは、一般的に、車輪と、車輪の中心を回転可能に支持する回転支持部と、車輪及び支持部を旋回可能に支持する旋回支持部とから構成される。そして、キャスタが取り付けられた製品(被梱包物)を移動させる場合、まず、各旋回支持部により、進行方向に沿って全ての車輪が回転できるように、各回転支持部と共に車輪が旋回し、車輪が進行方向に整列する。
【0009】
しかしながら、上述した特許文献1〜3のいずれの梱包材の場合であっても、被梱包物は、被梱包物(製品)の荷重がキャスタに直接的に作用しないように梱包されているため、キャスタの車輪は、旋回支持部により運搬時に旋回することがある。これにより、開梱時において、作用する被梱包物の荷重を、被梱包物の底面からキャスタにシフトさせる際には、キャスタの車輪は進行方向に整列していない。従って、被梱包物を取り出す際には、車輪を旋回させて、車輪を進行方向に整列させなければ、進行方向に沿ってキャスタの車輪を回転させることがでず、容易に被梱包物を取り出すことができないことがある。
【0010】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、開梱時において、被梱包物を進行方向に沿って梱包材から容易に取り出すことができる梱包材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、開梱前の被梱包物(製品)の荷重がキャスタに直接的に作用しない状態において、キャスタの車輪に接触するように部材を挿入することにより、キャスタを旋回させて、その車輪を進行方向に整列させることができるとの新たな知見を得た。
【0012】
本発明は、この新たな知見に基づくものであり、本発明に係る梱包材は、底面に複数のキャスタが取り付けられた被梱包物の前記底面の中央を支持する中央支持材と、前記被梱包物の少なくとも下部の側面を覆う複数の包装材を備え、前記キャスタを非接触状態にして前記被梱包物を梱包状態とする梱包材であって、前記梱包材は、前記中央支持材を挟んだ位置において、前記キャスタの車輪を受ける一対の受け材をさらに備えており、前記包装材の底面には、前記各受け材を案内する案内部が形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、被梱包物の梱包状態において、被梱包物の底面の中央を中央支持材の支持面で支持されて、キャスタは旋回可能な状態にあり、キャスタの車輪は非接触状態である。そして、開梱時に、中央支持材に対して被梱包物を水平方向に沿った進行方向に移動する前に、まず、包装材の底面に形成された案内部に、中央支持材を挟むようにして、一対の受け材を進行方向から挿入(案内)する。これにより、前記非接触状態の受け材にキャスタが受け材に接触すると共に、受け材の移動に伴い、キャスタが旋回し、キャスタの車輪が進行方向に整列する。
【0014】
この状態で、少なくとも、進行方向側の包装材を取り外し、作用する被梱包物の荷重を、被梱包物の底面から各キャスタにシフトするように、支持面と被梱包物の底面とを非接触状態にする。このとき、被梱包物の荷重を支持するキャスタの車輪は、進行方向に整列しているので、被梱包物を、進行方向に沿って押す(又は引く)ことにより、受け材の表面に沿って、キャスタの車輪を回転させ、被梱包物を梱包材から容易に取り出す(開梱する)ことができる。
【0015】
上述したように、作用する被梱包物の荷重を、被梱包物の底面からキャスタにシフトすることができるのであれば、被梱包物の底面を中央支持材の支持面に滑らせて、支持面と被梱包物の底面とを非接触状態にしてもよい。この場合は、中央支持材の支持面は、被梱包物の底面と滑動し易い表面であることが好ましい。しかしながら、より好ましい中央支持材の態様としては、中央支持材は、水平方向に沿って傾斜した傾斜面で分割されている。
【0016】
この態様によれば、開梱時に被梱包物を進行方向に沿って移動させる際に、傾斜面に沿って、分割された上側の中央支持材が被梱包物と共に移動する。この移動に伴い、中央支持材の見掛けの高さは低くなり、作用する被梱包物の荷重を、被梱包物の底面からキャスタに容易にシフトすることができる。
【0017】
また、この分割した中央支持材のさらに好ましい態様としては、前記中央支持材のうち分割された下側の中央支持部材には、水平方向において前記包装材に係止する係止部が設けられている。この態様によれば、分割された上側の中央支持材(上側支持材)が、下側の中央支持材(下側支持材)に対して傾斜面に沿ってスライドする際に、下側支持材が包装材に係止されているので、上側及び下側支持材の傾斜面間の摩擦によって下側支持材が上側支持材と共に移動することを回避することができる。
【0018】
また、別のより好ましい態様としては、前記梱包状態で、前記中央支持材と、該中央支持材が載置された前記被梱包物との間において、配置されるスペーサをさらに備える。この態様によれば、梱包状態では、中央支持材と被梱包物との間にスペーサを挟みこみ、開梱時に被梱包物を進行方向に沿って移動させる前に、中央支持材と被梱包物との間からスペーサを取り除くことにより、作用する被梱包物の荷重を、被梱包物の底面からキャスタに容易にシフトすることができる。
【0019】
さらに、前記スペーサのより好ましい態様としては、前記スペーサは、分割された複数の分割スペーサからなり、各分割スペーサには、前記中央支持材と前記被梱包物との間から、該分割スペーサを取り除くための把持部が形成されている。この態様によれば、分割スペーサに形成された把持部を用いて、中央支持材と被梱包物との間に挟み込まれた分割スペーサを容易に取り除くことができる。
【0020】
また、上述したように、案内部に受け材を挿入(案内)してから、複数の包装材のうち、進行方向側の包装材を取り外すことができるのであれば、包装材の形状は特に限定されるものではないが、より好ましい態様としては、前記包装材の側面に、該被梱包物を覆った包装材を、前記被梱包物から取り除くための凹部が形成されている。この態様によれば、進行方向側の包装材を取り外す際に、この凹部を利用して包装材を容易に取り外すことができる。
【0021】
さらに、上述した受け材は、案内部への受け材の挿入(案内)に伴い、キャスタの車輪が進行方向に整列することができ、さらには、受け材の表面に沿って、キャスタの車輪を回転させて、被梱包物を取り出すことができる形状であれば、その形状は特に限定されるものではない。
【0022】
しかしながら、より好ましい態様としては、前記受け材には、前記キャスタを案内するためのガイドが形成されている。この態様によれば、ガイドに沿ってキャスタの車輪が案内されるので、キャスタの車輪が脱輪することなく、容易且つ安全に梱包物を取り出すことができる。
【0023】
このように、上述した梱包材を用いて、中央支持材で被梱包物の底面の中央を支持し、複数の包装材で、被梱包物の下部の側面を覆うことによって、被梱包物を梱包した梱包体は、受け材を用いることにより、容易に開梱作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、開梱時において、被梱包物を取り出す方向(進行方向)に沿って、簡単に移動させて、被梱包物を梱包材から取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係る梱包体を分解した状態を示す模式的斜視図。
【図2】第1実施形態に係る梱包材の模式的に示した図であり、(a)は、一部分解状態の正面図、(b)は、(a)のA−A矢視側面図。
【図3】本発明の第1実施形態に係る梱包体の梱包状態を模式的に示した図であり、(a)は、その斜視図、(b)は、正面図、(c)は、(b)のB−B矢視断面図。
【図4】開梱時において、本発明の第1実施形態に係る梱包体に受け材を挿入した状態を模式的に示した図であり、(a)は、その斜視図、(b)は、正面図、(c)は、(b)のC−C矢視断面図。
【図5】本発明の第1実施形態に係る梱包体の開梱を模式的に示した図であり、(a)は、その斜視図、(b)は、(a)のD−D矢視断面図。
【図6】本発明の第2実施形態に係る梱包材の中央支持材の斜視図であり、(a)は、スライド前(梱包状態時)の中央支持材の状態を示した斜視図、(b)は、スライド時(梱包時)の中央支持材の状態を示した斜視図(c)は、包装材の部分的に拡大した斜視図。
【図7】本発明の第2実施形態に係る梱包体の開梱を模式的に示した図であり、(a)は、その上面図、(b)は、(a)のE−E矢視断面図。
【図8】本発明の第3実施形態に係る梱包材の中央支持材及びスペーサを模式的に示した図であり、(a)は、スペーサ配置時の中央支持材の斜視図、(b)は、その側面図、(c)は、別の態様にかかる中央支持材及びスペーサの斜視図。
【図9】本発明の第4実施形態に係る梱包材の包装材の模式的斜視図。
【図10】本発明の第1〜4の実施形態に係る梱包材の受け材の変形例を示した図であり、(a)チャンネル状の受け材を示した図、(b)は、ガイド溝が形成された受け材を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、図面に基づき、本発明に係る4つの実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る梱包体と被梱包物とを示す模式的斜視図であり、本発明の第一実施形態に係る梱包体を分解した状態を示す模式的斜視図、図2は、第1実施形態に係る梱包材の模式的に示した図であり、(a)は、一部分解状態の正面図、(b)は、(a)のA−A矢視側面図である。
【0027】
さらに、図3は、本発明の第1実施形態に係る梱包体の梱包状態を模式的に示した図であり、(a)は、その斜視図、(b)は、正面図、(c)は、(b)のB−B矢視断面図である。図4本発明の第1実施形態に係る梱包体に受け材を挿入した状態を模式的に示した図であり、(a)は、その斜視図、(b)は、正面図、(c)は、(b)のC−C矢視断面図である。図5は、本発明の第1実施形態に係る梱包体の開梱を模式的に示した図であり、(a)は、その斜視図、(b)は、(a)のD−D矢視断面図である。
【0028】
図1に示すように、本実施形態に係る梱包材1は、製品である被梱包物60を梱包するものであり、被梱包物60の底面61の四隅には、4つキャスタ64が取り付けられている。梱包材1は、ダンボール等からなるベース材51と、ベース材51を上方から被梱包物60と共に覆うダンボール等からなる筐体52とを備えている。
【0029】
また、梱包材1は、ベース材51及び筐体52の内部に収容された被梱包物60を保護するための緩衝材10をさらに備えている。このような緩衝材10は、被梱包物60の上部に配置される上部包装材31,31と、被梱包物60の下部に配置される中央支持材20と、2つの下部包装材32,32(以下、包装材という)と、から構成されている。
【0030】
緩衝材10を構成するこれら部材の材質としては、熱可塑性樹脂の発泡成形体であることが好ましい。熱可塑性樹脂には、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、またはポリ乳酸)、またはポリカーボネート系樹脂などが挙げられ、単一の樹脂や複数の樹脂を複合したものを使用できる。
【0031】
中央支持材20は、上面に相当する支持面21で被梱包物60の底面61の中央を支持する十字状の部材である。また、中央支持材20の支持面21には、被梱包物60の底面61との滑りを良くするために、非発泡樹脂のボードがさらに張り合わされている。
【0032】
各包装材32は、被梱包物60の下部の側面と、キャスタ64が配置された底面61の周りを非接触で覆う部材である。また、図1及び図2(a)に示すように、包装材32には、十字状の中央支持材20の一部と係合するための係合凹部33が形成されており、さらに、係合凹部33を挟んだ両側には、旋回可能にキャスタ64を収容するための収容孔35が形成されている。
【0033】
図2(b)に示すように、包装材32のうち係合凹部33及び収容孔35を形成する部分の内部の高さhは、中央支持材20の高さHよりも低くなっており、中央支持材20と包装材32を係合させたとき、段差が形成される。なお、中央支持材20の高さHは、支持面21に被梱包物60を載置したときに、キャスタ64がベース材51に接触しない高さとなっている。これにより、被梱包物60の荷重を中央支持材20でのみ受け、キャスタ64の車輪64aとベース材51との間には、上下方向に一定に隙間dが形成され、梱包状態で、キャスタ64の車輪64aを非接触状態にすることができる(図3(c)参照)。
【0034】
また、図2(a)に示すように、梱包材1は、後述する開梱時に、被梱包物60を取り出す方向である進行方向Pに沿って配置された2つのキャスタ64,64を、中央支持材20を挟んで受けるための一対の板状の受け材40,40を備えている。受け材40は、キャスタ64を挿入時に傷つけることなく、キャスタ64を介して、被梱包物60の荷重を受けることができる材質からなればよく、その材質としては、木材、樹脂材料などを挙げることができる。さらに、図2(b)に示すように、受け材40の厚みtは、上述したキャスタ64の車輪64aとベース材51との間に形成された上下方向の隙間d(図3(c)参照)と略同等の厚みとなっている。
【0035】
また、包装材32の底面には、進行方向Pに沿って各受け材40を案内するための案内溝(案内部)37が形成されている。さらに、包装材32と中央支持材20を係合させたときに、包装材32の側面36と中央支持材の側面22により、受け材40の案内通路37aが形成される。このようにして、各受け材40は、案内溝37及び案内通路37aにより、中央支持材20を挟んだ位置に案内されることになる。
【0036】
また、進行方向Pに沿って包装材32を容易に取り出すことができるように、包装材32の側面のうち進行方向Pに沿った方向の側面には、被梱包物60を覆った包装材32を、被梱包物60から取り除くための凹部38が形成されている。
【0037】
このように構成された梱包材1を用いて、被梱包物60の梱包作業を説明する。まず、図1、図2(a)に示すように、ベース材51に、キャスタ64の進行方向Pに対して逆方向Q側の包装材32を配置し、次に、中央支持材20を包装材32の係合凹部33に沿って配置して、係合凹部33を中央支持材20に係合させる。この状態で、収容孔35に逆方向Q側のキャスタ64が収容されるように、中央支持材20の支持面21に、被梱包物60を載置する。次に、進行方向P側の包装材32の係合凹部33を中央支持材20に係合し、収容孔35にキャスタ64が収容されるように、進行方向P側の包装材32を配置する。これにより、中央支持部材20を挟んで、4つのキャスタのうち、各2つのキャスタ64,64は、進行方向Pに沿って、配列されると共に、被梱包物60の下部の側面は、包装材32により覆われる。
【0038】
さらに、上部包装材31で、被梱包物の上面の一部及び上部の側面を覆う。これにより、被梱包物60は、緩衝材10で保護される。さらに、被梱包物60が緩衝材10で保護された状態で、上方から筐体52を覆い、筐体52をベース材51と共にバンド(図示せず)で結束する。これにより、梱包材1により被梱包物60を梱包した梱包体が完成する。
【0039】
そして、図3(a)〜(c)に示すように、被梱包物60の梱包状態では、被梱包物60の荷重を中央支持材20でのみ受け、被梱包物60の各キャスタ64の車輪64aは、非接触の状態であるので、被梱包物(製品)60の荷重がキャスタ64に直接的に作用しない。これにより、各キャスタ64は、収容孔35内において、仮想線Lに沿って(図3(b)参照)、旋回軸Xの周りに(図3(c)参照)旋回可能な状態となる。
【0040】
このように、キャスタ64は、梱包時には旋回可能な状態にあるので、キャスタ64の車輪64aは運搬時に旋回することがある。これにより、被梱包物60を開梱する際には、キャスタ64の車輪64aは進行方向Pに整列しておらず、進行方向Pに沿って車輪64aを回転させて容易に被梱包物を取り出すことができない。
【0041】
そこで、本実施形態では、図4(a)〜(c)に示すように、開梱時には、包装材32の底面に形成された案内溝37に、進行方向Pとは逆方向Qに沿って、一対の受け材40,40を挿入(案内)する。これにより、受け材40の表面41に、進行方向Pに沿って配置された2つのキャスタ64,64が接触する。なお、上述したように、受け材40の厚みtを、上述したキャスタ64の車輪64aとベース材51との間に形成された上下方向の隙間dと略同等と同等にしたので、受け材40には、キャスタ64を介して、被梱包物60の荷重が作用することはほとんどなく、進行方向Pに沿って配列されたキャスタ64,64を受け材40の表面に容易に接触させて、受け材40を挿入することができる。
【0042】
この際に、受け材40とキャスタ64の相対的な移動方向は、被梱包物60を取り出すときのキャスタ64と受け材40の相対的な移動方向と一致するので、受け材40の逆方向Qへの移動に伴い、各キャスタ64が旋回軸Xの周りを旋回し、キャスタ64の車輪64aが進行方向Pに整列する。
【0043】
次に、図5(a),(b)に示すように、受け材40が案内された状態で、包装材32の両側に形成された凹部38に指を係止し、進行方向P側の包装材32を進行方向Pに沿って取り外す。さらに、被梱包物60の底面61を中央支持材20の支持面21に滑らせながら、支持面21から被梱包物60の底面61が離れるまで、被梱包物60を水平方向に沿った進行方向Pに移動する。これにより、作用する被梱包物60の荷重を、被梱包物60の底面61から各キャスタ64にシフトすることができる。
【0044】
このとき、被梱包物60の荷重を支持するキャスタ64の車輪64aは、受け材40を案内した際に、既に進行方向Pに整列しているので、被梱包物60の底面61を、中央支持材20の支持面21にスライドさせながら、被梱包物60を、進行方向Pに沿って押しても(引いても)、各キャスタ64は、ほとんど旋回することはない。これにより、上述した被梱包物60の荷重のシフト後も、受け材40の表面41に沿って、キャスタ64の車輪64aを回転させ、被梱包物60を容易に取り出す(開梱する)ことができる。
【0045】
図6は、本発明の第2実施形態に係る梱包材の中央支持材の斜視図であり、(a)は、スライド前(梱包状態時)の中央支持材の状態を示した斜視図、(b)は、スライド時(梱包時)の中央支持材の状態を示した斜視図、(c)は、包装材の部分的に拡大した斜視図である。図7は、本発明の第2実施形態に係る梱包体の開梱を模式的に示した図であり、(a)は、その上面図、(b)は、(a)のE−E矢視断面図である。第2実施形態が第1実施形態と相違する点は、中央支持材の構造及び包装材の係合凹部の形状である。従って、相違する点のみを詳述し、同じ部材は、同じ符号を付して以下の詳細な説明は省略する。
【0046】
図6(a)に示すように、第2実施形態の中央支持材20Aは、水平方向(進行方向P)に沿って、進行方向P側に低くなるように傾斜した傾斜面25で2分割されており、上側支持材20aと下側支持材20bとにより構成される。そして、図6(b)に示すように、上側支持材20aと下側支持材20bとは、傾斜面25に沿って、スライド可能になっている。なお、図6(a)に示すスライド前の中央支持材20Aの高さは、第1実施形態の中央支持材20の高さHと同じ高さである。
【0047】
図6(a)〜(c)に示すように、中央支持材20Aのうち下側支持材20bの側面には、包装材32Aと水平方向(進行方向)において係止する一対の係止凹部(係止部)23a,23aが設けられている。また、一対の包装材32A,32Aのうち、逆方向Q側の包装材32Aの係合凹部33の対向する面には、係止凹部23aに係止する係止凸部24bが設けられている。
【0048】
このような中央支持材20Aを用いることにより、図7(a),(b)に示すように、開梱時に被梱包物60を進行方向Pに沿って移動させる際に、傾斜面25に沿って、分割された上側支持材20aが被梱包物60と共に移動する。この移動に伴い、中央支持材20Aの見掛けの高さは高さHよりも低くなり、作用する被梱包物60の荷重を、被梱包物60の底面61から各キャスタ64に容易にシフトさせて、被梱包物60をスムーズに取り出すことができる。
【0049】
また、分割され上側支持材20aが下側支持材20bに対して傾斜面25に沿ってスライドする際に、下側支持材20bの係止凹部(係止部)23a,23aが包装材32Aの係止凸部23a,23aに水平方向(進行方向P)において係止しているので、上側及び下側支持材20a,20bの傾斜面25の間の摩擦によって、下側支持材20bが上側支持材20aと共に進行方向Pに移動することを回避することができる。
【0050】
図8は、本発明の第3実施形態に係る梱包材の中央支持材及びスペーサを模式的に示した図であり、(a)は、スペーサ配置時の中央支持材の斜視図、(b)は、その側面図、(c)は、別の態様にかかる中央支持材及びスペーサの斜視図を示した図である。第3実施形態が第1実施形態と相違する点は、中央支持材の構造である。従って、相違する点のみを詳述し、その他の部材の詳細な説明は省略する。また、以下の説明において、図8で図示しない第1実施形態と同じ部材は、同じ符号を付している。
【0051】
図8(a),(b)に示すように、第3実施形態の梱包材は、梱包状態で中央支持材20Bと被梱包物60との間において、配置される板状のスペーサ26をさらに備える。スペーサ26を中央支持材20Bに載置した状態で、中央支持材20Bとスペーサ26との合計の高さは、第1実施形態の中央支持材20の高さHと同じ高さである。
【0052】
さらに、スペーサ26は、分割された一対の分割スペーサ26a,26aからなり、各分割スペーサ26a,26aには、中央支持材20Bと被梱包物60との間から、分割スペーサ26aを取り除く(引き抜く)ための把持孔(把持部)24が形成されている。また、把持孔24が形成された近傍の分割スペーサ26aは、折り曲げられている。これにより、分割スペーサ26aの引き抜き時における把持孔24の変形を抑え、分割スペーサ26aの破損を防止することができる。
【0053】
また、分割スペーサ26aは、図8(b)に示すように、把持孔24に作業者が指を掛け、両側から分割スペーサ26aを取り除く際に、中央支持材20Bと、被梱包物60との間において、分割スペーサ26aの一部が破損等により残存しないようにすることが重要である。従って、分割スペーサ26aは、中央支持材20Bと、被梱包物60との間において容易にスライド可能であり、剛性のある材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、ダンボール、木材、樹脂などからなるシート、プレートまたはボードなどを挙げることができる。
【0054】
このようにして、梱包状態では、中央支持材20Bと被梱包物60との間にスペーサ26を挟みこみ、開梱時に被梱包物60を進行方向Pに沿って移動させる前に、中央支持材20Bと被梱包物60との間からスペーサ26を取り除く。
【0055】
スペーサ26を構成する分割スペーサ26a,26aには把持孔24が形成されているので、これを用いて、図8(b)の矢印に示す方向に中央支持材20Bと被梱包物60との間に挟み込まれた分割スペーサ26a,26aを容易に取り除くことができる。これにより、作用する被梱包物60の荷重を、被梱包物60の底面61からキャスタ64に容易にシフトすることができる。
【0056】
また、別の態様としては、図8(c)に示すように、分割スペーサ26b,26bの両側に、分割スペーサ26b,26bを取り除くための切り込み(把持部)27を設けてもよい。
【0057】
図9は、本発明の第4実施形態に係る梱包材の包装材の模式的斜視図である。図9に示すように、第1実施形態では、下側の包装材は、一対の包装材32,32で構成されていたが、本実施形態のように、さらに、各包装材32を中央で2分割して、包装材32A,32Aとしてもよい。
【0058】
図10は、本発明の第1〜4の実施形態に係る梱包材の受け材の変形例を示した図であり、(a)チャンネル状の受け材を示した図、(b)は、ガイド溝が形成された受け材を示した図である。
【0059】
第1〜4実施形態では、受け材40は、平板状の受け材であったが、図10(a)に示すように、受け材40Aは、チャンネル状の受け材であり、進行方向Pに沿って回転するキャスタを案内するためのリブ(ガイド)44を、進行方向に沿った表面43の両側面に形成してもよい。また、図10(b)に示すように、受け材40Bの表面に進行方向に沿って回転するキャスタを案内するためのガイド溝(ガイド)45を形成してもよい。
【0060】
このような受け材40A,40Bを用いることにより、開梱時には、キャスタの車輪が進行方向Pに沿って案内されるので、キャスタの車輪が脱輪することなく、容易且つ安全に梱包物を取り出すことができる。
【0061】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【0062】
第2実施形態では、中央支持材を傾斜面に沿って2分割にしたが、開梱時に傾斜面に沿って分割した中央支持材がスライドすることができるのであれば、この分割数に限定されるものではない。また、下側支持材に係止凹部を設け、包装材に係止凸部を設けたが、開梱時に、下側支持材が上側支持材と共に進行方向に移動しないようなストッパー構造(係止構造)をとることができるのであれば、下側支持材及び包装材の係止部分の形状は、特に、限定されるものではない。
【0063】
さらに、第3実施形態では、スペーサを2分割して分割スペーサとしたが、スペーサを挟み込み、引き抜くことが容易にできるのであれば、分割数は限定されるものではなく、スペーサを必ずしも分割する必要もない。
【0064】
また、第1〜4の実施形態では、梱包時に、ベース材に、進行方向に対して逆方向側の包装材及び中央支持材を順に配置してから、中央支持材に被梱包物を載置したが、被梱包物を梱包することができるのであれば、特に、この梱包手順に限定されるものではなく、例えば、第1、2及び4実施形態の場合、まず、ベース材に、中央支持材を配置してから、中央支持材に被梱包物を載置し、その後、両側から包装材を配置してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…梱包材、10…緩衝材、20,20A,20B:中央支持材、20a:上側支持材、20b:下側支持材、21:支持面、22:側面、23a:係止凹部、23b:係止凸部、24:把持孔(把持部)、25:傾斜面、26:スペーサ、26a,26b:分割スペーサ、27:切り込み(把持部)、31:上部包装材、32:包装材(下側包装材)、32A:分割包装材、33:係合凹部、35:収容孔、36:側面、37:案内溝、37a:案内通路、38:凹部、40、40A,40B:受け材、44:リブ(ガイド)、45:ガイド溝(ガイド)、51:ベース材、52:筐体、60:被梱包物、61:底面、64:キャスタ、64a:車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面に複数のキャスタが取り付けられた被梱包物の前記底面の中央を支持する中央支持材と、前記被梱包物の少なくとも下部の側面を覆う複数の包装材を備え、前記キャスタを非接触状態にして前記被梱包物を梱包状態とする梱包材であって、
前記梱包材は、前記中央支持材を挟んだ位置において、前記キャスタの車輪を受ける一対の受け材をさらに備えており、前記包装材の底面には、前記各受け材を案内する案内部が形成されていることを特徴とする梱包材。
【請求項2】
前記中央支持材は、水平方向に沿って傾斜した傾斜面で分割されていることを特徴とする請求項1に記載の梱包材。
【請求項3】
前記中央支持材のうち分割された下側の中央支持部材には、水平方向において前記包装材に係止する係止部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の梱包材。
【請求項4】
前記梱包状態で、前記中央支持材と、該中央支持材が載置された前記被梱包物との間において、配置されるスペーサをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の梱包材。
【請求項5】
前記スペーサは、分割された複数の分割スペーサからなり、各分割スペーサには、前記中央支持材と前記被梱包物との間から、該分割スペーサを取り除くための把持部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の梱包材。
【請求項6】
前記包装材の側面には、該被梱包物を覆った包装材を、前記被梱包物から取り除くための凹部が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の梱包材。
【請求項7】
前記受け材には、前記キャスタを案内するためのガイドが形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の梱包材。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の梱包材により前記被梱包物を梱包した梱包体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−71861(P2012−71861A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217684(P2010−217684)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】