説明

梱包材

【課題】梱包材の地色と該梱包材に梱包される物品に関連する表示として該梱包材表面に印刷される色とが近似する場合にも、前記表示の色を前記地色から明瞭に区別して視認できるようにする。
【解決手段】梱包材1は、物品を収容する梱包部11と、梱包部11の表面に印刷された表示部10を備え、表示部10は、梱包部11表面の地色上において色を視認させるための色表示部100を含み、色表示部100は、前記地色に対して色相差および/または明度差の少ない第1の色でベタ印刷された第1層101と、前記第1の色よりも明度の低い第2の色で第1層101上に網点印刷された第2層102とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷面の地色と近似する色がベタ印刷された梱包材において、前記のベタ印刷された色の前記地色上での視認性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
商品に関するユーザの理解を助けることを目的として、該商品を梱包する梱包材の表面に、該商品の外観や特徴に関連した表示を印刷することは広く行われている。その際に、前記商品に関する色、例えばトナーコンテナであればトナーの色を前記梱包材に前記表示として印刷することも行われている。ここで、前記の印刷がなされる梱包材の地色との関係で、前記表示の色が本来の色として認識されない場合がある。梱包材ではなく窯業系建築板の製造方法ではあるが、特許文献1には、窯業系建築板の意匠面にインクジェット方式によるフルカラー印刷層を有する化粧建築板の製造方法として、フルカラー印刷層に発現させようとする色柄模様において最も多く使用される色相と同一又は近似の色相の下地色を前記意匠面に着色し、その後、該意匠面にフルカラー印刷層を形成するものが開示されている。
【0003】
特許文献1の方法によれば、フルカラー印刷の淡色部分において、インクドットの密度が小さくなり、インクドット間に下地色が多く露出して本来発現しようとするフルカラー印刷の色相と異なってしまうことを防止できる。
【特許文献1】特開2004−44220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1の方法では、例えば梱包材が茶段ボールであり、前記表示の色が黄色である場合のように、梱包材の地色と印刷する色とが近似する場合には、肝心の色が目立たないため、商品に関する色を視認させることで該商品に対するユーザの理解を助けるという目的は十分には達成できない。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、梱包材の地色と梱包材表面に印刷される印刷色とが近似する場合にも、前記印刷色を前記地色から明瞭に区別して視認できる梱包材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る梱包材は、物品を収容する梱包部と、前記梱包部の表面に印刷された表示部を備え、前記表示部は、前記梱包部表面の地色上において色を視認させるための色表示部を含み、前記色表示部は、前記地色に対して色相差および/または明度差の少ない第1の色でベタ印刷された第1層と、前記第1の色よりも明度の低い第2の色で前記第1層上に網点印刷された第2層とからなる。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、第1の色でベタ印刷された第1層上に、前記第1の色よりも明度の低い第2の色で網点印刷された第2層が形成された色表示部とすることができ、第2の色からなる網点の存在によって前記第1の色の視認性が向上する。したがって、前記第1の色と近似する前記地色上に該第1の色をベタ印刷しても、該第1の色が、地色に埋没することなく、しかもその色として視認されるという効果を奏する。
【0008】
本発明の請求項2に係る梱包材は、前記梱包部が段ボールからなる。請求項2に係る発明によれば、梱包材の素材として頻用される段ボールの表面に前記表示部を形成することができる。
【0009】
本発明の請求項3に係る梱包材は、請求項2の梱包材において前記段ボールが茶段ボール、前記第1の色が黄、前記第2の色が緑とされている。請求項3に係る発明によれば、一般的な段ボールである茶段ボールに印刷される黄色のベタ印刷が、地色である茶色から明瞭に区別して視認される。
【0010】
本発明の請求項4に係る梱包材は、請求項2の梱包材において前記段ボールが茶段ボール、前記第1の色がグレー、前記第2の色が黒とされている。請求項3に係る発明によれば、一般的な段ボールである茶段ボールに印刷されるグレーのベタ印刷が、地色である茶色から明瞭に区別して視認される。
【0011】
本発明の請求項5に係る梱包材は、請求項3の梱包材において、前記物品として、黄色トナーを封入しているトナーコンテナが梱包される。請求項5に係る発明によれば、トナーコンテナに封入されているトナーの色を、ユーザは直感的に把握することができる。
【0012】
ここで、トナーコンテナの梱包材に封入トナーの色を表示することで、ユーザは、梱包されたトナーコンテナのトナー色を直感的に把握することができる。しかし、そのような色表示部が梱包材の地色に埋没して視覚的に識別しにくいと、ユーザに利便性を提供できない。しかし、請求項5に係る発明によれば、トナーの色である黄色が、地色である茶色から明瞭に区別して視認される状態で梱包材に表示としてベタ印刷されることになり、梱包されているトナーコンテナのトナー色が一目瞭然に把握可能なユーザフレンドリーな梱包材を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の梱包材によれば、梱包材の地色にかかわらず、該梱包材に梱包される物品に関する色を該梱包材の地色から明瞭に区別して視認させることができる。その結果、梱包された物品に関してユーザが理解を得ることが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態につき詳細に説明する。図1は、本発明に係る梱包材の一例を示す斜視図である。この例では、梱包材1は、略長方形に形成された茶段ボールの箱であって、黄色のトナーが封入されているトナーコンテナ2(物品)を梱包するために用いられる。
【0015】
トナーコンテナ2は、例えば複合機等の電子写真方式によってカラー印刷がなされる画像形成装置に取付けられる。トナーコンテナ2は、該画像形成装置において印刷がなされる際に、該画像形成装置が備える現像装置に、現像剤である黄色のトナーを供給する。前記現像装置に供給されたトナーは、該現像装置によって感光体ドラムの周面に供給され、該周面の静電潜像が形成された部分に付着する。これによって前記感光体ドラムの周面にトナー像が形成される(現像処理)。他色のトナーについても同様の現像処理がなされ、CMYK4色のトナーが塗り重ねられたトナー像が中間転写ベルトに転写される。
【0016】
中間転写ベルト上に形成された前記トナー像は、転写ローラと前記感光体ドラムとによって押圧挟持されつつ搬送される用紙に転写される。前記トナー像が転写された前記用紙は、定着装置によって加熱による定着処理を施されて排紙トレイに排出され、印刷が完了する。
【0017】
横長の柱状を呈するトナーコンテナ2は、例えば図略のエアパッキン等の緩衝材で包まれ、さらに両端を図略の例えば発泡スチロールや紙製の固定部材で固定された状態で梱包材1に梱包される。前記固定部材は、内側がトナーコンテナ2の端部と嵌合し、外側が梱包材1の内側面と嵌合する形状とされている。このようにして梱包されることによって、トナーコンテナ2は梱包材1の内部に固定され、前記固定部材による梱包材1へ固定作用と前記緩衝材による緩衝作用とによって、流通過程での輸送においてトナーコンテナ2に加わる衝撃から保護されることになる。
【0018】
梱包材1は、トナーコンテナ2を梱包するための本体である梱包部11と、梱包部11の表面に印刷される表示部10とからなる。表示部10は、梱包部11の天面と底面を除く側面の略中央部に設けられ、名称や色等のトナーコンテナ2に関する表示が印刷される。
【0019】
図2(A)は表示部10の全体図である。表示部10は、トナーコンテナ2のトナー色である黄色を視認させるために黄色でベタ印刷された色表示部100と、トナーコンテナ2の名称や対応機種等を示すための文字情報が印刷された文字部110と、を備えている。
【0020】
トナーコンテナ2は、梱包材1に梱包された状態では外部からユーザが視認することはできない。ここで、梱包材1の内容物がトナーコンテナ2であることを明示するために、梱包材1の表面にトナーコンテナ2の外観を示す写真や図を印刷したとしても、トナーコンテナ2に封入されているトナーの色とトナーコンテナ2の外装ケースの色とは異なるので、トナーの色まではユーザは知ることはできない。また、文字情報が印刷された文字部110のみによって表示部10を構成し、トナーの色を文字情報として表示するのみでは、該トナーの色をユーザは直感的には把握できない。
【0021】
そこで、表示部10に文字部110に加えて色表示部100を設け、この色表示部100にトナーコンテナ2のトナーの色である黄色をベタ印刷することによって、トナーコンテナ2に封入されているトナーの色を、ユーザに直感的に把握させ易くすることができる。
【0022】
図2(B)の拡大図に示すように、色表示部100は、黄色の例えば水性インクでベタ印刷された第1層101と、黄色よりも明度の低い緑色の例えば水性インクで第1層101上に網点印刷された第2層102と、からなる。すなわち図2(B)のIII−III断面図である図3に示すように、梱包部11の表面に黄インクからなる第1層101が形成され、さらに第1層101上に緑インクからなる第2層102が網点状に形成される。
【0023】
色表示部100が、第2層102を備えない場合、黄色と茶色とは色相差と明度差とがいずれも小さいために、第1層101の黄色のベタ印刷は、梱包部11の材質である茶段ボールの地色の茶色に埋没してしまう。その結果、トナーの色を、ユーザに直感的に把握させるという本来の目的が果たせなくなってしまう。一方、第2層102の緑色の網点が第1層101の黄色のベタ印刷上に規則的に点在する場合には、この緑色の網点によって、黄色のベタ印刷の視認性が向上する。そのため、該黄色のベタ印刷が地色の茶色に埋没することなく、しかも黄色として視認される。
【0024】
ただし、緑インクで印刷される第2層102の網点の密度が高すぎると、第1層101の黄色ではなく、第2層102の緑色として視認されてしまう。逆に、第2層102の網点の密度が低すぎると、第1層101の黄色の黄色が梱包材1の地色である茶色に埋没してしまう。すなわち、いずれの場合にも、本来の目的たるトナーの色である黄色をユーザに視認させるという目的を達成できないことになってしまう。そのため、前記網点は、スクリーン線数にして20〜30lpi(lines per inch)の解像度で描画されることが好ましく、より好ましくは30lpi程度の解像度で描画されることが好ましい。
【0025】
なお、文字部110は、この例では第2層102と同色の緑色で印刷されているが、文字部110の色が第2層102と同色である必要がないのは勿論のことである。
【0026】
以上、本発明の実施形態に係る梱包材1について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を取ることもできる。
【0027】
(1)上記実施形態では梱包材1の素材として茶段ボールを使用しているが、素材の段ボールの色は茶色に限定されるものではなく、白段ボールやカラー段ボールであってもよい。この場合も、該段ボールの地色に対して色相差および/または明度差の少ない第1の色でベタ印刷された第1層と、前記第1の色よりも明度の低い第2の色で前記第1層上に網点印刷された第2層が形成されていれば、該第1の色が、前記地色に埋没することなく、しかもその色として視認される。
【0028】
(2)上記実施形態では茶段ボールから形成される梱包材1において、第1層101の色を黄、第2層102の色を緑としているが、第1層101の色をグレー、第2層102の色を黒とする場合も、第1層のグレーを梱包材1の地色である茶色から明瞭に区別して視認させることができる。
【0029】
(3)上記実施形態では梱包材1を茶段ボールから形成される略長方形の箱としているが、梱包材の素材及び形状はこれに限定されるものではなく、例えば台形の底面を備える四角柱や四角錐等の内部に空間を有する形状に形成される厚紙製や樹脂製の梱包材であってもよい。
【0030】
(4)上記実施形態では梱包材1に梱包される物品は黄色のトナーを封入するトナーコンテナ2であるが、梱包される物品はこれに限定されるものではなく、例えば、色画用紙やカラーのバインダー等の色に特徴を有する物品であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る梱包材の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る梱包材が備える表示部を示す図であり、(A)は表示部の全体図であり、(B)は表示部が備える色表示部の拡大図である。
【図3】図2(B)に示す色表示部の拡大図のIII−III断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 梱包材
10 表示部
100 色表示部
101 第1層
102 第2層
11 梱包部
2 トナーコンテナ(物品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を収容する梱包部と、
前記梱包部の表面に印刷された表示部を備え、
前記表示部は、
前記梱包部表面の地色上において色を視認させるための色表示部を含み、
前記色表示部は、
前記地色に対して色相差および/または明度差の少ない第1の色でベタ印刷された第1層と、
前記第1の色よりも明度の低い第2の色で前記第1層上に網点印刷された第2層とからなる梱包材。
【請求項2】
前記梱包部が段ボールからなる請求項1に記載の梱包材。
【請求項3】
前記段ボールが茶段ボール、
前記第1の色が黄、
前記第2の色が緑である請求項2に記載の梱包材。
【請求項4】
前記段ボールが茶段ボール、
前記第1の色がグレー、
前記第2の色が黒である請求項2に記載の梱包材。
【請求項5】
前記物品が、黄色トナーを封入しているトナーコンテナである請求項3に記載の梱包材。

【図3】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−76794(P2010−76794A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246260(P2008−246260)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】