説明

棒状物品の回収方法および回収装置

【課題】棒状物品の生産能率を向上することができる技術を提供する。
【解決手段】本発明は、磁性を有する複数のダイオード(棒状物品)1をアタッチメント(保持手段)13により保持しながら矢印12の方向(第1方向)に搬送する工程と、アタッチメント13がダイオード1を保持する保持力をガイド(保持力抑制手段)16により抑制する工程と、ダイオード1をアタッチメント13から磁石(剥離手段)17により剥離する工程と、磁石17により剥離したダイオード1をアタッチメント13よりも下方向に排出する工程とを有し、磁石17は、矢印12の方向に交差する矢印の方向に回転する磁石とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状物品の回収技術に関し、特に、磁性を有する棒状物品の回収に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開平10−209677号公報(特許文献1)には、外周にリード線が係合可能な係合溝が複数個形成されると共に夫々の該係合溝を開閉するようにばねが装着されたリード線分離円板を間欠回転させながら、該係合溝に磁石を接近又は離脱させることにより、極めて簡単な装置でホッパから供給されるリード線を1本ずつ係合溝に係合させ、確実に1本ずつに分離することができるようにする整列搬送方法がある。
【0003】
例えば、特開平5−329450号公報(特許文献2)には、部品本体の両側から反対方向にリードを導出した軸状部品を、外周面に整列状態で吸着する回転ドラムの外周近傍位置に、板厚方向に着磁した二枚の磁石板が所定の間隔で対向配置され、その磁石板間の平行磁界により、不所望な軸状部品を回転ドラムから移行させて浮遊状態で収納するマグネットボックスを具備したものにおいて、上記マグネットボックスの両磁石板の回転ドラム側に向く端部に、回転ドラムの外周まで延びる磁性体のガイド板を対向配置させて連設し、軸状部品のうちリード曲がりのある不良品を選別する方法がある。
【0004】
例えば、特開平5−335351号公報(特許文献3)には、軸状電子部品の搬送ドラムにおいて、軸状電子部品の本体部を嵌入させる凹部と、その両端のリードを吸着する一対の小型磁石を周面に所定ピッチで配列した構造を有し、マグネットボックス内に一部を挿入し回転して、マグネットボックスの平行磁界によって整列された軸状電子部品を1本ずつ切り出す搬送ドラムを有し、周面幅を軸状電子部品の全長と略一致させ、周面の端縁寄りの位置にリード先端を吸着する上記小型磁石を埋め込んで、搬送ドラムからの取出し側において、軸状電子部品を爪片によって取出すため、曲がりがなく一直線状の軸状電子部品でないと吸着動作を行わず、これにより先端側で曲がっている軸状電子部品を切り出し対象から排除する方法がある。
【0005】
例えば、特開平10−250823号公報(特許文献4)には、磁気フィーダに部品を投入し、自動的に取出しポジションに搬送して部品の本体部を吸着する本体吸着部とリードを吸着するリード吸着部とを備えたピックアップヘッドで取出しポジションの部品本体部を吸着し、リードは吸着せずに部品を釣り下げ状にピックアップして2個取りをしないようにし、その後リードを吸着して姿勢固定をおこないターンテーブルの保持ヘッドに搬送移載する方法がある。
【0006】
例えば、特開平5−124623号公報(特許文献5)には、両端に金属製のリード線を有するガラスダイオードを浮上して進行させる2枚の対向磁石板からなるマグネットフィーダ内に、2枚の対向する振動板を挿入し、バイブレータによりこれを振動させ、ガラスダイオードを絡まることなく、整列させて、排出する方法がある。
【特許文献1】特開平10−209677号公報(段落〔0020〕〜〔0024〕、図7〜図9)
【特許文献2】特開平5−329450号公報(段落〔0020〕〜〔0024〕、図1〜図4)
【特許文献3】特開平5−335351号公報(段落〔0013〕〜〔0016〕、図1〜図3)
【特許文献4】特開平10−250823号公報(段落〔0022〕〜〔0025〕、図1〜図2)
【特許文献5】特開平5−124623号公報(段落〔0008〕〜〔0009〕、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
磁性を有する棒状物品の一例として、例えばガラスダイオードなど、部品本体の両端からそれぞれ反対方向にリード線が導出された電子部品がある。このような電子部品は例えばプリント配線基板にはんだにより実装されるが、実装時の接続不良を抑制するため、リード線にはんだがメッキ形成される。
【0008】
リード線にはんだをメッキ形成する方法として、搬送用のチェーンに取付けられた複数のアタッチメントにリード線の一方を保持させた状態で保持されていない方のリード線にはんだをメッキする方法がある。このような方法でメッキされた電子部品は回収装置によりアタッチメントから剥離され、回収される。
【0009】
本発明者は、アタッチメントなどの保持手段に保持された状態で搬送される棒状物品を回収する技術について検討を行い、以下のような課題を見出した。以下棒状物品をリード線付き電子部品として説明する。
【0010】
リード線付き電子物品をアタッチメントなどで保持して搬送する場合、所定の位置以外で電子部品がアタッチメントから脱落する不具合を抑制するため、アタッチメントの保持力は相当程度強くする必要がある。
【0011】
このように強い保持力で保持された電子部品をアタッチメントから取出す方法として、例えば電子部品に高圧エアを吹付けてアタッチメントから取出す方法がある。この場合アタッチメントが電子部品を保持する保持力を超える圧力で電子部品にエアを吹付けるため、取出された電子部品が散乱してしまう。
【0012】
特に近年、電子部品は小型化、軽量化が図られているため、散乱し易く、広範囲に飛散してしまう。
【0013】
上記散乱を抑制するため、高圧エア吹付位置の周囲に回収用のホッパを設ける方法があるが、エアを吹付けられた電子部品はホッパ内の任意の方向に散乱するため、ホッパの壁に衝突したり、アタッチメントや搬送機構に巻き込まれたりする。
【0014】
このため、電子部品のリード線が曲がったり、部品本体が破損したりすることがある。また、電子部品がアタッチメントや搬送機構に巻き込まれると、多数の電子部品が絡まり、最悪の場合ホッパ内に詰まってしまう。
【0015】
このような電子部品は、例えば、電子機器のプリント配線基板などに実装されるが、このような電子機器の小型化、多機能化に伴い、電子部品を実装するスペースは小さくなっているため、電子部品のリード線が曲がってしまうと、プリント配線基板に実装できなくなる場合がある。
【0016】
このため、このようなトラブルが発生すると、製品の歩留が低下するだけではなく、生産能率も低下してしまうため、電子部品の製造コストが増加する。
【0017】
一方、例えば特開平10−209677号公報(特許文献1)のような、リード線を1本ずつ係合溝に係合させ、確実に1本ずつに分離するような方法では、製品が散乱することはないが、単位時間当りの回収個数が高圧エアで回収する方法と比較して大幅に少なくなる。このため、生産能率が低下し、製造コストが増加する。
【0018】
本願発明の目的は、棒状物品の生産能率を向上させることができる技術を提供することにある。
【0019】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0021】
すなわち、本発明は、磁性を有する複数の棒状物品を保持手段により保持しながら第1方向に搬送する工程と、前記保持手段が前記棒状物品を保持する保持力を保持力抑制手段により抑制する工程と、前記棒状部品を前記保持手段から剥離手段により剥離する工程と、前記剥離手段により剥離した前記棒状物品を前記保持手段よりも下方向に排出する工程とを有し、前記剥離手段は、前記第1方向に交差する方向に回転する磁石とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0023】
すなわち、本発明によれば、棒状物品の生産能率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0025】
本実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは同一の符号を付すようにし、その繰り返しの説明は原則として省略する。以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0026】
本実施の形態では、棒状物品の回収技術について、搬送装置のアタッチメントに保持されたリード線付き電子部品であるガラスダイオード(以下、単にダイオードと示す)を保持する技術を例に説明する。
【0027】
図1は本発明の実施の形態の回収装置で回収するダイオードの平面図、図2は図1に示すダイオードの内部構造を示す断面図である。
【0028】
図1において、本実施の形態のダイオード(棒状物品)1は、本体部2の両端から複数のリード線3が互いに反対方向に導出される。リード線3は磁性を有する棒状の部材であり、材料としては、鉄、ニッケル、銅、これらの合金、あるいは、鉄などを芯材として、銅などで被覆したものなどを例示することができる。
【0029】
図2に示すように、ダイオード1は、本体部2の内部に半導体ペレット4を備えている。ペレット4は互いに反対側に位置する第1主面と第2主面を有し、各主面にペレット電極を備えている。
【0030】
ペレット4の第1主面はバンプ5などの導電性部材を介して、リード線3と電気的に接続されている。ペレット4の第2主面はリード線3に電気的に接続されている。ペレット4の第2主面は導電性の接着剤(図示せず)などにより、リード線3に固着されている。
【0031】
また、ペレット4、バンプ5、およびリード線3の一部はガラススリーブ(以下単にスリーブと示す)6により封止されている。スリーブ6の形状は例えば円筒形である。
【0032】
次に、図2を用いてダイオード1の製造方法を簡単に説明する。まず、図2に示す外部リード部7と内部リード部8とを溶接などにより接続してリード線3を形成する。例えば、外部リード部7に銅覆鋼線(CP線)、内部リード部8にジュメット線(鉄とニッケルの合金を芯材として、周囲を銅などでメッキした線)を用いてリード線3をスラグリードとする。
【0033】
次に、スリーブ6、第1のリード線3、ペレット4(予め第1主面にバンプ5が形成されている)、第2のリード線3の順で組み立てる。次に、前記工程で組み立てたスリーブ6などを組み立てた状態で、封止炉に搬送し、スリーブ6を溶融させる。次に、冷却してスリーブ6とリード線3の内部リード部8とを溶着させる。
【0034】
冷却工程が終了すると、本体部2の両端から2本のリード線3が互いに反対方向に導出された、2極構造のダイオード1が完成する。
【0035】
ダイオード1のような電子部品は、プリント配線基板などに、はんだなどの接続材料を介して実装される。実装時の接続不良を抑制するため、リード線3の外部リード部7には、実装前にはんだ層を形成しておくことが好ましい。
【0036】
はんだ層を形成する方法として、例えば溶融メッキ法がある。この方法では、溶融はんだ槽にメッキ形成したい部分(本実施の形態の場合、外部リード部7)を浸漬することによりはんだを付着させる。
【0037】
ここで、多量のダイオード1に効率的にはんだ層を形成するためには、ダイオード1を整列させた状態で搬送し、はんだ槽に一定時間浸漬する作業を連続的に行うことが好ましい。
【0038】
図3を用いて、ダイオード1を整列させた状態で搬送する方法について説明する。図3は本実施の形態のダイオード1が搬送装置のアタッチメントに保持された状態を示す要部斜視図である。
【0039】
図3において、複数のダイオード1はチェーン(搬送手段)11により図の矢印(第1方向)12で示す方向に搬送される。また、ダイオード1は、チェーン11に取付けられたアタッチメント13に保持されている。
【0040】
このチェーン11には複数のアタッチメント13が矢印12で示す方向に沿って並んだ状態で取付けられている。アタッチメント13はダイオード1を保持する手段である。ここでは、各アタッチメント13は、3つのダイオード1を保持可能になっている。
【0041】
また、各アタッチメント13は磁石(第2の磁石)14を備えている。磁石14はアタッチメント13に挿入されている。アタッチメント13がダイオード1を保持する保持力は、磁石14の磁力により決定される。
【0042】
また、アタッチメント13の面のうち、チェーン11に取付けられる面13aの反対側の面13bには溝部15が複数形成されている。ダイオード1の一方のリード線3が溝部15の側壁に挟まれた状態で、磁石14の磁力によりアタッチメント13に保持されている。このため、ダイオード1の矢印12に沿った方向の位置は溝部15によって決定される。ダイオード1はアタッチメント13に整列された状態で保持される。
【0043】
なお、搬送中にダイオード1がアタッチメント13から脱落する不具合を防止するため、磁石14は相当程度の磁力を有している。例えば、本実施の形態の磁石14の表面磁束密度は80mT(ミリテスラ)〜100mT程度となっている。また、磁石14の形状は例えば10mm×8mmで厚さが4mmの直方体形状である。
【0044】
複数のダイオード1は図3に示すように一方のリード線3がアタッチメント13に保持された状態ではんだ槽に連続的に搬送される。はんだ槽では、保持されたリード線3と反対側に位置するリード線3が、溶融はんだに連続的に浸漬され、リード線3にはんだ層がメッキ形成される。
【0045】
次に、本実施の形態の回収装置の構造と、整列された状態で搬送されるダイオード1を回収する方法について図4〜図9を用いて説明する。なお、本実施の形態の特徴を理解し易くするため、回収装置が動作する工程毎に構造的特徴もあわせて説明する。
【0046】
図4は本実施の形態のダイオードの回収装置の要部斜視図、図5は図4に示す回収装置を上面からみた要部平面図、図6は図5に示すA−A線で切断した要部拡大断面図である。なお、本実施の形態の回収装置の構造を理解し易くするため、図5では、回収装置入口部以降のダイオード1を取り除いた状態で示してある。
【0047】
また、図7は本実施の形態の回収装置において、ダイオードが排出部材の側壁に接触した状態を示す要部拡大断面図、図8はダイオードがアタッチメントから剥離した状態を示す要部拡大断面図、図9はダイオードが排出部材の側壁に沿って排出される状態を示す要部拡大断面図である。
【0048】
(a)図4において、回収装置100は、磁性を有する複数のダイオード(棒状物品)1を保持するアタッチメント(保持手段)13と、ダイオード1を矢印(第1方向)12に搬送するチェーン(搬送手段)11とを備えている。アタッチメント13の詳細な構造は図3を用いて説明した構造と同様である。
【0049】
(b)また、回収装置100は、アタッチメント13がダイオード1を保持する保持力(すなわち磁石14の磁力)を抑制するガイド(保持力抑制手段)16と、ダイオード1をアタッチメント13から剥離する磁石(第1の磁石)17を備えている。
【0050】
図5に示すように、ガイド16の平面上の位置はアタッチメント13よりも磁石17に近い位置を有するように配置されている。より詳しくは、回収装置100の入口部18では、アタッチメント13よりも磁石17に遠い位置に配置され、矢印12に沿って進むにつれて、アタッチメント13よりも磁石17に近い位置に配置される。
【0051】
また、図6に示すようにガイド16の断面上の位置は、アタッチメント13よりも下側に配置される。このように配置することにより、ダイオード1を矢印12に沿って搬送すると、ダイオード1の一部がガイド16に押圧されるため、アタッチメント13の保持力を抑制することができる。
【0052】
ガイド16がダイオード1の一部を磁石17側に押圧する。このため、ダイオード1の一部はアタッチメント13の溝部15に保持されつつ、他の一部がアタッチメント13から遠ざかり、磁石14の保持力が抑制される。
【0053】
より具体的には、ガイド16はアタッチメント13よりも下側に配置されるため、ダイオード1のアタッチメント13に保持されるリード線3以外の部分を磁石17がある方向に向かって押圧することになる。ガイド16がダイオード1を押圧する方向は、ダイオード1が搬送される方向(図4および図5に矢印12で示す方向)に交差する方向となる。
【0054】
ガイド16により押圧されたダイオード1は、図6に示すように一定の角度θで傾斜する。このため、アタッチメント13の保持力、すなわち磁石14の磁束がダイオード1に及ぼす磁力が抑制される。
【0055】
回収装置100は、ガイド16によりアタッチメント13の保持力を抑制した後、剥離するので、後工程で、アタッチメント13からダイオード1を確実に剥離することが可能となる。
【0056】
ここで、ダイオード1と、アタッチメント13の面13aとがなす角θについて説明する。角θは5°〜45°の範囲とすることが好ましい。角θが5°より小さいとアタッチメント13の保持力を十分抑制することができなくなる場合があり、次の剥離工程でダイオード1をアタッチメント13から剥離できないことがある。
【0057】
一方、角θを45°よりも大きくすると、次の剥離工程で磁石17により剥離する前に、アタッチメント13からダイオード1が脱落し、ダイオード1が散乱する原因となることがある。
【0058】
また、回収装置100はアタッチメント13から剥離したダイオード1をアタッチメント13よりも下方向に排出するホッパ(排出部材、排出手段)19を備えている。ホッパ19を備えることにより、ダイオード1を一定範囲内の回収領域で回収することができる。
【0059】
また、回収装置100が備える磁石17は矢印12と交差する方向に回転している。詳しくは、図6に示すように磁石17は矢印12と交差する矢印20の方向に回転する回転軸21に取付けられた板状の永久磁石である。なお、回転軸21は例えば電気モータ22などの動力により、矢印20の方向に回転する。
【0060】
ダイオード1は、ガイド16の押圧によりアタッチメント13の保持力が抑制されるため、アタッチメント13に保持されるリード線3と反対側に位置するリード線3が磁石17に引きつけられる。すなわち、磁石17は保持力抑制手段としても動作する。
【0061】
ここで、ダイオード1をアタッチメント13から剥離する前に、ダイオード1の一部がホッパ19の側壁に接触することが好ましい。詳しくは、図7に示すようにアタッチメント13に保持されるリード線3と反対側のリード線3の端部がホッパ19の側壁に接触することが好ましい。
【0062】
剥離前にホッパ19の側壁に接触させることにより、アタッチメント13からダイオード1を剥離した後、ダイオード1をホッパ19の側壁に沿って排出することが可能となる。ダイオード1をホッパ19の側壁に沿って排出することにより、ダイオード1が排出される際の姿勢を制御することが可能となるため、排出時にホッパ19などに衝突してリード線3が曲がるなどの不良を抑制することが可能となる。
【0063】
また、図6に示すようにダイオード1に近い側の磁石17において、上側の面をS極、下側の面をN極とすると、ダイオード1のリード線3のうち、磁石17に近い方のリード線3は、近づいてくる磁石17が有しているN極と反対の磁極であるS極に着磁する。このため、ダイオード1の下側のリード線3は磁石17のN極に引きつけられてホッパ19の側壁に接触する。
【0064】
(c)次に図8に示すように、リード線3が磁石17に引きつけられることにより、リード線3と磁石17との距離が短くなるため、磁石17がリード線3を引きつける力は増大し、磁石の回転動作に誘導されるように、ダイオード1はアタッチメント13の下方向に引き抜かれ、アタッチメント13から剥離する。すなわち、S極に着磁したリード線3が回転する磁石17のN極に誘導され、下方向に移動する。
【0065】
回収装置100は矢印20の方向に回転する磁石17によりアタッチメント13からダイオード1を剥離するので、一度に複数個のダイオード1を剥離することが可能となる。このため、ダイオード1の回収を効率的に行うことが可能となる。ダイオード1の回収を効率的に行うことにより、生産能率を向上させることが可能となるので、製品の製造コストを低減することが可能となる。
【0066】
また、磁石17とダイオード1との間には、ダイオード1のリード線3よりも磁性の低い材料、より好ましくは作業環境温度(0℃〜50℃の範囲)で磁性を示さない材料で構成されるホッパ19を配置することが好ましい。このような材料としては、絶縁性の各種樹脂材料や、金属材料であれば、SUS304などオーステナイト系ステンレス材料を例示することができる。
【0067】
磁石17とダイオード1との間にリード線3よりも磁性の低い材料で構成されるホッパ19を配置することにより、磁石17の磁束密度を大きくしても、ダイオード1が磁石17に直接張り付いてしまう問題を防止することができる。磁石17の磁束密度を大きくすれば、ダイオード1をアタッチメント13から確実に剥離させることが可能となる。
【0068】
また、回転軸21に取付ける磁石17は1枚でも良いが、図6に示すように回転軸21を軸として対照となるように互いに反対方向に複数枚取付けることが好ましい。複数枚の磁石17を取付けると、1枚取付けた場合と比較して、回転速度を遅くしても、多数のダイオード1をアタッチメント13から剥離させることが可能となる。
【0069】
ここで、詳細は後述するが、アタッチメント13から剥離したダイオード1は磁石17の磁力によって保持されながらアタッチメント13よりも下方向に排出される。回転速度を遅くすることにより、ダイオード1が排出される際の落下速度を遅くすることが可能になる。ダイオード1が排出される際の落下速度を遅くすることにより、ダイオード1の散乱を更に抑制することができる。
【0070】
図6〜図9では、回転軸21を軸として対照となるように2枚の磁石17を取付けた例を説明するが、図6〜図9に示す磁石取付け方向と交差する方向に更に2枚の磁石17を取付けて4枚としても良い。この場合、磁石17の回転速度を更に遅くすることができる。
【0071】
(d)次に図9に示すように、アタッチメント13から剥離したダイオード1は磁石17の磁力によって保持されながらアタッチメント13よりも下方向に移動する。すなわち、磁石17の回転動作に誘導されて下方向に移動する。さらに磁石17が回転することにより、磁石17とダイオード1との距離は徐々に離れる。詳しくは磁石17のN極とダイオード1のS極に着磁したリード線3との距離が徐々に離れる。
【0072】
磁石17のN極がダイオード1から離れるとともに、今度は磁石17の上側の面であるS極がダイオード1に近づく。S極に着磁したリード線3に磁石17のS極が近づくと、両者は同極であるため、引力と反対方向の力、すなわち、反発力が作用する。磁石17がダイオード1を引きつける力は徐々に弱くなり、最終的には磁石17と反発し、磁石17から離れて下方向に排出される。すなわち、磁石17は排出手段としても機能する。
【0073】
アタッチメント13から剥離した直後からダイオード1が自由落下速度で下方向に排出されると、ホッパ19の下部に配置された回収箱(図示せず)などでダイオード1が散乱する可能性がある。ダイオード1が回収箱などで散乱すると、リード線3が曲がるなどの不良が発生する可能性がある。
【0074】
回収装置100は矢印20の方向に回転する磁石17によりアタッチメント13からダイオード1を剥離して、磁石17の磁力によって保持しつつアタッチメント13よりも下方向にゆっくりと誘導した後、排出するので、ダイオード1の散乱を防止、あるいは抑制することが可能となる。
【0075】
ダイオード1の散乱を抑制することにより、リード線3が曲がるなどの不良や、チェーン11に巻き込まれたりする不良を抑制し、製品の不良率を低減することが可能となる。不良率を低減することにより、製品の歩留まりが向上し、製品の製造コストを低減することが可能となる。
【0076】
また、本実施の形態の磁石17は、上面と下面とが、互いに反対磁性の磁極に着磁しているため、排出位置までは、ゆっくりとダイオード1を下方向に誘導しつつ、かつ、最終段階では、ダイオード1を確実に下方向に排出することが可能となる。
【0077】
本実施の形態の回収技術によれば、搬送手段からの剥離手段としてエア吹付けを行わないので、ダイオード1の散乱を抑制することができる。また、ダイオード1を剥離した後も、ダイオード1を磁石17でゆっくりと誘導して排出することができるので、散乱を抑制することができる。
【0078】
以上、本発明者によってなされた発明を発明に実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記発明の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0079】
例えば、実施の形態では棒状物品の例としてダイオードを例として説明したが、たとえば抵抗素子やコンデンサなどの電子部品に置き換えても良い。また、例えば3極構造のトランジスタなどの電子部品であっても、電子部品の本体部の両端から複数のリード線が互いに反対方向に導出された構造であれば、本発明に係る回収技術を適用することができる。
【0080】
また、実施の形態では棒状物品と第1の磁石の間に配置する排出部材をホッパとして説明したが、これを例えば板状のシュートに置き換えても良い。この場合、回収装置がより簡素化できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、棒状物品、特に磁性を有する電子部品などの製造工程に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施の形態の回収装置で回収する棒状物品であるダイオードの平面図である。
【図2】図1に示すダイオードの内部構造を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態の棒状物品が搬送装置のアタッチメントに保持された状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態の棒状物品の回収装置の斜視図である。
【図5】図4に示す回収装置を上面からみた平面図である。
【図6】図5に示すA−A線で切断した断面図である。
【図7】本発明の実施の形態の回収装置において、ダイオードが排出部材の側壁に接触した状態を示す拡大断面図である。
【図8】本発明の実施の形態の回収装置において、ダイオードがアタッチメントから剥離した状態を示す拡大断面図である。
【図9】本発明の実施の形態の回収装置において、ダイオードが排出部材の側壁に沿って排出される状態を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0083】
1 ダイオード(棒状物品)
2 本体部
3 リード線
4 ペレット
5 バンプ
6 スリーブ
7 外部リード部
8 内部リード部
11 チェーン(搬送手段)
12 矢印(第1方向)
13 アタッチメント(保持手段)
13a、13b 面
14 磁石(第2の磁石)
15 溝部
16 ガイド(保持力抑制手段)
17 磁石(第1の磁石)
18 入口部
19 ホッパ(排出部材)
20 矢印
21 回転軸
22 モータ
100 回収装置
θ 角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)磁性を有する複数の棒状物品を保持手段により保持しながら第1方向に搬送する工程と、
(b)前記保持手段が前記棒状物品を保持する保持力を保持力抑制手段により抑制する工程と、
(c)前記棒状部品を前記保持手段から剥離手段により剥離する工程と、
(d)前記剥離手段により剥離した前記棒状物品を前記第1方向と交差する方向に排出する工程とを有し、
前記剥離手段は、前記第1方向に交差する方向に回転する第1の磁石であることを特徴とする棒状物品の回収方法。
【請求項2】
請求項1に記載の棒状物品の回収方法において、
前記第1の磁石と前記棒状物品の間には、前記棒状物品よりも磁性の低い排出部材が配置されていることを特徴とする棒状物品の回収方法。
【請求項3】
請求項2に記載の棒状物品の回収方法において、
前記棒状物品が前記保持手段から剥離する前に、前記棒状物品の一部が、前記排出部材に接触することを特徴とする棒状物品の回収方法。
【請求項4】
磁性を有する複数の棒状物品を保持する保持手段と、
前記複数の棒状物品を第1方向に搬送する搬送手段と、
前記保持手段が前記棒状物品を保持する保持力を抑制する保持力抑制手段と、
前記棒状物品を前記保持手段から剥離する剥離手段と、
前記剥離した前記棒状物品を前記第1方向と交差する方向に排出する排出手段とを備え、
前記剥離手段は、前記第1方向に交差する方向に回転する第1の磁石であることを特徴とする棒状物品の回収装置。
【請求項5】
請求項4に記載の棒状物品の回収装置において、
前記第1の磁石と前記棒状物品の間には、前記棒状物品よりも磁性の低い排出部材が配置されており、前記棒状物品が保持手段から剥離する前に、前記棒状物品の一部が、前記排出部材に接触することを特徴とする棒状物品の回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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