説明

棒状部材の架設構造

【課題】棒状部材を仮設足場に架設する際の取り付け位置の選択の利便性や自由度を高めるとともに、仮設足場の支柱に無理なく架設することができ、部材の軽量化を図ってその設置や解体の取り扱い易さを改善できる棒状部材の架設構造を提供する。
【解決手段】第1支柱11と第2支柱21の間に架設される棒状部材30は、棒状本体40、上側取付部50、下側取付部60を備え、上側取付部は、第1支柱の支柱側面への当接部、当接部の支柱の左右いずれか側に形成された棒状本体との上側連結部、当接部の上側連結部と支柱の左右反対側となる他側に形成され上部くさび受け部材15の左右いずれか一側のくさび受け部に挿入される上部くさび部材を有し、下側取付部は、棒状本体との下側連結部、上部くさび部材が挿入されたくさび受け部と左右反対側となる他側のくさび受け部に挿入される下部くさび部材を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状部材の架設構造に関し、特に支柱の間に簡単に架設することができる架設構造を備えた棒状部材に関する。
【背景技術】
【0002】
建築現場等に構築される仮設足場は、支柱と横柱(横架材、腕木、横桟等とも称される)との組み合わせからなる枠組みに足場板が設置されて組み立てられる。足場板は主に横架材上に組み付けられ、仮設足場は出来上がる。このような仮設足場は高所作業を伴うことから、足場の安定性及び安全性が十分に確保される。
【0003】
仮設足場を組み立てる際、垂直方向に立設された支柱同士の安定性を高めるため、支柱間の水平方向や斜め方向に棒状部材を用いた筋交い(斜行材、斜材等)が架設される(例えば、特許文献1等参照)。仮設足場に仮設階段を取り付ける場合、現状、階段の安全性の観点から前記の斜め方向の筋交いが、仮設足場に架設される仮設階段用の手すりとしても利用されることが多い。斜め方向の筋交いを足場に仮設される階段の傾斜に対応させているものの、必ずしも仮設階段専用の手すりではないため、階段と手すりとの位置は対応するものとならないことがある。
【0004】
最近では仮設足場の支柱と筋交いとを取り付けるための部材として、従来のホルダに加えてフランジ(あるいは鍔)と称される部材が用いられる(例えば、特許文献2等参照)。特許文献2の図示からよくわかるように、フランジを用いて各種の筋交いを架設する場合、フランジ同士の孔(穴部)に、筋交いの端部に備えられた接続部材の係止片(くさび)が挿入される。通常、フランジを用いて筋交いを支柱間に架設する場合、一側の支柱のフランジの孔及び向き合う他側の支柱のフランジの孔を利用して筋交いは接続されて固定される。すなわち、並設された支柱間をつなぐ垂直平面上に位置するフランジの孔が用いられる。
【0005】
ところが、前記の配置にあるフランジの孔は足場板や横方向の筋交い等の接続、固定に優先的に使用されることが多い。従って、手すりの用途等の斜め方向の筋交いを取り付けようとすると、あえて筋交いの取付位置をずらすことにより、筋交いを所望の位置と異なる位置のフランジに架設せざるを得なかった。これが架設足場における階段に手すりの位置を合わせにくくする原因である。
【0006】
加えて、特許文献2に開示の筋交いにあっては、水平方向の筋交いと斜め方向の筋交いの両方を片方の末端で接続部材を介して回動可能に連結する構造である。そのため、筋交い自体の構造が複雑になり同時に重量も増す。作業性の観点から、部材の軽量化、取り扱い易さの改善も急務である。
【0007】
これらの要因から、仮設階段の手すり等をはじめとする各種の棒状部材を仮設足場に架設する際の取り付け位置の選択の利便性や自由度を高めるとともに、仮設足場の支柱に無理なく架設することができ、部材の軽量化、しかも設置や解体の簡便な取り扱い易さの改善できる棒状部材の架設構造が求められるに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−68435号公報
【特許文献2】特開2002−317552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記状況に鑑み提案されたものであり、棒状部材を仮設足場に架設する際の取り付け位置の選択の利便性や自由度を高めるとともに、架設足場の支柱に無理なく架設することができ、部材の軽量化を図ってその設置や解体の取り扱い易さを改善できる棒状部材の架設構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、請求項1の発明は、支柱の左右両側にくさび受け部を有する上部くさび受け部材が固設された第1支柱と前記第1支柱と並設され同じく支柱の左右両側にくさび受け部を有する下部くさび受け部材が固設された第2支柱の前記上部くさび受け部材及び下部くさび受け部材の間の上下斜め方向に棒状部材を架設する構造であって、前記棒状部材は、棒状本体と、前記棒状本体の上側に形成された上側取付部と、前記棒状本体の下側に形成された下側取付部とを備えていて、前記上側取付部は、前記第1支柱の支柱側面への当接部と、前記当接部の支柱の左右いずれか側に形成された前記棒状本体との上側連結部と、前記当接部の前記上側連結部と支柱の左右反対側となる他側に形成され前記上部くさび受け部材の左右いずれか一側のくさび受け部に挿入される上部くさび部材とを有するとともに、前記下側取付部は、前記棒状本体との下側連結部と、前記上部くさび部材が挿入されたくさび受け部と左右反対側となる他側のくさび受け部に挿入される下部くさび部材とを有することを特徴とする棒状部材の架設構造に係る。
【0011】
請求項2の発明は、前記棒状部材が仮設階段用手すりである請求項1に記載の棒状部材の架設構造に係る。
【0012】
請求項3の発明は、前記上部くさび受け部材及び下部くさび受け部材が十字状にくさび受け部を有する請求項1又は2に記載の棒状部材の架設構造に係る。
【0013】
請求項4の発明は、前記上側取付部の当接部が支柱側面に相応する半円周面形状に形成された請求項1ないし3のいずれか1項に記載の棒状部材の架設構造に係る。
【0014】
請求項5の発明は、前記上側取付部の当接部が支柱の棒状部材側の側面に当接する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の棒状部材の架設構造に係る。
【0015】
請求項6の発明は、前記下側取付部において、前記下側連結部は前記下部くさび受け部材のくさび受け部を収容する水平方向に形成された開口部を有しているとともに、前記下部くさび部材は前記下側連結部内に上下動可能に配置され、前記下側取付部を前記下部くさび受け部材に取り付けるに際し、前記開口部内に前記下部くさび受け部材のくさび受け部を収容した後に該くさび受け部に対して前記下部くさび部材の挿入くさび部を挿入する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の棒状部材の架設構造に係る。
【0016】
請求項7の発明は、前記下部くさび部材が、該下部くさび部材の上部に上部抜け止め部を設けるとともに、該下部くさび部材の下部に下部抜け止め部を設けた長脚部を備えてなる請求項6に記載の棒状部材の架設構造に係る。
【0017】
請求項8の発明は、前記下部くさび部材が、前記挿入くさび部を前記下部くさび受け部材のくさび受け部に挿入しない位置で前記下側連結部に保持するくさび保持部を備えている請求項6又は7に記載の棒状部材の架設構造に係る。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明に係る棒状部材の架設構造によると、支柱の左右両側にくさび受け部を有する上部くさび受け部材が固設された第1支柱と前記第1支柱と並設され同じく支柱の左右両側にくさび受け部を有する下部くさび受け部材が固設された第2支柱の前記上部くさび受け部材及び下部くさび受け部材の間の上下斜め方向に棒状部材を架設する構造であって、前記棒状部材は、棒状本体と、前記棒状本体の上側に形成された上側取付部と、前記棒状本体の下側に形成された下側取付部とを備えていて、前記上側取付部は、前記第1支柱の支柱側面への当接部と、前記当接部の支柱の左右いずれか側に形成された前記棒状本体との上側連結部と、前記当接部の前記上側連結部と支柱の左右反対側となる他側に形成され前記上部くさび受け部材の左右いずれか一側のくさび受け部に挿入される上部くさび部材とを有するとともに、前記下側取付部は、前記棒状本体との下側連結部と、前記上部くさび部材が挿入されたくさび受け部と左右反対側となる他側のくさび受け部に挿入される下部くさび部材とを有するため、棒状部材を仮設足場に架設する際の当該棒状部材の取り付け位置の選択の利便性や自由度は高まり、仮設足場の支柱に無理なく架設することができる。そして、部材の軽量化も可能であり、棒状部材の仮設足場への設置や解体の取り扱い易さを改善できる棒状部材の架設構造が実現できる。
【0019】
請求項2の発明に係る棒状部材の架設構造によると、請求項1の発明において、前記棒状部材が仮設階段用手すりであるため、仮設階段用手すりの仮設足場への架設を簡素化することができる。
【0020】
請求項3の発明に係る棒状部材の架設構造によると、請求項1又は2の発明において、前記上部くさび受け部材及び下部くさび受け部材が十字状にくさび受け部を有するため、上下の両くさび受け部材の構造は簡素となる。また、対称形としているため荷重の加わり方が均一となり、くさび受け部材を支柱へ固定する際の強度も確保できる。
【0021】
請求項4の発明に係る棒状部材の架設構造によると、請求項1ないし3のいずれか1項の発明において、前記上側取付部の当接部が支柱側面に相応する半円周面形状に形成されたため、当接部と支柱との被着面積は増加し、棒状部材と支柱との架設を安定化することができる。
【0022】
請求項5の発明に係る棒状部材の架設構造によると、請求項1ないし4のいずれか1項の発明において、前記上側取付部の当接部が支柱の棒状部材側の側面に当接するため、第1支柱とこれに並設する第2支柱のいずれの支柱間よりも必ず左右いずれかの外方となる位置に棒状本体を配置することができる。そこで、並設された支柱同士の間を棒状本体が遮ることはなくなる。
【0023】
請求項6の発明に係る棒状部材の架設構造によると、請求項1ないし5のいずれか1項の発明において、前記下側取付部において、前記下側連結部は前記下部くさび受け部材のくさび受け部を収容する水平方向に形成された開口部を有しているとともに、前記下部くさび部材は前記下側連結部内に上下動可能に配置され、前記下側取付部を前記下部くさび受け部材に取り付けるに際し、前記開口部内に前記下部くさび受け部材のくさび受け部を収容した後に該くさび受け部に対して前記下部くさび部材の挿入くさび部を挿入するため、支柱のくさび受け部材との接続、固定作業は容易になり、現場における作業も簡単になる。
【0024】
請求項7の発明に係る棒状部材の架設構造によると、請求項6の発明において、前記下部くさび部材が、該下部くさび部材の上部に上部抜け止め部を設けるとともに、該下部くさび部材の下部に下部抜け止め部を設けた長脚部を備えてなるため、常時、下部くさび部材の下側連結部内の保持は実現できる。下部くさび部材を持ち運んだり探したりする手間はなくなり、下部くさび部材の紛失のおそれも少なくなる。
【0025】
請求項8の発明に係る棒状部材の架設構造によると、請求項6又は7の発明において、前記下部くさび部材が、前記挿入くさび部を前記下部くさび受け部材のくさび受け部に挿入しない位置で前記下側連結部に保持するくさび保持部を備えているため、くさび仮置き部にくさび保持部を引っかけて下部くさび部材の仮置きが可能となる。下部くさび受け部材に下側取付部を取り付けるときの位置合わせにおいて、下部くさび部材が邪魔にならなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例に係る棒状部材の全体正面図である。
【図2】くさび受け部材が固設された支柱の部分斜視図である。
【図3】上側取付部と支柱の架設状態を示す斜視図である。
【図4】上側取付部と支柱の架設状態を示す上面図である。
【図5】下側取付部と支柱の架設状態を示す斜視図である。
【図6】下側取付部と支柱の架設状態を示す上面図である。
【図7】下側くさび部材を挿入前の下側取付部の側面図である。
【図8】下側くさび部材を挿入後の下側取付部の側面図である。
【図9】他の実施例に係る棒状部材の上側取付部の部分斜視図である。
【図10】図9の上面図である。
【図11】さらに他の実施例に係る棒状部材の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1の全体正面図は、本発明の棒状部材の架設構造の架設状況を表す。第1実施例として図示する棒状部材30は、請求項2の発明に規定するように、仮設階段1とともに架設足場の支柱に架設される架設階段用手すりである。これは斜め方向の筋交い(斜行材)の一種といえる。以降、架設階段用手すりを棒状部材の一例として説明する。図示の仮設足場に用いる第1支柱11には上部くさび受け部材15(第1くさび受け部材)が固設される。第1支柱11と並設される第2支柱21にも下部くさび受け部材25(第2くさび受け部材)が固設される。
【0028】
棒状部材30には、請求項1の発明に規定するように、棒状本体40と、同棒状本体40の上側(一側)に形成された上側取付部50(第1取付部)と、同棒状本体40の下側(他側)に形成された下側取付部60(第2取付部)が備えられる。棒状部材30は、上側取付部50を介して第1支柱11の上部くさび受け部材15に接続(取り付け)され、下側取付部60を介して第2支柱21の下部くさび受け部材25に接続(取り付け)される。そして、棒状部材30は、上部くさび受け部材15と下部くさび受け部材25の間に上下斜め方向を成して架設される。
【0029】
図1等から明らかなように、上部くさび受け部材15に他の棒状部材の下側取付部が接続(取り付け)され、また、下部くさび受け部材25に他の棒状部材の上側取付部が接続(取り付け)される。従って、上部くさび受け部材及び下部くさび受け部材を通じて連続して棒状部材は支柱間に架設される。図中、符号2は支柱に設けられた横柱(横架材、腕木、横桟等と称される。)、3は仮設階段の踏み板である。
【0030】
実施例の第1支柱11及び第2支柱21、並びに上部くさび受け部材15及び下部くさび受け部材25は、互いに同形状である。そこで図2の斜視図を用い双方を説明する。上部くさび受け部材15は鍔部材13(フランジ部材)からなり、第1支柱11に溶接等により固設される。上部くさび受け部材15は第1支柱11の左右両側にくさび受け部を有し、上部左くさび受け部16、上部右くさび受け部17となる。図示の左右くさび受け部16,17は鍔部材13に形成された穴であり、鍔縁部14により囲まれる。符号18は上部前くさび受け部である(後出の図4参照)。
【0031】
同様に、下部くさび受け部材25も鍔部材23(フランジ部材)からなり、第2支柱21に溶接等により固設される。下部くさび受け部材25も第2支柱21の左右両側にくさび受け部を有し、下部左くさび受け部26、下部右くさび受け部27となる。図示の左右くさび受け部26,27は鍔部材23に形成された穴であり、鍔縁部24により囲まれる。符号29は下部後くさび受け部である(後出の図6参照)。
【0032】
図示から把握され、請求項3の発明に規定するように、上部くさび受け部材15及び下部くさび受け部材25は、十字状にくさび受け部を有する形状である(後出の図4、図6参照)。くさび受け部を十字状形状とすることにより、くさび受け部材の構造は簡素化し、その製造も簡便となる。また、くさび受け部材を十字状の対称形としているため荷重の加わり方が均一となり、くさび受け部材を支柱へ固定する際の強度も確保できる。
【0033】
図3及び図4は、前出の図1の上部くさび受け部材15に上側取付部50が接続(取り付け)されている状態を拡大して示す。上側取付部50は、第1支柱11の支柱側面11sへ当接する当接部51と、当接部51の左右いずれか側(一側)に形成され棒状本体40と連結する上側連結部55と、上側連結部55が当接部51に連結されている側の左右反対側となる当接部51の他側に形成された上部くさび部材58を有してなる。上側連結部55、上部くさび部材58は、当接部51と一体の部材として形成してもよく、あるいは、溶接、ボルト締め等により個々の部材を組み合わせることができる。
【0034】
通常、支柱は実施例の図示のように円筒形である。そこで、請求項4の発明に規定するように、上側取付部50の当接部51は、支柱側面11sの形状に相応する半円周面形状51sに形成される(特に図4参照)。当接部51が半円周面形状となることにより当接部と支柱との被着面積は増加する。そして、棒状部材と支柱との架設は安定化する。
【0035】
また、第1実施例では、当接部51の半円周面形状51sの円弧状に凸となる向きは、上側取付部50から棒状本体40が伸びる側としている。この場合、棒状本体40に上方から押し下げる力が作用した際に、当接部51から第1支柱11の支柱側面11sを押す力となり、当接部51と第1支柱11との密着が強化される。加えて、第1実施例の当接部51の向きの場合、第1支柱への上側取付部の取り付けは容易である。
【0036】
上側取付部50は、請求項5の発明に規定するように、上側取付部50の当接部51は第1支柱11の棒状部材30(棒状本体40)側の側面に当接している。図3及び図4に示す当接部51と上側連結部55の連結の位置より、上側連結部55は当接部51の端部の左右方向に張り出すようにして設けられている。第1支柱11と前記の第2支柱21を並設した際に、両支柱間よりも必ず左右いずれかの外方となる位置に棒状本体40を配置することができる。そこで、並設された支柱同士の間を棒状本体40が横切るようにして遮ることはなくなる。
【0037】
上部くさび部材58は、上部くさび受け部材15の左右いずれか一側とくさび受け部に挿入される。棒状部材30と第1支柱11との架設は、上部くさび部材58と上部くさび受け部材15のくさび受け部の挿入とともに、当接部51と支柱11との当接による。よって、架設は簡単となり、かつ安定する。
【0038】
図3及び図4から理解されるように、図示実施例の棒状部材30の上側取付部50の上部くさび部材58は、第1支柱11の上部くさび受け部材15の上部右くさび受け部17(紙面右側)に挿入される。この場合、上部くさび受け部材15の上部右くさび受け部17と反対側の上部左くさび受け部16(紙面左側)は空く。そこで、当該空いた側の上部左くさび受け部16に後述する下側取付部60(図3にて破線表記)が接続される。つまり、棒状部材30は、上下斜め方向で上下の両くさび受け部材のくさび受け部を左右互い違いにしながら架設される。上側取付部の当接部において、上側連結部及び上部くさび部材が設けられる向きを図示実施例と逆にする構成することができる。これは、仮設足場設置状況に応じて適宜である。
【0039】
前述の上部くさび部材58が挿入される上部くさび受け部材15のくさび受け部(上部右くさび受け部17)と、その反対側となる上側連結部55の側の下のくさび受け部(上部左くさび受け部16)の位置関係は左右対称である。しかも、棒状部材30の架設に用いるくさび受け部の向きは、支柱の並設方向と直交する向きである。このため、図4の上部くさび受け部材15のうち、仮設足場において使用頻度が高い支柱の並設方向となるくさび受け部を用いずに済む。そこで、他の水平方向の手すり筋交い(図示せず)等は、棒状部材30と干渉することなく、上部前くさび受け部18及び上部後くさび受け部19を用いて容易に取り付けられる。
【0040】
図5及び図6は、前出の図1の下部くさび受け部材25に下側取付部60が接続(取り付け)されている状態を拡大して示す。下側取付部60は、棒状本体40と結合している下側連結部65と、第2支柱21に固設されている下部くさび受け部材25との接続に用いられる下部くさび部材68とを有する。符号28は下部前くさび受け部、66はくさび仮置き部、73は上部抜け止め部、74は下部抜け止め部である。加えて、下部くさび部材68は、前記の上部くさび部材58が挿入された上部くさび受け部材15のくさび受け部(図3及び図4の上部右くさび受け部17)とくさび受け部の左右を反対側とする下部くさび受け部材25の他側のくさび受け部(図5及び図6の下部左くさび受け部26)に挿入される。
【0041】
図示から容易に把握されるように、第2支柱21に固設された下部くさび受け部材25の左右両側に対称のくさび受け部(下部左くさび受け部26、下部右くさび受け部27)のうち、下側取付部60(下部くさび部材68)が下部左くさび受け部26(紙面左側)に接続(取り付け)されるとき、左右両側あるくさび受け部の片側の下部右くさび受け部27(紙面右側)が空く。そこで、下部右くさび受け部27に、他の棒状部材の上側取付部50の上部くさび部材58が挿入される(図5にて破線表記)。図3での説明と同様に棒状部材30は、上下斜め方向で上下の両くさび受け部材のくさび受け部を左右互い違いとなって架設される。こうして、並設されている支柱間において、棒状部材30はくさび受け部材のくさび受け部で競合することなく、連続して架設可能である。
【0042】
また、下側取付部材60と下部くさび受け部材25との接続(取り付け)においても上側取付部材50と同様に、仮設足場において使用頻度が高い支柱の並設方向となるくさび受け部を用いずに済む。そこで、筋交い(図示せず)等は下部前くさび受け部28及び下部後くさび受け部29を用いて容易に取り付けられる。
【0043】
次に、請求項6の発明に規定するように、下側連結部65には、下部くさび受け部材25のくさび受け部を収容する水平方向に開口された開口部63が形成される。実施例の下側連結部65においては、下部くさび部材68は第1側板部61、第2側板部62、連結側板部64により囲まれて当該下側連結部内に収容される。そこで、下部くさび部材68は下側連結部65内で上下動可能に保持される。
【0044】
棒状部材の下端側に下側連結部及び下部くさび部材を備えることにより、支柱に設けられたくさび受け部材との接続、固定作業は容易になる。そのため、現場における作業も簡単になる。
【0045】
続いて、図7及び図8を用い下部くさび部材68の詳細並びに下部くさび部材68と下部くさび受け部材25との接続(取り付け)の様子を説明する。図示実施例の下部くさび部材68には、下部くさび受け部材25のくさび受け部に挿入される挿入くさび部71と、下部くさび受け部材25の鍔縁部24を上方から挟む長脚部72と、挿入くさび部71と長脚部72を接続するくさび肩部69が備えられる。くさび肩部69の直下には、挿入くさび部71と長脚部72をコ字状に離すくさび空間部79が形成される。くさび空間部79における挿入くさび部71と長脚部72との間隔は、下部くさび受け部材25の鍔縁部24の幅に応じて適宜である。
【0046】
下部くさび部材68においては、請求項7の発明に規定するように、当該下部くさび部材68の上部、実施例ではくさび肩部69に上部抜け止め部73が設けられる。また、下部くさび部材68の下部、実施例では長脚部72の端に下部抜け止め部74が設けられる。上部抜け止め部73と下部抜け止め部74の間の距離は、下側連結部65内で下部くさび部材68の上下動、つまり挿入くさび部71の差し込み及び抜き取りを十分に確保できる長さに設定される。
【0047】
上部抜け止め部73は、第1側板部61と第2側板部62との間隔を超える突出量に形成されている(図6参照)。そのため、下部くさび部材68は不用意に下側連結部65を構成する第1側板部61と第2側板部62の間から下方に抜け落ちることがなくなる。さらに、長脚部72の端の下部抜け止め部74も第1側板部61と第2側板部62との間隔を超える突出量に形成されている。同様に、下部くさび部材68は不用意に下側連結部65を構成する第1側板部61と第2側板部62の間から上方に抜け落ちることもなくなる(図5参照)。
【0048】
さらに、下部くさび部材68には、請求項8の発明に規定するように、くさび保持部75が備えられる。図示のかぎ状のくさび保持部75は、挿入くさび部71を下部くさび受け部材25のくさび受け部(図示の下部左くさび受け部26)に挿入しない位置で当該下部くさび部材68を下側連結部65のくさび仮置き部66に保持する際に用いられる。
【0049】
本発明の棒状部材は主に仮設足場の支柱に架設される。このような高所作業を勘案すると、作業者が、作業現場において必要となる部材をその都度に集めることや別の場所から持ってくること、あるいは作業者が携帯すること等は、煩雑であり作業効率上好ましくない。そのため、必要箇所に予め必要となる部材が装備されていることが便利であり、現場作業の効率化の点から好ましい。
【0050】
そこで、下部くさび部材に上部抜け止め部及び下部抜け止め部を備えることにより、常時、下部くさび部材の下側連結部内の保持は実現できる。このことから、下部くさび部材を持ち運んだり探したりする手間はなくなり、下部くさび部材の紛失のおそれも少なくなる。また、くさび仮置き部にくさび保持部を引っかけることにより下部くさび部材の仮置きが可能となる。例えば、下部くさび受け部材に下側取付部を取り付けるときの位置合わせにおいて、下部くさび部材が邪魔にならず、双方の接続作業に支障を来すことはない。
【0051】
下側取付部60を下部くさび受け部材25に取り付けるに際し、図7は、棒状部材30の下側連結部65の開口部63内に、下部くさび受け部材25が差し込まれたときの様子を示す。図示のように、くさび仮置き部66に下部くさび部材68のくさび保持部75が載せられた状態から、いったん、下部くさび部材68は上方側に持ち上げられる。このとき、下部くさび部材68の挿入くさび部71は、挿入先であるくさび受け部(図示の下部左くさび受け部26)の直上に位置合わせされる。
【0052】
続く図8では、開口部63内の所定位置に収容された下部くさび受け部材25のくさび受け部(図示の下部左くさび受け部26)に対し、下部くさび部材68の挿入くさび部71が押し下げられる。よって、下部左くさび受け部26内に挿入くさび部71が挿入される。下部くさび受け部材25の鍔縁部24は、挿入くさび部71、長脚部72、及びくさび肩部69の3方向から挟まれる。この結果、下側連結部65及び下部くさび部材68を介して下側取付部60と下部くさび受け部材25は接続(取り付け)され、第2支柱への棒状部材30の架設は完了する。
【0053】
図9及び図10は第2実施例に係る棒状部材30Aの上側取付部50Aの主要図である。棒状部材30Aの上側取付部50Aにおいて、第1支柱11へ当接する当接部51Aの半円周面形状の円弧部分の向き(図10参照)は、前述の第1実施例の上側取付部50における当接部51(図4参照)と逆向きである。第2実施例の当接部51Aにあっては、棒状本体40を下方に引っ張る力が作用する場合、この力を受けて当接部51Aは第1支柱側に引き寄せられる。結果的に、当接部51Aと第1支柱との密着は強化される。第1実施例の上側取付部あるいは第2実施例の上側取付部のいずれを採用するかは、棒状本体の架設場所、その長さ、重量、用途等が勘案される。
【0054】
図11は上側取付部の他の構造を開示する棒状部材の実施例であり、図11(a)は第3実施例、図11(b)は第4実施例である。第3実施例の棒状部材30Bにおける上側取付部50Bは、当接部51に直接、棒状本体40が連結されて上側連結部55sが形成される。第4実施例の棒状部材30Cにおける上側取付部50Cは、当接部51Aに直接、棒状本体40が連結されて上側連結部55tが形成される。棒状本体と当接部は、溶接、ボルト締め等により接続される。あるいは、棒状本体及び当接部を一の部材から形成することも可能である。図示の実施例の場合、上側連結部付近の構造が簡単であることから、棒状部材自体を安価に仕上げることができる。
【0055】
各図において共通する部材に同一符号を用い、その説明は省略した。なお、発明の趣旨を逸脱しない限り、開示の実施例以外の構成も当然に許容される。
【0056】
これまでに述べた棒状部材の架設構造によると、棒状部材を仮設足場に架設する際の当該棒状部材の取り付け位置の選択の利便性や自由度は高まり、仮設足場の支柱に無理なく架設することができる。そして、部材の軽量化も可能であり、棒状部材の仮設足場への設置や解体の取り扱い易さを改善できる棒状部材の架設構造が実現できる。従って、仮設足場内の作業者の安全確保に大きく貢献する。棒状部材は斜行材としても手すりとしても都合よく、架設が簡単である。
【符号の説明】
【0057】
1 仮設階段
3 仮設階段の踏み板
11 第1支柱
13 鍔部材
15 上部くさび受け部材
16 上部左くさび受け部(くさび受け部)
17 上部右くさび受け部(くさび受け部)
21 第2支柱
23 鍔部材
25 下部くさび受け部材
26 下部左くさび受け部(くさび受け部)
27 下部右くさび受け部(くさび受け部)
30 棒状部材
40 棒状本体
50 上側取付部
51 当接部
55 上側連結部
58 上部くさび部材
60 下側取付部
63 開口部
65 下側連結部
66 くさび仮置き部
68 下部くさび部材
71 挿入くさび部
72 長脚部
73 上部抜け止め部
74 下部抜け止め部
75 くさび保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱の左右両側にくさび受け部(16,17)を有する上部くさび受け部材(15)が固設された第1支柱(11)と前記第1支柱と並設され同じく支柱の左右両側にくさび受け部(26,27)を有する下部くさび受け部材(25)が固設された第2支柱(21)の前記上部くさび受け部材及び下部くさび受け部材の間の上下斜め方向に棒状部材(30)を架設する構造であって、
前記棒状部材は、棒状本体(40)と、前記棒状本体の上側に形成された上側取付部(50)と、前記棒状本体の下側に形成された下側取付部(60)とを備えていて、
前記上側取付部は、前記第1支柱の支柱側面への当接部(51)と、前記当接部の支柱の左右いずれか側に形成された前記棒状本体との上側連結部(55)と、前記当接部の前記上側連結部と支柱の左右反対側となる他側に形成され前記上部くさび受け部材の左右いずれか一側のくさび受け部に挿入される上部くさび部材(58)とを有するとともに、
前記下側取付部は、前記棒状本体との下側連結部(65)と、前記上部くさび部材が挿入されたくさび受け部と左右反対側となる他側のくさび受け部に挿入される下部くさび部材(68)とを有する
ことを特徴とする棒状部材の架設構造。
【請求項2】
前記棒状部材が仮設階段用手すりである請求項1に記載の棒状部材の架設構造。
【請求項3】
前記上部くさび受け部材及び下部くさび受け部材が十字状にくさび受け部を有する請求項1又は2に記載の棒状部材の架設構造。
【請求項4】
前記上側取付部の当接部が支柱側面に相応する半円周面形状に形成された請求項1ないし3のいずれか1項に記載の棒状部材の架設構造。
【請求項5】
前記上側取付部の当接部が支柱の棒状部材側の側面に当接する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の棒状部材の架設構造。
【請求項6】
前記下側取付部において、前記下側連結部は前記下部くさび受け部材のくさび受け部を収容する水平方向に形成された開口部(63)を有しているとともに、前記下部くさび部材は前記下側連結部内に上下動可能に配置され、
前記下側取付部を前記下部くさび受け部材に取り付けるに際し、前記開口部内に前記下部くさび受け部材のくさび受け部を収容した後に該くさび受け部に対して前記下部くさび部材の挿入くさび部(71)を挿入する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の棒状部材の架設構造。
【請求項7】
前記下部くさび部材が、該下部くさび部材の上部に上部抜け止め部を設けるとともに、該下部くさび部材の下部に下部抜け止め部を設けた長脚部を備えてなる請求項6に記載の棒状部材の架設構造。
【請求項8】
前記下部くさび部材が、前記挿入くさび部を前記下部くさび受け部材のくさび受け部に挿入しない位置で前記下側連結部に保持するくさび保持部を備えている請求項6又は7に記載の棒状部材の架設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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