説明

棒金収納装置

【課題】カセット内に収納された棒金を検出するセンサによる検出データの正確性を向上すると共に、検出時間の短縮を図ることができる棒金収納装置を提供する。
【解決手段】カセット50の長さ方向に沿って移動可能なキャリアと、該キャリアをカセット50の長さ方向に沿って移動させる駆動機構81と、キャリアに支持されてカセットに収納された棒金の磁気データをスキャニングにより検出する磁気データ検出部と、予め記憶された棒金の基準磁気データと、磁気データ検出部で検出した磁気データとを比較して、正常棒金の有無、異金種棒金の有無、および正常棒金の在り高を確認する確認手段と、磁気データ検出部の非スキャニング時に、磁気データ検出部のスキャニング時よりも駆動機構81によるキャリアの移動速度を高速に切換える変速手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、棒金を収納する棒金収納装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
棒金を並列状態でカセットに収納し、収納している棒金を出金指令に基づいて繰り出す棒金収納装置があり、このような棒金収納装置において、カセット内の棒金の在り高(本数および金種)を確認可能なものがある(例えば、特許文献1参照)。このような棒金収納装置では、一般に、光学センサを用いてカセット内の棒金の在り高を検出するようになっており、このように構成することで、棒金の自動精査および誤操作(異金種棒金の誤装填)の防止を可能とし、信頼性の向上を図ることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−249139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来の棒金収納装置のようにセンサを用いて棒金を検出する場合、カセットに装填された棒金の集積方向に沿ってセンサを走査して各棒金の外形寸法を計測し、この計測結果に基づき装填された棒金の真偽判定を行う方式となっている。また、上記センサを用いた棒金の真偽判定を行う場合、センサの走査速度を上げるほどその検出結果は正確性を欠く一方、走査速度を下げるほど検出結果の正確性が向上するため、正確な検出データを得ようとすると、センサの走査に時間がかかりスキャニング開始から棒金の真偽判定までの検出時間が増大する一方、検出時間を短縮しようとして走査速度を上げると検出データの正確性が低下するという課題がある。
【0005】
この発明は、上記事情に鑑みたものであり、カセット内に収納された棒金を検出するセンサによる検出データの正確性を向上すると共に、検出時間の短縮を図ることができる棒金収納装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、カセットに、該カセットの長さ方向に並列状態で棒金を収納する棒金収納装置であって、前記カセットの長さ方向に沿って移動可能なキャリアと、該キャリアを前記カセットの長さ方向に沿って移動させる駆動手段と、前記キャリアに支持されて前記カセットに収納された棒金の磁気データをスキャニングにより検出する磁気データ検出手段と、予め記憶された棒金の基準磁気データと、前記磁気データ検出手段で検出した磁気データとを比較して、正常棒金の有無、異金種棒金の有無、および正常棒金の在り高を確認する確認手段と、前記磁気データ検出手段の非スキャニング時に、前記磁気データ検出手段のスキャニング時よりも前記駆動手段によるキャリアの移動速度を高速に切換える変速手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載の発明において、前記変速手段は、異常復旧後の前記磁気データ検出手段のスキャニング時に、通常のスキャニング時よりも前記駆動手段によるキャリアの移動速度を低速に切換えることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記駆動手段は、前記磁気データ検出手段のスキャニング時に、前記カセットの長さ方向一側の前方側から前記カセットの長さ方向の他側の後方側に向かって前記キャリアを移動させることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載した発明は、前記磁気データ検出手段は、前記カセットに収納された棒金を直径方向において挟むように配置された一対の磁気センサによって構成され、前記駆動手段は、一対の磁気センサのうち一方の磁気センサのスキャニング時に前記キャリアを前記カセットの長さ方向一側の前方側から後方側へ移動させ、他方の磁気センサのスキャニング時に前記カセットの長さ方向一側の後方側から前方側へ前記キャリアを移動させることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載した発明は、請求項1乃至4のいずれか一項記載の発明において、前記キャリアは、前記磁気データ検出手段を基準磁性部材が設けられた所定の初期位置に配置可能であり、前記磁気データ検出手段を前記初期位置に配置し該磁気データ検出手段で前記基準磁性部材の磁気データを検出して該磁気データ検出手段の検出データの補正値または前記基準磁気データの補正値を求める補正手段を有し、前記補正手段は、前記磁気センサによるスキャニングの開始に伴い前記キャリアが前記初期位置から移動を開始する直前に前記補正値を求め、前記確認手段は、前記補正手段で求められた補正値に基づいて、前記磁気データ検出手段の検出データまたは前記基準磁気データを補正して、正常棒金の有無、異金種棒金の有無、および正常棒金の在り高を確認することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載した発明によれば、カセットの長さ方向に並列状態で棒金を収納する棒金収納装置において、カセットの長さ方向に沿ってキャリアを移動させて、磁気データ検出手段により棒金の磁気データをスキャニングし、このスキャニングにより検出した磁気データと基準磁気データとを比較して正常棒金の有無、異金種棒金の有無および正常棒金の在り高を確認することができる。また、変速手段により駆動手段によるキャリアの移動速度を磁気データ検出手段の非スキャニング時に高速にする一方、スキャニング時に低速にすることができるため、キャリアの全ての移動速度をスキャニング時の低速に設定する場合と比較して迅速なキャリア移動が可能となり、また、キャリアの全ての移動速度を非スキャニング時の高速に設定する場合と比較して、磁気データ検出手段による走査速度が低速になる分より正確に磁気データの検出を行うことができるため、商品性の向上を図ることができる効果がある。
【0012】
請求項2に記載した発明によれば、異常復旧後の例えばイニシャル動作時に磁気データ検出手段によりスキャニングする際、通常のスキャニング時よりも低速でキャリアを移動させることで、異常復旧処理を行った担当者による誤装填などのオペミスの可能性がある場合に、スキャン精度をより高めて磁気データの検出精度を向上させることができる効果がある。
【0013】
請求項3に記載した発明によれば、棒金がカセットの下方側から上方側に向けて順次集積されるため、棒金の集積量が比較的少ない場合等にスキャニングの時間を短くすることができる効果がある。
【0014】
請求項4に記載した発明によれば、一対の磁気センサのうち一方の磁気センサのスキャニング時にキャリアをカセットの長さ方向一側の前方側から後方側へ移動し、他方の磁気センサのスキャニング時にカセットの長さ方向一側の後方側から前方側へ移動することで、例えば、一対の磁気センサの一方の磁気センサと他方の磁気センサのスキャン出力が同時に行われないので、一方の磁気センサのスキャン出力と他方の磁気センサのスキャン出力とが干渉するのを防止して磁気データの検出精度を向上することができると共に、一方の磁気センサによるスキャニング時および他方の磁気センサによるスキャニング時の両方でカセットの前方側からキャリアを移動させる一方通行の場合と比較して往復動でスキャニングする分だけ迅速にスキャニングを終えることができる効果がある。
【0015】
請求項5に記載した発明によれば、磁気センサによるスキャニングの開始に伴いキャリアが初期位置から移動を開始する直前に補正手段により補正値を求めることで、スキャニング時の温度条件等の環境変化に応じた最適な補正値を求めることができるため、より正確な検出データを用いて正常棒金の有無、異金種棒金の有無、および、正常棒金の在り高を確認することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態の棒金収納装置を概略的に示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態の棒金収納装置に付設される硬貨入出金機を概略的に示す側面図である。
【図3】本発明の一実施形態の棒金収納装置の下部構造を概略的に示す平面図である。
【図4】本発明の一実施形態の棒金収納装置の後部構造を示す側面図である。
【図5】本発明の一実施形態の棒金収納装置における棒金搬送部の上部構造を示す側断面図である。
【図6】本発明の一実施形態の棒金収納装置における棒金搬送部の下部構造を示す側断面図である。
【図7】本発明の一実施形態の棒金収納装置における棒金保持機構および駆動機構を示す側面図である。
【図8】本発明の一実施形態の棒金収納装置におけるカセット等を示す斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態の棒金収納装置における棒金保持機構等を示す斜視図である。
【図10】本発明の一実施形態の棒金収納装置における棒金保持機構を示す上側から見た斜視図である。
【図11】本発明の一実施形態の棒金収納装置における棒金保持機構を示す下側から見た斜視図である。
【図12】本発明の一実施形態の棒金収納装置におけるカセットおよび受取位置にある棒金保持機構を示す部分側断面図である。
【図13】本発明の一実施形態の棒金収納装置におけるカセットおよび受取位置にある棒金保持機構を示す部分側断面図である。
【図14】本発明の一実施形態の棒金収納装置におけるカセットおよび受取位置より前方にある棒金保持機構を示す部分側断面図である。
【図15】本発明の一実施形態の棒金収納装置におけるカセットおよび受取位置より前方にある棒金保持機構を示す部分側断面図である。
【図16】本発明の一実施形態の棒金収納装置におけるカセットおよび前端位置にある棒金保持機構を示す部分側断面図である。
【図17】本発明の一実施形態の棒金収納装置におけるカセット、調整位置にある棒金保持機構および基準磁性部材を示す部分側断面図である。
【図18】本発明の一実施形態の棒金収納装置における受入台部および退避状態にある基準磁性部材等を示す斜視図である。
【図19】本発明の一実施形態の棒金収納装置における受入台部および検出状態にある基準磁性部材等を示す斜視図である。
【図20】本発明の一実施形態の棒金収納装置における受入台部および退避状態にある基準磁性部材等を示す側面図である。
【図21】本発明の一実施形態の棒金収納装置における受入台部および検出状態にある基準磁性部材等を示す側面図である。
【図22】本発明の一実施形態の棒金収納装置における磁気データ検出部による検出状況を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態の棒金収納装置を図面を参照して以下に説明する。図1に示すように、本実施形態の棒金収納装置10は、硬貨入出金機11に付設されて用いられるものである。
【0018】
まず、硬貨入出金機11について説明する。
硬貨入出金機11は、図2に概略的に示すように、バラ硬貨が投入される入金口15と、入金口15に投入されたバラ硬貨を一枚ずつに分離して繰り出す分離繰出部16と、分離繰出部16から繰り出されたバラ硬貨を搬送する入金搬送部17と、入金搬送部17で搬送中の硬貨を鑑別しつつ金種別に計数する入金鑑別部18と、入金鑑別部18の鑑別結果から真以外のバラ硬貨を入金搬送部17から排除するリジェクト部19と、リジェクト部19で入金搬送部17から排除されたバラ硬貨を案内するリジェクト搬送部20と、リジェクト搬送部20で案内されたバラ硬貨が機外に取り出し可能に放出されるリジェクト口21とを有している。
【0019】
また、硬貨入出金機11は、入金鑑別部18で真と鑑別され入金搬送部17でさらに下流に搬送されるバラ硬貨を金種別に選別する金種別選別部22と、金種別選別部22で金種別に選別されたバラ硬貨を金種別に一時貯留させる金種別一時貯留部23と、金種別一時貯留部23に一時貯留されたバラ硬貨を返却のため案内する返却搬送部24と、返却搬送部24で案内されたバラ硬貨が機外に取り出し可能に放出される返却出金口25とを有している。
【0020】
また、硬貨入出金機11は、金種別一時貯留部23に一時貯留されたバラ硬貨を金種別に収納するとともに収納しているバラ硬貨を計数しつつ出金可能な金種別収納出金部27と、金種別収納出金部27から出金されたバラ硬貨を返却出金口25に案内する出金搬送部28と、金種別収納出金部27から出金されたバラ硬貨を棒金収納装置10に向けて搬送する棒金作成搬送部29とを有している。硬貨入出金機11は、棒金収納装置10と共用の操作部30、制御部31および表示部32を有している。
【0021】
ここで、上記した硬貨入出金機11は、入金のためのバラ硬貨が入金口15に投入されて、操作部30にスタート操作が入力されると、制御部31が、入金口15内のバラ硬貨を分離繰出部16で一枚ずつ入金搬送部17に繰り出させて入金搬送部17で搬送する。
制御部31は、入金搬送部17で搬送中に入金鑑別部18で真以外と鑑別された硬貨をリジェクト搬送部20でリジェクト口21に送り、真と鑑別された硬貨を計数しつつ金種別選別部22で選別して金種別一時貯留部23に一時貯留させる。そして、入金口15に投入されたバラ硬貨がすべてリジェクト口21あるいは金種別一時貯留部23に送られると、制御部31は、表示部32に鑑別結果を出力する。この鑑別結果を見て操作者が操作部30にキャンセル操作を入力すると、制御部31は、金種別一時貯留部23に一時貯留させていた硬貨を返却搬送部24を介して返却出金口25に返却する。他方、鑑別結果を見て操作者が操作部30に承認操作を入力すると、制御部31は、金種別一時貯留部23に一時貯留させていた硬貨を金種別収納出金部27に収納させる。
【0022】
また、出金操作が操作部30に入力されると、制御部31が、金種別出金収納部27から入力に応じた金種および数のバラ硬貨を出金搬送路28に繰り出させて、出金搬送路28で返却出金口25に出金させる。
【0023】
さらに、金種別出金収納部27に収納中の硬貨を包装するために、適宜のタイミングで、制御部31が、金種別出金収納部27からバラ硬貨を棒金作成搬送部29により棒金収納装置10に搬送する。
【0024】
図1に示す本実施形態の棒金収納装置10は、金種別出金収納部27から棒金作成搬送部29によって搬送されてきたバラ硬貨を受け入れて一旦貯留させる貯留部35と、貯留部35から一枚ずつ分離して繰り出された硬貨を所定枚数ずつ集積して包装紙を巻き回し包装紙の両端部を加締めて棒金Bとする包装部36とを有している。
【0025】
また、棒金収納装置10は、図3にも示すように、機体中間位置で左右に延在するように配置され、包装部36から、左右方向に沿う姿勢で送り出された棒金Bを振り分けのため機体左右方向に搬送する横型ベルトコンベア式の振分搬送部37と、振分搬送部37で一端側に向け搬送される棒金Bを中間位置で機体前面側に振り分ける中間振分部38と、この中間振分部38で機体前面側に振り分けられた棒金Bを収納するローカル時クリアボックス39と、中間振分部38では機体前面側に振り分けられずに振分搬送部37で一端側にさらに搬送される棒金Bを振分搬送部37の一端部で機体前面側および後面側に選択的に振り分ける端末振分部40と、この端末振分部40で機体前面側に振り分けられた棒金Bを収納する機内クリアボックス41と、端末振分部40で機体後面側に振り分けられた棒金Bを左右方向に沿う姿勢のまま機体後面に向けて搬送する横型ベルトコンベア式の後方搬送部42と、振分搬送部37で他端側に向け搬送される棒金Bを機体前面側に案内する前方案内部43とを有している。
【0026】
加えて、棒金収納装置10は、後方搬送部42で機体後面側に搬送されてきた棒金Bを左右方向に沿う姿勢のまま受け入れて機体左右方向逆側に向け搬送する横型ベルトコンベア式の横搬送部45と、横搬送部45の棒金Bを上流位置で機体後面側に振り分ける上流振分部46と、上流振分部46で振り分けられずに横搬送部45で搬送されてきた棒金Bを端末位置で機体後面側に案内する端末案内部47と、上流振分部46および端末案内部47で機体後面側に案内された棒金Bを左右方向に沿う姿勢のまま上昇搬送する図4に示すエレベータ49を有する左右一対の上昇搬送部48とを有している。
【0027】
そして、各上昇搬送部48の前側に、上下方向に多段状に配置されたカセット50がそれぞれ設けられている。各エレベータ49のカセット50とは反対側には、エレベータ49で搬送されてきた棒金Bを複数段のカセット50のいずれか選択された一つに向けてプッシャ51aで押し出す収納振分部51が設けられている。すべてのカセット50は、収納振分部51で上昇搬送部48から押し出された棒金Bを機体後面側の後端部の一段高い受入台部54から左右方向に沿う姿勢のまま受け入れる。すべてのカセット50は、機体前面側の前端側が機体後面側の後端側に対して低く傾斜している。二列のカセット50の機体前面側には、図5に示すように、進退可能な持上部材52によって各列のカセット50の前端部から棒金Bを選択的に持ち上げて取り出す棒金取出部(棒金取出手段)53がそれぞれ設けられており、各棒金取出部53の機体前面側には、棒金取出部53によってカセット50から取り出された棒金Bを搬送する縦型ベルトコンベア式の棒金搬送部55が設けられている。ここで、各カセット50は金種別となっており、同一のカセット50には同一金種の棒金Bのみが収納される。例えば、最も上側のカセットには1円硬貨の棒金が、上から二番目のカセットには5円硬貨の棒金が、上から三番目のカセットには10円硬貨の棒金が、上から四番目のカセットには50円硬貨の棒金が、上から五番目のカセットには100円硬貨の棒金が、最下段のカセットには500円硬貨の棒金が、それぞれ収納される。
【0028】
各棒金搬送部55は、移動方向に対して傾斜形成された載置片56を等間隔で外側に有する縦型ベルトコンベア57と、この縦型ベルトコンベア57の外側を覆うように設けられた搬送空間形成部58とを有している。そして、棒金取出部53のカセット50側に前進状態の持上部材52で持ち上げられることによって持上部材52の傾斜で転動しつつ移動する棒金Bを、搬送空間形成部58に形成された開口部58aを介して縦型ベルトコンベア57と搬送空間形成部58とで形成される搬送空間に受け入れて、搬送空間内の載置片56に載置させる。載置片56を移動させることで載置片56に載置された棒金Bを昇降させる。なお、棒金取出部53の持上部材52は、下降するときはカセット50から後退した状態で下降する。
【0029】
ここで、棒金搬送部55の一方は、図6に示すように、その下部が、上記した振分搬送部37で搬送され前方案内部43で機体前面側に案内された棒金Bを受け入れて搬送し、シュート61を介して機体前面に設けられた放出口59に案内することになり、放出口59から放出された棒金Bは、その前に載置される別体の図1に示す受入ボックス60に収納される。つまり、前方案内部43で機体前面側に案内された棒金Bを、搬送空間形成部58に形成された開口部58bを介して縦型ベルトコンベア57と搬送空間形成部58とで形成される搬送空間に受け入れて、搬送空間内の載置片56に載置させる。載置片56を下方から前方、さらには上方に移動させることで棒金Bを収納空間内で同様に移動させ、搬送空間形成部58に形成された開口部58cおよびシュート61を介して放出口59に案内する。
【0030】
各棒金搬送部55の機体前面側には、図5に示すように、搬送空間形成部58に形成された開口部58dを搬送空間形成部58に沿って開閉する開閉部材62と、この開口部58dを介して棒金Bを収納する棒金出金部63が設けられている。すなわち、開閉部材62が開口部58dを開放しているとき、棒金搬送部55の載置片56で下降搬送中の棒金Bが開口部58dに達すると、棒金Bは、載置片56の傾斜で、開口部58dから棒金出金部63に向けて移動することになる。また、各棒金出金部63の下側には、搬送空間形成部58に開口部58eを形成し、この開口部58eを介して棒金Bを収納する棒金一括収納部65が設けられている。すなわち、棒金搬送部55の載置片56で下降搬送中の棒金Bが開口部58eに達すると、棒金Bは、載置片56の傾斜で、開口部58eから棒金一括収納部65に向けて移動することになる。棒金出金部63および棒金一括収納部65は機体から着脱可能な箱状をなしている。
【0031】
以上の構成の棒金収納装置10は、適宜のタイミングで金種別収納出金部27のいずれか一つから棒金作成搬送部29によって搬送されてきた同一金種のバラ硬貨を貯留部35に一旦受け入れると、制御部31が貯留部35から一枚ずつバラ硬貨を繰り出させて包装部36に送り、包装部36で所定枚数集積して包装紙を巻き回し包装紙の両端部を加締めて棒金Bとする。棒金Bが作成されると、制御部31は、この棒金Bを振分搬送部37で搬送し振り分ける。
【0032】
例えば、棒金Bを振分搬送部37で前方案内部43側に搬送し前方案内部43で棒金搬送部55に案内して、棒金搬送部55の下部で搬送する。つまり、図6に示すように、棒金Bを縦型ベルトコンベア57の載置片56で下方に案内した後、機体前面側で上方に案内する。載置片56に載置された棒金Bが放出口59に対応した開口部58cの位置まで移動すると載置片56の傾斜で放出口59に案内され、放出口59から放出される。
【0033】
また、例えば、端末振分部40で後方搬送部42に振り分けられた棒金Bが、後方搬送部42で搬送され、図4に示すように、横搬送部45を介して上昇搬送部48で搬送され収納振分部51で上昇搬送部48から押し出されて対応する金種のカセット50に収納されることになる。
【0034】
また、例えば、制御部31は、棒金Bの出金指令を受けると、棒金取出部53で対応する棒金Bをカセット50から取り出し棒金搬送部55の中間部および上部で搬送して棒金出金部63に出金する。つまり、図5に示すように、棒金Bを縦型ベルトコンベア57の載置片56で上方に案内した後、機体前面側で下方に案内すると、載置片56に載置された棒金Bが棒金出金部63に対応した開口部58dの位置に至ることになり、棒金Bは棒金出金部63に案内される。あるいは、制御部31は、カセット50が満杯となると、棒金取出部53で対応する棒金Bをカセット50から取り出し棒金搬送部55の中間部および上部で搬送して棒金一括収納部65に収納する。つまり、棒金Bを縦型ベルトコンベア57の載置片56で上方に案内した後、機体前面側で下方に案内すると、載置片56に載置された棒金Bが棒金出金部63に対応した開口部58dの位置に至ることになり、このとき開閉部材62によって開口部58dを閉じておくことで、棒金Bは棒金出金部63に対応した開口部58dの位置をそのまま通過し、棒金一括収納部65に対応した開口部58eの位置に至ると、常時突出する受取部材64で棒金出金部63に案内される。
【0035】
次に、本実施形態の棒金収納装置10の要部について説明する。
図5に示すカセット50は、長さ方向を機体前後方向に向けて配置されており、長さ方向一側の前端側(機体前面側)が後端側(機体後面側)より低く、且つ幅方向を横方向(機体左右方向)に沿わせて配置されている。カセット50は、同一形状のものが水平方向の位置を合わせ上下方向に間隔をあけて図7に示すように複数具体的には金種と同じ六個、多段状に配置されている。
【0036】
より具体的に、カセット50は、図5に示すように、長さ方向一側の前端側が後端側より低く、且つ幅方向を水平方向に沿わせて配置された長方形状の底板部70と、底板部70の幅方向の両側縁部から垂直に立ち上がる一対の側板部71と、底板部70の前端縁部から垂直に立ち上がる前端板部72と、両側板部71の上縁部から相互近接側に延出する上板部73とを有している。そして、底板部70の前端側から前端板部72にかけて、その幅方向の中間部に、棒金取出部53の持上部材52を通過させるための切欠部75が形成されている。
【0037】
なお、カセット50は、図4に示す上昇搬送部48から収納振分部51で押し出された棒金Bを、その長さ方向(軸線方向)をカセット50の幅方向に沿わせた姿勢で、後端部の受入位置から両側板部71の間、且つ底板部70の底面70a上に受け入れることになり、棒金Bは、カセット50の傾斜によって、図5に示す前端板部72から順に隙間無く当接して、カセット50の長さ方向に並列する状態でカセット50に収納されることになる。
【0038】
また、棒金取出部53は、持上部材52を前進状態とし切欠部75内において下から上に移動させることで、カセット50に収納された棒金Bのうち前端板部72に当接する前端の棒金Bを持ち上げてその傾斜により棒金搬送部55に搬送し、持上部材52を後退状態としカセット50から離れた位置で上から下に移動させ、再び持上部材52を前進状態として下から上に移動させることを繰り返す結果、カセット50に収納されている棒金Bを前端側のものから一本ずつ順に取り出すことになる。
【0039】
各カセット50の上側には、図7に示すように、それぞれ昇降可能な棒金保持機構80が設けられており、これら棒金保持機構80は、これらをカセット50の長さ方向に沿って移動させる駆動機構(駆動手段)81に連結されている。
【0040】
駆動機構81は、最も下側のカセット50の下側でカセット50と平行に延在するスライド軸85と、このスライド軸85に摺動自在に支持されるスライドブロック86と、スライドブロック86から上方に延出する保持板87と、スライド軸85の両端側の下方に配置された一対のプーリ88と、これらプーリ88に掛けられることでスライド軸85と平行に配設される駆動ベルト89と、一方のプーリ88に連結されたモータ90とを有しており、駆動ベルト89の一部がスライドブロック86に固定されている。これにより、駆動機構81は、モータ90の正逆回転で、スライドブロック86および保持板87をカセット50の長さ方向に往復動させる。
【0041】
保持板87は、図8に示すように、上下に多段状に配置されたカセット50の左右方向側方で上下に延在しており、この保持板87に各カセット50側に延出するように図9に示す棒金保持機構80が取り付けられている。
【0042】
棒金保持機構80は、保持板87にカセット50側に延出するように固定されて保持板87とでキャリア91を構成するキャリア本体(支持部)95と、このキャリア本体95にキャリア本体95から後方に延出するように連結された受けブロック(第1部材)96と、この受けブロック96に受けブロック96よりも後方に延出するように連結された押さえブロック(第2部材)97とを有している。すべての棒金保持機構80のキャリア本体95が保持板87に固定されていることから、保持板87および複数のキャリア本体95で構成されるキャリア91が、カセット50の長さ方向に沿って移動可能に設けられている。
【0043】
キャリア本体95には、カセット50の幅方向に沿って回動軸100が設けられており、受けブロック96は、この回動軸100に基端側が回動可能に支持されている。受けブロック96は、回動軸100から後方に延出する図10および図11に示す左右一対の延出部101と、これら延出部101の後端部同士を連結させるように左右方向に延在する先端連結部102とを有している。先端連結部102は、延出部101よりも下側に突出するように形成されている。
【0044】
ここで、受けブロック96は、キャリア本体95に対して、図示略のストッパによって、後方に延出する姿勢のまま上下に所定の角度範囲で揺動するように揺動範囲が規制されている。受けブロック96は、最も下側に下降した一側下降状態にあるとき、図14に示すように、先端連結部102を、カセット50の底面70a上にある棒金Bの前後一側である前側に、棒金Bの通過を規制する高さに配置する。また、受けブロック96は、最も上側に上昇した一側上昇状態にあるとき、図15に示すように、先端連結部102を、カセット50の底面70a上にある棒金Bの通過を許容する高さに配置する。
【0045】
また、受けブロック96とキャリア本体95との間には、図示は略すが、受けブロック96がキャリア本体95に対し下側に、中間の所定の付勢方向切替位置(中間所定位置)よりも揺動すると、これを下側に付勢して一側下降状態に維持する一方、受けブロック96が上側に付勢方向切替位置よりも揺動すると、これを上側に付勢して一側上昇状態に維持する図示略の受けブロック付勢スプリング(付勢部材)が設けられている。つまり、この受けブロック付勢スプリングにより、受けブロック96はキャリア本体95に対して上下に、いわゆるスナップアクションを行う。
【0046】
図10および図11に示すように、受けブロック96の延出部101の前端側には、カセット50の幅方向に沿って回動軸105が設けられており、押さえブロック97は、この回動軸105に基端側が回動可能に支持されている。押さえブロック97は、回動軸105から受けブロック96よりもさらに後方に延出する左右一対の延出部106と、これら延出部106の後端部同士を連結させるように左右方向に延在する先端連結部107とを有している。延出部106の先端連結部107側および先端連結部107は、延出部106の先端連結部107とは反対側よりも下側に突出する湾曲状に形成されている。
【0047】
ここで、押さえブロック97は、受けブロック96に対して、図示略のストッパによって、後方に延出する姿勢のまま上下に所定の角度範囲で揺動するように揺動範囲が規制されている。押さえブロック97は、一側下降状態にある受けブロック96に対して下降した他側下降状態にあるとき、図14に示すように、先端連結部107を、カセット50の底面70a上にある棒金Bの前後他側である後側に、棒金Bの通過を規制する高さに配置する。また、押さえブロック97は、一側下降状態にある受けブロック96に対して上昇した他側上昇状態にあるとき、図12に示すように、先端連結部107を、カセット50の底面70a上にある棒金Bの通過を許容する高さに配置する。
【0048】
また、押さえブロック97は、図15および図16に示すように、受けブロック96が一側上昇状態にあるときには、受けブロック96に対して下側に最も下降した状態にあっても、カセット50の底面70a上にある棒金Bの通過を許容する高さに配置される。
【0049】
キャリア本体95には、図11に示すように、前後に二本の回転軸110,111が設けられている。前側の回転軸110の受けブロック96側には、後方に延出するようにアーム112が固定されており、このアーム112の先端側には受けブロック96側に突出して受けブロック96の側部の係合溝113に係合する係合ピン114が固定されている。また、前側の回転軸110の受けブロック96とは反対側にも後方に延出するようにアーム115が固定されており、このアーム115の先端側には受けブロック96とは反対側に突出する作動ピン116が固定されている。この作動ピン116が昇降することで、これと一体に設けられたアーム115、回転軸110およびアーム112が回動し、アーム112に固定された係合ピン114が昇降して、受けブロック96を昇降させる。
【0050】
また、後側の回転軸111の押さえブロック97側には、後方に延出するようにアーム120が固定されており、このアーム120の先端側には押さえブロック97側に突出して押さえブロック97の係合溝121に係合する係合ピン122が固定されている。また、後側の回転軸111の押さえブロック97とは反対側にも後方に延出するようにアーム123が固定されており、このアーム123の先端側には押さえブロック97とは反対側に突出する作動ピン124が固定されている。この作動ピン124が昇降することで、これと一体に設けられたアーム123、回転軸111およびアーム120が回動し、アーム120に固定された係合ピン122が昇降して、押さえブロック97を昇降させる。
【0051】
棒金保持機構80は、図12に示すように、カセット50の後端側の所定の受取位置で停止して、収納振分部51からの棒金Bを受け取ることになり、カセット50には、棒金保持機構80の後端側への移動時に、受取位置より手前の所定位置で、この移動の力を利用して作動ピン116を下降させて、後述するように一側上昇状態にあった受けブロック96を付勢方向切替位置よりも下側に揺動させる、後下がり形状の下降変換部材130が固定されている。この下降変換部材130によって受けブロック96が所定の受取位置では一側下降状態となる。
【0052】
また、カセット50には、棒金保持機構80の後端側への移動時に、下降変換部材130および図示略の受けブロック付勢スプリングにより一側下降状態となる受けブロック96に対し、受取位置より手前の所定位置で、この移動の力を利用して作動ピン124を上昇させて、後述するように他側下降状態にあった押さえブロック97を上側に揺動させて、図12に示すように他側上昇状態とする後上がり形状の退避変換部材131が固定されている。なお、退避変換部材131は前部が後上がり形状をなし、中間部がカセット50の底面70aと平行をなし、後部が後下がりの形状をなしており、棒金保持機構80が受取位置にあるとき作動ピン124は中間部上に位置する。
【0053】
以上により、棒金保持機構80は、図12および図13に示す受取位置にあるとき、受けブロック96をキャリア本体95に対し下側に揺動させた一側下降状態とし、押さえブロック97を受けブロック96に対し上側に揺動させた他側上昇状態とする。この状態で、収納振分部51から棒金Bがカセット50の幅方向に沿う姿勢でカセット50の後端部の底面70a上に放出されると、この棒金Bが底面70aの傾斜によって前側に移動し、押さえブロック97の下側を通って受けブロック96に当接しカセット50の幅方向に沿う姿勢で停止する(図13に示す状態)。なお、棒金保持機構80は、待機状態にあるときこの受取位置で停止することになる。また、棒金保持機構80が受取位置に位置したことを保持板87の位置から検出する図示略の受取位置センサが設けられている。
【0054】
そして、このように棒金Bを受け取った状態から棒金保持機構80がカセット50の前端側へ移動すると、その初期に、図14に示すように、退避変換部材131に沿って作動ピン124が下降し、その結果、押さえブロック97が下降して棒金Bに当接する。これにより、棒金保持機構80は、受けブロック96が一側下降状態となり、押さえブロック97が他側下降状態となって、共に下降した状態となり、カセット50の底面70a上の棒金Bを上側から抱えるように保持する状態となる。言い換えれば、棒金保持機構80は棒金Bを上側から囲むように保持する状態、さらに言い換えれば、棒金保持機構80は棒金Bを上側から前後に相対移動不可に一体的に保持する状態となる。このとき、棒金Bは、前側が受けブロック96に当接し、後側が押さえブロック97に当接し、下側が底面70aに当接した、軸方向視で三点支持の状態となり、棒金保持機構80のカセット50の前端側への移動で、この三点支持状態のまま前端側へ移動する。つまり、棒金保持機構80により棒金Bが、カセット50の幅方向に沿う姿勢のまま、ふらついたり、斜行したり、棒金保持機構80に対し遅れたりすることなく移動する。
【0055】
ここで、棒金保持機構80の受けブロック96には、棒金保持機構80のカセット50の前端側への移動時に、カセット50に既に収納されている棒金Bに接触して一側下降状態にあった受けブロック96を付勢方向切替位置よりも上側に揺動させる接触部133が先端連結部102における回動軸100側の下部に形成されている。
【0056】
つまり、棒金保持機構80が、上記のようにその受けブロック96を一側下降状態とし押さえブロック97を他側下降状態として棒金Bを抱えつつカセット50の前端側に移動すると、保持している棒金Bが既にカセット50に収納されている棒金Bの最後尾のものに当接した後に、受けブロック96の接触部133が既にカセット50に収納されている棒金Bの最後尾のものに当接し、その移動の力を利用してこの棒金Bに乗り上げる。これにより、受けブロック96が付勢方向切替位置よりも上側に揺動させられることになり、図15に示すように、受けブロック付勢スプリングの付勢力で一側上昇状態となる。その結果、受けブロック96および押さえブロック97が共に棒金Bから離れ、棒金Bの受けおよび押さえを解除する。このとき、接触部133が最後尾の棒金Bに接触する前に、最後尾の棒金Bに、受けブロック96および押さえブロック97で保持されていた棒金Bが当接して停止することになるが、後側の押さえブロック97は、保持していた棒金Bによって上方に揺動させられてこの棒金Bよりも前方に移動する。なお、棒金保持機構80が、受取位置に位置したときに、受けブロック96および押さえブロック97が既にカセット50に収納されている棒金Bの最後尾のものに当接することがないように、棒金Bの収納スペース(満杯量)が設定されている。つまり、カセット50の棒金Bを収納する収納スペースの後端部は、受取位置よりも前側に設定されている。
【0057】
また、カセット50には、棒金保持機構80の前端側への移動時に、棒金保持機構80で保持している棒金Bがカセット50の前端板部72に当接する直前に、この移動の力を利用して作動ピン116を上昇させて、一側下降状態にあった受けブロック96を付勢方向切替位置よりも上側に揺動させる前上がり形状の図16に示す上昇変換部材135が固定されている。
【0058】
つまり、棒金保持機構80が、その受けブロック96を一側下降状態とし押さえブロック97を他側下降状態として棒金Bを抱えつつカセット50の前端側に移動すると、カセット50にすでに収納されている棒金Bがない状態では、保持している棒金Bが前端板部72に当接する直前に、上昇変換部材135が棒金保持機構80の移動の力を利用して作動ピン116を上昇させることになり、受けブロック96が付勢方向切替位置よりも上側に揺動し受けブロック付勢スプリングの付勢力で一側上昇状態となる。これにより、受けブロック96および押さえブロック97が共に棒金Bから離れ、棒金Bの受けおよび押さえを解除する。すると、棒金保持機構80で保持されていた棒金Bが、カセット50の前端板部72に当接して停止する。なお、棒金保持機構80は、上昇変換部材135によって作動ピン116が上昇させられた後に、前端位置で一旦停止して、後端側の待機位置に戻ることになり、棒金保持機構80が前端位置に位置したことを保持板87の位置から検出する図示略の前端位置センサが設けられている。
【0059】
図7に示すように、各カセット50の上側に設けられたキャリア本体95には、最上段のカセット50の上側のキャリア本体95を除いて、図9に示すように、下側および上側に磁気センサ140,141が取り付けられている。キャリア本体95に支持された下側の磁気センサ140は、直ぐ下側のカセット50に収納されている棒金Bをスキャニングしてその磁気データを検出する。同じキャリア本体95に支持された上側の磁気センサ141は、直ぐ上側のカセット50に収納されている棒金Bをスキャニングしてその磁気データを底板部70に形成された図示略の検出溝を介して検出する。つまり、キャリア91のうち、最上段のカセット50の上側のキャリア本体95を除くキャリア本体95は、上下に隣り合うカセット50の間位置にあってこれらカセット50に共通の支持部となり、上下に隣り合うカセット50のうちの一方上側のものに収納された棒金B用の一対の磁気センサ140,141のうちの下側の一方である磁気センサ140と、隣り合うカセット50のうちの他方下側のものに収納された棒金B用の一対の磁気センサ140,141の上側の一方である磁気センサ141とを支持する。
【0060】
ここで、カセット50の直ぐ上側に設けられたキャリア本体95の下側の磁気センサ140と同じカセット50の直ぐ下側に設けられたキャリア本体95の上側の磁気センサ141とが、互いにキャリア本体95の移動方向における前後左右の位置を合わせて対向し、互いの間にあるカセット50の底面70aと直交する方向に配置されていて、このカセット50に収納された棒金Bの磁気データを検出する磁気データ検出部(磁気データ検出手段)142を構成している。つまり、磁気データ検出部142は、カセット50に収納された棒金Bを直径方向において挟むように配置された一対の磁気センサ140,141で構成されている。
【0061】
なお、最上段のカセット50の上側のキャリア本体95には、下側の磁気センサ140のみが取り付けられており、上から二番目のカセット50の上側のキャリア本体95の上側の磁気センサ141と対向して、最上段のカセット50に収納されている棒金Bを検出する磁気データ検出部142を構成する。
【0062】
また、最下段のカセット50の下側には、キャリア91を構成するとともに磁気センサ141を支持するのみの最下キャリア本体95Aが保持板87から延出しており、この最下キャリア本体95Aには上向きに磁気センサ140が取り付けられている。この磁気センサ140は、最下段のカセット50の上側のキャリア本体95の下側の磁気センサ141と対向して、最下段のカセット50に収納されている棒金Bを検出する磁気データ検出部142を構成する。
【0063】
すべてのカセット50には、収納振分部51から放出された棒金Bを受け入れる後端部の受入位置から、収納振分部51からの棒金Bを棒金保持機構80によって受け取る受取位置の若干後方まで、図17に示すように、カセット50の底面70aと略平行で底面70aよりも上側に一段高い受入台部54が形成されている。この受入台部54には、受入位置よりも前側に上下に貫通する図18および図19に示す穴部146が形成されており、この穴部146から受入台部54上に突出可能に基準磁性部材150が設けられている。
【0064】
受入台部54の下側には、カセット50の幅方向に沿って回転軸151が位置固定で回転可能に設けられており、基準磁性部材150は、この回転軸151に固定されている。
基準磁性部材150は、図17に示すように、同心状をなして180度異なる位置に配置される一対の円弧状部152と、これら円弧状部152の円周方向の中間部同士を連結させる連結板部153とを有している。そして、基準磁性部材150は、一方の円弧状部152において、回転軸151に固定されており、両側の円弧状部152の中心軸線を回転軸151に平行させている。
【0065】
基準磁性部材150は、これが設けられるカセット50に収納されるべき棒金Bの金種と同一材質で形成されており、しかも、円弧状部152の外径が同カセット50に収納される棒金Bの硬貨と同外径に形成されている。つまり、1円硬貨の棒金Bを収納するカセット50に設けられる基準磁性部材150は、1円硬貨と同一材質且つ同径に形成されている。同様に、5円棒金用のカセット50の基準磁性部材150は、5円硬貨と同一材質且つ同径に、10円棒金用のカセット50の基準磁性部材150は、10円硬貨と同一材質且つ同径に、50円棒金用のカセット50の基準磁性部材150は、50円硬貨と同一材質且つ同径に、100円棒金用のカセット50の基準磁性部材150は、100円硬貨と同一材質且つ同径に、500円棒金用のカセット50の基準磁性部材150は、500円硬貨と同一材質且つ同径に、形成されている。
【0066】
ここで、基準磁性部材150は、上記した受入位置と受取位置との間に設けられている。また、基準磁性部材150は、カセット50の底面70a上にある棒金Bと底面70aから中心までの高さを合わせている。
【0067】
基準磁性部材150は、回転することで、図18および図20に示すように、カセット50の受入台部54から下に退避したり、図19および図21に示すように、カセット50の受入台部54からカセット50内に突出したりする。つまり、図17、図19および図21に示すように、一対の円弧状部152を結ぶ方向が受入台部54と交差して受入台部54から突出する検出状態と、図18および図20に示すように、一対の円弧状部152を結ぶ方向が受入台部54と平行して受入台部54から退避する退避状態とに切り替え可能となっている。なお、基準磁性部材150は、退避状態に維持されるように図示略の基準磁性部材付勢スプリングで付勢されている。回転軸151には、アーム部材156が半径方向に沿って固定されている。このアーム部材156は、回転軸151とは反対側に、回転軸151と平行をなして回転可能なローラ157を有している。
【0068】
ここで、図17に示すように、検出状態にある基準磁性部材150を直径方向において挟む位置が、磁気データ検出部142の一対の磁気センサ140,141でこの基準磁性部材150の磁気データを検出する所定の調整位置となり、キャリア91は、磁気データ検出部142を基準磁性部材150が設けられたこの調整位置に配置可能となっている。
この調整位置は、受入位置と受取位置との間、つまり受入位置と棒金Bを収納する収納スペースとの間に設けられている。棒金保持機構80の磁気データ検出部142が調整位置に位置したことを保持板87の位置から検出する図示略の調整位置センサが設けられている。そして、この基準磁性部材150が配置される調整位置がスキャニング前のキャリア91の初期位置となっている。
【0069】
図20に示すように、基準磁性部材150が退避状態にあるときアーム部材156は後下がりに突出しており、キャリア本体95が磁気データ検出部142を調整位置に位置させるように受取位置を越えて後方まで移動すると、保持板87の一部に形成された作動傾斜面160がアーム部材156のローラ157に当接してその移動力によりアーム部材156を揺動させてアーム部材156と一体に設けられた基準磁性部材150を退避状態から回転させる。そして、キャリア91が磁気データ検出部142を調整位置に配置して停止すると、図17、図19および図21に示すように、基準磁性部材150が検出状態となる。逆に、この状態からキャリア91が例えば受取位置まで移動すると、保持板87の一部の作動傾斜面160がアーム部材156のローラ157への当接を解除しつつ基準磁性部材付勢スプリングの付勢力でアーム部材156を揺動させて基準磁性部材150を図18および図20に示す退避状態に戻す。なお、棒金保持機構80の受けブロック96および押さえブロック97は、受取位置よりも後方に移動し、磁気データ検出部142が調整位置に位置する直前に、基準磁性部材150よりもカセット50の後端側に位置することになり、これら受けブロック96および押さえブロック97が、突出する基準磁性部材150に対し干渉することがないように設定されている。
【0070】
受入台部54の穴部146には、受入台部54よりも若干上側に突出する緩衝部材161が設けられている。この緩衝部材161はバネで上向きに付勢されており、収納振分部51から受入位置に放出された棒金Bの受入台部54への衝突を緩和する。
【0071】
以上の構成の棒金収納装置10において、例えば、包装部36で作成した棒金Bを対応金種のカセット50に収納する場合、制御部31は、収納振分部51のプッシャ51aで上昇搬送部48から棒金Bを押し出して対応するカセット50の後端部の受入位置に放出させる。すると、棒金Bは、基準磁性部材150が退避状態にある受入台部54をその傾斜により前方に移動し、受入台部54より一段低いカセット50の底面70aに落下してさらに前方に移動する。このとき、受取位置で待機している棒金保持機構80は、図12に示すように、受けブロック96をキャリア本体95に対し下側に揺動させた一側下降状態とし、押さえブロック97を受けブロック96に対し上側に揺動させた他側上昇状態としているため、棒金Bは、図13に示すように、押さえブロック97の下側を通って受けブロック96の先端連結部102に当接しカセット50の幅方向に沿う姿勢で停止する。
【0072】
上記のように収納振分部51のプッシャ51aを作動させた後、棒金Bが受取位置にある棒金保持機構80の受けブロック96に当接すると想定される時間経過後のタイミングで、制御部31は、モータ90を駆動して保持板87を前方に移動させる。すると、棒金保持機構80がカセット50の前端側へ向け移動し、その初期に、退避変換部材131に沿って作動ピン124が下降し、図14に示すように、押さえブロック97が自重で下降して棒金Bに当接する。これにより、棒金保持機構80の受けブロック96および押さえブロック97が受け取った棒金Bを上側から抱えるように保持する状態となって前方に移動し、棒金Bを前方に搬送する。
【0073】
そして、このカセット50に既に収納されている棒金Bがある場合、前方に移動する棒金保持機構80は、保持している棒金Bが既にカセット50に収納されている棒金Bの最後尾のものに当接した後に、受けブロック96の接触部133が既にカセット50に収納されていた棒金Bの最後尾のものに接触して、図15に示すように上側に揺動させられることになり、その結果、受けブロック96が受けブロック付勢スプリングの付勢力で一側上昇状態となり、受けブロック96および押さえブロック97が共に棒金Bから上側に逃げ、棒金Bの受けおよび押さえを解除する。
【0074】
また、既にカセット50に収納されている棒金Bがない場合、前方に移動する棒金保持機構80は、保持している棒金Bがカセット50の前端板部72に当接する直前に、図16に示すように、上昇変換部材135により作動ピン116が上昇させられることになり、受けブロック96が上方に揺動させられて受けブロック付勢スプリングの付勢力で一側上昇状態となり、受けブロック96および押さえブロック97が共に棒金Bから上側に逃げ、棒金Bの受けおよび押さえを解除する。すると、棒金保持機構80で保持されていた棒金Bが、カセット50の前端板部72に当接して停止する。
【0075】
そして、制御部31は、前端位置センサによって保持板87が検出されると、棒金保持機構80が前端位置に到達したと判断して、モータ90を停止し逆転させる。すると、保持板87が後方に移動し、棒金保持機構80も、受けブロック96を一側上昇状態としたまま、つまりカセット50の棒金Bよりも受けブロック96および押さえブロック97を上側に逃がした状態のまま、後方に移動する。
【0076】
そして、後方に移動する棒金保持機構80は、受取位置より手前の所定位置で、図12に示すように、下降変換部材130によって、作動ピン116が下降させられることになり、一側上昇状態にあった受けブロック96が下方に揺動させられて受けブロック付勢スプリングの付勢力で一側下降状態となる。また、このとき、棒金保持機構80は、退避変換部材131によって、作動ピン124が上昇させられることになり、押さえブロック97が上側に揺動させられて他側上昇状態となる。
【0077】
そして、図示略の受取位置センサで保持板87が検出されると、制御部31は、棒金保持機構80が受取位置に至ったと判定して、モータ90を停止させる。
【0078】
以上のようにして、一つのカセット50に対して、棒金保持機構80で一本ずつ棒金Bを収納する。なお、一本のみの棒金Bの収納に対しても、同じ保持板87に保持されていることから、すべての棒金保持機構80が、同様に動作することになり、その内の一つの棒金保持機構80が棒金Bを保持して搬送する。
【0079】
また、操作部30を介して、すべてのカセット50についての正常棒金の在り高を確認する在り高確認操作が入力されると、制御部31の確認手段31a(図2参照)によって在り高確認処理が開始される。このとき補正手段31b(図2参照)は、磁気センサ140,141によるスキャニングの開始に伴い、すべての棒金保持機構80が受取位置にある待機状態、すなわち初期位置にあるキャリア91が移動を開始する直前に補正値算出処理(キャリブレーション)を行う。
【0080】
つまり、まず、モータ90を駆動して保持板87を後方に移動させる。すると、保持板87が、すべての基準磁性部材150に連結されたアーム部材156のローラ157に、作動傾斜面160を図20に示すように当接させることになり、その移動力によりアーム部材156を揺動させてアーム部材156と一体に設けられた基準磁性部材150を退避状態から回転させる。そして、制御部31は、調整位置センサによって保持板87が検出されると、モータ90を停止させることになり、これにより、保持板87に設けられた作動傾斜面160が、図21に示すようにすべての基準磁性部材150を検出状態とする。
また、このとき、図17に示すように、キャリア91が初期位置となり、すべての磁気データ検出部142が対向する一対の磁気センサ140,141間に基準磁性部材150を配置する状態となる。
【0081】
この状態で、制御部31は、すべての磁気データ検出部142により基準磁性部材150の磁気データを検出する。ここで、図示略の記憶部には、すべての磁気データ検出部142が基準温度にあるときに調整位置で基準磁性部材150を検出して得られた基準温度データが各磁気データ検出部142別に記憶されており、この基準温度データと、今回基準磁性部材150を検出して得られた検出データとを比較して、温度変化によるデータのずれ量(感度変化)を各磁気データ検出部142別に算出し、これを補正値として各磁気データ検出部142別に記憶部に記憶する。これにより補正値算出処理が終了する。
【0082】
上記補正値算出処理の直後に、制御部31の確認手段31aは、在り高確認処理を行う。つまり、まず、モータ90を駆動して初期位置からキャリア91の保持板87をカセット50の長さ方向の一側である前方に移動させる。すると、保持板87に設けられた作動傾斜面160が、アーム部材156の押圧を解除し、図18および図20に示すように、すべての基準磁性部材150を基準磁性部材付勢スプリングの付勢力で退避状態とした後、棒金保持機構80が受取位置を越えることになり、図14に示すように退避変換部材131に沿って作動ピン124が下降し、押さえブロック97が自重で下降して他側下降状態となり、一側下降状態にある受けブロック96と共に前方に移動する。
【0083】
そして、カセット50に収納されている棒金Bがある場合、前方に移動する棒金保持機構80は、受けブロック96の接触部133が既にカセット50に収納されている棒金Bの最後尾のものに接触して上側に揺動させられることになり、その結果、図15に示すように受けブロック96が受けブロック付勢スプリングの付勢力で一側上昇状態となって、受けブロック96および押さえブロック97が共に棒金Bから上方に逃げる。
【0084】
また、既にカセット50に収納されている棒金Bがない場合、前方に移動する棒金保持機構80は、図16に示すように、上昇変換部材135により作動ピン116が上昇させられることになり、受けブロック96が上方に揺動させられて受けブロック付勢スプリングの付勢力で一側上昇状態となり、受けブロック96および押さえブロック97が共に上方に移動する。
【0085】
そして、制御部31は、前端位置センサによって保持板87が検出されると、棒金保持機構80が前端位置に到達したと判断して、モータ90を停止し逆転させる。すると、キャリア91の保持板87が後方に移動し、すべての棒金保持機構80が、受けブロック96を一側上昇状態としたまま、つまりカセット50の棒金Bよりも受けブロック96および押さえブロック97を上側に逃がした状態のまま、カセット50の長さ方向の一側である前方から他側の後方へ移動する。その結果、すべての棒金保持機構80は棒金Bと接触することなく後方に移動する。この後方への移動時に、図22に示すように、磁気データ検出部142は一対の磁気センサ140,141の間に棒金Bを通過させることになり、その際に制御部31が、すべての磁気データ検出部142にカセット50に収納されている棒金Bの磁気データを検出させる。そして、制御部31は、図示略の受取位置センサで保持板87が検出されると、すべてのカセット50の収納スペースに存在するすべての棒金Bを走査するようにカセット50の長さ方向の全体に亘ってすべての磁気データ検出部142が一度移動し、棒金保持機構80が受取位置に至ったと判定して、モータ90を停止させる。なお、検出にミスが生じた場合等には、もう一度、つまりカセット50の長さ方向の全体に亘って磁気データ検出部142を複数回移動させるようにする。
【0086】
ここで、制御部31の変速手段31c(図2参照)は、磁気データ検出部142の磁気センサ140,141によるスキャニング時と非スキャニング時とで駆動機構81によるキャリア91の移動速度を変速し、非スキャニング時の移動速度をスキャニング時の移動速度よりも高速に切換える。具体的には、キャリア91の初期位置であるカセット50の後方側からキャリア91を駆動機構81により前方側へ移動する場合に、スキャニング時つまりカセット50の前方側から後方側へとキャリア91を移動するときよりも、移動速度が高速となるようにモータ90を駆動制御する。そして、前端位置センサによって保持板87が検出されると、モータ90を停止し逆転させる。そして、この逆転後には、磁気センサ140,141によるスキャニングが開始されるため、モータ90の逆転前よりも低速で且つ磁気センサ140,141の検出精度が十分に得られる移動速度のうち最も速い移動速度となるようにモータ90を駆動制御する。
【0087】
また、変速手段31cは、異常復旧後の磁気データ検出部142によるスキャニング時に、通常のスキャニング時よりも駆動機構81によるキャリア91の移動速度を低速に切換える。より具体的には、不適切な姿勢で棒金Bがカセット50に装填される等、何らかの異常が生じたことで担当者による異常復旧の操作がなされ、この異常復旧の操作が完了したことが操作部30の異常復旧終了の確認操作入力等により検出された場合、その直後のイニシャル動作時に磁気データ検出部142によるスキャニングが開始される。この際、変速手段31cは異常復旧後の駆動機構81による移動速度制御として、異常復旧後ではない通常のスキャニング時のキャリア91の移動速度よりもキャリア91の移動速度を低速に切換える。
【0088】
制御部31は、すべての磁気データ検出部142で検出した磁気データを、それぞれ、予め記憶部に記憶された棒金Bの基準磁気データと比較して、正常棒金の有無、異金種棒金の有無、および正常棒金の在り高を確認する。
【0089】
つまり、制御部31は、すべての磁気データ検出部142について、一対の磁気センサ140,141間の距離が既定であることと正常棒金の径が既定であることとに基づいて、一方の磁気センサ140と検出対象の棒金Bとの距離に相当する一方の磁気センサ140による検出磁気データと、他方の磁気センサ141と検出対象の棒金Bとの距離に相当する他方の磁気センサ141による検出磁気データとを以下のように検証し、正常棒金であるか異金種棒金であるかを判定する。
【0090】
具体的に、制御部31は、すべての磁気データ検出部142について、一対の磁気センサ140,141のうちの一方の磁気センサ140で検出される磁気データのピーク値を、一対の磁気センサ140,141間の既定の距離と正常棒金の既定の径とから割り出される、この一方の磁気センサ140と正常棒金との既定の距離および正常棒金の材質に応じた基準磁気データと比較する。同時に、一対の磁気センサ140,141のうちの他方の磁気センサ141で検出される磁気データのピーク値を、一対の磁気センサ140,141間の既定の距離と正常棒金の既定の径とから割り出される、この他方の磁気センサ141と正常棒金との既定の距離および正常棒金の材質に応じた基準磁気データと比較する。
【0091】
そして、一方の磁気センサ140で検出した棒金Bの検出磁気データと一方の磁気センサ140の基準磁気データとの差が許容誤差範囲内であり、かつ他方の磁気センサ141で検出した棒金Bの検出磁気データと他方の磁気センサ141の基準磁気データとの差が許容誤差範囲内である場合は、検出した棒金Bが正常棒金であると判定する一方、それ以外の場合、つまり一対の磁気センサ140,141のいずれか一方で検出した棒金Bの検出磁気データと基準磁気データとの差が許容誤差範囲を超える場合には、検出した棒金Bが異金種棒金であると判定する。そして、正常棒金と判定された検出磁気データのピーク値の数を正常棒金の計数値として計数する一方、異金種棒金と判定された検出磁気データのピーク値の数も異金種棒金の計数値として計数する。
【0092】
このとき、制御部31は、上記のように、この確認動作の直前に求められ各磁気データ検出部142別に記憶部に記憶された補正値に基づいて、各磁気データ検出部142の検出データまたは各磁気データ検出部142用の基準磁気データを補正し、温度補償を行ってから、検出磁気データと基準磁気データとを比較することになる。つまり、補正値の分だけ補正した基準磁気データと検出磁気データとを比較するか、あるいは、検出磁気データを補正値の分だけ補正した値と、基準磁気データとを比較する。
【0093】
そして、同時並行で実行されたすべてのカセット50についての確認結果である、カセット50別の正常棒金の計数値と異金種棒金の計数値とを、記憶部に記憶させるとともに表示部32に表示させることになる。これにより、在り高確認処理が終了する。
【0094】
したがって、上述した実施形態の棒金収納装置10によれば、カセット50の長さ方向に沿ってキャリア91を移動させて、磁気データ検出部142により棒金Bの磁気データをスキャニングし、このスキャニングにより検出した磁気データと記憶部に記憶された基準磁気データとを比較して正常棒金の有無、異金種棒金の有無および正常棒金の在り高を確認することができる。
また、変速手段31cにより駆動機構81によるキャリア91の移動速度を磁気データ検出部142の非スキャニング時に高速にする一方、スキャニング時には低速にすることができるため、キャリア91の全ての移動速度をスキャニング時の低速に設定する場合と比較して迅速なキャリア91の移動が可能となり、また、キャリア91の全ての移動速度を非スキャニング時の高速に設定する場合と比較して、磁気データ検出手段による走査速度が低速になる分より正確に磁気データの検出を行うことができるため、商品性の向上を図ることができる。
【0095】
また、異常復旧後の例えばイニシャル動作時に磁気データ検出部142によりスキャニングする際、通常のスキャニング時よりも低速でキャリア91を移動させることで、異常復旧処理を行った担当者による誤装填などのオペミスの可能性がある場合にスキャン精度をより高めて磁気データの検出精度を向上させることができる効果がある。
【0096】
また、棒金Bがカセット50の上下方向の一側である下方側から他側の上方側に向けて順次集積されているため、カセット50の上下方向の一側である下方側から他側の上方側に向かってキャリア91を移動させることで、棒金Bの集積量が比較的少ない場合等にスキャニングの時間を短くすることができる。
【0097】
また、磁気センサ140,141によるスキャニングの開始に伴いキャリア91が初期位置から移動を開始する直前に補正手段31bにより補正値を求めることで、スキャニング時の温度条件等の環境変化に応じた最適な補正値を求めることができるため、より正確な検出データを用いて正常棒金の有無、異金種棒金の有無、および、正常棒金の在り高を確認することができる。
【0098】
なお、この発明は上述した実施形態の構成に限られるものではない。例えば、この実施形態の他の態様として、駆動機構81によって、一対の磁気センサ140,141のうち一方の磁気センサ(例えば、磁気センサ140)のスキャニング時にキャリア91をカセット50の長さ方向の一側である前方側から他側である後方側へ移動させ、他方の磁気センサ(例えば、磁気センサ141)のスキャニング時にカセット50の長さ方向の他側である後方側から一方側の前方側へキャリア91を移動させるようにしてもよい。
【0099】
上記他の態様のように構成することで、一対の磁気センサ140,141の一方の磁気センサと他方の磁気センサのスキャン出力が同時に行われないので、一方の磁気センサのスキャン出力と他方の磁気センサのスキャン出力とが干渉するのを防止して磁気データの検出精度を向上することができると共に、磁気センサ140によるスキャニング時および磁気センサ141によるスキャニング時の両方で、カセット50の前方側からキャリア91を移動させる一方通行の場合と比較して往復動でスキャニングする分だけ迅速にスキャニングを終えることができる。
【0100】
また、以上これまで説明した実施形態においては、硬貨入出金機11に並設されてバラ硬貨から棒金Bを作成し収納する棒金収納装置10を例にとり説明したが、棒金Bが手作業で装填されて出金のみを行う棒金支払機にも、むろん適用可能である。
【符号の説明】
【0101】
31a 確認手段
31b 補正手段
31c 変速手段
50 カセット
81 駆動機構(駆動手段)
91 キャリア
140,141 磁気センサ
142 磁気データ検出部(磁気データ検出手段)
150 基準磁性部材
B 棒金

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カセットに、該カセットの長さ方向に並列状態で棒金を収納する棒金収納装置であって、
前記カセットの長さ方向に沿って移動可能なキャリアと、
該キャリアを前記カセットの長さ方向に沿って移動させる駆動手段と、
前記キャリアに支持されて前記カセットに収納された棒金の磁気データをスキャニングにより検出する磁気データ検出手段と、
予め記憶された棒金の基準磁気データと、前記磁気データ検出手段で検出した磁気データとを比較して、正常棒金の有無、異金種棒金の有無、および正常棒金の在り高を確認する確認手段と、
前記磁気データ検出手段の非スキャニング時に、前記磁気データ検出手段のスキャニング時よりも前記駆動手段によるキャリアの移動速度を高速に切換える変速手段とを備えることを特徴とする棒金収納装置。
【請求項2】
前記変速手段は、異常復旧後の前記磁気データ検出手段のスキャニング時に、通常のスキャニング時よりも前記駆動手段によるキャリアの移動速度を低速に切換えることを特徴とする請求項1に記載の棒金収納装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、前記磁気データ検出手段のスキャニング時に、前記カセットの長さ方向一側の前方側から前記カセットの長さ方向の他側の後方側に向かって前記キャリアを移動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の棒金収納装置。
【請求項4】
前記磁気データ検出手段は、前記カセットに収納された棒金を直径方向において挟むように配置された一対の磁気センサによって構成され、
前記駆動手段は、一対の磁気センサのうち一方の磁気センサのスキャニング時に前記キャリアを前記カセットの長さ方向一側の前方側から後方側へ移動させ、他方の磁気センサのスキャニング時に前記カセットの長さ方向一側の後方側から前方側へ前記キャリアを移動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の棒金収納装置。
【請求項5】
前記キャリアは、前記磁気データ検出手段を基準磁性部材が設けられた所定の初期位置に配置可能であり、
前記磁気データ検出手段を前記初期位置に配置し該磁気データ検出手段で前記基準磁性部材の磁気データを検出して該磁気データ検出手段の検出データの補正値または前記基準磁気データの補正値を求める補正手段を有し、
前記補正手段は、前記磁気センサによるスキャニングの開始に伴い前記キャリアが前記初期位置から移動を開始する直前に前記補正値を求め、
前記確認手段は、前記補正手段で求められた補正値に基づいて、前記磁気データ検出手段の検出データまたは前記基準磁気データを補正して、正常棒金の有無、異金種棒金の有無、および正常棒金の在り高を確認することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載の棒金収納装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate