説明

棒金払出装置

【課題】棒金払出装置のセキュリティ性を向上する。
【解決手段】棒金を払い出す棒金払出装置であって、棒金の在庫を収納する棒金収納部と、作業者による前記棒金収納部の操作を検出する操作検出センサと、前記操作検出センサによって検出された操作の順序である作業者操作手順が、所定の正規手順から外れた不正操作か否かを検出する不正操作検出部と、前記不正操作検出部において不正操作を検出した場合に所定の不正操作抑制処理を実行する不正操作抑制部とを備えた棒金払出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、棒金払出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
棒金払出装置とは、両替などの際に棒金(所定の枚数の硬貨を積層した状態で包装したもの)を払い出す硬貨取り扱い装置である。棒金払出装置には、コンビニエンスストアなどの店頭に設置され、利用客が直接操作するものがある。そのような棒金払出装置においては、棒金の在庫の補充作業は、店員などの作業者が設置場所である店頭において行うことになる。
【0003】
そのような状況では、例えば強盗などの悪意をもった第三者によって作業者が棒金補充作業中に身動きを封じられた場合などに、棒金払出装置は無防備な状態にさらされる可能性がある。しかし、これまで棒金補充時の棒金払出装置の防犯対策には充分な工夫がなされてこなかった。
【0004】
なお、本発明に関連する先行技術文献等に該当するものは発見されなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、棒金払出装置のセキュリティ性を向上する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の棒金払出装置は、棒金を払い出す棒金払出装置であって、棒金の在庫を収納する棒金収納部と、作業者による前記棒金収納部の操作を検出する操作検出センサと、前記操作検出センサによって検出された操作の順序である作業者操作手順が、所定の正規手順から外れた不正操作か否かを検出する不正操作検出部と、前記不正操作検出部において不正操作を検出した場合に所定の不正操作抑制処理を実行する不正操作抑制部とを備えている。
【0007】
このような構成によれば、作業者の不正操作や、作業者以外の第3者による不正操作などを抑制することができる。
【0008】
前記不正操作検出部は、検出した不正操作を複数種の不正操作に区分し、それぞれの区分に応じて異なる不正操作抑制処理を実行することを特徴とするものとしても良い。
【0009】
このような構成によれば、棒金払出装置に、作業者等の操作が正規の操作手順から外れている度合いに応じて適切な処理をさせることができる。
【0010】
上記の棒金払出装置は、作業者に警告を与える警告処理部と、前記棒金収納部を施錠する機能を有する施錠処理部とを備え、前記複数種の不正操作は、不正度の低い第1種不正操作と不正度の高い第2種不正操作とを含み、前記不正操作抑制部は、前記第1種不正操作に対する第1種不正操作抑制処理として、前記警告処理部に警告を行わせるとともに、前記第2種不正操作に対する第2種不正操作抑制処理として、前記施錠処理部に前記棒金収納部の施錠を行わせることを特徴とするものとしても良い。
【0011】
このような構成によれば、棒金払出装置に対する操作が正規操作手順から外れた度合いが軽度であれば作業者の誤操作として警告を発することができる。また、正規操作手順から外れた度合いが重度であれば、作業者以外の操作手順を知らない第3者による不正操作として、棒金収納部をロックし、作業の続行を妨げることができる。
【0012】
前記棒金収納部は、棒金を収納する複数の棒金収納トレーを備え、前記正規操作手順は、前記棒金収納トレーの引出/収納の手順であることを特徴とするものとしても良い。
【0013】
このような構成によれば、棒金収納トレーに対する作業者の操作手順を基準に不正操作を検出できる。
【0014】
上記の棒金払出装置は、外部にある管理部とネットワークを介して接続する通信部を備え、前記通信部は、前記管理部へ不正操作の検出を報告することを特徴とするものとしても良い。
【0015】
このような構成によれば、棒金払出装置に対しての不正操作が検出された場合に、即座に外部の管理部へ報告することができる。
【0016】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば棒金払出装置、棒金払出装置を備えた現金取扱装置、棒金払出装置を備えた金融システムなどの形態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
A.第1実施例:
図1は本発明の一実施例として棒金払出装置の全体を示す斜視図である。棒金払出機100は、棒金収納部2と、操作パネル3と、棒金払出口4とを備えている。なお、利用者が棒金払出機100を利用する際には、棒金収納部2は棒金払出機100の筐体101の中に格納されており、扉5は閉じられた状態である。
【0018】
この棒金払出装置は、利用者が棒金払出機100に対して棒金の払出を命じると、棒金収納部2に収納されている棒金の在庫を棒金払出口4より払い出す。利用者は、操作パネル3を操作したり、紙幣挿入口(図示せず)に紙幣を挿入するなどして棒金の払出を命じるものとしても良い。こうして利用者は、所定の棒金を受け取ることができる。
【0019】
棒金払出機100は、ソレノイドなどを用いて扉5をロックする扉ロック部8を備えており、また、扉5の開閉を検知する扉開閉検知センサ9を備えている。さらに、利用者や棒金払出機100の保守・管理などに携わる作業者に警告などを発するためのブザー12を備えている。
【0020】
棒金収納部2には、複数の棒金トレー10が配列した状態で収納されており、棒金トレー10には棒金の在庫が収納されている。作業者が、棒金の在庫を補充する際には、補充が必要な棒金トレー10を棒金収納部2から引き出し、棒金トレー10に棒金を補充し、棒金収納部2に再び収納する。
【0021】
棒金収納部2は、各棒金トレー毎に設けられたトレー固定ロック部6を備えている。トレー固定ロック部6は、棒金トレー10を棒金収納部2に収納された状態で固定してしまうことによって、必要に応じ棒金トレー10を棒金収納部2から引き出せなくするためのものである。トレー固定ロック部6は、各棒金トレー10それぞれに対して設けられている。トレー固定ロック部6は、ソレノイドを用いて解錠/施錠機能を実現しているものとしても良い。
【0022】
図2は、棒金払出機100の内部構成を示すブロック図である。棒金払出機100は、主制御部200を備えている。主制御部200は、センサ制御部201、ロック制御部202、ブザー制御部203、モータ制御部204、センター通信部205、正規操作手順記憶部210と接続され、棒金払出機100の制御全般を司る。
【0023】
センサ制御部201は、棒金払出機100に備えられた各種のセンサ(上述の扉開閉検知センサ9や、後述するトレー用センサ30など)の制御を行う。各センサからの信号は、センサ制御部201を通じて主制御部200へと伝達される。
【0024】
ロック制御部202は、主制御部200からの命令を受けて、扉ロック部8やトレー固定ロック部6などの解錠/施錠の処理を行う。
【0025】
ブザー制御部203は、主制御部200からの命令を受けてブザー12の動作制御を行う。モータ制御部204は、主制御部からの命令を受けて、棒金を払い出す際に、棒金トレー10から棒金払出口4まで棒金を搬送する搬送部に用いられているモータなどの駆動系統全般を制御する。
【0026】
センター通信部205は、ネットワークを介して外部にある管理センターと接続し、主制御部200からの命令を受けて、管理センターへの報告の送信や管理センターからの命令の受信などを行う。
【0027】
正規操作手順記憶部210は、作業者による棒金払出機100に対する正しい操作手順(正規操作手順)を記憶している。主制御部200は、適宜正規操作手順を参照し、作業者の操作手順が不正操作であるかの判断を行う(詳細は後述する)。
【0028】
図3(A)は、棒金収納部2を拡大した概略図である。棒金収納部2の内部には、棒金トレー10のそれぞれに対して1組のトレー用センサ30a、30bが設けられている。トレー用センサ30a、30bは、例えば赤外線の発光部と受光部とで構成できる。なお、以下において、1組のトレー用センサ30a、30bを「トレー用センサ30」と呼ぶ。
【0029】
図3(B)は、棒金トレー10のうちの棒金トレー10aが引き出された状態を示している。図3(B)に示すように棒金トレー10aが引き出されると、発光部30aからの赤外線を、受光部30bが検知し、第1の変化点として主制御部200へ報告する。ここで「第1の変化点」とは、複数組のトレー用センサ30のうちの任意の1組がオフ(非受光)からオン(受光)に切り替わった事象を意味する。
【0030】
また、棒金トレー10aが再び棒金収納部2に収納され、図3(A)に示す状態に戻されると、発光部30aからの赤外線が棒金トレー10aにより遮られたことを受光部30bが検知し、第2の変化点として主制御部200へ報告する。ここで「第2の変化点」とは、複数組のトレー用センサ30のうちの任意の1組がオン(受光)からオフ(非受光)に切り替わった事象を意味する。
【0031】
以下に、図3(A)に示した棒金トレー10a〜10cに対して棒金を補充する場合を想定する。図4(A)、(B)は、第1実施例としての正規操作手順情報Irと具体例としての作業者の2通りの実行手順を示す説明図である。
【0032】
図5は、棒金払出機100への不正操作を検出する主制御部200における処理手順を示したフローチャートである。以下に、図5に示す処理手順に即して、図4(B)の2通りの実行手順41、42で操作が行われた場合について説明する。
【0033】
本実施例においては、図4(A)に示すように、主制御部200は、トレー用センサ30が検知した第1の変化点を「1」、第2の変化点を「0」とする2進数として認識するものとする。主制御部200は、トレー用センサ30の検出した作業者の操作を操作回数を重ねるごとに下位ビットに追加して、実行手順情報Iとして記憶していく。従って、実行手順情報Iは、n回の操作後にはnビットのデータとなる。
【0034】
また、図4(A)に示すように、本実施例において正規操作手順として、棒金トレー10が引き出された後の操作は必ず棒金トレー10が収納される動作を定義する(正規操作手順情報Ir=”10”)。また、不正操作手順として、棒金トレー10が引き出された後に、棒金トレー10が収納されることなく、別の棒金トレー10が引き出される動作を定義する(不正操作手順情報Iw=”11”)。なお、図4(A)に示された上記のような定義が、正規操作手順記憶部210に記憶されている。
【0035】
主制御部200が、作業者の操作手順が正規操作手順であるか否かの判断は、操作回数が奇数回のときには、実行手順情報Iの最下位ビットと正規操作手順情報Irの上位1ビットと比較しておこなう。また、操作回数が偶数回のときには、実行手順情報Iの最下位ビットと正規操作手順情報Irの下位1ビットとを比較しておこなう。
【0036】
まず、図4(B)の第1の実行手順41の例に基づいて説明する。主制御部200は、トレー用センサ30において第1の変化点あるいは第2の変化点のいずれも検出しない場合は待機状態のままである(図5;ステップS510)。
【0037】
1回目の操作で作業者は棒金トレー10aを引き出す。主制御部200は、トレー用センサ30において検出した変化点に応じて実行手順情報Iを更新する(ステップS520)。この場合は、実行手順情報Iとして「1」が記録される。
【0038】
次に、更新された実行手順情報Iを正規操作手順であるかを判断する(ステップS530)。今回は正規操作手順であるので、主制御部200は再び待機状態に入る。なお、作業者による操作が1回目である場合は、主制御部200は、正規操作手順であるかの判断は省略し、2回目の操作を待つ待機状態に入るものとしても良い。
【0039】
2回目の操作として作業者は、引き出した棒金トレー10aを収納することなく、次の棒金トレー10bを引き出す。今回は、更新した実行操作情報Iが正規操作手順情報Irと一致せず、主制御部200は、作業者の不正操作として判断し(ステップS530)、以下の不正操作抑制処理を実行する。
【0040】
具体的には、主制御部200は、センター通信部205を通じて外部の管理センターへ不正操作の検出を報告する(ステップS540)。また、主制御部200は、ロック制御部202に対して棒金収納部2のトレー固定ロック部6の施錠命令を出し、全ての棒金トレー10を引き出せない状態にする(ステップS550)。
【0041】
次に、第2の実行手順42(図4(B))に基づいて説明する。第2の実行手順42においては、作業者は、1回目の操作で棒金トレー10aを引き出し、2回目の操作で引き出された棒金トレー10aを収納している。そのため実行手順情報Iは「10」となり、2回目の操作では不正と判断されることはない。
【0042】
また、作業者は、3回目の操作で棒金トレー10bを引き出し、4回目の操作で棒金トレー10cをさらに引き出している。この場合では、4回目の操作の後に更新された実行操作情報Iと正規操作手順Irは一致しないため、不正操作として判断される。従って、上記の不正操作抑制処理(ステップS540〜S550)が実行される。
【0043】
実際の作業者は、正規操作手順情報Irの内容を知っていれば、その手順に従って操作し、問題なく棒金の補充作業を行うことができる。従って、例えば、正規操作手順情報Irの内容を知らない強盗などが棒金収納部2から棒金を奪おうとして正規操作手順情報Irと異なる操作手順を行った場合などには、上記不正操作抑制処理によりその被害を抑制することができる。
【0044】
なお、上記不正操作抑制処理が行われたとしても作業者が操作パネル3から所定のパスワードを入力すれば再び作業可能な状態へ復帰できるなどの、復帰手段があるものとしても良い。
【0045】
B.第2実施例:
図6(A)、(B)は、第2実施例における正規操作手順と、具体例としての2通りの実行手順とを示す説明図である。図6(A)、(B)は、トレーカウンタ値N(後述)についての記述が追加されている点以外は、図4(A)、(B)とほぼ同じである。なお、第2実施例は、正規操作手順であるか否かの判断をトレーカウンタ値Nによって行う点が第1実施例と異なるだけであり、装置構成および図5の処理手順は、第1実施例と同じである。
【0046】
図6(A)に示すように、トレーカウンタ値Nは初期値が「0」の10進数の変数である。トレーカウンタ値Nは、棒金トレー10が引き出されたときには、「1」加算され(N=N+1)、棒金トレー10が収納されたときには、図5に示すステップS520において「1」減算される(N=N−1)。即ち正規操作手順で操作された場合にはトレーカウンタ値Nは「1」以下の値であり、不正操作手順で操作された場合には、トレーカウンタ値Nは「2」になる。
【0047】
従って、図6(B)に示すように、第1の実行手順41においは2回目の操作でトレーカウンタ値Nは「2」となり、第2の実行手順42においては4回目の操作でトレーカウンタ値Nは「2」となり、それぞれ不正操作として判断されている。なお、図6(B)においては、トレーカウンタ値Nが「2」であるときは丸で囲み図示してある。
【0048】
従って、本実施例においては、実行手順情報Iおよび正規操作手順情報Ir、不正操作手順情報Iwを記憶しておく必要はなく、正規操作手順であるか否かの判断(図5;ステップS530)は、トレーカウンタ値Nにより行うことができる。
【0049】
C.第3実施例:
図7(A)、(B)は、第3実施例における正規操作手順と、具体例としての2通りの実行手順とを示す説明図である。図7(A)、(B)は、正規操作手順以外の操作手順の定義が異なる点と、2通りの実行手順がそれぞれ異なる点以外は、図6(A)、(B)とほぼ同じである。
【0050】
図8は、第3実施例における主制御部200の処理手順を示すフローチャートである。図8は、図5の手順に、誤操作と不正操作との判断処理(ステップS800)と、誤操作に対する不正操作抑制処理(ステップS810、S820)を追加してある点以外は、図5と同じである。なお、第3実施例における装置構成は、第1実施例および第2実施例と同じである。
【0051】
図7(A)に示すように、第3実施例では、2つの棒金トレー10を続けて引き出す操作を「誤操作」として定義する(誤操作手順情報Iw1=”11”)。誤操作の後にさらに棒金トレー10を引き出す操作を「不正操作」とする(不正操作手順情報Iw2=”111”)。
【0052】
トレーカウンタ値Nは、第1実施例と同様の手順で更新される。従って、誤操作のときは、トレーカウンタ値Nは「2」となり、不正操作のときはトレーカウンタ値Nは「3」になる。つまり正規操作手順として判断されるのは、トレーカウンタ値Nが1以下のときである。従って、誤操作をした場合(トレーカウンタ値N=2)であっても、その後に棒金トレー10を収納すれば、トレーカウンタ値は「1」となり、後述するように正規操作手順へと復帰できる(正規操作復帰手順情報Iw3=”110”)。
【0053】
なお、図7(B)において、誤操作のときのトレーカウンタ値Nには「※」が付され、不正操作のときのトレーカウンタ値Nは丸で囲んで示してある。
【0054】
図7(B)に示す2通りの実行手順71、72を図8の処理手順に即して説明する。第1の実行手順71は、棒金トレー10aが引き出された後、棒金トレー10bが引き出され、さらに棒金トレー10cが引き出されたことを示している。
【0055】
1回目の操作では、トレーカウンタ値Nは「1」であり、正規操作手順として判断される(ステップS530)。しかし2回目の操作では、トレーカウンタ値Nは「2」となり、正規操作手順ではないと判断されるため、次に誤操作であるか不正操作であるかの判断がなされる(ステップS800)。
【0056】
2回目の操作においては、トレーカウンタ値Nは「2」であるため、誤操作として判断され、第1種の不正操作抑制処理を実行する(ステップS810)。この第1種の不正操作抑制処理は、第3実施例においては、ブザー12による警告である。
【0057】
3回目の操作においては、主制御部200は、ステップS800において不正操作として判断し、第2種の不正操作抑制処理を実行する(ステップS540、S550)。この第2種の不正操作抑制処理は、全棒金トレー10のロックであり、第1実施例および第2実施例と同じものである。
【0058】
次に第2の実行手順72について説明する。第2の実行手順72は、2回目の操作までは第1の実行手順71と同じである。2回目の操作の後、ブザー12による警告を受けている作業者は、3回目の操作で棒金トレー10bを収納する。すると、トレーカウンタ値Nは「1」に戻り(ステップS520)、ステップS530において正規操作手順として判断される(正規操作手順への復帰)。このとき、第1種の不正操作抑制処理のブザー12が鳴り続けていたならば、ステップS820においてブザー12は停止する。
【0059】
4回目の操作で作業者が、未収納の棒金トレー10aを収納すれば、トレーカウンタ値Nは「0」となり、他の棒金トレー10に対して作業必要な場合には作業を続行できる。4回目の操作で棒金トレー10aを未収納のまま他の棒金トレー10を引き出すと、トレーカウンタ値Nは「2」となり、ステップS800において誤操作として判断され、再び第1種の不正操作抑制処理が実行される(ステップS810)。なお、所定回数の誤操作を繰り返した場合は、不正操作と判断され、第2種の不正操作抑制処理が実行されるものとしても良い。
【0060】
このように、正規操作手順から外れた作業者の操作手順を、誤操作と不正操作のように複数の種類に区分し、それぞれに応じた不正操作抑制処理がなされるものとすることができる。
【0061】
D.第4実施例:
図9(A)、(B)は、第4実施例における正規操作手順と、具体例としての2通りの実行手順とを示す説明図である。図9(A)、(B)は、操作トレー番号TNと、n個の配列変数である正規トレー番号TNr(n)が設定されている点と、2通りの実行手順が異なる点以外は、図6(A)、(B)とほぼ同じである。なお、第4実施例における装置構成および図5の処理手順は、第1実施例と同じである。
【0062】
第4実施例においては、全ての棒金トレー10にはそれぞれ、予めトレー番号が付されている。m個の棒金トレー10があるとした場合、トレー番号は1〜mの値がそれぞれの棒金トレー10に付されている。なお、棒金トレー10aのトレー番号は「1」とし、棒金トレー10bのトレー番号は「2」、棒金トレー10cのトレー番号は「3」とする。
【0063】
主制御部200は、トレー用センサ30から変化点の検出を受け取ると、その変化点を検出したトレー用センサ30がどの棒金トレー10のセンサであるかを識別し、操作対象となっている棒金トレー10のトレー番号を操作トレー番号TNに代入し、操作トレー番号TNを更新する。
【0064】
従って、第4実施例においては、図9(A)に示すように、棒金トレー10aが操作されると、操作トレー番号TNには「1」が代入され、棒金トレー10bが操作されると操作トレー番号TNには「2」が代入され、棒金トレー10cが操作されると操作トレー番号TNには「3」が代入される。なお、この操作トレー番号TNの更新処理は、図5のステップS520で行われる。
【0065】
第4実施例においては、正規トレー番号TNr(n)が正規操作手順記憶部210(図2)に記憶されている。正規トレー番号TNr(n)には、n回目の操作の時に操作対象となるべき棒金トレー10のトレー番号が格納されている。即ち、1回目の操作の時は、正規トレー番号TNr(1)=1であり、正規操作手順であれば棒金トレー10aが操作対象となることを示している。2回目の操作では同じく棒金トレー10aが操作対象であり、同様に3〜4回目の操作では棒金トレー10bが操作対象であり、5〜6回目の操作では棒金トレー10cが操作対象となっている。
【0066】
主制御部200は、図5のステップS530において、n回目の操作の時に正規トレー番号TNr(n)を参照し、その時の操作トレー番号TNと比較し、一致すれば正規操作手順として判断し、一致しなければ不正操作手順として判断する。
【0067】
図9(B)に示す第1の実行手順91では、1回目の操作で棒金トレー10aを引き出し、2回目の操作で棒金トレー10aを収納し、3回目の操作で棒金トレー10cを引き出しているため、不正操作として判断されている。
【0068】
第2の実行手順92では、2回目の操作までは第1の実行手順91と同じであるが、3回目の操作では棒金トレー10bを引き出しており、正規操作手順である。しかし4回目の操作では棒金トレー10bを引き出したままの状態で棒金トレー10cを引き出しており、正規トレー番号TNr(4)と操作トレー番号TNとが一致せず、不正操作として判断されている。
【0069】
第4実施例においては、棒金トレー10の操作は、引き出し/収納の操作のみである。従って、奇数回目の操作と偶数回目の操作における操作対象となるべき棒金トレー10を同じとすることで、棒金トレー10は常に引き出し/収納の操作が交互に行われるという第1実施例で示した条件も実現している。このように、複数の判断基準を設けて複数の条件によって正規操作手順であるか否かを判断することも可能である。
【0070】
なお、第1実施例と同じく、変化点の値を用いて、正規操作手順を棒金トレー10の操作順序と併せて判断するものとしても良い。この場合には、棒金トレー10が引き出された時にのみ、トレー番号によって正規操作手順であるか否かの判断をするものとしても良い。
【0071】
E.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。例えば次のような変形も可能である。
【0072】
E1.変形例1:
上記実施例においては、実行手順情報Iや、トレーカウンタ値N若しくは操作トレー番号TNなどを設定し、正規操作手順から外れた不正操作であるか否かを判断しているが、その判断方法は、これらに限定されるものではなく、他の判断基準やアルゴリズムであっても良い。
【0073】
例えば、棒金トレー10が引き出された後に棒金が補充されて収納された場合に正規操作手順として判断し、引き出された後に収納された棒金トレー10が空であった場合に不正操作として判断するものとしても良い。また、棒金トレー10が引き出されたまま所定の時間が超過した場合に不正操作とするアルゴリズムとしても良い。
【0074】
E2.変形例2:
上記実施例においては、正規操作手順として1種類の手順のみを定義していたが、複数の種類の正規操作手順を定義することもできる。そうすることにより、作業者の実行手順が複数の正規操作手順のいずれかに該当するものであれば、不正操作として判断されないものとすることができる。
【0075】
E3.変形例3:
上記実施例においては、棒金払出機100は、複数の棒金トレー10を備えていたが、棒金トレー10を備えたものでなくとも良い。例えば、シャッターを備えた複数の棒金収納口を有する棒金収納部においてシャッターの開閉操作によって操作手順を検出するものとしても良い。
【0076】
E4.変形例4:
上記実施例においては、不正抑制処理として管理センターへの報告と、トレー固定ロック部6により全ての棒金トレー10をロックする処理と、ブザー12による警告が行われていたが、それ以外の処理がなされるものとしても良い。例えば、スピーカによる自動アナウンスが行われても良い。
【0077】
E5.変形例5:
棒金払出機100は、センター通信部205を備えておらず、外部ネットワークと接続することなく単体で設置されるものとしても良い。
【0078】
E6.変形例6:
第3実施例においては、正規操作手順以外の操作手順を誤操作と不正操作の2種類に区分していたが、さらに複数種に区分されるものとしても良い。また、不正操作抑制処理もさらに複数の処理があるものとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】棒金払出装置の全体を示す斜視図。
【図2】棒金払出装置の内部構成を示すブロック図。
【図3】棒金収納部を拡大して示す概略図。
【図4】第1実施例における正規操作手順と実行手順を示す説明図。
【図5】第1実施例における主制御部の処理手順を示すフローチャート。
【図6】第2実施例における正規操作手順と実行手順を示す説明図。
【図7】第3実施例における正規操作手順と実行手順を示す説明図。
【図8】第3実施例における主制御部の処理手順を示すフローチャート。
【図9】第4実施例における正規操作手順と実行手順を示す説明図。
【符号の説明】
【0080】
2…棒金収納部
3…操作パネル
4…棒金払出口
5…扉
6…トレー固定ロック部
8…扉ロック部
9…扉開閉検知センサ
10…棒金トレー
10a〜10c…棒金トレー
12…ブザー
30…トレー用センサ
30a…発光部
30b…受光部
41…第1の実行手順(第1実施例、第2実施例)
42…第2の実行手順(第1実施例、第2実施例)
71…第1の実行手順(第3実施例)
72…第2の実行手順(第3実施例)
91…第1の実行手順(第4実施例)
92…第2の実行手順(第4実施例)
100…棒金払出機
101…筐体
200…主制御部
201…センサ制御部
202…ロック制御部
203…ブザー制御部
204…モータ制御部
205…センター通信部
210…正規操作手順記憶部
I…実行手順情報
Ir…正規操作手順情報
Iw…不正操作手順情報
Iw1…誤操作手順情報
Iw2…不正操作手順情報
Iw3…正規操作復帰手順情報
N…トレーカウンタ値
TN…操作トレー番号
TNr(n)…正規トレー番号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒金を払い出す棒金払出装置であって、
棒金の在庫を収納する棒金収納部と、
作業者による前記棒金収納部の操作を検出する操作検出センサと、
前記操作検出センサによって検出された操作の順序である作業者操作手順が、所定の正規手順から外れた不正操作か否かを検出する不正操作検出部と、
前記不正操作検出部において不正操作を検出した場合に所定の不正操作抑制処理を実行する不正操作抑制部と、
を備えた棒金払出装置。
【請求項2】
請求項1記載の棒金払出装置であって、
前記不正操作検出部は、検出した不正操作を複数種の不正操作に区分し、それぞれの区分に応じて異なる不正操作抑制処理を実行することを特徴とする棒金払出装置。
【請求項3】
請求項2記載の棒金払出装置であって、
作業者に警告を与える警告処理部と、
前記棒金収納部を施錠する機能を有する施錠処理部とを備え、
前記複数種の不正操作は、不正度の低い第1種不正操作と不正度の高い第2種不正操作とを含み、
前記不正操作抑制部は、前記第1種不正操作に対する第1種不正操作抑制処理として、前記警告処理部に警告を行わせるとともに、前記第2種不正操作に対する第2種不正操作抑制処理として、前記施錠処理部に前記棒金収納部の施錠を行わせることを特徴とする棒金払出装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の棒金払出装置であって、
前記棒金収納部は、棒金を収納する複数の棒金収納トレーを備え、
前記正規操作手順は、前記棒金収納トレーの引出/収納の手順であることを特徴とする棒金払出装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の棒金払出装置であって、
外部にある管理部とネットワークを介して接続する通信部を備え、
前記通信部は、前記管理部へ不正操作の検出を報告することを特徴とする棒金払出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−328657(P2007−328657A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160506(P2006−160506)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】