説明

椅子式マッサージ機

【課題】
構造が耐久性及びコスト性に優れると共に人体当接部における硬度を異ならせることが可能な施療子を備えた椅子式マッサージ機を提供する。
【解決手段】
座部12aと一対の施療子311aを備えた背凭れ部11aとを設けたマッサージ機1aにおいて、施療子311aを人体当接部の硬度が各部で異なる円形の施療子ローラーで構成した。また、施療子311aを、人体当接部の状態を検出する検出手段の検出値に基づいて、硬度切替機構38aにより硬度が異なる位置に切り替えるようにした。施療子311aの各部で硬度が異なるよう、硬部A、柔部B、及びそれらの硬度の中間である中間部Cとして相互に連結した複数の部材で施療子311aを構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体当接部における硬度を異ならせることが可能な施療子を備えた椅子式マッサージ機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、椅子式マッサージ機として、被施療者が腰掛ける座部の後部に背凭れ部を設けた椅子式マッサージ機があり、例えば、背凭れ部に施療子が具備されたマッサージ機構等を設けて、被施療者の背部付近をマッサージする構成のものが広く知られている。
【0003】
かかる椅子式マッサージ機では、被施療者が腰掛けて背凭れ部に凭れかかった状態で、その背部に対して施療子を前後動、あるいは上下動させて、「揉み」や「叩き」と同様の刺激を与えてマッサージを行うことができるようになっている。
【0004】
さらに最近では、施療子の当接感を調節して異なるマッサージを実施できる形態のマッサージ機が開示されている。
【0005】
すなわち、図21に示すように、可撓性を有する外皮10内に磁気粘性流体3が封入された施療子1を備えたマッサージ機として、該磁気粘性流体3に及ぼす磁気量を可変としている磁場発生手段12と、施療子1にマッサージ動作を行わせる駆動手段とを備えており、磁気粘性流体3の粘性変化を利用して施療子1の硬さを調節できるようにしている。(特許文献1)
【0006】
また、他の例として、図22に示すように、施療子1が動作することによって人体にマッサージ作用を施す椅子式のマッサージ機Aにおいて、施療子1の硬度が機械的に変化制御されるようになした形態のものも開示されている。
【0007】
すなわち、この施療子1として、本体ブロック11にスライド軸12が挿通支持され、該スライド軸12の外側に作動体13が嵌装され、該作動体13の外側に傾斜面14を介して動作支持片15が配設され、該動作支持片15の外側にゴム、軟質合成樹脂等の弾性材でなる環状の施療当接体16が嵌着されると共に、スライド軸12の一端に、バネ17を介してモータ10の回転軸が連結されている。
【0008】
よって、前記モータ10の回転軸が回転すると、前記バネ17の捩じれ具合が変化されてその弾性引張力が変化調節され、前記作動体13が前記スライド軸12と共に引っ張られ前記傾斜面14の作用によって前記動作支持片15が拡開動作すると、前記施療当接体16が内側から押圧されて、施療子1の硬度は硬い状態となり、逆に、施療当接体16の弾性復元力により作動体13がスライド軸12と共に前記とは逆方向へ動作されて動作支持片15が縮閉動作すると、同施療当接体16を内側から押圧する力が解除されて施療子1の硬度は軟らかい状態となるように構成している。(特許文献2)
【特許文献1】特開2002−345911号公報(第7頁の図1)
【特許文献2】特開2001−008996号公報(第6頁の図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記特許文献1の、前記外皮10内に前記磁気粘性流体3が封入された前記施療子1を備えたマッサージ機は、施療子1のマッサージ動作によって外皮10の劣化が進むと、内部の磁気粘性流体3が漏出するおそれがあるなど、耐久性に問題があると考えられる。
【0010】
また、上記特許文献2の、前記施療子1の硬度を機械的に変化制御されるように構成したマッサージ機Aは、施療子1の部品構成があまりにも複雑になり過ぎ、製造及びメンテナンスに係るコストが高騰するなど、流通製品化の面で課題となると予想される。
【0011】
そこで、本発明は、上記問題点を解消する為に成されたものであり、構造が耐久性及びコスト性に優れると共に、人体当接部における硬度を異ならせて多様なマッサージを実施できる施療子を備えた椅子式マッサージ機を提供する事を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明の椅子式マッサージ機は、座部と一対の施療子を備えた背凭れ部とを設けたマッサージ機において、施療子を人体当接部の硬度が各部で異なる円形の施療子ローラーで構成したものとしている。
【0013】
また、本発明の椅子式マッサージ機の前記施療子を、人体当接部の状態を検出する検出手段の検出値に基づいて、硬度切替機構により硬度が異なる位置に切り替えるようにしたものとしている。
【0014】
さらに、本発明の椅子式マッサージ機の前記施療子を、相互に連結し硬度が異なる複数の部材で構成したものとしている。
【0015】
また、本発明の椅子式マッサージ機は、前記施療子の硬度が各部で異なるように、大きさの異なる複数の中空部を形成するものとしている。
【0016】
さらに、本発明の椅子式マッサージ機は、前記施療子の硬度が各部で異なるように、施療子に形成する切欠部の数を各部で異ならせたものとしている。
【0017】
また、本発明の椅子式マッサージ機は、前記施療子の硬度が各部で異なるように、該施療子を弾質の外側当接部、及び該外側当接部よりも硬質の内側芯部から形成するとともに、半径方向における外側当接部及び内側芯部の厚さの比率を各部で異ならせたものとしている。
【0018】
さらに、本発明の椅子式マッサージ機は、前記施療子の硬度が各部で異なるように、該施療子の外周形状を各部で異ならせたものとしている。
【0019】
また、本発明の椅子式マッサージ機は、前記背凭れ部にリクライニング機構を設けるとともに、リクライニング角度を検出するリクライニング角度検出センサを備え、該リクライニング角度検出センサの検出値に基づいて、前記施療子を前記硬度切替機構により硬度が異なる位置に切り替えるように構成したものとしている。
【発明の効果】
【0020】
よって、本発明の椅子式マッサージ機は、座部と一対の施療子を備えた背凭れ部とを設けたマッサージ機において、施療子を人体当接部の硬度が各部で異なる円形の施療子ローラーで構成したものとしているため、座部に着座して背凭れ部に凭れた被施療者の首部や背部、また腰部や臀部等において、被施療者が所望する施療子の硬度でマッサージを受けられるし、且つ、施療子は、各部の硬度を異ならせるだけの比較的簡素な構造なので、継続使用に係る耐久性、及び製造及びメンテナンスに係るコスト性に優れる。
【0021】
また、本発明の椅子式マッサージ機の前記施療子を、人体当接部の状態を検出する検出手段の検出値に基づいて、硬度切替機構により硬度が異なる位置に切り替えるようにしたものとしているため、当接感が弱すぎてマッサージ不足をきたしたり、逆に当接感が強すぎて苦痛をもたらしたりすることを回避しつつ、常時適したマッサージを実施できる。
【0022】
例えば、人体当接部側のコリ具合を検出して、それに応じた硬度となる位置が人体当接部側にくるように切り替えることができる。
【0023】
また、被施療者の肩位置が検出される場合、施療子の下部付近が人体当接部に対向するから、施療子の下部付近における硬度を切り替えるようにして、被施療者の肩部を適正にマッサージすることが可能となる。
【0024】
さらに、本発明の椅子式マッサージ機の前記施療子を、相互に連結し硬度が異なる複数の部材で構成したものとしているため、硬度が異なる部材の多種多様な組合せが可能となり、被施療者の用途に応じたマッサージを実施できる。
【0025】
例えば、コリがひどく強いマッサージを所望する被施療者は、比較的硬度の高い部材の組合せで施療子を構成でき、あるいは、リラクゼーションを意図する被施療者は、比較的硬度の低い部材の組合せで施療子を構成することができる。
【0026】
また、本発明の椅子式マッサージ機は、前記施療子の硬度が各部で異なるように、大きさの異なる複数の中空部を形成するものとしているため、硬度が異なる複数の部材を使用する必要がなく、単一の部材で各部の硬度を異ならせることができるので、製造コストを低減でき、且つ施療子の製造やメンテナンスが容易である。
【0027】
さらに、本発明の椅子式マッサージ機は、前記施療子の硬度が各部で異なるように、施療子に形成する切欠部の数を各部で異ならせたものとしているため、硬度が異なる複数の部材を使用する必要がなく、単一の部材で各部の硬度を異ならせることができるので、製造コストを低減でき、且つ施療子の製造やメンテナンスが容易である。
【0028】
また、本発明の椅子式マッサージ機は、前記施療子の硬度が各部で異なるように、該施療子を弾質の外側当接部、及び該外側当接部よりも硬質の内側芯部から形成するとともに、半径方向における外側当接部及び内側芯部の厚さの比率を各部で異ならせたものとしているため、外側当接部及び内側芯部だけで各部の硬度を異ならせることができるので、製造コストを低減でき、且つ施療子の製造やメンテナンスが容易である。
【0029】
さらに、本発明の椅子式マッサージ機は、前記施療子の硬度が各部で異なるように、該施療子の外周形状を各部で異ならせたものとしているため、硬度が異なる複数の部材を使用する必要がなく、単一の部材で各部の硬度を異ならせることができるので、製造コストを低減でき、且つ施療子の製造やメンテナンスが容易である。
【0030】
また、本発明の椅子式マッサージ機は、前記背凭れ部にリクライニング機構を設けるとともに、リクライニング角度を検出するリクライニング角度検出センサを備え、該リクライニング角度検出センサの検出値に基づいて、前記施療子を前記硬度切替機構により硬度が異なる位置に切り替えるように構成したものとしているため、背凭れ部のリクライニングに係わらず、施療子の当接感を常時一定に保ち、被施療者が所望するマッサージを継続できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に、本発明の椅子式マッサージ機を、図面に示す一実施形態に基づきこれを詳細に説明する。
図1は本発明の椅子式マッサージ機の一実施形態を示す斜視図であり、図2は本発明の椅子式マッサージ機の一実施形態を示す使用状態図であり、図3は本発明の椅子式マッサージ機における施療機構の昇降動の一実施形態を示す側面から見た断面説明図であり、図4は本発明の椅子式マッサージ機における施療機構の一実施形態を示す斜視図であり、図5は本発明の椅子式マッサージ機における施療機構の一実施形態を示す側面説明図であり、図6は本発明の椅子式マッサージ機における被施療者状態の検出手段による検出の一実施形態を示す側面説明図であり、図7は本発明の椅子式マッサージ機における施療子の一実施形態を示す側面説明図であり、図8は本発明の椅子式マッサージ機における被施療者の肩を下方とする施療子の一実施形態を示す側面説明図であり、図9は本発明の椅子式マッサージ機における施療子の一実施形態を示す上面説明図であり、図10は本発明の椅子式マッサージ機における施療子を複数設けた一実施形態を示す側面説明図であり、図11は本発明の椅子式マッサージ機における複数の当接する施療子の一実施形態を示す側面説明図であり、図12及び図13は本発明の椅子式マッサージ機における施療子の一実施形態を示す側面図であり、図14は本発明の椅子式マッサージ機における施療子の一実施形態を示す斜視図であり、図15は本発明の椅子式マッサージ機における施療子の一実施形態を示す平面図であり、図16は本発明の椅子式マッサージ機における施療子の一実施形態を示す斜視図であり、図17は本発明の椅子式マッサージ機における施療子の一実施形態を示す斜視図であり、図18は本発明の椅子式マッサージ機の硬度切替機構による施療子の硬度切替に関する一実施形態を示す側面説明図であり、図19は本発明の椅子式マッサージ機のリモコンの一実施形態を示す正面図であり、図20は本発明の椅子式マッサージ機における被施療者状態の検出手段による検出の一実施形態を示す側面説明図であり、図21及び図22は従来技術を示す説明図である。
【0032】
すなわち、本発明の椅子式マッサージ機1aは、図1〜図3に示すように椅子型のものであり、被施療者の肩、腰、背部の接触部となる背凭れ部11aと、被施療者の尻の接触部となる座部12aを備え、該背凭れ部11aは、前記座部12aの後部にアクチュエータ等を備えたリクライニング機構2aによりリクライニング自在として取り付けたものとしている。
【0033】
また、前記座部12aの左右には肘掛け部14a・14aを設けると共に、該座部12aの前端部に出没自在とした足載せ部13aを備えている。
【0034】
さらに、本発明の椅子式マッサージ機1aは、左右一対の施療子311a・311aを有する施療機構3aを前記背凭れ部11a内に備えている。すなわち、該背凭れ部11aの内部に、左右一対の断面コ字状のガイドレール111aに沿って昇降可能となるように、該施療機構3aを配設しており、該施療機構3a内に設けた施療子駆動部31aの前端に該各施療子311aを配して、揉み、叩き、指圧、ローリング等、多彩な形態のマッサージを被施療者に実施することを可能としている。
【0035】
前記足載せ部13aは、必要に応じて内部に足部マッサージ機構(図示せず)を備えることができる。
【0036】
また、本発明の椅子式マッサージ機1aは、制御部41aを介して該椅子式マッサージ機1a全体の操作をリモコン4aにて被施療者が行えるようにしている。該リモコン4aは、図19に示すように、各種スイッチボタンを配した操作部42aと、液晶画面からなる表示部43aとを備えている。
【0037】
さらに、前記施療機構3aについて、図4に示すように、前記背凭れ部11aの上下方向に沿って該施療機構3aを昇降させるモータを備えた昇降用駆動部33aを、略矩形箱型状の外部ケーシング32aの前方視右側下部に設けている。
【0038】
前記昇降用駆動部33aは、ギヤ(図示せず)とウォーム(図示せず)とからなる昇降用ギアボックス部331aと噛合すると共に、該昇降用ギアボックス部331aは、該外部ケーシング32aの下部に回動自在に配設する左右幅方向に伸延させた昇降軸35aと噛合している。
【0039】
さらに、前記昇降軸35aの左右端部には、前記ガイドレール111aに固設するラック(図示せず)と夫々噛合する左右一対の各昇降用ピニオンギヤ351aを設けている。
【0040】
また、前記外部ケーシング32aの上部において、回動自在に配設する左右幅方向に伸延させたガイド軸34aを設けるとともに、該ガイド軸34aの左右端部には、該ガイドレール111a内部にて回転自在である回転輪341aを設けている。
【0041】
よって、前記昇降用駆動部33aの回転が、前記昇降用ギアボックス部331a、昇降軸35a、左右一対の各昇降用ピニオンギヤ351aに順次伝達されると、該各昇降用ピニオンギヤ351aは噛合している前記ガイドレール111aの前記ラック(図示せず)上を回転走行することになり、前記施療機構3aは、ガイドレール111aに沿って昇降可能となる。
【0042】
尚、前記昇降軸35aには、前記昇降用駆動部33aによって該昇降軸35aが駆動(回動)した量を検出するためのロータリーエンコーダからなる昇降用駆動量検出手段352aを配設しており、該昇降用駆動量検出手段352aは、前記制御部41aに接続している。
【0043】
さらに、前記施療機構3aは、図4と図5に示すように、該施療機構3a自体を前記背凭れ部11aに対して前後の方向に移動させるモータを備えた前後動用駆動部36aを有している。
【0044】
すなわち、前記施療機構3aに設けた前記施療子駆動部31aは、前記背凭れ部11aの表側(被施療者と接する側)に向けて進退移動可能となるよう構成されており、具体的には前記外部ケーシング32aの下部に左右幅方向に向けて伸延させた状態で配設した前記昇降軸35aの中央部に、該施療子駆動部31aのケーシングを構成する内部ケーシング312aを前後方向に向けて揺動自在に取付け、該昇降軸35aを揺動支点として該施療子駆動部31aが前後方向に揺動できるようにしている。
【0045】
また、前記外部ケーシング32aの前方視左側上部に、前記施療子駆動部31aを進退させるための前記前後動用駆動部36aを設け、該前後動用駆動部36aはギヤ(図示せず)とウォーム(図示せず)とからなる進退用ギアボックス部361aと噛合するとともに、該進退用ギアボックス部361aは、該外部ケーシング32aの上部に回動自在に配設する左右幅方向に伸延させた進退軸37aと噛合している。
【0046】
さらに、前記進退軸37aの中途部に左右一対の各進退用ピニオンギヤ371a・371aを取付けるとともに、該各進退用ピニオンギヤ371aと夫々噛合するよう、前記内部ケーシング312a上部に左右一対の円弧状ラック313a・313aを設けている。
【0047】
よって、前記前後動用駆動部36aの回転が、前記進退用ギアボックス部361a、進退軸37a、左右一対の各進退用ピニオンギヤ371aに順次伝達すると、左右一対の各該進退用ピニオンギヤ371aは噛合している前記円弧状ラック313aを移動させるので、前記施療子駆動部31aは、前記昇降軸35aを揺動支点として前後方向に揺動して、前記施療子311a・311aが前後方向へ進退することになる。
【0048】
尚、前記進退軸37aには、前記前後動用駆動部36aによって該進退軸37aが駆動(回動)された量を検出するためのロータリーエンコーダからなる進退用駆動量検出手段372aを配設しており、該進退用駆動量検出手段372aは、前記制御部41aに接続している。
【0049】
このように、本実施例に係る椅子式マッサージ機1aは、前記制御部41aによって前記昇降用駆動量検出手段352aと前記進退用駆動量検出手段372aの夫々の駆動量を検出しながら、前記昇降用駆動部33aと前後動用駆動部36aを駆動させることができるので、前記施療子311aの位置をきめ細かく制御することができ、また該昇降用駆動部33aと前後動用駆動部36aの駆動を適宜組み合わせることによって、被施療者の体の肩、背部、腰等を多彩なモードでマッサージすることができる。
【0050】
例えば、前記施療子311a・311aが被施療者に当接しながら、前記昇降軸35aの駆動回転により前記施療機構3aが前記背凭れ部11aに沿って昇降移動する場合、ローリングマッサージを実施することになる。
【0051】
また、前記前後動用駆動部36aを駆動させる場合は、前記施療子311a・311aによる指圧マッサージが可能となる。
【0052】
これら上記の基本となる各作動を組み合わせることによって、被施療者の体の肩、背部、腰等を、多彩なモードでマッサージすることができ、しかも、前記施療子311a・311aの進退量を簡単な構成で従来よりも大きくすることができるので、マッサージ力を多段階に調整することが可能となっている。
【0053】
また、図6に示すように、本発明の椅子式マッサージ機1aは、被施療者の人体当接部の状態を検出するための被施療者状態の検出手段を備えている。
【0054】
すなわち、前記施療子311a・311aの進退量を該進退用駆動量検出手段372aにより検出する複数の進退量検出ポイントP・P・・を前記施療機構3aの昇降範囲において所定間隔毎に設けており、該進退量検出ポイントP・P・・毎に該施療機構3aを昇降させると共に前記施療子311aを被施療者へ向けて所定の押圧力になるまで移動させて、その最大進出量を進退用駆動量検出手段372aから検出するようにして被施療者の状態を継続的にスキャンする。
【0055】
このようにして、複数の前記各進退量検出ポイントP・P・・から検出された前記施療子311a・311aの各最大進出量に基づく、被施療者の側方向から見た背筋曲線(首部から腰部)の状態や肩位置、また被施療者のコリ度合などを検出するようにしている。尚、該背筋曲線を前記リモコン4aの液晶画面からなる前記表示部43aに表示してもよい。
【0056】
さらに、前記背凭れ部11aのリクライニング機構2aには、該背凭れ部11aの傾斜角度を検出するリクライニング角度検出センサ(図示せず)を設けて、前記肩位置の自動補正を可能としてもよく、例えば該リクライニング角度に応じた所定量の偏差を補正するようにすることができる。すなわち、実験的に得られた標準的な偏差を加えることができる。
【0057】
さらに、本発明の椅子式マッサージ機1aの前記施療子311a・311aについて、以下に詳しく説明する。
【0058】
図7に示すように前記施療子311a・311aは、人体当接部の硬度が各部で異なる円形の施療子ローラーで構成している。
【0059】
すなわち、一つの前記施療子311aにつき、当接感の「硬い」部分である硬部A、また当接感の「柔らかい」部分である柔部B、さらに当接感が「硬い」と「柔らかい」との中間の部分である中間部Cとなるよう3つの部分に分かれてなる。
【0060】
例えば、前記硬部A、前記柔部B及び前記中間部Cを、相互に連結し硬度が異なる複数の部材で構成することができる。適用できる部材の材質については特に種類を問わないが、軟質または硬質のゴムや樹脂などを使用するとともに、材質や密度を異ならせるなどして前記施療子311aの各部の硬度が異なるように形成できる。
【0061】
尚、前記施療子311aにおける硬度が異なる複数の部材を接続する方法として、例えば図12及び図13に示すような連結部Dを適用できる。図12の連結部Dとして、前記硬部A、前記柔部B及び前記中間部Cの相互に隣接する部分を係合するように形成しており、また、図13の連結部Dは、前記硬部A、前記柔部B及び前記中間部Cの各隣接間に介在する連結具を使用している。
【0062】
また、図7及び図9に示すように、前記施療子311aにおける人体当接部に所望する硬度の部分が向かうようにするため、硬度切替機構38aを設けている。
【0063】
前記硬度切替機構38aは、回転駆動力を発生するモータ381a及び該モータ381aの回転を調整する減速機382a、また、前記施療子311aの回転する軸となる施療子回転軸380aに駆動力を伝達するベルトドライブ部383aなどから構成している。
【0064】
さらに、図9に示すように、前記施療子回転軸380aの一端であるとともに施療子アーム311bの先端付近において、該施療子回転軸380aの回転した量を検出するためのロータリーエンコーダからなる施療子回転量検出手段384aを設けている。この施療子回転量検出手段384aにより、前記施療子アーム311bに対する前記施療子311aの角度を検出することを可能としている。
【0065】
よって、前記硬度切替機構38aにより、前記施療子311aの前記硬部A、前記柔部B、及び前記中間部Cのいずれかを任意に人体当接部に向かうよう切り替えることができるのである。
【0066】
この前記施療子311aにおける硬度の切替を任意に選択または実行することができるようにするため、図19に示すように、前記リモコン4aに「硬い」ボタン44a、「柔らかい」ボタン45a、及び「中間」ボタン46aを夫々配備している。
【0067】
これらの前記「硬い」ボタン44a、前記「柔らかい」ボタン45a、及び前記「中間」ボタン46aは、例えばマッサージ実行前のマッサージプログラムにおけるマッサージ力の選択設定や、マッサージ実行中における強制的なマッサージ力の切替などにおいて適宜使用することができる。
【0068】
図10に示すものは、前記施療子311aの硬度が各部で異なるようにする他の構成である。すなわち、前記硬部A、前記柔部B、及び前記中間部Cを夫々独立形成した小型の施療子ローラーである各施療子311a・311a・311aとして構成し、該各施療子311a・311a・311aは、回転板311c上において、前記施療子回転軸380aを中心にして等間隔に各々軸支されている。この構成も前述した図7及び図9の場合と同様、前記硬度切替機構38a及びリモコン4aにより硬度の切り替えができるようにしている。
【0069】
尚、図11は、図10に示す前記各施療子311a・311a・311aにおける人体当接部に対する接点が複数となる場合を示している。例えば、図示するように硬部Aの施療子311aと中間部Cの施療子311aとが共に当接する場合、「硬い」及び「中間」の当接感の、さらにその中間である「やや硬い」当接感をもたらし、柔部Bの施療子311aと中間部Cの施療子311aとが共に当接する場合、「柔らかい」及び「中間」の当接感の、さらにその中間である「やや柔らかい」当接感をもたらすことが可能となる。
【0070】
さらに、前記施療子311aの硬度が人体当接部の各部で異なるようにする他の構成として、図14乃至図16に示すような構成が考えられる。これらに共通する特徴は、少なくとも人体当接部に当接するローラー型の施療子311aの外周に同一の材質を使用しつつも各部で硬度を異ならせている点にある。
【0071】
すなわち、図14は、中空部E、リブ部F及び切欠部Gから形成する施療子311aであるが、中空部Eが全く存在しない前記硬部A、二つの中空部E・Eと一つのリブ部F及び二つの切欠部G・Gからなる前記柔部B、また三つの中空部E・E・E及び二つのリブ部F・Fがある前記中間部Cから構成している。特に、大きさの異なる複数の中空部Eを施療子311aに形成しているから、該施療子311aの硬度が各部で異なるようになっている。
【0072】
また、図15は、前記切欠部Gのみで硬度を異ならせた施療子311aを示しており、前記硬部Aとして切欠部Gを設けず、前記柔部Bとして切欠部Gを四つ設け、前記中間部Cとして切欠部Gを柔部Bよりも間隔を空けて三つ設けて構成している。このようにして、施療子311aの硬度が各部で異なるように、施療子311aに形成する切欠部Gの数を各部で異ならせている。
【0073】
さらに、図16は、相互に連結し硬度が異なる複数の部材である、弾質の外側当接部H、及び該外側当接部Hよりも硬質の内側芯部Iからなる施療子311aであり、半径方向における外側当接部H及び内側芯部Iの厚さの比率を、前記硬部Aでは約1:3、前記柔部Bでは約3:1、前記中間部Cでは、約1:1としている。
【0074】
このように、図14乃至図16に示す施療子311aの実施例は、該施療子311aを当接硬度において各部で異ならせつつも人体当接部に当接する外周に同一の材質を使用した構成としているから、部材の減少及び簡素な構造によりコスト低減を図ることができる。
【0075】
図17は、前記施療子311aにおける前記硬部A、前記柔部B及び前記中間部Cとして、外周形状を異ならせて形成したものを示している。すなわち、硬部Aとして複数の指圧子J・J・・を設け、柔部Bとして平坦面Kを設けてなる。中間部Cは普通のローラー外周形状としている。
【0076】
よって、図17に示す前記指圧子J・J・・は、点的に人体当接部を指圧して被施療者は前記中間部Cの場合よりも「硬い」当接感を感じ、一方、前記平坦面Kは面的に人体当接部を押圧して被施療者は前記中間部Cの場合よりも「柔らかい」当接感を感じることになる。
【0077】
尚、適宜において前記平坦面Kの面上に多数の凸状子L・L・・を設けてもよい。該凸状子L・L・・により、前記施療子311a・311aが揉み動作を実施する際、人体当接部を心地よく摺擦マッサージすることが可能となる。
【0078】
前述したように、本発明の椅子式マッサージ機1aは、被施療者の状態を検出するための被施療者状態の検出手段を備えているが、前記施療子311a・311aを被施療者状態の検出手段の検出値に基づいて、前記硬度切替機構38aにより硬度が異なる位置に切り替えるように構成できる。
【0079】
例えば、前記被施療者状態の検出手段により検出した被施療者の肩位置に前記施療子311a・311aが当接して施療する際、図8に示す如くその当接方向は下方となる。よって、被施療者の所望する前記硬部A、前記柔部B及び前記中間部Cのいずれかが下方になるよう前記硬度切替機構38aにより前記施療子311a・311aを回転して切り替えるよう制御できる。
【0080】
また、図18に示すように、前記被施療者状態の検出手段により検出した被施療者のコリ度合に応じて、前記施療子311a・311aの硬度を切り替えることも可能である。例えば、他よりもコリ具合が高い人体部位を施療する場合は、前記硬部Aが当接するようにし、コリ具合が低い人体部位の場合は、前記柔部Bが当接するように切り替えられる。
【0081】
尚、前述のように、前記被施療者状態の検出手段により被施療者の状態をスキャン検出するべく、前後動用駆動部36aにより前記進退量検出ポイントP・P・・毎に前記施療子311a・311aを人体当接部へ移動させる際、図20に示すように常時前記硬部Aが当接するよう前記硬度切替機構38aにより切り替えるようにしている。これにより進退量検出ポイントP・P・・毎の適正な検出値が得られるようになる。
【0082】
前述したように、本発明の椅子式マッサージ機は、前記背凭れ部11aのリクライニング機構2aに該背凭れ部11aの傾斜角度を検出する前記リクライニング角度検出センサ(図示せず)を設けているが、該リクライニング角度検出センサの検出値に基づいて、前記施療子311aを前記硬度切替機構38aにより硬度が異なる位置に切り替えるように構成してもよい。
【0083】
例えば、前記背凭れ部11aが起倒状態から倒伏状態へ変化する場合、前記施療子311a・311aから人体当接部への押圧力も変化して強くなる。この場合、施療子311a・311aの硬度が弱くなるよう、前記硬部Aから前記柔部Bまたは前記中間部Cに切り替えられ、或いは中間部Cから前記柔部Bに切り替えることができる。
【0084】
逆に、前記背凭れ部11aが倒伏状態から起倒状態へ変化する場合、前記施療子311a・311aからの押圧力は弱くなるので、前記柔部Bから前記硬部Aまたは前記中間部Cに切り替えられ、或いは、前記中間部Cから前記硬部Aに切り替えることができる。
【0085】
これまで、上記のように本発明を詳述してきたが、前記椅子式マッサージ機1aは、前記施療子311aを人体当接部の硬度が各部で異なる円形の施療子ローラーで構成したものとしているため、着座した被施療者の首部や背部、また腰部や臀部等において、人体当接部に対する施療子311aの当接部分に応じて被施療者が受ける当接感が異なるものとなり、単調でない異なるマッサージ感を楽しむことができるうえに、円形の施療子ローラーの各部において硬度を異ならせるだけの比較的簡素な構成なので、継続使用に係る耐久性、及び製造及びメンテナンスに係るコスト性に優れたものとなる。
【0086】
また、前記施療子311aは、人体当接部の状態を検出する検出手段により、硬度が異なる位置に切り替えるようにしたものとしているため、当接感が弱すぎてマッサージ不足をきたしたり、逆に当接感が強すぎて苦痛をもたらしたりすることを回避しつつ、常時適したマッサージを実施できる。
【0087】
さらに、前記施療子311aは、相互に連結し硬度が異なる複数の部材で構成したものとしているため、硬度が異なる部材の多種多様な組合せが可能となり、被施療者の用途に応じたマッサージを実施できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の椅子式マッサージ機の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の椅子式マッサージ機の一実施形態を示す使用状態図である。
【図3】本発明の椅子式マッサージ機における施療機構の昇降動の一実施形態を示す側面から見た断面説明図である。
【図4】本発明の椅子式マッサージ機における施療機構の一実施形態を示す斜視図である。
【図5】本発明の椅子式マッサージ機における施療機構の一実施形態を示す側面説明図である。
【図6】本発明の椅子式マッサージ機における被施療者状態の検出手段による検出の一実施形態を示す側面説明図である。
【図7】本発明の椅子式マッサージ機における施療子の一実施形態を示す側面説明図である。
【図8】本発明の椅子式マッサージ機における被施療者の肩を下方とする施療子の一実施形態を示す側面説明図である。
【図9】本発明の椅子式マッサージ機における施療子の一実施形態を示す上面説明図である。
【図10】本発明の椅子式マッサージ機における施療子を複数設けた一実施形態を示す側面説明図である。
【図11】本発明の椅子式マッサージ機における複数の当接する施療子の一実施形態を示す側面説明図である。
【図12】本発明の椅子式マッサージ機における施療子の一実施形態を示す側面図である。
【図13】本発明の椅子式マッサージ機における施療子の一実施形態を示す側面図である。
【図14】本発明の椅子式マッサージ機における施療子の一実施形態を示す斜視図である。
【図15】本発明の椅子式マッサージ機における施療子の一実施形態を示す平面図である。
【図16】本発明の椅子式マッサージ機における施療子の一実施形態を示す斜視図である。
【図17】本発明の椅子式マッサージ機における施療子の一実施形態を示す斜視図である。
【図18】本発明の椅子式マッサージ機の硬度切替機構による施療子の硬度切替に関する一実施形態を示す側面説明図である。
【図19】本発明の椅子式マッサージ機のリモコンの一実施形態を示す正面図である。
【図20】本発明の椅子式マッサージ機における被施療者状態の検出手段による検出の一実施形態を示す側面説明図である。
【図21】従来技術を示す説明図である。
【図22】従来技術を示す説明図である。
【符号の説明】
【0089】
1a 椅子式マッサージ機
11a 背凭れ部
111a ガイドレール
12a 座部
13a 足載せ部
14a 肘掛け部
2a リクライニング機構
3a 施療機構
31a 施療子駆動部
310a 揉み用駆動部
310b 叩き用駆動部
311a 施療子
311b 施療子アーム
311c 回転板
312a 内部ケーシング
313a 円弧状ラック
32a 外部ケーシング
33a 昇降用駆動部
331a 昇降用ギアボックス部
34a ガイド軸
341a 回転輪
35a 昇降軸
351a 昇降用ピニオンギヤ
352a 昇降用駆動量検出手段
36a 前後動用駆動部
361a 進退用ギアボックス部
37a 進退軸
371a 進退用ピニオンギヤ
372a 進退用駆動量検出手段
38a 硬度切替機構
380a 施療子回転軸
381a モータ
382a 減速機
383a ベルトドライブ部
384a 施療子回転量検出手段
4a リモコン
41a 制御部
42a 操作部
43a 表示部
44a 「硬い」ボタン
45a 「柔らかい」ボタン
46a 「中間」ボタン
A 硬部
B 柔部
C 中間部
D 連結部
E 中空部
F リブ部
G 切欠部
H 外側当接部
I 内側芯部
J 指圧子
K 平坦面
L 凸状子
P 進退量検出ポイント


【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部と一対の施療子を備えた背凭れ部とを設けたマッサージ機において、施療子を人体当接部の硬度が各部で異なる円形の施療子ローラーで構成したことを特徴とする椅子式マッサージ機。
【請求項2】
前記施療子を、人体当接部の状態を検出する検出手段の検出値に基づいて、硬度切替機構により硬度が異なる位置に切り替えるようにしたことを特徴とする請求項1記載の椅子式マッサージ機。
【請求項3】
前記施療子を、相互に連結し硬度が異なる複数の部材で構成したことを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか記載の椅子式マッサージ機。
【請求項4】
前記施療子の硬度が各部で異なるように、大きさの異なる複数の中空部を形成したことを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか記載の椅子式マッサージ機。
【請求項5】
前記施療子の硬度が各部で異なるように、施療子に形成する切欠部の数を各部で異ならせたことを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか記載の椅子式マッサージ機。
【請求項6】
前記施療子の硬度が各部で異なるように、該施療子を弾質の外側当接部、及び該外側当接部よりも硬質の内側芯部から形成するとともに、半径方向における外側当接部及び内側芯部の厚さの比率を各部で異ならせたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか記載の椅子式マッサージ機。
【請求項7】
前記施療子の硬度が各部で異なるように、該施療子の外周形状を各部で異ならせたものとしたことを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか記載の椅子式マッサージ機。
【請求項8】
前記背凭れ部にリクライニング機構を設けるとともに、リクライニング角度を検出するリクライニング角度検出センサを備え、該リクライニング角度検出センサの検出値に基づいて、前記施療子を前記硬度切替機構により硬度が異なる位置に切り替えるように構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか記載の椅子式マッサージ機。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2010−99202(P2010−99202A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272534(P2008−272534)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000136491)株式会社フジ医療器 (137)
【Fターム(参考)】