説明

椅子自動設定装置

【課題】 寺院本堂等で営まれる宗教儀式では、従来より参加者は畳を敷いた床に正座してきたが、高齢化が進み、生活習慣も変化したため、座るのは苦痛、困難という人が増え、畳敷の儀式場にも椅子席設置が必要不可欠となった。このため本堂の片隅が椅子置場になり、この椅子を各々が運んで並べ使用して戻すが、その度に畳を傷付ける。かかる宗教施設の尊厳を大きく損う事態は、今後益々増えると予想され、対策が必要である。
【解決手段】椅子自動設定装置を仏堂等畳敷広間に設置する。折りたたみ椅子を搭載した枠台を畳下床組に取り付け、電動装置による回転動よって椅子を床上に垂直に立上げて、手動にて開いて使用し、用済み後は元通り畳下に格納する。枠台上の畳は既存同等の表を使用するが、下地板は分割して折りたたみ可能とし、椅子の起伏と連動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畳敷き本堂などの椅子自動設定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従前は椅子を本堂片隅に積み重ねておき、使用する際にこの椅子を畳の上に並べ信者らがこの椅子に座っていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
仏教寺院の本堂、客殿等で行う儀式は、畳を敷いた床に正座するものとされてきたが、高齢者が増え、生活習慣も洋式化した現在、座ることが苦痛もしくは困難という人が増え、参列者の1/3が椅子席を希望するとも言われ、椅子席は儀式場に必要不可欠のものとなっている。椅子の収納庫を設けたくても、費用がかかることであり、本堂隅部が仮の椅子置場とされている。儀式のたびに、信者らが自分で運んで椅子を並べて使い、戻して退場するという、変則的なしきたりが、定着しつつあり、杖が必要な老齢者、身障者は困惑している。また 乱雑に積置かれた椅子は仏堂の尊厳を損なうものでもある。仏堂で使う椅子について、現状の改善を図ること、これが第一の課題である。
【0004】
前記の事態を軽減しようと、置場を広くとらない重ね積み式椅子,なるべく小型で軽い椅子、畳に脚跡を残さず傷つけない工夫をした椅子などが使われている。畳の上に椅子を置いて腰掛ければ、当然のことすぐ表面が凹んで傷付くと諦めず、椅子を使っても畳を傷めない策を考える、これが第二の課題である。
【0005】
椅子格納庫を建設するために、役所へ建築確認申請書を出すと、それだけでなく既存木造建物の改修を指導されることが多くて、工事費が嵩む。床の畳下空間を利用して収納すれば確認申請提出しないため、改修指導もない。椅子設置箇所以外は畳も床組みも取り替えない。即ち椅子を設定する装置以外の工事は最小限にとどめて、新しい手法を開発して出費を押さえる、これが第三の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本堂の畳と木造床組の一部をを改造し、折りたたみ椅子を格納する場所とする。
【0007】
畳一帖大の椅子設定用鉄枠台を木造床組に組込む。この枠台に、折りたたみ椅子の支柱を固定した回転軸を、回転自在に取付ける。
【0008】
回転動装置によって前記回転軸を90度回転し、折りたたみ椅子を床に垂直に立上げる。手動にて椅子座と背もたれを出して使用し、用済み後は元通りたたみ、逆回転して床組内に収納する。
【0009】
寺院本堂の外陣と呼ぶ広間などでは、畳は正面仏像に向かって横方向に敷き並べることが通例であるから、枠台を畳の割付に合わせて設置すると、椅子席は自ずと横に整然と並び、前後間隔約90cmとなる。必要に応じて複数台を設置する。
【0010】
枠台の上に敷く畳は、既存と同等の畳表、畳へりを用いて薄く軽量に製作する。畳下の床板は鉄板製とし、枠台と丁番にて回転自在に取付けることにより、椅子支柱の回転立上がりに押されて起立し、逆回転倒れに引かれて元通り水平に戻る。
【0011】
前記した回転動装置の操作は、管理者が責任もって行い、壁に設けたスイッチ操作盤は施錠しておく。椅子座と背もたれの上げ下げは手動であり、椅子使用者が行ってもよい。
【0012】
椅子座の大きさは40cm×35cm、高さは40cm程度として、一つの枠台に前列3脚、後列3脚、計6脚を回転軸に固定するが、これは、椅子座の巾を狭めて数を増す、もしくは席を区切らない長椅子とするも可である。
【0013】
【発明の効果】
【0014】
椅子自動設定装置を実施することによって下記の利点が得られる。
・畳床組内に椅子を格納するので、椅子格納庫新設と比較して、工事費が格段に安い。
・椅子を必要とするたびに搬入して並べ、退出時に搬出する労力が不要。
・椅子荷重が足元に集中して、畳が凹んだり傷付ける原因となるが、その心配がない。
・椅子移動時に壁や建具を破損することがないため、それら修理の費用不要。
・椅子を取付ける枠台は畳一帖の大きさであり、それ以外の畳や床組に手をつけないため、余分な費用がかからない。
・邪魔な椅子がないために、掃除し易く、隅部でも埃が溜まらない。
・椅子が乱雑に放置されないため、仏堂室内はすっきりして、失っていた尊厳さを取戻すことができる。
【0015】
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1a】 椅子自動設定装置を床組内に設置した状態を示す斜視図(点線は畳割りを示す)
【図1b】 椅子を収納し、畳敷き広間とした状態を示す斜視図
【図1c】 椅子を上昇させた状態を示す斜視図
【図1d】 椅子座と背もたれを設置した状態を示す斜視図
【図2】 間口7間本堂に椅子を配置した一例を示す平面図
【図3a】 椅子を床組内に収納した状態を示す断面図
【図3b】 椅子を立上げた状態を示す断面図
【図3c】 椅子座と背もたれを起こした状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図3に基づいて説明する。
【0018】
図においては、
図1aは、枠台1に、折りたたみ椅子2を各々三脚固定した回転軸3イと3ロを取付けた状態。畳10の下の枠台1と回転動装置設置枠15を据付け、電動モーター20の回転をギヤー21A、B、Cを介して回転軸3イ、3ロに固定した腕木22を押すことにより回転動させる。回転軸3イは前方に、回転軸3ロは後方に90度回転させ、支柱4を立上らせるようになっている。
図1bは、折りたたみ椅子2及び回転動装置20,21,22を格納し、畳敷き広間とした状態である。この畳8と畳10は、既存の畳7と同等の畳表、畳へり11を用いて製造するので、見比べても違和感は生じない。
図1cは、折りたたみ椅子2の支柱4を床面に垂直に立ち上げた状態。畳8は支柱4に押上げられて椅子座5下に起立し、畳9は突起ピン16によって畳7と同レベルにまで押上げられている。
図1dは 背もたれ6をせり上げ、椅子座5を回転して水平にした状態である。
図2は、間口七間の畳敷き本堂に,椅子2を48脚設定した平面図。
図3aは、床組内に折りたたみ椅子2を収納した状態。寺院本堂等の一般的な木造床組みに於いては、畳7と床板12と根太13を取除くと、15cm程の空間19が生じる。このスペースに枠台1を据付ける。枠台1は大きさ畳一帖、厚さ15cmであり、畳8と,折りたたみ椅子2と、畳9とが回転動可能にして取付けてある。回転動を伝達するために、枠台1の横部に、回転動装置取付け枠15を接続する。枠上部は、たたみ10で覆う。
図3bは、椅子支柱4を立上げた状態。枠台1の上にある畳8は、A・B・C三つに分割して製作し、丁番17により、枠台1と 回転自在に繋いでいる。そのため畳Aは支柱4の回転力により押上げられて起立し、丁番17にて連結される畳Bと畳Cは中央にて折れるが、各々椅子座5下に立つ。折りたたみ椅子2の下に収納されている畳9は、回転軸3に付けた複数箇所の突起ピン16の回転力により、持上げられて、既存畳7と同じ高さまで上昇する。
図3cは、前図3bの状態から、手動にて背もたれ6をせり上げ、椅子座5を回転して水平にした状態。磁石18は支柱4に貼付けて、畳8下地鉄板が吸引力によって倒れない役目をする。椅子座は手動で起こし、ストッパーピンに当たって回転が止まる構造、背もたれは背もたれストッパーに当たって一定角度に止まる構造になっているが、斜材を加えてピン接合して三角形に固める構造でもよい。
【0019】
回転動装置の一実施例として、電動モーター20について、モーターの回転をギヤーA、B、Cを介して回転軸3を回転させ、支柱4を立上がらせるようになっている。回転動装置として、電動モーターで説明したが、これに限らず油圧ピストンで回転軸に固定され腕木22を押すことにより動かすことも出来る。
【0020】
回転動装置取付け枠15を設置する場所は、枠台1の下部としてもよい。
【符号の説明】
【0021】
1 枠台 =椅子設定用鉄枠台の略記 大きさ畳一帖大 厚さ15cm
2 折りたたみ椅子
3 回転軸
4 支柱
5 椅子座
6 背もたれ
7 畳(既存 厚さ50〜55mm)
8 畳(椅子設置の上部 厚さ 畳15+下地鉄板1+クッション材6=22mm)
9 畳(椅子設置の下部 厚さ 畳15+下地板15=30mm)
10 畳(回転動装置の上部 厚さ 畳15+下地鉄板1+クッション材6=22mm)
11 畳へり
12 床板
13 根太
14 床束(金属又は木材)
15 回転動装置取付け枠
16 回転軸に固定した突起ピン
17 丁番
18 磁石
19 15cmの空間(一般の寺院本堂では、畳、床板、根太を設けるため15cm程度 必要)
20 電動モーター
21 ギヤーA、B、C
22 腕木

【特許請求の範囲】
【請求項1】
畳を敷いた床組内に取付けた椅子設定用鉄枠台(以下枠台と略記)に、複数個の折たたみ椅子を固定した軸棒を回転可能に組込み、回転動装置により90度回転動して椅子を床上に直角に立ち上げ、手動にて開いて使用した後は、元に復することを特徴とする椅子自動設定装置。
【請求項2】
前記枠台は、巾3尺長さ6尺、厚さ15cm程度の大きさで、かつ既存の畳と床板と床根太とを除いた空間内に容易に取付け可能な形状であることを特徴とする請求項1の椅子自動設定装置。
【請求項3】
前記枠台上面を覆う畳は、既存同等の畳表及び畳へり材を用いて製造し、畳下地板を複数個に分割して丁番にて開閉自在に取付けて、椅子支柱につれて立上がって止まり、椅子格納時に複することを特徴とする請求項1の椅子自動設定装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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