説明

椅子

【課題】簡素な構成でありながら着座者の姿勢に応じて座が最適な形状をなし得る椅子を提供する。
【解決手段】椅子1は、同図に示すように、後部24が下方に沈み込み可能なように上下方向に変位可能に構成された座2と、この座2の前端部を例えば前後方向に傾動しないように固定することにより支持している支持体3と、座2に支持された背凭れ4と、座2と背凭れ4に亘って設けられた肘掛け5とを具備してなるものである。また椅子1は、前記座2の下方に、前記座2の後部24の上下方向の変位に応じて座2の下面に接する位置が変化することにより座2の変形形状を規制する規制面6を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座者の着座により座が動作可能な椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、椅子においては着座者の姿勢に応じて座の位置や形状を変化させるべくリンク機構や、複数のスプリング等を使用した椅子が種々提案されている。そして近年、座に用い得る素材の多様化も相まって、椅子を構成する部品点数を削減し得る構成として、座自体が弾性変形し得るように構成された椅子が着目されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
当該特許文献記載の椅子は、着座者の姿勢に応じた姿勢並びに傾動反力を生じさせるために、座、具体的には椅子本体を構成する座部自体に弾性変形し得る素材を用いることに加え、座部の後部を伸縮による弾性変形が可能に構成されたガススプリングである補助弾性体に支持させ、これに座部の動作下端を決定させている。これにより、座部すなわち座の弾性変形と補助弾性体の弾性変形とを協働させ、着座者の姿勢に応じた適度な座の変形及び反力の付与を可能なものとしている。
【0004】
しかし着座者それぞれの着座姿勢の変更に対し、着座者の所望する座の姿勢又は形状に対応させることを厳密に考えると、着座者の体重移動による各姿勢により求められる座の姿勢又は形状は直線的に変化するわけではない。よって、これら座の姿勢又は形状を着座者の各姿勢に正確に対応させようとして直線的な伸縮のみを行なう上記特許文献の如く補助弾性体を適用すると、これらを複数設けたり、これらそれぞれの弾性力を適宜調整したりしなければならない。その結果、椅子の部品点数を増大させたり、構造を複雑なものとしたりしてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−342377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した点に着目したものであり、簡素な構成でありながら着座者の姿勢に応じて座が最適な形状をなし得る椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0008】
すなわち本発明に係る椅子は、後部が少なくとも上下方向に変位し得る自由端であり着座者の体重移動によって前記後部が上下方向に変位するとともに変形可能に構成された座と、この座を支持する支持体とを備えた椅子であって、前記座の下方に、前記座の後部の上下方向の変位に応じて座の下面に接する位置が変化することにより座の変形形状を規制する規制面を有することを特徴とする。
【0009】
ここで、「座の下面に接する位置が変化する」とは、常に規制面が座の下面の何れかの部位に接したもののみに限定されない。すなわち、座部の変位する動作の途中で初めて座の下面に接するものも含む概念である。また勿論、座の下面に接する位置のみが変化するもののみならず、下面に接する範囲すなわち面積が変化するという意味をも含む概念である。
【0010】
このようなものであれば、着座者の体重移動によって規制面が座の下面に接する位置を変化させることにより、座の上下方向の変位する度合いに応じて規制面により座の形状が変化する。その結果、着座者の体重移動における各姿勢に応じて座の形状を設定することができるので、着座者は、体重移動におけるそれぞれの姿勢に対し最適に形状設定された座に着座できるようになる。その結果、簡素な構成でありながら着座者の姿勢に応じて最適な形状に座が変形し得る椅子を実現することが可能となる。
【0011】
また、変形可能な前記座を安定して変位させ得る構成としては、前記座の前端を前記支持体に固定するようにしておくことが望ましい。
【0012】
さらに、前記規制面を支持体に設けるとともに、前記座の前端から連続するように形成したものとすれば、着座者の体重移動により連続的に規制面と座の下面との接触位置が変化させてスムーズに座を変形させることができる。
【0013】
加えて、座が、弾性変形可能な板状をなす合成樹脂製のものとすれば、規制面と座の下面との接触位置の変化により座の形状のみならず、座の弾性による反力も同時に設定し得る。
【0014】
そして着座者が快適な前後方向の体重移動を行なうための規制面の具体的な形状として、規制面の少なくとも一部を前後方向に上向きに膨出した凸状面とした態様を挙げることができる。
【0015】
加えて、規制面の少なくとも一部を左右方向に上向きに膨出した凸状面とすれば、着座者は左右方向の体重移動もスムーズに行ない得る。
【0016】
一般に着座者の前後方向への体重移動はその大腿部、腰部を動かすことによって体の形状すなわち姿勢を変更する場合が多い反面、左右方向への体重移動は大腿部や腰部が成す角度はあまり変化せずに単に体の向きを変更するような場合が多い。このことから鑑みれば、座を前後方向の変形よりも左右方向の変形が起こり難いように構成しておけば、左右の体重移動の際の座の変形によって着座者の臀部等に違和感を感じさせずに済む。
【0017】
そして座に支持された背凭れの好適な一例としては、背凭れ及び座によって背座一体のシェルを構成するものとしたものが挙げられる。このようなものであれば、座の後端は背と連続することで自ずと他の部位よりも剛性が高くなる。
【0018】
特に座の変形や弾性反発力を快適なものとしつつ着座者の上体にも好適に追随し得るシェルを構成する一例として、このシェルを弾性樹脂とエストラマーの積層構造とした態様を挙げることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡素な構成でありながら着座者の姿勢に応じて最適な形状に座が変形し得る椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る椅子の側面図。
【図2】同要部を示す分解斜視図。
【図3】同要部を示す分解した平面図。
【図4】同要部を示す分解した背面図。
【図5】図1に対応した動作説明図。
【図6】図4に対応した作用説明図。
【図7】同実施形態の変形例1に係る側面図。
【図8】同変形例の要部を示す斜視図。
【図9】同実施形態の変形例2を示す側面図。
【図10】同実施形態の変形例3を示す側面図。
【図11】同実施形態の変形例4を示す外観図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0022】
本実施形態に係る椅子1は、図1乃至6に示すように、本発明を事務用回転椅子に適用した場合のものである。この椅子1は、同図に示すように、後部24が下方に沈み込み可能なように上下方向に変位可能に構成された座2と、この座2の前端部を例えば前後方向に傾動しないように固定することにより支持している支持体3と、座2に支持された背凭れ4と、座2と背凭れ4に亘って設けられた肘掛け5とを具備してなるものである。また本実施形態では、上記の座2、背凭れ4、肘掛け5を設ける一例として、これらを一体に形成することにより単一のシェルSを構成した態様を開示している。
【0023】
ここで、本実施形態に係る椅子1は、前記座2の下方に、前記座2の後部24の上下方向の変位に応じて座2の下面2aに接する位置が変化することにより座2の変形形状を規制する規制面6を有することを特徴とする。
【0024】
以下、椅子1の各構成要素について説明する。本実施形態に係る椅子1は、支持体3の上側に、座2、背凭れ4及び肘掛け5とが一体に成形された弾性変形可能なシェルSを取り付けた基本構成をなしている。
【0025】
支持体3は、図1乃至6に示すように、脚羽根31と、この脚羽根31から立設された脚支柱32と、この脚支柱32の上端に支持され前記脚支柱72の軸心まわりに旋回可能な支基34とを備えたものである。前記脚支柱33は、ガススプリングにより構成されており、このガススプリングのシリンダ軸33の上端に前記支基34が固定された構成としている。支基34は前端から後端に向かって漸次幅狭となる平面視台形状をなすもので、その前端には座2を取り付ける座取付面35を形成するとともにこの座取付面35から後方に、本発明に係る規制面6を形成している。この規制面6の具体的な形状については後述する。
【0026】
シェルSは、座2及び背凭れ4を連続させた構成とするとともに、座2の両側及び背凭れ4の両側に湾曲形状をなす肘掛け5を架け設けた構成としている。そして本実施形態では、このシェルSの素材としてガラス繊維等の繊維で強度を調整した弾性樹脂とゴムのような弾性を有する樹脂であるエストラマーとの積層構造をなす素材を適用している。これによりこのシェルSは、部分的に厚みを調整することにより所要の強度を得るとともに、弾性樹脂のみの構成に比べ弾性反力が抑えられたものとなっている。
【0027】
座2は、図1ないし図5に示すように、上述した合成樹脂等により作られた弾性変形可能な板状のもので、シェルSを構成する素材の厚みを適宜設定することにより、座2は後傾反力を出すため適切な剛性を確保されている。そして座2は、前方から、前嵌合部21と、密着部22と、中間部23と、自由端たる後部24とをそれぞれ有している。前嵌合部21は側面視U字状をなしており、支持体3により支持されている。本実施形態では、前嵌合部21は支基34の前端に設けられた座取付面35に主に弾性変形を利用して嵌め込むことにより取り付けられる。また前嵌合部21と座取付部35との取り付けは、上記の嵌め込みによる取り付けに加え、ねじ止め等の適宜の止着方法を併せて行なっても良い。なお斯かる構成により廃棄時には支基34とシェルSとの分離も容易に行ない得るので、この椅子1は、それぞれの分別廃棄も容易なものとなっている。密着部22は、実際には着座者の大腿部あたりを支持する水平からやや前方に傾斜している領域を指し、本実施形態ではこの部分が支基34に対して常に密着している。中間部23は、主に座2の前後方向中央に位置する領域であり、着座者の後方への体重移動によって適宜変形するものである。また本実施形態では、この中間部23の両側に、肘掛け5を一体的に連続させている。後部24は、沈み込む前の初期状態(p)と最も沈み込んだ沈下状態(q)との間で沈み込み動作を行ない得るようになっており、初期状態(p)では下方に支基34との間の空間が形成されることにより、自由端となっている。すなわち、後部24は、初期状態(p)において支持体3の上面と離間しており、座2に作用する荷重に応じて座2の弾性変形を利用して適宜沈み込むようになっている。また本実施形態では、この後部24から上方に背凭れ4が連続して設けられている。換言すれば、この後部24が専ら背凭れ4を支持している。なお、図1では、初期状態(p)を実線で示すとともに、沈下状態(q)を二点鎖線で示している。
【0028】
背凭れ4は、下方が座2の後部24に連続することにより座2とともに一体に成形されたものである。この背凭れ4は、座2との接続部分である厚肉接続部43と、この厚肉接続部43の上方に連続して着座者の腰部を主に支持するための腰支持部42と、この腰支持部42の上方に連続して着者者の状態を支持するための薄肉上部41とを有している。厚肉支持部は、シェルSを構成する素材を厚肉に形成することにより他の部位よりも弾性変形を行ない難く構成している。腰支持部42は、平面視で中央を後方に凹ませた形状として着座者の腰部を包み込むように支持するため、背凭れ4及び座2すなわちシェルSが左右に傾いた際にも着座者を安定して支持できるようになっている。併せて腰支持部42は、その両端から肘掛け5を立ち上がらせている。これにより本実施形態では、肘掛け5が両側から背凭れ4及び座2に対して架け設けられた座2の後部24から背凭れ4の腰支持部42に亘るシェルSの一部分は必然的に強度が高くなり着座者の臀部から腰部を安定して支持できるようにしている。これにより、着座者は後傾することにより座2の後部24が沈下状態(q)にあっても、左右に傾いた状態であっても、臀部、腰部が安定して支持される事による安心感を得ることができる。薄肉上部41を設けることにより、腰から上は薄く柔らかく設定して、着座者の上体を支持しつつ、且つ、上体の動作を過度に妨げないようにしている。
【0029】
肘掛け5は、背凭れ4及び座2に一体に連続して側面視ループ形状を構成し得るものである。これにより、背凭れ4及び座2の接続部分付近における強度を担保している。またこの肘掛け5は、本実施形態ではシェルSの一部として、座2及び背凭れ4と一体に成形されたものとしている。しかし勿論、背凭れ4は背凭れ4及び座2に対し一体に成形される態様のみならず、背座2一体成形のシェルSに対して湾曲形状の部材を後付けすることによって肘掛け5を設けたものとしても良い。
【0030】
しかして本実施形態の椅子1は、座2の下方である支基34の上面に、上述した規制面6、すなわち、座2の後部24の上下方向の変位に応じて座2の下面2aに接する位置が変化することにより座2の変形形状を規制する規制面6を有することを特徴とする。
【0031】
以下、支基34の上面に形成された規制面6の形状について主に詳述する。
【0032】
規制面6は、前記規制面6を支基34の前端にある座取付面35から連続するように形成したものである。この規制面6は、本実施形態ではおもに前向けに若干傾斜してなる前領域61と、この前領域61に連続し、後方に緩く傾斜している中領域62と、後端に向かってやや大きく傾斜する後領域63とを主に有している。そして本実施形態では前領域を座2の下面2aに密着させた密着面6aとするとともに、中領域62及び後領域63には、前後方向に上向きに膨出した曲面である前後凸面6bを形成することにより、着座者の前後の体重移動に応じた座2の変形を成し得るようにしている。また併せて中領域62及び後領域63には、左右方向にも上向きに湾曲した曲面である左右凸面6cが併せて形成されることにより、この左右凸面6cの形状に合わせて座2の主に中間部23及び後部24を左右に傾けて変形した姿勢も取り得るようになっている。
【0033】
以下、本実施形態の椅子1において、着座者の体重移動によって起こる座2の変形について説明する。
【0034】
まず、着座者の前後方向の体重移動により、座2の後部24が図1に示す初期状態(p)から同図に示す沈下状態(q)へとなるべく座2が変形する。そもそも着座者の体重は初期状態(p)においても中間部23から後部24に掛けて多く係っているので、前後方向の体重移動により速やかに変形する。具体的には、座2の下面2aは前後凸面の湾曲度合いに応じて規制面6への接触面積を徐々に増しながら変形していく。そして図示の沈下状態(q)の近傍では、前後凸面は中領域62よりも後領域63における傾斜度合いが大きいので、座2の後部24は大きく沈下し、背凭れ4は大きく後傾する。また同時にこの時、背凭れ4では厚肉湾曲部の変形と肘掛け5を接続している腰支持部42の変形よりも薄肉上部41の変形が大きくなる。このため、係る場合には腰支持部42の突出が相対的に大きくなるような変形となる。
【0035】
そして本実施形態では図6に示すように、左右凸面6cを形成することにより、左右方向、体重で傾けることも可能となっている。同図では、後領域63に設けた左右凸面6cの曲率が大きく構成されているので、後部24を沈下上体としたときに着座者が横方向に体重を預けると、腰支持部42及び一方の肘掛け5が着座者の体重を受け、それに伴い座2の下面2aが左右凸面6cの湾曲形状に沿って大きく傾けることができる。特に本実施形態では、この肘掛け5を設けておくことにより、着座者は何れか一方の肘掛け5に掴まるか或いは凭れながら、座2の上に安定した状態を維持しつつ左右に体重移動ができるので、体重移動の際に安定感並びに安心感を得ることができる。
【0036】
以上のような構成とすることにより、本実施形態に係る椅子1は、着座者の体重移動によって規制面6が座2の下面2aに接する位置を変化させることにより、座2の上下方向の変位する度合いに応じて規制面6により座2の形状が変化する結果、着座者の体重移動における各姿勢に応じて座2の形状を設定することができるので、着座者は、体重移動におけるそれぞれの姿勢に対し最適に形状設定された座2に着座2できるようになる。その結果、簡素な構成でありながら着座者の姿勢に応じて最適な形状に座2が変形し得る椅子1を実現することが可能となる。
【0037】
特に本実施形態では、規制面6が着座者の体重移動に応じて座2を漸次変形させてゆくものであるため、図5に示すような着座者の後方への体重移動の際にはシェルつまり座が前部から後方へ向かって、図6に示すような左右の体重移動の際には座が左右に向かって徐々に変形してゆく。このことは、規制面6を有さずに座2の前端のみを片持ちにより支持するような従来のものに比べて変形部分が局所的に集中するということが無く、全体的に大きな変形をさせても各部分は小さな変形が連続してゆくものであるため局所的に無理な変形が起こらない。つまり、繰り返しシェルS、座2を変形させても疲労等による破壊されるということが起こり難い。すなわち、斯かる構成によれば耐久性の高い物とすることができ、結果として製品寿命の長い椅子を提供し得る。
【0038】
また、安定して座2を変位させ得るために本実施形態では、座2の前端前嵌合部21として支持体3に固定するようにしている。
【0039】
さらに本実施形態では規制面6を支持体3に設けるとともに、この規制面6を座2の前端から連続するように形成しているので、着座者の体重移動により連続的に規制面6と座2の下面2aとの接触位置を変化させてスムーズに座2を変形させ得るものとなっている。
【0040】
加えて本実施形態では座2を弾性変形可能な板状をなす合成樹脂製のものとしているので、規制面6と座2の下面2aとの接触位置の変化により座2の形状のみならず、座2の弾性による反力も同時に設定し得るものとなっている。
【0041】
そして着座者が快適な前後方向の体重移動を行なうための規制面6の具体的な形状として本実施形態では、前後方向に上向きに膨出した前後凸面を形成している。
【0042】
併せて本実施形態では、規制面6として左右方向に上向きに膨出した左右凸面6cを形成することにより、着座者は左右方向の体重移動もスムーズに行ない得る座2の変形を担保している。
【0043】
座2の後部24の変位がそのまま着座者の状態の姿勢に直結し易いように本実施形態では、具体的には座2と一体に形成されたシェルSを適用している。加えてこの構成により座2の背凭れ4との境界部分である座2の後部24は自ずと剛性が高くなるようになっている。しかも本実施形態では厚肉接続部41によりシェル2における他の部位よりも厚み寸法が大きく設定し、着座者の体重移動の際にも着座者に安心感を与えるに足るシェルSの動作を実現している。
【0044】
加えて本実施形態では、このシェルSを弾性樹脂とエストラマーの積層構造とした態様として、着座者に適度な弾性や質感を付与している。特に本実施形態ではこのシェルSの厚みをシェルSの部分によって適宜異なるよう設定することで、着座者を安定して支持すべき箇所と着座者の動作に追随し易い箇所とを適宜設け、着座者の快適な座り心地を実現している。
【0045】
<変形例1>
以下に、本実施形態の各変形例について説明する。なお、これら各変形例について、上記実施形態の構成要素に相当するものには同じ符号を付すとともに、その詳細な説明を適宜省略するものとする。
【0046】
図7及び図8に示す椅子1は、規制面6の中領域62を、平面状に切り欠いた切欠平面6dとしている。これにより、着座者の後傾動作における初期においては座2自体の弾性による変形のみとし、沈下状態(q)近傍において後領域63に設けた左右凸面6cで座2の変形を制御し得るものとしている。
【0047】
すなわち本実施形態に係る規制面6とは、着座者の体重移動に応じて常に徐々に下面2aに接する位置が異なる態様のみならず、所要の動作領域にのみ下面2aに接し、座2の変形を制御し得るものとしても良い。
【0048】
<変形例2>
また本変形例2に係る椅子1は、図9に示すように、規制面6の中領域62から後領域63にかけて複数の横架材64を突出させて設けることにより、座2の下面2aに対し間欠的に当接し得る間欠当接面6eを設けたものである。この間欠当接面6eにより、着座者は後傾動作の際には横架材64が座2の下面2aに当接する毎に着座者は座2から軽い振動を感じることができる。
【0049】
このようなものであっても、横架材64の配置や形状に応じて座2の変形を制御することが可能である。なお図示しないが、当該間欠当接面6eに対応するように座2の下面2aに別途凹凸等を設ければ、後傾すなわち後方への体重移動時や左右への体重移動時の座2を安定支持し得る。
【0050】
<変形例3>
本変形例3に係る椅子1は、図10に示すように、支基34の前端部に回動支持部36を設けると共に規制面6の前領域61及び中領域62を切欠平面6dとすることにより、後傾動作における前半の工程では座2自体の回動動作を行ない得る態様としたものである。係る座2の場合、回動支持部付近に荷重が集中する傾向にあるため、座2の前嵌合部21に連続する前部22及び中間部23は規制面6に密着せずに回動動作を行ない、沈下状態(q)でのみ規制面6が下面2aに接触し、左右凸面6cによる左右の体重移動に係る座2の変形を許容し得る構成である。
【0051】
すなわち本実施形態に係る椅子1は、座2が支持体3に支持されていれば、支持される態様はなんら限定されない。
【0052】
<変形例4>
本変形例4に係る椅子は、座2の下面2aに対し、左右方向に延びるリブ2rを突出させている。このリブ2rを前後方向に間隔を空けて複数設けることにより、前後方向の変形よりも、左右方向の変形が起こり難く構成したものである。これにより、着座者が左右方向に偏って体重を掛けた際、座2は左右凸面6c上で座2が左右方向に湾曲するように変形し、着座者の臀部等に予期せぬ突出感を与えるという不具合を有効に解消し、座2が左右方向に全体的にねじれ変形してゆくものとなっている。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0054】
例えば、上記実施形態では専ら座に支持された背凭れを適用した態様を開示したが、勿論、支持体に支持された、座とは別体の背凭れを備えたものとしても良い。
【0055】
そして本実施形態では何れも、凸状面の突出度合いを一方から他方向に行くに従い漸次強くした形状のみを開示したが、例えば規制面の後端付近で突出度合いが逆に小さくなるような左右凸状面を設けて最も後ろに体重移動した場合には逆に左右方向には安定するような規制面の形状としてもよい。このように、規制面の具体的な形状は前後左右の凸状面ともに、所望の座の変形形状を実現すべく適宜変更しても良い。また支持体の形状や背凭れや肘掛けの形状などの具体的な態様は上記実施形態のものに限定されることはなく、既存のものを含め、種々の態様のものを適用することができる。
【0056】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は着座者の着座により座が動作可能な椅子として利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1…椅子
2…座
2a座の下面(下面)
21…座の前端(前嵌合部)
24…後部、自由端(自由端)
3…支持体
4…背凭れ
43…境界部分(厚肉接続部)
6…規制面
6b…凸状面(前後凸面)
6c…凸状面(左右凸面)
S…シェル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後部が少なくとも上下方向に変位し得る自由端であり着座者の体重移動によって前記後部が上下方向に変位するとともに変形可能に構成された座と、この座を支持する支持体とを備えた椅子であって、
前記座の下方に、前記座の後部の上下方向の変位に応じて座の下面に接する位置が変化することにより座の変形形状を規制する規制面を有することを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記座の前端は前記支持体に固定されるものとしている請求項1記載の椅子。
【請求項3】
前記規制面を前記支持体に設けるとともに、前記規制面を前記座の前端から連続するように形成したものである請求項1又は2記載の椅子。
【請求項4】
前記座が、弾性変形可能な板状をなす合成樹脂製のものである請求項1、2又は3記載の椅子。
【請求項5】
前記規制面の少なくとも一部は前後方向に上向きに膨出した凸状面である請求項1、2、3又は4記載の椅子。
【請求項6】
前記規制面の少なくとも一部は左右方向に上向きに膨出した凸状面である請求項1、2、3、4又は5記載の椅子。
【請求項7】
前記座を、前後方向の変形よりも左右方向の変形が起こり難いように構成している請求項1、2、3、4、5または6記載の椅子。
【請求項8】
背凭れを有するものであり、この背凭れ及び前記座が背座一体のシェルを構成するものである請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の椅子。
【請求項9】
前記シェルは弾性樹脂とエストラマーの積層構造である請求項8記載の椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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