説明

植栽ルーバー、緑化装置および建造物

【課題】 植生に土を必要とする植物に対応可能であって、且つ、太陽から建造物への日射量を容易に調整可能な植栽ルーバーを提供する。
【解決手段】 建造物の壁面を緑化するための植栽ルーバー10において、開口容器状に形成された植栽用の植栽ヘッド11と、この植栽ヘッド11に取り付けられ、太陽から前記建造物への日射量の調整を行う調整体12とを含む。前記植栽ルーバー10が、開口容器状に形成された植栽ヘッド11を含むから、植生に土を必要とする植物に対応可能である。また、前記植栽ルーバー10が調整体12を含むから、日射量を容易に調節することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植栽ルーバー、緑化装置および建造物に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境の保全や建造物のデザイン性を考慮して、建造物の緑化が進んでいる。特に、都市部では、ヒートアイランド現象の緩和のために、ビルの屋上の緑化や壁面の緑化が推奨されている。また、緑化は、ビル壁面の断熱性を高め、冷暖房コストの低減にもつながる。ビルの屋上の緑化は、造園やビオトープ等により実施されており、ビルの屋上という特殊な場所ではあるものの、造園技術の延長で実施されている。一方、ビルの壁面の緑化は、植物を植生させる環境としては極めて厳しいため、専用の部材や装置を用いた緑化装置が開発されている。
【0003】
前記ビルの壁面用の緑化装置としては、例えば、角度調整可能なパネル型緑化ブラインドが提案されている(特許文献1参照)。前記緑化ブラインドは、板状のスラットに植物を保持可能な植栽基盤を設けたものであり、前記スラットにはコケが保持されている。これによれば、前記スラットの角度を変更することにより、太陽から前記ビルへの日射量(採光若しくは遮光)の調整を行うことが可能である。
【0004】
また、2本の支柱の間に、複数の羽根板が上下に隙間をあけて取り付けられたルーバーにおいて、前記羽根板が、開口容器状に形成され、その内部に植物が植えられた植栽ルーバーが提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−345330号公報
【特許文献2】特開2002−34347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載の緑化ブラインドは、植生に土を必要とする植物には対応していなかった。
【0006】
また、前記特許文献2に記載の植栽ルーバーでは、開口容器状の羽根板に土を入れた場合、これを傾けると、前記土がこぼれてしまうため、角度変更による日射量の調整は実質的に不可能である。したがって、この植栽ルーバーで日射量を調整するためには、前記植栽ルーバーを一旦外して、上下方向の隙間を広げて若しくは狭めて設置し直す必要があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、植生に土を必要とする植物に対応可能であって、且つ、太陽から建造物への日射量を容易に調整可能な植栽ルーバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の植栽ルーバーは、建造物の壁面を緑化するための植栽ルーバーであって、開口容器状に形成された植栽用の植栽ヘッドと、この植栽ヘッドに取り付けられ、太陽から前記建造物への日射量の調整を行う調整体とを含む植栽ルーバーである。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明の植栽ルーバーは、開口容器状に形成された植栽ヘッドを含むから、植生に土を必要とする植物に対応可能である。また、本発明の植栽ルーバーは、調整体を含むから、太陽から前記建造物への日射量を容易に調整することが可能である。すなわち、本発明の植栽ルーバーにおいて、例えば、前記調整体を水平に設けることで、太陽光を反射させ、前記建造物の窓から効率よく採光することができる。一方、本発明の植栽ルーバーにおいて、例えば、前記調整体を斜めにすることで、前記建造物の窓への日射を遮り、遮光することができる。これに加え、本発明の植栽ルーバーは、つぎのような効果も奏する。すなわち、本発明の植栽ルーバーによれば、前記調整体により緑化面積を増加させることができる。また、本発明の植栽ルーバーによれば、前記太陽光の調整と併せて、熱量(採熱若しくは遮熱)の調整も可能であり、且つ、植栽した植物の二酸化炭素の吸収により地球温暖化の防止に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の植栽ルーバーにおいて、前記植栽ヘッドと前記調整体の角度を調整する角度調整手段を設けることが好ましい。
【0011】
本発明の植栽ルーバーにおいて、前記植栽ヘッドと前記調整体とは、着脱可能であってもよい。
【0012】
本発明の植栽ルーバーにおいて、前記調整体の表面は、防汚被膜で被覆されていることが好ましい。これにより、前記調整体に、汚れ防止作用を持たせることができる。前記防汚被膜は、光による汚れの分解作用のある光触媒を含むことが好ましい。前記光触媒としては、例えば、酸化チタン等が挙げられる。前記調整体の表面を防汚被膜で被覆する方法としては、特に制限されないが、一般的には高温焼成法であるチタニアゾルを焼き付ける方法や、低温焼成法である接着剤としての塗布材料を利用するバインダ法等がある。また、最近では、接着剤も熱も使用しない水溶性酸化チタンコーティング剤が開発されており、これを前記調整体の表面に直接塗布することも可能である。
【0013】
つぎに、本発明の緑化装置は、植栽ルーバーと、これを支持する支持部材を有し、前記植栽ルーバーが、前記本発明の植栽ルーバーである緑化装置である。
【0014】
本発明の緑化装置において、さらに、支柱を有し、前記支柱に前記支持部材が取付け可能であってもよい。なお、本発明の緑化装置において、前記支柱は、建造物壁面に直接固定されてもよいし、建造物壁面から所定の距離をおいた地盤に埋設されてもよい。
【0015】
本発明の緑化装置において、前記支持部材は、これを建造物壁面に配置するための取付け面を有し、前記支持部材の取付け面が、前記支柱を介して前記建造物の壁面に配置されるものであることが好ましい。また、本発明の緑化装置は、前記支持部材の取付け面が、建造物の壁面に直接固定されるものであってもよい。さらに、本発明の緑化装置は、前記支持部材が、建造物の建築の際にその壁面に埋設され、前記支持部材の端部が、前記建造物壁面から突き出され、前記建造物壁面から突き出された支持部材の端部に本発明の植栽ルーバーが載置されるものであってもよい。なお、本発明の緑化装置は、これらの形態に限定されない。
【0016】
本発明の緑化装置において、前記植栽ヘッドに培養資材が装填され、前記培養資材に植物が植栽されていることが好ましい。
【0017】
本発明の緑化装置において、前記培養資材は、特に制限されず、例えば、黒土、真砂土等の自然土壌、無機質系、有機質系、有機無機混合系の人工軽量土壌等がある。これらのなかで、有機質系人工軽量土壌が好ましい。前記有機質系人工軽量土壌としては、例えば、マサキ・エンヴェック社製の商品名ルーフソイル等が挙げられる。
【0018】
本発明の緑化装置において、前記植物は、特に制限されないが、例えば、低木類、羊歯類、笹類、草本類、蔓植物、花物、コケ類、セダム類等がある。前記低木類としては、例えば、アセビ、センリョウ、ヤブコウジ、ヒメクチナシ、クサツゲ、オタフクナンテン、ロニセラニティダ、フィリフェラオーレア、ブルースター、ラインゴールド、ウィルトニー、ブルーカーペット、ヒメウツギ、ヒペリカムカリシナム、アベリア類等がある。前記羊歯類、笹類としては、例えば、オオザサ、コグマザサ、ベニシダ、タマシダ等がある、前記草本類としては、例えば、オオバジャノヒゲ、ツワブキ、フィリヤブラン、ヤブラン、タイム、リュウノヒゲ、リシマキア、コクリュウ、アジュガ、ユキノシタ等がある。前記蔓植物としては、例えば、オオイタビ、スイカズラ、テイカカズラ、ニシキテイカ、ハツユキカズラ、ビンカマジョール、ビンカミノール、ラミューム、ツルマサキ類、ヘデラ類等がある。前記花物としては、例えば、宿根バーベナ、サフィニア、ミンティア、ブルーデージー等がある。前記コケ類としては、例えば、スナゴケ、ハイゴケ、シノブゴケ等がある。前記セダム類としては、例えば、メキシコマンネン、ツルマンネン、キリンソウ、タイトゴメ等がある。これらのなかで、肥料、水等の散布等の観点からは、コケ類、セダム類が好ましく、美観、外観等の観点からは、蔓植物、花物が好ましい。
【0019】
つぎに、本発明の建造物は、緑化壁面を有する建造物であって、前記緑化壁面が、前記本発明の緑化装置によって緑化された建造物である。
【0020】
本発明の建造物の種類は、特に制限されず、例えば、ビルディング、道路建造物、橋、堤防、塀、タワー等である。
【0021】
つぎに、本発明の植栽ルーバー、緑化装置および建造物について、図面に基き例を挙げて説明する。なお、図1から図17において、同一部分には同一符号を付している。
【0022】
図1の断面図に、本発明の植栽ルーバーの一例の構成を示す。図示のとおり、この植栽ルーバー10は、開口容器状に形成された植栽ヘッド11と、2つの調整体12とを主要構成部材とする。前記植栽ヘッド11の断面形状は、略U字状であって上部が開口しており、その内部に培養資材および植物を入れることが可能である。なお、本発明において、前記植栽ヘッド11の形状は限定されず、その他の形状であってもよい。また、前記植栽ヘッド11の上部の両側外壁には、端部が断面略円形状に形成された突起部14が形成されている。一方、前記2つの調整体12は、それぞれ、大小二つの矩形状(板状)の羽根が、それぞれの端部で板状連結部によりコ状に連結されて一体化された構成であり、前記大きな羽根と前記板状連結部とが連結している部分には、断面略円形状に形成された凹部が形成されている。そして、前記植栽ヘッド11の突起部14の端部が、前記調整体12の凹部に回動可能な状態で嵌合することで、前記植栽ルーバー10が構成されている。前記2つの調整体12は、前記嵌合部により、それぞれ自由に角度を調整することができ、その角度は特に制限されないが、図1の拡大図Aに示す角度αが、例えば、30〜40°の範囲で調整することができる。この例では、前記勘合部が、前記植栽ヘッド11と前記調整体12との角度を調整する角度調整手段となっている。なお、図1に示す例では、2つの調整体12を植栽ヘッド11に取り付けているが、いずれか一方のみでもよい。また、本発明において、前記調整体12の形状は、特に制限されず、その他の形状であってもよい。
【0023】
本発明において、前記植栽ヘッド11の材質は、特に制限されず、例えば、アルミニウム、テラコッタ、鉄、ステンレス、塩化ビニル、繊維強化プラスチック(FRP)等が挙げられる。また、本発明において、前記植栽ヘッド11の大きさは、特に制限されず、適用される建造物の大きさや種類等により適宜決定される。例えば、図1の構成の植栽ヘッド11において、その長さは、例えば、1〜10mの範囲、好ましくは、3〜5mの範囲であり、その幅は、例えば、50〜200mmの範囲、好ましくは、100〜150mmの範囲であり、その深さは、例えば、30〜100mmの範囲であり、好ましくは、50〜60mmの範囲である。なお、後述のように、植栽ルーバー10が、取付け面を有する支持部材により支柱に固定される場合には、前記植栽ヘッド11の長さが、例えば、3m以下であれば、中央1本の支柱でも支持可能であり、例えば、5m以上であれば、3本以上の支柱で支持することが好ましい。
【0024】
本発明において、前記調整体12の材質は、例えば、アルミニウム、テラコッタ、鉄、ステンレス、塩化ビニル、FRP等が挙げられるが、例えば、採光を目的とする場合には、光の反射率が高い金属が好ましい。本発明において、前記調整体12の長さは、例えば、前記植栽ヘッド11の長さと同様とすることができる。前記調整体12の最大幅(図1の構成では、大きい方の羽根の幅)は、特に制限されず、例えば、50〜250mmの範囲であり、意匠性、遮光性等の観点からは、植栽ルーバー10を2つ以上間隔をおいて上下方向に配置した場合の前記間隔の略1/2であることが好ましい。
【0025】
つぎに、図2の断面図に、本発明の植栽ルーバーのその他の例の構成を示す。図示のように、この植栽ルーバー10は、前述のものと同様に、開口容器状に形成された植栽ヘッド11と、2つの調整体12とを主要構成部材とする。前記植栽ヘッド11の断面形状は、略U字状であって上部が開口しており、その内部に培養資材および植物を入れることが可能である。前記植栽ヘッド11の上部の両側外壁には、ビス留め用の突起部15が形成されている。一方、前記2つの調整体12は、それぞれ、大小二つの矩形状(板状)の羽根と、途中で屈曲した板状連結部とから構成されている。前記板状連結部の一端は、大きい方の羽根の端部から少し内部側に位置する部分と連結し、前記板状連結部の他端は、小さい方の羽根の端部と連結して、前記三者が一体化されている。また、前記大きい方の羽根において、前記板状連結部が連結している箇所よりも外側部分が、ビス留め用の領域である。そして、前記大きい方の羽根のビス留め領域と、前記植栽ヘッド11の突起部15とが重なった状態でビス13により連結されることで、前記植栽ヘッド11と前記2つの調整体12とが一体化されて植栽ルーバー10が構成されている。この例の植栽ルーバーは、前記調整体12を取り替えることで、前記調整体12の角度調整が可能である。例えば、図2に示す前記調整体12に代えて、図3の断面図に示すように、前記大きい方の羽根が、その途中から上方に跳ね上がった形状の調整体を、植栽ヘッド11に取り付けることで、前記調整体12の角度を変えることができる。すなわち、この例では、前記調整体12そのものが、前記植栽ヘッド11と前記調整体12との角度を調整する角度調整手段となっている。なお、図2に示す例では、前記ビス留め用の突起部15が、前記植栽ヘッド11の上部の両側側壁と略直角の角度となるように形成されているが、前記角度を変更し、前記突起部15を傾斜させることで、これに連結される前記調整体12を傾斜させてもよい。また、図2に示す例では、前記ビス留め用の突起部15が、前記植栽ヘッド11の上部の両側側壁にそれぞれ一つずつ形成されているが、前記両側側壁に、角度の異なる突起部15がそれぞれ複数形成されていてもよい。これにより、前記調整体12を連結する突起部15を変更することで、前記調整体12の角度を変えることができる。この場合には、前記ビス留め用の突起部15が、前記植栽ヘッド11と前記調整体12との角度を調整する角度調整手段となる。なお、本発明において、前記調整体12の角度を変えることなく、日射量を調整することも可能である。例えば、前記両側(左右)側壁の両突起部15を、上下にずらして(段違いに)形成すれば、前記両突起部15およびこれらに連結される調整体12が水平であっても、日射量の調整が可能である。
【0026】
また、前記調整体12の形状は、前述のものに制限されず、例えば、図4の断面図に示すように、小さい羽根を省略した形状であってもよい。図4(a)の断面図に示す調整体12は、図2の断面図に示す調整体12おいて、小さい方の羽根を省略した以外は、同じ構成である。図4(b)の断面図に示す調整体12は、図2の断面図に示す調整体12において、小さい方の羽根を省略したことに加え、大きい方の羽根が、その途中から上方に跳ね上がった形状となっている。
【0027】
つぎに、図5の断面図に、本発明の緑化装置の一例の構成を示す。図示のとおり、この緑化装置は、図2に示した植栽ルーバー10と、支持部材40とから構成される。支持部材40は、その断面形状が略L字状であり、L字における短い方の辺が、取付け面43となっており、長い方の辺に植栽ヘッド11がビスで固定され、これによって植栽ルーバー10が支持される。そして、図6の断面図に示すように、支持部材40の取付け面43は、建造物30の壁面に、直接、ビス42で固定されてもよいが、図7の断面図に示すように、建造物壁面(図示せず)に配置された支柱20を介して建造物壁面に配置することが好ましい。このようにして、植栽ルーバー10が、建造物壁面に配置される。なお、前記建造物壁面に配置された支柱20には、前記建造物壁面に直接固定されたものに加えて、前記建造物壁面から所定の距離をおいた地面に固定されたものも含まれる。前記支柱20の固定方法は、特に制限されず、例えば、任意の固定部材を用いて前記建造物壁面に直接固定してもよいし、前記支柱20の下部を地盤に埋め込むことで固定してもよい。
【0028】
前記支柱20としては、例えば、H形鋼、CT形鋼、L形鋼、みぞ形鋼、I形鋼、丸および角形の鋼管、パイプ状の柱等を用いることができる。前記支柱の本数は、特に制限されず、例えば、1〜10本の範囲であり、好ましくは、2〜4本の範囲である。
【0029】
図8の断面図に、本発明の緑化装置のその他の例の構成を示す。なお、図8は、建造物の壁面(図示せず)と平行な方向(側面)から見た断面図である。図示のように、この例の緑化装置は、建造物の壁面(図示せず)から所定の距離をおいて鉛直に立設されたH形鋼が、支柱20である。前記H形鋼において、そのH字形状の凹部に、支持部材100の2つの取付け面104が、それぞれボルト102、103によって固定されている。また、前記支持部材100上には、ボルト101により植栽ヘッド11が固定された状態で植栽ルーバー10が載置されている。
【0030】
図9の正面図に、本発明の緑化装置のさらにその他の例の構成を示す。なお、図9において、植栽ルーバー10を強調して描いている。図示のように、この例の緑化装置では、1本の支柱20が略鉛直に立設され、前記支柱20の左右に2つずつ、植栽ルーバー10が上下方向に所定の間隔をあけた状態で固定されている。なお、図9では、植栽ルーバー10の数を左右2つずつとしたが、植栽ルーバー10の数は、特に制限されず、例えば、建造物の階数、高さ等に応じて、適宜変更することができる。また、前記植栽ルーバー10の上下方向の所定の間隔は、例えば、植栽される植物の背丈等に応じて、任意に設定できるが、例えば、0.1〜0.5mの範囲であり、好ましくは、0.2〜0.4mの範囲である。また、支柱20への植栽ルーバー10の固定方法は、特に制限されず、例えば、図8で説明した方法であってもよい。また、この例では、支柱20の左右に対称となるように植栽ルーバー10を配置したが、本発明は、これに制限されない。例えば、図10の上面図に示すように、支柱20として丸形の鋼管を用い、これに、2つ以上の植栽ルーバー10を、略直角の角度で配置してもよい。
【0031】
つぎに、図11及び図12の正面図に、本発明の緑化装置のさらにその他の例を示す。なお、前記両図では、植栽ルーバー10を強調して描いている。図11に示す例の緑化装置では、2本の支柱20が略鉛直に立設され、その間に、2つの植栽ルーバー10が上下方向に所定の間隔をあけた状態で配置され、かつ前記支柱20に固定されている。また、図13に示す例の緑化装置では、3本の支柱20が略鉛直に立設され、これら3本の支柱の2つの間のそれぞれに、2つの植栽ルーバー10が上下に所定の間隔をあけた状態で配置され、かつ前記支柱20に固定されている。壁面緑化の対象となる建造物の壁面幅が広い場合は、支柱20間の間に植栽ルーバー10を配置することが好ましく、支柱の本数および植栽ルーバーの長さを適宜調節することにより、より好ましく対応可能である。
【0032】
つぎに、図13の断面図に、本発明の緑化装置のさらにその他の例を示す。図示のように、この例の緑化装置では、調整体12として図3に示す形状のものを用いた植栽ルーバー10を、上下方向に所定の間隔をあけて、建造物の壁面(図示せず)に配置された支柱20に固定している。前記植栽ルーバー10の調整体12の角度は、建造物の窓部分(図示せず)を覆うことができる角度に調整されているため、太陽光を遮光することができる。また、この緑化装置において、調整体12を他の形状のものに取り替えることによって、植栽ルーバー自身を取り替えることなく、遮光若しくは採光を簡単に調整可能である。
【0033】
つぎに、図14の断面図に、本発明の植栽ルーバーに植物を植栽した一例を示す。なお、同図において、(a)は、水平状態に調整体12を取り付けた例であり、(b)は、角度をつけて調整体12を取り付けた例である。図示のように、この例の植栽ルーバー10において、植栽ヘッド11内に培養資材60が充填され、これに植物70が植栽されている。前に述べたように、本発明の植栽ルーバー10は、調整体12を有するため、その分だけ緑化面積を広くとることができる。この例では、植物70として蔓植物を植栽しており、これが植栽ヘッド11だけでなく、調整体12にまで伸びており、緑化面積が広くなっている。これに対し、図17の断面図に示すように、従来の植栽ルーバー50は、植栽ヘッドのみで構成されているため、蔓植物70が伸びたとしても、前記植栽ヘッドの開口部からはみ出た部分は下方に垂れ下がってしまい、緑化面積を拡大することができない。
【0034】
つぎに、図15の斜視図に、本発明の緑化装置により建造物の美観を向上させた一例を示す。従来の緑化装置を設置した建造物を遠くから見ると、植栽ルーバーが何もない単調な面(植栽ヘッドが太さとなった太線)の状態で見えるのに対し、本発明の緑化装置は、前記植栽ルーバーに取り付けた調整体によって、複数の細い線の状態で見える。したがって、図15の斜視図に示すように、本発明の緑化装置が設置された建造物を遠くから見たときには、前記調整体の端面が、ストライプのアクセントとなり、細くシャープな印象を与え、建造物の美観を向上させることができる。同図に示す緑化装置は、建造物30の壁面に2本の支柱20が配置され、これら支柱20の間に3つの植栽ルーバー10が上下方向に所定の間隔をあけた状態で配置されている。この建造物30を遠くから見たときには、前記植栽ルーバー10が3本の細い線のように見える。また、前記植栽ルーバー10において、植栽ヘッドと調整体とが着脱可能である場合には、前記調整体を異なった色に着色することにより、色の違いで季節感を演出する等して、建造物の美観を向上させることも可能である。なお、本発明の植栽ルーバーおよび緑化装置は、植栽ルーバーが空であっても(植物が植栽されていなくても)、この美観性の効果を奏する。
【0035】
さらに、図16の正面図に、給排水手段を有する本発明の緑化装置の一例の構成を示す。なお、同図では、植栽ルーバー10を強調して描いている。図示のとおり、この例の緑化装置は、2本の支柱20が略鉛直に立設され、前記2本の支柱20の間に、3つの植栽ルーバー10が上下方向に所定の間隔をあけた状態で配置されている。前記支柱20は、パイプ状に形成されており、その内部が、植栽ルーバー10の内部に対する給排水の通路となるものである。この例の緑化装置では、右側の支柱が給水側の通路となり、左側の支柱が排水側の通路となっている。同図において、点線若しくは実線の矢印は、水の流れを示す。植栽ルーバー10は、パイプ状の支持部材91で支柱20に固定されており、前記支持部材91の内部が給排水の水の流路となる。また、この緑化装置は、給排水のためのポンプ90を備える。前記支柱20および支持部材91の形状は、中空のパイプ状であれば、どのような形状としてもよく、例えば、円柱状、楕円柱状、四角柱状等である。前記植栽ルーバー10および支柱20の側面には、前記支持部材91の取り付け位置に対応して給排水用の孔が設けられている。このような構成とすることで、前記ポンプ90から支柱20を介して植栽ルーバー10に対する給排水を行える。また、植栽ルーバー10に供給される水を、肥料が混入された液肥としてもよい。なお、他の給水手段として、例えば、H形鋼等の支柱に金具によってかん水チューブを固定し、前記かん水チューブを植栽部分まで這わせて給水する手段等もある。この場合には、水道圧またはポンプによる加圧等で給水を行う。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の植栽ルーバーは、植生に土を必要とする植物にも対応可能であり、且つ、太陽から建造物への日射量を容易に調整可能である。したがって、本発明の植栽ルーバーは、その用途が広く、あらゆる建造物に対応可能であり、例えば、ビル壁面等の緑化に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の植栽ルーバーの一例の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の植栽ルーバーのその他の例の構成を示す断面図である。
【図3】本発明の植栽ルーバーの調整体の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の植栽ルーバーの調整体のその他の例を示す断面図である。
【図5】本発明の緑化装置の一例の構成を示す断面図である。
【図6】本発明の緑化装置のその他の例の構成を示す断面図である。
【図7】本発明の緑化装置のさらにその他の例の構成を示す断面図である。
【図8】本発明の緑化装置のさらにその他の例の構成を示す断面図である。
【図9】本発明の緑化装置のさらにその他の例の構成を示す正面図である。
【図10】本発明の緑化装置のさらにその他の例の構成を示す上面図である。
【図11】本発明の緑化装置のさらにその他の例の構成を示す正面図である。
【図12】本発明の緑化装置のさらにその他の例の構成を示す正面図である。
【図13】本発明の緑化装置のさらにその他の例の構成を示す断面図である。
【図14】本発明の植栽ルーバーに植物を植栽した一例の構成を示す断面図である。
【図15】本発明の緑化装置により建造物の美観を向上させた一例の構成を示す斜視図である。
【図16】本発明の緑化装置のさらにその他の例の構成を示す正面図である。
【図17】従来の植栽ルーバーに植物を植栽した一例の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0038】
10、50 植栽ルーバー
11 植栽ヘッド
12 調整体
13、41、42 ビス
14、15 突起部
20 支柱
30 建造物(ビル)
40、91、100 支持部材
43、104 取付け面
60 培養資材
70 蔓植物
90 ポンプ
101、102、103 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の壁面を緑化するための植栽ルーバーであって、開口容器状に形成された植栽用の植栽ヘッドと、この植栽ヘッドに取り付けられ、太陽から前記建造物への日射量の調整を行う調整体とを含む植栽ルーバー。
【請求項2】
前記植栽ヘッドと前記調整体との角度を調整する角度調整手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の植栽ルーバー。
【請求項3】
前記植栽ヘッドと前記調整体とが、着脱可能である請求項1記載の植栽ルーバー。
【請求項4】
前記調整体の表面が、防汚被膜で被覆されている請求項1記載の植栽ルーバー。
【請求項5】
前記防汚被膜が、光触媒を含む請求項4記載の植栽ルーバー。
【請求項6】
植栽ルーバーと、これを支持する支持部材を有し、前記植栽ルーバーが、請求項1記載の植栽ルーバーである緑化装置。
【請求項7】
さらに、支柱を有し、前記支柱に前記支持部材が取付け可能である請求項6記載の緑化装置。
【請求項8】
前記植栽ヘッドに培養資材が装填され、前記培養資材に植物が植栽されている請求項6記載の緑化装置。
【請求項9】
前記培養資材が、有機質系人工軽量土壌である請求項8記載の緑化装置。
【請求項10】
緑化壁面を有する建造物であって、前記緑化壁面が、請求項6記載の緑化装置によって緑化された建造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−246735(P2006−246735A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−64841(P2005−64841)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】