説明

植物を用いた有用物質の生産方法

【課題】 イネ科植物において有用物質を効率よく生産回収することができる有用物質生産法およびそのための遺伝子組換えイネ科植物を提供する
【手段】 本発明の植物を用いた有用物質の生産方法は、水モミ化を起こすイネ科植物変異体に抗菌性ペプチドのような有用物質のアミノ酸配列をコードする遺伝子を導入することにより該イネ科植物変異体を形質転換し、該イネ科植物変異体に生じた水モミ部分から前記有用物質を回収することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子組換え技術を用いた植物による有用物質の生産方法に関し、より詳しくは、イネ科植物において有用物質を効率よく生産蓄積させる有用物質生産法およびそのための遺伝子組換えイネ科植物に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、遺伝子組換え植物を利用する「分子農業」という新しい農業分野が提案されている。これは植物を食糧生産のアイテムと考えるのではなく、植物を高度なバイオリアクターとして活用し、医薬品や工業製品の原料を生産するものである。わが国では、古来、味噌、醤油、納豆などの微生物による発酵製品が盛んに作られ利用されている。この技術は、現在のアミノ酸発酵などの微生物利用技術に応用され、さらに組換え体微生物を利用した医薬原料等の生産技術へと発展している。分子農業はその流れの延長線上にあり、植物に特定の物質生産に関わる遺伝子を導入し、この植物を高機能なバイオリアクターとして機能させる。すなわち、医薬品や工業原料を農業生産するという、植物を利用した新しい概念の物質生産法である。
【0003】
しかしながら、この植物を用いた物質生産法には、生産性の低さや生産物の抽出精製仮定の煩雑さからの改善が大きな課題として残されている。これまでの報告例では、植物での外来タンパク質の生産量は、総可溶性タンパク質の0.1〜1.0%程度に留まっている。そのため、生産コストが高くなり、結果的に抗体などの高価な物質の生産に限られてしまっている。
【0004】
従来の組換え技術では緑葉の細胞質を中心に希薄分散的に物質が生産されていた。基礎研究レベルでは光合成の場である葉緑体で物質生産を行う方法や、植物ウイルスを利用して短期間に大量に生産する方法、あるいは植物ウイルスプロテアーゼを導入してPTGSを抑制して生産させる方法などがある(例えば、「化学と生物」第41巻, pp.183-189(2003);非特許文献1)。
【0005】
ところで、遺伝子組換え技術に基づき、植物を用いて生産することが企図される有用物質は様々あるが、その一例として有用な抗菌性ペプチドが挙げられる。これに関連し、本発明者は、抗菌活性を有するタナチン類縁体、それを産生するための組換え体植物及び該組換え体植物を用いた該タナチン類縁体の製造方法を見出した(特願2004-059585号;未公開特許文献1)。
【非特許文献1】「化学と生物」第41巻, pp.183-189(2003)
【未公開特許文献1】
【0006】
特願2004-059585号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
タナチン類縁体のような有用物質の植物を用いた生産法としては、イネ科植物等を利用した葉緑体での物質生産法、植物ウイルスを利用した生産法、あるいは植物ウイルスプロテアーゼを導入する生産法、植物ウイルスを利用した大量生産方法が挙げられる。これらは緑葉の細胞質で生産する場合よりも生産性は高い。
【0008】
しかしながら、葉緑体で大量に物質生産させた場合には、光合成に障害が現れて、生産性の高い植物体ほど植物の生育が悪くなる現象が観察されていることや、植物ウイルスを用いる方法では他の圃場ヘウイルスが流出する危険性があることなど克服しなければならない問題が山積している。また生産物の抽出精製過程も煩雑であれば、生産コストを引き上げる要因になる。植物で物質生産を行う場合、生産物中に含まれる植物由来の來雑物を除く必要がある。しかし、この問題に対しては、生産物に精製用のタグを付けて生産するなど実験室レベルの研究が行われているのみで、実用化はもとより開発に至っていないのが現状である。
【0009】
そこで、本発明は、遺伝子組換え技術を用いた植物による有用物質の生産方法であって、上記のような問題のない新たな有用物質生産法を確立し、特にイネ科植物において抗菌性ペプチドのような有用物質を効率よく生産回収することができる有用物質生産法およびそのための遺伝子組換えイネ科植物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、水モミ化を引き起こすイネ科植物変異体を利用し、その水モミ部分に有用物質を生産蓄積させることによって有用物質を効率的に生産回収することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明の植物を用いた有用物質の生産方法は、水モミ化を起こすイネ科植物変異体に有用物質のアミノ酸配列をコードする遺伝子を導入することにより該イネ科植物変異体を形質転換し、該イネ科植物変異体に生じた水モミ部分から前記有用物質を回収することを特徴とする。
【0012】
本発明の有用物質の生産方法において、前記イネ科植物変異体として、細胞質雄性不稔系統イネ、またはアンチセンスSPK遺伝子が導入されているイネを用いることが好ましい。
【0013】
また、本発明の遺伝子組換えイネ科植物は、水モミ化を起こすイネ科植物変異体であって、有用物質のアミノ酸配列をコードする遺伝子が導入されることによりモミ部分に有用物質を生産蓄積するように形質転換されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の遺伝子組換えイネ科植物において、前記イネ科植物変異体は、細胞質雄性不稔系統イネ、またはアンチセンスSPK遺伝子が導入されているイネであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、有用物質の外来遺伝子が導入されて形質転換されたイネ科植物変異体において、そこで発現産生される有用物質は水モミ部分から得られるので、有用物質の効率的な生産回収が可能となる。すなわち、水モミはデンプンが蓄積しない種子であり、その内容物はショ糖と水を主成分とし、貯蔵デンプンや貯蔵タンパクはほとんど含まれていない。このため水モミに蓄積した有用物質は、抽出、精製、操作が容易であり、この点、従来の緑葉生産の場合よりも有利である。
【発明の実施の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本明細書に使用される「有用物質」という用語は、遺伝子組換え技術を用いてイネ科植物において発現産生され得るあらゆる有用物質を意味し、典型的には、生物活性を有するタンパク質および抗菌性ペプチドのような各種のペプチド等が挙げられる。すなわち、本発明において適用可能な有用物質とは、そのアミノ酸配列をコードする遺伝子が宿主となるイネ科植物に導入されると、再生した植物体の特定の器官(特にモミ)において前記外来遺伝子が発現することによって生産蓄積されることができる、あらゆるポリペプチドが含まれる。
【0017】
本明細書に使用される「水モミ化」という用語は、イネのモミ部分に水分含量の高い未熟種子を生じることを意味する。この水モミ化は、一般に貯蔵デンプンや貯蔵タンパク質の生合成に関与する遺伝子、特にプロテインキナーゼ(SPK)遺伝子の発現が阻害され、その結果、ショ糖含量の高い水が蓄積することに起因すると考えられる。したがって、本発明を適用可能なイネ科植物として、そのような不稔の未熟種子を一定の頻度で生じる細胞質雄性不稔系統イネ、およびそのような不稔化を人工的に引き起こすためにアンチセンスSPK遺伝子が導入された形質転換イネが挙げられる。
【0018】
本発明の好ましい態様では、緑葉でのタナチン生産に用いられるタナチン遺伝子を、遺伝子工学の技術分野において知られている常法に従って細胞質雄性不稔系統イネに導入する工程、得られた形質転換体を当該技術分野の常法に従って成体イネまで育成し、この過程において作られる水モミ内にタナチン遺伝子の発現によってタナチンを蓄積させる工程、集めた水モミからタナチンを精製する工程を含む。
【0019】
上記のようにして得られた形質転換イネの水モミから抽出された溶液をHPLCにかけると、その形質転換体に特異的な溶出画分であって、公知の物質生産法で得られたタナチン標品とほぼ同じ溶出時間を示す画分の存在を確認することができた(実施例1参照)。このように水モミを作るイネ科植物を宿主とし、遺伝子組換え技術の常法に従ってタナチン遺伝子等の有用物質の外来遺伝子をそのモミ部分で発現するように導入するだけで、目的の有用物質を含有する水モミを作らせることができる。できた水モミは、貯蔵デンプン等を有さない含水部分で占められているため、そこに発現し蓄積した有用物質を精製するには非常に好都合である。
【0020】
一般に細胞質雄性不稔イネは、花粉稔性がないため、稔実せず、また水モミが生じる率も低い(10%以下)。このため本発明のより好ましい態様では、人工的に水モミを多く生産させる宿主系を利用する。すなわち、アンチセンスSPK遺伝子を導入することにより多くの水モミを生じさせることができる形質転換イネを宿主とし、有用物質の外来遺伝子を導入、生産させる。
【0021】
例えば、タナチン発現プラスミドに更にアンチセンスSPK遺伝子を組み込んだものを構築し、これを用いて形質転換イネを作製する。このような形質転換イネに生じた水モミについてHPLC分析を行ったところ、タナチン標品とほぼ同じ溶出時間を示す形質転換体に特有のピークが確認され、またこの画分に含まれる物質は、ESI-Massにより、緑葉で生産されていたものと同じN一アセチルタナチンであることが明らかとなった(実施例2参照)。このように、有用物質の遺伝子と共にアンチセンスSPK遺伝子を宿主植物のモミで発現するように導入することにより、水モミに有用物質を生産、蓄積させるシステムを人工的にコントロールすることが可能となり、より効率的な生産が可能となる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、これらは本発明を限定することを意図するものではない。
【0023】
[実施例1]:細胞質雄性不稔系統イネを用いた生産
(1)タナチン遺伝子の導入と発現の確認
組換えイネ植物において抗菌性物質、タナチンをモミに蓄積させることを試みた。まず、水モミで生産、蓄積するためのモデル実験として、一定の割合で水モミを生じる変異体である細胞質雄性不稔イネ(Ichikawa, N. et al.: Arapid PCR-aided selection of a rice containing the Rf-gene which is involved in restoration of the cytopasmic male sterility. Molecular Breeding, 3, 195-202 (1997)参照)の水モミで、タナチンを生産させることを試みた。
【0024】
タナチン遺伝子(配列番号1にアミノ酸配列、配列番号2に核酸配列を示す)を発現可能に組み込まれたプラスミド(35S-TAN)を、アグロバクテリウム法を用いて細胞質雄性不稔系統イネに導入した。8個体の組換え体を得ることができたので、これら形質転換体について、PCRによりタナチン遺伝子が導入されているかどうかの確認を行った。その結果、8個体全ての個体においてタナチン遺伝子の導入を確認することができた。
【0025】
次に、タナチン遺伝子の導入が確認されたこれらの個体について、RT-PCRにより導入したタナチン遺伝子の発現を確認した。その結果、全個体でタナチン遺伝子の発現を確認することができた(図3)。なお、このRT-PCRに使用したプライマーは、TANsenceとmGFPrevII(配列番号3および配列番号4)であり、PT-PCRのコントロールとしてアクチンI遺伝子を増幅させるプライマーを用いた。
【0026】
(2)水モミの抗菌活性測定
タナチン遺伝子の発現が確認された形質転換個体のうち5個体から水モミを収穫することができた。これらの水モミより内容物を集め、これの抗菌活性を測定した。その結果、5個体のうち2個体から得られた水モミで抗菌活性を確認することができた(図1)。
【0027】
(3)水モミのHPLCによる分析
抗菌活性測定によって抗菌活性が確認された水モミに含まれる抗菌性物質を特定するために、これを、逆相カラムを用いてHPLC精製を行った。その結果、タナチン標品とほぼ同じ溶出時間を示す形質転換体に特有のHPLC溶出ピークが確認された(図2)。この溶出画分は、抗菌活性を有することも確認された。
【0028】
[実施例2]:アンチセンスSPK遺伝子を導入した形質転換体の水モミを用いた生産
実施例1で示したように細胞質雄性不稔系統イネを用いた実験で、タナチン遺伝子産物に対応すると思われる組換え体植物特有の抗菌活性画分を水モミに生産させることができたので、次に、アンチセンスSPK遺伝子(Asano T. et al.: Rice SPK, a calmodulin-like domain protein kinase, is required for storage product accumulation during seed development: phosphorylation of sucrose synthase is a possible factor. Plant Cell, 14, 619-628(2002)参照)を利用した効率的な水モミでのタナチンの生産方法を検討した。
【0029】
(1)形質転換植物での遺伝子の導入、発現確認
イネ植物において効率的に水モミを生じさせるために、市販のイネ植物にアンチセンスSPK遺伝子を導入し、これによって得られた形質転換植物でのタナチン生産を試みた。
【0030】
タナチン発現プラスミド(p35S-TAN)に、更にアンチセンスSPK遺伝子を組み込んだ発現プラスミド(p35S-TAN-ASPK、図4参照)を構築し、イネ(日本晴)に導入した。なお、このプラスミドp35S-TAN-ASPKは、プラスミドp35-ASPKから、35Sプロモーターとその下流にあるアンチセンスSPK遺伝子の領域を制限酵素Asp718で切り出し、同じくAsp718で切断したタナチン発現プラスミド(p35S-TAN)に導入してできた発現プラスミドである。また、HPTIIは、ハイグロマイシン抵抗性遺伝子を示す。
【0031】
上記プラスミドp35S-TAN-ASPKを用いて25個体の組換え体を得ることができた。これらの形質転換体について、タナチン遺伝子とアンチセンスSPK遺伝子の両方が導入されているかどうかを確認するために、PCRによる導入遺伝子の確認を行った。
【0032】
その結果、全ての個体で、タナチン遺伝子とアンチセンスSPK遺伝子の導入を確認することができた(図5)。そこで、これらの形質転換体でのアンチセンスSPK遺伝子の発現の確認を行った。そこで、遺伝子の導入が確認された形質転換体の中で、多くの水モミを生じた個体を選抜した。その結果、25個体のうち11個体では、種子の多くが水モミとなった。
【0033】
なお、タナチン遺伝子導入確認に使用したプライマーはTANsenceとmGFPrevII(配列番号3および4)であり、アンチセンスSPK遺伝子の導入確認に使用したプライマーは、SPKA(配列番号5)とSPKX(配列番号6)である。
【0034】
(2)水モミの抗菌活性測定
アンチセンスSPK遺伝子の発現が確認され、多数の水モミが生じた形質転換体11個体の水モミに含まれる溶液について抗菌活性の測定を行った。検定菌としてM.luteus 3347を用いた。その結果、11個体の水モミのうち8個体の水モミで抗菌活性があることを確認することができた(図6)。これらの個体の水モミには、タナチンが生産されていることが示唆された。
【0035】
(3)水モミのHPLCによる分析
抗菌活性を示した溶液を産生した水モミに含まれる抗菌性物質を同定するために、この精製を試みた。水モミより溶液を採取し、これについて、逆相カラムを用いたHPLC分析を行った。その結果、この水モミ溶液には、緑葉粗抽出液で観察されたのと同じく、タナチン遺伝子を導入しなかった形質転換体に存在しない新たなピークが検出された。このピークはタナチン標品とほぼ同じ溶出時間を示した(図7)。
【0036】
(4)ESI-Massによる物質の同定
HPLC分析によってタナチン標品とほぼ同じ溶出時間を示した画分について、ESI-MSを用いた質量分析での目的物質の同定を試みた。その溶出画分に含まれている抗菌性物質は、HPLCを繰り返し行い、分取することで、大量調製(約0.5μg)し、これを用いてESI-Massによる質量分析を行った。
【0037】
その結果、この画分に含まれる抗菌性物質は、N一アセチルタナチンと同じ分子量を示し、また、ESI-Massの分析チャートが標準サンプル(合成品)と完全に一致した(図8)。
上記の結果から、タナチン遺伝子と同時に導入したアンチセンスSPK遺伝子によって生じた水モミに産生・蓄積した抗菌物質は、緑葉で産生されたものと同じ、N末端がアセチル化され、S-S結合が切れた構造を有するN一アセチルタナチンであることが明らかとなった。なお、タナチンは正に6価の電荷を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1において得られた水モミについての抗菌活性測定の結果を示す図である。同図において、赤丸は抗菌活性が確認されたことを示し、非形質転換体の抗菌活性測定結果を左下に示し、ポジティブコントロール(タナチン標品+菌液)およびネガティブコントロール(菌液のみ)を右下に示す。また、#_は細胞質雄性不稔系統イネ形質転換体の水モミを示す。
【図2】実施例1において、抗菌活性が確認されたサンプルのHPLC分析の結果を示す図である。同図において、上段は細胞質雄性不稔系統イネ形質転換体の水モミのHPLCチャートを示し、下段は細胞質雄性不稔系統イネの水モミHPLCチャートを示し、矢印は、タナチン遺伝子導入によって生じた新たなピーク(Additional peak)を示す。
【図3】実施例1において、タナチン遺伝子の導入が確認された個体について、更にタナチン遺伝子の発現を確認するためのRT-PCRの結果を示す図である。同図において、上段はタナチン遺伝子の導入確認を示し、下段は発現確認を示す。またPはタナチン発現プラスミド、Nは日本晴、#_は形質転換体の個体番号をそれぞれ示す。
【図4】実施例2において使用された、タナチン遺伝子とアンチセンスSPK遺伝子を組み込んだ発現プラスミドの構成を示す図である。
【図5】実施例2において、タナチン遺伝子およびアンチセンスSPK遺伝子の導入を確認するためのPCRの結果を示す図である。同図において、上段はタナチン遺伝子の導入確認を示し、下段はアンチセンス遺伝子導入確認示し、また、Pはタナチン発現プラスミド、Nは日本晴、#_は形質転換体の個体番号をそれぞれ示す。
【図6】実施例2において導入遺伝子の発現が確認された水モミについての抗菌活性測定の結果を示す図である。同図において、赤丸は抗菌活性が確認されたことを示す。また、ベクターコントロールの抗菌活性測定結果を左下に示し、ポジティブコントロール(タナチン標品+菌液)およびネガティブコントロール(菌液のみ)を右下に示す。また#_はタナチン遺伝子とアンチセンスSPK遺伝子を同時導入した形質転換体の水モミを示す。
【図7】実施例2において抗菌活性が確認されたサンプルのHPLC分析の結果を示す図である。同図において、上段はタナチン遺伝子とアンチセンスSPK遺伝子を同時導入した形質転換体の水モミのHPLCチャートを示し、下段はベクターコントロールの水モミHPLCチャートを示す。また、赤丸はタナチン遺伝子導入によって生じた新たなピーク(Additional peak)を示す。
【図8】実施例2において抗菌活性が確認されたサンプルについてESI-Mass分析によるN一アセチルタナチンの同定を示す図である。同図において、矢印で示したピークの値は質量電荷比であり、またチャート右上の掛け算は、その物質の質量を計算したものである(質量電荷比×電荷)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水モミ化を起こすイネ科植物変異体に有用物質のアミノ酸配列をコードする遺伝子を導入することにより該イネ科植物変異体を形質転換し、該イネ科植物変異体に生じた水モミ部分から前記有用物質を回収する、植物を用いた有用物質の生産方法。
【請求項2】
前記イネ科植物変異体として、細胞質雄性不稔系統イネを用いる、請求項1に記載の植物を用いた有用物質の生産方法。
【請求項3】
前記イネ科植物変異体として、アンチセンスSPK遺伝子が導入されているイネを用いる、請求項1又は2に記載の植物を用いた有用物質の生産方法。
【請求項4】
水モミ化を起こすイネ科植物変異体であって、有用物質のアミノ酸配列をコードする遺伝子が導入されることによりモミ部分に有用物質を生産蓄積するように形質転換されている遺伝子組換えイネ科植物。
【請求項5】
前記イネ科植物変異体は、細胞質雄性不稔系統イネである、請求項4に記載の遺伝子組換えイネ科植物。
【請求項6】
前記イネ科植物変異体は、アンチセンスSPK遺伝子が導入されているイネである、請求項4又は5に記載の遺伝子組換えイネ科植物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−14659(P2006−14659A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195741(P2004−195741)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】