植物栽培構造体、植物栽培基材および基盤材
【課題】 効率よく灌水することができる植物栽培構造体、植物栽培機材および基盤材を提供する。
【解決手段】 植物栽培構造体は、植物栽培基材11と、基盤材13と、を有する。植物栽培基材11の側面には、外側に突出する基材突出部25が複数形成されている。基盤材13には貫通穴33が形成されている。貫通穴33には、貫通穴33の軸方向に沿って伸び、貫通穴33の内側方向に突出する基盤突出部37が複数形成されている。貫通穴33に植物栽培基材11を挿入すると、基盤突出部37から植物栽培基材11に水が良好に流れ込む。さらに、基盤突出部37は植物栽培基材11と接触して圧縮されているため、基盤突出部37を経由して流れる水の量を増加させることができる。
【解決手段】 植物栽培構造体は、植物栽培基材11と、基盤材13と、を有する。植物栽培基材11の側面には、外側に突出する基材突出部25が複数形成されている。基盤材13には貫通穴33が形成されている。貫通穴33には、貫通穴33の軸方向に沿って伸び、貫通穴33の内側方向に突出する基盤突出部37が複数形成されている。貫通穴33に植物栽培基材11を挿入すると、基盤突出部37から植物栽培基材11に水が良好に流れ込む。さらに、基盤突出部37は植物栽培基材11と接触して圧縮されているため、基盤突出部37を経由して流れる水の量を増加させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質構造を有する植物栽培基材と、多孔質構造を有し、植物栽培基材を収容可能な収容部が形成されてなる基盤材と、からなる植物栽培構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市緑化の要求が高まり、建物の外壁および屋内の壁面などの緑化が盛んに試みられている。このような緑化を屋内やメンテナンスが困難な場所にて行う場合など、植物の栽培基材として土を使用すると管理が困難になる場合がある。そこで従来、植物を育成するための培地として、土以外の栽培基材が提案されている。例えば、ブロック状に形成された発泡樹脂材を植物栽培基材として用いるものある(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、植物を育成するためには適切に灌水を行う必要があるが、壁面などの広範囲に渡って植物を配置した場合、植物に対し個別に灌水を行うように構成すると構造が煩雑になりコスト高となる。そこで、例えば図9(B)に示すように、水を透過する基盤材101に植物栽培基材105を取り付けて、基盤材101を縦方向に並べて配置することが考えられる。この構成では、水を上部から流すことで、全体に水を送ることができる。なお、図9(B)では容器から水を注水するように図示されているが、もちろん注水用のパイプなどから自動的に注水する場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−235347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記図9(B)に示すような構造では、基盤材101と植物栽培基材105との間に僅かな隙間が生じやすいことから、水が基盤材101から植物栽培基材105に移動しにくく、植物栽培基材105に充分な水が流れにくいという問題がある。特に、例えば図4に示すような保持具41を用いた場合、棒状部材53がその隙間に挟まることにより、図10に示すように、さらに基盤材101と植物栽培基材105の接触面積が小さくなってしまう。
【0006】
また、植物栽培基材105に流れる水の量を増加させようとして、上方からの注水量を増やしても、注水のためのランニングコストが増加するのみでなく、基盤材101が吸水しきれない水の大部分は基盤材101の外部側面から外部に流出してしまうため、植物栽培基材105に流れる水の量を充分に増加させることは困難であった。
【0007】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、効率よく灌水することができる植物栽培構造体、植物栽培機材および基盤材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した問題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、多孔質構造を有する植物栽培基材と、多孔質構造を有し、植物栽培基材を収容可能な収容部が形成されてなる基盤材と、からなる植物栽培構造体であって、植物栽培基材および基盤材の少なくともいずれか一方には、弾性を有し表面から突出する1つ以上の突出部が設けられており、植物栽培基材が基盤材に収容された状態では、突出部が前記一方とは異なる他方と接触して圧縮された状態となることを特徴とする。
【0009】
本発明の植物栽培構造体において、植物栽培基材とは植物を栽培可能な培地であって、多孔質構造であるため水が透過可能であり、またその内部に植物が根を張ることができるものである。この植物栽培基材を基盤材の収容部に収容することで、植物栽培基材(即ち植物)の位置が定まる。この状態で基盤材を例えば壁面などに配置することで、植物を所望の位置に配置することができるようになる。
【0010】
そして、この基盤材は多孔質構造であるため水を透過させることができる。従って、基盤材の上方に注水すると水は下方向に流れる。よって、例えば図1のように植物が横方向に突出するように配置した状態では、基盤材の上方から注水することで上方から下方まで灌水することができる。
【0011】
そのとき、基盤材と植物栽培基材との間では突出部が圧縮された状態となっているため、その部分を水が流れやすくなる結果、植物栽培基材に水が多く流れることになる。よって、植物栽培基材に水が不足したり、充分に水を流すために基盤材の上方において多量の注水を行う必要が生じたりすることが無くなり、効率よく灌水することができる。
【0012】
なお、突出部は基材と基盤材のいずれに設けられていてもよい。両方に設けられていてもよい。
また、上述した基盤材は、水が透過可能に形成されていればその具体的な形状は特に限定されない。例えば設置のしやすさを考慮すれば、板状やブロック状とすることが考えられる。また基盤材には収容部が複数配置されていれば効率よく植物を配置することができるが、基盤材ごとに収容部が1つだけ設けられている構成であってもよい。
【0013】
また、上述した植物栽培基材は、収容部に収容可能であって、植物が育成可能であればどのような材質や形状であってもよい。材質の例としては、樹脂製のスポンジや、土(培養土)などが挙げられる。土を用いる場合には、その形状が崩れないように、土と樹脂との混合物を成形したものを用いても良いし、スポンジや不織布などの透水性を有するもので周囲を包んで用いてもよい。
【0014】
また、植物栽培基材の形状は、例えば、請求項2に記載の植物栽培構造体のように、植物栽培基材は略円柱状に形成されていてもよい。また、この構成においては、請求項3に記載されているように、突出部を、植物栽培基材の表面において、植物栽培基材の軸方向に沿って形成してもよい。
【0015】
基材が略円柱状に構成されていれば、収容部に収容するときには挿入する方向さえ合せれば挿入が可能となるため、挿入操作を容易にすることができる。また、突出部が軸方向に沿っていることで、植物栽培基材を収容部に挿入するときに引っ掛かりにくくなるため都合がよい。
【0016】
また、植物栽培基材は、請求項4に記載されているように、収容部への挿入方向における奥側ほど細くなるように形成されていてもよい。
このように植物栽培基材が形成されていれば、挿入操作の終盤まで植物栽培基材と基盤材との間に間隙が生成されるため、本発明のように突出部が設けられていても容易に基盤材に挿入して収容することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の植物栽培構造体を構成する植物栽培基材であって、上述した突出部を有することを特徴とする。
このように構成された植物栽培用基材であれば、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の植物栽培構造体の一部を構成することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の植物栽培構造体を構成する基盤材であって、上述した突出部を有することを特徴とする。
このように構成された基盤材であれば、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の植物栽培構造体の一部を構成することができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の基盤材において、弾性を有し外部表面から突出する1つ以上の突起が設けられていることを特徴とする。
このように構成された基盤材であれば、基盤材同士を積み上げたときや密着させて隣接させたときに、基盤材間において突起が圧縮された状態となっているため、その部分を水が流れやすくなる。よって、基盤材間の水の移動をスムーズにでき、効率よく灌水することができる。
【0020】
請求項8に記載の発明は、多孔質構造を有する植物栽培基材と、多孔質構造を有し、前記植物栽培基材を収容可能な収容部が形成されてなる基盤材と、を有する植物栽培構造体であって、接続部材を備えるものである。この接続部材は、多孔質構造および弾性を有する棒状または塊状の部材であって、前記植物栽培基材が前記基盤材に収容された状態において、前記植物栽培基材と前記基盤材との間に挟まれるように配置され、前記植物栽培基材および前記基盤材と接触して圧縮された状態となる。
【0021】
このように構成された植物栽培構造体であれば、基盤材と植物栽培基材との間では接続部材が圧縮された状態となっているため、その部分を水が流れやすくなる結果、植物栽培基材に水が多く流れることになる。よって、植物栽培基材に水が不足したり、充分に水を流すために基盤材の上方において多量の注水を行う必要が生じたりすることが無くなり、効率よく灌水することができる。
【0022】
請求項9に記載の発明は、植物栽培基材を収容可能な収容部が形成されてなる基盤材であって、前記基盤材は、多孔質構造を有しており、前記収容部を構成する壁面に表面から突出する1つ以上の突出部が設けられていることを特徴とする基盤材である。
【0023】
このように構成された基盤材において、基盤材に水が注水されると、基盤材が吸収した水は、収容部の上側に位置する突出部に集まって収容部に落下する(一例を図5(A)に示す)。このように、本発明の基盤材では収容部の内部に水が流れやすくなるため、収容部に配置される植物栽培基材に水を効率よく流すことができる。
【0024】
なお、ここでいう植物栽培基材は、植物を生育可能かつ水を透過できるものであれば様々なものを利用することができる。例えば、樹脂製のスポンジなどの多孔質構造体や、樹脂と土とを一体成形した構造体、または土そのものなどが考えられる。土を用いる場合には、形状が崩れないようにスポンジや不織布などの透水性を有するもので周囲を包んで用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】植物栽培構造体を示す写真
【図2】植物栽培基材を示す写真(A)、平面図(B)、正面図(C)
【図3】基盤材を示す写真(A)、平面図(B)、正面図(C)
【図4】保持具を示す斜視図
【図5】植物栽培構造体における水の流れを説明する側面図
【図6】植物栽培構造体の組み付けおよび植物の根の張り状態を説明する図
【図7】植物栽培構造体の変形例を示す図
【図8】保持具の変形例を示す図
【図9】従来の植物栽培構造体における水の流れを説明する側面図
【図10】従来の植物栽培構造体において保持具を用いた際の接触面積の低下を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示にすぎず、本発明が、下記の事例以外にも様々な形態で実施できるのはもちろんである。
[実施例1]
(1)全体構成
本実施例の植物栽培構造体1は、図1に示すように、植物3を生育可能な植物栽培基材11と、植物栽培基材11が複数組み付けられて植物3を並べて固定する基盤材13と、を有する。
【0027】
植物栽培基材11を図2(A)〜(C)に示す。図2(A)は植物栽培基材11の斜視図(写真)、図2(B)は植物栽培基材11の平面図、図2(C)が植物栽培基材11の正面図である。
【0028】
植物栽培基材11は、略円柱状であって、より具体的には円柱状の軸方向に沿って一方が徐々に細くなるいわゆる円錐台形状となっている。
植物栽培基材11の上面および下面のうち、相対的に広い面を上面21、相対的に狭い面を下面23として説明する。この植物栽培基材11では、上面21から植物が伸びだすように植物が育成される。そのため、図示していないが、上面21には凹部やスリットを形成して、それにより植物やその種子を保持できるように構成してもよい。
【0029】
この植物栽培基材11の側面には、上面21から下面23にかけて軸方向に沿って伸び、外側に突出する基材突出部25が複数形成されている。この基材突出部25は弾性を有している。
【0030】
また、この植物栽培基材11は多孔質構造を有するものであるため、水が透過可能であり(以下、単に透水性を有する、と記載することがある)、また植物の根が伸びて植物栽培基材11の内部に進入可能である(以下、単に透根性を有する、と記載することがある)。
【0031】
この植物栽培基材11の材質としては、例えば、ラテックス樹脂、あるいはエチレン樹脂やプロピレン樹脂やスチロール樹脂やウレタン樹脂やフェノール樹脂、酢酸セルロース等を発泡させた各種発泡樹脂材で構成したものを利用できる。また、ピートモスなどの有機質培土材を圧縮成形したもの、セルロースなどの繊維状成形物、セラミックなどの無機質発泡物、通常培土として用いられる各種の土壌を樹脂バインダーや接着剤等を用いて成形して本発明の植物栽培床材として用いることも出来る。また、本発明における前記植物栽培床材は、バーク堆肥やピートモス、腐葉土などの有機質培土材を混合したものを、例えばポリエーテルポリオール(ポリオール成分)とポリイソシアネート(イソシアネート成分)とを反応させて得られる親水性ウレタンプレポリマーによって固結成形により一体成形し、多孔質で弾力を有した状態に形成してあるものであってもよい。また、土をそのまま(樹脂と混合して一体成形することなく)用いる場合には、その形状が崩れないように、スポンジや不織布などの透水性を有するものによって周囲を包んで用いてもよい。
【0032】
基盤材13を図3(A),(B)に示す。図3(A)は基盤材13の斜視図(写真)、図3(B)は基盤材13の平面図、図3(C)は基盤材13の正面図である。
基盤材13は、直方体のブロック形状であって、面31に2つの貫通穴33が形成されている。この貫通穴33が本発明の収容部に相当するものであって、植物栽培基材11が収容可能に構成されている。この貫通穴33は、面31の裏面35まで開いており、植物栽培基材11の外表面に沿うように裏面35側ほど孔径が小さくなるように形成されている。
【0033】
また、基盤材13は多孔質構造を有するものであるため、透水性および透根性を有している。
この貫通穴33には、面31から裏面35にかけて貫通穴33の軸方向に沿って伸び、貫通穴33の内側方向に突出する基盤突出部37が複数形成されている。この基盤突出部37は弾性を有している。
【0034】
なお、基盤材13の材質は特に限定されないが、例えば上記植物栽培基材11と同様のものを用いることができる。
植物栽培基材11を基盤材13の貫通穴33に挿入することで、図1のように組み付けられる。植物栽培基材11は貫通穴33に挿入する方向の奥側が細くなっているため、容易に挿入を実現することができる。
【0035】
また、植物栽培基材11が基盤材13の貫通穴33に挿入された状態では、基材突出部25は貫通穴33を形成する壁面に接触して圧縮される。同様に、基盤突出部37も植物栽培基材11の側面に接触して圧縮される。
【0036】
なお、植物栽培基材11が基盤材13の貫通穴33から容易に脱落してしまうことを防止するために、図4に示す保持具41を用いてもよい。
保持具41は、基盤材13の面31における貫通穴33以外の部分を覆う板状部43と、板状部43に設けられ、貫通穴33に挿入される挿入部45と、板状部43とは別体に形成され、板状部43に固定可能なロック部材51と、からなる。
【0037】
挿入部45は、貫通穴33の表面に沿って伸びる複数の細い棒状部材53および棒状部材53の先端を連結する環状部材55からなる。
ロック部材51は、板状部43に形成された複数の穴47に挿入して係合する係合部49を有している。そしてこの係合部49を穴47に係合させることで板状部43への固定が実現される。また、ロック部材51は中心に開口57が形成されている。
【0038】
この保持具41は、図6(A),(B)にその概要を示すように、植物栽培基材11と基盤材13の間に挟まるように配置される。より詳細には、まず、板状部43を基盤材13の面31を覆うように基盤材13に取り付ける。そのとき同時に挿入部45が貫通穴33に挿入される。その状態で植物栽培基材11を貫通穴33に(挿入部45)に挿入する。そしてロック部材51を板状部43に固定する。このように組み付けられた状態においては、ロック部材51により植物栽培基材11の脱落が防止される。なお植物3はロック部材51の開口57を通過することとなる。
(2)発明の作用・効果
本実施例の植物栽培構造体1による作用・効果を説明する。まず、図5(A),(B)を用いて、基盤材13の基盤突出部37による作用・効果を説明する。
【0039】
図5(A)は、基盤材13を縦方向に複数並べて積んだ状態を示している。上方から水を流したときの水の流れを矢印で示す。上方から流れる水は、貫通穴33の周囲においては、突出している基盤突出部37に水が集まり、貫通穴33内部に多くの水が流れることとなる。そのため、貫通穴33に植物栽培基材11を挿入すると、図5(B)に示すように、基盤突出部37から植物栽培基材11に水が良好に流れ込む。さらに、基盤突出部37は植物栽培基材11と接触して圧縮されているため、基盤突出部37を経由して流れる水の量を増加させることができる。
【0040】
一方、図9(A)に示す従来の基盤材101では、基盤突出部37を有さないため、水は基盤材101の内部を流れやすい。よって、貫通穴103に植物栽培基材105を挿入しても、図9(B)に示すように、植物栽培基材105に充分に水が流れない。特に、図10に示すように、保持具41を用いると基盤材101と植物栽培基材105とが接触しにくくなるため水の流れが悪化しやすく、このような問題が顕著になりやすい。
【0041】
なお、植物栽培基材105を貫通穴103の径よりも大きく形成すると、植物栽培基材105の表面全体、および、基盤材101において貫通穴103を構成する側面全体が圧縮されるが、この場合にも植物栽培基材105への流量を増加させることはできず、効果的な灌水を行うことはできない。この理由としては、貫通穴103を構成する側面全体が圧縮されて水を吸収しやすくなることから、基盤材101の内部を流れ貫通穴103の表面付近に到達した水が、植物栽培基材105に移らずに圧縮された貫通穴103の側面(即ち基盤材101の内部)を流れるためであると考えられる。
【0042】
しかしながら、本実施例の植物栽培構造体1では、基盤突出部37により植物栽培基材11との充分な接触が実現されるため、そのような問題が解消される。
また、図示しないが、植物栽培基材11の基材突出部25も同様に、基盤材13との接触状態を良好にすることができるため、植物栽培基材11に流れる水の量を増加させることができる。
【0043】
また、図6(B)に示すように、基盤材13は植物栽培基材11と同様に透水性、透根性を有しているため、植物3は基盤材13においても根3aを張ることができる。このように根を張るスペースを広くすることで、植物3は根から水や空気の吸収を良好に行うことができるため、植物3の状態を良好に維持することが容易になる。
(3)変形例
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0044】
例えば、上記実施例においては、植物栽培基材11および基盤材13の両方に対して突出部(基材突出部25および基盤突出部37)が形成される構成を例示したが、突出部はいずれか一方にのみ構成されていてもよいし、図7(A)に示すように、突出部に変えて、突出部と同様の弾性、透水性、透根性を有する接続部材61が別途用いられる構成であってもよい。この場合には、棒状の接続部材61を植物栽培基材と基盤材との間に挟まれるように配置することで、接続部材61が圧縮されて、突出部と同様の機能を発揮することができるようになる。
【0045】
この接続部材61は、その長手方向を貫通穴33の貫通方向に沿うように配置するとよい。なお、接続部材61は棒状以外の形状でもよく、例えば角柱形、球形などの塊状であってもよい。またそれらを、図7(B)に示すように、接続部材61よりも薄いワイヤー63やシート状の部材などによって、植物栽培基材11の側面に沿った形状に連結しておけば、植物栽培基材と基盤材との間への取り付けを容易に行うことができる。
【0046】
また、基盤材13には2つの貫通穴33が形成される構成を例示したが、1つであってもよいし、3つ以上が形成されていてもよい。
また、植物栽培基材11として円柱形状(円錐台形状)のものを例示したが、それ以外の形状であってもよい。例えば、角柱形状が考えられる。
【0047】
また、上記実施例においては、基材突出部25は植物栽培基材11の軸方向に沿って形成される構成を例示したが、それ以外の向きに形成されていてもよい。例えば、植物栽培基材11の軸を中心とした円周方向に伸びるように形成されていてもよい。
【0048】
また、基盤突出部37の形成される方向も同様に上記実施例の構造に限定されるものではない。例えば貫通穴33の軸を中心とした円周方向に伸びるように形成されていてもよい。
【0049】
また、図7(C)に示すように、基盤材13の外部表面に1つ以上の突起部65を形成してもよい。このように突起部65を形成することで、基盤材13を重ねたり、密着した状態で隣接させて配置したときに、基盤材13間において突起部65が圧縮された状態となっているため、その部分を水が流れやすくなる。よって、基盤材13間を水がスムーズに移動し、効率よく灌水することができる。
【0050】
また、保持具41においてロック部材51は図4に示す形状に限定されない。例えば、図8に示すように、係合部71と押さえ部73とからなるロック部材75を用いてもよい。
【0051】
また、保持具41における挿入部45において、棒状部材53は複数は位置されるが、その間隔は、板状部43を基盤材13に取り付けた状態で、基盤突出部37と接触しない間隔とするとよい。具体的には、棒状部材53を、基盤突出部37の間隔と同じ間隔で配置したり、基盤突出部37の間隔の整数倍の間隔で配置することが考えられる。また、基材突出部25に対しても、基盤突出部37と同様に接触しないように構成するとよい。
【符号の説明】
【0052】
1…植物栽培構造体、3…植物、3a…根、11…植物栽培基材、13…基盤材、21…上面、23…下面、25…基材突出部、31…面、33…貫通穴、35…裏面、37…基盤突出部、41…保持具、43…板状部、45…挿入部、47…穴、49…係合部、51…ロック部材、53…棒状部材、55…環状部材、57…開口、61…接続部材、63…ワイヤー、65…突起部、71…係合部、73…押さえ部、75…ロック部材、101…基盤材、103…貫通穴、105…植物栽培基材
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質構造を有する植物栽培基材と、多孔質構造を有し、植物栽培基材を収容可能な収容部が形成されてなる基盤材と、からなる植物栽培構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市緑化の要求が高まり、建物の外壁および屋内の壁面などの緑化が盛んに試みられている。このような緑化を屋内やメンテナンスが困難な場所にて行う場合など、植物の栽培基材として土を使用すると管理が困難になる場合がある。そこで従来、植物を育成するための培地として、土以外の栽培基材が提案されている。例えば、ブロック状に形成された発泡樹脂材を植物栽培基材として用いるものある(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、植物を育成するためには適切に灌水を行う必要があるが、壁面などの広範囲に渡って植物を配置した場合、植物に対し個別に灌水を行うように構成すると構造が煩雑になりコスト高となる。そこで、例えば図9(B)に示すように、水を透過する基盤材101に植物栽培基材105を取り付けて、基盤材101を縦方向に並べて配置することが考えられる。この構成では、水を上部から流すことで、全体に水を送ることができる。なお、図9(B)では容器から水を注水するように図示されているが、もちろん注水用のパイプなどから自動的に注水する場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−235347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記図9(B)に示すような構造では、基盤材101と植物栽培基材105との間に僅かな隙間が生じやすいことから、水が基盤材101から植物栽培基材105に移動しにくく、植物栽培基材105に充分な水が流れにくいという問題がある。特に、例えば図4に示すような保持具41を用いた場合、棒状部材53がその隙間に挟まることにより、図10に示すように、さらに基盤材101と植物栽培基材105の接触面積が小さくなってしまう。
【0006】
また、植物栽培基材105に流れる水の量を増加させようとして、上方からの注水量を増やしても、注水のためのランニングコストが増加するのみでなく、基盤材101が吸水しきれない水の大部分は基盤材101の外部側面から外部に流出してしまうため、植物栽培基材105に流れる水の量を充分に増加させることは困難であった。
【0007】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、効率よく灌水することができる植物栽培構造体、植物栽培機材および基盤材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した問題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、多孔質構造を有する植物栽培基材と、多孔質構造を有し、植物栽培基材を収容可能な収容部が形成されてなる基盤材と、からなる植物栽培構造体であって、植物栽培基材および基盤材の少なくともいずれか一方には、弾性を有し表面から突出する1つ以上の突出部が設けられており、植物栽培基材が基盤材に収容された状態では、突出部が前記一方とは異なる他方と接触して圧縮された状態となることを特徴とする。
【0009】
本発明の植物栽培構造体において、植物栽培基材とは植物を栽培可能な培地であって、多孔質構造であるため水が透過可能であり、またその内部に植物が根を張ることができるものである。この植物栽培基材を基盤材の収容部に収容することで、植物栽培基材(即ち植物)の位置が定まる。この状態で基盤材を例えば壁面などに配置することで、植物を所望の位置に配置することができるようになる。
【0010】
そして、この基盤材は多孔質構造であるため水を透過させることができる。従って、基盤材の上方に注水すると水は下方向に流れる。よって、例えば図1のように植物が横方向に突出するように配置した状態では、基盤材の上方から注水することで上方から下方まで灌水することができる。
【0011】
そのとき、基盤材と植物栽培基材との間では突出部が圧縮された状態となっているため、その部分を水が流れやすくなる結果、植物栽培基材に水が多く流れることになる。よって、植物栽培基材に水が不足したり、充分に水を流すために基盤材の上方において多量の注水を行う必要が生じたりすることが無くなり、効率よく灌水することができる。
【0012】
なお、突出部は基材と基盤材のいずれに設けられていてもよい。両方に設けられていてもよい。
また、上述した基盤材は、水が透過可能に形成されていればその具体的な形状は特に限定されない。例えば設置のしやすさを考慮すれば、板状やブロック状とすることが考えられる。また基盤材には収容部が複数配置されていれば効率よく植物を配置することができるが、基盤材ごとに収容部が1つだけ設けられている構成であってもよい。
【0013】
また、上述した植物栽培基材は、収容部に収容可能であって、植物が育成可能であればどのような材質や形状であってもよい。材質の例としては、樹脂製のスポンジや、土(培養土)などが挙げられる。土を用いる場合には、その形状が崩れないように、土と樹脂との混合物を成形したものを用いても良いし、スポンジや不織布などの透水性を有するもので周囲を包んで用いてもよい。
【0014】
また、植物栽培基材の形状は、例えば、請求項2に記載の植物栽培構造体のように、植物栽培基材は略円柱状に形成されていてもよい。また、この構成においては、請求項3に記載されているように、突出部を、植物栽培基材の表面において、植物栽培基材の軸方向に沿って形成してもよい。
【0015】
基材が略円柱状に構成されていれば、収容部に収容するときには挿入する方向さえ合せれば挿入が可能となるため、挿入操作を容易にすることができる。また、突出部が軸方向に沿っていることで、植物栽培基材を収容部に挿入するときに引っ掛かりにくくなるため都合がよい。
【0016】
また、植物栽培基材は、請求項4に記載されているように、収容部への挿入方向における奥側ほど細くなるように形成されていてもよい。
このように植物栽培基材が形成されていれば、挿入操作の終盤まで植物栽培基材と基盤材との間に間隙が生成されるため、本発明のように突出部が設けられていても容易に基盤材に挿入して収容することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の植物栽培構造体を構成する植物栽培基材であって、上述した突出部を有することを特徴とする。
このように構成された植物栽培用基材であれば、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の植物栽培構造体の一部を構成することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の植物栽培構造体を構成する基盤材であって、上述した突出部を有することを特徴とする。
このように構成された基盤材であれば、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の植物栽培構造体の一部を構成することができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の基盤材において、弾性を有し外部表面から突出する1つ以上の突起が設けられていることを特徴とする。
このように構成された基盤材であれば、基盤材同士を積み上げたときや密着させて隣接させたときに、基盤材間において突起が圧縮された状態となっているため、その部分を水が流れやすくなる。よって、基盤材間の水の移動をスムーズにでき、効率よく灌水することができる。
【0020】
請求項8に記載の発明は、多孔質構造を有する植物栽培基材と、多孔質構造を有し、前記植物栽培基材を収容可能な収容部が形成されてなる基盤材と、を有する植物栽培構造体であって、接続部材を備えるものである。この接続部材は、多孔質構造および弾性を有する棒状または塊状の部材であって、前記植物栽培基材が前記基盤材に収容された状態において、前記植物栽培基材と前記基盤材との間に挟まれるように配置され、前記植物栽培基材および前記基盤材と接触して圧縮された状態となる。
【0021】
このように構成された植物栽培構造体であれば、基盤材と植物栽培基材との間では接続部材が圧縮された状態となっているため、その部分を水が流れやすくなる結果、植物栽培基材に水が多く流れることになる。よって、植物栽培基材に水が不足したり、充分に水を流すために基盤材の上方において多量の注水を行う必要が生じたりすることが無くなり、効率よく灌水することができる。
【0022】
請求項9に記載の発明は、植物栽培基材を収容可能な収容部が形成されてなる基盤材であって、前記基盤材は、多孔質構造を有しており、前記収容部を構成する壁面に表面から突出する1つ以上の突出部が設けられていることを特徴とする基盤材である。
【0023】
このように構成された基盤材において、基盤材に水が注水されると、基盤材が吸収した水は、収容部の上側に位置する突出部に集まって収容部に落下する(一例を図5(A)に示す)。このように、本発明の基盤材では収容部の内部に水が流れやすくなるため、収容部に配置される植物栽培基材に水を効率よく流すことができる。
【0024】
なお、ここでいう植物栽培基材は、植物を生育可能かつ水を透過できるものであれば様々なものを利用することができる。例えば、樹脂製のスポンジなどの多孔質構造体や、樹脂と土とを一体成形した構造体、または土そのものなどが考えられる。土を用いる場合には、形状が崩れないようにスポンジや不織布などの透水性を有するもので周囲を包んで用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】植物栽培構造体を示す写真
【図2】植物栽培基材を示す写真(A)、平面図(B)、正面図(C)
【図3】基盤材を示す写真(A)、平面図(B)、正面図(C)
【図4】保持具を示す斜視図
【図5】植物栽培構造体における水の流れを説明する側面図
【図6】植物栽培構造体の組み付けおよび植物の根の張り状態を説明する図
【図7】植物栽培構造体の変形例を示す図
【図8】保持具の変形例を示す図
【図9】従来の植物栽培構造体における水の流れを説明する側面図
【図10】従来の植物栽培構造体において保持具を用いた際の接触面積の低下を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示にすぎず、本発明が、下記の事例以外にも様々な形態で実施できるのはもちろんである。
[実施例1]
(1)全体構成
本実施例の植物栽培構造体1は、図1に示すように、植物3を生育可能な植物栽培基材11と、植物栽培基材11が複数組み付けられて植物3を並べて固定する基盤材13と、を有する。
【0027】
植物栽培基材11を図2(A)〜(C)に示す。図2(A)は植物栽培基材11の斜視図(写真)、図2(B)は植物栽培基材11の平面図、図2(C)が植物栽培基材11の正面図である。
【0028】
植物栽培基材11は、略円柱状であって、より具体的には円柱状の軸方向に沿って一方が徐々に細くなるいわゆる円錐台形状となっている。
植物栽培基材11の上面および下面のうち、相対的に広い面を上面21、相対的に狭い面を下面23として説明する。この植物栽培基材11では、上面21から植物が伸びだすように植物が育成される。そのため、図示していないが、上面21には凹部やスリットを形成して、それにより植物やその種子を保持できるように構成してもよい。
【0029】
この植物栽培基材11の側面には、上面21から下面23にかけて軸方向に沿って伸び、外側に突出する基材突出部25が複数形成されている。この基材突出部25は弾性を有している。
【0030】
また、この植物栽培基材11は多孔質構造を有するものであるため、水が透過可能であり(以下、単に透水性を有する、と記載することがある)、また植物の根が伸びて植物栽培基材11の内部に進入可能である(以下、単に透根性を有する、と記載することがある)。
【0031】
この植物栽培基材11の材質としては、例えば、ラテックス樹脂、あるいはエチレン樹脂やプロピレン樹脂やスチロール樹脂やウレタン樹脂やフェノール樹脂、酢酸セルロース等を発泡させた各種発泡樹脂材で構成したものを利用できる。また、ピートモスなどの有機質培土材を圧縮成形したもの、セルロースなどの繊維状成形物、セラミックなどの無機質発泡物、通常培土として用いられる各種の土壌を樹脂バインダーや接着剤等を用いて成形して本発明の植物栽培床材として用いることも出来る。また、本発明における前記植物栽培床材は、バーク堆肥やピートモス、腐葉土などの有機質培土材を混合したものを、例えばポリエーテルポリオール(ポリオール成分)とポリイソシアネート(イソシアネート成分)とを反応させて得られる親水性ウレタンプレポリマーによって固結成形により一体成形し、多孔質で弾力を有した状態に形成してあるものであってもよい。また、土をそのまま(樹脂と混合して一体成形することなく)用いる場合には、その形状が崩れないように、スポンジや不織布などの透水性を有するものによって周囲を包んで用いてもよい。
【0032】
基盤材13を図3(A),(B)に示す。図3(A)は基盤材13の斜視図(写真)、図3(B)は基盤材13の平面図、図3(C)は基盤材13の正面図である。
基盤材13は、直方体のブロック形状であって、面31に2つの貫通穴33が形成されている。この貫通穴33が本発明の収容部に相当するものであって、植物栽培基材11が収容可能に構成されている。この貫通穴33は、面31の裏面35まで開いており、植物栽培基材11の外表面に沿うように裏面35側ほど孔径が小さくなるように形成されている。
【0033】
また、基盤材13は多孔質構造を有するものであるため、透水性および透根性を有している。
この貫通穴33には、面31から裏面35にかけて貫通穴33の軸方向に沿って伸び、貫通穴33の内側方向に突出する基盤突出部37が複数形成されている。この基盤突出部37は弾性を有している。
【0034】
なお、基盤材13の材質は特に限定されないが、例えば上記植物栽培基材11と同様のものを用いることができる。
植物栽培基材11を基盤材13の貫通穴33に挿入することで、図1のように組み付けられる。植物栽培基材11は貫通穴33に挿入する方向の奥側が細くなっているため、容易に挿入を実現することができる。
【0035】
また、植物栽培基材11が基盤材13の貫通穴33に挿入された状態では、基材突出部25は貫通穴33を形成する壁面に接触して圧縮される。同様に、基盤突出部37も植物栽培基材11の側面に接触して圧縮される。
【0036】
なお、植物栽培基材11が基盤材13の貫通穴33から容易に脱落してしまうことを防止するために、図4に示す保持具41を用いてもよい。
保持具41は、基盤材13の面31における貫通穴33以外の部分を覆う板状部43と、板状部43に設けられ、貫通穴33に挿入される挿入部45と、板状部43とは別体に形成され、板状部43に固定可能なロック部材51と、からなる。
【0037】
挿入部45は、貫通穴33の表面に沿って伸びる複数の細い棒状部材53および棒状部材53の先端を連結する環状部材55からなる。
ロック部材51は、板状部43に形成された複数の穴47に挿入して係合する係合部49を有している。そしてこの係合部49を穴47に係合させることで板状部43への固定が実現される。また、ロック部材51は中心に開口57が形成されている。
【0038】
この保持具41は、図6(A),(B)にその概要を示すように、植物栽培基材11と基盤材13の間に挟まるように配置される。より詳細には、まず、板状部43を基盤材13の面31を覆うように基盤材13に取り付ける。そのとき同時に挿入部45が貫通穴33に挿入される。その状態で植物栽培基材11を貫通穴33に(挿入部45)に挿入する。そしてロック部材51を板状部43に固定する。このように組み付けられた状態においては、ロック部材51により植物栽培基材11の脱落が防止される。なお植物3はロック部材51の開口57を通過することとなる。
(2)発明の作用・効果
本実施例の植物栽培構造体1による作用・効果を説明する。まず、図5(A),(B)を用いて、基盤材13の基盤突出部37による作用・効果を説明する。
【0039】
図5(A)は、基盤材13を縦方向に複数並べて積んだ状態を示している。上方から水を流したときの水の流れを矢印で示す。上方から流れる水は、貫通穴33の周囲においては、突出している基盤突出部37に水が集まり、貫通穴33内部に多くの水が流れることとなる。そのため、貫通穴33に植物栽培基材11を挿入すると、図5(B)に示すように、基盤突出部37から植物栽培基材11に水が良好に流れ込む。さらに、基盤突出部37は植物栽培基材11と接触して圧縮されているため、基盤突出部37を経由して流れる水の量を増加させることができる。
【0040】
一方、図9(A)に示す従来の基盤材101では、基盤突出部37を有さないため、水は基盤材101の内部を流れやすい。よって、貫通穴103に植物栽培基材105を挿入しても、図9(B)に示すように、植物栽培基材105に充分に水が流れない。特に、図10に示すように、保持具41を用いると基盤材101と植物栽培基材105とが接触しにくくなるため水の流れが悪化しやすく、このような問題が顕著になりやすい。
【0041】
なお、植物栽培基材105を貫通穴103の径よりも大きく形成すると、植物栽培基材105の表面全体、および、基盤材101において貫通穴103を構成する側面全体が圧縮されるが、この場合にも植物栽培基材105への流量を増加させることはできず、効果的な灌水を行うことはできない。この理由としては、貫通穴103を構成する側面全体が圧縮されて水を吸収しやすくなることから、基盤材101の内部を流れ貫通穴103の表面付近に到達した水が、植物栽培基材105に移らずに圧縮された貫通穴103の側面(即ち基盤材101の内部)を流れるためであると考えられる。
【0042】
しかしながら、本実施例の植物栽培構造体1では、基盤突出部37により植物栽培基材11との充分な接触が実現されるため、そのような問題が解消される。
また、図示しないが、植物栽培基材11の基材突出部25も同様に、基盤材13との接触状態を良好にすることができるため、植物栽培基材11に流れる水の量を増加させることができる。
【0043】
また、図6(B)に示すように、基盤材13は植物栽培基材11と同様に透水性、透根性を有しているため、植物3は基盤材13においても根3aを張ることができる。このように根を張るスペースを広くすることで、植物3は根から水や空気の吸収を良好に行うことができるため、植物3の状態を良好に維持することが容易になる。
(3)変形例
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0044】
例えば、上記実施例においては、植物栽培基材11および基盤材13の両方に対して突出部(基材突出部25および基盤突出部37)が形成される構成を例示したが、突出部はいずれか一方にのみ構成されていてもよいし、図7(A)に示すように、突出部に変えて、突出部と同様の弾性、透水性、透根性を有する接続部材61が別途用いられる構成であってもよい。この場合には、棒状の接続部材61を植物栽培基材と基盤材との間に挟まれるように配置することで、接続部材61が圧縮されて、突出部と同様の機能を発揮することができるようになる。
【0045】
この接続部材61は、その長手方向を貫通穴33の貫通方向に沿うように配置するとよい。なお、接続部材61は棒状以外の形状でもよく、例えば角柱形、球形などの塊状であってもよい。またそれらを、図7(B)に示すように、接続部材61よりも薄いワイヤー63やシート状の部材などによって、植物栽培基材11の側面に沿った形状に連結しておけば、植物栽培基材と基盤材との間への取り付けを容易に行うことができる。
【0046】
また、基盤材13には2つの貫通穴33が形成される構成を例示したが、1つであってもよいし、3つ以上が形成されていてもよい。
また、植物栽培基材11として円柱形状(円錐台形状)のものを例示したが、それ以外の形状であってもよい。例えば、角柱形状が考えられる。
【0047】
また、上記実施例においては、基材突出部25は植物栽培基材11の軸方向に沿って形成される構成を例示したが、それ以外の向きに形成されていてもよい。例えば、植物栽培基材11の軸を中心とした円周方向に伸びるように形成されていてもよい。
【0048】
また、基盤突出部37の形成される方向も同様に上記実施例の構造に限定されるものではない。例えば貫通穴33の軸を中心とした円周方向に伸びるように形成されていてもよい。
【0049】
また、図7(C)に示すように、基盤材13の外部表面に1つ以上の突起部65を形成してもよい。このように突起部65を形成することで、基盤材13を重ねたり、密着した状態で隣接させて配置したときに、基盤材13間において突起部65が圧縮された状態となっているため、その部分を水が流れやすくなる。よって、基盤材13間を水がスムーズに移動し、効率よく灌水することができる。
【0050】
また、保持具41においてロック部材51は図4に示す形状に限定されない。例えば、図8に示すように、係合部71と押さえ部73とからなるロック部材75を用いてもよい。
【0051】
また、保持具41における挿入部45において、棒状部材53は複数は位置されるが、その間隔は、板状部43を基盤材13に取り付けた状態で、基盤突出部37と接触しない間隔とするとよい。具体的には、棒状部材53を、基盤突出部37の間隔と同じ間隔で配置したり、基盤突出部37の間隔の整数倍の間隔で配置することが考えられる。また、基材突出部25に対しても、基盤突出部37と同様に接触しないように構成するとよい。
【符号の説明】
【0052】
1…植物栽培構造体、3…植物、3a…根、11…植物栽培基材、13…基盤材、21…上面、23…下面、25…基材突出部、31…面、33…貫通穴、35…裏面、37…基盤突出部、41…保持具、43…板状部、45…挿入部、47…穴、49…係合部、51…ロック部材、53…棒状部材、55…環状部材、57…開口、61…接続部材、63…ワイヤー、65…突起部、71…係合部、73…押さえ部、75…ロック部材、101…基盤材、103…貫通穴、105…植物栽培基材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質構造を有する植物栽培基材と、
多孔質構造を有し、前記植物栽培基材を収容可能な収容部が形成されてなる基盤材と、からなる植物栽培構造体であって、
前記植物栽培基材および前記基盤材の少なくともいずれか一方には、弾性を有し表面から突出する1つ以上の突出部が設けられており、
前記植物栽培基材が前記基盤材に収容された状態では、前記突出部が前記一方とは異なる他方と接触して圧縮された状態となる
ことを特徴とする植物栽培構造体。
【請求項2】
前記植物栽培基材は略円柱状に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の植物栽培構造体。
【請求項3】
前記突出部は、前記植物栽培基材の表面において、前記植物栽培基材の軸方向に沿って形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の植物栽培構造体。
【請求項4】
前記植物栽培基材は、前記収容部への挿入方向における奥側ほど細くなるように形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の植物栽培構造体。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の植物栽培構造体を構成する植物栽培基材であって、前記突出部が設けられていることを特徴とする植物栽培基材。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の植物栽培構造体を構成する基盤材であって、前記突出部が設けられていることを特徴とする基盤材。
【請求項7】
前記基盤材は、弾性を有し外部表面から突出する1つ以上の突起が設けられている
ことを特徴とする請求項6に記載の基盤材。
【請求項8】
多孔質構造を有する植物栽培基材と、
多孔質構造を有し、前記植物栽培基材を収容可能な収容部が形成されてなる基盤材と、を有する植物栽培構造体であって、
多孔質構造および弾性を有する棒状または塊状の部材であって、前記植物栽培基材が前記基盤材に収容された状態において、前記植物栽培基材と前記基盤材との間に挟まれるように配置され、前記植物栽培基材および前記基盤材と接触して圧縮された状態となる接続部材を備える
ことを特徴とする植物栽培構造体。
【請求項9】
植物栽培基材を収容可能な収容部が形成されてなる基盤材であって、
前記基盤材は、多孔質構造を有しており、前記収容部を構成する壁面に表面から突出する1つ以上の突出部が設けられている
ことを特徴とする基盤材。
【請求項1】
多孔質構造を有する植物栽培基材と、
多孔質構造を有し、前記植物栽培基材を収容可能な収容部が形成されてなる基盤材と、からなる植物栽培構造体であって、
前記植物栽培基材および前記基盤材の少なくともいずれか一方には、弾性を有し表面から突出する1つ以上の突出部が設けられており、
前記植物栽培基材が前記基盤材に収容された状態では、前記突出部が前記一方とは異なる他方と接触して圧縮された状態となる
ことを特徴とする植物栽培構造体。
【請求項2】
前記植物栽培基材は略円柱状に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の植物栽培構造体。
【請求項3】
前記突出部は、前記植物栽培基材の表面において、前記植物栽培基材の軸方向に沿って形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の植物栽培構造体。
【請求項4】
前記植物栽培基材は、前記収容部への挿入方向における奥側ほど細くなるように形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の植物栽培構造体。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の植物栽培構造体を構成する植物栽培基材であって、前記突出部が設けられていることを特徴とする植物栽培基材。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の植物栽培構造体を構成する基盤材であって、前記突出部が設けられていることを特徴とする基盤材。
【請求項7】
前記基盤材は、弾性を有し外部表面から突出する1つ以上の突起が設けられている
ことを特徴とする請求項6に記載の基盤材。
【請求項8】
多孔質構造を有する植物栽培基材と、
多孔質構造を有し、前記植物栽培基材を収容可能な収容部が形成されてなる基盤材と、を有する植物栽培構造体であって、
多孔質構造および弾性を有する棒状または塊状の部材であって、前記植物栽培基材が前記基盤材に収容された状態において、前記植物栽培基材と前記基盤材との間に挟まれるように配置され、前記植物栽培基材および前記基盤材と接触して圧縮された状態となる接続部材を備える
ことを特徴とする植物栽培構造体。
【請求項9】
植物栽培基材を収容可能な収容部が形成されてなる基盤材であって、
前記基盤材は、多孔質構造を有しており、前記収容部を構成する壁面に表面から突出する1つ以上の突出部が設けられている
ことを特徴とする基盤材。
【図4】
【図8】
【図10】
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図8】
【図10】
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【公開番号】特開2012−5427(P2012−5427A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145114(P2010−145114)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(300011092)▲吉▼坂包装株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(300011092)▲吉▼坂包装株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
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