説明

植物栽培温室

【課題】自然現象を利用し、冬季でも野外で効果的かつ低コストで保温しかつ、頑丈で、管理がしやすい植物栽培温室を提供する。
【解決手段】栽培床の上方を立体的に覆う植物栽培温室であって。この植物栽培温室は、陽面方向と対向する背板と背板の両端から陽面方向に張り出る側板、この両側板に両端を直接した正面板と、これら背板(4)、左側板(2)、右側板(3)、正面板(5)との上端縁に接する天板(1)により栽培空間を構成し、前記正面板(5)は採光可能な資材で構成され、受光促進角度に傾斜し、及び開閉可能なものである。前記天板(1)は水平か水勾配を持つものであり、栽培環境の調節を天板の開閉において行うことを特徴とする植物栽培温室。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野外において簡易かつ低コストで、効果的に植物栽培を行える植物栽培温室に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在植物の施設栽培では、金属を骨組みにしたビニール、アクリル、ガラス温室(以下温室と呼称する)が主流である。簡易なものでもプラスチック、金属、竹をフレームにしたビニール被膜トンネル(以下トンネルと呼称する)である。どちらも採光性に優れているが夜間の保温性は露地よりましという程度である。そのため冬季の植物栽培では、温室内に二重又は三重のビニールにて被膜(以下内張りと呼称する)を行い、大型加温機にて加温を行っている。トンネルにおいては電熱線及び小型加温機を使用するか、限られた種類の植物を栽培するのみである。いずれにしても、夜間の加温にコストをかけるか、同時期の露地と変わらない種類の植物を栽培するかのどちらかとなる。
【0003】
類似した形状のものとの相違について説明する。反射板付き植物栽培ベット(特許文献1)。これは、反射板自体が構造材に組み込まれていない点、及び高設ベットにて植物を栽培する点で異なる。
【0004】
移動自在の小型育苗フレーム(特許文献2)。これは6角形の透明箱であり、本発明のように採光面、保温面の区別がなく、開閉する構造になっていない。
【0005】
組み立て分解自在な育成容器(特許文献3)。これは、組み立て式の箱にフレームを組み透明被膜をかぶせたものである。本発明のように天井部分、正面部分に開閉機能がない。
【0006】
家庭園芸用鉢(特許文献4)。これは、土の入る鉢部に発泡スチロールを使用し、天井部に傾斜させた透明採光部がある。本発明のように、地表を覆う構造のものではなく又、天井部分、正面部分に開閉機能がない。
【0007】
大正時代より現在にも残る多くの形式の温室、小型フレームが考案されてきた。この中で類似のものから本発明の植物栽培温室との相違を説明する。
【0008】
低設フレーム及び高設フレーム(非特許文献1)。これは、木枠を作りそれに傾斜をつけてガラス障子で覆う構造である。家庭園芸用鉢(特許文献4)と同様の構造である。開閉はガラス障子で行うもので、本発明の植物栽培温室の構造のように換気採光用の開閉面と作業用の開閉面と分けていない点が異なる。
【0009】
小温室の分類の中に方屋根式温室というものがある。端的に説明すると、北側に高い壁を持ち南面にのみ急傾斜した一面だけの屋根を持った温室(非特許文献2)。これは、既存の塀や建物を利用して立てられたり、北側の部分の材質がコンクリート、レンガ、板等様々な特徴をもつ(非特許文献3)、(非特許文献4)、(非特許文献5)、(非特許文献6)。これらの方屋根式温室は、通常の温室と同じく天井部の一部が換気用に開閉する。又一部のものは南面壁部の一部が換気用に開閉する構造を有している。形状より、夏季高温になり植物栽培に適さない欠点を有する。本発明の植物栽培温室は、天井部自体が開閉面であり、換気だけでなく積極的に直射光を取り込むことの出来る構造であり又、天板部は陽面板の取り付け角度と関連し、熱せられた空気が集まりやすい形状になっている。このため、日中の高温時に効率よく換気し温度を下げることが出来る。正面板の透明面は作業用の開閉面であり、通常の使用時には開閉がなく作業開口時に支障がない広さを持つ構造になっている。又、構造的に背板、左側板、右側板にて自重を支持するためその他に支持具を必要としない。以上の点が異なる。
【0010】
従来温室メロン栽培にて用いられてきたスリークオーター型ハウスがあるが、これは屋根型ハウスの北方面四分の一切り取った形である(非特許文献2)、(非特許文献3)、(非特許文献4)、(非特許文献5)、(非特許文献6)。これも、上記方屋根式温室で説明したような理由と重なるが、本発明の植物栽培温室は、天井部自体が開閉面であり、換気だけでなく積極的に直射光を取り込むことの出来る構造であり又、天板部は正面板の取り付け角度と関連し、熱せられた空気が集まりやすい形状になっている。このため、日中の高温時に効率よく換気し温度を下げることが出来る。正面板の透明面は作業用の開閉面であり、通常の使用時には開閉がなく作業開口時に支障がない広さを持つ構造になっている。以上の点が異なる。
【0011】
上記方屋根式温室と類似する構造であるが最近研究されているものに日光温室というものがある(非特許文献7)。これは、中国北部で広く使用されている省エネルギー型温室であり、透光面は南面のみで、北、東、西が固定壁となっており、これら壁体および地面の畜熱・放熱作用によって、冬季においても無加温もしくは簡易な暖房設備のみで作物栽培を行う温室である。これは、南面半球形透明面を含み4面にて構成されていることが本発明の植物栽培温室との最大の相違点である。又、畜熱、保温力を重視するあまり開口部が少なく換気性に難点が見られる、冬季とはいえ急激な温度変化を有する日本の環境での使用は難しいと考えられる。上記方屋根式温室の説明と重なるが、本発明の植物栽培温室は、天井部自体が開閉面であり、換気だけでなく積極的に直射光を取り込むことの出来る構造であり又、天板部は正面板の取り付け角度と関連し、熱せられた空気が集まりやすい形状になっている。このため、日中の高温時に効率よく換気し温度を下げることが出来る。正面板の透明面は作業用の開閉面であり、通常の使用時には開閉がなく作業開口時に支障がない広さを持つ構造になっている点が異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】実開59−136943号公報
【特許文献2】実開51−12649号公報
【特許文献3】実開51−60448号公報
【特許文献4】実開53−955号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】小温室とフレームの作り方並暖房法 昭和3年11月20日発行
【非特許文献2】温室の経営と建て方 昭和13年1月20日発行
【非特許文献3】温室=ビニールハウス園芸ハンドブック 昭和47年8月1日発行
【非特許文献4】簡易温室園芸 昭和25年10月20日発行
【非特許文献5】温室と促成栽培 昭和6年5月10日発行
【非特許文献6】温室園芸の技術と経営 昭和40年5月18日発行
【非特許文献7】農業施設 97号 p31〜37
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
温室とは、植物の生育に最適な温度条件を与えることを目的に作られたものである、そのため、日中は高温障害を回避するため通気を良くし、夜間は生育温度を維持するために密閉するといった相反する作業を行わなくてはならない。近年問題になってきていることは、生産コスト低減、地球温暖化防止等の観点からの化石燃料の使用削減である。この点、従来の温室は外部からのエネルギー投入を前提に設計されており、採光以外、コストのかからない自然現象を利用する形状ではなかった。
【0015】
昼間の熱は土壌に蓄積されており、夜間蓄積した熱を地表に放出しているが、温室に使用されているビニール等の透明資材、骨組みの金属は昼間蓄積した温度を夜間放熱させてしまう問題点があった。透明部材に使用されるアクリル、ガラス等はビニールと比較して保温性は高いが初期投資も高くなる問題があった。
【0016】
温室内部に内張りを行い放熱を防いでいるが、透明部材を用いているとはいえ採光性が落ちてくる上に、作業又は、風など自然現象で土ぼこりや排気ガスの粉塵が付着し透明度が低下し採光性が落ちるという問題点があった。
【0017】
温室内では、冬季であっても昼間の温度は高くなるため内張りをはずさなくてはならない。そのためコストのかかる機械式のものを使用するか、人力にて開放している。いずれも手間かコストがかかり又、内張りに用いたビニールが毎日の開閉作業で劣化し破損しやすくなっている問題点が挙げられる。
【0018】
イチゴでは毎年、他の植物でも数年に1回はビニール被膜の交換を行わなくてはならない。これが近年、処分料が高くなってきており、経営コストの負担になってきている。
【0019】
日中高温時、温室では天頂部や肩部の一部を開放して換気し温度低下をはかっているが、天頂部に開口部がある場合はよいが肩部に開口部があるものは、空気の流通が悪く温度管理に支障がでる。又、構造的にその部分が弱くなるため、風等の自然災害にて破損したり、密閉度が悪くなり夜間の保温に問題が生じる。
【0020】
現在冬季、付加価値のある植物を温室において栽培するのには加温機が用いられている。温室のような広い内部容積のあるところを加温するためには高価な大型の加温機が必要になる。また、加温機に使用する燃料が経営コストの最大の負担となっている。
【0021】
以上挙げた問題点は、透明資材からの採光性を重視した温室の構造上の問題であると考えられる。このため冬季の植物栽培は、内張り、大型加温機の使用を前提として経営コスト増大させている。
【0022】
温室より簡易に用いられているトンネルは、ビニールからの放熱と内部容積の少なさから夜間の保温性が非常に悪い。そのため植物栽培において、作期が限定されたり植物の種類が限定されたり、栽培期間が長期間になってしまったり、又は、電熱線または小型加温機にコストをかけなくてはならない問題がある。
【0023】
上記トンネルは、冬季でも晴天時、昼間は植物生育に適さないくらい高温になるので、日中ビニール被膜を除去しなくてはならない。この手間が経営上の負担になっている。また、除去したビニールが地面と接触し汚れ、使用していくうちに採光性が悪化していく問題点もある。
【0024】
上記トンネルおよび上記温室内部の植物は乱反射光をかなり利用している。しかし透明部材より直射光を取り入れることのみ考えられ入射した光の乱反射に配慮したところは見られない。
【0025】
上記トンネルはその簡易な構造上、フレームをアーチ状に地面に刺してあるところにビニール被膜をしているだけなので、風で飛ばされたり、雨水がたまって潰れたりして内部にて栽培している植物が被害に遭うことがある。
【0026】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、夜間植物栽培空間の保温、日中の採光、及び換気が効率よく行えることの出来る植物栽培温室を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
請求項1に記載の本発明に係る植物栽培温室は、栽培床の上方を立体的に覆う植物栽培温室であって。この植物栽培温室は、陽面方向と対向する背板と背板の両端から陽面方向に張り出る側板、この両側板に両端を直接した正面板と、これら背板(4)、左側板(2)、右側板(3)、正面板(5)との上端縁に接する天板(1)により栽培空間を構成し、前記正面板(5)は採光可能な資材で構成され、受光促進角度に傾斜し、及び開閉可能なものである。前記天板(1)は水平か水勾配を持つものであり、栽培環境の調節を天板の開閉において行うことを特徴とするものである。
【0028】
請求項2に記載の発明は、上記天板(1)、左側板(2)、右側板(3)、背板(4)は、アルミニウムまたは鉄よりも保温性の高い素材を1種類又は数種類組み合わせて使用し、透明又は内部が白又は銀色であることを特徴とするものである。

【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、請求項1記載の植物栽培温室によれば、日中土壌に蓄積された熱を夜間、内部空間から外部空間への放熱を妨げることによって植物生育に有効に利用できる。日中高温時、天板を開放することにより温度を下げ、効率よく通気、採光がおこなえる。また、正面板は冬季の太陽角度にあわせて傾けてあるので、その他の角度よりも冬季の直射光の入射量がおおい。なお、植物管理作業中陽面板が上方に開くので地面との接触がなく汚れる心配がない。
【0030】
また、請求項2に記載の発明によれば、夜間の保温性を高め、また、正面板より、日中は天板開口部からも入射した太陽光を効果的に乱反射し植物生育の一助となっている。
【0031】
現在当農園にて使用しているビニールハウス高さ2,2m、中心最大約5mアーチ型に比較した実験結果を提示する。(表1)記載されている温度は夜間最低温度であり、植物栽培温室は最高最低温度計、簡易加温ビニールハウスはデジタル式最高裁低温度計を使用した。野外温度は静岡地方気象台のデータを引用させていただいた。当農園の立地環境は、気象台より西方の山地にあるため慣習的に気象台のデータより気温2〜3度低めに見積もることがある。簡易加温ビニールハウスは内張りを行った1000mのものを農業用ビニールにて270mに区切り、小型加温機2機設置した。加温は午前1時より午前6時までタイマー式のスイッチを使用した。植物栽培温室は野外に正面板方向を南に向け設置した。天板を閉める時間が遅くなると、内部の温度を放熱してしまい最低気温が低くなってしまうが、天候にもよるが午後2時を目安に天板を閉鎖すれば植物栽培温室内が高温にならず蓄積した熱を有効に利用できる。データを比較して見ると、簡易加温ハウスとほぼ変わらない数値が出ている。2月20日、21日はかなり極端な例ではあるが、風が強く吹く寒い日にはよくある現象で、通常のビニールハウスの密閉度に問題があることが伺える。植物栽培温室は自然現象を利用するものであるから天候の影響を受けやすいが、その構造よりなる保温性はかなり有効であると考えられる。

【0032】
(表1)

【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】植物栽培温室全体図
【図2】天板板開放図(通常使用時)
【図3】正面板開放図(植物管理作業時)
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、本発明の植物栽培温室の一実施形態を示すものである。図中符号4が背板、符号2が左側板、符号3が右側板、この3枚が固定され土台を作る。背板の反対側には左側板から右側板へ柱が上方1本、下方1本2本渡され固定される。この間に透明部材を張った符号5の正面板が上方に渡された柱に金具で開閉できるように固定される。符号1の天板は背板と正面板が固定された上方の柱の間に装着され、背板に開閉可能な金具にて固定される。設置は、正面板方向を南向きとする。
【0035】
背板、左側板、右側板、天板はアルミニウムまたは鉄よりも保温性の高い素材を使用し、透明又は、内部が白又は銀色であることを特徴とする。具体的には、木材、紙、FRP、アクリル、プラスチック等合成樹脂類、発泡スチロール等発泡樹脂類、発泡コンクリート等を一種又は数種類合わせて使用する。透明な素材ではない場合、内側を白又は銀色の塗装、色紙の貼り付けをおこなう。保温をかねて白色の発泡スチロールを貼り付けてもよい。素材の選択には、一般的な風雨に耐えられる強度を持つことが望ましく、理想的には風速20mに耐えられるものである。最低でも、背板、左側板、右側板には補強用の金具及び部材を用いる。
【0036】
正面板は、必ず透明な部材を用いる。具体的には、透明なビニール、透明なアクリル、透明なプラスチック等合成樹脂類、透明なガラス等。ビニールの場合、木材などで枠を作りそれに放熱を最小限とするため2重に貼り付ける。これら透明部材を複数組み合わせてもよい。
【0037】
正面板の取り付け角度は、地域ごとの冬季太陽角度に応じて水平線より、35度以上60度以下の間で決定する。これにより冬季効率的に太陽光を入射し、また、晩春から夏季にかけ気温が上昇し太陽光の入射量が多くなった場合、太陽光の一部を反射させ内部空間の温度上昇を抑える働きをする。
【0038】
正面板は、上方一辺が開閉可能な金具で取り付けられているので、開口時作業の障害にならずかつ、地面と接触し透明部位が汚れる恐れが少ない。
【0039】
天板部は一番放熱しやすく、換気しやすい部分であるため保温性が高くかつ、日中開口し換気するため軽くて強度のある部材を使用する。一例では、木材と発泡スチロールの組み合わせで、強度は木材が負担し、保温効果は木材、発泡スチロール両方にて高める方法がある。この、天板の開閉は人力又は形状記憶合金、形状記憶樹脂およびピストン等熱感知式自動開閉装置を用いてもよい。
【0040】
又、天板部は正面板の取り付け角度と関連し、熱せられた空気が集まりやすい形状になっている。このため、日中の高温時に効率よく換気し温度を下げることが出来る。なお、夜間は天板自体の重量で閉鎖されるので密閉度がよく、天板の素材の特性と相まって効果的に保温できる。
【0041】
又、天板は日中開放し直射日光を内部に取り入れることが出来る。このため、天板素材に不透明な物質を使用しても採光に支障がない。
【0042】
本発明の植物栽培温室を構成する各々の面は、密閉と開閉可能面が効率よく稼動できるのならば直面だけでなくアールがかかった面でもよい。
【0043】
以上の構成からなる植物栽培温室によれば、放熱部分が少ないため夜間の保温か効果的に行われかつ、日中又は高温期天板を開口することにより容易に放熱、通気、採光を行い、植物に好適な環境を提供できる。よって加温機、電熱線等に使用されるエネルギーコストを大幅に減らすことが出来る。
【0044】
また、構造自体が単純であるため工作、組み立てが簡易であり低コストで提供できる。
【0045】
また、通常の使用では日中蓄積された地熱を夜間利用するが、本発明の植物栽培温室はその保温性の良さから40〜60℃の低温ながら安定して発生する発酵熱も有効的に利用できる。
【0046】
また、背板、左側板、右側板、天板は、透明又は内側が白又は銀色であるため、日中、悪天候で気温の低い場合でも正面板より取り入れた光を乱反射させ植物生育を助ける。
【0047】
本発明は以上の構成からなるので、本発明の植物栽培温室の背板に水タンクを取り付け、パイプ又はホースにて水を内部植物栽培空間に導いてやれば潅水の省力化が出来る。あわせて天板に自動開閉装置を用いれば、植物栽培の半自動化が可能となる。
【0048】
この使用例について具体的に説明する。温室栽培で問題になる点は生育最低温度確保の他潅水である。潅水が簡易に出来ないと植物栽培が成立しない。この点、本発明の植物栽培温室に取り付け可能な水タンクは試算で315Lである。これは、実験にて使用した植物栽培温室内には112,5mmの雨量に相当する。天板と水タンク開口部、水タンクの蓋を利用して降雨を貯水する事が出来る。静岡気象台のデータより2009年度の降雨量を表にした。1日10mm以上の降雨量を貯水可能な降雨と経験より推定しまとめた。(表2)貯水量は降雨量と天板、水タンク開口部、水タンクの蓋の合計面積より算出した。この数値より考えると、栽培植物種類と潅水資材の種類にもよるが、水タンクに補給する水の量を大幅に減らすことが出来る。このため、現在耕作放棄が著しい傾斜地にも本植物栽培温室を置くだけの広さがあれば植物栽培を効率的に行うことが出来る可能性がある。
【0049】
(表2)

【0050】
また、天板内側に補光用の光源を取り付け、弱日照条件時の植物の生育補助又は、植物の生育促進に積極的に利用できる。
【0051】
また、その密閉度と保温性を生かして、一作毎又は、夏季集中して温室を閉鎖し内部を高温条件にし、除草、病害虫防除、有機物の分解促進を行うことが出来る。
【0052】
また、保温性と乱反射を行いやすい特徴を生かし、移動可能な大きさであるならば、夏季に正面板方向を北面に設置しなおして、太陽光の直射光を防ぎ、高温障害を回避し乱反射光のみで栽培することが可能となる。
【0053】
正面板下部に一面もうけ、冬季はその面は閉鎖しておき、初夏より外部温度が高くなったら撤去し開放する。これにより正面板下部から天板開口部より換気が効率よく行える。
【実施例】
【0054】
当園地での実験で使用した植物栽培温室にて説明する。天板、左側板、右側板、背板は厚さ12mmの合板を使用した。各々内側には厚さ20mmの白色発泡スチロールを貼り付けた。正面板は3cm角の杉材にて枠を作り、厚さ0,2mmの農業用ビニールを2重に貼り付けた。取り付けは四方に3cm角の杉材を取り付け各部ごとビスにて固定した。開閉部である天板と正面板は蝶番を各4ヶ使用し取り付けた。完成品の大きさは、正面より見て、幅約4m、奥行き約1m、高さ約1mである。
【0055】
強度の証明のため静岡気象台のデータを参照にする。平成22年1月20日実験開始よりの瞬間最大風速10m以上の日は1月には7日間最大値は1月21日16,5mであった。2月は13日間最大値は2月6日16,7mであった。現在までのところ故障した部位はなかった。
【0056】
(表1)にて提示したデータより、その構造よりなる保温力は植物を凍結させる恐れがないため、現在播種床として利用している。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の植物栽培温室の構造より、その保温性のよさから発生する高温を利用してスターリング機関等の熱機関または、熱利用の発電半導体を使用して発電に使用可能な可能性がある。
【0058】
同様にその高温発生可能な特性を利用して収穫物等の乾燥器として利用することが出来る可能性がある。
【符号の説明】
【0059】
1天板
2左側板
3右側板
4背板
5正面板



【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培床の上方を立体的に覆う植物栽培温室であって。この植物栽培温室は、陽面方向と対向する背板と背板の両端から陽面方向に張り出る側板、この両側板に両端を直接した正面板と、これら背板(4)、左側板(2)、右側板(3)、正面板(5)との上端縁に接する天板(1)により栽培空間を構成し、前記正面板(5)は採光可能な資材で構成され、受光促進角度に傾斜し、及び開閉可能なものである。前記天板(1)は水平か水勾配を持つものであり、栽培環境の調節を天板の開閉において行うことを特徴とする植物栽培温室。

【請求項2】
上記天板(1)、左側板(2)、右側板(3)、背板(4)は、アルミニウムまたは鉄よりも保温性の高い素材を1種類又は数種類組み合わせて使用し、透明又は内部が白又は銀色であることを特徴とする請求項1記載の植物栽培温室。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−177055(P2011−177055A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42437(P2010−42437)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(309029452)
【Fターム(参考)】