説明

植物栽培装置

【課題】簡単な構成で構築することで、製造に要する工数が増大せず、コストの抑制を図ることができる植物栽培装置を提供する。
【解決手段】植物栽培装置10は、植物の栽培床となる土壌が入れられ、略環状に配置された栽培容器Pの円中心に設置され、小屋形状に形成された装置フレーム20の天井部21に配置された回転駆動手段30と、回転駆動手段30の駆動軸35の回転に伴って栽培容器Pの内周側を回転する支持部材40と、支持部材40に支持され、栽培容器Pに植栽された植物の育成を促進させる育成手段60とを備えている。支持部材40の垂下部材42が近づいた栽培容器Pの植物に、発光ユニット61からの紫外線が照射されると共に、散水ノズル62から噴霧された水が植物に供給される。従って、略環状に配置された栽培容器Pの植物に、順に、かつ満遍なく、光を照射したり水を供給したりすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内栽培される植物を照明手段や散水手段により生長させる植物栽培装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物工場やハウス栽培などの屋内栽培で育成される植物には、太陽光の代わりに光を照射する照明手段や、降雨の代わりに水を供給する散水手段が必要である。このような照明手段や散水手段が設けられた植物栽培装置が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、略十二角形の断面を有する筒状の発光ユニットの下部に設けられた略円筒形状の歯車部を、モーターのピニオンで回転させて、発光ユニットからの光を植物栽培室に順次に照射して、栽培植物に所望の明期/暗期を与えることができる植物栽培装置が記載されている。また、この特許文献1には、ポンプから送られる培養液を、上蓋内の配管を介して栽培トレイの導管に流入させていることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−128571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の植物栽培装置によれば、植物栽培室の照明を、発光ユニットの発光面の回転によって順次に行うので、同一の栽培面積に対して必要な半導体発光素子の数を削減することができるとあるが、発光ユニットを発光ユニットの下部に設けた歯車部(内歯車)により回転させているため、全体の大きさが大きくなればなるほど、歯車部の直径も大きくなってしまう。
【0006】
従って、歯車部の加工に工数やコストがかかるので、発光ユニットの光源として用いている半導体発光素子の数が削減できても、削減による効果が薄くなるおそれがある。
【0007】
そこで本発明は、簡単な構成で構築することで、製造に要する工数が増大せず、コストの抑制を図ることができる植物栽培装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の植物栽培装置は、略環状に配置された植物の栽培床の円中心に設置された回転駆動手段と、前記回転駆動手段の駆動軸の回転に伴って回転する支持部材と、前記支持部材に支持され、前記栽培床に植栽された植物の育成を促進させる育成手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の植物栽培装置では、植物の栽培床の円中心に設置された回転駆動手段が、育成手段が配置された支持部材を回転させることにより植物の育成を促進させているので、育成手段を回転させるための直径が大きな歯車を設けることなく育成手段を回転させることができる。ここで、略環状に配置された植物の栽培床とは、栽培床が円形状や円弧状、多角的状に配置されていたり、栽培床同士の間に隙間を確保した状態で円周上に配置されていたりしているものを含む。
【0010】
前記支持部材は、前記回転駆動手段の駆動軸を中心として非点対称に配置され、前記駆動軸には、前記支持部材とバランスを取るための錘部材が設けられているのが望ましい。錘部材が支持部材に設けられていることで、回転駆動手段が支持部材を回転させる際に偏りなく回転させることができるので、回転駆動手段に偏心な加重が掛かってしまうことを防止することができる。
【0011】
前記回転駆動手段は、前記略環状に配置された栽培床を囲う装置フレームの天井部に支持され、前記栽培床は、前記装置フレームの支柱フレームに支持され、前記支持部材は、前記栽培床の内周側を回転するのが望ましい。回転駆動手段を天井部で支持する装置フレームの支柱フレームに、栽培床を支持させ、育成手段が配置された支持部材を、栽培床の内周側で回転させることで、栽培床を支持させるための載置台を、回転駆動手段を支持する装置フレームと兼用することができるので、別に設ける必要がない。
【0012】
前記駆動軸の回転範囲を検出するための位置センサが設けられ、前記回転駆動手段は、回転範囲内を回転往復するのが望ましい。栽培床が設けられていない範囲以外の範囲を回転駆動手段の回転範囲とし、その回転範囲を回転往復させれば、育成手段を無駄なく回転させることができる。
【0013】
前記育成手段を、前記栽培床に栽培された植物への光を照射する照明手段、または前記栽培床に栽培された植物への水を供給する散水手段のいずれか一方、または両方とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の植物栽培装置によれば、直径が大きな歯車を設けることなく育成手段を回転させることができるので、簡単な構成で構築することで、製造に要する工数が増大せず、コストの抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る植物栽培装置を示す斜視図である。
【図2】図1に示す植物栽培装置の内部構造を表す一部切欠図である。
【図3】図1に示す植物栽培装置の回転駆動手段、支持部材、育成手段を説明するための図である。
【図4】図1に示す回転駆動手段を説明するための図である。
【図5】図1に示す植物栽培装置の配線および送水チューブを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態に係る植物栽培装置について図面に基づいて説明する。
図1から図3に示す植物栽培装置10は、栽培床となる土壌が入れられた栽培容器Pに植栽された植物の一例である野菜を、屋内栽培にて生長させるためのものである。
植物栽培装置10は、小屋形状に形成された装置フレーム20と、装置フレーム20の天井部21に配置された回転駆動手段30と、回転駆動手段30の駆動軸35と共に回転する支持部材40と、バランスを取るための錘部材50と、支持部材40に配置されることで支持され、植物の育成を促進させる育成手段60と、制御ユニット70とを備えている。
【0017】
装置フレーム20は、ドーム状に形成された天井部21と、天井部21を支持する支柱フレーム22とを備えている。この装置フレーム20の外側をビニール素材により覆うことで、植物栽培装置10の屋根と壁面が形成される。
天井部21は、中心部211から半径方向に、かつ等間隔に放射状フレーム212が設けられていると共に、中心部211を円中心として放射状フレーム212に同心円状に環状フレーム213が設けられ、平面視略十二角形状に形成されている。
【0018】
支柱フレーム22は、天井部21の放射状フレーム212に対応させて地面から立設され、天井部21を支持している。この支柱フレーム22のそれぞれの間には、高さ方向に沿ってほぼ等間隔に、栽培容器Pを設置するための棚部23が入口Eとなる部分を除いて設けられている。また、支柱フレーム22が支持する棚部23の反対側には、棚部23の端部を支持する支持脚部24が設けられている。棚部23に栽培容器Pが設置されることで、略環状に配置される。
【0019】
回転駆動手段30は、図2から図4に示すように、天井部21から垂下させるための4本の吊り下げ部材31と、吊り下げ部材31に間隔をあけて固定された2枚の円形状の台部材321,322と、上側の台部材321に配置されたモーター33と、回転位置を検出するための位置センサ34と、円形状の台部材321,322の中心に配置され、モーター33の回転により支持部材40を回転させる駆動軸35とを備えている。
【0020】
台部材321には、モーター33の回転軸と同軸に設けられた駆動ギヤ331と、駆動ギヤ331に巻き回された伝達チェーン332と、2枚の円形状の台部材321,322の中心に配置され、伝達チェーン332により回転駆動される従動ギヤ333とが設けられている。
【0021】
位置センサ34は、下側の台部材322に設けられ、入口Eの幅の範囲に合わせて配置された一対の発光部341と、従動ギヤ333と共に回転して、発光部341を検出すると、検出した旨の通知を制御ユニット70へ通知する受光部342とを備えている。本実施の形態では、固定されている側を発光部341、回転する側を受光部342としているが、受光部と発光部とが入れ替わってもよい。
駆動軸35は、2枚の円形状の台部材321,322の中心に配置され、従動ギヤ333と共に回転する。本実施の形態では、モーター33の回転は駆動軸35に対して、駆動ギヤ331と伝達チェーン332と従動ギヤ333により伝達しているが、モーター33の回転が育成手段60の回転と同じ回転数を得られるのであれば、モーターを駆動軸に直結してもよい。
【0022】
支持部材40は、図3に示すように、駆動軸35の先端から半径方向に沿って延びる一本の水平部材41と、水平部材41の先端から垂下する垂下部材42とによりL字が上下に反転した形状に形成されている。
錘部材50は、駆動軸35を中心として、支持部材40の水平部材41と反対方向に設けられている。
【0023】
育成手段60は、支持部材40の垂下部材42に設けられている。本実施の形態では、育成手段60として、紫外線を照射する蛍光灯(UV蛍光灯)が配置された照明手段として機能する発光ユニット61と、水を噴霧することで散水手段として機能する散水ノズル62とが設けられている。本実施の形態では、発光ユニット61と散水ノズル62との組み合わせとして、栽培容器Pが4段積み重ねられていることで、4組設けられている。
【0024】
図5に示すように、発光ユニット61は、制御ユニット70からの電源供給を受けるための配線Wが接続されている。散水ノズル62には、水道管からの給水を受けるための送水チューブTが電磁弁Vを介して接続されている。
配線Wは、制御ユニット70から天井部21へ、天井部21の中心部211から回転駆動手段30へ垂下され、中空の駆動軸35の基端側から先端側へ挿通させた後、支持部材40の水平部材41から垂下部材42を伝わせて、それぞれ発光ユニット61へ接続されている。
送水チューブTは、電磁弁Vから天井部21へとした後は配線Wと同様に、天井部21の中心部211から回転駆動手段30へ垂下され、中空の駆動軸35の基端側から先端側へ挿通させた後、支持部材40の水平部材41から垂下部材42を伝わせて散水ノズル62とへ接続されている。
【0025】
制御ユニット70は、位置センサ34からの通知によりモーター33の回転方向を反転させたり、発光ユニット61の発光時間を制御したり、散水ノズル62により噴霧の時間を制御したりする機能を備えている。
【0026】
以上のように構成された本発明の実施の形態に係る植物栽培装置10の動作および使用状態を、図面に基づいて説明する。
制御ユニット70は、発光ユニット61の点灯時間となっているか否かを判定する。点灯時間であれば、制御ユニット70は、発光ユニット61を点灯させる。また、制御ユニット70は、散水時間となっているか否かを判定する。散水時間であれば、制御ユニット70は、電磁弁Vを開放して散水ノズル62から水を噴霧する。そして、制御ユニット70は、モーター33を回転させる。
【0027】
モーター33の回転軸が回転することで、この回転が駆動ギヤ331、伝達チェーン332、従動ギヤ333と順に伝達され、従動ギヤ333の回転により駆動軸35が回転する。駆動軸35の回転に伴って支持部材40が段積みされた栽培容器Pの内周側を回転する。
【0028】
このとき、支持部材40は、駆動軸35を中心として非点対象となるように配置されているので、駆動軸35には支持部材40による一方向の加重がかかり偏りが生じている。しかし、錘部材50が支持部材40と反対方向に設けられているため、駆動軸35を中心として支持部材40と錘部材50とでバランスが取れる。従って、駆動軸35に偏心した加重が掛かってしまうことを防止することができる。
【0029】
支持部材40の垂下部材42が近づいた栽培容器Pの植物には、発光ユニット61からの紫外線が照射される。また、散水ノズル62から噴霧された水が植物に供給される。従って、育成手段60が設けられた支持部材40が回転することで、略環状に配置された栽培容器Pの植物に、順に、かつ満遍なく、光を照射したり水を供給したりすることができる。
【0030】
回転駆動手段30により育成手段60である発光ユニット61や散水ノズル62が回転して植物に対して順番に光を照射したり水を供給したりすることができるので、育成手段60を多数設ける必要がない。従って、植物栽培装置の製造コストを抑制することができる。
【0031】
駆動軸35の回転と共に、受光部342が回転して、一方の発光部341を検出すると、受光部342から一方の発光部341を検出した旨の通知が制御ユニット70へ通知される。これにより、制御ユニット70はモーター33に反転を指示する。モーター33の回転が反転することで、支持部材40が反対方向へ回転を始める。そして、再度、受光部342が他方の発光部341を検出すると、受光部342から他方の発光部341を検出した旨の通知が制御ユニット70へ通知されることで、制御ユニット70はモーター33に反転を指示する。
【0032】
このように、一方の発光部341から他方の発光部341までの回転範囲がモーター33の回転往復する範囲となるため、栽培容器Pが設置されている範囲は光や水が供給され、入口Eの幅の範囲には光や水は供給されない。従って、育成手段60を無駄なく回転させることができる。また、回転往復しない範囲として、入口Eの幅の範囲に一対の発光部341を配置しているので、栽培者が入口Eから進入する際に水に濡れる心配がない。
【0033】
植物栽培装置10では、環状に配置された栽培容器Pの円中心に、回転駆動手段が設置され、育成手段60が配置された支持部材40を回転させているので、育成手段60を回転させるための直径が大きな歯車を設けることなく育成手段60を回転させることができる。従って、植物栽培装置10は、簡単な構成で構築することができ、製造に要する工数が増大せず、コストの抑制を図ることができる。
【0034】
本実施の形態では、支柱フレーム22に支えられている栽培容器Pの内周側を、支持部材40が回転しているが、外周側を回転するように支持部材40の水平部材の長さとしてもよい。しかし、支持部材40が栽培容器Pの外周側を回転するようにした場合には、支柱フレーム22と棚部23との間に支持部材40が回転するためのスペースを確保する必要があり、支柱フレーム22の代わりに棚部23の端部を支持させて、栽培容器Pを配置するための棚部を載置台とするための脚部が必要となる。従って、支持部材40を栽培容器Pが設置された内周側を回転させるのが望ましい。
【0035】
なお、本実施の形態では、支持部材40が1本のみ設けられているため、支持部材40の反対側に重量の釣り合いが取れるように錘部材50を設けているが、支持部材40の反対側にも同様な育成手段60を備えた支持部材40を設ける場合には錘部は省略することができる。
また、育成手段60を備えた支持部材40を3本以上設けるときは、点対称となるように設けると錘部が省略できるので望ましく、育成手段60を備えた支持部材40を非点対称となるような配置とする場合には、全体のバランスを考慮して錘部を設けるのが望ましい。
【0036】
また、本実施の形態では、散水ノズル62から水道水を散水しているため、制御ユニット70は水道管からの供給を制御する電磁弁Vを制御しているが、養液タンクから養液を供給するような植物栽培装置では,制御ユニット70は養液を散水ノズル62へ供給するポンプを制御するようにしてもよい。
発光ユニット61は、光源として紫外線を照射する蛍光灯を採用しているが、育成する植物に応じて可視光を発光する蛍光灯としてもよい。また、蛍光灯は可視光や紫外線を照射するLEDとしてもよい。
更に、本実施の形態では、育成手段60として、照明手段として機能する発光ユニット61と、散水手段として機能する散水ノズル62とを備えたものとしているが、支持部材40に照明手段として発光ユニット61のみを設け、他に散水手段を設けたり、支持部材40に散水手段として散水ノズル62のみを設け、他に照明手段を設けたりしてもよい。また、育成手段を、温風や冷風を送風する送風手段としたり、殺虫剤を噴霧する殺虫剤散布手段としたりすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、屋内栽培される植物を照明手段や散水手段により生長させる植物栽培装置に好適である。
【符号の説明】
【0038】
10 植物栽培装置
20 装置フレーム
21 天井部
211 中心部
212 放射状フレーム
213 環状フレーム
22 支柱フレーム
23 棚部
24 支持脚部
30 回転駆動手段
31 吊り下げ部材
321,322 台部材
33 モーター
331 駆動ギヤ
332 伝達チェーン
333 従動ギヤ
34 位置センサ
341 発光部
342 受光部
35 駆動軸
40 支持部材
41 水平部材
42 垂下部材
50 錘部材
60 育成手段
61 発光ユニット
62 散水ノズル
70 制御ユニット
E 入口
P 栽培容器
W 配線
T 送水チューブ
V 電磁弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略環状に配置された植物の栽培床の円中心に設置された回転駆動手段と、
前記回転駆動手段の駆動軸の回転に伴って回転する支持部材と、
前記支持部材に支持され、前記栽培床に植栽された植物の育成を促進させる育成手段とを備えたことを特徴とする植物栽培装置。
【請求項2】
前記支持部材は、前記回転駆動手段の駆動軸を中心として非点対称に配置され、
前記駆動軸には、前記支持部材とバランスを取るための錘部材が設けられている請求項1記載の植物栽培装置。
【請求項3】
前記回転駆動手段は、前記略環状に配置された栽培床を囲う装置フレームの天井部に支持され、
前記栽培床は、前記装置フレームの支柱フレームに支持され、
前記支持部材は、前記栽培床の内周側を回転する請求項1または2記載の植物栽培装置。
【請求項4】
前記駆動軸の回転範囲を検出するための位置センサが設けられ、
前記回転駆動手段は、回転範囲内を回転往復する請求項1から3のいずれかの項に記載の植物栽培装置。
【請求項5】
前記育成手段は、前記栽培床に栽培された植物への光を照射する照明手段、または前記栽培床に栽培された植物への水を供給する散水手段のいずれか一方、または両方である請求項1から4のいずれかの項に記載の植物栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−78296(P2013−78296A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221268(P2011−221268)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000230630)株式会社ルミカ (26)
【Fターム(参考)】