説明

植物水耕栽培法及び容器

【課題】種子腐敗,枯れ,しおれ,カビ,根部腐敗の発生を少なくし、給水回数を少なくして家庭内で水耕栽培できる容器及び栽培法を提供する。
【解決手段】外部容器Aと内部容器Bに分かれており、外部容器Aは水1を、内部容器Bには培地8と種子9を入れセットにして使用する。培地と種子に水が触れることなく外部容器に給水するために内部容器に給水口6を設け、培地と種子の吸水率を高め、生育時の
根部が内部容器の中に留まるのを防ぎ、根部吸水率を高めるために外部容器Aと内部容器Bの接触面に溝3を設けた。そして容器に給水限度位置、種子の播種位置、及び覆土限度位置を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は犬猫が食べる草及び野菜を主として家庭内で短期間で栽培するための水耕栽培法及び容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、家庭内で栽培する犬猫用の草やスプラウト野菜は通常、容器にピートモス,バーミキュライト,パーライトの混合土などからなる培土を入れて播種し、覆土をして上から給水し栽培する方法や、容器の中にポリウレタンマットや紙を敷き、その上に播種して給水し、水耕栽培する方法が知られており、実施されてきた。
【0003】
しかし、これらの方法は培地上部より給水するため、水圧により種子が露出したり、片寄ったりするので、発芽不揃いを起こし、また種子が空気に触れると水分があるのでカビの発生があり、給水過多になると種子腐敗,枯れ,しおれ、カビ,根部腐敗を生じる一方、給水忘れ、給水過小によるしおれ,枯れが発生する問題がある。そのため、少ない水量で、給水の回数を多くし、培地表面の乾きに対し給水することが望まれて、外部容器と内部容器の二重構造とし、外部容器には水を入れ、内部容器には培地と種子を入れて貯水方式により水耕栽培する方式が提案されている。(例えば特許文献1,2参照)
【特許文献1】特開平8−289682号公報
【特許文献2】特開2001−211751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記水耕栽培も培地表面への給水は依然続けられていると共に外部容器内の水が培地槽に随時給水されるとして給水過多はないとしても給水の時期に応じた給水の把握が難しく、また給水に時間が掛かる難があり、確実な培地下面より種子に給水することは全く行なわれていない。
【0005】
本発明は上述の如き実状に鑑み、培地下部より種子に給水することを見いだし、前記犬猫が食べる植物等を短期間で、かつ種子腐敗,枯れ,しおれ,カビ,根部腐敗の発生を少なく、また給水回数を少なくして栽培できる水耕栽培容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、上記目的に適合する本発明の特徴は、先ず請求項1の発明は、外部容器と、該外部容器の上縁部に載置保持される内部容器からなり、両容器は透明または半透明な合成樹脂で形成され、外部容器は水が収容される容器であり、内部容器は上部椀状部と、該椀状部の底部中心部より下方へ延出する筒状部を含む漏斗状の容器である栽培用容器を用い、内部容器の筒状部下端を外部容器の底面に隙間を存し略接触せしめて配置して内部容器内に培地を充填し、内部容器の表面側に播種して培地上面より給水することなく内部容器の椀状部一側の給水口より筒状部下端の開口部を通じ外部容器内に給水すると共に、給水され貯水された外部容器内の水を培地下部より内部容器内上部の種子に給水せしめる植物水耕栽培法であり、請求項2の発明はその好適な実施態様で、外部容器内の水位上限位置と、内部容器上部の播種位置との距離を2.4cm以上とすることを特徴とする。
【0007】
また、請求項3は上記水耕栽培法に用いられる好ましい装置であり、外部容器と、該外部容器の上縁部に載置保持される内部容器からなり、両容器は透明または半透明な合成樹脂で形成され、外部容器は水が収納される容器であり、内部容器は上部椀状部とその底部中心部より下方へ延出された筒状部を有する漏斗状形状で内部に培地が収容され、その上面側に種子が播かれる容器であって、椀状部上縁一側に給水口が設けられていると共に、筒状部下端の開口部が外部容器底面中央部に形成された山形状の凸部に嵌着されており、山形状凸部は山形斜面に頂点より底面側へ放射状に複数の斜条溝が形成されていて、上記一側上部の給水口より給水した水が内部容器を通り筒状部下端の斜条溝を通じて外部容器内へ流出する一方、外部容器内に流出し収容された水が上記斜条溝を通じて内部容器内の培地へ給水されるようになっていると共に、培地で生育した根部が筒状部下端開口部より外部容器内へ伸び出し得るようになっている植物水耕栽培用容器である。
【発明の効果】
【0008】
上記本発明によれば、培地上面より給水することなく、内部容器の椀状部一側の給水口より外部容器内に収容された水を培地下部より種子に給水するため水圧による種子の露出,片寄りなどによる発芽不揃いがなく、カビの発生も少ない。また、培地として高吸水率,軽量かつ柔らかい培地を使用することができ、しかも筒状部下端開口部における溝などの隙間を適度に設定することにより給水時間の掛かりすぎもなく、培地の外部容器内への漏出も防がれると共に、生育の中核期において根部が内部容器内に満杯になると、生育不良,吸水率の低下が発生するが、外部容器と内部容器の接触面の隙間を通じ下部からの給水がスムーズになる外、根部が外部容器内に出ることにより生育不良,吸水率の低下も防止される効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、更に添付図面に基づいて本発明の具体的実施形態について説明する。
【0010】
図1は本発明に係る水耕栽培に使用する容器の1例であり、外部容器Aと内部容器Bの両容器よりなり、内部容器Bが外部容器Aの上縁部に載置保持されて結合されている。
【0011】
図2は上記外部容器Aの詳細図であり、アクリル樹脂など、透明な合成樹脂または水の位置が分かるような半透明な乳白色樹脂で作られ、平面楕円形状で適宜の深さを有する容器1として水を収容し得るように構成されており、その底面中央部に山形斜面に頂点より底面側へ複数の斜条溝3が形成された山形状凸部2が設けられている。
【0012】
一方、図3は前記内部容器Bの詳細図であり、透明なアクリル樹脂あるいは半透明な乳白色樹脂により外部容器Aと同じく平面楕円形状に形成された上部の椀状部4と、該椀状部4の底部中心部より下方へ延出された筒状部5を有する漏斗状構造となっていて、その内部に培地が充填され、上面側に種子が播かれるようになっている。なお、内部容器Bはその上縁部が上記外部容器Aの上縁部に載置保持される形状の大きさであればよく、特に平面楕円形状に拘泥するものではなく、円形状でも差し支えない。
【0013】
また、椀状部4及び筒状部5の大きさ,形状も目的に応じて随時、選択可能であり、筒状部5の下端は開口部5aとなるため開放状態となっている。なお、この筒状部5の内壁面には適宜、流水,吸水を効果的ならしめるため軸方向に沿う条溝を設けることも好適である。
【0014】
また、上記漏斗状内部容器Bの椀状部4にはその上縁一側に給水口6が設けられ、培地上面に給水することなく内部容器B内を通じて水を筒状部5下方へ流下させ、その下端開口部より外部容器A内に随時、流出する一方、外部容器A内に収容された水が筒状部を通じ培地下部より上部の種子に給水される。なお、外部容器Aの側面に給水部を設けて一部、水を入れるようにしてもよい。
【0015】
図1に示す水耕栽培用容器は上記の如き両容器を内部容器Bを外部容器A内に、その上縁部で載置保持せしめてセットとしたものであり、外部容器Aにはその内部で略1/2の高さに水7が収容された状態であり、内部容器Bには内部に培地8が充填された状態となっており、この椀状部4の培地8上面には種子9が播かれ覆土10で被覆されている。
【0016】
ここで、外部容器A内の給水限度位置,内部容器B内の種子の播種位置、及び覆土限度位置は水耕栽培において重要な要素であり、このうち給水限度位置(X−X)と種子の播種位置(Y−Y)は2.4cm以上あけることが給水過多を防ぎ完全発芽を目指す上から好適である。また、種子の播種位置(Y−Y)と覆土限度位置(Z−Z)との間は1cm位が有効である。そのため、上記各要素を可及的満足させるため培地下部からの吸水率を高め、また根部先端が培地の内に溜まらないように底面で内部容器Bの筒状部5下端が外部容器Aの底面中央部にある山形形状凸部に嵌合するとき外部容器Aと内部容器Bの接触面に斜条溝3が放射状態なして形成されている。これにより給水時間の調節が出来ると共に、下部からの給水がスムーズになり、また根部が外部容器A内に出て生育不良,吸水率の低下が防がれる。
【0017】
以上の本発明による水耕栽培についてその特徴を総括すれば次の通りである。即ち、先ず第1は培地表面よりの給水をなくして内部容器Bの筒状部下端の開口部5aを通じ培地下部より種子に給水することである。これにより吸水率が高く、しかも培地は軽量かつ柔らかい培地を使用していいるため培地上部からの給水では水圧による種子の露出,片寄りなどを免れないが、これらの問題はなく、発芽不揃いもなくなり、カビの発生も少ない。
【0018】
次に第2の特徴は、外部容器Aの底面中央部の山形形状の凸部2に放射状に溝3を設けたことである。それにより内部容器が浮き上がり、培地を外部容器内へ漏出させることもなく、また給水時間の調節もでき、更に根部が生育し内部容器内に満杯になると生育不良,吸水率の低下を来たすが、上記溝を設けたことにより、下部からの給水がスムーズになり、また根部が溝を通じて外部容器A内に出ることにより生育不良,吸水率低下を防ぐことができる。
【0019】
更に、第3の特徴は、給水限度位置,種子の播種位置及び覆土限度位置の設定である。特に給水限度位置と播種位置との間隔は最も重要であり、2.4cm以上あけることにより給水過多を防ぎ、また完全発芽することを利用して、給水容量を決め、一般家庭内栽培において少ない給水回数で植物栽培を可能とする。
【実施例】
【0020】
次に本発明の試験例を掲げる。
(試験1)
下記により種子下水位置について試験をした。
【0021】
培地;バーミキュライト細粒、容量150cc
種子;えん麦、容量10cc(120粒)
覆土;1cm上(種子位置より)
栽培期間;11日間
【0022】
【表1】

上記試験の結果より種子下2.0cm〜2.4cmの間で発芽率が極端に変化する。一方、残水量は発芽率が高く、生育が良い程、また、生育水量の消費が激しい程少ないことが分かる。
(試験2)
下記により培地上部給水試験を行なった。
【0023】
培地;バーミキュライト細粒、容量150cc
種子;えん麦、容量10cc(120粒)
覆土;1cm上(種子位置より)
給水量;350cc
栽培期間;11日間
【0024】
【表2】

上記試験の結果より
1.給水時間の差は培地上部から給水すると培地が上昇し外部に出るので時間をかけて給水するため。
2.種子下水位の差は培地上部から給水すると時間がかかるため培地、種子の吸水が多くなる。
3.発芽率は培地,種子の吸水過剰になると悪くなる。
4.種子露出率は培地上部から給水すると必ず表面に現われるが給水時間が長くなる程、種子が浮いてくるので高くなる。
5.培地の盛り上りは培地上部から給水すると最初に試験結果の約2倍に盛り上り給水終了後に半分になる。
6.培地の表面は吸水率が高く、軽量かつ柔らかい培地を使用しているため培地上部から給水すると水圧により必ずでこぼこになる。溝なしの場合、給水完了後20秒してから陥没が発生、これは内部容器内に溜まった水が一気に外部容器に流れ込むからである。
7.カビの発生は種子が培地上面に現われると発生する、培地上部給水すると種子は必ず培地上面に現われる。
8.容器内水の濁りは培地上部から給水すると濃い茶色になり透明感は全くなくなる。5日間程で澄んでくるが透明度は悪い。
など種々のことが分かった。
【0025】
本発明は以上のことから、種子腐敗,枯れ,しおれ,カビ,根部腐敗の発生を少なくし、また給水回数を少なくして家庭内で犬猫が食べる草及びスプラウト野菜の短時間栽培を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は以上において、主として猫草,スプラウト野菜(かいわれ大根,ブロッコリー)の栽培について説明してきたが、これに限らずネギ,観葉植物(クローバー,レンゲ等)の栽培についても適宜、適用することができる。この場合、猫草,スプラウト野菜では15〜20日間位で一応、栽培は終了するにしてもネギ等は60日間位、栽培に要し、肥料(液肥または水溶性肥料)も入れる必要があるが、肥料は上部給水口より簡単に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明水耕栽培を行なう容器の1例であり、(イ)は平面図、(ロ)は正面図、(ハ)は側面図である。
【図2】外部容器で、(イ)は平面図、(ロ)は正面図、(ハ)は側面図である。
【図3】内部容器で、(イ)は平面図、(ロ)は正面図、(ハ)は側面図である。
【符号の説明】
【0028】
A:外部容器
B:内部容器
1:容器
2:山形状凸部
3:斜条溝
4:椀状部
5:筒状部
5´開口部
6:給水口
7:水
8:培地
9:種子
10:覆土

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部容器と、該外部容器の上縁部に載置保持される内部容器からなり、両容器は透明または半透明な合成樹脂で形成され、外部容器は水が収容される容器であり、内部容器は上部椀状部と、該椀状部の底部中心部より下方へ延出する筒状部を含む漏斗状の容器である栽培用容器を用い、内部容器の筒状部下端を外部容器の底面に隙間を存し略接触せしめて配置して内部容器内に培地を充填し、その表面側に播種して培地上面より給水することなく内部容器の椀状部一側の給水口より筒状部下端の開口部を通じ外部容器内に給水すると共に、給水され、貯水された外部容器内の水を培地下部より内部容器内上部の種子に給水せしめることを特徴とする植物水耕栽培法。
【請求項2】
外部容器内の水位上限位置と内部容器上部の播種位置との距離を2.4cm以上とする請求項1記載の植物水耕栽培法。
【請求項3】
外部容器と、該外部容器の上縁部に載置保持される内部容器からなり、両容器は透明または半透明な合成樹脂で形成され、外部容器は水が収容される容器であり、内部容器は上部椀状部とその底部中心部より下方へ延出された筒状部を有する漏斗状形状で、内部に培地が収容され、その上面側に種子が播かれる容器であって、椀状部上縁一側に給水口が設けられていると共に、筒状部下端部の開口部が外部容器の底面中央部に形成された山形状の凸部に嵌着されており、山形状凸部は山形斜面に頂点より底面側へ放射状に複数の斜条溝が形成されていて、上記一側上部の給水口より給水した水が内部容器を通り筒状部下端の斜条溝を通じて外部容器内へ流出される一方、外部容器内に流出され収容された水が上記該斜条溝を通じて内部容器内の培地へ給水されるようになっていると共に、培地で生育した根部が筒状部下端開口部より外部容器内へ伸び出し得るようになっていることを特徴とする植物水耕栽培用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−135449(P2007−135449A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−332387(P2005−332387)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(505426967)豊徳商事株式会社 (1)
【Fターム(参考)】