説明

植物活力剤及び植物ウイルス病の治療剤

【課題】高活性の植物活力剤として作用すると共に植物のウイルス病に対しても有効な自然農薬として作用する植物活力剤及び植物のウイルス病治療剤を提供する。
【解決手段】フルボ酸及びL-メントールを含む植物活力剤であり、フルボ酸100重量部に対し、1〜10重量部のL-メントールを含む。また、植物のウイルス病治療剤は、フルボ酸100重量部に対し、1〜10重量部のL-メントールを含む。これらの薬剤は0.5wt%溶液程度に希釈され、毎週1回程度潅水代わりに施用することにより効果を奏する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にフルボ酸とL-メントールを含有する植物活力剤、及び植物ウイルス病の治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
植物が腐植して生じる腐植物質の主成分は高分子有機酸であり、自然界に広く分布しており、特に泥炭、褐炭及び風化炭などに豊富に含まれている。
【0003】
高分子有機酸はフミン酸とフルボ酸に大別され、フミン酸は一般に分子量が数万でアルカリ性水溶液に可溶であり、フルボ酸は一般に分子量数千で酸性水溶液に可溶である。
【0004】
泥炭などに含まれている腐植物質からフルボ酸を得る方法は公知である。また、フルボ酸が植物活力剤等として有用であることも知られている(特許文献1)。
【0005】
一方、L-メントール等のハーブ油が、細菌等による植物の病害の予防、駆除に有効であることも知られている(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-171215号公報
【特許文献2】特開平5-139924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、腐植物質から製造された従来の植物生長剤では効果が不十分な場合があり、より高活性の植物活力剤が求められつつある。また、植物のウイルス病に対しても有効な自然農薬が求められている。また、植物に対して生長促進作用を有するのみならず、発芽促進及び耐病性付与などの効果や、殺菌作用を有する植物活力剤が求められつつある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、フルボ酸及びL-メントールを含むことを特徴とする植物活力剤である。
【0009】
上記植物活力剤は、フルボ酸100重量部に対し、1〜10重量部のL-メントールを含むことが好ましい。また、フルボ酸濃度が1〜20wt%、L-メントール濃度が0.1〜2.0wt%となるようにされたことも好ましい。
【0010】
L-メントールとしては、はっか油を使用することが有利である。また、フルボ酸としては、脱イオン処理されたものであることが有利である。
【0011】
更に、本発明は、フルボ酸及びL-メントールを含むことを特徴とする植物ウイルス病の治療剤である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の植物活力剤は、植物に対して生長促進作用を有するのみならず、耐病性の向上、光合成の促進などの効果や、殺菌作用を有していると考えられる。また、本発明の植物ウイルス病の治療剤は、ウイルス病にかかった植物を回復させる効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の植物活力剤及び植物ウイルス病の治療剤は、フルボ酸及びL-メントールを含む。そして、植物活力剤及び植物ウイルス病の治療剤の有効成分は同じであるので、有効成分に関する一方の説明は他方の説明でもあると理解される。
【0014】
本発明の植物活力剤及び植物ウイルス病の治療剤で使用するフルボ酸は、公知のフルボ酸が使用できる。有利には、フルボ酸を脱イオン処理したものが適する。脱イオン処理はフルボ酸溶液をイオン交換樹脂に通すことなどにより行うことができ、90%以上のイオン(アルカリ金属イオン)を除くことが好ましい。そして、フルボ酸のpHは8wt%水溶液で、約2.0〜3.5の範囲にあることが好ましい。
【0015】
なお、フルボ酸には天然型と再生型が知られており、天然型フルボ酸は還元型であるとされ、再生型フルボ酸は酸化型であるとされている。いずれのフルボ酸を使用することができ、これは金属のキレート化作用を有し、植物活力剤、殺菌作用などの効果を有すると考えられる。
【0016】
本発明の植物活力剤及び植物ウイルス病の治療剤で使用するL-メントールは、精製されたL-メントールであってもよいが、はっか油等のハーブ油に高濃度で含まれているのでそれをそのまま使用することができる。
【0017】
本発明の植物活力剤及び植物ウイルス病の治療剤におけるフルボ酸とL-メントールの使用割合は、フルボ酸100重量部に対し、L-メントール1〜10重量部であることが好ましい。この場合、はっか油等をL-メントールとして使用する場合は、上記のL-メントール量となるようにはっか油等を使用する。
【0018】
本発明の植物活力剤及び植物ウイルス病の治療剤は、その使用を容易とするため、溶剤を加え、フルボ酸濃度が1〜20wt%、L-メントール濃度が0.1〜2.0wt%となる溶液又は分散液としておくことが有利である。ここで、溶剤としては、アルコール又は水が適する。なお、フルボ酸とL-メントールを担持体に担持させた固形などのその他の形態で保管又は使用することができる。
【0019】
本発明の植物活力剤及び植物ウイルス病の治療剤は、その使用に当たっては、根又は葉に散布することが有効である。また、潅水の代わりに使用することも有効である。散布又は潅水する場合は、フルボ酸とL-メントールからなる有効成分の濃度が0.1〜2wt%、好ましくは0.2〜1wt%程度となるように水で希釈して使用することがよい。そして、フルボ酸が揮発性であるL-メントールの効果を高めるか、両者の相乗効果により植物活力剤及び植物ウイルス病の治療剤としての効果を高めるものと予想される。
【0020】
本発明の植物活力剤及び植物ウイルス病の治療剤が有効な植物は、球根植物、多年性植物等であり、ヒガンバナ科、ユリ科植物の他、ヒツペアストラム、シクラメン、ダッチアイリス、リコリス、ハエマンサス、ニンニク等に対しても有効である。更に、洋ラン類(カトレア、バンダ、ファレノプシス、シンビジュウム、フウラン)、観葉植物(フィカス、バナナ、アナナス、チランドシア、ドラセナ、ユッカ、ハイビスカス、ブーゲンビリア、ネフロレピス、ホヤ、マンゴー、アスパラガス、シペラス、ソテツ、アロエ、ユーフォルビア、サンスベリア、シュロチク、カンノンチク、フェニックス、マツバラン)等に対して有効であり、また薬害等の異常発生は生じない。
【実施例】
【0021】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0022】
フルボ酸水溶液は次のようにして調製した。ビートモスを酸化し、乾燥し、フミン酸等の不純物を分離し、フルボ酸濃度70wt%以上の粗フルボ酸を得る。これを水に溶解して10%水溶液とし、イオン交換樹脂に通し90%以上のイオンを取り除き、フルボ酸濃度約5wt%のフルボ酸水溶液を得る。
【0023】
実施例1
上記フルボ酸水溶液の濃縮してフルボ酸濃度8wt%水溶液(pH2.8)とした液に、ハーブ成分750ppm(L-メントールとして740ppm)とエタノール7.4wt%となる量を加えて、活性化薬剤を得た。
【0024】
この活性化薬剤を、水で希釈してフルボ酸濃度0.5wt%水溶液(pH7.3)として、1回/週の頻度で潅水代わりに施用した。試験植物は、ネリネ・サルニネンシス(ヒガンバナ科)と、ヤマユリ(ユリ科)とした。ネリネ・サルニネンシスの試験結果を表1に、ヤマユリの試験結果を表2に示す。なお、ネリネ・サルニネンシスについては、結実数確認のため、全ての花に人工授粉を行っている。
【0025】
【表1】

【0026】
表1において、施用開始は9月であり、調査日はそれから2月後の11月及び2年後の11月である。2年後も調査日において、施用を行った試験区1及び2は、施用をしなかった対照区に比べ、結実数等に優れ、ウイルス病斑葉発生率が顕著に低下し、植物を活力化すると共に、ウイルス病の治療薬としての効果が優れることが分かる。
【0027】
【表2】

【0028】
表2において、施用開始は10月であり、調査日はその翌年の11月である。ヤマユリについても、試験区の成績が優れることが分かる。
【0029】
上記試験結果から、本発明の薬剤は、ウイルス罹病株に対して、病徴の低減化、分けつ促進、結実促進、種子数増加の効果が認められる。また、本発明の薬剤は、球根等で施用前に既に分化形成されていた部分に対しては効果が認められないが、施用中に新規に分化成長する部分に対して効果が認められる。このことは、ウイルス病に罹病し生育不良で開花もしなく弱った植物個体に対して、本発明の薬剤を施用すると、ウイルス病の病徴が改善し、開花・結実も正常に近いところまで脅威的に回復することを意味する。
【0030】
また、上記以外の他の植物についても、本発明の薬剤を施用する実験を行ったところ、次のような結果が得られた。
【0031】
ヒツペアストラム、シクラメン、ダッチアイリス、リコリス、ハエマンサス、ニンニクに対して施用した結果、ウイルス罹病株の病徴低減化と開花促進効果が認められた。
【0032】
千葉市の小森谷ナセリーにおいて、ネリネ原種株に対して1000倍溶液を潅水代わりに施用した結果、施用開始2年めで、上記試験結果と同様の知見(病徴の低減化、分けつ促進、結実促進)が得られた。
【0033】
三郷市の白石農園等において、洋ラン類(カトレア、バンダ、ファレノプシス、シンビジュウム、フウラン)、観葉植物(フィカス、バナナ、アナナス、チランドシア、ドラセナ、ユッカ、ハイビスカス、ブーゲンビリア、ネフロレピス、ホヤ、マンゴー、アスパラガス、シペラス、ソテツ、アロエ、ユーフォルビア、サンスベリア、シュロチク、カンノンチク、フェニックス、マツバラン)に対して6ヶ月間、潅水代わりに本発明の薬剤の0.5%溶液を散布した結果、薬害等の異常発生は認められなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルボ酸及びL-メントールを含むことを特徴とする植物活力剤。
【請求項2】
フルボ酸100重量部に対し、1〜10重量部のL-メントールを含む請求項1に記載の植物活力剤。
【請求項3】
L-メントールがはっか油である請求項1又は2に記載の植物活力剤。
【請求項4】
フルボ酸濃度が1〜20wt%、L-メントール濃度が0.1〜2.0wt%となるようにされたことを特徴とする植物活力剤。
【請求項5】
フルボ酸が脱イオン処理されたものである請求項1〜4のいずれかに記載の植物活力剤。
【請求項6】
フルボ酸及びL-メントールを含むことを特徴とする植物ウイルス病の治療剤。

【公開番号】特開2011−246424(P2011−246424A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124129(P2010−124129)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000156581)日鉄環境エンジニアリング株式会社 (67)
【出願人】(510151234)有限会社バクトソイル (1)
【Fターム(参考)】