説明

植物生育促進剤及び植物の生育促進方法

【課題】植物の生育を促進することができる植物生育促進剤を提供する。
【解決手段】低級脂肪酸類を有効成分として含有する。植物を生育する雰囲気中に有効成分を揮発等により含有させることができ、この有効成分により植物に適度なストレスを与えることができる推定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物、特にハウス栽培等の閉鎖系及び半閉鎖系における作物の栽培において、効率よく健全な作物を生産するために用いられる植物生育促進剤及びこれを用いた植物の生育促進方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、エチレンガスは植物の成長ホルモンであって、エチレンガスの雰囲気中で植物を生育すると、その生育が促進されることが知られている。
【0003】
また、カビと植物とを閉鎖空間で同時に生育することにより、植物の生育が促進されることも知られている(非特許文献1〜4参照)。
【非特許文献1】Bacterial volatiles promote growth in Arabidopsis(PNAS / April 15,2003 / vol.100 / no.8 / 4927-4932)
【非特許文献2】Biocontrol of soil-borne diseases and plantgrowth enhancement in greenhouse soilless mix by the volatile-producing fungusMuscodor albus (J.Mercier,D.C.Manker / Crop Protection24(2005) 355-362)
【非特許文献3】Bactrial volatiles induce systemicresistance in Arabidopsis(Plant Physiology,March2004,Vol.134,pp.1017-1026)
【非特許文献4】揮発性静菌物質生産糸状菌を利用した地上部病害の生物防除(バイオコントロール研究会レポート(PSJ Biocont. Rept.) 5:85-93(1997))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、カビが発生する揮発性物質に着目し、これら揮発性物質を特定し、且つ揮発性物質と植物の生育促進との関係を見出して本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、植物の生育を促進することができる植物生育促進剤及び植物の生育促進方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る植物生育促進剤は、低級脂肪酸類を有効成分として含有することを特徴とするものである。
【0007】
本発明の請求項2に係る植物生育促進剤は、メタクリル酸を有効成分として含有することを特徴とするものである。
【0008】
本発明の請求項3に係る植物生育促進剤は、2−メチルプロパノール、3−メチルブタノール、チグリン酸から選ばれる一つを有効成分として含有することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の請求項4に係る植物生育促進剤は、2−メチルプロパノール、3−メチルブタノール、メタクリル酸、チグリン酸から選ばれる少なくとも二つ以上を有効成分として含有することを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項5に係る植物の生育促進方法は、請求項1乃至4のいずれかに記載の植物生育促進剤の有効成分を含有する雰囲気中で植物を生育することを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項6に係る植物の生育促進方法は、請求項5において、雰囲気中の有効成分の濃度が0.01ppb〜1000ppmであることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項7に係る植物の生育促進方法は、請求項5又は6において、雰囲気中に二酸化炭素を含有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明では、植物を生育する雰囲気中に低級脂肪酸類を揮発等により含有させることができ、このメタクリル酸により植物に適度なストレスを与えることができる推定でき、効率よく健全な植物の生育を促進することができるものである。
【0014】
請求項2の発明では、植物を生育する雰囲気中にメタクリル酸を揮発等により含有させることができ、このメタクリル酸により植物に適度なストレスを与えることができる推定でき、効率よく健全な植物の生育を促進することができるものである。
【0015】
請求項3の発明では、植物を生育する雰囲気中に2−メチルプロパノール、3−メチルブタノール、チグリン酸から選ばれる一つを揮発等により含有させることができ、この2−メチルプロパノール、3−メチルブタノール、チグリン酸から選ばれる一つにより植物に適度なストレスを与えることができる推定でき、効率よく健全な植物の生育を促進することができるものである。
【0016】
請求項4の発明では、植物を生育する雰囲気中に2−メチルプロパノール、3−メチルブタノール、メタクリル酸、チグリン酸から選ばれる二つ以上を揮発等により含有させることができ、この2−メチルプロパノール、3−メチルブタノール、メタクリル酸、チグリン酸から選ばれる二つ以上により植物に適度なストレスを与えることができる推定でき、効率よく健全な植物の生育を促進することができるものである。
【0017】
請求項5の発明では、植物を生育する雰囲気中に含有しているメタクリル酸等の有効成分により植物に適度なストレスを与えることができると推定でき、このために、効率よく健全な植物の生育を促進することができるものである。
【0018】
請求項6の発明では、有効成分を植物に充分に作用させることができ、植物の生育促進の効果を確実に得ることができるものである。
【0019】
請求項7の発明では、有効成分に加えて二酸化炭素により植物の生育促進を図ることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0021】
本発明の植物生育促進剤は、2−メチルプロパノールと3−メチルブタノールとメタクリル酸とチグリン酸から選ばれる一種または二種以上を有効成分として含有するものである。この中でも、特に、低級脂肪酸類であるメタクリル酸を単独で用いた場合は、他の成分を単独で用いた場合より植物の成長促進効果を大きくすることができる。尚、本発明の低級脂肪酸類は炭素数が12個以下の飽和又は不飽和の脂肪酸である。本発明の植物生育促進剤は上記有効成分を水やその他の基材に混合することによって調製することができ、具体的にはラノリンなどの高級アルコール及び高級脂肪酸のワックスエステル、ワセリンなどの炭化水素類の混合物などを基材として用いることができる。植物生育促進剤中の有効成分の含有量は1.8×10−1〜1.8×10−6μg/cmにするのが好ましく、この範囲を逸脱すると、植物の生育促進の効果を得にくくなるおそれがある。また、複数の有効成分を併用する場合、その配合割合は任意であるが、特に、植物の生育促進の観点から好ましい配合割合は質量比で、2−メチルプロパノール:3−メチルブタノール:メタクリル酸=10〜50:40〜80:0.1〜20とすることができる。尚、2−メチルプロパノールと3−メチルブタノールとメタクリル酸の混合物にさらにイソブチルアセテートを含有しても良く、この場合、イソブチルアセテートは重量比で0.1〜20の割合で配合することができる。
【0022】
本発明の植物の生育促進方法は、上記の植物生育促進剤と植物とを閉鎖空間又は半閉鎖系に収容し、植物生育促進剤から揮発した有効成分を含む空気を雰囲気として、その雰囲気中で植物を生育するものである。ここで、雰囲気中の有効成分の濃度が0.01ppb〜1000ppm(残部は空気)であることが好ましく、この範囲を逸脱すると、植物の生育促進の効果を得にくくなるおそれがある。特に、雰囲気中の有効成分の濃度が0.0018〜1800ppmであることがさらに好ましい。
【0023】
本発明の植物の生育促進方法では、植物を生育する雰囲気中に二酸化炭素を含有させるのが好ましく、これにより、上記の有効成分による生育効果に加えてさらに植物を生育させることができる。この場合、植物を生育する雰囲気中の二酸化炭素の濃度は700〜1500ppmにするのが好ましい。このように二酸化炭素を通常の空気よりも高濃度にすると、植物の生育促進を図ることができるものである。COやエチレンガスを単独で用いる場合よりも、本発明の揮発性物質を単独で用いる方が生育促進とともに、病害抑制が期待でき、またppbという非常に微量で効果が期待でき、さらに植物にストレスを与えて生育促進効果を引き出しているので、通常の植物より活性が高くなり、防御反応、生育促進などの複数の効果が同時に期待できるものである。尚、植物を生育する雰囲気中にエチレンガスを含有させることもできる。
【0024】
本発明の植物生育促進剤及び植物の生育促進方法は各種の植物において効果を奏するものであり、例えば、タバコシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の生育を促進することができる。また、本発明はトマトやナスなどのナス科の植物をハウス栽培する際に好適に用いることができる。
【実施例】
【0025】
以下本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0026】
[真菌(カビ)培養]
真菌は岐阜大学の百町博士から入手した。各真菌の培養は、5℃に保たれた傾斜培地であるじゃがいもデキストロース寒天(PDA)上で培養されていた。実験で使用された真菌の種は、岐阜大学の芝草、長良川の川辺、金華山の頂上や栄の公園の通過から分離された空中真菌、キュウリ、トマトや葉マスタードの根圏から分離された土壌真菌、Colletotrichum acutatum No.2, No.3, Colletotrichum gloeosporioidesNo.1, No.4, No.5, No.6, No.7, No.8, Glomerella cingulata, Phoma sp. GS8-1,GS8-2, GS-8-3, GS12-2, Penicillium sp. GP15-1, GP16-1, Penicilliumsimplicissimum GP17-2 and Rhizoctonia solani AG2-210.であった。PDA上に培養された実験用真菌株は、直径5mmの穿孔機を用いて、活発に成長する培養菌の周辺で切り取った。その真菌株の5mmの円盤は植物実験の前に準備し、すべての実験に使用した。
【0027】
[植物材料]
タバコ(Nicotianatabacum L. cv. Xanthi ne)のバーナリゼーション(春化処理)した種を表面滅菌し(70%エタノールに2分間浸漬し、この後、5%次亜塩素酸ナトリウム溶液に2分間浸漬した)、滅菌蒸留水で洗浄し(5回)、寒天を0.8%含むムラシゲ・スクーグ培地(和光純薬製)を入れたペトリ皿に置いた。上記の種は生育キャビネット(日本医化器械製作所製のLH−100S)を用いて、25℃で12時間点灯/12時間消灯のサイクルの条件で14日間生育した。苗は以下に記す試験的使用のためにプレートに14日後に移した。
【0028】
[植物生育促進を示す真菌の分離株のふるい分け]
中央仕切りを有するプラスチック製のペトリ皿(90×15mm、(株)アテクト製のIプレート)に、5mlのMS固体培地または5mlの1/2濃度のMS固体培地を片側に、5mlのPDAをもう片側に用意した。14日間生育されたタバコの苗(1プレート当たり10苗)をIプレートのMS固体培地に移した。処理した植物は、苗を含まないIプレートのもう片側の上で菌株またはPDAだけを含む円盤とともに生育した。このIプレートはパラフィルムで密閉し、生育キャビネット内でランダムに配置した。このように処理されたIプレートは25℃で12時間点灯/12時間消灯の光周期で培養された。
【0029】
[植物の生育測定]
上記のようにして、タバコの苗と上記真菌(カビ)とを物理的に分けた二分割シャーレの中(密閉状態)で7日間生育し、真菌によるタバコへの生育促進効果を調べた。このとき、苗の植え付け後の7日間でのトータルの生重を電気天秤を用いて測定した。結果を図1のグラフに示す。カビ100菌株中ほとんどの菌株がコントロールに比べて2倍以上の著しいタバコの生育が見られ、カビによるタバコへの生育促進効果が認められた。
【0030】
[菌類によって生産される揮発性物質の性質の影響]
Iプレートの片側に5mlのMS固体培地を用意した。14日間培養されたタバコの苗を(1プレート当たり10苗)、IプレートのMS固体培地に移植した。この処理の1日前、3日前、6日前と処理日において、試験菌株を培養したPDA培地を3ml含む組織培養皿(30×10mm)をIプレートのもう片側に配置した。この配置の3日後、上記組織培養皿をIプレートから移動し、試験菌株を培養した新しく用意された皿をIプレートにセットされた。その操作は14日間繰り返された。この間、Iプレートはパラフィルムで密閉し、完全にランダムに配置した。
【0031】
上記のようなIプレートの4つ複製を各処理ために作成した。一つめは、菌株を新しい培地に植菌した日を0日目として、0日目から14日目までの菌株の揮発性物質をタバコに暴露した(図2で「0−14」と示す)。二つめは、タバコへの処理日の1日前に菌株を新しい培地に植菌しその日を0日目として、1日目から3日目までの菌株の揮発性物質をタバコに暴露した(図2で「1−3」と示す)。三つめは、タバコへの処理日の4日前に菌株を新しい培地に植菌しその日を0日目として、4日目から6日目までの菌株の揮発性物質をタバコに暴露した(図2で「4−6」と示す)。四つめはタバコへの処理日の7日前に菌株を新しい培地に植菌しその日を0日目として、7日目から9日目までの菌株の揮発性物質をタバコに暴露した(図2で「7−9」と示す)。結果を図2に示す。
【0032】
図2から明らかなように、カビの成長期(1−3)において、タバコの生育も促進されており、この時期にカビから発生する揮発性成分が植物生育促進効果があると考えられる。
【0033】
[揮発性の代謝物質の抽出]
真菌(GS8-3)を3、5、7、9日の間、10mlのSPME(固相マイクロ抽出法)小びん(Supelco製)で培養した。揮発性の代謝物質は、65μmPolydimethylsiloxane/Divinylbenzene(PDMS/DVB)で、25℃で30分の間にヘッドスペースSPMEによって抽出された。SPME繊維はSupelcoから得られた。この揮発性物質を以下のように分析した。
【0034】
[揮発性物質の分析]
ガスクロマトグラフィー−マススペクトロメトリー(GS−MS):ヒューレットパッカード5890ガスクロマトグラフィーに装着されたスリットインジェクターHP-5MSキャピラリーカラム(30m長は0.25mm内径)は、ヒューレットパッカード5972質量分析計に直接カップリングして結合した。動作条件は以下の通りである。インジェクター250℃、MSシステムへの移送ライン250℃、オーブン温度がスタート40℃、2分間保持、毎分10℃で40℃から200℃まで昇温し、毎分15℃で200℃から250℃まで昇温し、5分間保持するようにプログラムされ、キャリアガス(He)は毎分1.0mlとし、分析物の注入はスプリットモード(1/10)とし、電子インパクトイオン化は70eVとした。ピークの地域(全イオン流)が揮発性成分、繊維コーティングと抽出方法の比較のために使われた。合成物は、米国標準技術研究所(NIST)のマススペクトルライブラリーまたは文献データによる本物の標準とコバッツ保持インデックスによる保持時間と範囲と比べると特定することができる。菌の培養開始から3日目、5日目、7日目、9日目の雰囲気中の成分のピーク面積を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
表1から明らかなように、2−メチルプロパノール、3−メチルブタノール、メタクリル酸の生成量が全期間にわたって多く、チグリン酸は5日目からの産出量が多い。
【0037】
[植物生育に関して菌類によって生産される揮発性物質の影響]
上記と同様のIプレートを使用した。Iプレートは、片側の上に5mlのMS固体培地を、他の片側の上に5mlのPDAを準備した。第1の計画で、14日間培養されたタバコの苗(1プレートあたり10本の苗)がIプレートのMS固体培地に移植された。IプレートのPDA側はPDAのみとした。そのIプレートはAnaeroPack長方形容器(2.5リットル)(三菱ガス化学製品)に置かれた。第2の計画で、IプレートのPDA側にはGS8−3を含んでいるディスクが培養された。そのIプレートはAnaeroPack長方形容器に置かれた。第3の計画で、IプレートのPDA側はPDAのみとしたが、IプレートはAnaeroPack MicroAero(三菱ガス化学製品)を含むAnaeroPack長方形容器に置かれた。AnaeroPack MicroAeroは、嫌気性容器での使用のために酸素を吸収し、且つ二酸化炭素を生成するための手段である。
【0038】
上記の容器は、25℃で7日間、12時間の点灯と12時間の消灯のサイクルをセットした生育キャビネットに置かれた。これらは処置ごとに5つの複製を作成した。一つめは無処理(密閉空間が空気のみ)のもの、二つめはIプレート中の密閉空間の二酸化炭素濃度が7体積%のもの(残部は空気)、三つめがタバコの苗と菌とを密閉空間で同時に生育したもの、四つめがIプレート中の密閉空間の二酸化炭素濃度が7体積%、混合物(菌株の3日目に産生された揮発性物質を人工的に作成したもの。その組成は重量比で、2−メチルプロパノール:3−メチルブタノール:メタクリル酸:イソブチルアセテート=30:60:7:3)濃度が0.18ppmのもの(残部は空気)、五つ目が上記と同様の混合物濃度0.18ppmのもの(残部は空気)であり、このように密閉処理された上記Iプレート内の雰囲気を調整し、それらの生重を求めた。結果を図3に示す。
【0039】
図3から明らかなように、本発明の実施例である二酸化炭素と揮発性物質の混合物を配合した雰囲気を用いると、植物の生育促進効果が得られ、特に、菌を用いた場合よりも生重が多くなった。
【0040】
[揮発性の有機化合物の影響を進めている植物生育の分析]
14日前の二倍になったタバコの苗をIプレートの片側に移した。上記GS−MS分析を通じて特定された組成物は、植物生育促進テストを行うために、購入された合成化学物質で作成した。その組成物はCHClで希釈あるいはCHClで希釈したあと0.1gのラノリンと混ぜ合わせられ、その結果物の20μlを無菌の紙ディスク(直径1cm)に適用した。各組成物は、それぞれ単独で、あるいは組み合わされて、各種の濃度で苗を含まないIプレートに置かれた無菌濾紙の上に置いて、植物の生育促進に対する影響がテストされた。処理ごとに4つの複製が作成され、そして実験は3回繰り返した。結果を表2及び図3から図8に示す。尚、表2及び図3〜8の「0.0018、0.18、18、1800」は揮発性成分の雰囲気中の各濃度(単位はppm、揮発性物質以外の成分は空気)を示す。また、表2の数値はコントロール比である。
【0041】
【表2】

【0042】
表2から明らかなように、本発明の実施例である混合物(2−メチルプロパノール:3−メチルブタノール:メタクリル酸:イソブチルアセテート=30:60:7:3の重量比で混合したもの)の濃度が0.18ppmの雰囲気中で生育すると、植物の生育が促進される(コントロールの1.7倍)。また、本発明の実施例であるメタクリル酸の濃度が0.18ppmの雰囲気中で生育すると、植物の生育が促進される(コントロールの1.5倍)。また、本発明の実施例である3−メチルブタノールの濃度が0.18ppmの雰囲気中で生育すると、植物の生育が促進される(コントロールの1.3倍)。また、本発明の実施例であるチグリン酸の濃度が0.0018ppmの雰囲気中で生育すると、植物の生育が促進される(コントロールの1.3倍)。その他、コントロール比1.2倍のものは植物の生育が促進されるものと考えられる。尚、コントロールは空気のみの雰囲気で植物を生育したもの、CHClはジクロロエタンのみの雰囲気で生育したものである。
【0043】
[揮発性物質による植物生育促進効果]
吸気口と排気口のためにアダプターで300mlの2つの三角フラスコを結んだものを植物の生育に用いた。真菌はPDAで培養され、14日間(1フラスコにつき20本の苗)育てられたタバコの苗は、MS固体培地で培養されたタバコの苗と同様にMS固体培地に移植された。このとき、真菌が発生する揮発性物質吸着する吸着剤を使用した場合と不使用の場合とで植物の生育を測定した。結果を図9に示す。
【0044】
図9から明らかなように、吸着剤を使用しない方が植物の生育が促進されている。従って、菌が発生する揮発性物質で植物の生育が促進されるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】菌(糸状菌)によるタバコにおける植物生育促進効果を示すグラフである。
【図2】植物生育促進効果が見られる菌株の生長段階を示すグラフである。
【図3】二酸化炭素と菌と人工的に作成した揮発性物質の混合物との植物生育促進効果を示すグラフである。
【図4】2−メチルプロパノールの植物生育促進効果とその有効濃度を示すグラフである。
【図5】3−メチルブタノールの植物生育促進効果とその有効濃度を示すグラフである。
【図6】メタクリル酸の植物生育促進効果とその有効濃度を示すグラフである。
【図7】チグリン酸の植物生育促進効果とその有効濃度を示すグラフである。
【図8】2−メチルプロパノールと3−メチルブタノールとメタクリル酸とイソブチルアセテートとの混合物の植物生育促進効果とその有効濃度を示すグラフである。
【図9】菌株が産生する揮発性物質の植物生育促進効果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低級脂肪酸類を有効成分として含有することを特徴とする植物生育促進剤。
【請求項2】
メタクリル酸を有効成分として含有することを特徴とする植物生育促進剤。
【請求項3】
2−メチルプロパノール、3−メチルブタノール、チグリン酸から選ばれる一つを有効成分として含有することを特徴とする植物生育促進剤。
【請求項4】
2−メチルプロパノール、3−メチルブタノール、メタクリル酸、チグリン酸から選ばれる少なくとも二つ以上を有効成分として含有することを特徴とする植物生育促進剤。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の植物生育促進剤の有効成分を含有する雰囲気中で植物を生育することを特徴とする植物の生育促進方法。
【請求項6】
雰囲気中の有効成分の濃度が0.01ppb〜1000ppmであることを特徴とする請求項5に記載の植物の生育促進方法。
【請求項7】
雰囲気中に二酸化炭素を含有することを特徴とする請求項5又は6に記載の植物の生育促進方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−167113(P2009−167113A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3885(P2008−3885)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【出願人】(300018150)株式会社ミリオナ化粧品 (4)
【Fターム(参考)】