説明

植物用紫外線照射器具

【課題】植物用紫外線照射器具において、器具周辺に居る作業者の、特にその露出した頭部の紫外線被爆量の低減を図る。
【解決手段】植物用紫外線照射器具1は、紫外線を照射する光源2の一部を覆う反射板3を有し、植物用ハウス5に設けられる。反射板3は、植物用ハウス5の出入口52の最大高さhの略半分の高さh/2よりも高い任意の点X1と光源2の略中心2aとを結ぶ線分L1と交差し、紫外線照射範囲を制限する。出入口52の最大高さhは作業者の背丈程度である。従って、作業者が立っている場合、通常、露出されたその頭部は光源2の近傍で紫外線を浴びない。また、光源2から離れた場所では、光源2の一部だけを直視することができるが、光源2から離れることで紫外線照射強度が下がっているので、頭部への紫外線照射量を低減することができる。このため、器具周辺に居る作業者の、特にその頭部の紫外線被曝量を低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物用ハウスに設けられ、紫外線を含む光を植物に照射する植物用紫外線照射器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ランプと、その光を反射する反射シートと、植物との間の距離を測定するためのセンサとを設けた架台部を植物の上方で、センサの測定結果に基づいて昇降させる昇降装置を備えた植物用照明システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、植物育成室内の天井に紫外線照射光源を配設した植物育成装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。この装置において、紫外線照射光源のケース体の光照射口にはフィルタが装着されている。このフィルタにより、紫外線照射光源から照射される紫外線のうち、略290nm以下の波長領域の光すなわちUV−Cは吸収されて透過せず、UV−Bは透過して植物に照射される。
【0004】
ところで、紫外線は植物病害防除効果を奏するが、約20[μW/cm]の照射強度でもって紫外線が人間の肌又は眼に毎日15分以上照射されると、紅疹又は光角膜炎等が生じ、健康への悪影響が生じる虞がある。従って、特許文献2に記載の技術を植物用ハウスに適用した場合、紫外線照射光源から植物に紫外線を照射すると、植物用ハウス内のいずれの場所でも作業者が紫外線を浴びる。通常、作業者の体の殆んどは被服で覆われているが、顔及び首等を含む頭部は露出しているので、作業者は植物用ハウス内で常に頭部に紫外線を浴び、頭部に紅疹又は光角膜炎等が生じる虞がある。また、特許文献1に記載の技術では、光源として紫外線照射光源を想定しておらず、上記の問題を解決することはできない。
【特許文献1】特開2001−69853号公報
【特許文献2】特開平11−275982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の従来の問題を解決するためになされたものであり、器具周辺に居る作業者の、特にその露出した頭部の紫外線被爆量を低減させることができる植物用紫外線照射器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、紫外線を含む光を照射する光源と、前記光源の一部を覆い該光源からの光を反射する反射板を有した器具外郭とを備え、植物用ハウスに設けられる植物用紫外線照射器具において、該器具は、植物用ハウスに設けられた出入口の最大高さの略半分の高さよりも低い位置に配置され、前記器具外郭は、前記出入口の最大高さの略半分の高さよりも高い任意の点と前記光源の略中心とを結ぶ線分と交差するように設けられているものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の植物用紫外線照射器具において、植物の育成に応じて前記器具外郭の高さを可変とし、その最大高さを前記出入口の最大高さの略半分よりも低い高さとする昇降部をさらに有するものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の植物用紫外線照射器具において、前記器具外郭には、開口部が設けられ、前記開口部は、前記光源から照射される紫外線を略遮光するフィルタにより覆われているものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の植物用紫外線照射器具において、前記光源よりも低い位置にある前記器具外郭の一部分が、紫外線を略反射しない分光反射率を有する面から成り、この面により前記光源からの光を前記出入口の最大高さの略半分の高さよりも高い方向に拡散又は鏡面反射するものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、植物用ハウスの出入口の最大高さは一般に作業者の背丈程度であり、その出入口の最大高さの略半分の高さよりも高い殆んどの範囲には紫外線が照射されないので、作業者が立っている場合、光源の近傍では光源を直視不可能であり、通常、露出したその頭部は紫外線を浴びず、また、光源から離れた場所では、光源の一部だけを直視することができるが、作業者の頭部に照射される紫外線は、光源の一部からの紫外線であり、光源から離れることで紫外線照射強度が下がっているので、従来のように紫外線照射光源を植物用ハウスの天井に設けた場合と比べ、頭部への紫外線照射量を低減することができる。このため、器具周辺に居る作業者の、特にその露出した頭部の紫外線被曝量を低減させることができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、植物の育成に応じて紫外線を最適な高さから照射することができるので、植物への紫外線照射による病害防除効果の向上を図ることができる。
【0012】
請求項3の発明によれば、器具外郭の開口部を覆ったフィルタにより、光源からの紫外線が略遮光されるので、作業者の紫外線被曝量が増加することなく、開口部からの光源点灯状態の視認が可能となる。
【0013】
請求項4の発明によれば、光源から照射されて紫外線を略除かれた光が、植物用ハウスの出入口の最大高さの略半分の高さよりも高い方向に反射されるので、作業者の紫外線被曝量が増加することなく、上記の光に基づいた光源点灯状態の確認が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の各種実施形態に係る植物用紫外線照射器具(以下、紫外線照射器具という)について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1乃至図4は、本発明の第1の実施形態に係る紫外線照射器具の植物用ハウス内における配設例及び構成例を示す。この紫外線照射器具1は、植物の病害防除等のため、紫外線を含む光を植物に照射する光源2と、光源2の一部を覆い光源2からの光を反射する反射板3を有した器具外郭4とを備え、植物用ハウス5に設けられる。紫外線照射器具1は、植物用ハウス5内で、その器具外郭4が支持部材51に支持されており、植物用ハウス5に設けられた作業者用の出入口52の最大高さhの略半分の高さh/2よりも低い位置に配置されている。反射板3は、横長であり、かつ、その縦断面は略C字状であり、出入口52の最大高さhの略半分の高さh/2よりも高い任意の点X1と光源2の略中心2aとを結ぶ線分L1と交差するように設けられている。すなわち、反射板3は、任意の点X1と断面視で光源2の略中心2aとの間を遮るように成形されている。反射板3の光照射口3aは、植物P1が在る斜め下方を向いている。
【0015】
紫外線照射器具1は、植物用ハウス5内の両側壁に、畝53に沿って複数配置されており、配電盤54から導出された電力供給線55に接続されている。
【0016】
光源2は、UV−B及びこれより短波長の紫外線を放射する横長の蛍光ランプ、水銀灯又はキセノンランプ等から成る。光源2の点灯動作を安定させるための安定器21も反射板3により覆われている。
【0017】
反射板3の内側の反射面は、紫外線領域外の光よりも紫外線領域内の光に対して高い反射率を有した略鏡面から成る。反射板3は、アルミ板、ステンレス板、又はアルミを蒸着若しくは金属薄膜を多層蒸着したガラス板、金属板又は樹脂板により構成される。反射板3の両側端の開口は、器具外郭4の一部を成す壁部41により塞がれている。
【0018】
本実施形態においては、反射板3により光源2による紫外線照射範囲が制限され、植物用ハウス5の出入口52の最大高さhの略半分の高さh/2よりも高い殆んどの範囲では、紫外線が照射されない。ところで、植物用ハウス5の出入口52の最大高さhは一般に作業者M1の背丈程度であり、通常、作業者M1は身体の殆んどを被服で覆っているが、顔及び首等を含む頭部は露出されている。従って、作業者M1がしゃがんだ場合には、光源2の全体を直視可能となって、作業者M1の頭部は紫外線を浴びるが、作業者M1が移動又は立ち作業等のために立っている場合、光源2の近傍では光源2を直視不可能であり、作業者M1の頭部は紫外線を浴びない。また、光源2から離れた場所では、光源2の一部だけを直視することができるが、作業者M1の頭部に照射される紫外線は、光源2の一部からの紫外線であり、光源2から離れることで紫外線照射強度が下がっているので、従来のように紫外線照射光源を植物用ハウスの天井に設けた場合と比べ、頭部への紫外線照射量を低減することができる。このため、器具周辺に居る作業者M1の、特にその露出した頭部の紫外線被曝量の時間的な総和を低減させることができる。その結果、紅疹・光角膜炎等の発症を防ぐことができる。
【0019】
なお、器具外郭4は、器具内部への水の侵入を防ぐ防水構造を有していることが望ましい。また、植物用ハウス5は、例えば、果菜、葉物野菜、果実等を内部で栽培する農業用ハウス、ビニールハウス、ガラスハウス等のいずれでもよい。
【0020】
(第1の実施形態の変形例)
図5は、上記第1の実施形態の一変形例に係る紫外線照射器具1の構成を示す。第1の実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付す(以下、同様)。本変形例の紫外線照射器具1の反射板3は、縦断面視で略U字状又は放物線状であり、その上側の先端は下側の先端よりも長い。反射板3の光源2よりも上側の部分が上述の任意の点X1と光源2の略中心2aとの間を遮る。
【0021】
図6は、上記とは別の変形例に係る紫外線照射器具1の構成を示す。本変形例の紫外線照射器具1の反射板3は、縦断面視で略U字状又は放物線状であり、光照射口3aには、反射板3の横方向と平行に設けられた複数のルーバ6が設けられている。ルーバ6はその振れ角が調整されて上述の任意の点X1と光源2との間を遮る。本変形例においては、ルーバ6の振れ角を調整することで紫外線照射方向を調節することができる。従って、植物の位置に合わせた効率的な紫外線照射が可能となり、植物への紫外線照射による病害防除効果の向上を図ることができる。
【0022】
(第2の実施形態)
図7は、本発明の第2の実施形態に係る紫外線照射器具の構成を示す。本実施形態に係る紫外線照射器具1の反射板3の上側の先端付近には開口部31が設けられており、開口部31は、光源2から照射される紫外線を略遮光するフィルタ7により覆われている。フィルタ7は、例えば略380nm以下の波長の紫外線を略遮光し、かつ、それ以外の光を透過する透光性部材である。その透光性部材は、TiOを塗布したガラス、又は紫外線吸収剤を含むアクリル若しくはポリカーボネート等の樹脂製部材から成る。
【0023】
本実施形態においては、光源2から照射された光のうち、略380nm以下の波長の紫外線はフィルタ7により遮光され、それ以外の光はフィルタ7を透過して紫外線照射器具1の外部に出射される。従って、作業者は例えば立った状態で開口部31を覗いて光源2の点灯状態を目視することができる。このため、作業者の紫外線被曝量が増加することなく、作業者による光源2の点灯状態の目視が可能になる。
【0024】
(第3の実施形態)
図8及び図9は、本発明の第3の実施形態に係る紫外線照射器具の構成及びその配設構成を示す。本実施形態の紫外線照射器具1においては、反射板3の下側の先端に横長の分光反射板8が器具外郭4の一部として設けられている。分光反射板8は、紫外線を略反射しない分光反射率を有する面8aを備え、光源2よりも低い位置に在る。面8aは、光源2からの紫外線を除く光を拡散又は鏡面反射する。面8aの向きは、光源2からの光を植物用ハウス5の出入口52の最大高さhの略半分の高さh/2よりも高い方向に反射可能な向きとしている。
【0025】
本実施形態においては、光源2から照射された光が分光反射板8の面8aにより紫外線を略除かれ、その光L2が植物用ハウス5の出入口52の最大高さhの略半分の高さh/2よりも高い方向に反射される。このため、作業者は例えば立った状態で上記の光L2を基に光源2の点灯状態を確認することができる。従って、作業者の紫外線被曝量が増加することなく、作業者による光源2の点灯状態の確認が可能となる。
【0026】
(第4の実施形態)
図10は、本発明の第3の実施形態に係る紫外線照射器具の構成を示す。植物用ハウスの構成については図4を流用して説明する。本実施形態の紫外線照射器具1は、植物の育成に応じて器具外郭4の高さを可変とする昇降部9をさらに有する。昇降部9は、支持部材51の代わりに器具外郭4を支持し、器具外郭4の最大高さを植物用ハウス5の出入口52の最大高さhの略半分h/2よりも低い高さとする。昇降部9は、特開2000−188011号公報、又は特開2006−261016号公報等に示されるように構成されている。また、昇降部9は、植物用ハウス5の骨組み56に固定されており、上述の電力供給線55からの供給電力でもって駆動する。
【0027】
本実施形態においては、植物の育成に応じて紫外線を最適な高さから照射することができるので、植物への紫外線照射による病害防除効果の向上を図ることができる。また、器具外郭4の最大高さは、出入口52の最大高さhの略半分h/2よりも低いので、本実施形態においても第1の実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0028】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限定されるものでなく、使用目的に応じ、様々な変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る植物用紫外線照射器具の植物用ハウス内における配設例を示す斜視図。
【図2】上記配設例の拡大断面図。
【図3】上記器具の斜視図。
【図4】上記器具による作用を示す図。
【図5】上記実施形態の一変形例に係る紫外線照射器具の断面図。
【図6】上記とは別の変形例に係る紫外線照射器具の断面図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る植物用紫外線照射器具の斜視図。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る植物用紫外線照射器具の斜視図。
【図9】上記器具の植物用ハウス内における配設例を示す断面図。
【図10】本発明の第4の実施形態に係る植物用紫外線照射器具の斜視図。
【符号の説明】
【0030】
1 植物用紫外線照射器具
2 光源
2a 光源の略中心
3 反射板
31 開口部
4 器具外郭
5 植物用ハウス
52 出入口
7 フィルタ
8 分光反射板
8a 分光反射板の1つの面
9 昇降部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を含む光を照射する光源と、前記光源の一部を覆い該光源からの光を反射する反射板を有した器具外郭とを備え、植物用ハウスに設けられる植物用紫外線照射器具において、
該器具は、植物用ハウスに設けられた出入口の最大高さの略半分の高さよりも低い位置に配置され、
前記器具外郭は、前記出入口の最大高さの略半分の高さよりも高い任意の点と前記光源の略中心とを結ぶ線分と交差するように設けられていることを特徴とする植物用紫外線照射器具。
【請求項2】
植物の育成に応じて前記器具外郭の高さを可変とし、その最大高さを前記出入口の最大高さの略半分よりも低い高さとする昇降部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の植物用紫外線照射器具。
【請求項3】
前記器具外郭には、開口部が設けられ、
前記開口部は、前記光源から照射される紫外線を略遮光するフィルタにより覆われていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の植物用紫外線照射器具。
【請求項4】
前記光源よりも低い位置にある前記器具外郭の一部分が、紫外線を略反射しない分光反射率を有する面から成り、この面により前記光源からの光を前記出入口の最大高さの略半分の高さよりも高い方向に拡散又は鏡面反射することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の植物用紫外線照射器具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−106168(P2009−106168A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279409(P2007−279409)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】