説明

植物由来のVLPを調製する方法

植物由来のウイルス様粒子(VLP)を調製する方法を提供する。該方法は、植物またはアポプラスト局在VLPを含む植物材料を得て、植物または植物材料からプロトプラスト/スフェロプラスト画分およびアポプラスト画分を生産し、アポプラスト画分を回収することを含み得る。アポプラスト画分は、植物由来のVLPを含む。あるいは、VLPは、消化された画分を生産するための細胞壁分解酵素組成物を使用して植物材料を消化することにより、植物由来のVLPを含む植物または植物材料から得ることができる。消化された画分を濾過し、濾過された画分を生産し、植物由来のVLPを濾過された画分から回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、植物由来のウイルス様粒子(VLP)を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
宿主細胞、例えば、大腸菌、昆虫細胞培養および哺乳動物細胞培養における現行の組換え発現戦略は、培養培地中で非常に高レベルでタンパク質を発現させ、分泌させる。これらの系を使用して、高レベルの発現、適当なタンパク質フォールディングおよびタンパク質の翻訳後修飾をなし遂げる。さらに、細胞内タンパク質が他の成分(DNA、小胞、膜、色素など)から容易に分離され得るため、発現されたタンパク質の精製は簡単にされる。植物または酵母発現系において、細胞壁は、培養培地への発現されたタンパク質の分泌を防止する。
【0003】
ウイルス感染に対抗する主な方法の1つは、ワクチン接種による方法である。突発的発生または流行病に対するワクチン、または季節的需要(例えば、秋に起こる毎年の「インフルエンザのシーズン」、または世界中で発見された最近の「豚インフルエンザ」発生)に合うワクチンの生産は、与えられた短い通知期間中に十分な量のワクチンの生産が必要である。インフルエンザワクチンの現在の世界的生産量は、世界中でのインフルエンザの大流行に直面して不十分であり得る。さらに、毎年、優勢なインフルエンザ株は変化し、したがって、その年に必要度の低い貯蔵は実用的ではない。有効なインフルエンザワクチンの経済的な大規模生産は非常に価値がある。
【0004】
ウイルス様粒子(VLP)は、インフルエンザワクチンを製造するために使用され得る。超構造物、例えば、VLPは、ウイルスカプシドの構造を模倣するが、ゲノムを欠いており、したがって複製できないか、または二次感染のための手段を提供できない。VLPは、強い免疫応答を刺激するための単離された(可溶性)組換え抗原の改良された代替品を提供する。VLPは、特定のウイルスタンパク質の発現時にアセンブリーし、同種のウイルスに類似している外面を呈示するが本当のウイルス粒子とは違って遺伝物質を組み込まない。天然のウイルスと同様の粒子および多価構造における抗原の提示は、バランスのとれた体液性および細胞性成分を伴う免疫応答の刺激増強をなし遂げる。単離された抗原による刺激を越えるこのような改良は、エンベロープVLPが天然の膜結合状態において表面抗原呈示するので、エンベロープウイルスに特に当てはまると考えられる(Grgacic and Anderson, 2006, Methods 40, 60-65)。さらに、ナノ粒子組織を有するインフルエンザVLPは、組換え血球凝集素(HA)(すなわち、モノマーHAまたはロゼットに組織化されたHA;HAの3−8のトリマーのアセンブリー)と比較して、より良いワクチン候補物であることが示されており、それらは体液性および細胞性免疫応答の両方を活性化することができる(Bright, R.Aら 2007, Vaccine 25, 3871-3878)。
【0005】
現在市販の大多数のインフルエンザワクチンは、卵培養ビリオンから得られたウイルス粒子またはウイルス抗原からなる。卵由来のワクチンの生産は、孵化鶏卵中での生ウイルスの培養に頼る。スプリットインフルエンザワクチンは、デタージェントでの精製されたビリオンの化学的不活性化および破壊後に得られる。組換えインフルエンザ抗原は、パンデミックワクチン製品としてウイルス由来の抗原の有効な代替品である。組換え抗原は、新規株の遺伝子構造上の情報がいったん利用可能となれば、該情報から組換え抗原を製造することができ、生産過程の迅速な開始を可能にする。しかしながら、精製された組換えHAサブユニットは、不活性化スプリットインフルエンザワクチンよりも有効性が低いようであり、より高い抗原含量が、強力な免疫応答を産生するために必要である(Treanorら 2007, J. Am. Med. Assoc. 297, 1577-1582)。
【0006】
インフルエンザVLPは、培養された哺乳動物細胞において、全10個のインフルエンザタンパク質の共発現から得られている(Menaら 1996, J. Virol. 70, 5016-5024)。いくつかのウイルスタンパク質は、VLPの生産のために不必要であり、ワクチン開発プログラムにおけるインフルエンザVLPは、2つの主要な抗原性エンベロープタンパク質(HAおよびNA)とM1との共発現から、またはHAとM1のみとの共発現から生産されている(Kangら 2009, Virus Res. 143, 140-146)。Chenら(2007, J. Virol. 81, 7111-7123)は、HA単独がVLP形成および出芽を駆動することができ、M1共発現をそれらの系において省くことができることを示している。しかしながら、HAがVLPを生産する哺乳動物細胞の表面上でシアル化糖タンパク質に結合することが見出されたため、ウイルスシアリダーゼは共発現され、出芽後、生産細胞からVLPの放出を可能にした。
【0007】
単純VLP生産系、例えば、非構造ウイルスタンパク質の発現を必要としない1つまたは少しのウイルスタンパク質のみの発現に頼るものがワクチンの開発を加速するために望ましい。植物系におけるVLPを含むウイルス抗原の生産は、植物が温室または野外において生長することが可能であり、無菌組織培養方法および処理の必要がない点において有利である。
【0008】
PCT公開WO2006/119516(WilliamsonおよびRybickiによる)は、植物におけるインフルエンザA/ベトナム/1194/2004の全長および切断ヒトコドン最適H5 HAの発現を記載している。切断構築物は、膜固定ドメインを欠いている。HAタンパク質の最大蓄積は、ERに標的化する構築物で得られた。膜標的ドメインを欠いている構築物は検出可能なHAを生じなかった。VLPの生産は報告されなかった。
【0009】
脂質エンベロープを含むインフルエンザHA VLPの生産は、WO2009/009876およびWO2009/076778において本発明者らにより以前に記載されている(D'Aoustらによる;これら両方を出典明示により本明細書に包含させる)。エンベロープウイルスにおいて、脂質層または膜がウイルスにより保持されることが有利であり得る。脂質の組成は、系によって変化し得(例えば、植物生産エンベロープウイルスは、エンベロープ中に植物脂質または植物ステロールを含むであろう)、改善された免疫応答に寄与し得る。
【0010】
HBV表面抗原(HBsAg)を発現するトランスジェニックタバコにおけるエンベロープVLPのアセンブリーは、Masonら(1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 11745-11749)により記載された。植物生産HBV VLPは、非経口的に投与されたとき、マウスにおいて強力なBおよびT細胞免疫応答を誘導することが示されたが(Huangら 2005, Vaccine 23, 1851-1858)、摂取を介する経口免疫化試験のみが適度の免疫応答を誘導した(Smithら 2003, Vaccine 21, 4011-4021)。Greco(2007, Vaccine 25, 8228-8240)は、HBsAgとの融合におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)エピトープが、トランスジェニックタバコおよびシロイヌナズナにおいて発現されるとき、VLPとして蓄積し、二価VLPワクチンを作ることを示した。
【0011】
トランスジェニックタバコおよびジャガイモ植物におけるウイルスカプシドタンパク質(NVCP)の発現は、非エンベロープVLPのアセンブリーをもたらした(Masonら 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 5335-5340)。NVCP VLPは、アグロインフィルトレーションされたベンサミアナタバコ(N. benthamiana)の葉において生産され(Huangら 2009, Biotechnol. Bioeng. 103, 706-714)、経口投与時のそれらの免疫原性はマウスにおいて証明された(Santiら 2008, Vaccine 26, 1846-1854)。VLPの形態における215−751μgのNVCPを含む生のジャガイモの健常成人ボランティアへの2または3回の投与は、免疫化されたボランティアの95%において免疫応答の発生をもたらした(Tacketら 2000, J. Infect. Dis. 182, 302-305)。非エンベロープVLPは、また、HBVコア抗原(HBcAg;Huangら 2009, Biotechnol. Bioeng. 103, 706-714)およびヒトパピローマウイルス(HPV)主要カプシドタンパク質L1(Varsaniら 2003, Arch. Virol. 148, 1771-1786)の発現から得られている。
【0012】
VLPをワクチン製剤において使用する前に、植物または植物材料に存在するいくつか、または全てのタンパク質、炭水化物などからVLPを分離することが望ましいかもしれない。興味あるタンパク質を含む間質液抽出物を提供するために減圧および遠心分離処理を含む、植物の細胞間隙からタンパク質を抽出するための方法は、PCT公開WO00/09725(Turpenらによる)に記載されている。このアプローチは、減圧および遠心分離下で孔を通過する小型タンパク質(50kDaまたはそれより小さい)に対して適当であるが、大型超構造(superstructure)タンパク質またはタンパク質複合体、例えば、VLPに対して適当ではない。
【0013】
McCormickら 1999 (Proc Natl Acad Sci USA 96:703-708)は、発現されたタンパク質を細胞外区画へ標的化するための一本鎖Fv(scFv)エピトープに融合されたイネアミラーゼシグナルペプチドの使用、次にscFvポリペプチドの回収のための葉および茎組織の減圧浸潤を記載している。Moehnkeら 2008 (Biotechnol Lett 30:1259-1264)は、アポプラスト抽出を使用してタバコから組換え植物アレルゲンを得るためのMcCormickの減圧浸潤方法の使用を記載している。PCT公開WO2003/025124(Zhangらによる)は、植物において、マウスシグナル配列を使用してアポプラスト間隙に標的化するscFv免疫グロブリンの発現を記載している。
【0014】
VLPの複雑さ、およびそれらを生産し得る植物組織を考慮すると、植物タンパク質を含まないか、または植物タンパク質から容易に分離され、エンベロープウイルスの構造および免疫原性特性を保持したままであるVLPを調製する方法が望ましい。
【発明の概要】
【0015】
発明の概要
本発明は、植物由来のウイルス様粒子(VLP)を調製する方法に関する。さらに具体的に、本発明は、インフルエンザ抗原を含むVLPを調製する方法に関する。
【0016】
本発明の目的は、植物由来のウイルス様粒子を調製する改良された方法を提供することにある。
【0017】
本発明は、アポプラスト内に局在している植物由来のVLPを含む植物または植物材料を得て;プロトプラストおよびアポプラスト画分を生産し、該アポプラスト画分は、植物由来のVLPを含み;アポプラスト画分を回収することを含む、植物由来のVLPを調製する方法(A)を提供する。該方法は、アポプラスト画分から植物由来のVLPを精製する工程をさらに含み得る。植物由来のVLPは、キメラ植物由来のVLPであり得る。植物由来のVLPは、ウイルスエンベロープタンパク質、ウイルス構造タンパク質、ウイルスカプシドタンパク質、およびウイルスコートタンパク質の群から選択され得る。植物由来のVLPは、インフルエンザの血球凝集素を含み得る。
【0018】
アポプラストおよびプロトプラスト画分は、酵素組成物による植物または植物材料の処理により生産され得る。酵素組成物は、1つもしくはそれ以上のペクチナーゼ、1つもしくはそれ以上のセルラーゼ、または、1つもしくはそれ以上のペクチナーゼおよび1つもしくはそれ以上のセルラーゼを含み得る。さらに、所望により、酵素組成物は、リパーゼまたはプロテアーゼを含まないか、または該組成物は、添加されたリパーゼまたはプロテアーゼを含まない。
【0019】
植物または植物材料は、植物を成長、回収または成長および回収することにより得ることができる。植物材料は、植物の一部または全体、1つもしくはそれ以上の植物細胞、葉、茎、根または培養された植物細胞を含み得る。
【0020】
本発明は、上記されている植物由来のVLPを調製する方法(方法A)であって、ウイルスエンベロープタンパク質、ウイルス構造タンパク質、ウイルスカプシドタンパク質、およびウイルスコートタンパク質の群から選択される該VLPをコードする核酸が植物に一過性で導入される方法を提供する。あるいは、該核酸は植物のゲノム内に安定に組み込まれる。
【0021】
本発明は、上記されている植物由来のVLPを調製する方法(方法A)であって、アポプラスト画分から植物由来のVLPを精製する工程をさらに含む方法を提供する。精製する工程は、浄化された抽出物を生産するための深層濾過を用いるアポプラスト画分の濾過、次に、陽イオン交換樹脂を使用する浄化された抽出物のクロマトグラフィーを含み得る。
【0022】
理論に縛られることは望まないが、翻訳後修飾されたタンパク質の中間型または種々の細胞内区画において起こる他の型のプロセッシングを含むタンパク質が、共抽出されないので、アポプラストから得られるタンパク質は、より均質である。組換えタンパク質の均質性のより高い程度は、一般的にタンパク質を含む調製物のより高い質をもたらし、より高い効力、より長い半減期またはより良い免疫原性能力を含む有益な特性を有する産物をもたらし得る。例えば、高マンノースグリコシル化を含む血液タンパク質は、複合グリコシル化を含むタンパク質よりもより迅速に血液循環中に除去される。アポプラスト画分において生産されるグリコシル化タンパク質は、さらに複合型のグリコシル化を示す。したがって、細胞壁消化を含む本明細書に記載されている方法を使用して調製されたアポプラスト由来タンパク質は、例えば、循環中のより良い半減期を示す。
【0023】
本発明は、また、植物由来の脂質エンベロープを含む植物由来のVLPを調製する方法(B)であって、アポプラスト内に局在しているVLPを含む植物または植物材料を得て;植物または植物材料を酵素組成物で処理し、プロトプラスト画分および1つもしくはそれ以上のアポプラストタンパク質組成物を生産し;プロトプラスト画分から1つもしくはそれ以上のアポプラストタンパク質複合体を分離することを含み、該1つもしくはそれ以上のアポプラストタンパク質複合体は該VLPを含む方法を提供する。酵素組成物は、1つもしくはそれ以上のペクチナーゼ、1つもしくはそれ以上のセルロース、または、1つもしくはそれ以上のペクチナーゼおよび1つもしくはそれ以上のセルラーゼを含み得る。さらに、所望により、酵素組成物はリパーゼまたはプロテアーゼを含まないか、または該組成物は添加されたリパーゼまたはプロテアーゼを含まない。植物由来のVLPは、キメラ植物由来のVLPであり得る。植物由来のVLPは、ウイルスエンベロープタンパク質、ウイルス構造タンパク質、ウイルスカプシドタンパク質、およびウイルスコートタンパク質の群から選択され得る。植物由来のVLPは、インフルエンザの血球凝集素を含み得る。
【0024】
本発明は、上記されている植物由来のVLPを調製する方法(方法B)であって、ウイルスエンベロープタンパク質、ウイルス構造タンパク質、ウイルスカプシドタンパク質、およびウイルスコートタンパク質の群から選択されるVLPをコードする核酸が植物に一過性で導入される方法を提供する。あるいは、該核酸は植物のゲノム内に安定に組み込まれる。
【0025】
本発明は、上記されている植物由来のVLPを調製する方法(方法B)であって、アポプラスト画分から植物由来のVLPを精製する工程をさらに含む方法を提供する。精製する工程は、浄化された画分を生産するための深層濾過を用いるアポプラスト画分の濾過、次に、陽イオン交換樹脂を使用する浄化された抽出物のクロマトグラフィーを含み得る。
【0026】
植物由来のVLPは、1つ以上のインフルエンザHAポリペプチドを含むVLPを含み得る。インフルエンザHAポリペプチドは、また、キメラHAポリペプチドであり得る。植物由来のVLPは、赤血球凝集能をさらに含み得る。植物または植物材料は、植物を成長、回収または成長および回収することにより得ることができる。植物材料は、植物の一部または全体、または、1つもしくはそれ以上の植物細胞、葉、茎、根または培養細胞を含み得る。
【0027】
本発明は、また、植物由来のVLPを含む植物または植物材料を得、消化された画分を生産するために細胞壁分解酵素組成物を使用して植物材料を消化し、濾過された画分を生産するために消化された画分を濾過し、濾過された画分から植物由来のVLPを回収することを含む植物由来のVLPを調製する方法(C)を提供する。
【0028】
酵素組成物は、1つもしくはそれ以上のペクチナーゼ、1つもしくはそれ以上のセルロース、または、1つもしくはそれ以上のペクチナーゼおよび1つもしくはそれ以上のセルラーゼを含み得る。さらに、所望により、酵素組成物はリパーゼまたはプロテアーゼを含まないか、または該組成物は添加されたリパーゼまたはプロテアーゼを含まない。植物由来のVLPは、キメラ植物由来のVLPであり得る。植物由来のVLPは、ウイルスエンベロープタンパク質、ウイルス構造タンパク質、ウイルスカプシドタンパク質、およびウイルスコートタンパク質の群から選択され得る。植物由来のVLPは、インフルエンザの血球凝集素を含み得る。
【0029】
本発明は、上記されている植物由来のVLPを調製する方法(方法C)であって、ウイルスエンベロープタンパク質、ウイルス構造タンパク質、ウイルスカプシドタンパク質、およびウイルスコートタンパク質の群から選択されるVLPをコードする核酸が植物に一過性で導入される方法を提供する。あるいは、該核酸は植物のゲノム内に安定に組み込まれる。
【0030】
本発明は、上記されている植物由来のVLPを調製する方法(方法C)であって、細胞残屑および不溶性材料から濾過された画分中のVLPを分離する工程をさらに含む方法を提供する。分離する工程は、浄化された画分を生産するための遠心分離、深層濾過、または遠心分離および深層濾過の両方により行われ得る。植物由来のVLPは、クロマトグラフィーによりさらに精製され得る、例えば、浄化された抽出物は陽イオン交換樹脂を使用して精製され得る。
【0031】
植物由来のVLPは、1つ以上のインフルエンザHAポリペプチドを含むVLPを含み得る。インフルエンザHAポリペプチドは、また、キメラHAポリペプチドであり得る。植物由来のVLPは、赤血球凝集能をさらに含み得る。植物または植物材料は、植物を成長、回収または成長および回収することにより得ることができる。植物材料は、植物の一部または全体、または、1つもしくはそれ以上の植物細胞、葉、茎、根または培養細胞を含み得る。
【0032】
理論に縛られることは望まないが、植物由来の脂質を含む植物製VLPは、他の製造系において製造されたVLPよりも強い免疫反応を誘導し得、生または弱毒化全ウイルスワクチンにより誘導される免疫反応と比較したとき、これらの植物製VLPにより誘導される免疫反応はより強い。
【0033】
宿主細胞から得られるタンパク質抽出物の組成物は、複雑であり、一般的に、単離される興味あるタンパク質または超構造と共に細胞間および細胞内成分を含む。興味あるタンパク質または超構造を豊富にすることができ、調製過程内での効率を増加することができるので、アポプラスト画分の調製、次いで、細胞内タンパク質および成分を分離する工程は、有利である。より少ない効率的な工程を含む単純な過程を有することは、有意な収率の増加およびコスト削減をもたらし得る。たとえ、プロトプラストが抽出処理中に無傷のままでないとしても、細胞壁分解酵素を使用して細胞壁を消化する工程がVLPタンパク質の収率を増加させることも見出された。理論に縛られることは望まないが、細胞壁消化の工程は、細胞壁のポリマー成分をほどき、細胞壁内に結合されたVLPの放出を助け得る。このプロトコールは、また、細胞内成分内のVLPの汚染を最小限にし得る。
【0034】
植物細胞壁を消化する方法は知られており、細胞壁を消化する酵素カクテル混合物は変化し得る。本発明は、使用された細胞壁消化方法により限定されない。
【0035】
本明細書に記載されている方法は、均質化、混合または粉砕を含む植物由来のVLPを調製するための方法と比較したとき、植物由来のVLP抽出物のより少ない破壊および汚染をもたらす。本明細書に記載されている方法は、植物組織のアポプラスト画分を提供し、プロトプラストおよびそれらの成分の完全性を維持し得る。本明細書に記載されている方法は、たとえ、プロトプラストまたはプロトプラストの一部が、それらの完全性をなくし、もはや無傷でなくても、VLPを精製することにおいて有効である。
【0036】
これらの方法は、標準的な組織破壊技術、例えば、均質化、混合または粉砕を含むVLP抽出方法と比較したとき、VLPのより高い収率を提供する。より良い収率は、一部分において、VLPおよび/または脂質エンベロープの構造的完全性を破壊するせん断力の減少に起因し得る。アポプラスト画分からのVLPの調製は、アポプラスト画分が細胞質タンパク質を有意に減少しているか、または該タンパク質を有さないため、有利であり得る。したがって、アポプラスト画分中の他のタンパク質および物質からのHAのモノマー、HAのトリマーまたはフラグメントを含むVLPの分離は、容易に行われる。しかしながら、VLPの収率の増加はまた、たとえ、プロトプラスト調製物またはプロトプラスト調製物の一部が無傷でなくても、本明細書に記載されている方法を使用して得ることができる。
【0037】
本発明のVLPは、また、標準的な組織破壊技術を使用して得られるものよりも、より良い赤血球凝集能を示すと特徴付けられる。この改良された赤血球凝集能は、無傷なVLP(溶液中に遊離するわずかなHAモノマーまたはトリマー)のより良い収率、無傷な脂質エンベロープを有する無傷なVLPのより良い収率、またはそれらの組合せに起因し得る。
【0038】
VLPを使用して製造されたワクチンは、全ウイルスを使用して製造されたワクチンと比較して、非感染性であるという利点を提供する。したがって、生物学的封じ込めは、問題ではなく、製造のために必要でない。植物製VLPは、発現系を温室または野外において生育可能とすることによるさらなる利点を提供し、したがって、有意により経済的であり、スケールアップのために適当である。
【0039】
さらに、植物は、シアル酸残基の合成および該残基のタンパク質への付加に関与する酵素を含まない。VLPは、ノイラミニダーゼ(NA)の非存在下で生産することができ、植物中でのVLP生産を確実にするために、NAを共発現する、または生産細胞をシアリダーゼ(ノイラミニダーゼ)で処理もしくは抽出する必要がない。
【0040】
この発明の概要は、必ずしも、本発明の全ての特徴を記載していない。
【0041】
本発明のこれらのおよび他の特徴は、図面について言及する以下の記載からさらに明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、H5 A/インドネシア/5/05 血球凝集素の発現のためのCPMVHTベースの発現カセット(構築物685)の略図を示す。
【0043】
【図2】図2は、A)PacI(35Sプロモーターの上流)からAscI(NOSターミネーターのすぐ下流)のH5/インド(構築物番号685)を発現する構築物の一部の核酸配列(配列番号1)を示す。A/インドネシア/5/2005由来のH5のコード配列は下線を引いている。図2Bは、構築物番号685によってコードされるH5 A/インドネシア/5/05 血球凝集素のアミノ酸配列(配列番号2)を示す。
【0044】
【図3A】図3は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による血球凝集素(HA)含有構造物の特性化を示す。消化された植物抽出物の遠心分離後に、ペレットを再懸濁し、SECにより分別する。図3Aは、画分あたりの全可溶性タンパク質含有量を示す(塗りつぶされた三角形;最大%、左側 Y軸;Bradford法を使用して決定された)。回収された画分の赤血球凝集能(塗りつぶされた棒;右側 Y軸)も示す。
【図3B】図3Bは、SECで溶出された画分のSDS−PAGE分析を示す。画分をアセトンにより沈殿させ、分析前に1/40容量の還元サンプルローディングバッファー中に再懸濁した。ゲルを0.1%のCoomassieR−250溶液で染色した。精製されたVLPを対照として用いた。HA0モノマーに対応するバンドは、矢印により示されている。MW−分子量標準(kDa);C−精製されたVLP(対照);レーン7から10および14から16は、図3Aに示されているSEC分析から溶出された画分番号に対応する。
【0045】
【図4】図4は、酵素消化後に、およびComitrolTMホモジェナイザーを使用する機械的均質化により得られるタンパク質プロフィールの比較を示す。サンプルを変性サンプルローディングバッファー中で処理し、タンパク質を溶出画分のSDS−PAGE分析により分離した。ゲルを0.1%のCoomassie R−250溶液で染色した。MW−分子量標準(kDa);レーン1−25μlの酵素混合物;レーン2−25μlの植物組織の酵素消化物およびレーン3−5μlのComitrolホモジェナイザーで得られた抽出物。
【0046】
【図5】図5は、アルファルファプラストシアニンプロモーターおよび5’UTR、A/インドネシア/5/2005由来のH5の血球凝集素コード配列(構築物#660)、アルファルファプラストシアニン3’UTRおよびターミネーター配列を含むHA発現カセットの核酸配列(配列番号:9)を示す。
【0047】
【図6】図6は、アポプラスト画分中のHA−VLPの分離に関する陽イオン交換樹脂上のHA−VLPの直接的捕捉を示す。サンプルを非還元変性サンプルローディングバッファー中で処理し、タンパク質をSDS−PAGEにより分離した。ゲルを0.1%のCoomassieR−250溶液で染色した。レーン1:遠心分離後のアポプラスト画分、レーン2−3:連続精密濾過後のアポプラスト画分;レーン4:陽イオン交換の負荷;レーン5:陽イオン交換の画分を介する流入物。レーン6;10×濃縮された陽イオン交換からの溶出物;レーン7:分子量標準(kDa)。
【0048】
【図7】図7は、消化バッファーへのNaClの添加なしで浄化後のH5/Indo VLP(A)およびH1/Cal VLP(B)ならびに上記添加後のH1/Cal VLP(C)のナノ粒子トラッキング分析(NTA)プロフィールを示す。NTA実験を、NanoSight LM20(NanoSight, Amesbury, UK)で行った。装置は、青色レーザー(405nm)、サンプルチャンバーおよびViton フルオロエラストマー o−リングを備えている。室温でビデオを記録し、NTA 2.0 ソフトウェアを使用して分析した。サンプルを60秒間記録した。最適な粒子分解能が得られるように、シャッター(shutter)および利得(gain)を手動で選択した。
【0049】
【図8】図8は、異なるバッファーを使用して酵素消化により産生されたH3/ブリズベン VLPの抽出物のウェスタンブロットを示す。レーン1)純粋な組換えHA標準(5μg、Immune Technology Corp.製 IT-003-0042p)、レーン2から5は以下のバッファー中で行われた7μlの遠心された酵素抽出物を含む。レーン2)600mMのマンニトール+125mMのクエン酸塩+75mMのNaPO+25mMのEDTA+0.04%の亜硫酸水素塩pH6.2、レーン3)600mMのマンニトール+125mMのクエン酸塩+75mMのNaPO+50mMのEDTA+0.04%の亜硫酸水素塩pH6.2、レーン4)200mMのマンニトール+125mMのクエン酸塩+75mMのNaPO+25mMのEDTA+0.03%の亜硫酸水素塩pH6.2、レーン5)200mMのマンニトール+125mMのクエン酸塩+75mMのNaPO+50mMのEDTA+0.03%の亜硫酸水素塩pH6.2。矢印は、HA0の免疫検出シグナルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
詳細な説明
本発明は、植物由来のウイルス様粒子(VLP)を調製する方法に関する。さらに具体的には、本発明は、インフルエンザの血球凝集素(HA)を含むVLPを調製する方法に関する。
【0051】
以下の記載は、好ましい態様である。
【0052】
本発明は、興味あるタンパク質またはタンパク質超構造物を得るための方法を提供する。興味あるタンパク質は、プロトプラスト/スフェロプラスト区画を除外する植物細胞部分に対応するアポプラストまたは細胞外区画に存在し得る。該方法は、植物細胞を囲むセルロース植物細胞壁を除去、消化または消化および除去の両方をすることを含む。細胞壁を消化することにより、細胞壁のポリマー成分はほどかれ、興味あるタンパク質またはタンパク質超構造物は、より容易に放出され得る。この方法を使用することにより、主に宿主細胞タンパク質および成分を含むプロトプラスト/スフェロプラスト区画がアポプラストから分離されるため、興味あるタンパク質またはタンパク質超構造物は豊富になる。以下に記載されているとおり、本明細書において提供される方法は、処理中、プロトプラスト/スフェロプラスト区画の完全性を喪失するとき、プロトプラスト/スフェロプラスト区画が無傷でないとき、および、プロトプラスト/スフェロプラスト区画由来の宿主細胞タンパク質および成分の一部がアポプラスト画分に存在するとき、興味あるタンパク質またはタンパク質超構造物を得ることにおいてなお有効である。
【0053】
タンパク質超構造物の例は2つ以上のポリペプチドからなる構造物であり;該ポリペプチドは同じであるか、または異なっていてよく;異なるとき、それらは、約1:1から約10:1またはそれ以上の比率で存在し得る。タンパク質超構造物は、1つ以上の脂質、リン脂質、核酸、膜などをさらに含み得る。2つ以上のポリペプチドは、共有結合、ジスルフィド架橋、電荷相互作用、疎水性引力、ファン・デル・ワールス力、水素結合などにより結合され得る。タンパク質超構造物の例は、エンベロープまたは非エンベロープのウイルス様粒子(VLP)、例えば、ウイルスエンベロープタンパク質、ウイルス構造タンパク質、ウイルスカプシドタンパク質、またはウイルスコートタンパク質である。
【0054】
本発明は、また、植物由来のウイルス様粒子(VLP)を調製する方法を提供する。該方法は、アポプラスト内に局在される植物由来のVLPを含む植物または植物材料を得て、植物材料からプロトプラスト/スフェロプラスト画分およびアポプラスト画分を生産し、ここで、該アポプラスト画分は植物由来のVLPを含み、アポプラスト画分を回収することを含む。所望により、植物由来のVLPは、アポプラスト画分から精製され得る。
【0055】
本発明は、また、植物由来の脂質エンベロープを含むVLPを調製する方法を提供する。該方法は、VLPを含む植物または植物材料を得て、植物または植物材料を酵素組成物で処理して、1つもしくはそれ以上のアポプラストタンパク質複合体およびプロトプラスト/スフェロプラスト画分を生産し、プロトプラスト画分から1つもしくはそれ以上のアポプラストタンパク質複合体を分離することを含む。1つもしくはそれ以上のアポプラストタンパク質複合体は、植物由来の脂質エンベロープを含むVLPを含む。
【0056】
本発明は、また、植物由来のVLPを含む植物または植物材料を得て、細胞壁分解酵素組成物を使用して植物材料を消化して消化された画分を生産し、消化された画分を濾過して濾過された画分を生産し、濾過された画分から植物由来のVLPを回収することを含む、植物由来のVLPを調製する方法を提供する。この方法において、プロトプラストの完全性は必要ではないかもしれない。
【0057】
プロトプラストは、細胞壁が完全に、または部分的に除去された植物細胞である。スフェロプラストは、細胞壁の部分的除去を有し得る。プロトプラスト、スフェロプラストまたはプロトプラストおよびスフェロプラストの両方(プロトプラスト/スフェロプラスト)は、本明細書に記載されているとおりに使用され得、本明細書において使用される該用語は互換可能である。細胞壁は機械的に破壊および除去され得るか(例えば、均質化、混合を介して)、細胞壁は完全に、または部分的に酵素的に消化され得るか、または細胞壁は機械的および酵素的方法の組合せ、例えば、均質化、次に細胞壁の消化のための酵素での処理を使用して除去され得る。プロトプラストは、また、培養された植物細胞、例えば、液体培養された植物細胞または固体培養された植物細胞から得ることができる。
【0058】
植物組織培養、培養された植物細胞およびプロトプラスト、スフェロプラストなどの生産の一般原理を記載している標準参考文献は、植物組織培養に関する入門書、MK Razdan 2nd Ed.(Science Publishers, 2003;これを出典明示により本明細書に包含させる)、または例えば、以下のURL:molecular-plant-biotechnology.info/plant-tissue-culture/protoplast-isolation.htmを含む。プロトプラスト(またはスフェロプラスト)生産および操作に関する方法および技術は、例えば、Davey MRら 2005 (Biotechnology Advances 23:131-171;これを出典明示により本明細書に包含させる)に記載されている。タンパク質生化学、分子生物学などの一般的な方法および原理を記載している標準参考文献は、例えば、Ausubelら Current Protocols In Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York (1998 and Supplements to 2001;これを出典明示により本明細書に包含させる);Sambrookら Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Plainview, New York, 1989(これを出典明示により本明細書に包含させる);Kaufmanら Eds., Handbook Of Molecular And Cellular Methods In Biology And Medicine, CRC Press, Boca Raton ,1995(これを出典明示により本明細書に包含させる);McPherson, Ed., Directed Mutagenesis: A Practical Approach, IRL Press, Oxford, 1991(これを出典明示により本明細書に包含させる)を含む。
【0059】
プロトプラストまたはスフェロプラストの遊離のために植物細胞壁を消化または破壊するための酵素は、当業者に知られており、セルラーゼ(EC 3.2.1.4)、ペクチナーゼ(EC 3.2.1.15)、キシラナーゼ(EC 3.2.1.8)、キチナーゼ(EC 3.2.1.14)、ヘミセルラーゼまたはそれらの組合せを含み得る。適当な酵素の非限定的な例は、セルラーゼ、ヘミセルラーゼおよびペクチナーゼを含む多成分酵素混合物、例えば、MACEROZYMETM(おおよそ:セルラーゼ:0.1U/mg、ヘミセルラーゼ:0.25U/mg、およびペクチナーゼ:0.5U/mgを含む)を含む。市販の酵素、酵素混合物および供給者の他の例は、表1に記載されている(植物組織培養に関する入門書参照、MK Razdan 2nd Ed.., Science Publishers, 2003による)。
【0060】
セルラーゼの別名および型は、エンド−1,4−β−D−グルカナーゼ;β−1,4−グルカナーゼ;β−1,4−エンドグリカンヒドロラーゼ;セルラーゼA;セルロシンAP;エンドグルカナーゼD;アルカリセルラーゼ;セルラーゼA3;セルデキストリナーゼ;9.5セルラーゼ;アビセラーゼ;パンセラーゼSSおよび1,4−(1,3;1,4)−β−D−グルカン4−グルカノヒドロラーゼを含む。ペクチナーゼ(ポリガラクツロナーゼ)の別名および型は、ペクチン分解酵素;ペクチナーゼ;エンドポリガラクツロナーゼ;ペクトラーゼ;ペクチンヒドロラーゼ;ペクチンポリガラクツロナーゼ;エンド−ポリガラクツロナーゼ;ポリ−α−1,4−ガラクツロニドグリカノヒドロラーゼ;エンドガラクツロナナーゼ;エンド−D−ガラクツロナナーゼおよびポリ(1,4−α−D−ガラクツロニド)グリカノヒドロラーゼを含む。キシラナーゼの別名および型は、ヘミセルラーゼ、エンド−(1→4)−β−キシラン4−キシラノヒドロラーゼ;エンド−1,4−キシラナーゼ;キシラナーゼ;β−1,4−キシラナーゼ;エンド−1,4−キシラナーゼ;エンド−β−1,4−キシラナーゼ;エンド−1,4−β−D−キシラナーゼ;1,4−β−キシランキシラノヒドロラーゼ;β−キシラナーゼ;β−1,4−キシランキシラノヒドロラーゼ;エンド−1,4−β−キシラナーゼ;β−D−キシラナーゼを含む。キチナーゼの別名および型は、キトデキストリナーゼ;1,4−β−ポリ−N−アセチルグルコサミニダーゼ;ポリ−β−グルコサミニダーゼ;β−1,4−ポリ−N−アセチルグルコサミニダーゼ;ポリ[1,4−(N−アセチル−β−D−グルコサミニド)]グリカノヒドロラーゼを含む。
【0061】
表1:プロトプラスト単離のための市販の酵素の非限定的な例
【表1】

【0062】
特定の酵素または酵素の組合せおよび濃度および反応条件の選択は、VLPを含むプロトプラストおよびアポプラスト画分が得られる使用される植物組織の型に依存し得る。セルラーゼ、ヘミセルラーゼおよびペクチナーゼ、例えば、ペクチナーゼ MACEROZYMETMまたはマルチフェクトの混合物は、0.01%から2.5%(v/v)の範囲の濃度、例えば、0.01、0.02、0.04、0.06、0.08、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4または2.5%(v/v)またはそれらの間の任意の量で使用され得る。MACEROZYMETMまたはマルチフェクトは、単独で、または他の酵素、例えば、セルラーゼ、ペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、またはそれらの組合せと組み合わせて使用され得る。セルラーゼは、0.1%から5%の範囲の濃度、例えば、0.1、0.25、0.5、0.75、1.0、1.25、1.5、1.75、2.0、2.25、2.5、2.75.3.0.3.25、3.5、3.75、4.0、4.25、4.5、4.75、5.0%(w/v)またはそれらの間の任意の量で使用され得る。
【0063】
酵素溶液(細胞壁を破壊する組成物、消化する溶液とも称される)は、一般的に、バッファーまたはバッファー系、浸透圧調節物質、および1つもしくはそれ以上の塩、二価の陽イオンまたは他の添加剤を含む。バッファーまたはバッファー系は、酵素活性およびタンパク質またはVLPの安定性に適当な範囲におけるpH、例えば、約pH5.0から約8.0の範囲内またはそれらの間の任意の値のpHを維持するように選択される。使用される選択されたpHは、回収されるVLPに依存して変化し得、例えば、pHは、5.0、5.2、5.4、5.6、5.8、6.0、6.2、6.4、6.6、6.8、7.0、7.2、7.4、7.6、7.8、8.0またはそれらの間の任意のpHであり得る。バッファーまたはバッファー系の例は、限定はしないが、MES、リン酸塩、クエン酸塩などを含む。1つ以上のバッファーまたはバッファー系は、酵素溶液(消化する溶液)中で混合され得;1つ以上のバッファーは、0mMから約200mMの濃度またはそれらの間の任意の量、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180または190mMまたはそれらの間の任意の量で存在し得る。適合性に依存して、浸透圧調節物質成分を所望により加えることができる。浸透圧調節物質およびその濃度は、酵素溶液の浸透力を上げるために選択される。浸透圧調節物質の例は、マンニトール、ソルビトールまたは他の糖アルコール、種々のポリマー長のポリエチレングリコール(PEG)などを含む。浸透圧調節物質の濃度範囲は、植物種、使用される浸透圧調節物質の型および選択される植物組織の型(元の種または器官、例えば、葉または茎)に依存して変化し得る。一般的に、該範囲は、0Mから約0.8M、例えば、0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.5、0.6、0.7または0.75Mまたはそれらの間の任意の量、例えば、0、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600nMのマンニトールまたはそれらの間の任意の量である。浸透圧調節物質の濃度は、また、パーセンテージ(w/v)として示され得る。いくつかの植物または組織型において、それは、わずかに高張性の調製物を使用するために有益であり得、細胞壁から植物細胞の細胞膜の分離を容易にし得る。浸透圧調節物質は、また、消化中に除くことができる。
【0064】
植物消化のために設定するための別のパラメーターは温度である。温度は、消化処理中、所望により、コントロールされ得る。有用な温度範囲は、4℃から40℃もしくはそれらの間の任意の温度、例えば、約4℃から約15℃もしくはそれらの間の任意の温度、または、約4℃から約22℃もしくはそれらの間の任意の温度である。選択される温度に依存して、他の消化の実験パラメーターは、最適な抽出条件を維持するために調節され得る。
【0065】
陽イオン、塩またはそれらの両方を、例えば、二価の陽イオン、例えば、Ca2+またはMg2+を0.5−50mMまたはそれらの間の任意の量で、塩、例えば、CaCl、NaCl、CuSO、KNOなどを約0から約750mMまたはそれらの間の任意の量、例えば、10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、600、700または750mMで、細胞膜安定性を改善するために加えられ得る。他の添加剤、例えば、キレート剤、例えば、限定はしないが、EDTA、EGTAを約0から約200mMまたはそれらの間の任意の量、例えば、5、10、15、20、25、50、75、100、125、150、175、200mMまたはそれらの間の任意の量で、酸化を防止するための還元剤、例えば、限定はしないが、亜硫酸水素ナトリウムまたはアスコルビン酸を0.005−0.4%またはそれらの間の任意の量、例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.15、0.2、0,25、0.3、0.35、0.4%またはそれらの間の任意の量、特異的酵素阻害剤(以下参照)で、所望により、葉の老化の阻害剤、例えば、シクロヘキシミド、カイネチンまたは1つ以上のポリアミンもまた、加え得る。
【0066】
消化溶液は、また、約0から約600mMのマンニトール、約0から約500mMのNaCl、約0から約50mMのEDTA、約1%から約2%v/vのセルロース、約0から約1%v/vのペクチナーゼ、約0.03から約0.04%のメタ重亜硫酸ナトリウム、約0から約125mMのクエン酸塩または約0から75mMのNaPOの1つ以上を含み得る。
【0067】
植物材料は、植物細胞壁への酵素または酵素組成物の接触を増強するために処理され得る。例えば、葉の表皮は、酵素組成物での処理前に除去されるか、またははぎ取られ得る。植物材料は、小さな一片(手動または破砕または切断装置、例えば、Urschel slicerで)に切られ得る;切断された植物材料には、部分的減圧下で酵素組成物がさらに浸潤し得る(Nishimura and Beevers 1978, Plant Physiol 62:40-43; Newellら 1998, J. Exp Botany 49:817-827)。また、酵素組成物での処置前または中に、植物材料の機械的摂動が植物組織に適用され得る(Giridharら 1989. Protoplasma 151:151-157)。さらに、培養された植物細胞、液体または固体のいずれかでの培養物は、プロトプラストまたはスフェロプラストを調製するために使用され得る。
【0068】
リパーゼまたはプロテアーゼを欠いているか、または不活性化したリパーゼまたはプロテアーゼを有する酵素組成物を使用することが望ましいかもしれない。いくつかの態様において、1つ以上のプロテアーゼまたはリパーゼ阻害剤は、酵素組成物中に含まれ得る。リパーゼ阻害剤の例はRHC80267(SigmaAldrich)を含み;プロテアーゼ阻害剤の例はE−64、NaEDTA、ペプスタチン、アプロチニン、PMSF、ペファブロック、ロイペプチン、ベスタチンなどを含む。
【0069】
酵素組成物中で植物材料を混合または撹拌するあらゆる適当な方法が使用され得る。例えば、植物材料を、トレイもしくはパンにおいて、または回転震盪器を介して穏やかに回転または振動させ、回転または振動ドラム中でころがし得る。プロトプラスト(および/またはスフェロプラスト)損傷を最小限にするために、それらが消化スープから除去されるまで用心すべきである。したがって、消化容器(digestion vessel)が選択されるべきである。
【0070】
非限定的な例として、500mMのマンニトール、10mのCaClおよび5mMのMES(pH5.6)中に1.5%のセルラーゼ(Onozuka R−10)および0.375%のMACEROZYMETMを含む酵素組成物は、いくつかのタバコ組織からのプロトプラスト(またはスフェロプラスト)の生産ために使用され得る。本明細書に記載されているとおり、マンニトールの濃度は、また、約0から約500mMまたはそれらの間の任意の量で変化され得る。本明細書に記載されている情報を提供された当業者は、VLPの生産のために使用されるタバコ種または別の種の年齢および系統に対して適当な酵素組成物を決定することができる。
【0071】
細胞壁の破壊または細胞壁の部分的消化において、プロトプラスト画分(プロトプラストおよび/またはスフェロプラストを含む)および「アポプラスト画分」が得られる。あるいは、「消化された画分」を得ることができる。以下に記載されているとおり、プロトプラスト画分の完全性は、本明細書に記載されているように高収率でタンパク質を生産するために必要でないであろう、したがって、アポプラスト画分または消化された画分は、タンパク質、例えば、限定はしないが、VLP、ウイルスエンベロープタンパク質、ウイルス構造タンパク質、ウイルスカプシドタンパク質、ウイルスコートタンパク質の抽出のために使用され得る。
【0072】
「アポプラスト画分」とは、プロトプラストの完全性の維持を助けるために使用され得る浸透圧調節物質および/または他の成分の存在下で、植物材料の細胞壁分解酵素を使用する酵素消化または部分的酵素消化の後に得られる画分を意味する。アポプラスト画分は、崩壊したプロトプラスト(またはスフェロプラスト)から生じるいくつかの成分を含み得る。例えば、アポプラスト画分は、約0から約50%(v/v)またはそれらの間の任意の量のプロトプラスト画分由来の成分、または、0、0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45もしくは50%(v/v)またはそれらの間の任意の量のプロトプラスト画分由来の成分を含み得る。
【0073】
「消化された画分」とは、植物材料の細胞壁分解酵素を使用する酵素消化または部分的酵素消化の後に残存する画分を意味し、しかしながら、プロトプラストの完全性は必要ではなく、消化された画分は無傷な、崩壊された、または、無傷かつ崩壊されたプロトプラストを含み得る。消化された画分を生産するために使用される細胞壁分解酵素を含む組成物は、浸透圧調節物質を含み得るか、または浸透圧調節物質は、プロトプラストを得るために使用される標準手順に存在する量と比較したとき少ない量で存在し得るか、または浸透圧調節物質は、組成物に非存在であり得る。消化された画分はアポプラスト画分およびプロトプラスト/スフェロプラスト画分を含むが、しかしながら、プロトプラスト/スフェロプラスト画分は無傷であるか、または無傷でないかもしれない。消化された画分は、細胞内成分および細胞外成分を含む。浸透圧調節物質がプロトプラスト/スフェロプラストを無傷で維持するために使用されるとき、細胞内成分は、プロトプラスト/スフェロプラストの形態において見いだされ得る。浸透圧調節物質が消化溶液中に使用されないとき、プロトプラスト/スフェロプラストは崩壊し得、細胞内および細胞外成分は、消化された画分中に混合され得る。本明細書に記載されているとおり、VLPは、任意の適当な技術を使用して消化された画分の成分から分離され得る。理論に縛られることは望まないが、細胞壁消化の工程は、細胞壁消化の工程は、細胞壁のポリマー成分をほどき、そうでなければ細胞壁内に捕捉されているVLPの放出を助け得る。このプロトコールは、また、細胞内成分でのVLPの汚染を最小限にする。VLPは、興味ある該タンパク質または超構造タンパク質を含む分離された画分を得るために、低速遠心分離、次に、濾過、深層濾過、沈降、沈殿、例えば、限定はしないが、硫酸アンモニウム沈殿、またはそれらの組合せを使用して、酵素消化後の細胞残屑から分離され得る。
【0074】
浸透圧調節物質が使用されるとき、プロトプラスト/スフェロプラスト画分またはプロトプラストを含む画分は、VLPおよび/またはVLPを含むプロトプラスト/スフェロプラストを含む分離された画分を得るために、任意の適当な技術、例えば、限定はしないが、遠心分離、濾過、深層濾過、沈降、沈殿、またはそれらの組合せを使用して、アポプラスト画分から分離され得る。
【0075】
プロトプラスト(およびスフェロプラスト)画分、またはプロトプラストを含む画分は、分離された画分を得るために、任意の適当な技術、例えば、限定はしないが、遠心分離、濾過、深層濾過、沈降、沈殿、またはそれらの組合せを使用して、アポプラスト画分から分離され得る。
【0076】
分離された画分は、例えば、上清(遠心、沈降、または沈殿されるとき)または濾液(濾過されるとき)であり得、VLPに関して豊富である。分離された画分は、例えば、さらなる遠心分離工程、沈殿、クロマトグラフィー工程(例えば、サイズ排除、イオン交換クロマトグラフィー)、タンジェンシャルフロー濾過またはそれらの組合せにより、VLPを単離、精製、濃縮またはそれらの組合せでさらに処理され得る。精製されたVLPの存在は、例えば、ネイティブ(native)またはSDS−PAGE、適当な検出抗体を使用するウエスタン分析、毛細管電気泳動法または当業者に明らかである任意の他の方法により確認され得る。
【0077】
アポプラストは、細胞膜の外側の植物細胞の部分であり、植物の細胞壁および細胞間隙を含む。プロトプラスト(および/またはスフェロプラスト)の完全性が消化およびさらなる処理中に維持されていることが好ましいが、VLPを豊富にするために、プロトプラストが無傷のままである必要はない。
【0078】
合成中、VLPは、細胞膜の外側に分泌される。VLPは、約20nmから1μmまたはそれらの間の任意の量、例えば、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200nm、または、それらの間の任意の量、例えば、100nmの平均サイズであり、脂質膜を含み得る。いったん合成されると、VLPは、そのサイズのため、細胞膜および細胞壁間に捕捉されたままの可能性があり、植物タンパク質を得るために使用される標準的な機械的方法を使用する単離またはさらなる精製ではアクセスできない可能性がある。収率を最大限にし、細胞タンパク質でのVLP画分の汚染を最小限にし、VLP、いくつかの態様において、関連脂質エンベロープまたは膜の完全性を維持するために、プロトプラスト(および/またはスフェロプラスト)に対する機械的損傷を最小限にするVLPを放出するために細胞壁を破壊する方法、例えば、本明細書に記載されている酵素方法は有用であり得る。しかしながら、全てのプロトプラストの完全性が処理中に維持されている必要はない。
【0079】
本発明のいくつかの局面における植物において生産されるVLPは、植物由来の脂質と複合体化し得る。VLPは、HA0前駆体形態、またはジスルフィド架橋形態により共に保持されているHA1もしくはHA2ドメインを含み得る。植物由来の脂質は、脂質二重層の形態であり得、VLPを囲むエンベロープをさらに含み得る。植物由来の脂質は、限定はしないが、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、スフィンゴ糖脂質、植物ステロールまたはそれらの組合せを含む、VLPが生産される植物の細胞膜の脂質成分を含み得る。植物由来の脂質は、「植物脂質」と称され得る。植物ステロールの例は当分野で知られており、例えば、スチグマステロール、シトステロール、24−メチルコレステロールおよびコレステロールを含む(Mongrandら 2004, J. Biol Chem 279:36277-86)。
【0080】
ウイルス構造タンパク質、例えば、HAの正確な折り畳み、および、HAのトリマー形成は、VLPのアセンブリーに望ましい。VLPおよび特に植物由来の脂質エンベロープを含むVLPは、対象に投与されるとき、構造タンパク質のモノマーの投与と比較して、優れた免疫応答を提供し得る。
【0081】
いくつかの態様において、ポリペプチド発現は、植物の任意の細胞内または細胞外間隙、オルガネラまたは組織に標的化され得る。発現されるポリペプチドを特定の位置に局在させるために、ポリペプチドをコードする核酸は、シグナルペプチドをコードする核酸配列に連結され得る。あるいは、シグナルペプチドは、輸送ペプチドまたはシグナル配列とも称され得る。発現されるポリペプチドのアポプラストへの局在化を指向するためのシグナルペプチドまたはペプチド配列は、限定はしないが、イネアミラーゼシグナルペプチド(McCormick 1999, Proc Natl Acad Sci USA 96:703-708)、アミノ酸配列:
MAKNVAIFGLLFSLLLLVPSQIFAEE;配列番号10
を有するタンパク質ジスルフィドイソメラーゼシグナルペプチド(PDI)、植物病因関連タンパク質(PRP; Szyperskiら PNAS 95:2262-2262)、例えば、タバコ植物病因関連タンパク質2(PRP)、ヒトモノクローナル抗体シグナルペプチド(SP)、またはあらゆる天然血球凝集素シグナルペプチドを含む。
【0082】
いくつかの例において、発現されたポリペプチドは、例えば、該ポリペプチドがシグナルペプチドまたは輸送ペプチドの非存在下で発現し、分泌されるとき、特異的な細胞間または細胞外間隙(例えば、アポプラスト)、オルガネラまたは組織に蓄積し得る。
【0083】
「ウイルス様粒子(VLP)」または「ウイルス様粒子」または「VLP」なる用語は、自己アセンブリーし、ウイルス表面タンパク質、例えば、インフルエンザHAタンパク質またはキメラインフルエンザHAタンパク質を含む構造物を示す。VLPおよびキメラVLPは、一般的に、感染において生産されるビリオンと形態学的および抗原的に類似するが、複製に十分な遺伝情報を欠いており、したがって非感染性である。VLPおよびキメラVLPは、植物宿主細胞を含む適当な宿主細胞において生産され、所望によりさらに精製され得る。
【0084】
インフルエンザVLPおよびキメラインフルエンザVLPが本明細書に例示されているが、本明細書に記載されている方法は、アポプラストに局在するか、またはアポプラストに分泌されるあらゆる植物由来のVLPに対して使用され得る。
【0085】
「キメラタンパク質」または「キメラポリペプチド」とは、単一のポリペプチドとして融合された、2つまたはそれ以上の供給源、例えば、限定はしないが、2つまたはそれ以上のインフルエンザ型またはサブタイプ由来のアミノ酸配列を含むタンパク質またはポリペプチドを意味する。キメラタンパク質またはポリペプチドは、ポリペプチドまたはタンパク質の残部と同種(すなわち天然)または異種であるシグナルペプチドを含み得る。キメラタンパク質またはキメラポリペプチドは、キメラヌクレオチド配列からの転写産物として生産され得、無傷なままであるか、または必要により、キメラタンパク質またはキメラポリペプチドは合成後に開裂され得る。無傷なキメラタンパク質またはキメラタンパク質の開裂した部分は結合して、マルチマータンパク質を形成し得る。キメラタンパク質またはキメラポリペプチドは、また、ジスルフィド架橋を介して結合されているサブユニットを含むタンパク質またはポリペプチド(すなわち、マルチマータンパク質)を含み得る。例えば、2つまたはそれ以上の供給源由来のアミノ酸配列を含むキメラポリペプチドは、サブユニットおよびジスルフィド架橋を介して結合されているサブユニットにプロセッシングされ、キメラタンパク質またはキメラポリペプチドを生産し得る。
【0086】
ポリペプチドは、インフルエンザの血球凝集素(HA)であってよく、ポリペプチドを作るそれぞれの2つまたはそれ以上のアミノ酸配列は、異なるHAから得て、キメラHAまたはキメラインフルエンザHAを生産することができる。キメラHAは、また、合成後に開裂される異種シグナルペプチド(キメラHAプレタンパク質)を含むアミノ酸配列を含み得る。本明細書に記載されている本発明において使用され得るHAタンパク質の例は、WO2009/009876;WO2009/076778;WO2010/003225(これらを出典明示により本明細書に包含させる)において見いだされ得る。キメラポリペプチドをコードする核酸は、「キメラ核酸」または「キメラヌクレオチド配列」として記載されていてもよい。キメラHAからなるウイルス様粒子は、「キメラVLP」として記載されていてもよい。キメラVLPは、2010年6月25日に出願されたPCT出願PCT/CA2010/000983、および米国仮出願第61/220,161号(2009年6月24日に出願された)(これらを出典明示により本明細書に包含させる)にさらに記載されている。VLPは、天然またはキメラHAの発現から得ることができる。
【0087】
本発明により提供される方法によって調製されるVLPのHAは、既知の配列および開発または同定されている変異体HA配列を含む。さらに、本明細書に記載されているように生産されるVLPは、ノイラミニダーゼ(NA)または他の成分、例えば、M1(Mタンパク質)、M2、NSなどを含まない。しかしながら、HAおよびNAを含むVLPが望まれる場合は、NAおよびM1をHAと共発現させ得る。
【0088】
一般的に、「脂質」なる用語は、脂溶性(親油性)の天然分子を示す。本発明のいくつかの局面によって植物において生産されるキメラVLPは、植物由来の脂質と複合体化し得る。植物由来の脂質は、脂質二重層の形態であり得、VLPをとり囲むエンベロープをさらに含み得る。VLPが生産されるとき、植物由来の脂質は、リン脂質、トリ−、ジ−、およびモノグリセリド、ならびに脂溶性ステロールまたはステロールを含む代謝産物を含む植物の細胞膜の脂質成分を含み得る。例えば、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、スフィンゴ糖脂質、植物ステロールまたはそれらの組合せを含む。あるいは、植物由来の脂質は、「植物脂質」とも称され得る。植物ステロールの例は、カンペステロール、スチグマステロール、エルゴステロール、ブラシカステロール、デルタ−7−スチグマステロール、デルタ−7−アベナステロール、ダウノステロール(daunosterol)、シトステロール、24−メチルコレステロール、コレステロールまたはベータ−シトステロール(Mongrandら 2004, J. Biol Chem 279:36277-86)を含む。当業者は容易に理解できるとおり、細胞の細胞膜の脂質組成は、細胞または細胞を得る生物体もしくは種の培養または成長条件にしたがって変化し得る。
【0089】
細胞膜は、一般的に、脂質二重層ならびに種々の機能に関するタンパク質を含む。特定の脂質の局在濃度は、脂質二重層において見いだすことができ、「脂質ラフト」と称される。これらの脂質ラフトマイクロドメインは、スフィンゴ脂質およびステロールにおいて豊富であり得る。理論に縛られることは望まないが、脂質ラフトは、エンドおよびエキソサイトーシス、ウイルスまたは他の感染因子の進入または放出、細胞間シグナル変換、細胞または生物体の他の構造成分、例えば、細胞内および細胞外マトリックスとの相互作用における有意な役割を有し得る。
【0090】
脂質エンベロープを含むVLPは、以前に、WO2009/009876;WO2009/076778およびWO2010/003225(これらは出典明示により本明細書に包含させる)に記載されている。インフルエンザウイルスに関して、本明細書において使用される「血球凝集素」または「HA」なる用語は、インフルエンザウイルス粒子の構造的糖タンパク質を示す。本発明のHAは、あらゆるサブタイプから得ることができる。例えば、HAは、サブタイプH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15もしくはH16、またはインフルエンザB型もしくはC型のものであってよい。本発明の組換えHAは、また、任意の血球凝集素の配列に基づくアミノ酸配列を含み得る。インフルエンザの血球凝集素の構造は、よく試験されており、二次、三次および四次構造における高程度の保存を証明されている。アミノ酸配列は変化し得るが、この構造的保存は保存されている(例えば、Skehel and Wiley, 2000 Ann Rev Biochem 69:531-69; Vaccaroら 2005参照;これらは出典明示により本明細書に包含させる)。HAをコードするヌクレオチド配列は知られており、例えば、BioDefense and Public Health Database(現在のインフルエンザ研究データベース;Squiresら 2008 Nucleic Acids Research 36:D497-D503)、例えば、URL:biohealthbase.org/GSearch/home.do?decorator=Influenza)または全米バイオテクノロジー情報センターにより支えられているデータベース(NCBI;例えば、URL:ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?db=nuccore&cmd=search&term=Influenza)(これら両方を出典明示により本明細書に包含させる)から利用できる。
【0091】
本発明は、また、ヒトまたは宿主動物、例えば、霊長類、ウマ、ブタ、トリ、ヒツジ、水鳥、渡り鳥、ウズラ、カモ、ガチョウ、家禽、ニワトリ、ラクダ、イヌ(canine)、イヌ(dog)、ネコ(feline)、ネコ(cat)、トラ、ヒョウ、ジャコウネコ、ミンク、テン、フェレット、ペット、家畜、マウス、ラット、アシカ、クジラなどに感染するウイルスのインフルエンザVLPを含むVLPを調製、単離または調製および単離の両方をする方法に関する。いくつかのインフルエンザウイルスは、1つ以上の宿主動物に感染し得る。
【0092】
アミノ酸変異は、インフルエンザウイルスの血球凝集素において許容される。この変異は、継続的に同定されている新規の株を提供する。新規の株間の感染性は、変化していてもよい。しかしながら、次にVLPを形成する血球凝集素トリマーの形成は維持されている。本発明は、また、HAサブタイプまたは配列、またはVLPを含むキメラHA、または起源の種にかかわらず、何らかの植物由来のVLPを調製する方法を含む。
【0093】
血球凝集素の正確な折り畳みは、インフルエンザの血球凝集素の他の特性中で、タンパク質の安定性、マルチマーの形成、VLPの形成およびHAの機能(血球凝集する能力)のために重要であり得る。タンパク質の折り畳みは、限定はしないが、タンパク質の配列、タンパク質の相対的量、細胞内の密集度、折り畳まれた、部分的に折り畳まれた、もしくは折り畳まれていないタンパク質に結合もしくは一過性に結合し得る補因子の利用可能性、1つ以上のシャペロンタンパク質の存在などを含む1つ以上の因子により影響され得る。
【0094】
熱ショックタンパク質(Hsp)またはストレスタンパク質は、シャペロンタンパク質の例であり、タンパク質合成、細胞内輸送、誤った折り畳みの防止、タンパク質凝集の防止、タンパク質複合体のアセンブリーおよび脱アセンブリー、タンパク質フォールディングならびにタンパク質脱凝集を含む種々の細胞過程に参加し得る。このようなシャペロンタンパク質の例は、限定はしないが、Hsp60、Hsp65、Hsp70、Hsp90、Hsp100、Hsp20−30、Hsp10、Hsp100−200、Hsp100、Hsp90、Lon、TF55、FKBP、シクロフィリン、ClpP、GrpE、ユビキチン、カルネキシンおよびタンパク質ジスルフィドイソメラーゼを含む(例えば、Macario, A.J.L., Cold Spring Harbor Laboratory Res. 25:59-70. 1995; Parsell, D.A. & Lindquist, S. Ann. Rev. Genet. 27:437-496 (1993);米国特許第5,232,833号参照)。シャペロンタンパク質、例えば、限定はしないがHsp40およびHsp70は、キメラHA(2010年6月25日に出願されたPCT出願PCT/CA2010/000983、および2009年6月24日に出願された米国仮出願第61/220,161号;WO2009/009876およびWO2009/076778(これらの全てを出典明示により本明細書に包含させる)の折り畳みを保証するために使用され得る。タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI;受入番号Z11499)も使用され得る。
【0095】
いったん回収されれば、VLPは、例えば、血球凝集アッセイ、電子顕微鏡、光散乱、サイズ排除クロマトグラフィー、HPLC、ウェスタンブロット分析または電気泳動法により、構造、サイズ効力または活性について評価され得る。VLPのサイズ、濃度、活性および組成を評価するためのこれらの、および他の方法は、当該分野で知られている。
【0096】
分取サイズ排除クロマトグラフィーにおいて、VLPを含む調製物を、本明細書に記載されている方法により得て、不溶性材料を遠心分離により除去し得る。PEGでの沈殿も利益を与え得る。回収されたタンパク質を慣用の方法(例えば、Bradfordアッセイ、BCA))を使用して定量し、抽出物を例えば、SEPHACRYLTM、SEPHADEXTMもしくは同様の媒体を使用するサイズ排除カラムに通過させ、画分を回収してもよい。Blue Dextran 2000または適当なタンパク質は、較正標準として使用され得る。抽出物を、また、陽イオン交換カラムに通過させ、活性な画分を回収してもよい。クロマトグラフィー後、画分を、タンパク質電気泳動法、免疫ブロット法、または両方によりさらに分析し、VLPおよび画分のタンパク質成分の存在を確認してもよい。
【0097】
血球凝集アッセイは、当分野でよく知られている方法を使用して、VLP含有画分の赤血球凝集能を評価するために使用され得る。理論に縛られることは望まないが、異なる動物由来のRBCへのHAの結合能力は、シアル酸α2,3またはα2,3に対するHAのアフィニティーおよびRBCの表面上のこれらのシアル酸の存在により駆動される。インフルエンザウイルス由来のウマおよびトリHAは、シチメンチョウ、ニワトリ、アヒル、モルモット、ヒト、ヒツジ、ウマおよびウシを含む全てのいくつかの種由来の赤血球を凝集させる。一方で、ヒトHAは、シチメンチョウ、ニワトリ、アヒル、モルモット、ヒトおよびヒツジの赤血球に結合する(Ito Tら 1997, Virology, 227:493-499; Medeiros Rら 2001. Virology 289:74-85)。
【0098】
血球凝集阻害(HIまたはHAI)アッセイは、また、組換えHAによる赤血球(RBC)の凝集を阻害することができる、キメラHAまたはキメラVLPを含むワクチンまたはワクチン組成物により誘導される抗体の有効性を証明するために使用され得る。血清サンプルの血球凝集阻害抗体力価は、マイクロタイターHAIにより評価され得る(Aymardら 1973)。任意の種、例えば、ウマ、シチメンチョウ、ニワトリなど由来の赤血球が使用され得る。このアッセイは、VLPの表面上のHAトリマーのアセンブリーに関する間接的情報を与え、HA上の抗原部位の適当な提示を確認する。
【0099】
交差反応性HAI力価は、また、ワクチンサブタイプに関連する他のウイルスの株に対する免疫応答の有効性を証明するために使用され得る。例えば、第1のインフルエンザ型またはサブタイプのHDCを含むキメラ血球凝集素を含むワクチン組成物で免疫化された対象由来の血清を、第2の株の全ウイルスまたはウイルス粒子を用いるHAIアッセイにおいて使用し、HAI力価を決定され得る。
【0100】
VLPを含むトランスジェニック植物、植物細胞、植物材料または種子の形質転換および再生のための方法は、当該分野で確立されており、当業者に知られている。形質転換された、および再生された植物を得る方法は、本発明に重要ではない。
【0101】
「形質転換」とは、遺伝子型で、表現型で、またはそれら両方で発現される遺伝情報(ヌクレオチド配列)の種間移動を意味する。キメラ構築物から宿主への遺伝情報の種間移動は、遺伝性であり(すなわち、宿主のゲノム内に組み込まれる)、遺伝情報の移動は安定であると考えられるか、または該移動は一過性であり、遺伝情報の移動は遺伝性でなくてもよい。
【0102】
「植物材料」なる用語は、植物に由来するあらゆる物質を意味する。植物材料は、植物全体、組織、細胞またはそれらの任意の画分を含み得る。さらに、植物材料は、細胞内植物成分、細胞外植物成分、植物の液体または固体抽出物、またはそれらの組合せを含み得る。さらに、植物材料は、植物の葉、茎、果実、根またはそれらの組合せ由来の植物、植物細胞、組織、液体抽出物またはそれらの組合せを含み得る。植物材料は、何らかの処理工程に付されていない植物またはそれらの一部を含み得る。植物の一部は、植物材料を含み得る。植物または植物材料は、任意の方法により回収されるか、または得ることができる、例えば、植物全体が使用され得るか、または、葉もしくは他の組織が記載されている方法における使用のために特異的に除去され得る。VLPを発現し、分泌するトランスジェニック植物は、また、本明細書に記載されている処理に対する出発物質として使用され得る。
【0103】
本発明の構築物は、Tiプラスミド、Riプラスミド、植物ウイルスベクター、直接的DNA形質転換、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、浸潤などを使用して植物細胞に導入することができる。このような技術に関して、例えば、Weissbach and Weissbach, Methods for Plant Molecular Biology, Academy Press, New York VIII, pp. 421-463 (1988); Geierson and Corey, Plant Molecular Biology, 2d Ed. (1988); and Miki and Iyer, Fundamentals of Gene Transfer in Plants. In Plant Metabolism, 2d Ed. DT. Dennis, DH Turpin, DD Lefebrve, DB Layzell (eds), Addison-Wesley, Langmans Ltd. London, pp. 561-579 (1997)。他の方法は、例えば、プロトプラスト、マイクロインジェクション、微粒子銃またはウィスカー、および減圧浸潤を使用する直接的DNA取込、リポソームの使用、エレクトロポレーションを含む。例えば、Bilangら(Gene 100: 247-250 (1991), Scheidら(Mol. Gen. Genet. 228: 104-112, 1991), Guercheら(Plant Science 52: 111-116, 1987), Neuhauseら(Theor. Appl Genet. 75: 30-36, 1987), Kleinら Nature 327: 70-73 (1987); Howellら(Science 208: 1265, 1980), Horschら(Science 227: 1229-1231, 1985), DeBlockら(Plant Physiology 91: 694-701, 1989), Methods for Plant Molecular Biology (Weissbach and Weissbach, eds., Academic Press Inc., 1988), Methods in Plant Molecular Biology (Schuler and Zielinski, eds., Academic Press Inc., 1989), Liu and Lomonossoff (J. Virol Meth, 105:343-348, 2002)、米国特許第4,945,050;5,036,006;5,100,792;6,403,865;5,625,136(これらの全てを出典明示により本明細書に包含させる)参照。
【0104】
一過性の発現方法は、本発明の構築物を発現するために使用され得る(Liu and Lomonossoff, 2002, Journal of Virological Methods, 105:343-348参照;これを出典明示により本明細書に包含させる)。あるいは、PCT公開WO00/063400、WO00/037663(出典明示により本明細書に包含させる)に記載されている減圧ベース一過性発現方法が使用され得る。これらの方法は、例えば、限定はしないが、アグロ接種(Agro-inoculation)またはアグロ浸潤(Agro-infiltration)の方法を含み得るが、しかしながら、他の一過性方法も、また、上記されているとおりに使用され得る。アグロ接種またはアグロ浸潤のいずれかで、所望の核酸を含むアグロバクテリウムの混合物は、組織、例えば、葉、植物の地上部分(茎、葉および花を含む)、植物の他の部分(茎、根、花)、または植物全体の細胞間隙に入る。表皮横断後、アグロバクテリウムは細胞に感染し、t−DNAコピーを移動させる。t−DNAがエピソームで転写され、mRNAが翻訳され、感染細胞中で興味あるタンパク質の生産を引き起こすが、しかしながら、核内でのt−DNAの継代は一過性である。
【0105】
本発明の方法により調製されるインフルエンザVLPは、既存のインフルエンザワクチンと共に使用して、ワクチンを補うか、それをより効果的にさせるか、または必要な投与用量を減少させ得る。当業者に知られているとおり、ワクチンは1つもしくはそれ以上のインフルエンザウイルスに対するものであり得る。適当なワクチンの例は、限定はしないが、Sanofi−Pasteur、ID Biomedical、Merial、Sinovac、Chiron、Roche、MedImmune、GlaxoSmithKline、Novartis、Sanofi−Aventis、Serono、Shire Pharmaceuticalsなどから市販により利用できるものを含む。
【0106】
所望により、本発明のVLPは、当業者に知られている適当なアジュバントと混合され得る。さらに、VLPは、上記定義のとおりに、標的生物体の処置のための有効用量のVLPを含むワクチン組成物において使用され得る。さらに、本発明によって生産されるVLPは、他のタンパク質成分と共発現されるか、または他のVLPまたはインフルエンザタンパク質成分、例えば、ノイラミニダーゼ(NA)、M1およびM2と再構成され得る。それは、また、ワクチンタンパク質、例えば、マラリア抗原、HIV抗原、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)抗原などから製造される他のVLPと共発現または再構成することができる。
【0107】
本明細書に記載されている配列は、以下に要約されている。
【表2】

【0108】
本発明は、以下の実施例においてさらに説明される。しかしながら、これらの実施例は説明の目的のためのみであり、いかなる方法においても、本発明の範囲を限定するために使用するべきでないことを理解すべきである。
【0109】
発現カセットのアセンブリー
VLPの生産のために使用され得る構築物は、米国仮出願第61/220,161号(2009年6月24日に出願された)、WO2009/009876、WO2009/076778およびWO2010/003225(これら全てを出典明示により本明細書に包含させる)に記載されている。構築物は、また、表2に記載されているものを含み得る。これらの構築物のアセンブリーは、WO2009/009876、WO2009/076778、WO2010/003225およびUS61/220,161に記載されている。しかしながら、既知のHAを含む他の構築物、例えば、限定はしないが、表2に記載されているものおよび同様の、または異なる調節要素およびプロモーターと組み合わせられたものは、また、本明細書に記載されているVLPの生産のために使用され得る。
【0110】
表2:血球凝集素生産のために使用することができる構築物の非限定的な例
【表3】

【表4】

【0111】
CPMV−HT発現カセットは、5’に、位置115および161で変異したATGを有するササゲモザイクウイルス(CPMV)RNA2のヌクレオチド1−512、ならびに、3’に、CPMV RNA2(3’UTRに対応する)のヌクレオチド3330−3481、次にNOSターミネーターが並ぶ、興味あるコード配列を含むmRNAの発現をコントロールするための35Sプロモーターを含んだ。プラスミドpBD−C5−1LC(Sainsburyら 2008; Plant Biotechnology Journal 6: 82-92およびPCT公開WO2007/135480)を、CPMV−HT−ベースの血球凝集素発現カセットのアセンブリーのために使用した。CPMV RNA2の位置115および161でATGの変異を、Darveauら(Methods in Neuroscience 26: 77-85 (1995))に示されているPCRベースのライゲーション方法を使用して行った。2つの別々のPCRを、pBD−C5−1LCを鋳型として行った。第1の増幅のためのプライマーは、pBinPlus.2613c(配列番号:3)およびMut−ATG115.r(配列番号:4)であった。第2の増幅のためのプライマーは、Mut−ATG161.c(配列番号:5)およびLC−C5−1.110r(配列番号:6)であった。2つのフラグメントを混合し、pBinPlus.2613c(配列番号:3)およびLC−C5−1.110r(配列番号:6)をプライマーとして使用する第3の増幅のための鋳型として使用した。得られたフラグメントをPacIおよびApaIで消化し、同じ酵素で消化されたpBD−C5−1LCにクローニングした。生産された発現カセットを828と名付けた。
【0112】
CPMV−HT発現カセット(構築物番号685)中のH5 A/インドネシア/5/2005のアセンブリー
このカセットのアセンブリーは、WO2009/009876、WO2009/076778およびWO2010/003325(これらを出典明示により本明細書に包含させる)に記載されている。
【0113】
簡潔には、A/インドネシア/5/2005由来のH5のコード配列を、以下のとおりに、CPMV−HTにクローニングした:制限酵素認識部位ApaI(開始ATGのすぐ上流)およびStuI(終始コドンのすぐ下流)を、鋳型として構築物番号660(D'Aoustら Plant Biotechnology Journal 6:930-940 (2008))を使用する、プライマーApaI−H5(A−Indo).1c(配列番号:7)およびH5(A−Indo)−StuI.1707r(配列番号:8)でのPCR増幅を行うことにより、血球凝集素コード配列に付加した。構築物660は、アルファルファプラストシアニンプロモーターおよび5’UTR、A/インドネシア/5/2005(構築物#660)由来のH5の血球凝集素コード配列、アルファルファプラストシアニン3’UTRおよびターミネーター配列を含む(配列番号:9;図5)。得られたフラグメントを、ApaIおよびStuI制限酵素で消化し、予め同じ酵素で消化された構築物番号828にクローニングした。得られたカセットを構築物番号685と名付けた(図1、2)。
【0114】
サイレンシングのサプレッサー
転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)は、植物中の導入遺伝子の発現の制限に関与する場合があり、導入遺伝子mRNAの特異的分解を中和するために、ジャガイモウイルスY(HcPro)由来のサイレンシングのサプレッサーの共発現が使用され得る(Brignetiら 1998)。サイレンシングの代替サプレッサー、例えば、限定はしないが、TEV−p1/HC−Pro(タバコエッチ病ウイルス−p1/HC−Pro)、BYV−p21、トマトブッシースタントウイルスのp19(TBSV p19)、トマトクリンクルウイルスのカプシドタンパク質(TCV−CP)、キュウリモザイクウイルスの2b(CMV−2b)、ジャガイモウイルスXのp25(PVX−p25)、ジャガイモウイルスMのp11(PVM−p11)、ジャガイモウイルスSのp11(PVS−p11)、ブルーベリースコーチウイルスのp16(BScV−p16)、カンキツトリステザウイルスのp23(CTV−p23)、ブドウ葉巻随伴ウイルス−2のp24(GLRaV−2 p24)、ブドウウイルスAのp10(GVA−p10)、ブドウウイルスBのp14(GVB−p14)、ヘラクレウム潜在ウイルスのp10(HLV−p10)、またはニンニク共通潜在ウイルスのp16(GCLV−p16)は、当分野でよく知られており、本明細書に記載されているとおりに使用され得る(Chibaら2006, Virology 346:7-14;これを出典明示により本明細書に包含させる)。したがって、サイレンシングのサプレッサー、例えば、限定はしないが、HcPro、TEV −p1/HC−Pro、BYV−p21、TBSV p19、TCV−CP、CMV−2b、PVX−p25、PVM−p11、PVS−p11、BScV−p16、CTV−p23、GLRaV−2 p24、GBV−p14、HLV−p10、GCLV−p16またはGVA−p10は、興味あるタンパク質をコードする核酸配列と共に共発現され、植物内で高レベルのタンパク質生産をさらに保証し得る。
【0115】
p19の構築物は、WO2010/0003225(これを出典明示により本明細書に包含させる)に記載されている。簡潔には、トマトブッシースタントウイルス(TBSV)のp19タンパク質のコード配列を、Darveauら(Methods in Neuroscience 26: 77-85(1995))に示されているPCRベースのライゲーション方法により、アルファルファプラストシアニン発現カセットに連結した。第1のPCRにおいて、プラストシアニンプロモーターのセグメントを、プライマーPlasto−443c:
GTATTAGTAATTAGAATTTGGTGTC(配列番号:11)
およびsupP19−plasto.r
CCTTGTATAGCTCGTTCCATTTTCTCTCAAGATG(配列番号:12)
を使用して、構築物660(WO2010/0003225に記載されている、これを出典明示により本明細書に包含させる)を鋳型として増幅した。並行して、p19のコード配列を含む別のフラグメントを、プライマーsupP19−1c
ATGGAACGAGCTATACAAGG(配列番号:13)
およびSupP19−SacI.r
AGTCGAGCTCTTACTCGCTTTCTTTTTCGAAG(配列番号:14)
でVoinnetら(The Plant Journal 33: 949-956 (2003))に記載されている構築物35S:p19を鋳型として使用して増幅した。次に、増幅産物を混合し、第2の増幅(アセンブリー反応)のための鋳型として、プライマーPlasto−443cおよびSupP19−SacI.rと使用した。得られたフラグメントをBamHI(プラストシアニンプロモーター中)およびSacI(p19コード配列の最後)で消化し、同じ制限酵素で以前に消化された構築物番号660にクローニングし、構築物番号R472を得た。該プラスミドを用いて、エレクトロポレーション(Mattanovichら 1989)により、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(AGL1; ATCC, Manassas, VA 20108, USA)を形質転換した。全てのアグロバクテリウム・ツメファシエンス株の完全性を、制限マッピングにより確認した。R472を含むアグロバクテリウム・ツメファシエンス株を「AGL1/R472」と称した。
【0116】
HcPro構築物(35HcPro)を、Hamiltonら(2002)に記載されているとおりに調製した。全てのクローンを、構築物の完全性を確認するためにシーケンシングした。該プラスミドを用いて、エレクトロポレーション(Mattanovichら 1989)により、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(AGL1; ATCC, Manassas, VA 20108, USA)を形質転換した。全てのアグロバクテリウム・ツメファシエンス株の完全性を、制限マッピングにより確認した。
【0117】
植物バイオマスの調製、接種材料、アグロ浸潤(agroinfiltration)および回収
ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)植物を、市販のピートモス培養器で満たされた平箱中で種子から生長させた。該植物は、16/8光周期および日中25℃/夜間20℃の温度レジメンの下で温室で生長させた。播種の3週間後、個々の小植物を選択し、ポットに移し、同じ環境条件下でさらに3週間温室で生長させておいた。6週間後、植物は80gの平均重量および30cmの高さを有した。
【0118】
アグロバクテリウム株AGL1を、D'Aoustら 2008 (Plant Biotechnology Journal 6:930-940)により記載されている方法を使用して、以下に特定されている構築物でトランスフェクトした(エレクトロポレーション)。トランスフェクトされたアグロバクテリウムを、10mMの2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、20μMのアセトシリンゴン、50μg/mlのカナマイシンおよび25μg/mlのカルベニシリンpH5.6を補ったYEB培地中で0.6から1.6のOD600まで増殖させた。アグロバクテリウム懸濁液を使用前に遠心し、浸潤培地(10mMのMgClおよび10mMのMES pH5.6)に再懸濁した。
【0119】
植物を、D'Aoustら(上記)に記載されているように、アグロ浸潤させた。簡潔には、減圧浸潤のために、アグロバクテリウム・ツメファシエンス懸濁液を遠心し、浸潤培地に再懸濁し、4℃で一晩保管した。浸潤の日に、培養バッチを、2.5培養容量に希釈し、使用前に暖めておいた。ベンサミアナタバコの植物全体を、2分間20−40Torrの減圧下で気密ステンレス鋼タンク中で細菌懸濁液中に逆さまに置いた。特記されない限り、すべての浸潤を、1:1比率でR472(株AGL1/R472)で形質転換された細菌と共浸潤として行った。減圧浸潤後、植物を回収までの4−6日のインキュベーション期間、温室に戻した。
【0120】
葉のサンプリングおよび全タンパク質抽出(機械的均質化)
4、5、6、7および8日間のインキュベーション後、植物の地上部を回収し、即座に使用した。3容量の1%のTrition X−100および0.004%のメタ重亜硫酸ナトリウムを含む冷50mMのTris pH8.0、0.15MのNaCl中で植物組織を均質化することにより、全可溶性タンパク質を抽出した。植物組織を、1容量の冷50mMのTris pH8、0.15MのNaCl中で、POLYTRONTMを使用して機械的に均質化し、乳鉢および乳棒またはCOMITROLTMで粉砕した。COMITROLTMで使用されるバッファーは、また、0.04%のメタ重亜硫酸ナトリウムを含んだ。均質化後、粉砕された植物原料のスラリーを5,000gで4℃で5分遠心し、粗抽出物(上清)を分析のために保持した。浄化された粗抽出物の全タンパク質含有量を、参照標準としてウシ血清アルブミンを使用して、Bradfordアッセイ(Bio-Rad, Hercules, CA)により決定した。
【0121】
細胞壁消化によるVLP抽出
葉組織をベンサミアナタバコ植物から回収し、〜1cm切片に切った。葉切片を、室温(RT)で30分間、500mMのマンニトールに浸した。次に、マンニトール溶液を除去し、プロトプラスト化溶液(500mMのマンニトール、10mMのCaClおよび5mMのMES/KOH(pH5.6))中の酵素混合物(トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)由来のセルラーゼの混合物(Onozuka R−10;3%v/v)およびクモノスカビ属由来のペクチナーゼの混合物(MACEROZYMETM;0.75%v/v;両方ともYakult Pharmaceuticalsから)と交換した。使用される比率は、100mLの溶液あたり20gの葉切片であった。この調製物を浅い容器(〜11×18cm)に平坦に広げ、40rpmで26℃で回転震盪器上で16時間インキュベートした。
【0122】
あるいは、VLP抽出を以下のとおりに行ってもよい:植物を、実施例1に記載されているAGL1/#685でアグロ浸潤させた。葉組織を浸潤後6日目にベンサミアナタバコ植物から回収し、〜1cm切片に切った。マルチフェクトペクチナーゼFE、マルチフェクトCX CGおよびマルチフェクトCX B(Genencor)を、それぞれ1.0%(v/v)で、600mMのマンニトール、75mMのクエン酸塩、0.04%の亜硫酸水素ナトリウムpH6.0バッファー(新鮮バイオマス;消化バッファーを1:2.5(w/v)の比率で使用する)に加えた。バイオマスを、オービタルシェーカーで室温で15時間消化した。
【0123】
インキュベーション後、葉の破片を濾過(250または400μmのメッシュのナイロン濾過)により除去した。懸濁液中のプロトプラストを、200×g(15分)で遠心分離、次に、上清をさらに浄化するために5000×g(15分)で上清の遠心分離により回収した。あるいは、5000×gで15分間の単一の遠心分離工程を用いてもよい。次に、数mLの上清を70,000×gで30分遠心分離した。得られたペレットを1.7mLのPBSに再懸濁し、即座に分析するか、または冷凍した。
【0124】
タンパク質分析
H5に関する血球凝集アッセイは、Nayak and Reichl (2004)により記載されている方法に基づいた。簡潔には、試験サンプル(100μL)の連続二重希釈を100μLのPBSを含むV字底96ウェルマイクロタイタープレート中で作り、ウェル当たり100μLの希釈されたサンプルを置いた。100マイクロリットルの0.25%のシチメンチョウ赤血球懸濁液(Bio Link Inc., Syracuse, NY)をそれぞれのウェルに加え、プレートを室温で2時間インキュベートした。完全血球凝集を示す最も高い希釈度の逆数を血球凝集活性として記録した。並行して、組換えHA5標準(A/Vietnam/1203/2004 H5N1)(Protein Science Corporation, Meriden, CT)をPBSで希釈し、それぞれのプレート上に対照として使用した。
【0125】
ELISA
HA5標準を、1%のTriton X−100での処理、次にTissue LyserTM(Qiagen)中で1分機械的撹拌により破壊された精製されたウイルス様粒子を用いて調製した。U字底96ウェルマイクロタイタープレートを、50mMの炭酸−重炭酸コートバッファー(pH9.6)中の10μg/mLの捕捉抗体(Immune Technology Corporation、#IT-003-005I)で4℃で16−18時間コートした。全ての洗浄を、0.1%のTween−20を含む0.01MのPBS(リン酸緩衝食塩水)pH7.4で行った。インキュベーション後、プレートを3回洗浄し、PBS中の1%のカゼインで37℃で1時間でブロックした。ブロッキング工程後、プレートを3回洗浄した。HA5標準を模造抽出物(AGL1/R472単独で浸潤させた葉組織から調製された)に希釈し、500から50ng/mLの標準曲線を作成した。定量するためのサンプルを、マイクロプレートに負荷する前に、1%のTriton X−100で処理した。プレートを37℃で1時間さらにインキュベートした。洗浄後、1:1000に希釈されたHA5(CBER/FDA)に対するヒツジポリクローナル抗体を加え、プレートを37℃で1時間インキュベートした。洗浄後、1:1000に希釈されたセイヨウワサビペルオキシダーゼ結合ウサギ抗ヒツジ抗体を加え、プレートを37℃で1時間インキュベートした。最終洗浄後、プレートを室温で20分SureBlue TMBペルオキシダーゼ基質(KPL)とインキュベートした。反応を1NのHClの添加により停止させ、A450値をMultiskan Ascent プレートリーダー(Thermo Scientific)を使用して測定した。
【実施例】
【0126】
実施例1:植物組織の酵素抽出は、上昇した相対活性を有する高い量のHAを放出する
本発明の酵素抽出方法から得られたHAの量および相対活性を、一般的な機械的抽出方法で得られたHAのものと比較した。ベンサミアナタバコ植物をAGL1/685で浸潤させ、5から6日のインキュベーション期間後に葉を回収した。葉ホモジネートを次の通りに調製した:2グラムの葉をホモジェナイザーでホモジェナイズし;4gの葉を乳鉢および乳棒で粉砕し;25kgの葉を抽出バッファー(50mMのTris、150mMのNaCl pH8.0、1:1w/v比率)中で、COMITROLTM処理装置(Urschel Laboratories)でホモジェナイズした。酵素抽出を次の通りに行った:20グラムの回収した葉を、上記されているMacerozymeペクチナーゼおよびOnozuka R−10セルラーゼで消化に付した。消化後、葉の破片を濾過(ナイロン濾過、250μmメッシュ)により除去した。懸濁液中のプロトプラストを200×g(15分)で遠心分離により除去し、上清を5000×g(15分)で遠心分離によりさらに浄化した。
【0127】
これらの植物抽出物のそれぞれにおけるHAの量および相対活性を表3に示す。酵素抽出方法から得られたHAの量は、機械的方法から得られた量よりも有意に良い。
表3:植物の葉の機械的および酵素抽出から得られたHAの量および相対活性の比較。全てのデータは、それぞれの抽出方法のために加えられた液体の容量の差を考慮して調整した。ComitrolTM抽出方法を本比較分析の目的のための標準値として選択した。
【表5】

*量はELISA分析により評価した。
【0128】
実施例2:植物組織の酵素消化はVLP中に組織化されたHAを放出する
分画遠心分離およびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の組合せを、本明細書に記載されている酵素抽出方法により得られたHAがVLPとして組織化されていることを証明するために使用した。ベンサミアナタバコ植物を実施例1に記載されているAGL1/685でアグロ浸潤された。実施例1に記載のように、葉を浸潤から6日後に植物から回収し、〜1cm切片に切り、次に消化し、粗濾過し、遠心した。
【0129】
次に、浄化されたサンプルを70,000×gで遠心し、VLPの分離を行った。VLPを含む遠心分離ペレットを、1/50容量のリン酸緩衝生理食塩水(PBS;0.1Mのリン酸ナトリウム、0.15MのNaCl pH7.2)に穏やかに再懸濁し、SECカラムに負荷した。
【0130】
32mlのSEPHACRYLTM S−500高分解能ビーズ(S-500 HR: GE Healthcare, Uppsala, Sweden, Cat. No. 17-0613-10)のSECカラムを、平衡/溶出バッファー(50mMのTris、150mMのNaCl、pH8)で調製した。SECクロマトグラフィーを、平衡カラム上への1.5mlのVLPサンプルの負荷、および45mlの平衡/溶出バッファーでのその溶出で行った。溶出物を1.7mLの画分中で回収し、それぞれの画分のタンパク質含有量を、10μLの溶出画分と200μLの希釈Bio−Radタンパク質色素試薬(Bio-Rad, Hercules, CA)を混合することにより評価した。それぞれの分離の前に、Blue Dextran 2000(GE Healthcare Bio-Science Corp., Piscataway, NJ, USA)での較正を行った。Blue Dextran 2000および宿主タンパク質の両方での溶出プロフィールの比較を、分離の均一性を保証するために、それぞれの分離について行った。
【0131】
SEC溶出画分のタンパク質分析
浄化された粗抽出物の全タンパク質含有量を、参照標準としてウシ血清アルブミンを使用するBradford アッセイ(Bio-Rad, Hercules, CA)により決定した。SEC溶出画分に存在するタンパク質をアセトンで沈殿させ(Bollagら 1996)、SDS−PAGE分析または免疫ブロット法分析のぞれぞれのために、0.25容量または0.05容量のいずれかの変性サンプルローディングバッファー(0.1MのTris pH6.8、0.05%のブロモフェノールブルー、12.5%のグリセロール、4%のSDSおよび5%のベータ−メルカプトエタノール)に再懸濁した。SDS−PAGEによる分離を還元条件下で行い、Coomassie Brillant Blue R−250をタンパク質染色のために使用した。
【0132】
H5に対する血球凝集アッセイを、Nayak and Reichl (2004)により記載されている方法に基づいて行った。簡潔には、試験サンプル(100μL)の連続二重希釈物を100μLのPBSを含むV字底96ウェルマイクロタイタープレートにおいて作り、ウェル当たり100μLの希釈サンプルを置いた。100マイクロリットルの0.25%のシチメンチョウ赤血球懸濁液(Bio Link Inc., Syracuse, NY)をそれぞれのウェルに加え、プレートを室温で2時間インキュベートした。完全血球凝集を示す最も高い希釈度の逆数を血球凝集活性として記録した。並行して、組換えHA5標準(A/Vietnam/1203/2004 H5N1)(Protein Science Corporation, Meriden, CT)をPBSで希釈し、それぞれのプレート上に対照として使用した。
【0133】
図3Aは、血球凝集活性がカラムの空隙容量に対応する画分に濃縮されることを示し、血球凝集活性が高分子量の構造的組織化から生じることを確認する。SDS−PAGE分析(図3B)は、同じ空隙容量画分(画分7−10)が、また、約75kDaで検出可能であるHA0モノマーに対応するバンドで、最も高いHA含有量を提供することを示した。
【0134】
実施例3:植物組織の酵素消化はわずかな汚染物質と共にHA−VLPを放出する
ベンサミアナタバコ植物を、実施例1に記載されているAGL1/685でアグロ浸潤した。実施例1に記載されているように、葉を浸潤から6日後に回収し、〜1cm切片に切り、消化し、粗濾過し、遠心した。
【0135】
葉の制御した酵素消化により、少なくとも部分的に細胞壁を除去し、かくして、細胞壁と細胞膜との間の空間に存在するタンパク質および成分を抽出培地中へ放出させた。多数の細胞内タンパク質および成分がまだ損傷を受けず、ほとんど無傷なプロトプラスト内に含まれているため、最初の遠心分離工程はそれらの除去を可能にし、したがって、図4に示されているとおり、細胞外植物タンパク質および成分(アポプラスト画分)に加えて、結果として生じる細胞壁分解酵素を含む溶液を提供した。
【0136】
図4は、以前に記載されている葉組織の制御された酵素消化後に得られた溶液のSDS−PAGE分析を示し、レーン1は使用された酵素混合物を示し、レーン2は酵素消化後に得られた溶液を示す。ComitrolTMからの粗抽出物のタンパク質含有量を比較のためにレーン3に提供する。レーン2に示された抽出物に関するバイオマス:バッファー比率は1:5(w/v)であったが、レーン3に関して1:1(w/v)であった。したがって、レーン2および3のそれぞれは、等量の出発物質由来のタンパク質を含む。ほぼ同じバッファー:植物比率のため、機械的植物抽出物は約3.5−4mg/mlのタンパク質濃度を含有したが、本方法にしたがって得られた酵素植物抽出物は約1mg/mlのタンパク質濃度を提供した。
【0137】
レーン3に存在する主要な汚染物質は、2つの型のタンパク質サブユニット:大型の鎖(L、約55kDa)および小型の鎖(S、約13kDa)で作られているRubisCo(リブロース−1,5−二リン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ)であることが見出された。全8つの大型の鎖ダイマーおよび8つの小型の鎖は、通常、互いにRubisCo 540kDaの大型複合体にアセンブリーする。この植物タンパク質汚染物質は機械的抽出方法由来の植物抽出物において多量に見出されるが(図4における矢印参照)、それは、本明細書に記載されている酵素消化方法により得られる植物抽出物に実質的には存在しない。したがって、本方法は、処理の早い段階に、とりわけこの主要な植物タンパク質汚染物質の除去を可能にする。
【0138】
実施例4:植物組織の酵素消化は、陽イオン交換樹脂上に直接捕捉されることができる条件下でHA−VLPを放出する
ベンサミアナタバコ植物を、実施例1に記載されているAGL1/685でアグロインフィルトレーションした。葉を浸潤から6日後に回収し、〜1cm切片に切り、オービタルシェーカー中で室温で15時間消化した。消化バッファーは、600mMのマンニトール、75mMのクエン酸塩、0.04%の亜硫酸水素ナトリウム pH6.0バッファー溶液中にそれぞれ、1.0%(v/v)のマルチフェクトペクチナーゼFE、1.0%(v/v)のマルチフェクト CX CGおよび/または1.0%(v/v)のマルチフェクト CX B(全てGenencorから)を含み、バイオマス:消化バッファー比率は1:2.5(w/v)を使用した。
【0139】
消化後、アポプラスト画分を400μmのナイロンフィルターを介して濾過し、消化されていない粗植物組織(最初のバイオマスの<5%)を除去した。次に、濾過された抽出物を5000×gで室温で15分遠心し、プロトプラストおよび細胞内汚染物質(タンパク質、DNA、膜、小胞、色素など)を除去した。次に、上清を、0.65μmのガラス繊維フィルター(Sartopore2/Sartorius Stedim)および0.45/0.2μmフィルターを使用して深層濾過(浄化のために)し、クロマトグラフィーに付した。
【0140】
浄化されたアポプラスト画分を、平衡/溶出バッファー(50mMのNaPO、100mMのNaCl、0.005%のTween 80 pH6.0)で平衡化された陽イオン交換カラム(Poros HS Applied Biosystems)に付した。UVが0に戻ったとき、溶出物を、高い濃度のNaCl(500mM)を含む平衡/溶出バッファーで段階的に溶出をした。必要により、クロマトグラフィー画分を、10kDaのMWCOを備えたAmiconTM装置を使用して10倍に濃縮した。タンパク質分析を、以前の実施例に記載されているとおりに行った。
【0141】
上記条件下で、多数の酵素および植物タンパク質は陽イオン交換樹脂に結合しなかったが、HA−VLPは結合し、したがって、溶出画分中に相当豊富なHA−VLPを提供した(図6)。加えて、図6レーン4および5に示されるとおり、セルラーゼおよびペクチナーゼは、pH7で陽イオン交換カラムに結合しなかった。結果として、HA血球凝集活性に基づくHA−VLPの回収率は、陽イオン交換カラムへの負荷の前の92%であり、溶出画分中で66%であった。194の精製倍数を、陽イオン交換樹脂からの溶出画分で測定した。
【0142】
実施例5:消化バッファーへのNaClの添加
ベンサミアナタバコ植物を、実施例1に記載されている興味ある血球凝集素(H1/Cal WT、B/Flo、H5/IndoまたはH1/Cal X179A)を発現する構築物を有するアグロバクテリウムAGL1株でアグロ浸潤した。葉を浸潤から6日後に回収し、〜1cm切片に切り、以下に記載されていることを除いて実施例4にしたがって消化した。濾過、遠心分離および浄化は、実施例4に記載されているとおりに行った。
【0143】
NaClを消化バッファーに加え、HA−VLP回収率における潜在的な効果を評価した。推測される利点は、浄化中に除去される懸濁液中の植物細胞または粒子とHAとの非特異的結合の潜在的な防止ならびにHA−VLPのコロイド安定性の達成および/または維持および/または改良における潜在的な効果であった。
【0144】
消化バッファーへの500mMのNaClの添加は、遠心分離によるプロトプラストおよび細胞残屑の除去後に、バイオマス1グラムあたりのHA−VLP回収率の増加をもたらした。しかしながら、この増加は、H1/Cal WTおよびB/Flo株に対してのみ示されたが、H5に対する回収率はこのアプローチにより有意に増加しなかった(表4)。
表4:HA−VLP回収率に対する消化工程へのNaClの添加の効果(血球凝集活性単位、dil:希釈度の逆数により測定される)
【表6】

1 NaCl有りの収率(dil/g)を、NaCl無しの収率(dil/g)で割った。
【0145】
消化中の500mMのNaClの添加は、消化中のHA−VLPの放出の増加をさらにもたらし、次いで、H1/Cal WTおよびH1/Cal X−179A株の両方に対して浄化後に増加した回収率をもたらしたが、H5/Indo株に対してはもたらさなかった(表5)。
表5:浄化工程後のHA−VLP回収率に対する消化工程へのNaClの添加の効果(血球凝集活性単位により測定される)
【表7】

回収率は、遠心された消化された抽出物において見出された活性と比較しての深層濾過後に得られた血球凝集活性のパーセントで示される。
【0146】
酵素消化中のNaClの添加有り、または無しのHA−VLPの会合状態を、H5/IndoおよびH1/Cal WT(それぞれ図7Aおよび7B)に対してナノ粒子トラッキング分析(NTA)を使用して試験した。消化がNaClの非存在下で行われたとき、粒子の単分散調製物はH5に対して観察されたが、H1/Cal調製物は粒子種のずっと大きいアレイを示した。消化バッファーへのNaClの添加は、図7Cにおいて見出されるみごとに単分散の粒子分布により示されているとおり、H1/Calに関するHA−VLP自己会合を減少させた。H1/Cal WT−VLPに関する150nmの粒子数は、消化バッファーへの500mMのNaClの添加により増強された(約5倍)。
【0147】
実施例6:色素の制御放出
ベンサミアナタバコ植物を、実施例1に記載されている興味ある血球凝集素(H5/Indo)を発現する構築物を有するアグロバクテリウムAGL1株でアグロ浸潤した。葉を浸潤から6日後に回収し、〜1cm切片に切り、500mMのNaClまたは500mMのNaClおよび25mMのEDTAの消化バッファーへの添加で実施例4に記載されているとおりに消化した。濾過、遠心分離および浄化は、実施例4に記載されているとおりに行った。
【0148】
酵素消化工程中の緑色を有する成分の放出は、緑色がかった着色を有するVLPの精製された調製物をもたらした。したがって、細胞壁消化溶液の組成を調べ、減少した緑色着色、したがって増加した純度を有するVLP精製調製物を得るように調整した。理論に縛られることは望まないが、Ca2+が細胞壁の中葉の構成の保持において重要な役割を果たすため、通常、植物細胞壁中に高い濃度のCa2+があるという事実を考慮すると、Ca2+−キレート剤であるEDTAの添加は細胞壁の酵素的脱重合を容易にし、それにより、無傷な細胞内オルガネラ、例えば、葉緑体を保護し、緑色−色素成分の放出を防止し得る。
【0149】
表6に示されるとおり、消化バッファーへの25mMのEDTAの添加は、調製物の吸収の差(OD672nm−OD650nm)を測定することにより評価されるとおり、精製されたH5−VLP調製物の緑色着色を減少させる。緑色の成分が高い量で放出されるか、または安定に除去されないとき、VLP調製物は△OD>0.040を示した。
表6:H5−VLP調製物の緑色着色に対する消化バッファーへの25mMのEDTAの添加の効果
【表8】

【0150】
実施例7:別の消化バッファー組成
ベンサミアナタバコ植物を、実施例1に記載されている興味ある血球凝集素(H5/Indo)を発現する構築物を有するアグロバクテリウムAGL1株でアグロ浸潤した。葉を浸潤から6日後に回収し、〜1cm切片に切り、表7−9に記載されているとおり0%、0.25%、0.5%、0.75%または1%v/vのマルチフェクトペクチナーゼFE、マルチフェクトCX−CGセルラーゼおよびマルチフェクトCX Bセルロースを含む消化バッファーの修飾で実施例4にしたがって消化した。濾過、遠心分離および浄化は、実施例4に記載されているとおりに行った。
【0151】
以下の表7および8に示されているとおり、ペクチナーゼは、消化バッファー中に必須でないことが証明された。同様のレベルのH5/IndoまたはH1/Cal WT VLPを、ペクチナーゼの存在または非存在下のいずれかで本方法で抽出することができる。さらに、以前の実施例と比較してセルラーゼの濃度の減少が抽出量において有意な影響を有さないことを見出した(表9)。
表7:ベンサミアナタバコの葉の消化によるH5/Indo VLPの放出。全ての条件を反復で試験した(HA−VLPの濃度は、血球凝集活性、dil:希釈度の逆数により測定した)。
【表9】

*マルチフェクト CX GC
【0152】
表8:ベンサミアナタバコの葉の消化によるH1/Cal WT VLPの放出。全ての条件を反復で試験した(HA−VLPの濃度は、血球凝集活性、dil:希釈度の逆数により測定した)。
【表10】

*それぞれ1%のマルチフェクト CX GCおよびマルチフェクト CX B
【0153】
表9:ベンサミアナタバコの葉の消化によるH1/Cal WT VLPの放出。全ての条件を反復で試験した(HA−VLPの濃度は、血球凝集活性、dil:希釈度の逆数により測定した)。
【表11】

*マルチフェクト CX GC
【0154】
実施例8:中性pHに近い条件下での酵素消化
消化中のpHの制御は、いくつかのVLPの抽出に重要であり得る。消化工程中に起こる細胞壁の脱重合が、適当なバッファーの存在下で溶液を酸性化することができる(すなわちpH6から5)酸糖を放出することができること、およびいくつかのVLP(例えば、H3/BrisおよびB/Flo HAを含むもの)が穏やかな酸性条件に対する強い感受性をすでに証明していることを考慮して、生産されるVLPの収率に対するかかる起こりうる酸性化の影響を調査した。
【0155】
ベンサミアナタバコ植物を、実施例1に記載されている興味ある血球凝集素(B/Flo、H5/Indo、H3/Bris)を発現する構築物を有するアグロバクテリウムAGL1株でアグロ浸潤した。葉を浸潤から6日後に回収し、〜1cm切片に切り、500mMのNaCl;25もしくは50mMのEDTA;0.03もしくは0.04%の亜硫酸水素ナトリウム;0、100、200もしくは600mMのマンニトール、75、125もしくは150mMのクエン酸塩;および/または75mMのNaPOを含む消化条件の修飾で、表10−14に記載されているとおり調節された消化バッファーのpHで実施例4にしたがって消化した。濾過、遠心分離および浄化は、実施例4に記載されているとおりに行った。
【0156】
クエン酸塩の濃度の増加(バッファー効果 pH3.0から5.4)およびリン酸ナトリウムの添加(バッファー効果 pH最大6.0)を含め、様々な消化バッファー組成を、酵素消化の最後までに約5.5のpHをなし遂げるように試験した。表10は、B株由来のVLPが、消化後のpHが約pH6.0であったとき、非常に効率的に抽出されたことを示す。
表10:B/Flo VLPの抽出収率に対する消化バッファー組成の効果
【表12】

全てのバッファーは、600mMのマンニトール、0.04%のメタ重亜硫酸ナトリウムを含んだ
【0157】
次に、pH6.0に近い最終pH値に達するように、より高いpHで消化を開始する効果を試験した。表11に示されているとおり、ほぼ天然条件で植物細胞壁の消化が可能であり、H5/Indo VLPに対する抽出収率を悪化させなかった。
表11:H5/Indo VLPの抽出収率に対する消化バッファーの最初のpHの効果
【表13】

全ての消化バッファーは、600mMのマンニトール、0.04%のメタ重亜硫酸ナトリウム、125mMのクエン酸塩+75mMのNaPO+500mMのNaCl+25mMのEDTAを含んだ
【0158】
消化溶液の他の成分も、また、VLPの抽出収率に負の影響を及ぼすことなく修飾が可能であることが示された。表12は、5.4−5.7の消化後pHを得られるとき、B/Flo VLPの抽出収率を増強するために、消化溶液に提供することができる修飾を説明する。このような修飾は、クエン酸塩の濃度の増加およびPOバッファーの添加を含む。EDTAの濃度の増加が、一般的に、さらなる酸性化抽出物をもたらし、VLP抽出収率を低下させることが見出された。
表12:B/Flo VLPの抽出収率に対する種々の消化バッファー成分の効果
【表14】

全てのバッファーは、500mMのNaClおよび0.04%のメタ重亜硫酸ナトリウムを含んだ
【0159】
H3/ブリズベンVLPの抽出収率を改良するために、バッファー組成をさらに修飾した(表13)。
表13:H3/Bris VLPの抽出収率に対する消化溶液中のマンニトールおよび亜硫酸水素ナトリウムの濃度の効果
【表15】

全てのバッファーは、125mMのクエン酸塩、75mMのNaPO、500mMのNaClを含んだ
【0160】
表12および13に示されているとおり、VLPの抽出収率に有意に影響を及ぼすことなく、マンニトール濃度を200mMに減少させることができた。100mMへのマンニトール濃度のさらなる減少、および消化溶液からのマンニトールの完全な削除は、得られるHA−VLPのレベルに有意に影響しなかった(表14)。
表14:異なる濃度のマンニトールを有するバッファー中で実施されたバイオマスの消化からのH5/Indo VLPの放出
【表16】

全てのバッファーは、75mMのクエン酸塩 pH6.0+0.04%のメタ重亜硫酸ナトリウムを含んだ
2つの試験を、マンニトールなし(試験1)および100mMのマンニトール有り(試験2)対600mMのマンニトールで、VLPの抽出収率を比較するために実施した
【0161】
実施例9:広範な種類のHA−VLPに対する酵素消化の適合性
本明細書に記載されている植物バイオマスに関する酵素消化方法は、広範な種類のHA−VLPの抽出に適用される可能性がある。上記実施例に示されているH5/Indo、H1/Cal WT VLP、H3/BrisおよびB/Floを含むHA−VLPの抽出に加えて、本明細書に記載されている方法は、また、表15に示されている季節的H1/BrisおよびH1/NC由来のHA−VLPの抽出のために適当であることが示された。
表15:アグロ浸潤されたベンサミアナタバコの葉の消化からの季節的H1/BrisおよびH1/NC VLPの放出(血球凝集活性により測定されるHAの濃度、dil:希釈度の逆数)。
【表17】

【0162】
全ての引用文献は、まるで、それぞれの個々の文献が具体的および個々に出典明示により本明細書に包含させることを意図するように、ならびに、まるで、完全に本明細書に示されているように、出典明示により本明細書に包含させる。本明細書中における参考文献の引用は、このような文献が本発明に対する先行技術であるとの承認と解釈すべきでなくみなされるべきでない。
【0163】
本発明の1つ以上の現在の好ましい態様は、一例として記載されている。本発明は、実質的に上記されているものならびに実施例および図面を基準にしたものの全ての態様、修飾および変化を含む。特許請求の範囲に定義されている本発明の範囲から逸脱することなく、多くの変化および修飾を行うことができることは、当業者に明らかである。このような修飾の例は、実質的に同じ方法で同じ結果をなし遂げるために、本発明の何らかの局面に関して既知の等価物の置換を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来のVLPを調製する方法であって、
a.アポプラスト局在VLPを含む植物または植物材料を得ること、
b.プロトプラスト/スフェロプラスト画分およびアポプラスト画分を生産すること;および、
c.アポプラスト画分を回収すること、ここに、該アポプラスト画分は、植物由来のVLPを含む
を含む方法。
【請求項2】
生産する工程(工程b)において、アポプラストおよびプロトプラスト画分が、細胞壁分解酵素組成物による植物または植物材料の処理により生産される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
細胞壁分解酵素組成物が、1つもしくはそれ以上のペクチナーゼ、1つもしくはそれ以上のセルラーゼ、または、1つもしくはそれ以上のペクチナーゼおよび1つもしくはそれ以上のセルラーゼを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
細胞壁分解酵素組成物が、1つまたはそれ以上のリパーゼ、プロテアーゼまたはペクチナーゼを含まない、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
得る工程(工程a)において、植物が、ウイルスエンベロープタンパク質、ウイルス構造タンパク質、ウイルスカプシドタンパク質、およびウイルスコートタンパク質の群から選択されるタンパク質をコードする核酸配列で形質転換され、該植物または植物材料が回収される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
核酸が植物に一過性で導入される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
核酸が植物のゲノム内に安定に組み込まれる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
得る工程(工程a)において、植物を成長させ、植物または植物材料を回収する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
核酸がインフルエンザの血球凝集素をコードする、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
植物由来のVLPがノイラミニダーゼまたはMタンパク質を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
植物材料が葉および培養された植物細胞の群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
d)アポプラスト画分から植物由来のVLPを精製する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
精製する工程が、浄化された抽出物を生産するための深層濾過を使用してアポプラスト画分を濾過すること、次に、陽イオン交換樹脂を使用する浄化された抽出物のクロマトグラフィーを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
植物由来の脂質エンベロープを含む植物由来のVLPを調製する方法であって、
a.アポプラスト局在VLPを含む植物または植物材料を得ること、
b.植物または植物材料を酵素組成物で処理して、プロトプラスト/スフェロプラスト画分およびVLPを含む1つもしくはそれ以上のアポプラストタンパク質複合体を生産すること;
c.プロトプラスト画分から1つもしくはそれ以上のアポプラストタンパク質複合体を分離すること
を含む方法。
【請求項15】
酵素組成物が、1つもしくはそれ以上のペクチナーゼ、1つもしくはそれ以上のセルラーゼ、または、1つもしくはそれ以上のペクチナーゼおよび1つもしくはそれ以上のセルラーゼを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
酵素組成物が、1つまたはそれ以上のリパーゼ、プロテアーゼまたはペクチナーゼを含まない、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
d)アポプラスト画分から植物由来のVLPを精製する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
精製する工程が、浄化された抽出物を生産するための深層濾過を使用してアポプラスト画分を濾過すること、次に、陽イオン交換樹脂を使用する浄化された抽出物のクロマトグラフィーを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
得る工程(工程a)において、植物が、ウイルスエンベロープタンパク質、ウイルス構造タンパク質、ウイルスカプシドタンパク質、およびウイルスコートタンパク質の群から選択されるタンパク質をコードする核酸配列で形質転換され、該植物または植物材料が回収される、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
核酸が植物に一過性で導入される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
核酸が植物のゲノム内に安定に組み込まれる、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
得る工程(工程a)において、植物を成長させ、植物または植物材料を回収する、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
VLPがインフルエンザの血球凝集素を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
植物材料が葉および培養された植物細胞の群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
VLPがノイラミニダーゼまたはMタンパク質を含まない、請求項14に記載の方法。
【請求項26】
a.植物由来のVLPを含む植物または植物材料を得ること、
b.消化された画分を生産するために細胞壁分解酵素組成物を使用して植物材料を消化すること、
c.濾過された画分を生産するために消化された画分を濾過し、濾過された画分から植物由来のVLPを回収すること
を含む、植物由来のVLPを調製する方法。
【請求項27】
細胞壁分解酵素組成物が、1つもしくはそれ以上のペクチナーゼ、1つもしくはそれ以上のセルラーゼ、または、1つもしくはそれ以上のペクチナーゼおよび1つもしくはそれ以上のセルラーゼを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
細胞壁分解酵素組成物が、1つもしくはそれ以上のペクチナーゼ、1つもしくはそれ以上のセルラーゼ、または、1つもしくはそれ以上のペクチナーゼおよび1つもしくはそれ以上のセルラーゼを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
得る工程(工程a)において、植物が、ウイルスエンベロープタンパク質、ウイルス構造タンパク質、ウイルスカプシドタンパク質、およびウイルスコートタンパク質の群から選択されるタンパク質をコードする核酸配列で形質転換され、植物または植物材料が回収される、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
核酸が植物に一過性で導入される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
核酸が植物のゲノム内に安定に組み込まれる、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
植物由来のVLPがインフルエンザの血球凝集素を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
植物材料が葉および培養された植物細胞の群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
d)細胞残屑および不溶性材料から濾過された画分中の該VLPを分離する工程をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
分離する工程が遠心分離により行われる、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
分離する工程が深層濾過により行われる、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
d)濾過された画分から植物由来のVLPを精製する工程をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項38】
精製する工程が、浄化された抽出物を生産するための濾過された画分の深層濾過、次に、陽イオン交換樹脂を使用する浄化された抽出物のクロマトグラフィーを含む、請求項34に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−505025(P2013−505025A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530059(P2012−530059)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【国際出願番号】PCT/CA2010/001488
【国際公開番号】WO2011/035422
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(502121395)メディカゴ インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】