説明

植物種子の発芽抑制用粒石材及びその製造方法並びに使用方法

【課題】この発明は、雑草などの繁殖を阻止する為に、その発芽を抑制し、又は芽の生育を妨害することを目的としたものである。
【解決手段】この発明は、堆積岩の砕石、砕砂又は脱水ケーキと石灰岩粉末との混合物の成形物との単独又は混合物を高温焼成し、該焼成物の含有カルシウムをその表面に析出させたことを特徴とする植物種子の発芽抑制用粒石材により、目的を達成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主として花壇、家庭の庭などの土壌面へ、雑草が繁殖するのを抑制することを目的とした植物種子の発芽抑制用石材及びその製造方法並びに使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来強アルカリが植物の発芽の抑制効果があることが知られている。そこでこの原理を利用し、火成岩を焼成してその表面にカルシウムを移行させ、これを敷石として使用することにより、土壌表面を強アルカリ化する提案もある。
【特許文献1】特開2004−182597
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記火成岩より製造した雑草の繁殖を防止する敷石は、火成岩を焼成して、表面にカルシウムを移行させ、雑草等の繁殖防止の効果をあげているとされているが、その効果を更に向上させ、性能の安定化を図ることが必要とされ、併せて堆積岩の用途を拡大する為の研究もされて、前記従来の問題点の解決を図ったものである。
【0004】
また脱水ケーキ等の廃棄物についても、アルカリ度の低い材料にあっては、石灰石を混入し、アルカリ度の向上を図り、これを加圧成形すれば、前記堆積岩と同様に使用できることが判明した。また堆積岩の砂は、長径3mm以下の粒であっても、そのまま焼成することができるが、これに水を加えて練り、直径5mm程度のペレット状に成形して焼成することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記のように火成岩よりなる石材のアルカリ度の性能を向上させ、有効な植物種子の発芽抑制粒石材を製造する為に、堆積岩を使用し、かつコンクリート用骨材その他の石材製造時に生成される脱水ケーキの有効利用について研究の結果、砕石などと同様に利用し得る粒石材の製造にも成功したのである。
【0006】
この発明における焼成後の石材のpHは10〜12であり、焼成温度は700℃〜1100℃と比較的低い温度で目的を達成できるので、生成時に消失するカルシウムの量も少なく抑えることが可能となった。そこで必然的にpHもアルカリ度を高く保つことができる。
【0007】
即ちこの発明は、堆積岩の砕石、砕砂又は脱水ケーキと石灰岩粉末との混合物の成形物との単独又は混合物を高温焼成し、該焼成物の含有カルシウムをその表面に析出させたことを特徴とする植物種子の発芽抑制用粒石材である。
【0008】
また製造方法の発明は、堆積岩の砕石、砕砂又は脱水ケーキと石灰岩粉末との混合物の成形物との単独又は混合物を700℃〜1100℃で1時間〜4時間焼成し、前記焼成物の表面にカルシウムを析出させることを特徴とした植物種子の発芽抑制用粒石材の製造方法であり、堆積岩を礫岩、砂岩、けつ岩、粘板岩又は凝灰岩とするものであり、脱水ケーキと石灰岩粉末との混合比は、石灰岩粉末を0%〜50%とするものである。
【0009】
次に使用法の発明は、請求項1記載の粒石材を、表土面上へ1cm〜5cm敷設し、又は前記石材20%以上と表土との混合物を、表土面上へ1cm〜3cm敷設し、撒水することを特徴とした植物種子の発芽抑制用粒石材の使用方法であり、請求項1記載の粒石材を表土面上へ敷設すると共に撒水し、前記粒石材の敷設部の表土面の少なくとも深さ2cmまでは、pH7以上に保つようにすることを特徴とした植物種子の発芽抑制用粒石材の使用方法であり、粒石材の敷設厚さを1cm〜5cmとし、1回の撒水を500cc/m〜1000cc/mとするものである。
【0010】
この発明によれば、堆積岩の内部に含まれているカルシウムを表面に析出させるので、水に濡れると、高いアルカリ度(pH10〜12)を示し、接触土壌のアルカリ度を前記と同様に向上させる。従って、土壌表面又は浅い部分(例えば1cm〜5cm)に埋っている雑草の種子などの発芽を有効に抑制することができる。
【0011】
然してこの働きは緩徐に行われる為に、一旦この粒石材を使用すると、長期に亘り(例えば1年〜3年)同一効果を保たせることができる。
【0012】
また従来有効な使途の少なかった脱水ケーキを、ペレット化して有効粒石材にすることができるので、堆積岩を切り出し、各種建設用に加工するに際し生じる脱水ケーキを有効利用できる。従って、産業上最も多量に連続生産されるケーキの有効利用が決まったので、石材工業にも廃棄物0%の生産工程を採用することができるようになった。
【0013】
前記において、脱水ケーキの成分によっては、石灰岩粉末を加える必要がない場合や多量に必要な場合があるので、石灰岩粉末の添加量を0%〜50%とした。
【0014】
また、雑草の種子の多くは、表土面下2cm〜5cm位までに埋っている物が発芽し易いので、表土面の深さ2cm〜5cm位までのアルカリpHを7以上にすれば、発芽が有効に抑制される。
【0015】
然して目的とする植物(例えば各種観照植物の苗)の根本付近(例えば直径20cm〜30cm)に前記粒石材を敷設しないこと、前記苗の主要根の深さを4cm〜5cm以上にするなどの処置をとれば、前記粒石材によるアルカリの影響を有用植物に及ぼさないようにすることができる。
【0016】
またpH7以上のアルカリ度によれば、通常の雑草の発芽は抑制され、又は芽の生長が阻害され目的を達成することができる。
【0017】
この発明の材料石の焼成は、700℃〜1100℃であり、好ましくは800℃〜900℃であって、火成岩より低温であり、その焼成物のpHは10〜12である。
【0018】
この発明の粒石材は、2mm〜20mm位であり、砕石場から生じたケーキを成形する場合には、5mm位のペレットに成形して焼成する。更に小粒(1mm〜5mm)にすることを妨げない。
【0019】
但し小粒になれば、焼成温度は低い側(例えば700℃に近い側)でも、カルシウムを有効に析出させることができる。
【0020】
要は、この粒石材に撒水その他により、水を接触させて、表土をpH7以上にすることであり、その状態を長く(例えば1年以上)続けることが好ましい。
【0021】
また使用方法としては、表土に適量の粒石材を混合させ、表土の湿気により、カルシウムを自然流出させることもできる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、花壇等の表土面へ粒石材を敷設するのみで、雑草などの種子の発芽を抑制できる効果がある。従って無用の雑草は労せずして排除することができる。
【0023】
またこの発明の製造方法によれば、植物種子の発芽抑制粒石材(高アルカリ度、長期有効)を、容易に多量生産できる効果がある。また脱水ケーキなどの廃棄物を有効利用し、実質的に生産工程の廃棄物0に限りなく近づけることができる効果がある。この場合には、成形工程でアルカリ度を調整することができる。
【0024】
また従来知られている雑草繁殖防止材よりもアルカリ度が高く、しかも比較的焼成温度を低く保つことができる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
この発明は、粒度3mm〜20mmの堆積岩粒を、850℃で3時間焼成し、冷却した所、pH10.5の粒石材を得た。この粒石材を雑草の種をまいた花壇の土壌上へ、厚さ2cmに敷きつめ(1m当り2kg)、20℃を保たせた所、30日、40日、50日、60日を経過するも雑草種子の発芽は認められなかった。対照区は、10日位から雑草種子の発芽をはじめ、60日には90%以上の発芽が認められた。
【実施例1】
【0026】
脱水ケーキ(3mm造粒物)を1000℃で1時間焼成した所、表1の結果を得た。
【表1】

【実施例2】
【0027】
石砕(30mm以下)を1000℃で1時間焼成した所、表2の結果を得た。
【表2】

【実施例3】
【0028】
実施例1で製造した粒石材500gを、水2リットル中に入れ、1時間放置した所、pH8.5の水溶液となった。
【0029】
従って、表土上へ前記粒石材を厚さ2cmに敷きつめ、これに水2リットルを撒布(0.5m)した所、表土面のpHは8.0であった。爾後撒水しなければ、表土面のpHは8.0に維持される。
【実施例4】
【0030】
この発明の使用例を図1に基づいて説明する。
【0031】
花壇1の表土3面へ、粒石材2を厚さ2cmに敷設し、その上へ焼成粉4を散布(1m、500g)したものである。例えば、粒石材の表面pH9.8であり、焼成粉のpH12.1であるならば、これに適量の撒水することにより、表土3面(例えば深さ2cmまで)のpHを10.0にすることができた。
【0032】
pH10.0ならば、通常の雑草の種子の発芽は確実に阻止される。仮に多少発芽しても芽に傷害を受け、その芽は生長しない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明の粒石材の使用例を示す説明図。
【符号の説明】
【0034】
1 花壇
2 粒石材
3 表土

【特許請求の範囲】
【請求項1】
堆積岩の砕石、砕砂又は脱水ケーキと石灰岩粉末との混合物の成形物との単独又は混合物を高温焼成し、該焼成物の含有カルシウムをその表面に析出させたことを特徴とする植物種子の発芽抑制用粒石材。
【請求項2】
堆積岩の砕石、砕砂又は脱水ケーキと石灰岩粉末との混合物の成形物との単独又は混合物を700℃〜1100℃で1時間〜4時間焼成し、前記焼成物の表面にカルシウムを析出させることを特徴とした植物種子の発芽抑制用粒石材の製造方法。
【請求項3】
堆積岩を礫岩、砂岩、けつ岩、粘板岩又は凝灰岩とすることを特徴とした請求項2記載の植物種子の発芽抑制用粒石材の製造方法。
【請求項4】
脱水ケーキと石灰岩粉末との混合比は、石灰岩粉末を0%〜50%とすることを特徴とした請求項2記載の植物種子の発芽抑制用粒石材の製造方法。
【請求項5】
請求項1記載の粒石材を、表土面上へ1cm〜5cm敷設し、又は前記石材20%以上と表土との混合物を、表土面上へ1cm〜3cm敷設し、撒水することを特徴とした植物種子の発芽抑制用粒石材の使用方法。
【請求項6】
請求項1記載の粒石材を表土面上へ敷設すると共に撒水し、前記粒石材の敷設部の表土面の少なくとも深さ2cmまでは、pH7以上に保つようにすることを特徴とした植物種子の発芽抑制用粒石材の使用方法。
【請求項7】
粒石材の敷設厚さを1cm〜5cmとし、1回の撒水を500cc/m〜1000cc/mとすることを特徴とした請求項6記載の植物種子の発芽抑制用粒石材の使用方法。

【図1】
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