説明

植物育成システム

【課題】最適な波長成分の人工光を植物に照射することができる植物栽培システムを提供する。
【解決手段】植物育成建屋1と、植物が植えられる育成面2と、赤色LED、青色LED、及び緑色LEDから構成され、前記育成面と対向する位置に配設されたLEDユニット64と、各色LEDのそれぞれに印加する電流を生成する電流生成手段40と、植物の成長レベルを検知する植物育成状態検知手段62と、植物育成状態検知手段62が検知した植物の成長レベルの情報に基づき、前記各色LEDのそれぞれに印加される電流の電圧を決定する電圧決定手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDの照明光により植物を育成する植物育成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、閉鎖された空間において、人工光で野菜を育てる野菜工場が建設されつつある。このような野菜工場は、土を使用すること無く、閉鎖された空間で野菜を育成することから、病原菌や害虫が侵入することが無い。このため、農薬を使用する必要なく、安全な野菜を提供することが可能となる。ところが、人工光で野菜を育てるため、電気代が莫大となってしまい、生産コストが高くなり、採算が取れないという問題があった。また、人工光で野菜を育成することから、発電時に温室効果ガスである二酸化炭素を余分に排出してしまうと問題があった。
【0003】
そこで、特許文献1に示されるように、照明としてLEDを使用する省エネルギー化を図った植物育成用の照明器具が提案されている。しかしながら、特許文献1に示される植物育成用の照明器具では、単一色のLEDを使用するため、植物の光合成に不必要な波長成分も含まれているため、エネルギーが無駄になってしまうという問題があった。そこで、特許文献2に示されるように、発光波長の異なる複数色のLEDを用い、植物の成長に必要な波長を照射するLEDランプが提案されている。
【0004】
ところで、植物は成長に伴って必要とされる光の波長(光の色)が変化することが知られている。従来では、植物の成長に合わせて、作業員がLEDランプから照射される人工光の波長成分を調整していたため、人件費が発生してしまい、採算性が悪化してしまうという問題があった。そこで、特許文献3に示されるように、予め設定されたスケジュールで、ランプの点灯制御を行う植物栽培システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−171904号公報
【特許文献2】特開2008−311188号公報
【特許文献3】特開平10―191787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3に示される植物栽培システムでは、植物の成長に応じたランプの点灯制御を行っていないため、何らかの要因で植物の成長が予め設定されたスケジュールと開離した場合には、植物に最適な波長の人工光を照射することができず、植物の育成が遅れてしまうという問題があった。
本発明は、上記問題を解決し、手間をかけずに、最適な波長成分の人工光を植物に照射することができる植物栽培システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、
密閉空間である植物育成建屋と、
前記植物育成建屋内に配設され、植物が植えられる育成面と、
赤色LED、青色LED、及び緑色LEDから構成され、前記育成面と対向する位置に配設されたLEDユニットと、
前記各色LEDのそれぞれに印加する電流を生成する電流生成手段と、
前記植物の成長レベルを検知する植物育成状態検知手段と、
前記植物育成状態検知手段が検知した植物の成長レベルの情報に基づき、前記各色LEDのそれぞれに印加される電流の電圧を決定する電圧決定手段を有することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
LEDユニットの各色LEDに印加する電流の電圧と、育成面に植物が植えられてからの経過時間との関係を表した作業指示ファイルが記憶される、不揮発性記憶装置である作業指示ファイル記憶手段を有し、
電圧決定手段は、前記植物育成状態検知手段が検知した植物の成長レベルの情報に基づき、作業指示ファイルを生成し、
前記生成された作業指示ファイルは、前記作業指示ファイル記憶領域に記憶され、
電流生成手段は、前記作業指示ファイルを参照することにより、植物が育成面に植えられてからの経過時間が、前記作業指示ファイルの経過時間に達した場合には、前記経過時間に対応する電圧で、各色LEDに電流を印加することを特徴とする。
これにより、電圧決定手段が、何らかの理由で作動しなくなった場合であっても、電流生成手段は、前記不揮発性記憶装置に記憶されている作業指示ファイルを参照することにより、各色LEDに印加する電流を生成することができ、植物育成面に植えられている植物が枯れたり、成長が遅くなったりすることがない。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
電流生成手段は、各LEDユニットの近傍に配設され、
作業指示ファイル記憶手段は、電流生成手段の近傍に配設され、
電圧決定手段は、生成した作業指示ファイルを、各作業指示ファイル記憶手段に送信して記憶させることを特徴とする。
これにより、電圧決定手段と、作業ファイル記憶手段との通信が遮断された場合であっても、電流生成手段は、前記不揮発性記憶装置に記憶されている作業指示ファイルを参照することにより、各色LEDに印加する電流を生成することができる。
また、電流生成手段は、各LEDユニットの近傍に配設されていることから、長距離の送電による電流の損失を回避することにより、エネルギーの無駄を削減することが可能となる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3に記載の発明において、
電圧決定手段は、
育成面で植えられる植物の種類、前記植物の成長レベル、前記各成長レベルにおけるLEDユニットの各色LEDに印加する電流の最適な電圧、前記各成長レベルにおけるLEDユニットの照射時間との関係を表した基準スケジュールファイルが記憶される基準スケジュールファイル記憶手段と、
植物育成検知手段が検知した成長レベルに変化があるか否かを判断する植物育成状態判定手段と、
LEDユニットの各色LEDに印加する電流の電圧と、育成面に植物が植えられてからの経過時間との関係を表した作業指示ファイルを生成する作業指示ファイル生成手段とからなり、
育成面について作業指示ファイルが生成されていない場合には、前記作業指示ファイル生成手段は、前記基準スケジュールファイルに基づいて、作業指示ファイルを作成し、
一方で、育成面について前記作業指示ファイルが生成されている場合であって、前記植物育成状態判定手段が、成長レベルの変化があったと判断した場合には、前記作業指示ファイル生成手段は、前記作業指示ファイルの、前記変化があった成長レベルに対応する経過時間の項目を、成長レベルの変化があった経過時間に変更するとともに、次以降の成長レベルに対応する経過時間の項目を、順次、前記変更された経過時間の差分だけ変更させる処理を行い、
電流生成手段は、前記作業指示ファイルを参照することにより、植物が育成面に植えられてからの経過時間が、前記作業指示ファイルの経過時間に達した場合には、前記経過時間に対応する電圧で、各色LEDに電流を印加することを特徴とする。
これにより、各色LEDに印加される最適な電圧が適確に決定され、植物の成長レベルにあった最適な照射光が照射される。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4に記載の発明において、
植物育成状態検知手段は、育成面に植えられている植物の高さを検知する高さ方向に複数配設されたセンサーであることを特徴とする。
これにより、簡単で且つ確実に、育成面に植えられた植物の成長レベルを検知することが可能となり、植物育成システムの信頼性を向上させることが可能となるとともに、低コストに植物育成状態検知手段を実現することが可能となる。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5に記載の発明において、
太陽光を電流に変換する太陽電池と、
前記太陽電池で生成された電流を蓄電する二次電池とを更に有し、
前記二次電池から電流生成手段に電流を供給することを特徴とする。
これにより、発電に伴う電気代を削減することが可能となり、更に、発電に伴う温室効果ガスである二酸化炭素が余分に排出されることが無い。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、
二次電池の残量を計測する残量検知部と、
商用電源から供給される交流を、降圧、整流、平滑化する整流部と、
前記残量検知部により計測された二次電池の残量が所定値以下である場合に、前記整流部を起動させて、電流生成手段に供給する電流を太陽電池から商用電源に切り替える電源管理手段を更に有することを特徴とする。
これにより、天候不順時や夜間等に、二次電池の残量が所定値以下になった場合であっても、LEDユニットに電流を供給することができ、植物育成面に植えられている植物が枯れたり、成長が遅くなったりすることがない。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は請求項7に記載の発明において、
複数の育成面及びLEDユニットを有するとともに、各LEDユニットに対応する複数の電流生成手段を有し、
各電流生成手段に対応する複数の太陽電池を有することを特徴とする。
これにより、ある太陽電池パネルの運用を一時的に停止させることにより、順次太陽電池パネルを整備することが可能となる。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜請求項8に記載の発明において、
植物育成建屋内への作業者の入退場を検知する入退場検知手段を更に有し、
前記入退場検知手段が植物育成建屋内への作業者の入場を検知した場合には、電圧決定手段は、LEDユニットが白色に発光するような各色LEDに印加される電流の電圧を決定し、
前記入退場検知手段が植物育成建屋内への作業者の退場を検知した場合には、電圧決定手段は、再び、植物育成状態検知手段が検知した情報に基づき、前記赤色LED、青色LED、緑色LEDのそれぞれに印加される電流の電圧を決定することを特徴とする。
これにより、作業者が植物育成建屋内への入場時に、LEDユニットが白色に発光するので、作業者の植物育成建屋内での各種確認作業が容易となる。例えば、育成面で植えられている植物の色づきの確認が容易となる。また、作業者が違和感を感じることがなく、植物育成建屋内で作業することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、植物の成長レベルを検知し、当該成長レベルに基づき、各色LEDのそれぞれに印加される電流の電圧を決定するので、手間をかけずに、植物の成長レベルに合った最適な照射光が植物に照射され、植物の育成が遅れることなく、より短期間で植物を育成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】植物育成システムの概要図である。
【図2】植物育成システムのブロック図である。
【図3】LEDユニットの駆動回路図である。(赤色LED)
【図4】LEDユニットの駆動回路図である。(青色LED、緑色LED)
【図5】各色LEDの発光スペクトル分布を表したグラフである。
【図6】育成面制御部のブロック図である。
【図7】クロロフィルの吸収スペクトル分布を表したグラフである。
【図8】メイン処理のフロー図である。
【図9】センサーデータチェック処理のフロー図である。
【図10】照明色変更処理のフロー図である。
【図11】センサーデータを表した図である。
【図12】植物育成ファイルを表した図である。
【図13】基準スケジュールファイルを表した図である。
【図14】作業指示ファイルを表した図である。
【図15】作業指示ファイルの更新状態を表した図である。
【図16】作業者入場時点灯処理のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施の形態を示す。1は植物育成建屋であり、病原菌、害虫、風雨の侵入を防止するために、密閉空間となっている。植物育成建屋1には、作業者が入退場するための入場扉1aを有している。入場扉1aには、入場検知部1bが設けられている。入場検知部1bは例えば、タグリーダであり、作業者が身につけている電子タグ(RFID(Radio frequency identificationの略))を読み取る装置である。入場検知部1bで、各作業者の植物育成建屋1への入場履歴が検知されるようになっている。
【0019】
植物育成建屋1内には、育成面2が配設されている。実施形態では、植物育成建屋1内に複数の育成面2が配設されている。育成面2には、育成する植物が植えられる。育成面2には、植物の育成に必要なミネラル分等の肥料溶液が自動的に供給される。各育成面2に対向する位置には、LEDユニット61が配設されている。図1に示される例では、育成面2は1段であるが、育成面2を棚状に多段構造にしても差し支えない。
【0020】
LEDユニット61は、赤色光を発光する赤色LED、青色光を発光する青色LED、緑色光を発光する緑色LEDの多数の各色LEDから構成されている。
図3に赤色LEDの駆動回路図を示し、図4に青色LED及び緑色LEDの駆動回路図を示す。図3に示されるように、複数の赤色LED65aが直列に接続され(図3の実施形態では12個)ている。直列の接続された赤色LED65aと並列して、複数のツェナーダイオード66が直列に、赤色LED65aと逆向きに接続されている。図3の実施形態では、2個の赤色LED65aに対して、1個のツェナーダイオード66が並列接続されている。このように構成することにより、赤色LED65aに印加される電流が最大許容電流を超える場合には、その最大許容電流を超える電流が赤色LED65aと並列接続しているツェナーダイオード66に流れ、赤色LED65aに流れる電流値を最大許容電流値以内に維持することができ、赤色LED65aを保護することができる。図3に示されるように、直列に接続された複数の赤色LED65a及び直列の接続された複数のツェナーダイオード66が、複数組み並列接続されている。このような構成により、ある赤色LED65aが破損し、直接に接続された赤色LED61aが1列消灯したとしても、消灯した赤色LED65aと並列接続されている他の赤色LED65は消灯することがないので、育成面2に植えられている植物が枯れることがない。
図4に示されるように青色LED65bの駆動回路及び緑色LED65cの駆動回路も、図3に示される赤色LED65aの駆動回路と同様である。図4に示される実施形態では、8個の青色LED65bや緑色LED65cが直列に接続されている。
なお、直列に接続される各色LEDの個数は、各色LEDの特性に因るので、図3や図4の実施形態に限定されない。
【0021】
図5に各色LEDの発光スペクトル分布を示す。図5に示されるように、赤色LEDの発光ピークは660nmであり、赤色LEDは600〜700nmの範囲で発光する。また、緑色LEDの発光ピークは525nmであり、緑色LEDは460〜600nmの範囲で発光する。また、青色LEDの発光ピークは470nmであり、青色LEDは420〜530nmの範囲で発光する。各色LEDは、印加される電圧に応じて、照度が変化するようになっている。
【0022】
各LEDユニット61の近傍には、育成面制御部40が配設されている。育成面制御部40は、それぞれ近傍にあるLEDユニット61の各色LEDにパルス電流を供給するパルス電流生成部45を有している(図2に示す)。なお、パルス電流生成部45と各LEDユニット61を接続する導線の長さは2m以内であるので、パルス電流生成部45で生成されたパルス電流が減衰することなく、LEDユニット61に供給される。
【0023】
各育成面2には、植物育成状態検知センサー62(植物育成状態検知手段)が配設されている。植物育成状態検知センサー62は、育成面2に植えられた植物の「成長レベル」(育成状態)を検知するセンサーである。本実施形態では、植物育成状態検知センサー62は育成面2に植えられている植物の高さを検知するセンサーであり、育成面2の側方位置に高さ方向複数配設されている。前記センサーには、光電センサー、超音波センサーが含まれる。このように、植物育成状態検知手段を構成すると、植物育成状態検知センサー62は単純な構造であることから、信頼性があり、また、低コストで育成面2に植えられた植物の「成長レベル」を検知する植物育成状態検知手段を実現することが可能となる。
【0024】
10は制御部である。制御部10は、各LEDユニット61の近傍にある育成面制御部40に接続している。制御部10は、植物育成状態検知センサー62が検知した育成面2に植えられた植物の「成長レベル」に応じて、各LEDユニット61の各色LEDに印加する電流の電圧を決定する装置である。制御部10は、決定したLEDユニット61の各色LEDに印加する電流の電圧の情報(後述する「作業指示ファイル」)を、各育成面制御部40に送信する。このように構成することにより、制御部10から各制御部40へは、各色LEDに印加する電流の電圧の情報(「作業指示ファイル」)のみが送信され、LEDユニット61の近傍にあるパルス電流生成部45でパルス電流が生成され、当該パルス電流がLEDユニット61に印加されるので、送電が長距離とならず、送電中のパルス電流の減衰を回避することが可能となる。なお、制御部10には、操作用コンピュータ装置21が接続している。
【0025】
各育成面2上には、ブザー63が配設されている。また、各育成面2上には、育成面2を撮像する撮像装置64が配設されている。撮像装置64は、イメージセンサー、結像光学系、画像生成回路を有している。イメージセンサーは、2次元配列されたフォトダイオードを有している。各フォトダイオードは、入射光の強度を電荷に変換し、電荷を「信号電圧」として出力する。イメージセンサーには、CCD(Charge Coupled Device Image SenSor)やCMOS(Complementary Mwtal Oxide Semiconductor)が含まれる。結像光学系は、単一又は複数のレンズで構成され、入光した像を、イメージセンサー上で結像させるものである。画像生成回路は、A/Dコンバータ、DSP(Digital Signal Prosessor)を有している。A/Dコンバータは、イメージセンサーが出力する「信号電圧」を、「デジタル信号」に変換する。DSPは、A/Dコンバータが生成したが生成した「デジタル信号」から、2次元のピクセルデータである「撮像画像データ」を生成する。
【0026】
植物育成建屋1の天井上には、太陽電池パネル51が配設されている。太陽電池パネル51は、南向きに水平面から25°〜35°傾斜させて配設されている。太陽電池パネル51には、シリコン系(多結晶シリコン型、微細結晶シリコン型、アモルファスシリコン型を含む)、化合物系(GaAs系、CIS系を含む)、有機系(色素増感型、有機薄膜型を含む)の太陽電池パネルが含まれる。太陽電池パネル51に太陽光が照射されると、光起電力効果により光エネルギーが電流に変換される。
【0027】
太陽電池パネル51は、充電コントローラ52に接続している。充電コントローラ52は、二次電池53に接続している。充電コントローラ52は、過充電防止回路を有していて、二次電池53の過充電が防止されるようになっている。また、充電コントローラ52は、過電流防止回路を有していて、二次電池53への過電流の印加が防止されるようになっている。二次電池53には、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、鉛蓄電池等の化学反応を利用した二次電池が含まれる。二次電池53には、二次電池53の電圧により残量を検出する残量検出部53a(図2に示す)を有している。本実施形態では、太陽電池パネル51で生成された電流は、LEDユニット61の発光に使用される。このように、太陽電池パネル51で生成した電流を、LEDユニット61の発光に使用することにしたので、電気代が莫大とならず、生産コストを低減することができる。また、温室効果ガスである二酸化炭素を余分に排出することがない。図1に示されるように、本実施形態では、1の育成面制御部40に、1の太陽電池パネル51が接続されている。
【0028】
整流部71は、変圧器、整流回路、平滑化回路を有していて、商用電源99から供給される交流を降圧するとともに直流に変換して、パルス電流生成部45に出力する。変圧器は、商用電源99から供給される交流を、例えば24vの交流に降圧する。整流回路はダイオード等から構成され、変圧器で降圧された交流を全波整流する。平滑化回路は、コンデンサー等から構成され、整流回路で全波整流された電流を平滑化する。本実施形態では、100V又は200V、50Hz又は60Hzの商用電源99から、24Vの直流に変換している。
【0029】
(植物育成システムのブロック図の説明)
制御部10は、CPU11、RAM12、ROM13、補助記憶装置14、通信インターフェース15を有していて、これらは相互にバス19で接続されている。
【0030】
CPU11は、RAM12、ROM13と協動して、各種演算、処理を行う。
RAM12は、CPU11で処理されるプログラムや、CPU11が処理するデータを、そのアドレス空間に一時的に記憶する。
【0031】
ROM13には、各種プログラムが記憶されている。ROM13には、電源管理プログラム13a、センサーデータ取得プログラム13b、植物育成状態判定プログラム13c、作業指示ファイル生成プログラム13d、LED点灯制御プログラム13e、点検要求プログラム13f、入退場管理プログラム13gが記憶されている。当該各種プログラムが、CPU11で処理されることにより、植物育成システム100の各種機能を実現している。
【0032】
電源管理プログラム13aは、二次電池53の残量が所定以下になった場合に、LEDユニット61に印加される電流を、太陽電池パネル51から商用電源99に切り替える処理を行うプログラムである。
センサーデータ取得プログラム13bは、各植物育成状態検知センサー62で検知された「センサーデータ」を取得するプログラムである。
植物育成状態判定プログラム13cは、前記取得された「センサーデータ」に基づいて、各育成面2に植えられている植物の成長レベルを判定するプログラムである。
作業指示ファイル生成プログラム13dは、「作業指示ファイル」を生成し、又は、更新するプログラムである。
LED点灯制御プログラム13eは、「作業指示ファイル」を各育成面2の育成制御部40に送信することにより、各育成面2のLEDユニット61の各色LEDに印加されるパルス電流の電圧を制御するプログラムである。
点検要求プログラム13fは、育成面2に植えられている植物の成長が、後述する「基準スケジュール」から開離した場合に、作業者に前記育成面2の点検が必要であることを報知するプログラムである。具体的には、点検要求プログラム13fは、操作用コンピュータ装置21に警告を表示させたり、前記育成面2に設置されているブザー63で警告音を鳴らせたりする。
入退場管理プログラム13gは、入場検知部1bが検知した各作業者の植物育成建屋1への入退場情報から、「入退場履歴」を生成し、入退場履歴記録領域14eに記憶させるプログラムである。
なお、前記各プログラムをASIC(Application Specific Integrated Circuit)として実現しても差し支えない。
【0033】
補助記憶装置14は、例えば、不揮発性メモリーやハードディスクである。補助記憶装置14は、センサーデータ記憶領域14a、植物育成履歴ファイル記憶領域14b、基準スケジュールファイル記憶領域14c、作業指示ファイル記憶領域14d、入退場履歴記憶領域14eを有している。
センサーデータ記憶領域14aには、「センサーデータ」が記憶される。「センサーデータ」は、図11に示されるように、各植物育成状態検知センサー62で検知された各育成面2に植えられている植物の背丈の情報を「成長レベル」として記憶したデータである。なお、「成長レベル」は、高さ方向に複数配設されている植物育成状態検知センサー62が検知した数であり、育成面2に植えられている植物の背丈と対応している。
植物育成履歴ファイル記憶領域14bには、「植物育成履歴ファイル」が記憶される。「植物育成履歴ファイル」は、図12に示されるように、各育成面2に植えられている「成長レベル」と、その「成長レベル」に到達した「経過時間」との関係を表したファイルである。
【0034】
基準スケジュールファイル記憶領域14cには、「基準スケジュールファイル」が記憶される。「基準スケジュールファイル」は、図13に示されるように、育成面2で植えられる植物の種類、「成長レベル」、前記各「成長レベル」における各色LEDに印加する電流の最適な電圧、前記各「成長レベル」におけるLEDユニット61の照射時間との関係を表したファイルである。「基準スケジュールファイル」は、操作用コンピュータ装置21により設定したり変更したりすることができ、育成面2に植えられる植物の成長に最適な各色LEDに印加する電流の電圧が設定される。図7にクロロフィルの吸収スペクトル分布を表したグラフを示す。図7に示されるようにクロロフィルは、緑色から黄色の波長領域では、殆ど光を吸収することなく、この波長領域では殆ど光合成が行われない。図5及び図7から明らかなように、クロロフィルの光の吸収分布は、青色LEDの発光分布と赤色LEDの発光分布と殆ど一致する。本発明では、この知見に基づき、「基準スケジュールファイル」を設定している。つまり、育成面2に植えられる植物の成長過程において、青色LED及び赤色LEDを強く発光させるようにしている。なお、成長レベル0(発芽期)において、緑色LEDを発光させているのは、発芽時には緑色光が必要であるとの知見に基づく。また、成長レベル3(成長最終期)にも、緑色LEDを発光させているのは、成長最終期にも緑色光が必要であるとの知見に基づく。
【0035】
作業指示ファイル記憶領域14dには、「作業指示ファイル」が記憶される。「作業指示ファイル」は、図14に示されるように、各色LEDに印加する電流の電圧と、各育成面2に植物が植えられてから(種が蒔かれてから)の「経過時間」との関係を表したファイルである。なお、各「経過時間」の項目は、前記した各「成長レベル」に対応している。当該ファイルに基づいたスケジュールで、各LEDユニット61の各色LEDが発光する。つまり、各育成面2に植物が植えられてから「作業指示ファイル」の「経過時間」に達すると、前記「経過時間」に対応する電圧の電流が各色LEDに印加されるようになっている。
【0036】
入退場履歴記憶領域14eには、入退場管理プログラム13gが生成した「入退場履歴」が記憶される。
【0037】
通信インターフェース15には、入場検知部1b、育成面制御部40、操作用コンピュータ装置21が接続している。通信インターフェース15には、LAN(Local Area Network)や、USB(Unversal Serial Busの略)、IEEE1394、RS232、RS422その他通信インターフェースが含まれる。操作用コンピュータ装置21は、キーボードやマウス等のポインティングディバイス等の入力手段及び表示画面を有している。操作用コンピュータ装置21は、作業者が植物育成システム100を操作するための装置である。操作用コンピュータ装置21の代わりに、タッチパネル等の操作手段を、通信インターフェース15に接続しても差し支えない。
【0038】
以下に、図6を用いて植物育成制御部40のブロック図について説明する。植物育成制御部40は、CPU41、RAM42、ROM43、補助記憶装置46、通信インターフェース44、パルス電流生成部45、インターフェース47を有していて、これらは相互にバス49で接続されている。CPU41は、RAM42、ROM43と協動して、各種演算、処理を行う。RAM42は、CPU41で処理されるプログラムや、CPU41が処理するデータを、そのアドレス空間に一時的に記憶する。ROM43には、各種プログラムが記憶されている。
【0039】
補助記憶装置46は、例えば、不揮発性メモリーやハードディスク(不揮発性記憶装置)である。補助記憶装置46は、作業指示ファイル記憶領域46aを有していて、制御部10から送信された「作業指示ファイル」が記憶されるようになっている。
【0040】
通信インターフェース44は、制御部10の通信インターフェース15と接続している。通信インターフェース44は、制御部10の通信インターフェース15に対応したインターフェースとなっている。
【0041】
パルス電流生成部45は、二次電池53や整流部71から供給される電流からパルス電流を生成し、LEDユニット61の各色LEDに印加する。パルス電流生成部45は、各色LEDに作業指示ファイル記憶領域46aに記憶されている「作業指示ファイル」に基づいた電圧のパルス電流を生成する。なお、パルス電流生成部45と補助記憶装置46とは、近傍位置に配設され、両者の距離は少なくとも2m以内である。
このように、LEDユニット61に印加される電流をパルス電流としているのは、育成面2で育成する植物が野菜である場合には、パルス光を野菜に照射すると、野菜に含まれるビタミンが増大するからである。
【0042】
インターフェース47には、二次電池53の残量検知部53a、整流部71、植物育成状態検知センサー62、ブザー63、撮像装置64が接続している。インターフェース47は、残量検知部53a、整流部71、植物育成状態検知センサー62、ブザー63、撮像装置64から出力されたデータの物理的・論理的な形式を変換し、バス49に引き渡す。また、インターフェース47は、ブザー63を駆動させる電流を出力する。
【0043】
(メイン処理のフローの説明)
図8にメイン処理のフロー図を示して、以下、当該フローについて説明する。メイン処理が開始すると、S13「センサーデータ取得」の処理において、植物育成検知プログラム13bは、育成面2に植えられている植物の「成長レベル」(背丈)を、各植物育成状態検知センサー62で検知させる命令を、各植物育成制御部40に出力する。各植物育成状態検知センサー62で検知されたデータは、各育成面制御部40から制御部10に出力され、補助記憶装置14の植物育成データ記憶領域14aに記憶される。S13の処理が終了すると、S14の判断処理に進む。
【0044】
S14「二次電池残量不足?」の判断処理において、二次電池残量検知プログラム13aは、残量検知部53aで検知された二次電池53の残量が、所定値以上であるか否かを判断し、二次電池53の残量が不足しているか否かを判断する。二次電池残量検知プログラム13aが、二次電池53の残量が不足していると判断した場合には、S15の処理に進む。一方で、二次電池残量検知プログラム13aが、二次電池53の残量が不足していないと判断した場合には、S16の処理に進む。
【0045】
S15「商用電源に切替」の処理において、電源管理プログラム13aは、LEDユニット61を駆動させる電源を、太陽電池パネル51から商用電源99に切り替えるため、整流部71を起動させる命令を整流部71に出力する。S15の処理が終了すると、S16の処理に進む。このように、本実施形態では、二次電池53が不足した場合に、商用電源99に切り替えることにしているので、LEDユニット61が消灯したままの状態にならず、スケジュール通りに育成面2で植物を育てることが可能となる。
【0046】
S16「センサーデータチェック処理」において、植物育成状態判定プログラム13cは、「センサーデータ」をチェックすることにより、各育成面2に植えられている植物の育成状態を判断する。そして、作業指示ファイル生成プログラム13dは、前記判断した育成状態に基づいて、「作業指示ファイル」を更新することにより、各色LEDに印加される電流の電圧値を植物の育成に最適な電圧とする。詳しくは、図9を用いて後で説明する。S16の処理が終了すると、S18の判断処理に進む。
【0047】
S18「照度変更処理」において、LED点灯制御プログラム13fは、「作業指示ファイル」に基づいて、各色LEDに印加される電流の電圧を変更し、各色LEDの照度を変更する処理が行われる。詳しくは、図10を用いて後で説明する。S18の処理が終了すると、S19の判断処理に進む。
【0048】
S19「検知間隔経過?」の処理において、CPU41は植物育成状態検知センサー62による検知間隔が経過した否かを判断し、前記検知間隔が経過していると判断した場合には、S13の処理に進む。つまり、検知間隔毎に、S13の処理において、植物育成状態検知センサー62で検知される。なお、前記検知間隔は、例えば1時間である。
【0049】
(センサーデータチェック処理)
図9に「センサーデータチェック処理」のフロー図を示して、以下、当該フローについて説明する。S16「センサーデータチェック処理」が開始すると、S16−1「植物育成履歴ファイル取得」の処理に進む。S16−1の処理において、植物育成状態判定プログラム13cは、植物育成履歴ファイル記憶領域14bを参照し、「センサーデータ」をチェックする育成面2の「植物育成履歴ファイル」取得し、RAM12の記憶領域に記憶させる。S16―1の処理が終了すると、S16−2の処理に進む。
【0050】
S16−2「基準スケジュールファイル取得」の処理において、植物育成状態判定プログラム13cは、基準スケジュールファイル記憶領域14cに記憶されている「基準スケジュールファイル」を参照して、「センサーデータ」をチェックする育成面2に対応する「基準スケジュールファイル」を取得し、RAM12に記憶させる。S16―2の処理が終了すると、S16−3の処理に進む。
【0051】
S16−3「経過時間算出」の処理において、植物育成検知プログラム13bは、「センサーデータ」をチェックする育成面2に植えられた植物が植えられてから(種が蒔かれてから)の「経過時間」を算出する。S16―3の処理が終了すると、S16―4の判断処理に進む。
【0052】
S16−4「センサーデータ変化あり?」の判断処理において、植物育成状態判定プログラム13cは、RAM12とセンサーデータ記憶領域14aを参照することにより、「植物育成履歴ファイル」と、これに対応する育成面2の「センサーデータ」を比較して、「センサーデータ」が変化したか否かを判断する。植物育成状態判定プログラム13cが、「センサーデータ」が変化したと判断した場合には、S16−5の判断処理に進む。植物育成状態判定プログラム13cが、「センサーデータ」が変化していない判断した場合には、S16−11の判断処理に進む。なお、育成面2に植物(種)が植えられて、最初にS16−4の判断処理を行う場合には、S16−5の処理に進む。
【0053】
S16−5「作業指示ファイル更新」の処理において、作業指示ファイル生成プログラム13dは、基準スケジュールファイル記憶領域14cに記憶されている「基準スケジュールファイル」を参照することにより、「作業指示ファイル」(図14に示す)を更新する「作業指示ファイル更新処理」を実行する。
なお、育成面2に植物(種)が植えられて最初にS16−5の判断処理を行う場合には、作業指示ファイル生成プログラム13dは、育成面2に植えられている植物に対応する「基準スケジュールファイル」に基づいて、「作業指示ファイル」を作成する。具体的には、作業指示ファイル生成プログラム13dは、育成面2に植えられている植物に対応する「基準スケジュールファイル」の各「成長レベル」の「照射時間」を順次積算することにより、各色LEDに印加する電流の電圧に対応する「経過時間」を順次算出し、各色LEDに印加する電流の電圧のスケジュールである「作業指示ファイル」を生成する。
また、育成面2に植物(種)が植えられて、2回目以降にS16−5の判断処理を行う場合には、既に生成されている「作業指示ファイル」(図15の(A)に示す)の変化があった「成長レベル」に対応する「経過時間」を、「センサーデータ」が変化した「経過時間」(S16―3の処理で算出された「経過時間」)に変更するとともに、次以降の「成長レベル」に対応する「経過時間」についても順次、前記変更された「経過時間」の差分だけシフトさせるシフト処理を行う。図15に示される例では、「成長レベル」が0から1になる(予定されていた)「経過時間」が120hであるところ、実際にセンサー62で検出された「成長レベル」1に達した「経過時間」が115hであるので、「作業指示ファイル」の各「成長レベル」について5h早めるシフト処理を行う。S15−5の処理が終了すると、S16−6の処理に進む。
【0054】
S16―6「植物育成履歴ファイル更新」の処理において、CPU11は、植物育成履歴ファイル記憶領域14bに記憶されている「植物育成履歴ファイル」(図12に示す)を更新する。具体的には、CPU11は、「センサーデータ」が変化した時間を、変化した「成長レベル」に対応する「経過時間」に記憶させる。S16−6の処理が終了すると、S16−7の判断処理に進む。
【0055】
S16―7「植物育成基準データと開離」の判断処理において、植物育成状態判定プログラム13cは、育成面2に植えられている植物の成長が、「基準スケジュールファイル」に規定されている植物の成長スケジュールと開離しているか否かを判断する。具体的には、植物育成状態判定プログラム13cは、前記「センサーデータ」から算出される育成面2に植えられている植物の「成長レベル」(背丈)を算出し、前記植物に対応する「基準スケジュールファイル」を参照して、前記植物の「成長レベル」に達した「経過時間」を抽出し、当該「経過時間」と「センサーデータ」が変化した際の「経過時間」とを比較し、所定以上(例えば10%以上)開離しているか否かを判断する。植物育成状態判定プログラム13cが、育成面2に植えられている植物の成長が、「基準スケジュールファイル」に規定されている植物の成長スケジュールと開離していると判断した場合には、S16−8の処理に進む。一方で、植物育成状態判定プログラム13cが、育成面2に植えられている植物の成長が、「基準スケジュールファイル」に規定されている植物の成長スケジュールと開離していないと判断した場合には、S16−9の判断処理に進む。
【0056】
S16−8「点検要求処理」において、点検要求プログラム13fは、作業者にS16−7の判断処理で判断された育成面2の点検が必要であることを作業者に報知させる「点検要求処理」を実行する。具体的には、点検要求プログラム13fは、操作用コンピュータ装置21に、警告画面を表示させ、又は、警告音を再生させる命令を、出力する。また、点検要求プログラム13fは、ブザー63で警告音を所定時間(例えば3分間)再生させる命令を、前記育成面2の育成面制御部40に出力する。更に、点検要求プログラム13fは、撮像装置64で前記育成面2を撮像し、「撮像画像」を操作用コンピュータ装置21に出力させる命令を、育成面制御部40に出力する。なおこの際に、LED点灯制御プログラム13eは、撮像する育成面2上に配設されているLEDユニット61を白色に発光させるために、当該育成面2のパルス電流生成部45に各色LEDに印加するパルス電流の電圧を略同一にする命令を出力する。このように、育成面2の撮像時2に、育成面2を照射するLEDユニット61を白色に発光させることにしたので、操作用コンピュータ装置21の画面に映し出される育成面2が明瞭に表示され、作業者の育成面2の点検が容易となる。S16−8の処理が終了すると、S16−9の判断処理に進む。
【0057】
S16−9「全ての育成面のセンサーデータをチェック?」の判断処理において、植物育成状態判定プログラム13cは、全ての育成面2の「センサーデータ」をチェックしたか否かを判断する。植物育成状態判定プログラム13cが、全ての育成面2の「センサーデータ」をチェックしたと判断した場合には、「センサーデータチェック処理」が終了し、図8のS17「照度変更有り?」の判断処理に進む。一方で、植物育成状態判定プログラム13cが、全ての育成面2の「センサーデータ」をチェックしたと判断しない場合には、S16―1の処理に戻る。
【0058】
S16―11「植物育成基準データと開離?」の判断処理は、S16−7の処理と同様である。植物育成状態判定プログラム13cが、育成面2に植えられている植物の成長が、「基準スケジュールファイル」に規定されている植物の成長スケジュールと開離していると判断した場合には、S16−12の処理に進む。一方で、植物育成状態判定プログラム13cが、育成面2に植えられている植物の成長が、「基準スケジュールファイル」に規定されている植物の成長スケジュールと開離していないと判断した場合には、S16−9の判断処理に進む。
【0059】
S16―12「点検要求処理」の処理は、S16−8の処理と同様である。S16―12の処理が終了すると、S16―9の判断処理に進む。
【0060】
(照度変更処理)
図10に「照度変更処理」のフロー図を示して、以下、当該フローについて説明する。「照度変更処理」が開始すると、S18−1「作業指示ファイル読み込み」の処理において、LED点灯制御プログラム13eは、育成面2の「作業指示ファイル」(図14に示す)をRAM12に記憶させる。S18−1の処理が終了すると、S18−2の判断処理に進む。
【0061】
S18―2「作業指示ファイルは更新されたか?」の判断処理において、LED点灯制御プログラム13eは、「作業指示ファイル」が更新されているか否かを判断する。LED点灯制御プログラム13eが、「作業指示ファイル」が更新されていると判断した場合には、S18−3の処理に進む。一方で、LED点灯制御プログラム13eが、「作業指示ファイル」が更新されていないと判断した場合には、S18−4の判断処理に進む。
【0062】
S18−3「作業指示ファイル送信」の処理において、LED点灯制御プログラム13eは、「作業指示ファイル」が変更されている育成面2の育成面制御部40に「作業指示ファイル」を送信する。「作業指示ファイル」を受信した育成面制御部40は、前記「作業指示ファイル」を、補助記憶装置46の作業指示ファイル記憶領域46aに記憶させる。そして、CPU41は、作業指示ファイル記憶領域46aに記憶された「作業指示ファイル」に基づいて、LEDユニット61の各色LEDに印加する電流の電圧を変更する命令を、パルス電流生成部45に出力する。パルス電流生成部45は、前記命令に基づいて、LEDユニット61の各色LEDに印加する電流の電圧を変更する。S18−3の処理が終了すると、S18−4の判断処理に進む。
【0063】
S18−4「全ての育成面について処理?」の判断処理において、LED点灯制御プログラム13eは、全ての育成面2について、上述したS18−1〜S18−3の処理を行ったか否かを判断する。LED点灯制御プログラム13eが、全ての育成面2について、S18−1〜S18−3の処理を行ったと判断した場合には、「照度変更処理」が終了し、図8に示されるS19の処理に進む。一方で、LED点灯制御プログラム13eが、全ての育成面2について、S18−1〜S18−3の処理を行っていないと判断した場合には、S18−1の処理に戻る。
【0064】
このように本発明では、植物の成長(背丈)を植物育成状態検知センサー62で検出し、植物の成長レベルに合わせて、最適な照射光を照射することにしたので、植物の育成が遅れることなく、より短期間で植物を育成することが可能となった。
【0065】
また、本発明では、制御部10が「作業指示ファイル」を生成し、当該「作業指示ファイル」を各育成面2の育成面制御部40に送信し、各育成面制御部40が前記「作業指示ファイル」を記憶して保持する構成としたので、制御部10が故障した場合や、制御部10と各育成面制御部40との通信が遮断された場合であっても、育成面制御部40は自己が保持している「作業指示ファイル」に基づいて、LEDユニット61にパルス電流を供給することができ、耐障害性に優れ、育成面2に植えられた植物が枯れてしまうことがない。
また、本実施形態では、1の育成面制御部40に、1の太陽電池パネル51が接続されている。このため、ある太陽電池パネル51の運用を一時的に停止させることにより、順次太陽電池パネル51を整備することができる。
【0066】
(作業者入場時点灯処理)
図16に「作業者入場時点灯処理」のフロー図を示して、以下に、当該処理の説明をする。S81「入場検知部が作業者の入場を検知?」の判断処理において、入退場管理プログラム13gが、入場検知部1bが出力する信号に基づいて、作業者の植物育成建屋1内への入場を検知した場合には、S82の処理に進む。
【0067】
S82「LEDユニットの照明光を白色にする」の判断処理において、LED点灯制御プログラム13eは、各育成面2上に配設されているLEDユニット61を白色に発光させるために、LEDユニットが白色に発光するような、各色LEDに印加される電流の電圧を決定する。なお、LEDユニットユニット61に配設されている各色LEDの数が同数であり、同一の電圧を各色LEDに印加した場合に各色LEDの照度が同一となる場合には、LED点灯制御プログラム13eは、各色LEDに印加するパルス電流の電圧を略同一にする。そして、LED点灯制御プログラム13eは、前記決定された電圧にする命令を、各パルス電流生成部45に出力する。このように、作業者が植物育成建屋1内への入場時に、各LEDユニット61を白色に発光させることにしたので、作業者が植物育成建屋1内での各種確認作業が容易となる。例えば、育成面2で植えられている植物の色づきの確認が容易となる。また、作業者が違和感を感じることがなく、植物育成建屋1内で作業することができる。S82の処理が終了すると、S83の判断処理に進む。
【0068】
S83「入場検知部が作業者の退場を検知?」の判断処理において、入退場管理プログラム13gが、入場検知部1bが出力する信号に基づいて、作業者の植物育成建屋1内からの退場を検知した場合には、S84の処理に進む。
【0069】
S84「LEDユニットの照明色を白色から解除」の処理において、LED点灯制御プログラム13eは、各LEDユニット61の照明色を白色から解除させるために、各パルス電流生成部45に各色LEDに印加するパルス電流の電圧を略同一にする命令を解除する命令を出力する。すると、各パルス電流生成部45は作業指示ファイル記憶領域46aに記憶されている「作業指示ファイル」に基づいた電圧で、各色LEDに印加するパルス電流を生成する。このように、作業者が植物育成建屋1から退場すると、各パルス電流生成部45は作業指示ファイル記憶領域46aに記憶されている「作業指示ファイル」に基づいた電圧で、各色LEDに印加するパルス電流を生成するので、植物の育成に最適な照明色の照明光が育成面2に植えられている植物に照射され、植物の育成が遅れることがない。また、エネルギーが無駄に消費されることがない。S84の処理が終了すると、S81の判断処理に進む。
【0070】
(総括)
以上説明した実施形態では、LEDユニット61の各色LEDにパルス電流を印加しているが、前記各色LEDに直流電流を印加することにしても差し支えない。
なお、LEDユニット61を所定時間点灯させ、所定時間消灯させることを繰り返して、昼と夜を再現することにしても差し支えない。この場合には、植物(野菜)に含まれるビタミンやミネラルが増大する。
【0071】
以上説明した実施形態では、育成面2に植えられた植物の「成長レベル」を検知する植物育成状態検知手段は、育成面2の側方に配設された植物育成状態検知センサー62であるが、前記植物育成状態検知手段として撮像装置64を利用しても差し支えない。この場合には、撮像装置64で育成面2を撮像して「育成面撮像データ」を生成し、植物育成状態判定プログラム13cが、前記「育成面撮像データ」を解析することにより前記植物の「成長レベル」を判定する。具体的には、植物育成状態判定プログラム13cは、前記「育成面撮像データ」の波長の強度をサンプリングし、当該サンプリングされた前記波長の強度を分析することにより、撮像時における前記植物の「成長レベル」を判定する。或いは、植物育成状態判定プログラム13cは、前記「育成面撮像データ」と、各「成長レベル」に対応する「基準データ」とパターンマッチングを行うことにより、撮像時における前記植物の「成長レベル」を判定することにしても差し支えない。なお、「成長レベル」の判定精度を向上させるために、撮像装置64で育成面2を撮像する場合には、各色LEDに印加する電圧を略等しくして、LEDユニット61を白色に発光させることが好ましい。
【0072】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う植物育成システムもまた技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【符号の説明】
【0073】
1 植物育成建屋
1a 入場扉
1b 入場検知部
2 育成面
10 制御部
11 CPU
12 RAM
13 ROM
13a 電源管理プログラム
13b センサーデータ取得プログラム
13c 植物育成状態判定プログラム
13d 作業指示ファイル生成プログラム
13e LED点灯制御プログラム
13f 点検要求プログラム
13g 入退場管理プログラム
14 補助記憶装置
14a センサーデータ記憶領域
14b 植物育成履歴ファイル記憶領域
14c 基準スケジュールファイル記憶領域
14d 作業指示ファイル記憶領域
14e 入退場履歴記憶領域
15 通信インターフェース
16 インターフェース
19 バス
21 操作用コンピュータ装置
22 サーバ
22a 植物育成データ
40 育成面制御部
41 CPU
42 RAM
43 ROM
44 通信インターフェース
45 パルス電流生成部
46 補助記憶装置
46a 作業指示ファイル記憶領域
47 インターフェース
49 バス
51 太陽電池パネル
52 充電コントローラ
53 二次電池
53a 残量検出部
61 LEDユニット
62 植物育成状態検知センサー
63 ブザー
64 撮像装置
65a 赤色LED
65b 青色LED
65c 緑色LED
66 ツェナーダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物育成建屋と、
前記植物育成建屋内に配設され、植物が植えられる育成面と、
赤色LED、青色LED、及び緑色LEDから構成され、前記育成面と対向する位置に配設されたLEDユニットと、
前記各色LEDのそれぞれに印加する電流を生成する電流生成手段と、
前記植物の成長レベルを検知する植物育成状態検知手段と、
前記植物育成状態検知手段が検知した植物の成長レベルの情報に基づき、前記各色LEDのそれぞれに印加される電流の電圧を決定する電圧決定手段を有することを特徴とする植物育成システム。
【請求項2】
LEDユニットの各色LEDに印加する電流の電圧と、育成面に植物が植えられてからの経過時間との関係を表した作業指示ファイルが記憶される、不揮発性記憶装置である作業指示ファイル記憶手段を有し、
電圧決定手段は、前記植物育成状態検知手段が検知した植物の成長レベルの情報に基づき、作業指示ファイルを生成し、
前記生成された作業指示ファイルは、前記作業指示ファイル記憶領域に記憶され、
電流生成手段は、前記作業指示ファイルを参照することにより、植物が育成面に植えられてからの経過時間が、前記作業指示ファイルの経過時間に達した場合には、前記経過時間に対応する電圧で、各色LEDに電流を印加することを特徴とする請求項1に記載の植物育成システム。
【請求項3】
電流生成手段は、各LEDユニットの近傍に配設され、
作業指示ファイル記憶手段は、電流生成手段の近傍に配設され、
電圧決定手段は、生成した作業指示ファイルを、各作業指示ファイル記憶手段に送信して記憶させることを特徴とする請求項2に記載の植物育成システム。
【請求項4】
電圧決定手段は、
育成面で植えられる植物の種類、植物の成長レベル、前記各成長レベルにおけるLEDユニットの各色LEDに印加する電流の電圧、前記各成長レベルにおけるLEDユニットの照射時間との関係を表した基準スケジュールファイルが記憶される基準スケジュールファイル記憶手段と、
植物育成検知手段が検知した成長レベルに変化があるか否かを判断する植物育成状態判定手段と、
LEDユニットの各色LEDに印加する電流の電圧と、育成面に植物が植えられてからの経過時間との関係を表した作業指示ファイルを生成する作業指示ファイル生成手段とからなり、
育成面について作業指示ファイルが生成されていない場合には、前記作業指示ファイル生成手段は、前記基準スケジュールファイルに基づいて、作業指示ファイルを作成し、
一方で、育成面について前記作業指示ファイルが生成されている場合であって、前記植物育成状態判定手段が、成長レベルの変化があったと判断した場合には、前記作業指示ファイル生成手段は、前記作業指示ファイルの、前記変化があった成長レベルに対応する経過時間の項目を、成長レベルの変化があった経過時間に変更するとともに、次以降の成長レベルに対応する経過時間の項目を、順次、前記変更された経過時間の差分だけ変更させる処理を行い、
電流生成手段は、前記作業指示ファイルを参照することにより、植物が育成面に植えられてからの経過時間が、前記作業指示ファイルの経過時間に達した場合には、前記経過時間に対応する電圧で、各色LEDに電流を印加することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の植物育成システム。
【請求項5】
植物育成状態検知手段は、育成面に植えられている植物の高さを検知する高さ方向に複数配設されたセンサーであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の植物育成システム。
【請求項6】
太陽光を電流に変換する太陽電池と、
前記太陽電池で生成された電流を蓄電する二次電池とを更に有し、
前記二次電池から電流生成手段に電流を供給することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の植物育成システム。
【請求項7】
二次電池の残量を計測する残量検知部と、
商用電源から供給される交流を、降圧、整流、平滑化する整流部と、
前記残量検知部により計測された二次電池の残量が所定以下である場合に、前記整流部を起動させて、電流生成手段に供給する電流を太陽電池から商用電源に切り替える電源管理手段を更に有することを特徴とする請求項6に記載の植物育成システム。
【請求項8】
複数の育成面及びLEDユニットを有するとともに、各LEDユニットに対応する複数の電流生成手段を有し、
各電流生成手段に対応する複数の太陽電池を有することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の植物育成システム。
【請求項9】
植物育成建屋内への作業者の入退場を検知する入退場検知手段を更に有し、
前記入退場検知手段が植物育成建屋内への作業者の入場を検知した場合には、電圧決定手段は、LEDユニットが白色に発光するような、各色LEDに印加される電流の電圧を決定し、
前記入退場検知手段が植物育成建屋内への作業者の退場を検知した場合には、電圧決定手段は、再び、植物育成状態検知手段が検知した情報に基づき、前記赤色LED、青色LED、緑色LEDのそれぞれに印加される電流の電圧を決定することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の植物育成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−125274(P2011−125274A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287346(P2009−287346)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(591028751)株式会社豊和化成 (10)
【出願人】(509349082)株式会社エヌ・シー・ディ (3)
【出願人】(509349093)
【出願人】(000125680)株式会社ケーイーコーポレーション (9)
【Fターム(参考)】