説明

植物育成空間の制御システム

【課題】植物の育成空間の環境を測定し、最適な育成環境に自動的に近づける制御システムを提供することを目的とする。
【解決手段】植物育成空間の制御システムに係る発明は、建物内及び屋外の環境を測定する検知手段20,30,40と、前記検知手段20,30,40による検知結果に従って前記建物内に設置された空調装置50と前記建物内または屋外に設置された設備機器60を制御する制御手段11と、を備え、前記空調装置50が設置された植物を育成する植物栽培室210が前記建物200内に設けられ、前記検知手段30は該植物栽培室内の環境を測定し、前記制御手段11は、前記検知手段30による前記植物栽培室内の検知結果に従って前記植物栽培室内の植物の成長に最適な環境を、前記空調装置50よりも優先して、前記建物内または屋外の環境から取り込むよう前記設備機器60を制御できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物育成空間の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物の育成環境測定装置によって、植物が置かれている環境を測定し、育成環境に適した環境に近づけるための育成ガイドを行うことが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−75172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1は、育成ガイドやアドバイスを管理装置の表示部に表示することを開示するだけである。特許文献1は、植物の育成空間の環境を最適な育成環境に自動的に近づける制御システムを開示していない。
【0005】
そのため、植物の育成空間の環境を測定し、最適な育成環境に自動的に近づける制御システムを提供することが望まれる。
【0006】
本発明は、植物の育成空間の環境を測定し、最適な育成環境に自動的に近づける植物育成空間の制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の少なくとも一つを解決するために、請求項1に記載の植物育成空間の制御システムに係る発明は、例えば、図1および図2に示すように、
建物200内及び屋外の環境を測定する検知手段20,30,40と、
前記検知手段20,30,40による検知結果に従って前記建物200内に設置された空調装置50と前記建物200内または屋外に設置された設備機器60を制御する制御手段11と、
を備え、
前記空調装置50が設置された植物を育成する植物栽培室210が前記建物200内に設けられ、
前記検知手段30は該植物栽培室210内の環境を測定し、
前記制御手段11は、前記検知手段30による前記植物栽培室210内の検知結果に従って前記植物栽培室210内の植物の成長に最適な環境を、
前記空調装置50よりも優先して、前記建物200内または屋外の環境から取り込むよう前記設備機器60を制御することを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、前記制御手段11は、前記検知手段30による前記植物栽培室210内の検知結果に従って前記植物栽培室210内の植物の成長に最適な環境を、前記空調装置50よりも優先して、前記建物200内または屋外の環境から取り込むよう前記設備機器60を制御するので、前記空調装置50の使用を最小限に抑えつつ、前記建物200内または屋外の環境から取り込むことが可能になる。したがって、省エネを図りつつ、植物の育成空間の環境を最適な育成環境に自動的に近づけることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、例えば、図1、図2に示すように、
請求項1に記載の植物育成空間の制御システム100において、
前記空調装置50は継続的に電力を使用する機器であり、
前記設備機器60は一時的に電力を使用する機器62,66であることを特徴とする植物育成空間の制御システム。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、前記空調装置50は継続的に電力を使用する機器であり、前記設備機器60は一時的に電力を使用する機器62,66であり、前記空調装置50よりも優先して、前記設備機器60を使用することにより植物の育成空間の環境を最適な育成環境に自動的に近づける際の電力消費量を低減できるため、CO排出量を削減できる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、例えば、図1、図2、図6に示すように、
請求項1または2に記載の植物育成空間の制御システム100において、
前記建物200には、太陽光発電装置64及び太陽光発電装置64から出力された直流を蓄電可能な蓄電池65が設置され、前記植物栽培室210には、LED61が設置されており、
前記制御手段11は、前記植物栽培室210において前記検知手段20により測定された屋外からの採光の照度が不足していると判断した場合、前記蓄電池65から前記LED61に電力を供給させ、LED61を点灯させることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、前記建物200には、太陽光発電装置64及び太陽光発電装置64から出力された直流を蓄電可能な蓄電池65が設置され、前記植物栽培室210には、LED61が設置されており、前記制御手段11は、前記植物栽培室210において前記検知手段20により測定された屋外からの採光の照度が不足していると判断した場合、前記蓄電池65から前記LED61に電力を供給させ、LED61を点灯させることにより、例えば、昼間に太陽光発電装置64から出力された直流を蓄電池65に供給し、蓄電池65を充電し、夜間等に蓄電池65からLED61に電力を供給可能となるため、CO排出量を削減でき、かつ、直物の生育等に必要な照度を維持することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、例えば、図1、図2、図3、図6に示すように、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の植物育成空間の制御システム100において、
前記設備機器60は前記植物栽培室210の屋外側に設けられた屋外からの光を遮断可能な遮蔽手段62aであり、
前記植物栽培室210には、植物の種類によって区分けされた複数のプランター70と、前記設備機器60として前記プランター70を移動する移動手段63とが設けられ、前記プランター70には、前記植物の光合成の速度を検出する検出手段71が設置されており、
前記制御手段11は、前記検出手段71により検出された前記植物の光合成の速度に応じて、移動手段63により自動的にプランター70の場所を移動させ、または、遮蔽手段62aの開閉を制御することを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、前記制御手段11が、前記検出手段71により検出された前記植物の光合成の速度に応じて、移動手段63により自動的にプランター70の場所を移動させ、または、遮蔽手段62aの開閉を制御することにより、例えば、太陽の動きにより屋外からの採光の照度が不足している場合、太陽の動く方向に応じてプランター70を移動することにより照度の不足を解消できるため、直物の生育等に必要な照度を維持することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、例えば、図1、図2、図6に示すように、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の植物育成空間の制御システム100において、
前記植物栽培室210と前記植物栽培室210の隣の部屋220との間に設けられた遮蔽手段62bを更に備え、
前記検知手段40は前記植物栽培室210の隣の部屋220に人が滞在しているか検知し、
前記制御手段11は人が滞在していると検知した場合、人の滞在する部屋220に前記植物栽培室210から光が漏れないように前記植物栽培室210からの光を遮断可能な遮蔽手段62bを制御することを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、前記制御手段11は人が滞在していると検知した場合、人の滞在する部屋220に前記植物栽培室210から光が漏れないように遮蔽手段62bを制御することにより、前記植物栽培室210から隣の部屋220へ光が漏れないため、例えば、夜間にLED61を点灯しているときに、所定の時間(例えば、夜10時)になると遮蔽手段62bを制御して、前記植物栽培室210から隣の部屋220へ光が漏れないようにすることができ、隣の部屋220に滞在している人にLED61を点灯による影響を与えることを防止できる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、例えば、図1、図2に示すように、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の植物育成空間の制御システム100において、
前記植物栽培室210と前記植物栽培室210の隣の部屋220間に設けられた窓220aの開閉を制御する開閉手段66を更に備え、
前記検知手段40は前記部屋220のCOの濃度を測定し、
前記制御手段11は、COの濃度が一定値以上の場合、前記窓220aを開くよう前記開閉手段66を制御することを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、前記制御手段11は、COの濃度が一定値以上の場合、前記窓220aを開くよう開閉手段66を制御することにより、植物が光合成によりCOからOを発生できるため、CO排出量を削減でき、かつ、直物の生育等に必要な環境を維持することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、植物の育成空間の環境を測定し、最適な育成環境に自動的に近づける植物育成空間の制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る植物育成空間の制御システムの一例を示す図であり、機能ブロック図である。
【図2】同、(a)は植物栽培室と部屋との配置例を示す図であり、(b)は図2(a)のI−I断面図を示す図である。
【図3】同、(a)は植物栽培室に設置される移動手段を示し、(b)は図3(a)のI−I断面図、(c)は移動手段上に配置されるプランターの一例を示す図であり、(d)は移動手段上に配置される棚の一例を示す図である。
【図4】(a)は育苗の適温例を示す図であり、(b)は生育の適温例を示す図である。
【図5】(a)はトマトとほうれん草の最適環境のデータを示す図であり、(b)は室内環境の一例を示す図であり、(c)は屋外環境の一例を示す図である。
【図6】本発明に係る植物育成空間の制御システムの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0022】
<実施の形態>
(植物育成空間の制御システム)
図1〜図3を参照して、植物育成空間の制御システム100について説明する。図2に示すように、植物育成空間としての植物栽培室210と、植物栽培室210の隣の部屋220,240と、台所としての部屋230とが建物200内に配置されている。そして、図1に示すように、植物育成空間の制御システム100は、表示制御部10と、建物200の屋外に設置された屋外センサー20と、植物栽培室210に設置された室内センサー30、部屋220,230,240に設置された室内センサー40、植物栽培室210に設置された空調装置(エアコン)50、建物200の屋内外に設置される各種の設備機器60等により構成されている。検出手段71は、図2および図3に示すプランター70に設置され、光合成速度等を検出し、光合成速度等に関するデータを制御表示部10の通信手段15へ無線で送信する。
【0023】
ここで、表示制御部10は、図2に示すように、部屋230の壁面に設置されている。そして、表示制御部10は、制御手段11、各種設定及び表示切替などをするための操作手段12、果菜類および葉菜類等の植物の育苗及び生育に関する環境データ等を記憶するための記憶手段13、各種の設備機器60等の動作状態や各種センサー20,30,40から受信した環境データ等を表示するための表示手段14およびインターネットを介して、植物の育苗及び生育に関する環境データ等を外部サーバ80から取得するための通信手段15から構成される。制御手段11は、各種センサー20,30,40,検出手段71および外部サーバ80から受信した環境データ等に基づいて、空調装置50及び各種の設備機器60等を制御する。
【0024】
屋外センサー20として、屋外の気温を測定する屋外温度センサー21と、屋外の湿度を測定する屋外湿度センサー22と、屋外の照度を測定する屋外照度センサー23が建物200の外壁等に設置されている。室内センサー30として、部屋の気温を測定する室内温度センサー31と、部屋の湿度を測定する室内湿度センサー32と、部屋の照度を測定する室内照度センサー33とが植物栽培室210に設置されている。また、室内センサー40として、部屋の気温を測定する室内温度センサー41と、部屋の湿度を測定する室内湿度センサー32と、部屋に人が滞在しているかを検出するための人感センサー44と、COの濃度を測定するためのCO濃度センサー45とが部屋210,220,230に設置されている。
【0025】
各種の設備機器60のうち、LED61、遮蔽手段62、移動手段63、開閉手段66が植物栽培室210に設置されている。LED61は、屋外からの採光が不足しているときに点灯し、植物に光を与えるよう制御手段11により制御される。遮蔽手段62aは、屋外からの採光を遮断または調整するよう制御手段11により制御され、遮蔽手段62bは、植物栽培室から部屋220への光を遮断するよう制御手段11により制御される。移動手段63は、所定条件に従って回転駆動するよう制御手段11により制御される。移動手段63は、図2に示されるように、植物栽培室210の略中央に設置され、図3(a)に示されるように、複数のスタット63aが連結部により連結され、時計回りまたは反時計回りに回転駆動するように構成されている。図3(b)に示すように、スタット63aは、駆動チェーン63bに係合され、駆動部(図示せず)により駆動チェーン63bと共に水平方向において回転駆動する(特開平11−56575参照)。なお、移動手段63を駆動するための所定条件については後述する。開閉手段66は、図2(b)に示すように、窓210a、220aの室内側にそれぞれ設置されている。そして、開閉手段66は、例えば、モータ66bとモータ66bの回転軸に固定され窓210a、220aのフレームと接触する円盤状のローラ(回動部)66cと、モータ66bとローラ66cを収納する筐体66aとから構成され、筐体66aが壁面等に取付けられている。ローラ66cはモータ66bによって正逆方向に回転するようになっており、この回転によって窓210a,220bのフレームとローラ66cとに摩擦力が作用し、この摩擦力によって窓210a,220aが左右方向に往復動するようになっている。そして、モータ66bを制御手段11で制御することによってローラ66cの回転を制御し、これによって窓210a、220aの開閉を制御するようになっている。なお、開閉手段66は上記のような構成に限らず、例えば、リニアモータ、ラック&ピニオン機構等によって構成してもよい。
また、遮蔽手段62の具体例としては、電動シャッター62a、62bがある。電動シャッター62a、62bは、駆動部(図示せず)により長細い鋼板を多数連結して作られているシャッター本体を上下方向に移動して開閉するよう制御部11により制御される。また、電動シャッター62a、62bとして、複数のスラットから構成されるブラインドシャッターを採用することができる。このブラインドシャッターは、上部のスラットを少数枚開き空気を取り入れながらも外部からの光を遮断可能である。
【0026】
各種の設備機器60のうち、太陽光発電装置64は建物200の屋根に設置され、蓄電池65は屋外に設置される。太陽光発電装置64からの直流は、制御手段11の制御により、直流のまま、または、交流に変換されて建物200の各種の設備機器等に供給される。
【0027】
(植物の育苗の温度条件)
植物をつくるには、(1)畑等に直にタネを蒔く直播き栽培と、(2)苗床にタネを蒔き、育苗(苗づくり)をしてから畑等に植える移植栽培の2つの方法がある。例えば、(1)直播き栽培の対象としては、葉菜類等のほうれん草、だいこん、はくさい、しゅんぎく、レタスなどがある。これに対して、(2)移植栽培の対象としては、果菜類のトマト、ナス、ピーマン、きゅうり、スイカ、メロンなどがある。
【0028】
例えば、図4(a)に示すように、トマト、なす、ピーマン、きゅうり、スイカ、メロンなどの果菜類の育苗条件の気温範囲としては、昼間24度〜30度、夜間15度〜22度の範囲がある。そして、各植物に共通する適温として、昼間については25度〜27度がこれらの植物を生育する際に適温となる。しかし、各植物に共通する適温として、夜間については、(1)トマトときゅうりが17度、(2)なす、ピーマン、きゅうり、スイカ、メロンが18度〜20度が適温となり、それぞれのグループにおいて適温がわずかに異なる。
しかし、上記2つのグループを育苗する際において、17度〜18度の範囲で植物栽培室の室温を保つことで、育苗に影響を与えることがないと思われる。
【0029】
(植物の生育の温度条件)
そして、図4(b)に示すように、トマト、なす、ピーマン、きゅうり、スイカ、メロン、かぼちゃなどの果菜類の生育条件の気温範囲としては、昼間18度〜30度、夜間8度〜20度の範囲がある。そして、各植物に共通する適温として、昼間については、23度がこれらの植物を生育する際に適温となる。しかし、各植物に共通する適温として、夜間については、(1)トマトとかぼちゃが10度、(2)なす、きゅうり、スイカ、かぼちゃが13度〜15度、(3)ピーマン、スイカ、メロンが18度で適温となり、それぞれのグループにおいて適温が異なる。また、ほうれん草、ダイコン、はくさい、セルリー、みつば、しゅんぎく、レタスなどの葉菜類等の生育条件は、各植物に共通する適温として、昼間15度〜20度が適温である。
ここで、果菜類と葉菜類とでは、昼間において、果菜類23度、葉菜類20度が適温として「最小3度」、果菜類23度、葉菜類15度が適温として「最大8度」の気温差が必要である。
次に、葉菜類は長時間の日長で育成が可能であり、果菜類と比べて、日照時間が生育に影響を与える。ここで、葉菜類に共通する最低限界温度は5度であり、最高限界温度は23度である。夜間の適温は、果菜類は、(1)トマトとかぼちゃが10度、(2)なすときゅうりが15度、(3)ピーマンとスイカとメロンが18度である。そのため、果菜類の適温で夜間は温度管理をし、葉菜類にはLED61で光を照射し、果菜類には仕切り63aにより光が当たらないようにすることで、果菜類と葉菜類の同時育成が可能となる。
そのため、本発明に係る植物育成空間の制御システム100において、昼間においては、植物栽培室210において仕切り63a等により日陰を作り前記気温差を生じさせ、各グループの適温に近づけることにより、上記すべての植物を同時に植物栽培室210で生育し、夜間においては、葉菜類にのみLED61により光を当てることにより、最適な温度に近づけて育苗することができる。
なお、いちごについては、夜間5度〜8度と他の植物に比べて、低い気温が必要とされるため、単体で生育するのが望ましい。
【0030】
(植物の生育の際の照度条件)
一般に、葉菜類の生育の際の照度条件として、20〜30klx(キロルクス)が必要であり、果菜類の生育の際の照度条件として、70〜80klx(キロルクス)が必要である。そして、葉菜類は長時間の日長で生育が可能であり、果菜類は、6〜8時間の夜間が必要とされる。そのため、葉菜類と果菜類を同じ場所で生育する場合には、昼間は果菜類を屋外からの自然光があたる場所に配置し、夜間は果菜類をLED61からの光があたらない場所に配置する必要がある。
【0031】
(本発明に係る構成等)
以下、上記に説明した構成のうち本発明に係る構成およびこの構成から得られる作用効果について説明する。
【0032】
図1および図2に示すように、植物育成空間の制御システム100は、建物200内及び屋外の環境を測定する検知手段20,30,40と、前記検知手段20,30,40による検知結果に従って前記建物200内に設置された空調装置50と前記建物200内または屋外に設置された設備機器60を制御する制御手段11と、を備えている。そして、前記空調装置50が設置された植物を育成する植物栽培室210が前記建物200内に設けられている。前記検知手段30は該植物栽培室210内の環境を測定し、前記制御手段11は、前記検知手段30による前記植物栽培室210内の検知結果に従って前記植物栽培室210内の植物の成長に最適な環境を、前記空調装置50よりも優先して、前記建物200内または屋外の環境から取り込むよう前記設備機器60を制御する。
【0033】
例えば、前記植物栽培室210において、果菜類のトマトと葉菜類のほうれん草を栽培していると仮定する。図5および図6に示すように、制御手段11は、定期的に、外部サーバ80から植物の最適環境情報を取得し、屋外及び室内の植物栽培室210、部屋220,230,240の環境情報を取得する(ステップS1)。ここで、制御部11は、外部サーバ80から取得した(1)トマトの最適室温は20度〜25度、最適湿度は50〜70%、最適照度は70〜80klxであり、(2)ほうれん草の最適室温は15度〜20度、最適湿度は70〜80%、最適照度は20〜30klxであることを記憶部13に記憶する。
次に、室内センサー30、40で測定された室内環境と屋外センサー20で測定された屋外環境とを比較する(ステップS2)。図5に示す例では、トマトとほうれん草との共通する適温は20度である。これに対して、植物栽培室210の室温は15度である。屋外の気温(外気温)が23度であり、トマトとほうれん草との前記共通する適温20度に外気温が近いため、開口部をあける(ステップS3、S4)。すなわち、制御手段11は、窓210aを開けるよう開閉手段66を駆動制御する。また、制御手段11は、電動シャッター62aが開いていない場合、電動シャッター62aを開けるよう電動シャッター62aの駆動部(図示せず)を駆動制御する。これにより、植物栽培室210に外気を取り入れ、植物栽培室210の室温を適温20度に自動的に近づけることができる。なお、部屋220及び屋外の気温が適温の範囲内にない場合は、空調装置50を運転し、適温に近づける(ステップS5)。
【0034】
本構成によれば、前記制御手段11は、前記検知手段30による前記植物栽培室210内の検知結果に従って前記植物栽培室210内の植物の成長に最適な環境を、前記空調装置50よりも優先して、前記建物200内または屋外の環境から取り込むよう前記設備機器60を制御するので、前記空調装置50を最小限に抑えつつ、前記建物200内または屋外の環境から取り込むことが可能になる。したがって、省エネを図りつつ、植物の育成空間の環境を最適な育成環境に自動的に近づけることができる。
【0035】
ここで、前記空調装置50は継続的に電力を使用する機器であり、前記設備機器60は一時的に電力を使用する機器62,66であるとする。例えば、上記例では、電動シャッター62a、開閉手段66が一時的に電力を使用する前記設備機器60に相当する。
【0036】
本構成によれば、前記空調装置50は継続的に電力を使用する機器であり、前記設備機器60は一時的に電力を使用する機器62,66であり、前記空調装置50よりも優先して、前記設備機器60を使用することにより植物の育成空間の環境を最適な育成環境に自動的に近づける際の電力消費量を低減できるため、CO排出量を削減できる。
【0037】
次に、例えば、図1、図2、図6に示すように、前記建物200には、太陽光発電装置64及び太陽光発電装置64から出力された直流を蓄電可能な蓄電池65が設置され、前記植物栽培室210には、LED61が設置されており、前記制御手段11は、前記植物栽培室210において前記検知手段20により測定された屋外からの採光の照度が不足していると判断した場合、前記蓄電池65から前記LED61に電力を供給させ、LED61を点灯させる(ステップS6、S7)。図5に示す例では、屋外環境の照度が50klxであり、トマトの最適照度70klxに満たないため、LED61を点灯し、トマトの最適照度70〜80klxになるように、制御手段11は、蓄電池65からLED61へ電力を供給させ、LED61の照度が最適照度70〜80klxになるように制御する。
【0038】
本構成によれば、前記建物200には、太陽光発電装置64及び太陽光発電装置64から出力された直流を蓄電可能な蓄電池65が設置され、前記植物栽培室210には、LED61が設置されており、前記制御手段11は、前記植物栽培室210において前記検知手段20により測定された屋外からの採光の照度が不足していると判断した場合、前記蓄電池65から前記LED61に電力を供給させ、LED61を点灯させることにより、例えば、昼間に太陽光発電装置64から出力された直流を蓄電池65に供給し、蓄電池65を充電し、夜間等に蓄電池65からLED61に電力を供給可能となるため、CO排出量を削減でき、かつ、直物の生育等に必要な照度を維持することができる。
【0039】
次に、例えば、図1、図2、図3、図6に示すように、前記設備機器60は前記植物栽培室210の屋外側に設けられた遮蔽手段62aであり、前記植物栽培室210には、植物の種類によって区分けされたプランター70と、前記設備機器60として前記プランター70を移動する移動手段63とが設けられ、前記プランター70には、前記植物(葉菜類等、果菜類)の光合成の速度を検出する検出手段71が設置されており、前記制御手段11は、前記検出手段71により検出された前記植物(葉菜類等、果菜類)の光合成の速度に応じて、移動手段63により自動的にプランター70の場所を移動させ、または、遮蔽手段62の開閉を制御する。ここで、複数のプランター70は、植物の種類(例えば、果菜類と葉菜類)毎に、棚73または仕切り63a,63bによって区分けされている。例えば、図3に示すように、棚73は、複数のプランター70を置くことができ、移動手段63上に置かれ、図2に示すように、仕切り63aは、移動手段63上に周方向に所定間隔で設置されるものであり、周方向に隣り合う仕切り63a,63a間に同種類または類似の種類の植物が植えられたプランター70が設置されるようになっている。また、仕切り63bは、移動手段63の中央部の床上に配置されるものがあり、窓210aと窓220aの中間位置に当該窓210a,220aと平行に設置されている。棚73は、移動手段63上に多くのプランター70を置きたい場合に使用される。また、仕切り63a、63bは、例えば、十分な光が必要な果菜類と果菜類より弱い光が必要な葉菜類とを区分けして、光を調整するために使用される。
光合成の速度の単位は、例えば、酸素の発生量/時間で表せる。ここで、図3(c)に示すように、光合成の速度を測定する検出手段73をプランター70(葉菜類のほうれん草、果菜類のトマト)毎に取付ける。この場合、検出手段73は、無線で、制御手段11へ光合成の速度の情報を制御手段11へ送信する。例えば、トマトとほうれん草とでは、図5に示すように、ほうれん草よりトマトの方が最適照度が高いため、トマトのプランター70に設置された検出手段73により検出された光合成の速度が低い場合、トマトを窓210aまたは窓210bのいずれかに近づくように、制御手段11は、移動手段63を回転制御し、または、遮蔽手段62aを開くように制御する。光合成の速度は照度に比例するため、予め測定データを記憶手段13に記憶しておく。そして、制御手段11は、検出手段71により検出された検出結果と記憶手段13に記憶された光合成の速度を比較し、光合成速度が低い場合は、移動手段63を回転駆動する。例えば、太陽の移動により光合成速度が低くなった場合は、移動手段63を反時計回りに回転する。
【0040】
本構成によれば、前記制御手段11が、前記検出手段71により検出された前記植物(葉菜類等、果菜類)の光合成の速度に応じて、移動手段63により自動的にプランター70の場所を移動させ、または、遮蔽手段62aの開閉を制御することにより、例えば、太陽の動きにより屋外からの採光の照度が不足している場合、太陽の動く方向に応じてプランター70を移動することにより照度の不足を解消できるため、直物の生育等に必要な照度を維持することができる。
また、仕切り63a,63bによって、複数のプランター70が種類によって区分けされているので、太陽光またはLED61の光を所望のプランター70、つまり所望の種類の植物に当てることができる。
【0041】
次に、例えば、図1、図2、図6に示すように、前記植物栽培室210と前記植物栽培室210の隣の部屋220との間に設けられた前記植物栽培室210からの光を遮断可能な遮蔽手段62bを更に備え、前記検知手段40は前記植物栽培室210の隣の部屋220に人が滞在しているか検知し、前記制御手段11は人が滞在していると検知した場合、人の滞在する部屋220に前記植物栽培室210から光が漏れないように遮蔽手段62bを制御する。例えば、夜間にLED61を点灯しているときに、制御手段11は、人感センサー44により部屋220に人が滞在していることを検出し、かつ、所定の時間(例えば、夜10時)になると遮蔽手段62bを閉めて、前記植物栽培室210の光が部屋220に漏れないようにする(ステップS8、S9)。
【0042】
本構成によれば、前記制御手段11は人が滞在していると検知した場合、人の滞在する部屋220に前記植物栽培室210から光が漏れないように前記植物栽培室210からの光を遮断可能な遮蔽手段62bを制御することにより、前記植物栽培室210から隣の部屋220へ光が漏れないため、例えば、夜間にLED61を点灯しているときに、所定の時間(例えば、夜10時)になると遮蔽手段62bを制御して、前記植物栽培室210から隣の部屋220へ光が漏れないようにすることができ、隣の部屋220に滞在している人にLED61を点灯による影響を与えることを防止できる。
【0043】
次に、例えば、図1、図2に示すように、前記植物栽培室210と前記植物栽培室210の隣の部屋220間に設けられた窓220aの開閉を制御する開閉手段66を更に備え、前記検知手段40は前記部屋220のCOの濃度を測定し、前記制御手段11は、COの濃度が一定値以上の場合、前記窓220aを開くよう開閉手段66を制御する。ここで、前記窓220aは、はき出し窓を想定している。一方、前記植物栽培室210のCOの濃度は植物の光合成により減少し、前記隣の部屋220のCOの濃度は人が滞在していると相対的に高くなるので、このCOが前記植物栽培室210に流入する。例えば、トマトとほうれん草が光合成をしている昼間の時間帯で、部屋220のCOの濃度が一定値(例えば、1000ppm)以上の場合、開閉手段66を駆動して窓220aを開けることにより、部屋220のCOを含む空気を植物栽培室210へ流入させることができる。
【0044】
本構成によれば、前記制御手段11は、COの濃度が一定値以上の場合、前記部屋220内の空気を前記植物栽培室210に流入させるよう開閉手段66を制御することにより、植物が光合成によりCOからOを発生できるため、CO排出量を削減でき、かつ、直物の生育等に必要な環境を維持することができる。
【符号の説明】
【0045】
11 制御手段
20 検知手段
20,30,40 検知手段
50 空調装置
60 設備機器
61 LED
62 遮蔽手段
63 移動手段
64 太陽光発電装置
65 蓄電池
66 開閉手段
70 プランター
71 検出手段
100 制御システム
200 建物
210 植物栽培室
220,230,240 部屋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内及び屋外の環境を測定する検知手段と、
前記検知手段による検知結果に従って前記建物内に設置された空調装置と前記建物内または屋外に設置された設備機器を制御する制御手段と、
を備え、
前記空調装置が設置された植物を育成する植物栽培室が前記建物内に設けられ、
前記検知手段は該植物栽培室内の環境を測定し、
前記制御手段は、前記検知手段による前記植物栽培室内の検知結果に従って前記植物栽培室内の植物の成長に最適な環境を、
前記空調装置よりも優先して、前記建物内または屋外の環境から取り込むよう前記設備機器を制御することを特徴とする植物育成空間の制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の植物育成空間の制御システムにおいて、
前記空調装置は継続的に電力を使用する機器であり、
前記設備機器は一時的に電力を使用する機器であることを特徴とする植物育成空間の制御システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の植物育成空間の制御システムにおいて、
前記建物には、太陽光発電装置及び太陽光発電装置から出力された直流を蓄電可能な蓄電池が設置され、前記植物栽培室には、LEDが設置されており、
前記制御手段は、前記植物栽培室において前記検知手段により測定された屋外からの採光の照度が不足していると判断した場合、前記蓄電池からLEDに電力を供給させ、LEDを点灯させることを特徴とする植物育成空間の制御システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の植物育成空間の制御システムにおいて、
前記設備機器は前記植物栽培室の屋外側に設けられた屋外からの光を遮断可能な遮蔽手段であり、
前記植物栽培室には、植物の種類によって区分けされた複数のプランターと、前記設備機器として前記プランターを移動する移動手段とが設けられ、前記プランターには、前記植物の光合成の速度を検出する検出手段が設置されており、
前記制御手段は、前記検出手段により検出された前記植物の光合成の速度に応じて、移動手段により自動的にプランターの場所を移動させ、または、遮蔽手段の開閉を制御することを特徴とする植物育成空間の制御システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の植物育成空間の制御システムにおいて、
前記植物栽培室と前記植物栽培室の隣の部屋との間に設けられた前記植物栽培室からの光を遮断可能な遮蔽手段を更に備え、
前記検知手段は前記植物栽培室の隣の部屋に人が滞在しているか検知し、
前記制御手段は人が滞在していると検知した場合、人の滞在する部屋に前記植物栽培室から光が漏れないように遮蔽手段を制御することを特徴とする植物育成空間の制御システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の植物育成空間の制御システムにおいて、
前記植物栽培室と前記植物栽培室の隣の部屋間に設けられた窓の開閉を制御する開閉手段を更に備え、
前記検知手段は前記部屋のCOの濃度を測定し、
前記制御手段は、COの濃度が一定値以上の場合、前記窓を開くよう開閉手段を制御することを特徴とする植物育成空間の制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−5772(P2013−5772A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141649(P2011−141649)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【Fターム(参考)】