説明

検体処理システム

【課題】オペレータの作業の無駄時間を短縮し作業効率を向上させることができる検体処理システムを提供する。
【解決手段】検体投入ユニット11と、検体投入ユニットに投入された検体を自動分析装置40又はオフラインの分析装置での分析に適した態様にする前処理ユニット12−16と、前処理ユニットで前処理の完了した検体を自動分析装置へ搬送する搬送ライン19と、空のラックを収納する検体収納ユニット17と、オフラインの分析装置で分析する緊急検体につき、少なくとも検体投入時に入力される検体投入ユニット11からの信号と前処理完了時に入力される前処理ユニット12−16からの信号を基に、報告動作を指示する指示信号を生成する情報処理部30と、情報処理部からの指示信号にしたがって緊急検体が投入されたことと前処理が完了したことを随時報知する報知手段31,32,60とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は臨床検査に供される血液や尿等の検体を処理する検体処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査に供される血液や尿等の検体を分析装置で分析する場合、検体の遠心分離、各分析装置の専用の容器への検体の分注、必要な識別情報の検体容器への貼付等、依頼内容によって適宜前処理が必要になる。近年、多くの病院や検査センター等で、検査の省力化・効率化のためにこのような前処理を行う検体処理システムが導入されつつある。この種の検体処理システムでは、装置を操作するオペレータの業務効率の改善のために様々な改良が加えられてきているが、その一つに、投入された検体について過去の統計データや処理条件(依頼内容)を基にその処理に要する時間の推測値を算出するものがある(特許文献1等参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−156380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
緊急検体が発生した場合、実際の病院や検査センター等において検体処理システムで前処理する検体は、特に緊急を要求さない一般検体ばかりでなく、診療スケジュールの変動や急診等によって一般検体に優先して分析しなければならない緊急検体も存在する。また、投入された検体は、検体処理システムに接続された分析装置(オンライン分析装置)に全てが供されるとは限らず、検体処理システムに接続されていない分析装置(オフライン分析装置)で分析するための前処理のために検体処理システムに投入される場合もある。
【0005】
緊急検体であっても、オンライン分析装置で分析される場合には、前処理完了後、オンライン分析装置に自動的に搬送されて分析工程に移行するが、オフラインの分析装置で分析される場合は、前処理完了後、検体処理システムから目的の検体を取り出してオフラインの分析装置に人手で搬送する必要がある。そのため、オフラインの分析装置で分析する緊急検体が投入された場合、検体の分析をできる限り迅速にするため前処理が完了するまで緊急検体の処理状況を監視していなければならず、オペレータの作業に無駄時間(待ち時間)が生じていた。
【0006】
前出の特許文献1に開示された技術によれば、特に緊急を要求さない一般検体ばかりを前処理する場合には各検体の処理完了時刻の目安を知ることができるが、実際には一般検体に混在してこのような緊急検体が突発的に発生する場合があり、目的の緊急検体の状況把握が必ずしも容易ではない。また、演算される処理時間はあくまで過去の統計に基づく推定値であって実際の処理状況とは必ずしも一致しないため、前処理完了時刻に適時に緊急検体を取りに行くことも難しい。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたもので、オペレータの作業の無駄時間を短縮し作業効率を向上させることができる検体処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明によれば、検体の入った容器が架設されたラックが投入される検体投入ユニットと、検体投入ユニットに投入された検体を前記自動分析装置又はオフラインの分析装置での分析に適した態様にする少なくとも1つの前処理ユニットと、前処理ユニットで前処理の完了した検体を自動分析装置へ搬送する搬送ラインと、空のラックを収納する検体収納ユニットと、検体投入ユニットに投入された検体がオフラインの分析装置で分析する緊急検体であることを検知する緊急検体検知手段と、緊急検体検知手段で検知された緊急検体につき、少なくとも検体投入時に入力される検体投入ユニットからの信号と前処理完了時に入力される前処理ユニットからの信号を基に、報告動作を指示する指示信号を生成する情報処理部と、緊急検体につき少なくとも緊急検体投入時と前処理完了時にそれぞれ入力される情報処理部からの指示信号にしたがって、緊急検体が投入されたことと前処理が完了したことを随時報知する報知手段とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、オペレータの作業の無駄時間を短縮し作業効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
図1は本発明の検体処理システムの一実施の形態を採用したオンラインシステムの一構成例を表すブロック図である。
【0012】
図1に示したオンラインシステムは、検体を自動分析する自動分析装置40と、検体を分析に適した態様にして(前処理して)自動分析装置40に供給する検体処理システム100とを備えている。
【0013】
検体処理システム100は、検体投入ユニット11、遠心分離ユニット12、オンライン分注ユニット13、バーコード貼り付けユニット14、検体分類ユニット15、オフライン分注ユニット16、検体収納ユニット17、バッファユニット18、搬送ライン19、情報処理装置30備えている。各ユニット11−18は情報処理部30に対して検体の到着・処理終了及び処理アラームを報知する。このうち、ユニット12−16は自動分析装置40やオフラインの分析装置での分析に適した態様に検体を前処理する前処理ユニットを構成する。特に図示していないが、これらユニット12−15の他、検体容器を開栓する開栓ユニット等の他のユニットが前処理ユニットとして設置される場合がある。また、オフラインの分析装置で分析する検体を前処理する場合、依頼内容にもよるが検体分類ユニット15かオフライン分注ユニット16の処理が完了したら、処理完了した検体はオフラインの分析装置に人手で搬送される。
【0014】
検体投入ユニット11は、検体の入った検体容器が複数架設されたラックを投入するユニットであり、オンラインシステムの入口をなしている。この検体投入ユニット11には2種類の投入口20,21が備えられており、投入口20は特に緊急に分析する必要のない一般検体を主に投入する投入口で、投入口21は緊急に分析する必要のある緊急検体専用の投入口である。検体容器又はラックには、上位システム(不図示)で医師等の依頼内容に基づく識別情報(検体ID・検査項目・必要な前処理・検体種類(緊急/一般)等)が記録されたバーコード(不図示)が貼付されている(バーコードは検体容器に直接印刷することもできる)。特に図示していないが、例えば投入口20,21には識別情報読取手段(バーコードリーダ等)が設置されており、識別情報読取手段で読み取った識別情報を基に検体が一般検体か緊急検体から識別される。つまり、この識別情報読取手段が検体投入ユニット11に投入された検体がオフラインの分析装置で分析する緊急検体であることを検知する緊急検体検知手段を構成する。また、緊急検体用の投入口21に投入された検体については、仮に読み取られた識別情報には緊急検体である旨の情報が含まれていなくても、投入口21に投入されたことをもって緊急検体として管理される。
【0015】
こうして投入口20,21に投入された検体のうち緊急検体として管理されることとなった検体は、他の一般検体に優先してその後の前処理が進められる。バーコードに依頼情報が記録されていない場合、印刷状態・貼付状態等が悪くバーコードが読めない場合等は、検体投入ユニット11はその検体容器を受け入れない。なお、識別情報はバーコードに記録する場合に限らず、ICタグ等の半導体記録媒体に記録して検体容器やラックに貼付することもできる。
【0016】
遠心分離ユニット12は、検体投入ユニット11に投入された検体を遠心分離にかけて目的成分(例えば検体が血液であれば血餅や血しょう等)を抽出するユニットである。
【0017】
オンライン分注ユニット13は、遠心分離ユニット12で抽出した成分を自動分析装置40用のサンプルカップ(不図示)に分注するユニットである。また、自動分析装置40でなくオフラインの(オンラインシステムの外部の)分析装置や外部委託分析施設で分析する検体のうち分注する容器が指定されておらず予め用意されている汎用の容器(試験管等)に分注すれば足りる検体、分注後の子検体に識別情報を貼付したい検体、或いは保存しておく検体についても、検体の識別情報を基にこのオンライン分注ユニット13によって分注される。
【0018】
バーコード貼付ユニット14は、オンライン分注ユニット13で、オフライン分析用に分注された子検体の容器に対し、識別情報に要求がある場合はその識別情報を基に親検体と同じ内容の識別情報を貼付するユニットである。ここで子検体容器に貼付する識別情報も、バーコードの他、半導体記憶媒体を使用することができる。
【0019】
検体分類ユニット15は、オフライン分析用に分注された子検体の容器を識別し抜き出すユニットである。
【0020】
オフライン分注ユニット16は、自動分析装置40でなくオフラインの(オンラインシステムの外部の)分析装置や外部委託分析施設で分析する検体のうち持ち出し先で容器が指定されている場合、検体の識別情報を基に指定の容器に検体を分注するユニットである。
【0021】
検体収納ユニット17は、ここまでのユニット11−16による処理工程で発生した空のラックを回収するユニットである。
【0022】
搬送ライン19は、前処理ユニット12−15で前処理が完了した検体を自動分析装置40へ搬送する。搬送ライン19は3つのラインに分岐し、3つの自動分析装置40にそれぞれ接続している。3つの自動分析装置40に接続する各ラインには上記バッファユニット18が設けられており、各自動分析装置40に搬送される分析待ちの検体はバッファユニット18で待機する。自動分析装置40では生化学分析・臨床検査等の検査が自動的に行われ、その検査結果が情報処理部30に出力される。
【0023】
そして、特に図示していないが、各前処理ユニット11−18には、識別情報読取手段(例えばバーコードリーダ)と、各々の動作を制御する制御コンピュータと、報知手段としてのシグナルタワー(表示灯)60とを備えている。シグナルタワー60は、点灯色、点灯/点滅の間隔を切り換え可能である。
【0024】
情報処理部30は、自動分析装置40及び検体処理システム100との間で信号を授受し自動分析装置40及び検体処理システム100の動作を制御するものであり、この情報処理部30には、報知音のメロディ、周波数、発生間隔を切り換え可能なスピーカー31、緊急検体の処理進捗を帳票出力するプリンタ32及び緊急検体の処理進捗を表示可能なモニタ(不図示)が報知手段として接続されている。
【0025】
図2は情報処理部30の機能ブロック図である。
【0026】
情報処理部30は、緊急検体検知手段でオフラインの分析装置で分析する緊急検体として検知された緊急検体につき、少なくとも検体投入時に入力される検体投入ユニットからの出力信号と前処理完了時に入力される前処理ユニットからの出力信号を基に、当該緊急検体の処理状況を監視する機能を果たす。図2に示したように、情報処理部30は、各ユニット11−18、搬送ライン19及び自動分析装置40の各制御コンピュータとの間で通信ライン50を介して信号を授受するユニット通信処理部93と、各ユニット11−18の処理情報や自動分析装置40の分析結果を記憶する処理情報データベース90と、各報知手段の動作の設定情報を記憶した設定情報データベース91と、各報知手段に出力する信号の生成・出力をする報告処理部94と、検体の各種識別情報を記憶した検体情報データベース92とを備えている。
【0027】
ユニット通信処理部93は、各ユニット11−18、搬送ライン19及び自動分析装置40から検体の到着の報告信号や到着した検体の識別情報、処理完了の信号等を入力し、図示しない制御演算部や報告処理部94からの動作指令信号等を各ユニット11−18、搬送ライン19及び自動分析装置40に出力する。報告書リブ94からの動作指令信号を受けたユニットの制御コンピュータは、対応するシグナルタワー60に動作指令信号を出力し、シグナルタワー60に報告動作をさせる。
【0028】
処理情報データベース90には、ユニット通信処理部93を介して入力された各ユニット11−18、搬送ライン19及び自動分析装置40から検体の到着の報告信号や到着した検体の識別情報、処理完了の信号等が記録され、検体ID毎に履歴(処理の進捗情報)が蓄積される。この情報は情報処理部30のモニタに呼び出して確認することができる。例えば検体(緊急検体)の処理状況を表示させた場合の処理状況表示画面81の一構成例を図3に示す。図3の例では、検体ID、検体種別(緊急/一般)、各ユニットにおける処理の要否(有無)、到着時刻、終了時刻、報告済みか否か、アラーム(処理エラー等)の発生の有無等で進捗状況を確認することができる。
【0029】
設定情報データベース91には、例えば図4に例示したような報告手段設定画面80で設定された、スピーカー31の発生音、プリンタ32の出力内容、シグナルタワー60の点灯条件等が格納される。報告手手段設定画面80は、例えば情報処理部30のモニタに表示される。図4の報告手段設定画面80では、ユニットを指定して、到着報告・処理終了報告・処理アラーム報告のそれぞれの報告方法、処理アラーム報告の報告方法、消耗品補充予告の要否等を設定することができる。図4の報告手段設定画面80では、検体投入ユニット11を指定して、緊急検体が到着した場合にシグナルタワー60を点灯パターン「B」で5秒間点灯させ、プリンタ32にも合わせて緊急検体が検体投入ユニット11に投入された旨を出力するように設定した例を示している。またこの例では、緊急検体の処理終了は、いずれの報知手段も作動させない設定となっている。また、図4の例では、処理エラーが発生した場合等に生じる処理アラームは、予め登録されたパターンの中から選択して設定するようになっている。図4ではスピーカー31を音色Aで10秒間鳴動させるパターン(1001)と、シグナルタワー60を点灯パターンBで10秒間点灯させるパターン(1002)が選択肢として示されている。また、消耗品の残量が減少してきたら、スピーカー31を音色Bで5秒間鳴動させて補充予告する設定となっている。スピーカー31のアラーム音、シグナルタワー60の点灯は、その報告の要否の重要度に応じて動作時間を任意に設定することができ、その報知に気付いてオペレータが停止処理をするまで動作し続けるように設定することも可能であるものとする。
【0030】
報告処理部94は、ユニット通信処理部93を介して入力される各ユニットからの緊急検体の到着や処理終了、処理アラームの信号を入力すると、その信号の出力元のユニットについて設定された報告方法の設定を設定情報データベース91から読み出し、読み出した設定に応じてスピーカー31、プリンタ32、シグナルタワー60、或いはモニタに信号を出力し、オペレータに報知する。
【0031】
検体情報データベース92には、各検体に関する依頼情報が格納される。各検体に関する依頼情報は、検体容器又はラックに識別情報とともに付しておき、検体投入ユニット11に投入された際に検体投入ユニット11の識別情報読取手段で読み取られ、ユニット通信処理部93を介して受け取るようにすることもできるし、上位システム又は情報処理部30で検体ID毎に入力するようにすることもできる。
【0032】
次に本実施の形態の検体処理システムを用いたオンラインシステムの動作を説明する。
【0033】
前処理ユニット11−17では、識別情報読取手段で識別情報を読み取ることで、当該識別情報の付された検体容器の到着を認識し、検体の到着と到着した検体の識別情報が自己の持つ制御コンピュータに送信される。制御コンピュータは、受け取った情報を自己の記憶部に記憶するとともに情報処理部30に送信する。情報処理部30では、各ユニットから送られてくる情報がユニット通信処理部93を介して入力され、処理情報データベース90に格納される。このとき、情報処理部30は、識別情報を基に緊急検体(特にオフラインの分析装置で分析するもの)と認識したIDの検体については、各ユニットにその検体が到着した際に、そのユニットに関し、検体到着時・処理終了時の報告、報告アラーム、消耗品補充予告の要否及び必要な場合の報告方法を設定情報データベース91から参照し、参照した設定情報を基にユニット通信処理部93を介して入力された各ユニットの緊急検体の処理進捗に応じて報知手段31,32,60への動作指示信号を適宜生成し出力する。投入された検体が緊急検体か一般検体かの識別は、検体投入ユニット11に検体が投入された際、識別情報読取手段で読み取られた識別情報に緊急検体であるとの情報が含まれている場合、或いはその緊急検体が緊急検体用の投入口21から投入された場合に、緊急検体と識別される。緊急検体と識別された検体は、その後の処理も優先的に進められ、依頼情報を基に必要なユニットに立ち寄って必要な処理を施され、その進捗が報知手段31,32,60により報知される。この進捗状況は、図3の処理状況表示画面81を適宜呼び出して確認することができる。
【0034】
また、立ち寄ったユニットで処理エラー等によって発生したアラーム情報も処理履歴情報とともに処理情報データベース90に保存される。処理アラームの発生についても、処理終了報告と同様に設定情報データベース91のシグナルタワー設定情報及びアラーム音設定情報を参照し、スピーカー31、プリンタ32、シグナルタワー60に対して動作指示を適宜出力し、オペレータに報告する。
【0035】
図5は検体投入ユニット11における報告処理の一例であり、図5(a)は検体到着時の報告処理を例示している。
【0036】
図5(a)に示した例では、検体投入ユニット11に対し、処理進捗状況の報告の設定が次のように設定されている。
【0037】
・ユニット名称:検体投入ユニット
・到着報告:有(シグナルタワー起動)
・終了報告:無
・処理アラーム報告:無
・消耗品補充予告:有(スピーカー起動)
この場合、オペレータは、緊急検体を検体投入ユニット11に投入した後、情報処理部30の設定情報データベース91に格納されたシグナルタワー設定情報に基づき、検体投入ユニット11のシグナルタワー60の点灯により緊急検体の到着報告を受ける。一般検体が投入された場合は、オペレータへの報告はされない。
【0038】
ここでは検体投入ユニット11の設定を例に挙げて説明しているが、こうした報告処理が各ユニットの緊急検体到着時・処理終了時になされるように設定されている。
【0039】
また、図5(b)は消耗品補充予告の報告処理を例示している。
【0040】
検体が検体投入ユニット11に投入された時点でその後のユニットの予定負荷(処理回数)が判るので、オンライン分注ユニット13、バーコード貼り付けユニット14、検体分類ユニット15及びオフライン分注ユニット16等において、既に予定された処理の回数に対して消耗品の残量や容器の残使用回数が予め設定した閾値を下回った場合には、消耗品補充予告としてスピーカー31が鳴動する。この場合は緊急検体の投入のみならず、一般検体の投入によってスピーカー31が鳴動させるようにすることもできる。
【0041】
図6は検体分類ユニット15における報告処理の一例である。
【0042】
図6に示した例では、検体分類ユニット15に対し、処理進捗状況の報告の設定が次のように設定されている。
【0043】
・ユニット名称:検体分類ユニット
・到着報告:無
・終了報告:有(シグナルタワー起動)
・処理アラーム報告:無
この場合、オペレータは、検体分類ユニット15における緊急検体の処理終了時に、情報処理部30の設定情報データベース91に格納されたシグナルタワー設定情報に基づき、検体分類ユニット15のシグナルタワー60の点灯により緊急検体の処理終了報告を受ける。
【0044】
一般検体については、規定検体数の分類後に発生する分類トレイ交換要求アラームで終了を知ることができる。このとき、緊急検体の処理進捗の報知態様を一般検体の処理進捗の報知内容と異なるものとしておくことにより、報知された検体が一般検体か緊急検体かを容易に判別することができる。
【0045】
図7はオフライン分注ユニット16における報告処理の一例であり、図7(a)は処理終了時の報告処理を例示している。
【0046】
図7(a)に示した例では、オフライン分注ユニット16に対し、処理進捗状況の報告の設定が次のように設定されている。
【0047】
・ユニット名称:オフライン分注ユニット
・到着報告:無
・終了報告:有(シグナルタワー起動)
・処理アラーム報告:有(スピーカー起動)
この場合、オペレータは、オフライン分注ユニット16における緊急検体の処理が完了したら、情報処理部30の設定情報データベース91に格納されたシグナルタワー設定情報に基づき、オフライン分注ユニット16のシグナルタワー60の点灯により緊急検体の処理終了報告を受ける。一般検体が投入された場合は、オペレータへの報告はされない。
【0048】
また、分注エラー等の処理アラームが発生した場合、情報処理部30の設定情報データベース91に格納されたアラーム音設定情報に基づき、図7(b)に示したように情報処理部30のスピーカー31のアラーム音によりオペレータに報告される。処理アラームの発生は、一般検体と緊急検体の区別なく報告されるようにすることができる。緊急検体と一般検体の両方で処理アラームの報告がなされる場合、アラームのメロディや周波数、発生間隔を切り替えることにより検体の種類が判別できるようにすることができる。例えばシグナルタワー60で処理アラームの発生を報知する場合、点等・点滅のパターンや点灯色を切り替えることにより検体の種類が判別できるようにすることができる。
【0049】
図8は検体収納ユニット17における報告処理の一例である。
【0050】
図8に示した例では、検体収納ユニット17に対し、処理進捗状況の報告の設定が次のように設定されている。
【0051】
・ユニット名称:検体収納ユニット
・到着報告:有(シグナルタワー起動)
・終了報告:無
・処理アラーム報告:無
この場合、各ユニットの停止等でリセットとなった検体が到着した場合、検体収納ユニット17から出力される検体到着情報を基に、オペレータにリセット検体の到着の報告がなされる。
【0052】
以上の本実施の形態の検体処理システムによれば次のような効果が得られる。
【0053】
一般に、検体処理システムでは、これに接続されて検体の移動が自動化されている分析装置(オンライン分析装置)だけでなく、検体処理システムに接続されていない分析装置(オフライン分析装置)の前処理工程も行うことができる。検体処理システムにおけるオフライン分析装置用の前処理工程終了後は、オペレータが検体をオフラインの分析装置に手動でセットする後工程を行い分析処理される。
【0054】
そのため、緊急検体投入時には自動化対象外の分析装置へ検体を移動させるまでの間、緊急検体の前処理の進捗を常時又は定期的にオペレータが監視していなければならず、他の業務に従事できない無駄時間が生じていた。また、検査結果の緊急性を要求される緊急検体はいつ発生するかわからないため、通常のスピードで処理される一般検体の処理中にもシステムに投入されることになる。一般検体の間に緊急検体が混在しているため、検体の状況把握をより困難にしている。
【0055】
それに対し、本実施の形態によれば、各前処理ユニット11−18で緊急検体の到着や処理の進捗がオペレータに報知されるので、緊急検体の進捗状況やオフラインの分析装置用の前処理が完了したことをオペレータは随時知ることができる。また、処理完了の推定時刻を算出し処理完了時刻の目安を知らせる場合、外乱の発生やシステムの負荷、消耗品の補充、容器交換等により推定時刻と実際の処理完了時刻の誤差が生じ、結果的には多くの無駄時間が生じることがある。それに対し、本実施の形態の場合、実際の処理完了とともにその事実を報知するので、無駄時間を効果的に短縮し、検査室における作業効率の向上を図ることができる。
【0056】
また、リセット検体が発生した場合、検体収納ユニット17にリセット検体の到着を報知させることで、検体の再投入がスムーズに行えるようになり処理の遅延を防止することができる。
【0057】
また、消耗品の補充や容器交換の必要性が随時予告されることで、消耗品の補充や容器交換の準備がスムーズに行えるようになり、緊急検体処理のスピードアップにつながる。
【0058】
なお、以上においては、遠心分離ユニット12、オンライン分注ユニット13、バーコード貼付ユニット14、検体分類ユニット15、オフライン分注ユニット16等の複数の前処理ユニットを備えた検体処理システムを例に挙げて説明したが、必要なユニットさえ備えられていれば一ユニットのみで前処理ユニットを構成することもあり得る。
【0059】
また、情報処理部30は、各前処理ユニットの検体の受け入れや処理終了をリアルタイムで報知する構成としたが、例えば検体投入ユニット11に緊急検体が投入されたことを報知すればオンラインシステムに緊急検体が投入された事実をオペレータが把握することができ、その緊急検体をオフラインの分析装置で分析する場合、前処理ユニットのうちの依頼内容の最終工程に指定されているユニット(例えば検体分類ユニット15かオフライン分注ユニット16)の処理終了を報知すればオペレータはオフラインの分析装置への検体の移動準備の完了を知ることができる。したがって、報知手段を減少させる場合、又は情報処理部30の処理負担を軽減する場合、少なくとも検体投入時に入力される検体投入ユニット11からの出力信号と前処理完了時に入力される前処理ユニット(本例の場合、検体分類ユニット15かオフライン分注ユニット16)からの出力信号を基に、報知手段への報告動作を指示する指示信号を生成するように構成することもできる。
【0060】
また、緊急検体につき少なくとも緊急検体投入時と前処理完了時にそれぞれ入力される情報処理部30からの出力信号にしたがって、緊急検体が投入されたことと前処理が完了したことを随時報知する報知手段として、スピーカー31、プリンタ32、シグナルタワー60を例に挙げて説明したが、例えば情報処理部30や上位システムに備えたモニタに文字情報を組み合わせて適宜表示することにより緊急検体の到着や処理進捗を報知する構成とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の検体処理システムの一実施の形態を採用したオンラインシステムの一構成例を表すブロック図である。
【図2】情報処理部の機能ブロック図である。
【図3】検体の処理状況を表示する処理状況表示画面の一構成例を表す図である。
【図4】報知手段による報告態様を設定する報告手段設定画面の一構成例を表す図である。
【図5】検体投入ユニットにおける報告処理の一例である。
【図6】検体分類ユニット15における報告処理の一例である。
【図7】オフライン分注ユニット16における報告処理の一例である。
【図8】検体収納ユニット17における報告処理の一例である。
【符号の説明】
【0062】
11 検体投入ユニット
12 遠心分離ユニット
13 オンライン分注ユニット
14 バーコード貼り付けユニット
15 検体分類ユニット
16 オフライン分注ユニット
17 検体収納ユニット
18 バッファユニット
19 搬送ライン
20,21 投入口
30 情報処理装置
31 スピーカー
32 プリンタ
40 自動分析装置
50 通信ライン
60 シグナルタワー
80 報告手段設定画面
90 処理情報データベース
91 設定情報データベース
92 検体情報データベース
93 ユニット通信処理部
94 報告処理部
100 検体処理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体の入った容器が架設されたラックが投入される検体投入ユニットと、
前記検体投入ユニットに投入された検体を前記自動分析装置又はオフラインの分析装置での分析に適した態様にする少なくとも1つの前処理ユニットと、
前記前処理ユニットで前処理の完了した検体を自動分析装置へ搬送する搬送ラインと、
空のラックを収納する検体収納ユニットと、
前記検体投入ユニットに投入された検体が前記オフラインの分析装置で分析する緊急検体であることを検知する緊急検体検知手段と、
前記緊急検体検知手段で検知された緊急検体につき、少なくとも検体投入時に入力される前記検体投入ユニットからの信号と前処理完了時に入力される前記前処理ユニットからの信号を基に、報告動作を指示する指示信号を生成する情報処理部と、
前記緊急検体につき少なくとも緊急検体投入時と前処理完了時にそれぞれ入力される前記情報処理部からの指示信号にしたがって、緊急検体が投入されたことと前処理が完了したことを随時報知する報知手段と
を備えたことを特徴とする検体処理システム。
【請求項2】
請求項1の検体処理システムにおいて、前記情報処理部は、緊急検体の処理状況として、前記検体投入ユニット、前記前処理ユニットでの緊急検体の到着及び処理終了を前記報知手段に報知させることを特徴とする検体処理システム。
【請求項3】
請求項2の検体処理システムにおいて、前記情報処理部は、緊急検体の処理中に少なくとも前記検体投入ユニット及び前記前処理ユニットの消耗品の補充や容器交換の要否を前記報知手段に報知させることを特徴とする検体処理システム。
【請求項4】
請求項2又は3の検体処理システムにおいて、緊急検体検知手段は、前記検体投入ユニットに設けられ、前記検体に付された識別情報を読み取る識別情報読取手段であることを特徴とする検体処理システム。
【請求項5】
請求項2又は3の検体処理システムにおいて、前記報知手段は、前記情報処理部に接続され、報知音のメロディ、周波数、発生間隔を切り換え可能なスピーカーであることを特徴とする検体処理システム。
【請求項6】
請求項2又は3の検体処理システムにおいて、前記報知手段は、前記情報処理部に接続され、緊急検体の処理進捗を帳票出力するプリンタであることを特徴とする検体処理システム。
【請求項7】
請求項2又は3の検体処理システムにおいて、前記報知手段は、少なくとも前記検体投入ユニット及び前記前処理ユニットに設けられ、点灯色、点灯/点滅の間隔を切り換え可能な表示灯であることを特徴とする検体処理システム。
【請求項8】
請求項2又は3の検体処理システムにおいて、前記報知手段は、前記情報処理部に接続され、緊急検体の処理進捗を表示可能なモニタであることを特徴とする検体処理システム。
【請求項9】
請求項2又は3の検体処理システムにおいて、前記前処理ユニットとして、遠心分離ユニット、オンライン分注ユニット、バーコード貼り付けユニット、検体分類ユニット、オフライン分注ユニットを備えていることを特徴とする検体処理システム。
【請求項10】
請求項2又は3の検体処理システムにおいて、緊急検体の処理進捗の報知態様を一般検体の処理進捗の報知内容と異なるものとしたことを特徴とする検体処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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