説明

検体検出用チップ、それを用いたセンサ、及び検体検出方法

【課題】 異なる液体界面で順次送液する溶液間の拡散を防ぐことで感度の低下を抑制し、液滴中に含まれる検体を検出するセンサを提供する。
【解決手段】 溶媒中に懸濁した検体を検出するための検体検出用チップであって、前記溶媒の液滴を搬送するための搬送用電極を有する搬送用基板と、前記搬送用基板に対向する対向基板と、前記液滴が通過する、前記基板搬送用基板と前記対向基板との間に形成された流路と、前記流路の一部に設けられた、リガンドが固定化された固定部を備え、前記固定部に前記液滴が滞留することによって検体の検出を行うことを特徴とする検体検出用チップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中に含まれる特定の微量物質のみを分離、検出するための検体検出用センサに関し、特に、液滴を利用する検体検出用センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環境や医療分野にて、サンプル中に含まれる複合物質から特定の物質(以下、検体と記す)を検出するために、さまざまな方法が用いられてきた。近年では、Micro−TAS(Micro−Total Analysis Systems)やラボチップ(Lab−on−a−Chip)と呼ばれる分析装置が開発されている。
【0003】
特許文献1には、基板部、光硬化性樹脂製流路、光透過性のあるカバー基板より構成されたマイクロ流路デバイスであって、基板部とカバー基板との間に未硬化性樹脂を充填した後に、光硬化反応によって流路パターンを形成することにより、マイクロ流路を一体に構成するマイクロ流路デバイスが提案されている。また、特許文献2には、酵素を標識として用いて基質溶液を呈色させて、当該色の変化を測定する酵素免疫分析システムをマイクロチップ内に集積化する酵素免疫分析チップが提案されている。
【0004】
これらのデバイスでは、デバイス内に設けられた反応部や検出部へ、サンプルや反応溶液を順次送液する必要があるため、ポンプや、流路内での液体を制御するためのバルブ、毛管力などを利用した送液手段が用いられる。
【0005】
さらに非常に少量の液体または液滴を運ぶ方法として、圧電体膜に高周波信号を印加して表面波(Surface Acoustic Wave)を励振することを利用する方法、液滴と基板の間に電位差を与えて、液滴の基板に対する見掛けの濡れ性を変化させることを利用するエレクトロウェッティング(Electro Wetting、Electro Wetting On Dielectric)、静電場によって電場の強い部分もしくは弱い部分へ液滴を移動させる誘電泳動(Dielectrophoresis)などの方法を用いたデバイスも提案されている。(特許文献3、4参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2003−062823号公報(平成15年7月31日公開)
【特許文献2】特開2003−285298号公報(平成15年10月7日公開)
【特許文献3】特開2005−130851号公報(平成17年5月26日公開)
【特許文献4】特開2008−134152号公報(平成20年6月12日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2に示されたデバイスを用いて、サンプル中に含まれる様々な物質(以下、複合物質と記す)から検体のみを検出する場合、たとえば、先に流したサンプル溶液と、次に流した反応溶液との界面(液/液界面)で各々の溶液の拡散が起き、界面において溶液の濃度が変化し、正確に検体を検出できないといった問題が生じる。また、デバイス内に設けられた反応部及び検出部へ溶液を順次送液するためのポンプなどが必要となるため、装置自体が大掛かりになる。
【0008】
一方、上記特許文献3及び特許文献4に示されるような、拡散しない液滴を用いた搬送デバイスは、検査試薬が少量ですむ、反応時間が短縮されるなどのメリットはあるものの、リガンドを固定化しない反応または検出に用途が限られ、リガンドを固定化した場合は、液滴の搬送を阻害する虞がある。
【0009】
図13は、液滴、基板、気体あるいは液滴と交じり合わない液体との間の接触角について示した図である。液滴90は、液滴90と基板91の間の界面張力93、液滴90と気体、あるいは液滴と混じり合わない液体92との間の界面張力94、基板91と気体、あるいは液滴と混じり合わない液体92との間の界面張力95の3つの力が釣り合って形作られる。
【0010】
液滴90を搬送する場合、電気的制御を行っていない時の接触角は高いことが望ましいが、検体検出用デバイスを構成する固定部や検出部は液滴搬送に適した表面状態ではなく、それぞれの材料に依存した表面状態になっている。固定部や検出部の接触角がその他の流路面よりも低い、つまり基板に対して液滴が濡れやすい表面状態の場合、液滴90はその場に留まりやすく、搬送することが困難になる。
【0011】
そこで、液滴90の搬送を容易にするために、流路の表面を疎水性に保つ必要があるが、リガンドが固定化された部分(固定部)は、サンプルと反応させる必要があるため、その表面を疎水性にすることができない。このため、流路に面した固定部の状態が疎水性である他の部分と異なってしまうため、液滴90の搬送が円滑に行えず、また、流路の表面の疎水性が低下することによって、電圧印加時の流路表面状態の変化が小さくなったり、流路表面の摩擦が大きくなったりするために、液滴90の搬送が困難になる。このような事情から、サンプルとして液滴90を用いて、リガンドを固定化し、サンプル中の複合物質から所望の検体を検出する有効なデバイスは、いまだ実用化されていない。
【0012】
本発明は、上記の各問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、順次搬送される溶液(液滴)間の拡散を防いだ状態で、感度の低下を抑制しながら、固定化されたリガンドによって送液の安定性が阻害されることを防止しつつ、液滴中に含まれる検体を検出可能な検体検出用チップ、それを用いたセンサ、及び検体検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る検体検出用チップは、溶媒中に懸濁した検体を検出するための検体検出用チップであって、前記溶媒の液滴を搬送するための搬送用電極を有する搬送用基板と、前記搬送用基板に対向する対向基板と、前記液滴が通過する、前記基板搬送用基板と前記対向基板との間に形成された流路と、前記流路の一部に設けられた、リガンドが固定化された固定部を備え、前記固定部に前記液滴が滞留することによって検体の検出を行うことを特徴とする。
【0014】
また、前記搬送用電極は、前記液滴のぬれ性を変化させる搬送用電極であって、前記液滴のぬれ性を変化させることにより前記液滴が搬送されることを特徴としてもよい。また、前記搬送用電極は、表面波を発生させる搬送用電極であって、前記液滴が前記表面波によって搬送されることを特徴としてもよい。
【0015】
また、前記搬送用電極は複数であって、前記搬送用電極の各面積は、前記固定部の面積よりも大きいことを特徴としてもよい。また、前記流路は、少なくとも一部が疎水性膜で覆われており、前記固定部は前記疎水性膜で覆われていないことを特徴としてもよい。また、前記検体検出用チップは、前記液滴の量を制御する液滴制御手段を更に備え、前記液滴制御手段は、前記液滴が前記搬送用基板と接する面積が、前記固定部の面積よりも大きくなるように前記液滴の量を制御するものであることを特徴としてもよい。
【0016】
本発明にかかる検体検出用センサは、上記のいずれかに記載の検体検出用チップと、検体を光学的に検出する検出手段を備えることを特徴とする。また、本発明に係る検体検出用センサは、上記のいずれかに記載の検体検出用チップと、検体を電気的に検出する少なくとも1つの検出電極を備えることを特徴としてもよい。また、前記流路は、少なくとも一部が疎水性膜で覆われており、前記固定部及び前記検出電極が疎水性膜で覆われていないことを特徴としてもよい。
【0017】
また、前記搬送用電極は複数であって、前記搬送用電極の各面積は、前記検出電極および前記固定部の面積よりも大きいことを特徴としてもよい。また、上記に記載の検体検出用チップを備え、前記検体検出用チップに配置された前記液滴制御手段は、前記液滴が前記搬送用基板と接する面積が、前記検出電極および前記固定部の面積より大きくなるように前記液滴の量を制御するものであることを特徴としてもよい。
【0018】
本発明に係る検体検出方法は、検体が懸濁した溶媒の液滴を電気的に制御して流路内を搬送する工程と、前記流路の一部に設けられた、リガンドが固定化された固定部に、前記液滴を滞留させて、前記検体と前記リガンドを反応させる工程と、前記検体を検出する工程を含む検体検出方法であって、前記流路は、前記溶媒の液滴を搬送するための搬送用電極を有する搬送用基板と、前記搬送用基板に対向する対向基板との間に形成されており、前記液滴が前記搬送用基板と接する面積が、前記固定部が流路に面する面積よりも大きくなるように、前記液滴が搬送されることを特徴とする。
【0019】
また、前記液滴の量を制御する工程を含むことを特徴としてもよい。また、前記搬送する工程では、前記液滴のぬれ性を変化させることによって前記液滴が搬送されることを特徴としてもよい。また、前記搬送する工程では、表面波によって前記液滴が搬送されることを特徴としてもよい。また、前記検体は、検出電極を用いて電気的に検出され、前記液滴が前記搬送用基板と接する面積が、前記固定部および前記検出電極の面積よりも大きくなるように前記液滴が搬送されることを特徴としてもよい。
【0020】
また、前記検出電極は、少なくとも作用電極、及び参照電極により形成されていることを特徴としてもよい。また、前記作用電極及び参照電極は、前記液滴と同時に接触できるように配置されていることを特徴としてもよい。
【0021】
また、前記検出電極は、作用電極、参照電極及び対向電極により形成されていることを特徴としてもよい。また、前記作用電極、参照電極及び対向電極は、前記液滴と同時に接触できるように配置されていることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の検体検出用センサによれば、順次搬送される異なる溶液(液滴)の界面における溶液の拡散を防いだ状態で、感度の低下を抑制し、固定化されたリガンドによって搬送の安定性が阻害されることを防止し、かつ、液滴中に含まれる検体を検出することができるセンサを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態1にかかる検体検出用センサの断面図である。
【図2】実施形態1にかかる検体検出用センサに液滴を送液したときの、検体検出用センサの断面図である。
【図3】実施形態1にかかる検体検出用センサに液滴を送液したときの、検体検出用センサの斜視図である。
【図4】実施形態1にかかる検体検出用センサに液滴を送液したときの、検体検出用センサの平面図である。
【図5】液滴、搬送用電極、固定部、及び検出電極の関係を示した図である。
【図6】3電極方式の検出電極と固定部を示した図である。
【図7】ELISA法を用いて検体を検出する手順を示したフローチャートである。
【図8】実施形態2にかかる検体検出用センサに液滴を送液したときの、検体検出用センサの断面図である。
【図9】実施形態2にかかる検体検出用センサに液滴を送液したときの、検体検出用センサの断面図である。
【図10】実施形態3にかかる検体検出用センサに液滴を送液したときの、検体検出用センサの断面図である。
【図11】実施形態4にかかる検体検出用センサに液滴を送液したときの、検体検出用センサの断面図である。
【図12】IDTの概略平面図である。
【図13】液滴、基板、気体の接触角を説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について以下に説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0025】
<実施形態1>
本実施形態では、免疫分析法による特定蛋白質の測定を行う。ここでは、特定蛋白質としては、メタボリックシンドロームの発症にかかわるアディポネクチンを用い、当該特定蛋白質の濃度の測定を電気化学測定法により行った。しかしながら、本発明は、これらの構成に限定されない。
【0026】
(センサの構成)
図1は、本実施形態に係る検体検出用センサ1の断面図である。本実施形態では、液滴を搬送する方法としてエレクトロウェッティングを用いている。検体検出用センサ1は、搬送用基板11、搬送用電極12、誘電体膜13、疎水性膜14a、疎水性膜14b、搬送用電極を持たない基板15、検出電極16、固定部17より構成される。なお、本発明において「液滴」とは、気体または極性が異なる液体などのよって分離されている液体を意図する。なお、個々の液滴の体積は、特に限定されない。
【0027】
搬送用基板11、及び搬送用電極を持たない基板15としては、例えばガラス基板やSi基板などを用いることができる。搬送用基板11上には、搬送用電極12が複数配置され、この搬送用電極12に電圧を印加することで、液滴を搬送する。搬送用電極12上には、誘電体膜13が形成される。誘電体膜13は窒化シリコン、酸化シリコン、酸化タンタル、酸化チタン、チタン酸バリウムなどから成り、誘電性を持つものである。
【0028】
誘電体膜13上には、疎水性膜14aが形成され、当該疎水性膜14aと向かい合うように疎水性膜14bが形成されている。そして、疎水性膜14aと疎水性膜14bとの間が液滴が搬送される空間となる。疎水性膜14a及び疎水成膜14bは、例えばフッ素系樹脂などから成り、水に対する親和性が低い性質を持ち、疎水性膜14aと疎水成膜14bとは、同一材料であっても材質が近い異なる材料であっても良い。
【0029】
疎水成膜14bの上には、搬送用電極を持たない基板15が形成される。搬送用電極を持たない基板15には、固定部17、及び検出電極16が配置されている。検出電極16は通常、2つの電極あるいは3つの電極、または複数の異なる形状の電極から構成され、これらの複数の電極はまとめて一つの検出電極16の働きをする。当該検出電極16によって、例えば、後述するリガンドに検体が結合したことを検知することができる。電極の材料としては主に金、白金などが用いられる。図1において、検出電極16は、搬送用電極を持たない基板15上に直接形成されているが、これは検出電極16を形成する前に一旦レジストを塗布する必要があるためである。すなわち、下地が疎水性膜14bの場合、レジストをはじく可能性があり、搬送用電極を持たない基板15に検出電極16を形成し、その後、疎水性膜14bを検出電極16の部分のみ除くようにして形成している。検出電極16の少なくとも一部には固定部17が配置され、固定部17には検体と反応するリガンドが固定されている。
【0030】
図3は、本実施形態の検体検出用センサ1の斜視図であり、図4は、本実施形態の検体検出用センサ1の平面図である。ここでは、わかりやすいように搬送用電極を持たない基板15を省略している。搬送用電極12は、それぞれスイッチSW1、SW2、SW3に接続されており、スイッチのON/OFFにより、個々の搬送電極12に対する電圧の印加状態を制御することができる。そして、個々の搬送用電極12に対する電圧の印加状態を制御することによって、液滴2を移動させることができる。なお、スイッチの数は特に限定されず、必要な数だけ設けることが可能である。
【0031】
図3及び図4においては、スイッチSW2が接続状態となっている。ここで、矢印の方向に液滴を移動させたい場合は、スイッチSW2を開放するとともにスイッチSW3を接続する。スイッチが接続されると、電圧は液滴2の移動が観察されるまで印加され、閾値電圧を越えると液滴2は次の搬送用電極に移動する。これを繰り返すことで液滴2を目的の場所へと移動させる。電圧の印加方法はこのような直流法に限られず、交流法で行うこともできる。また、基板電極上の電位変化に応じてぬれ性が変化することから、上記電位の印加方法に限らず、電位変化を与えれば液滴2は搬送することができる。
【0032】
図5の(a)及び(b)は、液滴2と搬送用電極12の関係を示した図である。搬送用電極12の形状は、図5(b)に示したような形であってもよいし、その他のどのような形でも構わない。図5(a)において、液滴2が疎水性膜14aと、あるいは疎水性膜14b、検出電極16、及び固定部17と接触している面2aは、図5(a)に示す矢印方向、つまりほぼ真上から見たときに、図5(b)に示すように、液滴2の進行方向に沿って直下の搬送用電極12に必ず複数かかるようにする。
【0033】
図5の(a)及び(b)においては、面2aは、搬送用電極12a、12a´、12b、12b´にかかっている。なお、搬送用電極12aと12a´のように複数の電極で搬送用電極12を形成している場合は、これを一つの搬送用電極とみなす。よって、図5(b)の上から見たように、面2aは、2つの電極にかかっている。本実施形態のように、搬送用電極12と液滴2をこのよう設定することにより、液滴2の搬送が行われる。具体的な設定方法としては、たとえば、サンプルの液滴2の量、搬送用電極12の大きさ、搬送用電極12の配置間隔を調整するなどの方法がある。液滴2の搬送量を制御するために液滴制御手段(図示せず)を設けても良い。
【0034】
当該液滴制御手段は、液滴2の搬送量を制御することができるものであれば、その具体的な構成は特に限定されない。例えば、当該液滴制御手段は、所定の量の液滴2を疎水成膜14aと疎水成膜14bとの間の流路に導入するものであってもよい。この場合、液滴制御手段は、所定の体積を有する液滴を形成するための液滴作製部と、所定の体積を有する液滴を流路へ導入するためのポンプとを備え得るが、当該構成に限定されない。なお、個々の液滴の体積は搬送用電極12の大きさ、及び搬送用電極12の配置間隔などに基づいて、適宜設定することが可能である。
【0035】
あるいは、搬送用基板11と搬送用電極を持たない基板15の配置を調整して、液滴2の搬送される空間(高さ)を決定することで設定できる。この場合、液滴2の接触面積を一定にするため、流路における搬送用基板11と搬送用電極を持たない基板15との間隔を一定に保つようにすることが好ましい。
【0036】
次に検出電極16と固定部17について詳細に説明する。図1においては、検出電極16及び固定部17は搬送用電極を持たない基板15側に作製されているが、搬送用基板11側に作製しても構わない。また、検出電極16及び固定部17は、1つの流路に対して、1つ作製されてもよいし、複数作製されてもよい。検出用電極16及び固定部17を複数作製する場合には、検出電極16及び固定部17は、搬送用電極を持たない基板15側と搬送用基板11側とのの両方に作製されてもよいし、どちらか一方のみに作製されてもよい。また、複数設けられる検出用電極16及び固定部17は、同じ構成であってもよいし、異なる構成であってもよい。
【0037】
検出電極16、及び固定部17の表面(流路に面した表面)は疎水性膜14bで覆われていないため、液滴2を円滑に搬送するためには、検出電極16、及び固定部17を搬送用電極12よりも小さく設けることが望ましい。さらに、検出電極16、及び固定部17は、図5(a)で示した液滴2が疎水性膜14a、あるいは疎水性膜14bと接触している面2aよりも、小さく設けることが好ましい。これによって、例えば、リガンドと検体を効率よく反応させることができる。
【0038】
固定部17のリガンドに反応した検体を検出する方法として、ここでは、一般的な電気化学測定法を用いることが可能であるが、本発明はこれに限定されるものではない。電気化学測定法では2電極方式と3電極方式がある。2電極方式の場合は、作用電極と参照電極により構成されるが、正確な電位の測定には3電極方式が望ましい。
【0039】
図6(a)は3電極方式の場合の検出電極16と固定部17を示している。検出電極16は電気化学測定用電極の対向電極161、作用電極162、参照電極163から構成される。
【0040】
対向電極161は作用電極162が電子を受け取る(または、放出する)のと同じ速さで、電子を放出する(または、受け取る)必要がある。参照電極163は、作用電極162の電位を測定・制御し、例えば、Ag/AgCl電極などを使用すること可能である。固定部17は作用電極162上にリガンドとして例えば抗体を物理吸着によって、固定化することで形成される。
【0041】
図6(b)は3電極方式の検出電極16及び固定部17を図5(a)における矢印方向から見た平面図である。図6(c)は、検出電極16及び固定部17を拡大した平面図である。ここで、図6(c)において、対向電極161、作用電極162、参照電極163のそれぞれの間を占める面を面164、面165とすると、対向電極161、作用電極162、参照電極163、面164、面165を合わせた領域を検出電極領域16aと規定することができる。ここで示したような3電極方式あるいは2電極方式といった複数の電極よりなる検出電極16を用いる場合には、それぞれの電極で挟まれた面を含んだ検出電極領域16aは、液滴2が疎水性膜14a、あるいは疎水性膜14bと接触している面2aよりも、小さく設けられることが好ましい。このようにすることで、例えば、検体がリガンドをほぼ覆うことになり、検体とリガンドを効率よく反応させることができる。また、検出電極領域16aは、搬送用電極12よりも小さく設けられることが好ましい。
【0042】
あるいは、3電極方式の場合、液滴が、作用電極、参照電極及び対向電極と同時に接触できるように配置されることが望ましい。なお、ここでいう同時に接触とは、流路内を液滴が搬送される過程において、液滴が作用電極、参照電極及び対向電極の3つの電極に、同時に接触する時間が存在することを意味する。
【0043】
また、2電極方式の場合は、少なくとも作用電極、及び参照電極により形成され、液滴が、作用電極及び参照電極と同時に接触できるように配置されることが望ましい。なお、ここでいう同時に接触とは、流路内を液滴が搬送される過程において、液滴が作用電極及び参照電極に同時に接触する時間が存在することを意味する。
【0044】
(検出手順)
次に、リガンドとして抗体を、検体として抗原を用い、イムノアッセイのうちのELISA法(サンドイッチ法)を用いて検出する手順を以下に説明する。
【0045】
図7は、ELISA法を用いて検体を検出する手順の一例を示したフローチャートである。Sはフローチャートにおける各ステップを表す。まず、一次抗体であるリガンドを、予め固定部17に固定化する(S71)。ここでは、リガンドとして一次抗体溶液(R&D System社製 MAB10651)を用いて検出電極16上にスポッティング後、37℃で60分間インキュベーションし、物理吸着固定した。なお、図6では、作用電極162上にリガンドを固定化しているが、これに限られるものではない。ただし、固定部17での反応で生成された電気化学物質を作用電極で酸化還元反応させるため、固定部17は作用電極162に近いことが望ましい。なお、検出電極としては、一般的なものを用いることが出来る。
【0046】
次に、電気化学測定用電極全体に、非特異吸着を防ぐためのブロッキングを行う(S72)。これは、固定部17の表面全てがリガンド抗体で隙間なく覆われているわけではなく、隙間があるため、当該隙間に対する非特異吸着を防ぐ必要があるためである。ここでは、ブロッキング液として1%のBSA溶液を用い、検出電極16近傍にスポッティング後、室温にて60分間インキュベーションした。なお、ブロッキング剤としては、BSA溶液以外に、例えば、カゼインなどが用いられるが、これらに限定されない。ブロッキング後、余分なブロッキング剤をトリス緩衝液で洗浄し、洗い流した(S73)。なお、洗浄に用いる溶液はトリス緩衝液に限定されず、検体の検出を妨げない溶液であれば、如何なる溶液を用いてもよい。
【0047】
次に、検出方法はここでは電気化学測定を用いるため、後ほどの工程で行われる酵素基質反応で電気化学物質を生成する酵素と基質を選択し、酵素は二次抗体にて予め標識しておく。ここで酵素としては特に限定されず、適宜、所望の酵素を用いることが可能である。例えば、上記酵素としては、ALP(Alkaline Phospatase)、グルコースオキシダーゼなどを用いることが可能であって、基質としては、各々の酵素に対してpAPP(p−Aminophenyl phosphate)、フェリシアン化カリウムなどを用いることが可能である。酵素基質反応によって生成される電気化学活性物質としては、pAP(パラアミノフェノール)、フェロシアン化カリウム、フェロセン、およびフェロセン誘導体を含むか、もしくはpAP、フェロシアン化カリウム、フェロセン、またはフェロセン誘導体などがある。
【0048】
本実施の形態では、酵素の一例としてALP、基質としてはpAPPを用いた。次に、サンプルとしてアディポネクチン(R&D System社製 1065AP)溶液と酵素標識された二次抗体を予め混合した液滴2(抗原に酵素標識二次抗体を反応させた液滴)を固定部17へと搬送し、一次抗体と抗原を十分に抗原抗体反応させてから液滴2を除く(S74)。
【0049】
本実施形態では、固定部17に液滴を滞留させることによって検体の検出が行われる。当該滞留時間は特に限定されず、検体とリガンドとが反応(例えば、結合)できる程度の時間、滞留すればよい。
【0050】
なお、本実施形態では抗原と二次抗体をあらかじめ混合しているが、これらを別々の液体として順次搬送しても構わない。いずれの場合も、後の工程で行われる検体検出が可能であるが、前者のようにあらかじめ抗原に酵素標識された二次抗体を混合し、反応させた液滴を用いることで、工程を簡略化することができる。
【0051】
次に固定部17を洗浄するため、洗浄液としてトリス緩衝液を固定部17へ搬送し、未結合のタンパク質などを除く(S75)。なお、洗浄に用いる溶液はトリス緩衝液に限定されず、検体の検出を妨げないよう液であれば如何なる溶液を用いてもよい。
【0052】
次に基質液pAPPを含有する基質溶液を固定部17へと搬送し酵素基質反応させる(S76)。最後に生成された電気化学物質pAPを検出電極16で検出し、ピーク電流値のアディポネクチン濃度依存性を測定する(S77)。検体量の測定方法としては例えば、あらかじめ検量線を作成しておき、それに基づき検体量を算出する方法などが一般的である。
【0053】
上記のような手順で、サンプルに含まれた複合物質から所望の検体を検出することができる。なお、リガンド及びリガンドの固定化は、ここに挙げられたものに限らず、公知のものを利用できる。リガンドは、検体と反応(例えば、結合)できる物質であれば利用することができ、例えば、上記で用いた抗体以外に、ペプチド、DNA、アプタマー、MIP(Molecular Imprinted Polymer)、などが利用可能である。
【0054】
また、リガンドの固定化には、上記で用いた物理吸着以外に、化学結合(例えば、共有結合、疎水結合、イオン結合、水素結合)、包括法などを用いることができる。さらに、検体を検出する検出方法には、上記で用いた抗原抗体反応を利用するイムノアッセイ以外に、DNAハイブリダイゼーションを利用するDNAアッセイなど公知の方法が利用でき、また、これらで用いられる様々なシグナル検出手段を用いることができる。例えば、電気化学的検出法、比色検出法、蛍光検出法などである。なお、検出の際に光学的検出方法を用いる場合は、搬送用電極を持たない基板15には透明の基板を選択する必要がある。次に蛍光法を用いた検出について説明する。
【0055】
<実施形態2>
次に、本発明における実施形態2について説明する。本実施形態では、検体検出用センサ自体には検出電極を持たず、外部の検出装置等を用いて検体を検出する、あるいは、検出部が固定部と離れている点で、上記実施形態1とは異なる。
【0056】
図8は、本実施形態に係る検体検出用センサ1aにサンプルの液滴2を送液したときの断面図である。本実施形態では、液滴2を搬送する方法としてエレクトロウェッティングを用いている。搬送用基板11には、搬送用電極12が複数配置され、その上部に誘電体膜13、疎水性膜14aが順に形成され、疎水性膜14a上に固定部17としてリガンドが固定化されている。また、搬送用電極をもたない基板15には、流路側に疎水性膜14bが形成されている。搬送用基板11と搬送用電極をもたない基板15の間には液滴2が配置されている。液滴2と搬送用電極12の関係は、実施形態1で説明した内容と同様である。また、固定部17の部分は疎水性膜14aがないため、固定部17を搬送用電極12よりも小さく設けることが好ましい。さらに、固定部17は、図5(a)で示した液滴2が疎水性膜14a、あるいは疎水性膜14bと接触している面2aよりも、小さく設けることが好ましい。これは、リガンドと検体を効率よく反応させるためである。なお、図8では固定部17は搬送用基板11側に作製されているが、搬送用電極をもたない基板15側に作製されても良い。
【0057】
検出装置26における検出方法としては、例えば、一般的な蛍光検出を用いることができる。この場合、液滴2へ励起光31を入れて、当該液滴2から発せられる蛍光32を検出することで特定物質のみを検出することができる。なお、検出電極26は上記構成に限定されず、電気化学的検出法、比色検出法、蛍光検出法などに基づいた構成を、適宜、使用することが可能である。
【0058】
固定部17はリガンド(例えば、抗体)を物理吸着によって、固定化することで形成される。リガンドとして抗体、検体として抗原を用い、図7に示した手順により、具体的には次のように検出を行うことができる。
【0059】
まず、一次抗体であるリガンドを、予め固定部17に固定化する(S71)。次に、非特異的な吸着を防ぐためのブロッキングを行う(S72)。これは、固定部17の全てがリガンド抗体で隙間なく覆われているわけではなく、隙間があるため、当該隙間に対する非特異吸着を防ぐ必要があるためである。なお、ブロッキング剤としては、例えば、BSA、カゼインなどが用いられる。
【0060】
ブロッキング後、余分なブロッキング剤を洗浄によって洗い流す(S73)。ここで、検出方法は蛍光測定を用いるため、後ほどの工程で行われる酵素基質反応で蛍光物質を生成する酵素と基質を選択し、酵素は二次抗体によって予め標識しておく。ここで酵素としては例えば、HRP(horseradish peroxidase)、基質としてはADHP(10−Acetyl−3,7−dihydroxyphenoxazine)、QuantaBlu(登録商標)などが用いられるがこれらに限定されない。例えば、上記酵素としては、ペルオキシダーゼ(POD)などを用いることが可能であって、基質としては、Amplex(invitrogen社製)などを用いることが可能である。
【0061】
次に、検体である抗原を含んだサンプル液と酵素標識された二次抗体を予め混合した液滴2(抗原に酵素標識二次抗体を反応させた液滴)を固定部17へと搬送する。一次抗体と抗原を十分に抗原抗体反応させてから液滴を除く(S74)。次に、固定部17を洗浄するため、洗浄液を固定部17へ搬送し、未結合のタンパク質などを除く(S75)。次に基質液を固定部17へと搬送し酵素基質反応を生じさせる。必要であればこのとき、酵素基質反応停止剤を用いて、酵素基質反応を停止させてもよい(S76)。最後に酵素基質反応によって生成された蛍光物質に対して励起光31を照射して、その結果生じる蛍光32を検出することで、検体量を測定する(S77)。
【0062】
なお、図8では励起光31を固定部17の上部から照射し、蛍光32を検出する構成になっているが、上部以外から照射、検出することももちろん可能である。また、図8の構成は蛍光分析に基づく構成であるが、一般的な比色分析に基づく構成にすることも可能である。比色分析の場合、例えば、HRP酵素に対して発色基質OPD(o−phenylendiamine)、TMB(3,3’,5,5’−tetramethyl−benzidene)などを用いて吸光度から検体量を知ることができる。あるいは、酵素としてペルオキシダーゼに対して、発色基質TMB、OPD、ABTS(2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)二アンモニウム塩)を用いることができる。
【0063】
また、本実施形態では、検体検出用センサ1aには、検出部を備えない構成として説明したが、図9に示すように検出手段16´が、固定部17と別に設けられてもよい。検出手段16´は、流路外、例えば、搬送用電極をもたない基板15に併設して設けられても構わない。
【0064】
<実施形態3>
次に、本発明における実施形態3について説明する。本実施形態では、搬送用電極が液滴2を挟んで上下両側に配置されている点で、上記実施形態1、実施形態2とは異なる。このように、2つの搬送用電極を用いることによって、電極のプラス極とマイナス極を1枚の基板に作り込まなくてもよいため、基板の作製が容易になるとともに、搬送用電極の制御が容易になる。
【0065】
図10は、本実施形態に係る検体検出用センサ1cにサンプルの液滴2を送液したときの断面図である。本実施形態では、液滴2を搬送する方法としてエレクトロウェッティングを用いている。搬送用基板11には、搬送用電極12が複数配置され、その上部に誘電体膜13、疎水性膜14aが順に形成され、疎水性膜14a上に固定部17としてリガンドが固定化されている。また、上部基板18には、上部電極120、疎水性膜14bが流路に向かって順に形成されている。
【0066】
搬送用基板11と上部基板18の間には液滴2が配置されている。液滴2と搬送用電極12の関係は、実施形態1で説明した内容と同様である。また、固定部17の表面(流路側)には疎水性膜14aがないため、固定部17を搬送用電極12よりも小さく設けることが好ましい。さらに、固定部17は、図5(a)で示した液滴2が疎水性膜14a、あるいは疎水性膜14bと接触している面2aよりも、小さく設けることが好ましい。これは、リガンドと検体を効率よく反応させるためである。検出電極16´は、固定部17とは別に設けられ、流路外、例えば、上部基板18に併設して設けることができる。なお、図10では固定部17は搬送用基板11側に作製されているが、上部基板18側に作製されても良い。
【0067】
電圧は搬送用基板11に形成されている搬送用電極12と上部基板18に形成されている上部電極120の間に印加される。上部電極120を接地電位とし、搬送させたい方向に隣接する搬送用電極に電圧を印加する。なお、上部電極120は、1つの電極として形成されてもよく、複数の電極として形成されてもよい。
【0068】
図10においては、スイッチSW2が接続状態となっている。ここで、矢印の方向に液滴2を移動させたい場合は、スイッチSW2を開放するとともにスイッチSW3を接続する。スイッチが接続されると、電圧は液滴2の移動が観察されるまで印加され、閾値電圧を越えると液滴2は次の搬送用電極に移動する。これを繰り返すことで液滴2を目的の場所へと移動させる。電圧の印加方法はこのような直流法に限られず、交流法で行うこともできる。また、基板電極上の電位変化に応じてぬれ性が変化することから、上記電位の印加方法に限らず、電位変化を与えれば液滴2は搬送することができる。
【0069】
なお、上記で示した構成は、上記実施形態1で示したような固定部17と検出電極16が同じ場所に設けられている構成や、実施形態2で説明した検出手段16´を本構成に含めず、検出装置26にて検出する構成にも適用可能である。
【0070】
<実施形態4>
次に、本発明における実施形態4について説明する。本実施形態では、表面波(Surface Acoustic Wave)を用いて液滴を搬送する点で、上記実施形態1〜3とは異なる。このように表面波を用いることにより、流路全体に複数の電極を設ける必要が無くなり、コストを削減することができる。なお、液滴のぬれ性を変化させる搬送用電極と、表面波を発生させる搬送用電極を併用することも可能である。
【0071】
図11は、本実施形態に係る検体検出用センサ1dにサンプルの液滴2を送液したときの断面図である。搬送用基板11には、圧電体膜19、搬送用電極IDT(InterDigital Transducer)20が形成され、表面波を励振する。圧電体膜19は、例えばLiNbOなどから構成され、電界を印加すると変形するという働きがある。なお、圧電体膜19が疎水性ではない場合は、圧電体膜19上に疎水性膜を備えることが望ましい。
【0072】
図12は、搬送用電極IDT20を図11における矢印方向から見た平面図である。搬送用電極IDT20は、図12に示すような櫛型状の電極となっており、この櫛型の小電極201にまとめて電圧をかけられるように大電極202が接続されている。大電極202から小電極201に電圧をかけられると、小電極201で表面波を励振する。圧電体膜19上に形成された搬送用電極IDT20に高周波信号を印加すると、電極間に電界が発生し、弾性表面波が励振され、当該弾性表面波が圧電体膜19上を伝搬していく。この伝搬面上に液滴2があると、液滴中に縦波が放射され、液滴2の搬送が可能となる。また、圧電体膜19には、固定部17、検出電極16が形成され、検出電極16の少なくとも一部には固定部17としてリガンドが固定化されている。表面波が液滴2に放射されることによって液滴2は固定部17及び検出電極16へと搬送される。この場合の検出方法も上記実施形態と同様に実施できる。
【0073】
以上、各実施形態で示した方法により、リガンドを固定化し、液滴を用いて検体検出を行う際に、固定化したリガンドの影響により、送液の安定性が阻害されることを防止しつつ、液滴中に含まれる検体を検出するセンサを実現することができた。
【符号の説明】
【0074】
1、1a、1b、1c、1d 検体検出用センサ
11 搬送用基板
12、12a、12a´、12b、12b´ 搬送用電極
120 上部電極
13 誘電体膜
14a、14b 疎水性膜
15 搬送用電極をもたない基板
16 検出電極
16´ 検出手段
17 固定部
18 上部基板
19 圧電体膜
20 搬送用電極IDT
26 検出装置
31 励起光
32 蛍光
161 対向電極
162 作用電極
163 参照電極
201 小電極
202 大電極
SW1、SW2、SW3 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒中に懸濁した検体を検出するための検体検出用チップであって、
前記溶媒の液滴を搬送するための搬送用電極を有する搬送用基板と、
前記搬送用基板に対向する対向基板と、
前記液滴が通過する、前記基板搬送用基板と前記対向基板との間に形成された流路と、
前記流路の一部に設けられた、リガンドが固定化された固定部を備え、
前記固定部に前記液滴が滞留することによって検体の検出を行うことを特徴とする検体検出用チップ。
【請求項2】
前記搬送用電極は、前記液滴のぬれ性を変化させる搬送用電極であって、
前記液滴のぬれ性を変化させることにより前記液滴が搬送されることを特徴とする請求項1記載の検体検出用チップ。
【請求項3】
前記搬送用電極は、表面波を発生させる搬送用電極であって、
前記液滴が前記表面波によって搬送されることを特徴とする請求項1記載の検体検出用チップ。
【請求項4】
前記搬送用電極は複数であって、前記搬送用電極の各面積は、前記固定部の面積よりも大きいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の検体検出用チップ。
【請求項5】
前記流路は、少なくとも一部が疎水性膜で覆われており、
前記固定部は前記疎水性膜で覆われていないことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の検体検出用チップ。
【請求項6】
前記検体検出用チップは、前記液滴の量を制御する液滴制御手段を更に備え、
前記液滴制御手段は、前記液滴が前記搬送用基板と接する面積が、前記固定部の面積よりも大きくなるように前記液滴の量を制御するものであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の検体検出用チップ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の検体検出用チップと、検体を光学的に検出する検出手段を備えることを特徴とする検体検出用センサ。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の検体検出用チップと、検体を電気的に検出する少なくとも1つの検出電極を備えることを特徴とする検体検出用センサ。
【請求項9】
前記流路は、少なくとも一部が疎水性膜で覆われており、
前記固定部及び前記検出電極が疎水性膜で覆われていないことを特徴とする請求項8記載の検体検出用センサ。
【請求項10】
前記搬送用電極は複数であって、前記搬送用電極の各面積は、前記検出電極および前記固定部の面積よりも大きいことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の検体検出用センサ。
【請求項11】
請求項6に記載の検体検出用チップを備え、
前記検体検出用チップに配置された前記液滴制御手段は、前記液滴が前記搬送用基板と接する面積が、前記検出電極および前記固定部の面積より大きくなるように前記液滴の量を制御するものであることを特徴とする請求項8記載の検体検出用センサ。
【請求項12】
検体が懸濁した溶媒の液滴を電気的に制御して流路内を搬送する工程と、
前記流路の一部に設けられた、リガンドが固定化された固定部に、前記液滴を滞留させて、前記検体と前記リガンドを反応させる工程と、
前記検体を検出する工程を含む検体検出方法であって、
前記流路は、前記溶媒の液滴を搬送するための搬送用電極を有する搬送用基板と、前記搬送用基板に対向する対向基板との間に形成されており、
前記液滴が前記搬送用基板と接する面積が、前記固定部が流路に面する面積よりも大きくなるように、前記液滴が搬送されることを特徴とする検体検出方法。
【請求項13】
前記液滴の量を制御する工程を含む請求項12記載の検体検出方法。
【請求項14】
前記搬送する工程では、前記液滴のぬれ性を変化させることによって前記液滴が搬送されることを特徴とする請求項12記載の検体検出方法。
【請求項15】
前記搬送する工程では、表面波によって前記液滴が搬送されることを特徴とする請求項12記載の検体検出方法。
【請求項16】
前記検体は、検出電極を用いて電気的に検出され、
前記液滴が前記搬送用基板と接する面積が、前記固定部および前記検出電極の面積よりも大きくなるように前記液滴が搬送されることを特徴とする請求項12から請求項15のいずれかに記載の検体検出方法。
【請求項17】
前記検出電極は、少なくとも作用電極、及び参照電極により形成されていることを特徴とする請求項16記載の検体検出方法。
【請求項18】
前記作用電極及び参照電極は、前記液滴と同時に接触できるように配置されていることを特徴とする請求項17記載の検体検出方法。
【請求項19】
前記検出電極は、作用電極、参照電極及び対向電極により形成されていることを特徴とする16記載の検体検出方法。
【請求項20】
前記作用電極、参照電極及び対向電極は、前記液滴と同時に接触できるように配置されていることを特徴とする請求項19記載の検体検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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