説明

検査シート

【課題】色変化する前の試薬の反射スペクトルと、色変化した後の試薬の反射スペクトルとを変化させて、試薬の色変化する前の色と、試薬の色変化した後の色とをより明瞭にする。
【解決手段】皮膚から発生する検査対象物と接触することによって色が変化する試薬を保持する試薬保持部と、前記試薬保持部の前記皮膚に接触する側の反対側に設けられ、前記試薬の反射スペクトルにおいてレベルがより大きい波長領域の光を、より多く吸収する色補正フィルタ部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査シートに関する。特に、本発明は、皮膚から発生する検査対象物と接触することによって色が変化する試薬を保持する検査シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、塩素系溶剤、アルコール、アミンなどの溶剤に対して、排水に流出した場合を想定して水の存在下においても簡易に鮮明に呈色識別(同定)でき、かつ吸収できる呈色マットについて提案されている。特許文献2では、時間変化または温度−時間積算値を色の変化として表示する用途のテープについて提案されている。特許文献3では、試薬層中の反射層を通過してカバーに反射してくる余計な光が影響して、個々の液体試料が持つ色の違いからくる測定値のばらつきを解消する試験片について提案されている。
【特許文献1】特開2003−90838号公報
【特許文献2】特開平9−26363号公報
【特許文献3】特開2005−351908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の発明においては、呈色剤の粒径に紙の地色が影響して、呈色剤の呈色の識別が困難になる場合がある。特許文献2に記載の発明においては、台紙の色に影響されて、色素の色変化の識別が困難になる場合がある。特許文献3に記載の発明においては、試薬層の検出部位を覆うカバーが、分泌物の試薬保持部への浸透を阻害する場合がある。
【0004】
そこで本発明は、上記課題を解決することができる検査シートを提供することを目的とする。この目的は特許請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また従属項は本発明の更なる有利な具体例を規定する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態においては、検査シートであって、皮膚から発生する検査対象物と接触することによって色が変化する試薬を保持する試薬保持部と、前記試薬保持部の前記皮膚に接触する側の反対側に設けられ、前記試薬の反射スペクトルにおいてレベルがより大きい波長領域の光を、より多く吸収する色補正フィルタ部とを備える。
【0006】
前記色補正フィルタ部は、色が変化する前の前記試薬の反射スペクトルにおいてレベルがより大きい波長領域の光を、より多く吸収してもよい。また、前記色補正フィルタ部は、色が変化した後の前記試薬の反射スペクトルにおいてレベルがより大きい波長領域の光を、より多く吸収してもよい。
【0007】
また、本発明の第2の形態においては、検査シートであって、皮膚から発生する検査対象物と接触することによって色が変化する試薬を保持する試薬保持部と、前記試薬保持部の前記皮膚に接触する側の反対側に設けられ、色が変化する前の前記試薬の反射スペクトルのピークと、色が変化した後の前記試薬の反射スペクトルのピークとの間の波長領域の光を吸収する色補正フィルタ部とを備える。
【0008】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明の効果】
【0009】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、検査前の試薬の色と、検査後の試薬の色とをより明瞭にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
図1は、検査シート10を用いた検査システムの例を示す。検査システムは、検査シート10、撮像装置20、および解析装置30を備える。検査シート10は、支持体シート100、色補正フィルタ部102、および試薬保持部104を備える。
【0012】
支持体シート100は、色補正フィルタ部102および試薬保持部104を保持する。支持体シート100は、高分子樹脂シートであってよく、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリオレフィン、およびポリアミド系合成繊維等であってよい。高分子樹脂シートの重合度および平均分子量等は、検査シート10の使用状況、並びに検査シート10に要求される柔軟性、および耐久性等に応じて適宜決定してよい。また、検査シート10が使用される前においては、支持体シート100の皮膚40と接触する面には保護シートが貼付されている。そして、検査シート10を使用するときに保護シートを取り外して、検査シート10を皮膚40に貼付する。
【0013】
試薬保持部104は、皮膚40から発生する検査対象物または分泌される検査対象物と接触することによって色が変化する試薬を保持する。検査対象物は、具体的には、皮膚上の水分、汗、または皮脂等である。そして、試薬保持部104が保持する試薬は、水分、汗、または皮脂等を吸収することによって変色する化合物であってよい。例えば、検査対象が水分である場合、試薬は塩化コバルトであってよい。また、試薬はpH指示薬等であってもよい。更に、試薬保持部104と皮膚40とが接触する面に、試薬保持部104が保持する試薬と皮膚40とが直接に接触することを避けるべく、水分または皮脂を透過するが試薬を透過しない不織布等の層を備えてもよい。
【0014】
色補正フィルタ部102は、試薬保持部104の皮膚40に接触する側の反対側に、試薬保持部104に沿って設けられる。そして色補正フィルタ部102は、所定の波長領域の光を吸収する。具体的には、色補正フィルタ部102は、試薬の反射スペクトルにおける、所定の波長領域の光を吸収する。例えば、色補正フィルタ部102は、色変化する前の試薬の反射スペクトルから、レベルが大きい波長領域の光を吸収する。そして、色補正フィルタ部102は、色補正フィルタ部102を通過する試薬の反射スペクトルを灰色に近づける。なお、色補正フィルタ部102は、所定の波長領域の光を遮断する機能を有していてもよい。
【0015】
まず、検査シート10は、人体の皮膚に貼付される。試薬保持部104が保持する試薬は、検査シート10が貼付された領域の一部に含まれる皮膚の表面の水分または皮脂等の存在により変色する。そして、撮像装置20は、色補正フィルタ部102を透過した光を撮像する。撮像装置20は、撮像した撮像画像を示す撮像画像データを、LANおよびインターネット等のネットワーク50を介して、撮像画像を解析して皮膚の状態を判断する解析装置30に送信する。なお、撮像装置20は、撮像装置20を電気通信的に接続可能なクレードルに保持されてよい。そして、クレードルはネットワーク50を介して解析装置30と通信可能に接続される。係る場合に、撮像装置20は、クレードルを介して解析装置30に撮像画像データを送信してもよい。
【0016】
解析装置30は、撮像装置20が撮像した検査シート10の撮像画像から、皮膚の状態を解析する。解析装置30は、PCまたはサーバであってよい。具体的には、解析装置30は、検査シート10の撮像画像から、色補正フィルタ部102が透過した光を取得する。そして、解析装置30は、取得した光の色と、解析装置30が有する色に対応する皮膚の状態を示す色見本データとから皮膚の状態を解析する。
【0017】
本例の検査シート10によれば、色補正フィルタ部102が試薬の反射スペクトルの一部を吸収することによって、撮像装置20または検査者が試薬の色の変化を認識し易くできる。例えば、人間の眼は、無彩色に対する色変化を敏感に感じ取ることができるので、色補正フィルタ部102の作用によって、試薬の色変化の前または後において検査者に視認される色を無彩色にすることで、試薬の色変化を認識させ易くできる。
【0018】
図2は、第一の例の色補正フィルタ部102が吸収する光のスペクトルと、色変化する前の試薬の反射スペクトルとを示す。色変化する前の試薬の反射スペクトルは、ピーク波長aを有し、ピーク波長aから波長が離れるに従って光のレベルが減少する特性を有する。例として、試薬が塩化コバルトの場合、色変化する前の試薬の反射スペクトルは、無水塩化コバルト塩の青色をピーク波長aとする光となる。色補正フィルタ部102は、ピーク波長aの光のレベルをより吸収して、ピーク波長aから波長が離れるに従って吸収する光のレベルが減少する特性を有する。
【0019】
図3は、第一の例の色補正フィルタ部102を通過した光のスペクトルを示す。色変化する前の試薬の反射スペクトルと、色補正フィルタ部102が吸収する光のスペクトルとを点線で示す。また、色補正フィルタ部102を通過した光のスペクトルを実線で示す。色補正フィルタ部102は、色変化する前の試薬の反射スペクトルから光を吸収する。具体的には、色補正フィルタ部102は、色変化する前の試薬の反射スペクトルから、ピーク波長aの光のレベルをより吸収するとともに、ピーク波長aから波長が離れるに従って減少する光のレベルを吸収する。従って、色補正フィルタ部102は、ピーク波長aとピーク波長a前後の波長領域との光のレベルが減衰された光のスペクトルを通過させる。即ち、色補正フィルタ部102は、色補正フィルタ部102を通過して出力される光のスペクトルを、色変化する前の試薬の反射スペクトルより一様にする。
【0020】
なお、光のスペクトルを一様にするとは、光のスペクトルが有する各波長それぞれの光のレベルを均一に近づけることをいう。色補正フィルタ部102は、色補正フィルタ部102を通過した光のスペクトルが有する各波長の光のレベルを均一に近づけることにより、色補正フィルタ部102を通過して出力される光の色を無彩色に近づける。具体的には、色補正フィルタ部102は、色補正フィルタ部102を通過した光の色を、色変化する前の試薬の反射した光の色から灰色に近づけて通過させる。
【0021】
図4は、第一の例の色補正フィルタ部102と、色変化した後の試薬の反射スペクトルを示す。色変化した後の試薬の反射スペクトルは、ピーク波長bを有し、ピーク波長bから波長が離れるに従って光のレベルが減少する特性を有する。例として、試薬が塩化コバルトの場合、色変化した後の試薬の反射スペクトルは、塩化コバルト六水和物の赤色をピーク波長bとする光となる。色補正フィルタ部102は、ピーク波長aの光のレベルをより吸収して、ピーク波長aから波長が離れるに従って吸収するレベルが減少する特性を有する。
【0022】
図5は、第一の例の色補正フィルタ部102を通過した光のスペクトルを示す。色変化した後の試薬の反射スペクトルと、色補正フィルタ部102が吸収する光のスペクトルとを点線で示す。また、色補正フィルタ部102を通過した光のスペクトルを、実線で示す。色補正フィルタ部102は、色変化した後の試薬の反射スペクトルから光を吸収する。具体的には、色補正フィルタ部102は、色変化した後の試薬の反射スペクトルから、ピーク波長aの光のレベルをより吸収するとともに、ピーク波長aから波長が離れるに従って減少する光のレベルを吸収する。従って、色補正フィルタ部102は、ピーク波長aとピーク波長a前後の波長領域との光のレベルが減衰された光のスペクトルを通過させる。即ち、色補正フィルタ部102は、ピーク波長bとピーク波長b前後の波長領域との光のレベルを減衰せずに、波長aと波長a前後の波長領域との光のレベルを減衰させた光スペクトルを通過させる。
【0023】
第一の例の色補正フィルタ部102は、色変化する前の試薬を反射した光の色を無彩色に近づける。これにより、試薬の色変化が無彩色から開始するので、試薬の色変化を認識させ易くできる。また、第一の例の色補正フィルタ部102は、色変化した後の試薬の反射スペクトルのうち、波長aと波長a前後の波長領域との光のレベルを吸収し、波長bと波長b前後の波長領域との光のレベルを通過させる。従って、波長bの光の色が波長aの光の色に対して強調されて、試薬の色変化を認識させ易くできる。
【0024】
図6は、第二の例の色補正フィルタ部102が吸収する光のスペクトルと、色変化する前の試薬の反射スペクトルとを示す。色変化する前の試薬の反射スペクトルは、ピーク波長aを有し、ピーク波長aから波長が離れるに従って光のレベルが減少する特性を有する。例として、試薬が塩化コバルトの場合、色変化する前の試薬の反射スペクトルは、無水塩化コバルト塩の青色をピーク波長aとする光となる。色補正フィルタ部102は、ピーク波長bの光のレベルをより吸収して、ピーク波長bから波長が離れるに従って吸収する光のレベルが減少する特性を有する。
【0025】
図7は、第二の例の色補正フィルタ部102を通過した光のスペクトルを示す。色変化する前の試薬の反射スペクトルと、色補正フィルタ部102が吸収する光のスペクトルとを点線で示す。また、色補正フィルタ部102を通過した光のスペクトルを実線で示す。色補正フィルタ部102は、色変化する前の試薬の反射スペクトルから光を吸収する。具体的には、色補正フィルタ部102は、色変化する前の試薬の反射スペクトルから、ピーク波長bの光のレベルをより吸収するとともに、ピーク波長bから波長が離れるに従って減少する光のレベルを吸収する。従って、色補正フィルタ部102は、ピーク波長bとピーク波長b前後の波長領域との光のレベルが減衰された光のスペクトルを通過させる。即ち、色補正フィルタ部102は、ピーク波長aとピーク波長a前後の波長領域との光のレベルを減衰せずに、波長bと波長b前後の波長領域との光のレベルを減衰させた光スペクトルを通過させる。
【0026】
図8は、第二の例の色補正フィルタ部102と、色変化した後の試薬の反射スペクトルを示す。色変化した後の試薬の反射スペクトルは、ピーク波長bを有し、ピーク波長bから波長が離れるに従って光のレベルが減少する特性を有する。例として、試薬が塩化コバルトの場合、色変化した後の試薬の反射スペクトルは、塩化コバルト六水和物の赤色をピーク波長bとする光となる。色補正フィルタ部102は、ピーク波長bの光のレベルをより吸収して、ピーク波長bから波長が離れるに従って吸収するレベルが減少する特性を有する。
【0027】
図9は、第二の例の色補正フィルタ部102を通過した光のスペクトルを示す。色変化した後の試薬の反射スペクトルと、色補正フィルタ部102が吸収する光のスペクトルとを点線で示す。また、色補正フィルタ部102を通過した光のスペクトルを、実線で示す。色補正フィルタ部102は、色変化した後の試薬の反射スペクトルから光を吸収する。具体的には、色補正フィルタ部102は、色変化した後の試薬の反射スペクトルから、ピーク波長bの光のレベルをより吸収するとともに、ピーク波長bから波長が離れるに従って減少する光のレベルを吸収する。従って、色補正フィルタ部102は、ピーク波長bとピーク波長b前後の波長領域との光のレベルが減衰された光のスペクトルを通過させる。即ち、色補正フィルタ部102は、色補正フィルタ部102を通過して出力される光のスペクトルを、色変化した後の試薬の反射スペクトルより一様にする。
【0028】
なお、光のスペクトルを一様にするとは、光のスペクトルが有する各波長それぞれの光のレベルを均一に近づけることをいう。色補正フィルタ部102は、色補正フィルタ部102を通過した光のスペクトルが有する各波長の光のレベルを均一に近づけることにより、色補正フィルタ部102を通過して出力される光の色を無彩色に近づける。具体的には、色補正フィルタ部102は、色補正フィルタ部102を通過した光の色を、色変化した後の試薬の反射した光の色から灰色に近づけて通過させる。
【0029】
第二の例の色補正フィルタ部102は、色変化した後の試薬を反射した光の色を無彩色に近づける。これにより、試薬の色が無彩色に近づいていく色変化をするので、試薬の色変化を認識させ易くできる。また、第二の例の色補正フィルタ部102は、色変化する前の試薬の反射スペクトルのうち、波長bと波長b前後の波長領域との光のレベルを吸収し、波長aと波長a前後の波長領域との光のレベルを通過させる。従って、波長aの光の色が波長bの光の色に対して強調されて、試薬の色変化を認識させ易くできる。
【0030】
図10は、第三の例の色補正フィルタ部102が吸収する光のスペクトルと、色変化する前および色変化した後の試薬の反射スペクトルとを示す。色変化する前の試薬の反射スペクトルは、ピーク波長aを有し、ピーク波長aから波長が離れるに従って光のレベルが減少する特性を有する。また、色変化した後の試薬の反射スペクトルは、ピーク波長bを有し、ピーク波長bから波長が離れるに従って光のレベルが減少する特性を有する。例として、試薬が塩化コバルトの場合、色変化する前の試薬の反射スペクトルは、無水塩化コバルト塩の青色をピーク波長aとする光となる。また、色変化した後の試薬の反射スペクトルは、塩化コバルト六水和物の赤色をピーク波長bとする光となる。色補正フィルタ部102は、波長aおよび波長bの間の波長領域の光を吸収する。また、色補正フィルタ部102は、波長が波長aおよび波長bにより近づくに従って、少ない光のレベルを吸収する。
【0031】
図11は、第三の例の色補正フィルタ部102を通過した光のスペクトルを示す。色変化する前および色変化した後の試薬の反射スペクトルを点線で示す。また、色補正フィルタ部102を通過した光のスペクトルを、実線で示す。色補正フィルタ部102は、色変化する前および色変化した後の試薬の反射スペクトルから光を吸収する。具体的には、色補正フィルタ部102は、色変化する前および色変化した後の試薬の反射スペクトルから、波長aおよび波長bの間の波長領域の光のスペクトルを吸収する。特に、色補正フィルタ部102は、波長aおよび波長bにより近づくに従って、少ない光のレベルを吸収する。即ち、色補正フィルタ部102は、色変化する前および色変化した後の試薬の反射スペクトルに対して、それぞれのピーク波長である波長aおよび波長bの中間波長の光のスペクトルを減衰した光を通過させる。
【0032】
色補正フィルタ部102は、色変化する前の試薬の反射スペクトルのピーク波長aと、色変化した後の試薬の反射スペクトルのピーク波長bとの間の中間波長における光のレベルを減衰させるので、色変化する前の試薬の色と、色変化した後の試薬の色との差をより明瞭にすることができる。また、色変化する前の試薬の色から色変化した後の試薬の色への変化の様子が、よりわかりやすくなる。
【0033】
図12は、検査シート15を用いた検査システムの他の例を示す。検査システムは、検査シート15、撮像装置20、および解析装置30を備える。検査シート15は、支持体シート100、試薬保持部106、および透明シート108を備える。
【0034】
なお、検査シート15は、色補正フィルタ部102の位置に透明シート108を備える点、および試薬保持部104がさらに色素110を含む試薬保持部106である点を除き、図1から図11の説明における検査シート10と略同一の機能および構成を有する。従って、以下の説明においては、試薬保持部106および透明シート108以外の説明は省略する。また、撮像装置20および解析装置30についても、図1から図11の上記説明における撮像装置20および解析装置30と略同一の機能および構成を有するので詳細な説明は省略する。
【0035】
試薬保持部106は、試薬保持部104にさらに色素110を含む。色素110は、自身が光を反射する反射スペクトルを有する。即ち、試薬保持部106は、試薬の反射スペクトルと、色素110の反射スペクトルとを発生する。
【0036】
透明シート108は、色補正フィルタ部102と同様に試薬保持部106の皮膚40に接触する側の反対側に、試薬保持部106に沿って設けられる。そして、透明シート108は、試薬の反射スペクトルと、色素110の反射スペクトルとを透過する。即ち、透明シート108は、試薬の反射スペクトルと色素110の反射スペクトルとを合わせた光のスペクトルを透過して、検査者又は撮像装置20に視認させる。透明シート108は、柔軟性を有し、透明性に優れ、また強靭性にも優れた樹脂フィルムが好ましい。具体的には、高分子樹脂フィルムであってよく、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリオレフィン、およびポリアミド系合成繊維等であってよい。高分子樹脂フィルムの重合度および平均分子量等は、検査シート15の使用状況、並びに検査シート15に要求される柔軟性、および耐久性等に応じて適宜決定してよい。
【0037】
本例の検査シート15によれば、色素110が試薬の反射スペクトルの一部を強調することによって、撮像装置20または検査者が試薬の色の変化を認識し易くできる。例えば、人間の眼は、無彩色に対する色変化を敏感に感じ取ることができるので、色素110の作用によって、試薬の色変化の前または後において検査者に視認される色を無彩色にすることで、試薬の色変化を認識させ易くできる。
【0038】
図13は、試薬保持部106が含む第一の例の色素110の反射スペクトルと、色変化する前の試薬の反射スペクトルとを示す。色変化する前の試薬の反射スペクトルは、ピーク波長aを有し、ピーク波長aから波長が離れるに従って光のレベルが減少する特性を有する。例として、試薬が塩化コバルトの場合、色変化する前の試薬の反射スペクトルは、無水塩化コバルト塩の青色をピーク波長aとする光となる。色素110の反射スペクトルは、ピーク波長bを有し、ピーク波長bから波長が離れるに従って光のレベルが減少する特性を有する。また、色素110の反射スペクトルは、波長bにおける光のレベルに対して、波長aにおける光のレベルが十分に小さい特性を有する。
【0039】
図14は、試薬が色変化する前に視認される光のスペクトルを示す。色変化する前の試薬の反射スペクトルと、試薬保持部106が含む色素110の反射スペクトルとを点線で示す。試薬が色変化する前に視認される光のスペクトルを実線で示す。試薬が色変化する前に視認される光のスペクトルは、各波長において、色変化する前の試薬の反射スペクトルの光のレベルと、色素110の反射スペクトルの光のレベルとを合わせた光のレベルを有する。従って、試薬が色変化する前に視認される光のスペクトルは、色変化する前の試薬の反射スペクトルに比べて、一様なスペクトルとなる。即ち、色素110は、色変化する前の試薬を反射する光のスペクトルを均一に近づける反射スペクトルを有し、試薬が変化する前に視認される光の色を無彩色に近づける。具体的には、色素110は、試薬が色変化する前に視認される光の色を、色変化する前の試薬の色より灰色に近づける。
【0040】
以上のように、試薬が色変化する前に視認される光のスペクトルを調整するために、色素110の種類が選択される。例えば、色素110の反射スペクトルは、視認される光のスペクトルにおける波長aのレベルと波長bのレベルの差が、試薬の反射スペクトルにおける波長aのレベルと波長bのレベルの差より小さくすべく、波長bにおける光のレベルより波長aにおける光のレベルが小さい特性を有する。また、色素110の反射スペクトルは、視認される光のスペクトルを、試薬の反射スペクトルより一様にすべく、ピーク波長bから離れるに従って光のレベルが減少する特性を有する。
【0041】
図15は、試薬保持部106が含む第一の例の色素110の反射スペクトルと、色変化した後の試薬の反射スペクトルとを示す。色変化した後の試薬の反射スペクトルは、ピーク波長bを有し、ピーク波長bから波長が離れるに従って光のレベルが減少する特性を有する。例として、試薬が塩化コバルトの場合、色変化した後の試薬の反射スペクトルは、塩化コバルト六水和物の赤色をピーク波長bとする光となる。色素110の反射スペクトルは、ピーク波長bを有し、ピーク波長bから波長が離れるに従って光のレベルが減少する特性を有する。
【0042】
図16は、試薬が色変化した後に視認される光のスペクトルを示す。色変化した後の試薬の反射スペクトルと、試薬保持部106が含む色素110の反射スペクトルとを点線で示す。試薬が色変化した後に視認される光のスペクトルを実線で示す。試薬が色変化した後に視認される光のスペクトルは、各波長において、色変化した後の試薬の反射スペクトルの光のレベルと、色素110の反射スペクトルの光のレベルとを合わせた光のレベルを有する。従って、試薬が色変化した後に視認される光のスペクトルは、色変化した後の試薬の反射スペクトルに対して、波長がピーク波長bに近づくに従って、光のレベルがより強調される。
【0043】
第一の例の色素110は、色変化する前の試薬を反射した光の色を無彩色に近づける。試薬の色変化が無彩色から開始するので、試薬の色変化を認識させ易くできる。また、第一の例の色素110は、色変化した後の試薬の反射スペクトルのうち、波長bと波長b前後の波長領域との光のレベルをより強調する。従って、波長bの光の色が波長aの光の色に対して強調されて、試薬の色変化を認識させ易くできる。
【0044】
図17は、試薬保持部106が含む第二の例の色素110の反射スペクトルと、色変化する前の試薬の反射スペクトルとを示す。色変化する前の試薬の反射スペクトルは、ピーク波長aを有し、ピーク波長aから波長が離れるに従って光のレベルが減少する特性を有する。例として、試薬が塩化コバルトの場合、色変化する前の試薬の反射スペクトルは、無水塩化コバルト塩の青色をピーク波長aとする光となる。色素110の反射スペクトルは、ピーク波長aを有し、ピーク波長aから波長が離れるに従って光のレベルが減少する特性を有する。
【0045】
図18は、試薬が色変化する前に視認される光のスペクトルを示す。色変化する前の試薬の反射スペクトルと、試薬保持部106が含む色素110の反射スペクトルとを点線で示す。試薬が色変化する前に視認される光のスペクトルを実線で示す。試薬が色変化する前に視認される光のスペクトルは、各波長において、色変化する前の試薬の反射スペクトルの光のレベルと、色素110の反射スペクトルの光のレベルとを合わせた光のレベルを有する。従って、試薬が色変化する前に視認される光のスペクトルは、色変化する前の試薬の反射スペクトルに対して、波長がピーク波長aに近づくに従って、光のレベルがより強調される。
【0046】
図19は、試薬保持部106が含む第二の例の色素110の反射スペクトルと、色変化した後の試薬の反射スペクトルとを示す。色変化した後の試薬の反射スペクトルは、ピーク波長bを有し、ピーク波長bから波長が離れるに従って光のレベルが減少する特性を有する。例として、試薬が塩化コバルトの場合、色変化した後の試薬の反射スペクトルは、塩化コバルト六水和物の赤色をピーク波長bとする光となる。色素110の反射スペクトルは、ピーク波長aを有し、ピーク波長aから波長が離れるに従って光のレベルが減少する特性を有する。また、色素110の反射スペクトルは、波長aにおける光のレベルに対して、波長bにおける光のレベルが十分に小さい特性を有する。
【0047】
図20は、試薬が色変化した後に視認される光のスペクトルを示す。色変化した後の試薬の反射スペクトルと、試薬保持部106が含む色素110の反射スペクトルとを点線で示す。試薬が色変化した後に視認される光のスペクトルを実線で示す。試薬が色変化した後に視認される光のスペクトルは、各波長において、色変化した後の試薬の反射スペクトルの光のレベルと、色素110の反射スペクトルの光のレベルとを合わせた光のレベルを有する。従って、試薬が色変化した後に視認される光のスペクトルは、色変化した後の試薬の反射スペクトルに比べて、一様なスペクトルとなる。即ち、色素110は、色変化した後の試薬を反射する光のスペクトルを均一にする反射スペクトルを有し、試薬が変化した後に視認される光の色を無彩色に近づける。具体的には、色素110は、試薬が色変化した後に視認される光の色を、色変化した後の試薬の色より灰色に近づける。
【0048】
以上のように、試薬が色変化した後に視認される光のスペクトルを調整するために、色素110の種類が選択される。例えば、色素110の反射スペクトルは、視認される光のスペクトルにおける波長aのレベルと波長bのレベルの差が、試薬の反射スペクトルにおける波長aのレベルと波長bのレベルの差より小さくすべく、波長aにおける光のレベルより波長bにおける光のレベルが小さい特性を有する。また、色素110の反射スペクトルは、視認される光のスペクトルを、試薬の反射スペクトルより一様にすべく、ピーク波長aから離れるに従って光のレベルが減少する特性を有する。
【0049】
第二の例の色素110は、色変化した後の試薬を反射した光の色を無彩色に近づけるので、試薬の色変化を認識させ易くできる。また、第二の例の色素110は、色変化する前の試薬の反射スペクトルのうち、波長aと波長a前後の波長領域との光のレベルをより強調する。従って、波長aの光の色が波長bの光の色に対して強調されて、試薬の色変化を認識させ易くできる。
【0050】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】検査シート10を用いた検査システムの一例を示す。
【図2】第一の例の色補正フィルタ部102が吸収する光のスペクトルと、色変化する前の試薬の反射スペクトルとを示す。
【図3】第一の例の色補正フィルタ部102を通過した光のスペクトルを示す。
【図4】第一の例の色補正フィルタ部102と、色変化した後の試薬の反射スペクトルを示す。
【図5】第一の例の色補正フィルタ部102を通過した光のスペクトルを示す。
【図6】第二の例の色補正フィルタ部102が吸収する光のスペクトルと、色変化する前の試薬の反射スペクトルとを示す。
【図7】第二の例の色補正フィルタ部102を通過した光のスペクトルを示す。
【図8】第二の例の色補正フィルタ部102と、色変化した後の試薬の反射スペクトルを示す。
【図9】第二の例の色補正フィルタ部102を通過した光のスペクトルを示す。
【図10】第三の例の色補正フィルタ部102が吸収する光のスペクトルと、色変化する前および色変化した後の試薬の反射スペクトルとを示す。
【図11】第三の例の色補正フィルタ部102を通過した光のスペクトルを示す。
【図12】検査シート15を用いた検査システムの他の例を示す。
【図13】試薬保持部106が含む第一の例の色素110の反射スペクトルと、色変化する前の試薬の反射スペクトルとを示す。
【図14】試薬が色変化する前に視認される光のスペクトルを示す。
【図15】試薬保持部106が含む第一の例の色素110の反射スペクトルと、色変化した後の試薬の反射スペクトルとを示す。
【図16】試薬が色変化した後に視認される光のスペクトルを示す。
【図17】試薬保持部106が含む第二の例の色素110の反射スペクトルと、色変化する前の試薬の反射スペクトルとを示す。
【図18】試薬が色変化する前に視認される光のスペクトルを示す。
【図19】試薬保持部106が含む第二の例の色素110の反射スペクトルと、色変化した後の試薬の反射スペクトルとを示す。
【図20】試薬が色変化した後に視認される光のスペクトルを示す。
【符号の説明】
【0052】
10 検査シート
15 検査シート
20 撮像装置
30 解析装置
40 皮膚
50 ネットワーク
100 支持体シート
102 色補正フィルタ部
104 試薬保持部
106 試薬保持部
108 透明シート
110 色素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚から発生する検査対象物と接触することによって色が変化する試薬を保持する試薬保持部と、
前記試薬保持部の前記皮膚に接触する側の反対側に設けられ、前記試薬の反射スペクトルにおいてレベルがより大きい波長領域の光を、より多く吸収する色補正フィルタ部と
を備える検査シート。
【請求項2】
前記色補正フィルタ部は、色が変化する前の前記試薬の反射スペクトルにおいてレベルがより大きい波長領域の光を、より多く吸収する請求項1に記載の検査シート。
【請求項3】
前記色補正フィルタ部は、前記試薬の色が変化する前に前記色補正フィルタ部を透過して出力される光のスペクトルを、色が変化する前の前記試薬の反射スペクトルより一様にする請求項2に記載の検査シート。
【請求項4】
前記色補正フィルタ部は、前記試薬の色が変化する前に前記色補正フィルタ部を透過して出力される光の色を、色が変化する前の前記試薬から出力される色より無彩色に近づける請求項2に記載の検査シート。
【請求項5】
前記色補正フィルタ部は、色が変化した後の前記試薬の反射スペクトルにおいてレベルがより大きい波長領域の光を、より多く吸収する請求項1に記載の検査シート。
【請求項6】
前記色補正フィルタ部は、前記試薬の色が変化した後に前記色補正フィルタ部を透過して出力される光のスペクトルを、色が変化する後の前記試薬の反射スペクトルより一様にする請求項5に記載の検査シート。
【請求項7】
前記色補正フィルタ部は、前記試薬の色が変化した後に前記色補正フィルタ部を透過して出力される光の色を、色が変化する前の前記試薬から出力される色より無彩色に近づける請求項5に記載の検査シート。
【請求項8】
皮膚から発生する検査対象物と接触することによって色が変化する試薬を保持する試薬保持部と、
前記試薬保持部の前記皮膚に接触する側の反対側に設けられ、色が変化する前の前記試薬の反射スペクトルのピークと、色が変化した後の前記試薬の反射スペクトルのピークとの間の波長領域の光を吸収する色補正フィルタ部と
を備える検査シート。
【請求項9】
前記色補正フィルタ部は、色が変化する前の前記試薬の反射スペクトルのピーク、または色が変化した後の前記試薬の反射スペクトルのピークにより近い波長領域の光を、より少なく吸収する請求項8に記載の検査シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−249436(P2008−249436A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−89861(P2007−89861)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】