説明

検査時間割り当て方法

【課題】医療機関による放射線物質薬品の使用量を抑えることを課題とする。
【解決手段】コンピュータによって、放射線物質薬品を使用する検査の予約者を識別する情報と該予約者の体重とを含む予約者レコード302を、体重の重い順に並び替えるステップと、前記予約者を、並び替えられた体重の重い順に、前記放射線物質薬品が生成されてからの経過時間を判断する基準となる基準時間からの経過時間が短い予約枠レコード304に割り当てるステップと、が実行されることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線物質薬品を使用する検査の検査時間割り当て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線物質薬品を使用する検査のスケジュール作成方法として、被検査者の合計体重に基づいて必要な放射線物質成分量を算出し、この情報に基づいて放射線物質薬品の製造等の運用スケジュールを作成する方法がある(特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2003−035776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
放射線物質薬品には半減期が存在するため、生成から時間が経過すると、同じ放射線物質成分量を得るのに必要な薬品量が増加する。また、必要となる放射線物質成分量は、被検査者の体重に比例するため、体重の重い被検査者ほど多くの薬品が必要となる。
【0004】
ここで、従来より、被検査者の合計体重に基づいて放射線物質薬品の製造スケジュールを作成する方法や、単に体重クラス別に検査時間帯を設ける方法がある。しかし、これらの方法は、個別の被検査者の体重や、放射線物質薬品の生成からの時間を考慮したものではなく、医療機関による放射線物質薬品の使用量を抑える目的において大きな効果が得られるものではなかった。
【0005】
本発明は、上記した問題に鑑み、医療機関による放射線物質薬品の使用量を抑えることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記した課題を解決するために、被検査者である予約者を、体重が重い順に、放射性物質薬品の生成からの経過時間が短い検査時間に割り当てることで、医療機関による放射線物質薬品の使用量を抑えることを可能にした。
【0007】
詳細には、本発明は、放射線物質薬品を使用する検査の予約者を識別する情報と該予約者の体重とを含む予約者レコードを記憶する予約者レコード記憶手段と、前記放射線物質薬品が生成されてからの経過時間を判断する基準となる時間を含む基準時間レコードを記憶する基準時間レコード記憶手段と、を備えるコンピュータによって、前記予約者レコード記憶手段によって記憶された予約者レコードを、体重の重い順に並び替える予約者レコード並び替えステップと、前記予約者を、前記並び替えステップで並び替えられた体重の重い順に、前記基準時間からの経過時間が短い検査時間に割り当てる検査時間割り当てステップと、が実行されることを特徴とする、放射線物質薬品を使用する検査の検査時間割り当て方法である。
【0008】
放射線物質薬品には半減期が存在し、生成から時間が経過すると、単位薬品量あたりの放射線物質成分量が減少する。また、必要となる放射線物質成分量は、被検査者の体重に比例する。このため、放射線物質成分量が減少しないうちに、体重の重い被検査者を優先的に検査することで、放射線物質薬品の使用量を抑えることが可能である。
【0009】
そこで、本発明では、予約者レコードを予約者の体重順に並び替え、並び替えられた体重の重い順に、基準時間からの経過時間が短い検査時間に割り当てることで、放射線物質薬品の使用量を抑えることとした。
【0010】
ここで、基準時間は、放射線物質薬品が生成されてからの経過時間を判断する基準となる時間であればよく、生成時間である必要はない。生成時間の他に、医療機関への配達時間等を基準時間として使用することが可能である。
【0011】
本発明において、前記コンピュータは、個人を識別する情報及び該個人の体重を含む個人レコードを蓄積する個人レコード蓄積手段を更に備え、前記コンピュータによって、前記予約者レコード並び替えステップの前に、前記個人レコード蓄積手段を参照して、前記予約者レコードにある予約者と一致する個人の体重を前記個人レコード蓄積手段より取得する体重取得ステップが更に実行され、前記予約者レコード並び替えステップは、前記体重取得ステップによって取得された体重を基に、前記予約者レコードを並び替えること、を特徴としてもよい。
【0012】
予約者レコードの並び替えに使用する体重は、予約者レコードに記憶されている体重を使用してもよいし、上記のように、個人レコードとして蓄積されていた情報から取得することも可能である。このような構成とすることで、電子カルテ情報等、予め蓄積されている個人レコードを活用することが可能となる。
【0013】
また、本発明において、前記コンピュータは、所定の時間毎に区切られた検査時間枠と該検査時間枠の優先度と該検査時間枠において検査を受ける予約者を識別する情報とを含む検査時間枠レコードを記憶する検査時間枠レコード記憶手段を更に備え、前記コンピュータによって、前記検査時間割り当てステップの前に、前記検査時間枠に対して、前記基準時間からの経過時間が短い順に高い優先度を設定する優先度設定ステップが更に実行され、前記検査時間割り当てステップは、前記予約者を、前記並び替えステップで並び替えられた体重の重い順に、高い優先度が設定された検査時間枠に割り当てること、を特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によって、医療機関による放射線物質薬品の使用量を抑えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る検査時間割り当て方法を、PET/CT検査(Positron Emission Tomography/Computerized Tomography)の検査時間割り当て方法として実施した場合の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0016】
PET/CT検査は、放射線物質薬品を人体に投与し、体外からPETカメラを使用して細胞の代謝活動を撮影し、併せて撮影されたCT画像と重ねることで診断を行う検査方法である。PET/CT検査では、放射線物質薬品の投与後、所定の放射線物質成分量を得る必要がある。しかし、PET/CT検査で投与される放射線物質薬品は、半減期が極めて短く、生成から時間が経過すると、同じ放射線物質成分量を得るのに必要な薬品量が増加する(図1を参照)。また、必要となる放射線物質成分量は、被検査者の体重に比例するため、体重の重い被検査者ほど多くの薬品が必要となる(図2を参照)。
【0017】
このため、本実施例では、被検査者である予約者を、体重が重い順に、放射性物質薬品の配達からの経過時間が短い予約枠に割り当てることで、医療機関による放射線物質薬品の使用量を抑えることとしている。
【0018】
図3は、本実施例に係る検査時間割り当てシステムの構成の概略を示した図である。検
査時間割り当てシステムは、サーバ10と、ネットワーク30と、電子カルテ端末40を備える。サーバ10は、CPU(Central Processing Unit)11、RAM(Random Access Memory)12、HDD(Hard Disk Drive)13、NIC(Network Interface Card)14等を有し、これらはバス16を介して接続されている。
【0019】
CPU11は、中央処理装置であり、RAM12等に展開された命令及びデータを処理することで、バス16に接続されたRAM12、HDD13、NIC14等を制御する。RAM12は、主記憶装置であり、CPU11によって制御され、各種命令やデータが書き込まれ、読み出される。HDD13は、補助記憶装置であり、主にサーバ10の電源を落としても保持したい情報が書き込まれ、読み出される。NIC14は、ネットワークインターフェースであり、ネットワーク30より信号を受信し、ネットワーク30へ信号を送信する。
【0020】
電子カルテ端末40は、入力装置としてキーボード、マウス等、出力装置としてディスプレイ、プリンタ60等を備える。
【0021】
次に、図4から図7を用いて、本実施例のデータ構造の概略を説明する。以下に説明するデータは、HDD13又はRAM12上に保存され、CPU11によって適宜読み出され、処理される。
【0022】
図4は、本実施例における患者レコードのデータ構造の概略及びサンプルデータを説明した図である。患者レコード301は、患者ID、患者名称、体重その他の情報を含む。患者レコード301は、HDD13上のデータベースに、患者テーブルとして蓄積されており、適宜RAM12上に読み出されて処理される。
【0023】
図5は、本実施例における予約者レコードのデータ構造の概略及びサンプルデータを説明した図である。予約者レコード302は、予約者ID、予約日、体重その他の情報を含む。予約者レコード302は、HDD13上のデータベースに、予約者テーブルとして蓄積されており、適宜RAM12上に読み出されて処理される。また、後述する検査時間割り当て処理が実行される前は、予約者の体重には初期値が設定されている。
【0024】
図6は、本実施例におけるデリバリー情報のデータ構造の概略及びサンプルデータを説明した図である。デリバリー情報303は、各曜日毎の、放射線物質薬品の配達時間情報を有する。デリバリー情報303は、HDD13上のデータベースに、デリバリーマスタとして蓄積されており、適宜RAM12上に読み出されて処理される。
【0025】
図7は、本実施例における予約枠レコードのデータ構造の概略及びサンプルデータを説明した図である。予約枠レコード304は、予約日、予約枠、ユニット、優先度及び患者IDを含む。予約枠は、一日のうち検査を行っている時間帯を1時間ごとに区切った予約枠の情報であり、ユニットは、各予約枠がいずれの配達時間に属するかを示す情報であり、優先度は、体重の重い予約者を優先的に割り当てるための優先度を示す情報であり、患者IDは、該当する予約枠で検査を受ける予約者の患者IDである。ここで、予約枠が1時間区切りとなっているのは、一般的な検査時間を基にした一例である。予約枠の区切り方は、本発明が実施される状況に応じて適宜最適な区切り方を選択してもよい。予約枠レコード304は、HDD13上のデータベースに、予約枠テーブルとして蓄積されており、適宜RAM12上に読み出されて処理される。また、後述する検査時間割り当て処理が実行される前は、ユニット情報、優先度情報、患者IDには初期値が設定されている。
【0026】
次に、図8から図11を用いて、検査時間割り当て処理の流れを説明する。検査時間割
り当て処理は、処理対象日ごとに予約者を予約枠に割り当てる処理である。図8及び図10に示された処理は、検査時間割り当てシステムにおいて、RAM12等に展開されたプログラムをCPU11が解釈及び実行することで行われる。CPU11は、所定のタイミング、又は電子カルテ端末より入力された指示に基づいて図8及び図10に示された処理を順に実行する。また、以下の各処理の処理単位及び処理順序は、本実施例に示されている処理単位、処理順序に限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0027】
図8は、本実施例における優先度設定処理の流れを示したフローチャートである。
【0028】
S101では、配達時間情報が取得される。CPU11は、デリバリー情報303を参照して処理対象日の曜日の配達時間情報を取得し、RAM12に記録する。例えば、処理対象日が月曜日である場合、配達時間は9時、12時、15時である。その後、処理はS102へ進む。
【0029】
S102では、予約枠の所属ユニットが設定される。CPU11は、S101で取得した配達時間情報を基に、処理対象日の予約枠をユニット1からユニット3の何れかに設定する。例えば、処理対象日が月曜日である場合、配達時間は9時、12時、15時であるため、9時、10時及び11時の枠がユニット1、12時、13時及び14時の枠がユニット2、15時、16時及び17時の枠がユニット3となる(図9の(a)を参照)。その後、処理はS103へ進む。
【0030】
S103では、予約枠の優先度が設定される。CPU11は、配達時間からの経過時間が短い予約枠から順に高い優先度を設定する。このとき、各ユニット間において、経過時間が同一となる予約枠が存在する場合は、一日のうち早い時間帯のユニットに属する予約枠の優先度が高く設定される。例えば、9時の予約枠の、9時のデリバリーからの経過時間と、12時の予約枠の、12時のデリバリーからの経過時間と、では、どちらも経過時間が同一であるが、9時の予約枠が、一日のうち早い時間帯のユニットであるユニット1に属するため、優先度が高く設定される(図9の(b)を参照)。また、本実施例では、値の小さい優先度が優先されることとし、1から順に優先度が設定される。その後、本フローチャートに示された処理は終了する。
【0031】
図10は、本実施例における予約枠割り当て処理の流れを示したフローチャートである。
【0032】
S201では、予約者レコード302が抽出される。CPU11は、予約者テーブルから、処理対象日の予約者レコード302を抽出し、RAM12に保存する(図11の(a)を参照)。その後、処理はS202へ進む。
【0033】
S202では、体重が取得される。CPU11は、S201で抽出された予約者レコード302の有する患者IDを基に、患者テーブルを検索し、予約者の体重を取得する(図11の(b)を参照)。その後、処理はS203へ進む。
【0034】
S203では、予約者レコード302の並び替えが行われる。CPU11は、予約者レコード302を、S202で取得した体重を基に、体重の重い順に並び替える(図11の(c)を参照)。その後、処理はS204へ進む。
【0035】
S204では、予約枠の割り当てが行われる。CPU11は、予約者の患者IDを、S203で並び替えられた順に、優先度の高い予約枠レコード304に割り当てる(図9の(c)を参照)。その後、本フローチャートに示された処理は終了する。
【0036】
図10に示された処理の終了後、CPU11は、自動で、又は電子カルテ端末等からの入力に基づいて、S204で患者IDが設定された予約枠レコード304の情報を出力する。出力先としては、電子カルテ端末40のディスプレイ、プリンタ60等がある。
【0037】
本実施例に拠れば、PET/CT検査における医療機関による放射線物質薬品の使用量を抑えることが出来る。また、本実施例によって決定された予約枠レコード304および予約者の体重から、必要な放射線物質薬品の量を算出することで、放射線物質薬品の生成量又は注文量等を抑えることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】半減期と放射線物質の関係を示した図である。
【図2】体重・放射線物質・必要薬品量の関係を示した図である。
【図3】実施例に係る検査時間割り当てシステムの構成の概略を示した図である。
【図4】実施例における患者レコードのデータ構造の概略及びサンプルデータを説明した図である。
【図5】実施例における予約者レコードのデータ構造の概略及びサンプルデータを説明した図である。
【図6】実施例におけるデリバリー情報のデータ構造の概略及びサンプルデータを説明した図である。
【図7】実施例における予約枠レコードのデータ構造の概略及びサンプルデータを説明した図である。
【図8】実施例における優先度設定処理の流れを示したフローチャートである。
【図9】実施例における予約枠レコードの処理経過を示した図である。
【図10】実施例における予約枠割り当て処理の流れを示したフローチャートである。
【図11】実施例における予約者レコードの処理経過を示した図である。
【符号の説明】
【0039】
10 サーバ
11 CPU
12 RAM
13 HDD
14 NIC
16 バス
30 ネットワーク
40 電子カルテ端末
60 プリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線物質薬品を使用する検査の予約者を識別する情報と該予約者の体重とを含む予約者レコードを記憶する予約者レコード記憶手段と、前記放射線物質薬品が生成されてからの経過時間を判断する基準となる時間を含む基準時間レコードを記憶する基準時間レコード記憶手段と、を備えるコンピュータによって、
前記予約者レコード記憶手段によって記憶された予約者レコードを、体重の重い順に並び替える予約者レコード並び替えステップと、
前記予約者を、前記並び替えステップで並び替えられた体重の重い順に、前記基準時間からの経過時間が短い検査時間に割り当てる検査時間割り当てステップと、
が実行されることを特徴とする、放射線物質薬品を使用する検査の検査時間割り当て方法。
【請求項2】
前記コンピュータは、個人を識別する情報及び該個人の体重を含む個人レコードを蓄積する個人レコード蓄積手段を更に備え、
前記コンピュータによって、
前記予約者レコード並び替えステップの前に、前記個人レコード蓄積手段を参照して、前記予約者レコードにある予約者と一致する個人の体重を前記個人レコード蓄積手段より取得する体重取得ステップが更に実行され、
前記予約者レコード並び替えステップは、前記体重取得ステップによって取得された体重を基に、前記予約者レコードを並び替えること、
を特徴とする、請求項1に記載の放射線物質薬品を使用する検査の検査時間割り当て方法。
【請求項3】
前記コンピュータは、所定の時間毎に区切られた検査時間枠と該検査時間枠の優先度と該検査時間枠において検査を受ける予約者を識別する情報とを含む検査時間枠レコードを記憶する検査時間枠レコード記憶手段を更に備え、
前記コンピュータによって、
前記検査時間割り当てステップの前に、前記検査時間枠に対して、前記基準時間からの経過時間が短い順に高い優先度を設定する優先度設定ステップが更に実行され、
前記検査時間割り当てステップは、前記予約者を、前記並び替えステップで並び替えられた体重の重い順に、高い優先度が設定された検査時間枠に割り当てること、
を特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の放射線物質薬品を使用する検査の検査時間割り当て方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−322315(P2007−322315A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154614(P2006−154614)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】