説明

検査装置及び電流電圧測定装置セット

【課題】電流測定装置と電圧測定装置の両方を検査することができる検査装置を提供する。
【解決手段】ケーシングに、直流電源部3と、直流電流を交流に変換するDC−AC変換回路5と、交流を昇圧変換するトランス6と、トランス6の二次側に設けた交流電圧出力端子7a,7bと、前記トランス6の二次側で交流を直流に変換する整流回路8と、整流回路8の出力側に設けた直流電圧出力端子9a,9bと、前記トランス6の二次側と前記整流回路8との間に設けたCTクランプ試験用配線部10と、前記トランス6の二次側に設けた負荷抵抗11を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流測定装置と電圧測定装置の両方を検査する検査装置、及び、その検査装置を備えた電流電圧測定装置セットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ケーブル芯線の取外し等の電気工事において、作業者は安全確保のため、まずケーブル芯線に電流が流れていないことを確認してから、取外し作業を行っている。そして、ケーブル芯線に電流が流れていないことを確認するために、一般的に電流測定装置や電圧測定装置が用いられている。
【0003】
これら測定装置を使用する前には、装置が正常に動くことを検査する必要があり、従来は、現場近くの商用電源や活線端子を使って検査していた。しかし、このような検査方法では、検査場所が商用電源等のある場所に限られてしまうといった問題があり、また、活線端子を使用した場合に短絡させる虞もあった。そこで、持ち運び可能とした電流測定装置の検査装置(例えば、特許文献1参照)や電圧測定装置の検査装置が提案されている。
【特許文献1】実用新案登録第3046142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電流測定装置の検査と電圧測定装置の検査は、それぞれ別個の検査装置で行うので、検査対象の測定装置に合わせて検査装置を持ち運ばなければならず面倒であった。また、こういった作業者の負担がヒューマンファクター等の事故に繋がる虞もあった。
【0005】
そこで、本発明は斯かる実情に鑑み、電流測定装置と電圧測定装置の両方を検査することができる検査装置、及び、その検査装置を備えた電流電圧測定装置セットを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、ケーシングに、直流電源部と、直流電流を交流に変換するDC−AC変換回路と、交流を昇圧変換するトランスと、トランスの二次側に設けた交流電圧出力端子と、前記トランスの二次側で交流を直流に変換する整流回路と、整流回路の出力側に設けた直流電圧出力端子と、前記トランスの二次側と前記整流回路との間に設けたCTクランプ試験用配線部と、前記トランスの二次側に設けた負荷抵抗を備えた検査装置である。
【0007】
本発明の検査装置にて電圧測定装置の使用前検査を行う場合は、電圧測定装置の一対の測定端子を、検査装置の交流電圧出力端子又は直流電圧出力端子に接続し、検査装置を作動させてその端子から交流又は直流を出力する。そして、電圧測定装置の表示部の針が正常に動くか否かを確認する。
【0008】
また、本発明の検査装置にて電流測定装置(クランプ式電流測定装置)の使用前検査を行う場合は、電流測定装置のセンサ部を、検査装置のCTクランプ試験用配線部に接近させるなどし、検査装置を作動させてその配線部に交流を流す。そして、電流測定装置の表示部の針が正常に動くか否かを確認する。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の検査装置において、前記CTクランプ試験用配線部に電流値を増幅させるコイルを直列接続したものである。
【0010】
コイルに蓄えられたエネルギーが交流電圧がゼロになったときに一気に放出されるので、CTクランプ試験用配線部には波高が高い電流が瞬時に流れる。電流測定装置は、この瞬時の電流の波高値から実行値を計算するので、電流を検知し易くなる。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の検査装置と、電圧測定装置と、クランプ式電流測定装置を収納ボックス内に収納した電流電圧測定装置セットである。
【0012】
検査装置・電圧測定装置・クランプ式電流測定装置を収納ボックスに収納すれば、電気工事現場で使用する安全点検用の装置セットとして携帯することができる。そして、電気工事現場にて、ひとつの検査装置で電圧測定装置及びクランプ式電流測定装置の両方の使用前検査を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の検査装置によれば、電圧測定装置と電流測定装置の両方の検査をひとつの装置で行うことができる。従来別々であった電圧検査用と電流検査用の検査装置の回路を、ひとつの共用回路にまとめたので、ケーシング内にコンパクトに内蔵することができ、持ち運びに便利である。これにより、電圧測定装置又は電流測定装置に合わせて別個の検査装置を扱う煩雑さがなくなり、作業者の負担が軽減されてヒューマンファクター等の事故の防止に役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0015】
本発明に係る検査装置は、電圧測定装置と電流測定装置の使用前検査を行うためのものである。図1は、本検査装置の実施の一形態を示す外観斜視図である。同図に示すように、本発明の検査装置はケーシング1を備えている。図2は、そのケーシング1に内蔵された回路基盤2の回路図である。この回路基盤2は、電池等から成る直流電源部3を有し、直流電源部3のON/OFFを切り換えるスイッチ4が、ケーシング1の外面に付設されている。このスイッチ4は押しボタン式のもので、スイッチ4を押してONにするとき以外はコイルスプリング等の弾発部材にてOFF状態へ復帰するように構成されている。
【0016】
また、回路基盤2は、直流電源部3からの直流を交流に変換するDC−AC変換回路5(インバータ)と、その変換された交流を昇圧変換するトランス6を有する。トランス6の二次側には、電圧測定装置の一対の測定端子をそれぞれ接続する交流電圧出力端子7a,7bが配設されている。そして、ケーシング1には、電圧測定装置の測定端子を差し込んでこの交流電圧出力端子7a,7bに接続するための孔部を設けている。
【0017】
さらに、トランス6の二次側には、昇圧変換された交流を直流に変換する整流回路8(ブリッジ整流回路)が接続されている。そして、この整流回路8の出力側に、電圧測定装置の一対の測定端子をそれぞれ接続する正極側と負極側の直流電圧出力端子9a,9bが配設されている。ケーシング1には、電圧測定装置の測定端子を差し込んでこの直流電圧出力端子9a,9bに接続するための孔部を設けている。
【0018】
トランス6の二次側と整流回路8との間には、交流が流れるCTクランプ試験用配線部10が設けられ、この配線部10はケーシング1の外部に露出している。露出した配線部10はコ字状又はU字状等に形成され、樹脂製等の保護カバーで覆われている。
【0019】
また、トランス6の二次側に負荷抵抗11を設けている。負荷抵抗11を設けることにより出力インピーダンスを下げて、各測定装置(電圧測定装置・電流測定装置)の内部インピーダンスの違いにも安定した電圧を出力することができる。また、負荷抵抗11により高電圧も抑制することができる。
【0020】
ケーシング1の外面にはランプ部12が視認できるように付設されている。ランプ部12は、トランス6の二次側に接続された発光ダイオードから成り、この検査装置が正常に作動しているが否かを確認するためのものである。
【0021】
CTクランプ試験用配線部10とトランス6の二次側との間には、CTクランプ試験用配線部10の電流値を増幅させるためのコイル13を直列接続している。その電流値の増幅作用について、図3を参照して説明する。交流の正と負を繰り返す電圧波形において、電圧がゼロになったときに、コイル13に蓄えられたエネルギーが一気に放出される。これにより、配線部10には波高が高い電流が瞬時に流れる。電流測定装置は、この瞬時の電流の波高値から実行値を計算するので、電流を検知し易くなる。
【0022】
図4は、本発明の検査装置20と、電圧測定装置30と、クランプ式電流測定装置40を収納ボックス50に一緒に収納した電流電圧測定装置セットを示す。収納ボックス50は、開閉する蓋50aを有し、上記各装置20,30,40はそれぞれ仕切られた収納部内に配置されている。
【0023】
本発明の検査装置を使って、電圧測定装置の使用前検査を行う場合について説明する。図5に示すように、一端に測定端子31a,31bを付設した一対のリード線の他端を電圧測定装置本体30aに取り付ける。電圧測定装置30の交流電圧測定の動作チェックを行う場合は、本体30aのAC/DC切換スイッチ32をAC側にセットし、測定端子31a,31bの先端を検査装置20の交流電圧出力端子7a,7bに差し込んで接続する。この状態で、検査装置20のスイッチ4を押し、端子7a,7bから正常に出力されるとランプ部12が点灯する。ランプ部12の点灯を確認後、スイッチ4を押したまま、電圧測定装置30の表示部33の針が正常に動いたかどうかを確認する。
【0024】
次に、直流電圧測定の動作チェックを行う場合は、AC/DC切換スイッチ32をDC側にセットし、測定端子31a,31bを検査装置20の直流電圧出力端子9a,9bに正極側・負極側を一致させて接続する(図示省略)。そして、検査装置20のスイッチ4を押し、ランプ部12の点灯の確認と、電圧測定装置30の表示部33の針が正常に動いたか否かの確認を行う。このようにして、検査装置を用いた電圧測定装置の検査を終了する。
【0025】
また、本発明の検査装置を使って、クランプ式電流測定装置の使用前検査を行う場合について説明する。図6に示すように、クランプ式電流測定装置40は、開閉自在の一対の半円状センサ部41a,41bを有する。この一対のセンサ部41a,41bにて包囲した被測定導線に交流が流れると、交流による磁界の変化をセンサ部41a,41bが感知し、電流値として表示部42に表示するように構成されている。また、電流測定装置40には、検知した交流の電流値を演算したり表示したりする回路のON/OFFを切り換える電源スイッチ43を有している。
【0026】
収納ボックス50からクランプ式電流測定装置40を取り出し、図6に示すように、検査装置20のCTクランプ試験用配線部10を、センサ部41a,41bにて包囲する。このとき、電流測定装置40の電源はONとなっている。そして、検査装置20のスイッチ4を押して、配線部10に正常に交流が流れるとランプ部12が点灯する。ランプ部12の点灯を確認後、スイッチ4を押したまま、電流測定装置40の表示部42に正常に電流値が表示されたか否かを確認する。このようにして、検査装置を用いたクランプ式電流測定装置の検査を終了する。
【0027】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を加え得ることは勿論である。すなわち、本発明は、ケーシングに内蔵されたひとつの回路基盤によって、電圧測定装置と電流測定装置の両方の検査を行えるものであれば、図2に示す回路基盤以外の回路構造であってもよい。例えば、図2において、クランプ式電流測定装置の性能等によって、CTクランプ試験用配線部10の交流電流値を増幅させるコイル13を省略してもよい。また、ケーシング1に設けたCTクランプ試験用配線部10・直流電圧出力端子9a,9b・交流電圧出力端子7a,7b・ランプ部12・スイッチ4の配設位置についても、使用の仕方等に応じて適宜変更してもよい。また、電圧測定装置はAC/DC切換不要のものでもよく、クランプ式電流測定装置も図例以外のものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る検査装置の実施の一形態を示す外観斜視図である。
【図2】前記検査装置の回路図である。
【図3】コイルの作用を説明するための模式図である。
【図4】本発明に係る電流電圧測定装置セットの平面図である。
【図5】前記検査装置を使って電圧測定装置の検査をする様子を示す斜視図である。
【図6】前記検査装置を使ってクランプ式電流測定装置の検査をする様子を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1 ケーシング
3 直流電源部
5 DC−AC変換回路
6 トランス
7a 交流電圧出力端子
7b 交流電圧出力端子
8 整流回路
9a 直流電圧出力端子
9b 直流電圧出力端子
10 CTクランプ試験用配線部
11 負荷抵抗


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングに、直流電源部と、直流電流を交流に変換するDC−AC変換回路と、交流を昇圧変換するトランスと、トランスの二次側に設けた交流電圧出力端子と、前記トランスの二次側で交流を直流に変換する整流回路と、整流回路の出力側に設けた直流電圧出力端子と、前記トランスの二次側と前記整流回路との間に設けたCTクランプ試験用配線部と、前記トランスの二次側に設けた負荷抵抗を備えたことを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記CTクランプ試験用配線部に電流値を増幅させるコイルを直列接続したことを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の検査装置と、電圧測定装置と、クランプ式電流測定装置を収納ボックス内に収納したことを特徴とする電流電圧測定装置セット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−134142(P2008−134142A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−320333(P2006−320333)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)