検知センサ及びその使用方法
【課題】光検出器などの特別な装置を必要とすること無く物理的又は化学的刺激の有無を検知することが可能な検知センサ及びその使用方法を提供することであり、また、励起光などの検知センサに照射する光量が変動した場合でも、安定的に物理的又は化学的刺激の大きさを検知することが可能な検知センサ及びその使用方法を提供することである。
【解決手段】励起光hνを受けて異なる波長λ1,λ2の蛍光を放射する複数種類の蛍光体2,3から構成され、該複数種類の蛍光体の全種類又は少なくとも一部の種類は、同一の物理的又は化学的刺激に反応し放射する蛍光の放射光量が変化する応答性を有し、該複数種類の蛍光体の内の少なくとも一種類が他の蛍光体と該応答性が異なることを特徴とするとする検知センサである。また、該複数種類の蛍光体の内の少なくとも一種類であり全種類ではない蛍光体を、該応答性を示さないものとすることも可能である。
【解決手段】励起光hνを受けて異なる波長λ1,λ2の蛍光を放射する複数種類の蛍光体2,3から構成され、該複数種類の蛍光体の全種類又は少なくとも一部の種類は、同一の物理的又は化学的刺激に反応し放射する蛍光の放射光量が変化する応答性を有し、該複数種類の蛍光体の内の少なくとも一種類が他の蛍光体と該応答性が異なることを特徴とするとする検知センサである。また、該複数種類の蛍光体の内の少なくとも一種類であり全種類ではない蛍光体を、該応答性を示さないものとすることも可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知センサ及びその使用方法に関し、特に、物理的又は化学的刺激に対応して出力する光スペクトルを変化させる検知センサ並びに該検知センサの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、酸素消光性を有する色素を基板上に付着させた酸素センサなどのように、物理的又は化学的刺激により発光光量が変化する検知センサが実用化されている。
特許文献1には、アルミニウムやチタンなどの金属母材面に多孔質の酸化皮膜を形成し、該酸化皮膜表面にルテニウム、白金、オスミウム、ポルフィリンなどの酸素感応物質を吸着させた酸素センサが開示されている。
【特許文献1】特許第3101671号公報
【0003】
また、特許文献2には、酸素消光性の発光色素層の上に、コバルトポルフィリン錯体などの酸素分子と結合することにより吸収スペクトルが変化する吸収色素層を形成した検知センサが開示されている。
【特許文献2】特開2004−28650号公報
【0004】
さらに、特許文献3には、金属酸化物層上にカルボキシル基あるいはスルホン基を持つ感酸素及び感圧機能を有する色素を結合させる酸素及び圧力センサが開示されている。
【特許文献3】特開2002−162354号公報
【0005】
これらの検知センサは、いずれも検知センサが出力する特定波長の光強度変化を測定し、物理的又は化学的刺激の大きさを検知するものであるが、このような光強度の変化を測定するには光検出器を別途必要とするため、測定方法全体が高コスト化し、測定操作も煩雑化するなどの問題を生じていた。
また、検知センサが出力する光の光量は、検知センサに照射する励起光の光量にも依存し、励起光の光量が変動すると検知センサの光出力が変化する。このため、励起光を一定に保つ工夫や励起光の光量を別途検出する装置が必要となるなど、更に高コスト化する原因ともなっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決する課題は、上述した問題を解決し、光検出器などの特別な装置を必要とすること無く物理的又は化学的刺激の有無を検知することが可能な検知センサ及びその使用方法を提供することであり、また、励起光などの検知センサに照射する光量が変動した場合でも、安定的に物理的又は化学的刺激の大きさを検知することが可能な検知センサ及びその使用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、励起光を受けて異なる波長の蛍光を放射する複数種類の蛍光体から構成され、該複数種類の蛍光体の全種類又は少なくとも一部の種類は、同一の物理的又は化学的刺激に反応し放射する蛍光の放射光量が変化する応答性を有し、該複数種類の蛍光体の内の少なくとも一種類が他の蛍光体と該応答性が異なることを特徴とするとする検知センサである。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の検知センサにおいて、該複数種類の蛍光体の内の少なくとも一種類であり全種類ではない蛍光体が、該応答性を示さないものであることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、励起光を受けて特定波長の蛍光を放射する蛍光体と、該特定波長と異なる波長の光を反射する色素とから構成され、該蛍光体が物理的又は化学的刺激に反応し放射する蛍光の放射光量が変化する応答性を有することを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、励起光を受けて異なる波長の蛍光を放射する複数種類の蛍光体を含む蛍光体層と、該蛍光体層を被覆すると共に、該複数種類の蛍光体の内の少なくとも一種類以上であり全種類ではない特定の蛍光体に対し、該特定の蛍光体の励起光又は蛍光を吸収する光吸収層とを有し、該光吸収層は物理的又は化学的刺激に反応し吸収する吸収量が変化する応答性を有することを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、異なる波長の光を反射する複数種類の色素を含む色素層と、該色素層を被覆すると共に、該複数種類の色素の内の少なくとも一種類以上であり全種類ではない特定の色素に対し、該特定の色素の反射光を吸収する光吸収層とを有し、該光吸収層は物理的又は化学的刺激に反応し吸収する吸収量が変化する応答性を有することを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の検知センサにおいて、該物理的又は化学的刺激は、酸素吸着、圧力、温度、又は溶媒の化学的性質のいずれかであることを特徴とする。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の検知センサの使用方法において、該検知センサから出力される光の色の変化により該物理的又は化学的刺激の有無を判断することを特徴とする。
【0014】
請求項8に係る発明は、請求項1に記載の検知センサの使用方法において、該検知センサから出力される少なくとも2つの異なる波長の光の相対的な光強度比を測定し、該光強度比の変化により、該物理的又は化学的刺激の大きさを判断することを特徴とする。
【0015】
請求項9に係る発明は、請求項2乃至6のいずれかに記載の検知センサの使用方法において、該検知センサから出力される光のうち、該物理的又は化学的刺激により出力光量が変化する変化光と該物理的又は化学的刺激により出力光量が変化しない無変化光との相対的な光強度比の変化により、該物理的又は化学的刺激の大きさを判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明により、検知センサが、起光を受けて異なる波長の蛍光を放射する複数種類の蛍光体から構成され、該複数種類の蛍光体の全種類又は少なくとも一部の種類は、同一の物理的又は化学的刺激に反応し放射する蛍光の放射光量が変化する応答性を有し、該複数種類の蛍光体の内の少なくとも一種類が他の蛍光体と該応答性が異なるため、物理的又は化学的刺激に反応して、検知センサから出力される光スペクトルが異なり、出力光の色合いの変化により物理的又は化学的刺激の有無を判別することが可能となる。しかも検知センサの出力光には、蛍光体の応答性が他の蛍光体と異なるものが存在するため、異なる波長における相対的な光強度比を測定することにより、励起光の照射光量の変化に依存せずに、物理的又は化学的刺激の大きさを測定することも可能となる。
【0017】
請求項2に係る発明により、検知センサにおいて、複数種類の蛍光体の内の少なくとも一種類であり全種類ではない蛍光体が、該応答性を示さないものであるため、物理的又は化学的刺激に反応して、検知センサから出力される光スペクトルが異なり、出力光の色合いの変化により物理的又は化学的刺激の有無を判別することが可能となる。しかも検知センサの出力光には、応答性を示さない蛍光体により物理的又は化学的刺激に依存しない特定波長の光が存在するため、該特定波長光を基準として出力光の波長毎の光強度を測定することにより、励起光の照射光量の変化に依存せずに、物理的又は化学的刺激の大きさを測定することも可能となる。
【0018】
請求項3に係る発明により、検知センサが、励起光を受けて特定波長の蛍光を放射する蛍光体と、該特定波長と異なる波長の光を反射する色素とから構成され、該蛍光体が物理的又は化学的刺激に反応し放射する蛍光の放射光量が変化する応答性を有するため、物理的又は化学的刺激に反応して、検知センサから出力される光スペクトルが異なり、出力光の色合いの変化により物理的又は化学的刺激の有無を判別することが可能となる。しかも検知センサの出力光には物理的又は化学的刺激に依存しない色素からの反射光が存在するため、該反射光を基準として出力光の波長毎の光強度を測定することにより、検知センサに照射される照射光の光量の変化に依存せずに、物理的又は化学的刺激の大きさを測定することも可能となる。
【0019】
請求項4に係る発明により、検知センサが、励起光を受けて異なる波長の蛍光を放射する複数種類の蛍光体を含む蛍光体層と、該蛍光体層を被覆すると共に、該複数種類の蛍光体の内の少なくとも一種類以上であり全種類ではない特定の蛍光体に対し、該特定の蛍光体の励起光又は蛍光を吸収する光吸収層とを有し、該光吸収層は物理的又は化学的刺激に反応し吸収する吸収量が変化する応答性を有するため、物理的又は化学的刺激に反応して、検知センサから出力される光スペクトルが異なり、出力光の色合いの変化により物理的又は化学的刺激の有無を判別することが可能となる。しかも検知センサの出力光には物理的又は化学的刺激に依存しない特定波長の光が存在するため、該特定波長光を基準として出力光の波長毎の光強度を測定することにより、励起光の照射光量の変化に依存せずに、物理的又は化学的刺激の大きさを測定することも可能となる。
【0020】
請求項5に係る発明により、検知センサが、異なる波長の光を反射する複数種類の色素を含む色素層と、該色素層を被覆すると共に、該複数種類の色素の内の少なくとも一種類以上であり全種類ではない特定の色素に対し、該特定の色素の反射光を吸収する光吸収層とを有し、該光吸収層は物理的又は化学的刺激に反応し吸収する吸収量が変化する応答性を有するため、物理的又は化学的刺激に反応して、検知センサから出力される光スペクトルが異なり、出力光の色合いの変化により物理的又は化学的刺激の有無を判別することが可能となる。しかも検知センサの出力光には物理的又は化学的刺激に依存しない特定波長の反射光が存在するため、該反射光を基準として出力光の波長毎の光強度を測定することにより、検知センサに照射する照射光の光量の変化に依存せずに、物理的又は化学的刺激の大きさを測定することも可能となる。
【0021】
請求項6に係る発明により、検知センサにおける物理的又は化学的刺激は、酸素吸着、圧力、温度、又は溶媒の化学的性質のいずれかであるため、検知センサの色合いで、酸素、加圧、温度変化や溶媒の有無を容易に検知できる。また、励起光などの検知センサに照射する光量が変動した場合でも、安定的に酸素濃度や加圧量を検知することが可能となる。
【0022】
請求項7に係る発明により、検知センサの使用方法において、該検知センサから出力される光の色の変化により、物理的又は化学的刺激の有無を判断するため、光検出器などの特別な装置を不要とすることが可能となる。
【0023】
請求項8に係る発明により、検知センサの使用方法において、該検知センサから出力される少なくとも2つの異なる波長の光の相対的な光強度比を測定し、該光強度比の変化により、物理的又は化学的刺激の大きさを判断するため、励起光などの検知センサに照射する光量が変動した場合でも、安定的に物理的又は化学的刺激の大きさを検知することが可能となる。
【0024】
請求項9に係る発明により、検知センサの使用方法において、該検知センサから出力される光のうち、物理的又は化学的刺激により出力光量が変化する変化光と該物理的又は化学的刺激により出力光量が変化しない無変化光との相対的な光強度比の変化により、該物理的又は化学的刺激の大きさを判断するため、励起光などの検知センサに照射する光量が変動した場合でも、安定的に物理的又は化学的刺激の大きさを検知することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明に係る検知センサ及びその使用方法について、以下に詳細に説明する。
図1は、本発明に係る検知センサの第1の形態を示す概略図である。
図1の検知センサは、支持体1上に蛍光体2,3を含む蛍光体層4を形成することにより構成される。蛍光体2,3は励起光hνの照射を受けると異なる波長の蛍光を発する蛍光体であり、複数種類の蛍光体は、圧力などの物理的刺激や酸素との結合などの化学的刺激により、蛍光体の発光量が変化する蛍光体を使用する。ただし、各蛍光体における、物理的又は化学的刺激に反応し放射する蛍光の放射光量が変化する応答性は、各々異なるものを使用する。
図1の例では、2種類の蛍光体を例示しているが、これに限らず、3種類以上の蛍光体を使用した場合は、各蛍光体が発する蛍光が異なる波長となるよう選択することが好ましい。
【0026】
また、複数の異なる物理的又は化学的刺激を同一の検知センサで観察・測定するためには、物理的又は化学的刺激に反応する複数種類の蛍光体を、混在させて、あるいは、同一検知センサの表面を複数に分割し、各分割領域毎に物理的又は化学的刺激の種類毎に区別した蛍光体層4を組み込むことが可能である。
【0027】
図2は、図1の検知センサから出力される蛍光のスペクトルの強度分布(横軸は波長λを示し、縦軸は光強度Iを示す。)を表す図であり、蛍光体2は励起光を受けて波長λ1のスペクトルAの蛍光を発し、また、蛍光体3は励起光を受けて波長λ2のスペクトルBの蛍光を発するものと仮定する。
仮に、蛍光体2又は3は、物理的又は化学的刺激を受けると蛍光の発光量が減少し、図2の点線で示すスペクトルA’又はB’のようにスペクトル分布が変化する場合に、物理的又は化学的刺激が無い時は、検知センサが出力する光スペクトルは、スペクトルA及びBを重ね合わせたスペクトルとなり、物理的又は化学的刺激がある場合には、スペクトルA’及びB’を重ね合わせたスペクトルとなる。
【0028】
このため、検知センサからの発光色を観察し、スペクトルの色合いの変化から、物理的又は化学的刺激の有無が判断できることとなる。
人間が目視により容易に観察可能とするためには、蛍光体から発する蛍光の波長を、下限値360〜400nm、上限値760〜830nmの可視光領域内の波長を含むように設定すると共に、光量の変化する2つの波長λ1とλ2との波長差を50nm以上、より好ましくは100nm以上とすることが望ましい。
【0029】
また、光検出器を使用してλ1とλ2のピーク強度を測定し、λ1のピーク強度I1に対するλ2のピーク強度I2の比I2/I1を算出する。この比I2/I1は、励起光hνの光強度が変化した場合でも、常に一定の値を示し、蛍光体3が物理的又は化学的刺激に反応し蛍光の光強度が変化した場合にのみ変化するため、励起光の照射光量に依存しない物理的又は化学的刺激の大きさを測定することが可能となる。
【0030】
検知センサに使用される支持体1は、各種の材料を使用することが可能であり、例えば、アルミニウムやチタンなどの金属やプラスチックあるいはセラミックス、さらには、プラスチックのベースフィルムに金属を付着させた複合体なども使用可能である。
蛍光体2は、物理的又は化学的刺激に対して放射する蛍光の光量が変化しないものであれば各種の蛍光体を使用することが可能である。特に、上述した比I2/I1で測定する際には、後述する物理的又は化学的刺激に反応する蛍光体3の蛍光を受けて再発光する蛍光体の使用は好ましくなく、蛍光体3の発光波長λ2は、蛍光体2の励起エネルギー以下とすることが好ましい。
【0031】
蛍光体3としては、物理的又は化学的刺激を考慮して種々のものが選択でき、例えば、酸素感応性のある蛍光体としては、特許文献1乃至3に示されているような白金オクタエチルポルフィリン、白金テトラキスペンタフルオロフェニルポルフィリンなどの金属ポルフィリン錯体及びその誘導体、ビピリジル、フェナンスロリンなどを配位子とするルテニウム、オスミウム、イリジウムなどの金属錯体及びその誘導体、ピレン、ペリレンなどの多環式芳香族化合物及びその誘導体などが使用可能である。
また、温度変化に対する応答性を有する蛍光体としては、ルテニウム、オスミウム、イリジウムなどの金属錯体顔料、スチルベン顔料などが使用可能である。
さらに、溶媒の化学的性質に対する応答性を有する蛍光体として、ピレンモノマーとダイマーは、溶液の性質(非水溶媒か否か)を判断する際に使用することが可能である。
【0032】
蛍光体2,3を分散し蛍光体層4を形成するための樹脂としては、少なくとも励起光hν、蛍光λ1及びλ2に対して透明な樹脂であり、蛍光体2,3との結着性や支持体1との結着性の高い樹脂であれば特に限定されないが、物理的又は化学的刺激に対する蛍光体の反応性を向上させるため、例えば、酸素感応性を向上させるには、塩化ビニールやポリメチルなどの酸素透過性樹脂を使用するなど、物理的又は化学的刺激を伝達し易い材料を使用することが好ましい。
【0033】
また、特許文献1に示すように、蛍光体を支持体1の表面に直接結着させることも可能である。
さらに、シュウ酸を含む電解液で支持体となるアルミニウムを陽極酸化させた場合には、酸化部分が蛍光特性を持つ。このように、支持体自体に蛍光特性を持たせ、支持体に付着させる蛍光体の一部分を担うよう構成することも可能である。
【0034】
次に、本発明に係る検知センサの第1の形態の応用例1について説明する。
図1の検知センサを構成する蛍光体2について、図3に示すように、物理的又は化学的刺激に対する応答性を有しない蛍光体を使用する。
この場合は、物理的又は化学的刺激がない場合には、蛍光体2は励起光を受けて波長λ1のスペクトルAの蛍光を発し、また、蛍光体3は励起光を受けて波長λ2のスペクトルBの蛍光を発する。しかし、物理的又は化学的刺激を受けると蛍光体3のみの発光量が減少し、図3の点線で示すスペクトルB’のようにスペクトル分布が変化する。よって、物理的又は化学的刺激が無い時は、検知センサが出力する光スペクトルは、スペクトルA及びBを重ね合わせたスペクトルとなり、物理的又は化学的刺激がある場合には、スペクトルA及びB’を重ね合わせたスペクトルとなる。
【0035】
このため、検知センサからの発光色を観察し、スペクトルの色合いの変化から、物理的又は化学的刺激の有無が判断できることとなる。
また、光検出器を使用してλ1とλ2のピーク強度を測定し、λ1のピーク強度I1に対するλ2のピーク強度I2の比I2/I1を算出する。この比I2/I1は、励起光hνの光強度が変化した場合でも、常に一定の値を示し、蛍光体3が物理的又は化学的刺激に反応し蛍光の光強度が変化した場合にのみ変化するため、励起光の照射光量に依存しない物理的又は化学的刺激の大きさを測定することが可能となる。
【0036】
図4は、図1に示す検知センサの第1の形態の応用例2あり、支持体1上に、蛍光体2を含む蛍光体層5と、蛍光体3を含む蛍光体層6とを積層した検知センサを示す。
蛍光体2及び3は、共に物理的又は化学的刺激に応じて出力する蛍光の光量が変化する応答性を有しても良いが、その場合には、両者の応答性が図2に示すように異なることが必要である。また、蛍光体2及び3のいずれか一方を、物理的又は化学的刺激に対して応答性なしとすることも可能である。この場合には、蛍光体3を、物理的又は化学的刺激に応じて出力する蛍光の光量が変化する蛍光体とし、該蛍光体3を含む蛍光体層6は、物理的又は化学的刺激に敏感に反応することが可能なように検知センサの最表面に設置されることが好ましい。
【0037】
他方、蛍光体2を効果的に発光させるには、蛍光体層6の蛍光体を保持している樹脂により、励起光hνや蛍光体2の蛍光波長λ1が減衰しないような材料を選定することが好ましい。また、仮に蛍光体2が物理的又は化学的刺激に反応する蛍光体である場合でも、蛍光体層5の蛍光体2を分散する樹脂に、例えば、酸素不透過性の樹脂などを使用し、物理的又は化学的刺激から蛍光体2を遮断することにより、物理的又は化学的刺激に反応しない蛍光体として使用することも可能となる。
【0038】
次に、図5は本発明に係る検知センサの第2の形態を示す図である。
図5は、支持体1上に、物理的又は化学的刺激に反応する蛍光体3と、特定の光を反射する色素7を混合して分散した蛍光体・色素膜8を形成している。
色素7は、入射光hνが含む特定波長λaを反射する特性を有しており、λaは、第1の形態を示す図1の蛍光体2の蛍光λ1の代わりを担っている。
【0039】
図5の検知センサを使用する際には、特定波長λa及び蛍光体2を発光させる励起光を含む光を該検知センサに照射し、検知センサから出力される波長λa及びλ2を観察することで、色合いの変化から物理的又は化学的刺激の有無を判断する。また、波長λa及びλ2の各波長間の光強度比を測定することで、物理的又は化学的刺激の大きさを判断することが可能となる。
【0040】
検知センサに使用される色素7は、蛍光λ2と異なる波長の光を反射するものであれば、特に限定されない。なお、反射光λaと蛍光λ2との関係は、第1の形態と同様に、人間が目視により容易に観察可能とするためには、可視光領域内の波長を含むように設定すると共に、λaとλ2との波長差を50nm以上、より好ましくは100nm以上とすることが望ましい。
【0041】
図6は、図5の第2の形態の検知センサの応用例を示す図であり、支持体1上に、色素7を含む色素層9と、蛍光体3を含む蛍光体層10順次積層した検知センサである。
蛍光体層10に使用する樹脂には、照射光hνに含まれる蛍光体3の励起光や色素7に入射又は反射される波長λaの光に対して透明な材料を使用することが好ましい。
【0042】
次に、図7は本発明に係る検知センサの第3の形態を示す図である。
図7は、支持体1上に、複数種類の蛍光体2,3を含む蛍光体層11と、物理的又は化学的刺激に反応して特定波長の光透過性が変化する光吸収層12とが形成さている。
図7の検知センサに使用する蛍光体には、物理的又は化学的刺激に反応する蛍光体を含む必要は必ずしもないが、光吸収層12に物理的又は化学的刺激を伝達可能な材料を使用する場合には、蛍光体2,3のいずれかを物理的又は化学的刺激に反応する蛍光体を使用し、検知センサの感度を高めることが可能である。
【0043】
光吸収層12には、物理的又は化学的刺激に反応して特定波長の光透過性が変化する材料であり、例えば、特許文献2に示すような酸素と結合して特定波長に対する透過性が変化するコバルトポルフィリン錯体などを使用することが可能である。
光吸収層12は、物理的又は化学的刺激に反応しない蛍光体2の励起光や蛍光(波長λ1)は吸収しないが、物理的又は化学的刺激に反応する蛍光体3の励起光や蛍光(波長λ2)を、物理的又は化学的刺激に対応して吸収する特性を有する。また、蛍光体2,3を物理的又は化学的刺激に反応しない蛍光体で構成する場合には、物理的又は化学的刺激に対応して蛍光体2又は3のいずれかの蛍光体に対する励起光や蛍光を吸収する特性を有する材料で光吸収層12を形成する。
【0044】
図7の検知センサを使用する際には、蛍光体2及び3を発光させる励起光を含む光を該検知センサに照射し、検知センサから出力される波長λ1及びλ2を観察することで、色合いの変化から物理的又は化学的刺激の有無を判断する。また、波長λ1及びλ2の各波長間の光強度比を測定することで、物理的又は化学的刺激の大きさを判断することが可能となる。
【0045】
図8は、検知センサの第3の形態の応用例であり、支持体1上に、異なる波長の光を反射する色素7,13を含む色素層14と、物理的又は化学的刺激に反応して特定波長の光透過性が変化する光吸収層12とが形成さている。
光吸収層が吸収する波長は、各色素は反射する波長λa,λbのいずれかである。光吸収層12が物理的又は化学的刺激に反応することにより、特定の色素、例えば色素13に入射する照射光の中の特定波長成分λbと色素13から反射する反射光(波長λb)を吸収し、検知センサから出力される出力光の色合いを変化させたり、λaに対するλbの光強度を変化させることが可能となる。
【0046】
上述した図4乃至図8に係る各種の検知センサに対しても、図1の検知センサに係る支持体や蛍光体などの各種の材料や構成を適用可能であることは言うまでもない。
【実施例】
【0047】
(実施例1)
アルミニウム基板に硫酸浴を使用してアルマイト皮膜を形成し、その後シュウ酸浴を使用してさらにアルマイト皮膜を形成した。そして該皮膜表面にポルフィリンを付着させ実施例1の検知センサを作成した。
実施例1の検知センサに対し、365nmの励起光を照射したところ、大気中では青色、窒素雰囲気中では赤紫色の発光を確認した。
【0048】
実施例1の検知センサの蛍光スペクトルを分析したところ、アルマイト皮膜からは450nm付近にピークを有する蛍光が発生しており、該蛍光の強度は、酸素の有無に無関係で常に一定であった。
一方、ポルフィリンからは650nm付近にピークを有する蛍光が発生しており、該蛍光の強度は、酸素の有無により、大きく変化していることが確認された。(図9参照)
【0049】
上記実施例1により、光検出器などの特別な装置を必要とすること無く、酸素の有無を検知することが可能な検知センサを提供できることが確認された。
【0050】
(実施例2)
多孔質アルミナ基板にピラニンとポリフィリンを吸着させて、実施例2の検知センサを作成した。
実施例2の検知センサに、紫外線(390nm)の励起光を照射したところ、図10に示す蛍光スペクトルの強度分布が得られた。実線は酸素が無い場合であり、点線は酸素がある場合を示す。そして、酸素が無い場合には、赤色の発光が観測され、酸素がある場合には、赤紫色の発光となった。
実施例2のように、酸素吸着反応に対応して発光光量が変化する2種類の蛍光体を使用した場合でも、本発明に係る検知センサが有効に機能していることが確認された。
【0051】
(実施例3)
スチルベン顔料とRu金属錯体顔料とをポリスチレンに分散させ、支持体上に塗布して、実施例3の検知センサを作成した。
実施例3の検知センサに、355nmの励起光を照射したところ、図11に示す蛍光スペクトルの強度分布が得られた。430nm付近の蛍光ピークはスチルベンによるものであり、650nm付近の蛍光ピークはRuによるものである。
次に、検知センサの環境温度を350Kと300Kとした場合に、図11の実線は350Kのスペクトル分布、点線は300Kのスペクトル分布を示しており、温度変化により、検知センサから出力される色が大きく異なることが確認された。
【0052】
(実施例4)
多孔質アルミナ上に、カルボキシル基を有するピレン誘導体をその溶液から吸着させる。溶液濃度と温度を適切に選択することで、単量体構造と二量体構造とを共存させた膜を作製することができ、実施例4の検知センサを作成した。
図12には、実施例4の検知センサを、水に浸した場合の発光スペクトル(実線)と、アセトニトリル(MeCN)に浸した場合の発光スペクトル(点線)とを示す。
これにより、溶液に化学的性質が非水溶媒であるか否かにより、蛍光スペクトルが大きく変化し、蛍光色の色の変化により、溶液が特定の化学的性質を有するか否かが、容易に判別可能であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上、説明したように、本発明により、光検出器などの特別な装置を必要とすること無く物理的又は化学的刺激の有無を検知することが可能な検知センサ及びその使用方法を提供することが可能であり、また、励起光などの検知センサに照射する光量が変動した場合でも、安定的に物理的又は化学的刺激の大きさを検知することが可能な検知センサ及びその使用方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の検知センサの第1の形態を示す概略図である。
【図2】本発明の検知センサからの出力光のスペクトル強度分布の概要を示す図である。
【図3】本発明の検知センサ(第1の形態の応用例1)からの出力光のスペクトル強度分布の概要を示す図である。
【図4】本発明の検知センサの第1の形態の応用例2を示す概略図である。
【図5】本発明の検知センサの第2の形態を示す概略図である。
【図6】本発明の検知センサの第2の形態の応用例を示す概略図である。
【図7】本発明の検知センサの第3の形態を示す概略図である。
【図8】本発明の検知センサの第3の形態の応用例を示す概略図である。
【図9】実施例1の検知センサに係る蛍光スペクトル分布を示す図である。
【図10】実施例2の検知センサに係る蛍光スペクトル分布を示す図である。
【図11】実施例3の検知センサに係る蛍光スペクトル分布を示す図である。
【図12】実施例4の検知センサに係る蛍光スペクトル分布を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 支持体
2,3 蛍光体
4,5,6,10,11 蛍光体層
7,13 色素
8 色素・蛍光体層
9,14 色素層
12 光吸収層
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知センサ及びその使用方法に関し、特に、物理的又は化学的刺激に対応して出力する光スペクトルを変化させる検知センサ並びに該検知センサの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、酸素消光性を有する色素を基板上に付着させた酸素センサなどのように、物理的又は化学的刺激により発光光量が変化する検知センサが実用化されている。
特許文献1には、アルミニウムやチタンなどの金属母材面に多孔質の酸化皮膜を形成し、該酸化皮膜表面にルテニウム、白金、オスミウム、ポルフィリンなどの酸素感応物質を吸着させた酸素センサが開示されている。
【特許文献1】特許第3101671号公報
【0003】
また、特許文献2には、酸素消光性の発光色素層の上に、コバルトポルフィリン錯体などの酸素分子と結合することにより吸収スペクトルが変化する吸収色素層を形成した検知センサが開示されている。
【特許文献2】特開2004−28650号公報
【0004】
さらに、特許文献3には、金属酸化物層上にカルボキシル基あるいはスルホン基を持つ感酸素及び感圧機能を有する色素を結合させる酸素及び圧力センサが開示されている。
【特許文献3】特開2002−162354号公報
【0005】
これらの検知センサは、いずれも検知センサが出力する特定波長の光強度変化を測定し、物理的又は化学的刺激の大きさを検知するものであるが、このような光強度の変化を測定するには光検出器を別途必要とするため、測定方法全体が高コスト化し、測定操作も煩雑化するなどの問題を生じていた。
また、検知センサが出力する光の光量は、検知センサに照射する励起光の光量にも依存し、励起光の光量が変動すると検知センサの光出力が変化する。このため、励起光を一定に保つ工夫や励起光の光量を別途検出する装置が必要となるなど、更に高コスト化する原因ともなっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決する課題は、上述した問題を解決し、光検出器などの特別な装置を必要とすること無く物理的又は化学的刺激の有無を検知することが可能な検知センサ及びその使用方法を提供することであり、また、励起光などの検知センサに照射する光量が変動した場合でも、安定的に物理的又は化学的刺激の大きさを検知することが可能な検知センサ及びその使用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、励起光を受けて異なる波長の蛍光を放射する複数種類の蛍光体から構成され、該複数種類の蛍光体の全種類又は少なくとも一部の種類は、同一の物理的又は化学的刺激に反応し放射する蛍光の放射光量が変化する応答性を有し、該複数種類の蛍光体の内の少なくとも一種類が他の蛍光体と該応答性が異なることを特徴とするとする検知センサである。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の検知センサにおいて、該複数種類の蛍光体の内の少なくとも一種類であり全種類ではない蛍光体が、該応答性を示さないものであることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、励起光を受けて特定波長の蛍光を放射する蛍光体と、該特定波長と異なる波長の光を反射する色素とから構成され、該蛍光体が物理的又は化学的刺激に反応し放射する蛍光の放射光量が変化する応答性を有することを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、励起光を受けて異なる波長の蛍光を放射する複数種類の蛍光体を含む蛍光体層と、該蛍光体層を被覆すると共に、該複数種類の蛍光体の内の少なくとも一種類以上であり全種類ではない特定の蛍光体に対し、該特定の蛍光体の励起光又は蛍光を吸収する光吸収層とを有し、該光吸収層は物理的又は化学的刺激に反応し吸収する吸収量が変化する応答性を有することを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、異なる波長の光を反射する複数種類の色素を含む色素層と、該色素層を被覆すると共に、該複数種類の色素の内の少なくとも一種類以上であり全種類ではない特定の色素に対し、該特定の色素の反射光を吸収する光吸収層とを有し、該光吸収層は物理的又は化学的刺激に反応し吸収する吸収量が変化する応答性を有することを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の検知センサにおいて、該物理的又は化学的刺激は、酸素吸着、圧力、温度、又は溶媒の化学的性質のいずれかであることを特徴とする。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の検知センサの使用方法において、該検知センサから出力される光の色の変化により該物理的又は化学的刺激の有無を判断することを特徴とする。
【0014】
請求項8に係る発明は、請求項1に記載の検知センサの使用方法において、該検知センサから出力される少なくとも2つの異なる波長の光の相対的な光強度比を測定し、該光強度比の変化により、該物理的又は化学的刺激の大きさを判断することを特徴とする。
【0015】
請求項9に係る発明は、請求項2乃至6のいずれかに記載の検知センサの使用方法において、該検知センサから出力される光のうち、該物理的又は化学的刺激により出力光量が変化する変化光と該物理的又は化学的刺激により出力光量が変化しない無変化光との相対的な光強度比の変化により、該物理的又は化学的刺激の大きさを判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明により、検知センサが、起光を受けて異なる波長の蛍光を放射する複数種類の蛍光体から構成され、該複数種類の蛍光体の全種類又は少なくとも一部の種類は、同一の物理的又は化学的刺激に反応し放射する蛍光の放射光量が変化する応答性を有し、該複数種類の蛍光体の内の少なくとも一種類が他の蛍光体と該応答性が異なるため、物理的又は化学的刺激に反応して、検知センサから出力される光スペクトルが異なり、出力光の色合いの変化により物理的又は化学的刺激の有無を判別することが可能となる。しかも検知センサの出力光には、蛍光体の応答性が他の蛍光体と異なるものが存在するため、異なる波長における相対的な光強度比を測定することにより、励起光の照射光量の変化に依存せずに、物理的又は化学的刺激の大きさを測定することも可能となる。
【0017】
請求項2に係る発明により、検知センサにおいて、複数種類の蛍光体の内の少なくとも一種類であり全種類ではない蛍光体が、該応答性を示さないものであるため、物理的又は化学的刺激に反応して、検知センサから出力される光スペクトルが異なり、出力光の色合いの変化により物理的又は化学的刺激の有無を判別することが可能となる。しかも検知センサの出力光には、応答性を示さない蛍光体により物理的又は化学的刺激に依存しない特定波長の光が存在するため、該特定波長光を基準として出力光の波長毎の光強度を測定することにより、励起光の照射光量の変化に依存せずに、物理的又は化学的刺激の大きさを測定することも可能となる。
【0018】
請求項3に係る発明により、検知センサが、励起光を受けて特定波長の蛍光を放射する蛍光体と、該特定波長と異なる波長の光を反射する色素とから構成され、該蛍光体が物理的又は化学的刺激に反応し放射する蛍光の放射光量が変化する応答性を有するため、物理的又は化学的刺激に反応して、検知センサから出力される光スペクトルが異なり、出力光の色合いの変化により物理的又は化学的刺激の有無を判別することが可能となる。しかも検知センサの出力光には物理的又は化学的刺激に依存しない色素からの反射光が存在するため、該反射光を基準として出力光の波長毎の光強度を測定することにより、検知センサに照射される照射光の光量の変化に依存せずに、物理的又は化学的刺激の大きさを測定することも可能となる。
【0019】
請求項4に係る発明により、検知センサが、励起光を受けて異なる波長の蛍光を放射する複数種類の蛍光体を含む蛍光体層と、該蛍光体層を被覆すると共に、該複数種類の蛍光体の内の少なくとも一種類以上であり全種類ではない特定の蛍光体に対し、該特定の蛍光体の励起光又は蛍光を吸収する光吸収層とを有し、該光吸収層は物理的又は化学的刺激に反応し吸収する吸収量が変化する応答性を有するため、物理的又は化学的刺激に反応して、検知センサから出力される光スペクトルが異なり、出力光の色合いの変化により物理的又は化学的刺激の有無を判別することが可能となる。しかも検知センサの出力光には物理的又は化学的刺激に依存しない特定波長の光が存在するため、該特定波長光を基準として出力光の波長毎の光強度を測定することにより、励起光の照射光量の変化に依存せずに、物理的又は化学的刺激の大きさを測定することも可能となる。
【0020】
請求項5に係る発明により、検知センサが、異なる波長の光を反射する複数種類の色素を含む色素層と、該色素層を被覆すると共に、該複数種類の色素の内の少なくとも一種類以上であり全種類ではない特定の色素に対し、該特定の色素の反射光を吸収する光吸収層とを有し、該光吸収層は物理的又は化学的刺激に反応し吸収する吸収量が変化する応答性を有するため、物理的又は化学的刺激に反応して、検知センサから出力される光スペクトルが異なり、出力光の色合いの変化により物理的又は化学的刺激の有無を判別することが可能となる。しかも検知センサの出力光には物理的又は化学的刺激に依存しない特定波長の反射光が存在するため、該反射光を基準として出力光の波長毎の光強度を測定することにより、検知センサに照射する照射光の光量の変化に依存せずに、物理的又は化学的刺激の大きさを測定することも可能となる。
【0021】
請求項6に係る発明により、検知センサにおける物理的又は化学的刺激は、酸素吸着、圧力、温度、又は溶媒の化学的性質のいずれかであるため、検知センサの色合いで、酸素、加圧、温度変化や溶媒の有無を容易に検知できる。また、励起光などの検知センサに照射する光量が変動した場合でも、安定的に酸素濃度や加圧量を検知することが可能となる。
【0022】
請求項7に係る発明により、検知センサの使用方法において、該検知センサから出力される光の色の変化により、物理的又は化学的刺激の有無を判断するため、光検出器などの特別な装置を不要とすることが可能となる。
【0023】
請求項8に係る発明により、検知センサの使用方法において、該検知センサから出力される少なくとも2つの異なる波長の光の相対的な光強度比を測定し、該光強度比の変化により、物理的又は化学的刺激の大きさを判断するため、励起光などの検知センサに照射する光量が変動した場合でも、安定的に物理的又は化学的刺激の大きさを検知することが可能となる。
【0024】
請求項9に係る発明により、検知センサの使用方法において、該検知センサから出力される光のうち、物理的又は化学的刺激により出力光量が変化する変化光と該物理的又は化学的刺激により出力光量が変化しない無変化光との相対的な光強度比の変化により、該物理的又は化学的刺激の大きさを判断するため、励起光などの検知センサに照射する光量が変動した場合でも、安定的に物理的又は化学的刺激の大きさを検知することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明に係る検知センサ及びその使用方法について、以下に詳細に説明する。
図1は、本発明に係る検知センサの第1の形態を示す概略図である。
図1の検知センサは、支持体1上に蛍光体2,3を含む蛍光体層4を形成することにより構成される。蛍光体2,3は励起光hνの照射を受けると異なる波長の蛍光を発する蛍光体であり、複数種類の蛍光体は、圧力などの物理的刺激や酸素との結合などの化学的刺激により、蛍光体の発光量が変化する蛍光体を使用する。ただし、各蛍光体における、物理的又は化学的刺激に反応し放射する蛍光の放射光量が変化する応答性は、各々異なるものを使用する。
図1の例では、2種類の蛍光体を例示しているが、これに限らず、3種類以上の蛍光体を使用した場合は、各蛍光体が発する蛍光が異なる波長となるよう選択することが好ましい。
【0026】
また、複数の異なる物理的又は化学的刺激を同一の検知センサで観察・測定するためには、物理的又は化学的刺激に反応する複数種類の蛍光体を、混在させて、あるいは、同一検知センサの表面を複数に分割し、各分割領域毎に物理的又は化学的刺激の種類毎に区別した蛍光体層4を組み込むことが可能である。
【0027】
図2は、図1の検知センサから出力される蛍光のスペクトルの強度分布(横軸は波長λを示し、縦軸は光強度Iを示す。)を表す図であり、蛍光体2は励起光を受けて波長λ1のスペクトルAの蛍光を発し、また、蛍光体3は励起光を受けて波長λ2のスペクトルBの蛍光を発するものと仮定する。
仮に、蛍光体2又は3は、物理的又は化学的刺激を受けると蛍光の発光量が減少し、図2の点線で示すスペクトルA’又はB’のようにスペクトル分布が変化する場合に、物理的又は化学的刺激が無い時は、検知センサが出力する光スペクトルは、スペクトルA及びBを重ね合わせたスペクトルとなり、物理的又は化学的刺激がある場合には、スペクトルA’及びB’を重ね合わせたスペクトルとなる。
【0028】
このため、検知センサからの発光色を観察し、スペクトルの色合いの変化から、物理的又は化学的刺激の有無が判断できることとなる。
人間が目視により容易に観察可能とするためには、蛍光体から発する蛍光の波長を、下限値360〜400nm、上限値760〜830nmの可視光領域内の波長を含むように設定すると共に、光量の変化する2つの波長λ1とλ2との波長差を50nm以上、より好ましくは100nm以上とすることが望ましい。
【0029】
また、光検出器を使用してλ1とλ2のピーク強度を測定し、λ1のピーク強度I1に対するλ2のピーク強度I2の比I2/I1を算出する。この比I2/I1は、励起光hνの光強度が変化した場合でも、常に一定の値を示し、蛍光体3が物理的又は化学的刺激に反応し蛍光の光強度が変化した場合にのみ変化するため、励起光の照射光量に依存しない物理的又は化学的刺激の大きさを測定することが可能となる。
【0030】
検知センサに使用される支持体1は、各種の材料を使用することが可能であり、例えば、アルミニウムやチタンなどの金属やプラスチックあるいはセラミックス、さらには、プラスチックのベースフィルムに金属を付着させた複合体なども使用可能である。
蛍光体2は、物理的又は化学的刺激に対して放射する蛍光の光量が変化しないものであれば各種の蛍光体を使用することが可能である。特に、上述した比I2/I1で測定する際には、後述する物理的又は化学的刺激に反応する蛍光体3の蛍光を受けて再発光する蛍光体の使用は好ましくなく、蛍光体3の発光波長λ2は、蛍光体2の励起エネルギー以下とすることが好ましい。
【0031】
蛍光体3としては、物理的又は化学的刺激を考慮して種々のものが選択でき、例えば、酸素感応性のある蛍光体としては、特許文献1乃至3に示されているような白金オクタエチルポルフィリン、白金テトラキスペンタフルオロフェニルポルフィリンなどの金属ポルフィリン錯体及びその誘導体、ビピリジル、フェナンスロリンなどを配位子とするルテニウム、オスミウム、イリジウムなどの金属錯体及びその誘導体、ピレン、ペリレンなどの多環式芳香族化合物及びその誘導体などが使用可能である。
また、温度変化に対する応答性を有する蛍光体としては、ルテニウム、オスミウム、イリジウムなどの金属錯体顔料、スチルベン顔料などが使用可能である。
さらに、溶媒の化学的性質に対する応答性を有する蛍光体として、ピレンモノマーとダイマーは、溶液の性質(非水溶媒か否か)を判断する際に使用することが可能である。
【0032】
蛍光体2,3を分散し蛍光体層4を形成するための樹脂としては、少なくとも励起光hν、蛍光λ1及びλ2に対して透明な樹脂であり、蛍光体2,3との結着性や支持体1との結着性の高い樹脂であれば特に限定されないが、物理的又は化学的刺激に対する蛍光体の反応性を向上させるため、例えば、酸素感応性を向上させるには、塩化ビニールやポリメチルなどの酸素透過性樹脂を使用するなど、物理的又は化学的刺激を伝達し易い材料を使用することが好ましい。
【0033】
また、特許文献1に示すように、蛍光体を支持体1の表面に直接結着させることも可能である。
さらに、シュウ酸を含む電解液で支持体となるアルミニウムを陽極酸化させた場合には、酸化部分が蛍光特性を持つ。このように、支持体自体に蛍光特性を持たせ、支持体に付着させる蛍光体の一部分を担うよう構成することも可能である。
【0034】
次に、本発明に係る検知センサの第1の形態の応用例1について説明する。
図1の検知センサを構成する蛍光体2について、図3に示すように、物理的又は化学的刺激に対する応答性を有しない蛍光体を使用する。
この場合は、物理的又は化学的刺激がない場合には、蛍光体2は励起光を受けて波長λ1のスペクトルAの蛍光を発し、また、蛍光体3は励起光を受けて波長λ2のスペクトルBの蛍光を発する。しかし、物理的又は化学的刺激を受けると蛍光体3のみの発光量が減少し、図3の点線で示すスペクトルB’のようにスペクトル分布が変化する。よって、物理的又は化学的刺激が無い時は、検知センサが出力する光スペクトルは、スペクトルA及びBを重ね合わせたスペクトルとなり、物理的又は化学的刺激がある場合には、スペクトルA及びB’を重ね合わせたスペクトルとなる。
【0035】
このため、検知センサからの発光色を観察し、スペクトルの色合いの変化から、物理的又は化学的刺激の有無が判断できることとなる。
また、光検出器を使用してλ1とλ2のピーク強度を測定し、λ1のピーク強度I1に対するλ2のピーク強度I2の比I2/I1を算出する。この比I2/I1は、励起光hνの光強度が変化した場合でも、常に一定の値を示し、蛍光体3が物理的又は化学的刺激に反応し蛍光の光強度が変化した場合にのみ変化するため、励起光の照射光量に依存しない物理的又は化学的刺激の大きさを測定することが可能となる。
【0036】
図4は、図1に示す検知センサの第1の形態の応用例2あり、支持体1上に、蛍光体2を含む蛍光体層5と、蛍光体3を含む蛍光体層6とを積層した検知センサを示す。
蛍光体2及び3は、共に物理的又は化学的刺激に応じて出力する蛍光の光量が変化する応答性を有しても良いが、その場合には、両者の応答性が図2に示すように異なることが必要である。また、蛍光体2及び3のいずれか一方を、物理的又は化学的刺激に対して応答性なしとすることも可能である。この場合には、蛍光体3を、物理的又は化学的刺激に応じて出力する蛍光の光量が変化する蛍光体とし、該蛍光体3を含む蛍光体層6は、物理的又は化学的刺激に敏感に反応することが可能なように検知センサの最表面に設置されることが好ましい。
【0037】
他方、蛍光体2を効果的に発光させるには、蛍光体層6の蛍光体を保持している樹脂により、励起光hνや蛍光体2の蛍光波長λ1が減衰しないような材料を選定することが好ましい。また、仮に蛍光体2が物理的又は化学的刺激に反応する蛍光体である場合でも、蛍光体層5の蛍光体2を分散する樹脂に、例えば、酸素不透過性の樹脂などを使用し、物理的又は化学的刺激から蛍光体2を遮断することにより、物理的又は化学的刺激に反応しない蛍光体として使用することも可能となる。
【0038】
次に、図5は本発明に係る検知センサの第2の形態を示す図である。
図5は、支持体1上に、物理的又は化学的刺激に反応する蛍光体3と、特定の光を反射する色素7を混合して分散した蛍光体・色素膜8を形成している。
色素7は、入射光hνが含む特定波長λaを反射する特性を有しており、λaは、第1の形態を示す図1の蛍光体2の蛍光λ1の代わりを担っている。
【0039】
図5の検知センサを使用する際には、特定波長λa及び蛍光体2を発光させる励起光を含む光を該検知センサに照射し、検知センサから出力される波長λa及びλ2を観察することで、色合いの変化から物理的又は化学的刺激の有無を判断する。また、波長λa及びλ2の各波長間の光強度比を測定することで、物理的又は化学的刺激の大きさを判断することが可能となる。
【0040】
検知センサに使用される色素7は、蛍光λ2と異なる波長の光を反射するものであれば、特に限定されない。なお、反射光λaと蛍光λ2との関係は、第1の形態と同様に、人間が目視により容易に観察可能とするためには、可視光領域内の波長を含むように設定すると共に、λaとλ2との波長差を50nm以上、より好ましくは100nm以上とすることが望ましい。
【0041】
図6は、図5の第2の形態の検知センサの応用例を示す図であり、支持体1上に、色素7を含む色素層9と、蛍光体3を含む蛍光体層10順次積層した検知センサである。
蛍光体層10に使用する樹脂には、照射光hνに含まれる蛍光体3の励起光や色素7に入射又は反射される波長λaの光に対して透明な材料を使用することが好ましい。
【0042】
次に、図7は本発明に係る検知センサの第3の形態を示す図である。
図7は、支持体1上に、複数種類の蛍光体2,3を含む蛍光体層11と、物理的又は化学的刺激に反応して特定波長の光透過性が変化する光吸収層12とが形成さている。
図7の検知センサに使用する蛍光体には、物理的又は化学的刺激に反応する蛍光体を含む必要は必ずしもないが、光吸収層12に物理的又は化学的刺激を伝達可能な材料を使用する場合には、蛍光体2,3のいずれかを物理的又は化学的刺激に反応する蛍光体を使用し、検知センサの感度を高めることが可能である。
【0043】
光吸収層12には、物理的又は化学的刺激に反応して特定波長の光透過性が変化する材料であり、例えば、特許文献2に示すような酸素と結合して特定波長に対する透過性が変化するコバルトポルフィリン錯体などを使用することが可能である。
光吸収層12は、物理的又は化学的刺激に反応しない蛍光体2の励起光や蛍光(波長λ1)は吸収しないが、物理的又は化学的刺激に反応する蛍光体3の励起光や蛍光(波長λ2)を、物理的又は化学的刺激に対応して吸収する特性を有する。また、蛍光体2,3を物理的又は化学的刺激に反応しない蛍光体で構成する場合には、物理的又は化学的刺激に対応して蛍光体2又は3のいずれかの蛍光体に対する励起光や蛍光を吸収する特性を有する材料で光吸収層12を形成する。
【0044】
図7の検知センサを使用する際には、蛍光体2及び3を発光させる励起光を含む光を該検知センサに照射し、検知センサから出力される波長λ1及びλ2を観察することで、色合いの変化から物理的又は化学的刺激の有無を判断する。また、波長λ1及びλ2の各波長間の光強度比を測定することで、物理的又は化学的刺激の大きさを判断することが可能となる。
【0045】
図8は、検知センサの第3の形態の応用例であり、支持体1上に、異なる波長の光を反射する色素7,13を含む色素層14と、物理的又は化学的刺激に反応して特定波長の光透過性が変化する光吸収層12とが形成さている。
光吸収層が吸収する波長は、各色素は反射する波長λa,λbのいずれかである。光吸収層12が物理的又は化学的刺激に反応することにより、特定の色素、例えば色素13に入射する照射光の中の特定波長成分λbと色素13から反射する反射光(波長λb)を吸収し、検知センサから出力される出力光の色合いを変化させたり、λaに対するλbの光強度を変化させることが可能となる。
【0046】
上述した図4乃至図8に係る各種の検知センサに対しても、図1の検知センサに係る支持体や蛍光体などの各種の材料や構成を適用可能であることは言うまでもない。
【実施例】
【0047】
(実施例1)
アルミニウム基板に硫酸浴を使用してアルマイト皮膜を形成し、その後シュウ酸浴を使用してさらにアルマイト皮膜を形成した。そして該皮膜表面にポルフィリンを付着させ実施例1の検知センサを作成した。
実施例1の検知センサに対し、365nmの励起光を照射したところ、大気中では青色、窒素雰囲気中では赤紫色の発光を確認した。
【0048】
実施例1の検知センサの蛍光スペクトルを分析したところ、アルマイト皮膜からは450nm付近にピークを有する蛍光が発生しており、該蛍光の強度は、酸素の有無に無関係で常に一定であった。
一方、ポルフィリンからは650nm付近にピークを有する蛍光が発生しており、該蛍光の強度は、酸素の有無により、大きく変化していることが確認された。(図9参照)
【0049】
上記実施例1により、光検出器などの特別な装置を必要とすること無く、酸素の有無を検知することが可能な検知センサを提供できることが確認された。
【0050】
(実施例2)
多孔質アルミナ基板にピラニンとポリフィリンを吸着させて、実施例2の検知センサを作成した。
実施例2の検知センサに、紫外線(390nm)の励起光を照射したところ、図10に示す蛍光スペクトルの強度分布が得られた。実線は酸素が無い場合であり、点線は酸素がある場合を示す。そして、酸素が無い場合には、赤色の発光が観測され、酸素がある場合には、赤紫色の発光となった。
実施例2のように、酸素吸着反応に対応して発光光量が変化する2種類の蛍光体を使用した場合でも、本発明に係る検知センサが有効に機能していることが確認された。
【0051】
(実施例3)
スチルベン顔料とRu金属錯体顔料とをポリスチレンに分散させ、支持体上に塗布して、実施例3の検知センサを作成した。
実施例3の検知センサに、355nmの励起光を照射したところ、図11に示す蛍光スペクトルの強度分布が得られた。430nm付近の蛍光ピークはスチルベンによるものであり、650nm付近の蛍光ピークはRuによるものである。
次に、検知センサの環境温度を350Kと300Kとした場合に、図11の実線は350Kのスペクトル分布、点線は300Kのスペクトル分布を示しており、温度変化により、検知センサから出力される色が大きく異なることが確認された。
【0052】
(実施例4)
多孔質アルミナ上に、カルボキシル基を有するピレン誘導体をその溶液から吸着させる。溶液濃度と温度を適切に選択することで、単量体構造と二量体構造とを共存させた膜を作製することができ、実施例4の検知センサを作成した。
図12には、実施例4の検知センサを、水に浸した場合の発光スペクトル(実線)と、アセトニトリル(MeCN)に浸した場合の発光スペクトル(点線)とを示す。
これにより、溶液に化学的性質が非水溶媒であるか否かにより、蛍光スペクトルが大きく変化し、蛍光色の色の変化により、溶液が特定の化学的性質を有するか否かが、容易に判別可能であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上、説明したように、本発明により、光検出器などの特別な装置を必要とすること無く物理的又は化学的刺激の有無を検知することが可能な検知センサ及びその使用方法を提供することが可能であり、また、励起光などの検知センサに照射する光量が変動した場合でも、安定的に物理的又は化学的刺激の大きさを検知することが可能な検知センサ及びその使用方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の検知センサの第1の形態を示す概略図である。
【図2】本発明の検知センサからの出力光のスペクトル強度分布の概要を示す図である。
【図3】本発明の検知センサ(第1の形態の応用例1)からの出力光のスペクトル強度分布の概要を示す図である。
【図4】本発明の検知センサの第1の形態の応用例2を示す概略図である。
【図5】本発明の検知センサの第2の形態を示す概略図である。
【図6】本発明の検知センサの第2の形態の応用例を示す概略図である。
【図7】本発明の検知センサの第3の形態を示す概略図である。
【図8】本発明の検知センサの第3の形態の応用例を示す概略図である。
【図9】実施例1の検知センサに係る蛍光スペクトル分布を示す図である。
【図10】実施例2の検知センサに係る蛍光スペクトル分布を示す図である。
【図11】実施例3の検知センサに係る蛍光スペクトル分布を示す図である。
【図12】実施例4の検知センサに係る蛍光スペクトル分布を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 支持体
2,3 蛍光体
4,5,6,10,11 蛍光体層
7,13 色素
8 色素・蛍光体層
9,14 色素層
12 光吸収層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光を受けて異なる波長の蛍光を放射する複数種類の蛍光体から構成され、該複数種類の蛍光体の全種類又は少なくとも一部の種類は、同一の物理的又は化学的刺激に反応し放射する蛍光の放射光量が変化する応答性を有し、該複数種類の蛍光体の内の少なくとも一種類が他の蛍光体と該応答性が異なることを特徴とするとする検知センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の検知センサにおいて、該複数種類の蛍光体の内の少なくとも一種類であり全種類ではない蛍光体が、該応答性を示さないものであることを特徴とする検知センサ。
【請求項3】
励起光を受けて特定波長の蛍光を放射する蛍光体と、該特定波長と異なる波長の光を反射する色素とから構成され、該蛍光体が物理的又は化学的刺激に反応し放射する蛍光の放射光量が変化する応答性を有することを特徴とする検知センサ。
【請求項4】
励起光を受けて異なる波長の蛍光を放射する複数種類の蛍光体を含む蛍光体層と、該蛍光体層を被覆すると共に、該複数種類の蛍光体の内の少なくとも一種類以上であり全種類ではない特定の蛍光体に対し、該特定の蛍光体の励起光又は蛍光を吸収する光吸収層とを有し、該光吸収層は物理的又は化学的刺激に反応し吸収する吸収量が変化する応答性を有することを特徴とする検知センサ。
【請求項5】
異なる波長の光を反射する複数種類の色素を含む色素層と、該色素層を被覆すると共に、該複数種類の色素の内の少なくとも一種類以上であり全種類ではない特定の色素に対し、該特定の色素の反射光を吸収する光吸収層とを有し、該光吸収層は物理的又は化学的刺激に反応し吸収する吸収量が変化する応答性を有することを特徴とする検知センサ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の検知センサにおいて、該物理的又は化学的刺激は、酸素吸着、圧力、温度、又は溶媒の化学的性質のいずれかであることを特徴とする検知センサ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の検知センサの使用方法において、該検知センサから出力される光の色の変化により該物理的又は化学的刺激の有無を判断することを特徴とする検知センサの使用方法。
【請求項8】
請求項1に記載の検知センサの使用方法において、該検知センサから出力される少なくとも2つの異なる波長の光の相対的な光強度比を測定し、該光強度比の変化により、該物理的又は化学的刺激の大きさを判断することを特徴とする検知センサの使用方法。
【請求項9】
請求項2乃至6のいずれかに記載の検知センサの使用方法において、該検知センサから出力される光のうち、該物理的又は化学的刺激により出力光量が変化する変化光と該物理的又は化学的刺激により出力光量が変化しない無変化光との相対的な光強度比の変化により、該物理的又は化学的刺激の大きさを判断することを特徴とする検知センサの使用方法。
【請求項1】
励起光を受けて異なる波長の蛍光を放射する複数種類の蛍光体から構成され、該複数種類の蛍光体の全種類又は少なくとも一部の種類は、同一の物理的又は化学的刺激に反応し放射する蛍光の放射光量が変化する応答性を有し、該複数種類の蛍光体の内の少なくとも一種類が他の蛍光体と該応答性が異なることを特徴とするとする検知センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の検知センサにおいて、該複数種類の蛍光体の内の少なくとも一種類であり全種類ではない蛍光体が、該応答性を示さないものであることを特徴とする検知センサ。
【請求項3】
励起光を受けて特定波長の蛍光を放射する蛍光体と、該特定波長と異なる波長の光を反射する色素とから構成され、該蛍光体が物理的又は化学的刺激に反応し放射する蛍光の放射光量が変化する応答性を有することを特徴とする検知センサ。
【請求項4】
励起光を受けて異なる波長の蛍光を放射する複数種類の蛍光体を含む蛍光体層と、該蛍光体層を被覆すると共に、該複数種類の蛍光体の内の少なくとも一種類以上であり全種類ではない特定の蛍光体に対し、該特定の蛍光体の励起光又は蛍光を吸収する光吸収層とを有し、該光吸収層は物理的又は化学的刺激に反応し吸収する吸収量が変化する応答性を有することを特徴とする検知センサ。
【請求項5】
異なる波長の光を反射する複数種類の色素を含む色素層と、該色素層を被覆すると共に、該複数種類の色素の内の少なくとも一種類以上であり全種類ではない特定の色素に対し、該特定の色素の反射光を吸収する光吸収層とを有し、該光吸収層は物理的又は化学的刺激に反応し吸収する吸収量が変化する応答性を有することを特徴とする検知センサ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の検知センサにおいて、該物理的又は化学的刺激は、酸素吸着、圧力、温度、又は溶媒の化学的性質のいずれかであることを特徴とする検知センサ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の検知センサの使用方法において、該検知センサから出力される光の色の変化により該物理的又は化学的刺激の有無を判断することを特徴とする検知センサの使用方法。
【請求項8】
請求項1に記載の検知センサの使用方法において、該検知センサから出力される少なくとも2つの異なる波長の光の相対的な光強度比を測定し、該光強度比の変化により、該物理的又は化学的刺激の大きさを判断することを特徴とする検知センサの使用方法。
【請求項9】
請求項2乃至6のいずれかに記載の検知センサの使用方法において、該検知センサから出力される光のうち、該物理的又は化学的刺激により出力光量が変化する変化光と該物理的又は化学的刺激により出力光量が変化しない無変化光との相対的な光強度比の変化により、該物理的又は化学的刺激の大きさを判断することを特徴とする検知センサの使用方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−121233(P2007−121233A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−317323(P2005−317323)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(591117206)株式会社東亜電化 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(591117206)株式会社東亜電化 (6)
【Fターム(参考)】
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