説明

検知装置、検知方法およびこれを用いた手乾燥装置

【課題】誘電体の接近を正確に検知でき、検知装置を用いた手乾燥装置によれば、ケーシング表面に付着する水滴や汚れに拘わらず、手挿入部に挿入されたユーザの手を正確に検知できる検知装置を提供する。
【解決手段】誘電体が接近可能な少なくとも1つの導電体と、所定の周期で、経時的に変化する前記導電体の静電容量(C(t))を連続的に検出する検出部と、所定の時点を終点とする所定の期間における静電容量の移動平均値(A(t))を算出する制御部とを備える。そして前記制御部は、静電容量(C(t))と前記移動平均値(A(t))との差(D(t))が所定の静電容量差閾値より大きいとき、前記誘電体が前記導電体に接近したと検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ユーザの手などの誘電体が接近したことを検知するための検知装置、検知方法およびこれを用いた手乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでのハンドドライヤ(手乾燥装置)は、たとえば特許文献1に記載されているように、赤外線発光素子等(発光部)からの赤外線光がユーザの手により遮断されて、赤外線吸収部(受光部)に到達する赤外線光が基準値以下となったとき、ユーザの手が手挿入部内に挿入されたと検知する光電センサ(光電気式センサ)を採用していた。こうしたハンドドライヤは、一般に、ユーザの手が手挿入部内に挿入されたことを光電センサにより検知されたとき、ユーザの手を乾燥させるために送風モータを駆動するものである。
【0003】
すなわち光電センサは、概略、発光部および受光部からなり、受光部が発光部からの光を遮光したとき、または特定の反射光を受光したときに、発光部と受光部との間にユーザの手などが介在することを検知するものであり、その原理・メカニズムは単純である。しかし、光電センサは、たとえば水滴や汚れなどのユーザの手以外のものが発光部または受光部付近に付着した場合でも、すなわち実際には手が手挿入部内に挿入されていない場合でも、ユーザの手を「検知」して、乾燥させるために送風モータを駆動してしまう。
【0004】
また光電センサを用いたハンドドライヤにおいて、発光部および受光部をケーシング内に設置するために、ケーシングの少なくとも一部を、光透過性を有する材料で形成しなければならない。しかしケーシング本体を構成する材料は、通常、不透明な材料で構成されるので、発光部および受光部に対向するケーシング本体の一部において、光透過性材料を別途形成したもの(窓部)を埋め込む必要がある。しかし、異なる部材(ケーシング本体および窓部)を別々に形成して組み込む場合、組み立て作業が煩雑になるため生産コストが増大し、それぞれの部材の間に段差や隙間が生じ、水滴や汚れが付着しやすく、清掃しにくいため衛生上の課題が残る。
【0005】
一方、たとえば特許文献2に記載されているように、トイレ装置などのサニタリー関連装置において、ユーザが便座に座ったことにより変化する静電容量を検知する静電容量方式の人体検知センサが提案されている。特許文献2に記載の人体検知センサは、人体が接近することにより静電容量が変化するアンテナ電極と、アンテナ電極おける静電容量の変化を検出する静電容量検出器と、制御部とを有し、制御部が静電容量検出器からの出力電圧が基準電圧以上であると判断したとき、ユーザが近接していることを検知するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4105209号公報
【特許文献2】特開2010−181369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の光電センサを採用したハンドドライヤは、上述のように、その原理は単純であるものの、水滴や汚れが発光部または受光部付近に付着した場合でも、ユーザの手を検知したものとして誤作動するおそれがあり、これを回避するためには、定期的に発光部または受光部を含むハンドドライヤを清掃しなければならない。また、ケーシング本体および窓部を別々に作製して組み込み、これらの別部材の間の防水シール性を担保する必要があるため生産コストが増大する。さらに従来式のハンドドライヤにおいて、手乾燥時に生じる水滴飛沫を蓄えるドレンタンク内の水位レベル(排水の蓄積容量)についても、光電センサが用いられているが、水滴および汚れはドレンタンク付近において、より付着しやすく、誤検知の可能性を払拭することは困難であった。排水がドレンタンク内に満水になったとき、清掃を要するものとして、ハンドドライヤの使用が中止するように設計された場合には、ハンドドライヤの誤作動のおそれはなくとも、手を乾燥する機能に支障はないにもかかわらず、誤検知によりハンドドライヤを使用できないおそれがある。
【0008】
一方、特許文献2に記載されている人体検知センサは、トイレの便座に設置されるものであり、ハンドドライヤ(手乾燥装置)に採用されるものではない。とりわけ手挿入部に挿入されたユーザの手を乾燥させるハンドドライヤにおいては、迅速な乾燥を促すために、ユーザの両手を手挿入部内で摺り合わせたり、揉み合わせたりすることが多く、ユーザの手が手挿入部内に安定的に維持されることは少ない。したがってハンドドライヤにおいて、静電容量検出器からの出力電圧が基準電圧以上であるか否かにのみ基づいて、ハンドドライヤの送風モータを駆動すると、送風モータの不必要なオン・オフのスイッチングが繰り返され、断続的にオン・オフスイッチングされる送風モータ音により、故障しているのではないかとの不安感および不快感をユーザに与える場合がある。
【0009】
また静電容量検出器からの出力電圧に基づいて送風モータを駆動するようにハンドドライヤを設計したとき、ユーザの手はハンドドライヤの手挿入部から離脱したものの、ユーザの手からの飛沫水滴が静電容量検出器に対向した位置に付着し続けた場合、無駄に継続して送風モータを駆動することになる。
【0010】
すなわち、ユーザの手などの静止していない(非固定的な)誘電体が所定の位置に接近したことを、静電容量の変化を検出することにより、正確に検知することができる検知装置を提案することが求められている。とりわけ、この静電容量変化がユーザの手または飛沫水滴(汚れを含む)のいずれに起因するものか判別し、ユーザの手を乾燥すべき場合にのみ送風モータを駆動するハンドドライヤの実現に対する強い要請がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで本願発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、検知装置に関し、この検知装置は、誘電体が接近可能な少なくとも1つの導電体と、所定の周期(τ)で、経時的に変化する前記導電体の静電容量(C(t))を連続的に検出する検出部と、所定の時点(t)を終点とする所定の期間(nτ:nは2以上の自然数)における静電容量の移動平均値(A(t))を算出する制御部とを備える。そして前記制御部は、静電容量(C(t))と前記移動平均値(A(t))との差(D(t))が所定の静電容量差閾値(Dth)より大きいとき、前記誘電体が前記導電体に接近したと検知する。
【発明の効果】
【0012】
本願発明に係る検知装置によれば、接近したことを正確に検知することができる。また本願発明に係る手乾燥装置によれば、ケーシング表面に付着する水滴や汚れに拘わらず、手挿入部に挿入されたユーザの手を正確に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本願発明に係る実施の形態1によるハンドドライヤを示す斜視図である。
【図2】(a)は図1のハンドドライヤのケーシングを内側から見た正面図であり、(b)は前後方向の鉛直断面から見たハンドドライヤの側方断面図である。
【図3】ハンドドライヤの概略的な電気的な回路構成を示すブロック回路図である。
【図4】(a)および(b)は、ケーシングの内壁に設けた開口部を含む溝部を示す斜視図および平面図である。
【図5】(a)および(b)は、図4(a)および(b)の変形例による溝部を示す斜視図および平面図である。
【図6】(a)および(b)は、検知センサにより検出された導電線の静電容量および所定の閾値を示すグラフである。
【図7】(a)および(b)は、実施の形態1の変形例によるハンドドライヤの図2(a)および図2(b)と同様の図である。
【図8】(a)〜(c)は、第2の送風口を含むケーシングの一部を示す拡大断面図である。
【図9】本願発明に係るハンドドライヤの動作方法を示すフローチャートである。
【図10】制御部が送風モータを駆動するときの制御プロセス(サブルーチン)を示すタイミングチャートである。
【図11】(a)および(b)は、実施の形態2のハンドドライヤの動作方法を示すタイミングチャートである。
【図12】(a)は、実施の形態3のハンドドライヤにおいて、ユーザの手の位置と導電線の静電容量との関係を示すグラフであり、(b)は、和信号(太実線)と差信号(細実線)とをプロットしたものである。
【図13】実施の形態4によるハンドドライヤを示す斜視図である。
【図14】(a)は図13のハンドドライヤのケーシングを内側から見た正面図であり、(b)は前後方向の鉛直断面から見たハンドドライヤの側方断面図である。
【図15】(a)および(b)は、実施の形態4の変形例によるハンドドライヤの図14(a)および図14(b)と同様の図である。
【図16】(a)および(b)は、実施の形態4の別の変形例によるハンドドライヤの図14(a)および図14(b)と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本願発明に係る誘電体式検知センサ(以下、単に「検知センサ」または「検出部」という。)およびこれを用いたハンドドライヤ(手乾燥装置)の実施の形態を説明する。以下の実施の形態の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば「左右方向」または「前後方向」など)を適宜用いるが、これらは説明のためのものであって、これらの用語は本願発明を限定するものでない。また、各添付図面において、同様の構成部品は同様の参照符号を用いて図示されている。
【0015】
図1は本願発明の実施の形態1によるハンドドライヤ1を示す斜視図である。ハンドドライヤ1は、ユーザが手を洗った後に、水で濡れた手に乾燥風を当てて、手を乾燥させるためのものであり、たとえば本願出願人の登録商標「ジェットタオル」シリーズとして市販されている。このハンドドライヤ1は、ユーザの手を挿入するための凹状の空間、すなわち手挿入部11を形成するケーシング(筐体)10を有する。またハンドドライヤ1は、ユーザの手から飛沫した水滴を蓄積するドレンタンク(排水タンク)12を有する。さらにハンドドライヤ1は、ハンドドライヤ1が使用可能状態(待機状態)であることを示す緑色LEDランプおよび動作異常を示す赤色LEDランプからなる本体表示部13と、ドレンタンク12内に蓄積されたドレン水(排水)が満水状態であることを示す赤色LEDランプからになるドレン表示部14とを有する。ドレンタンク12は、ケーシング10に対して図1の矢印方向に着脱可能であり、ドレン表示部14は、ドレンタンク12が満水状態になったとき、赤色LEDランプを点灯させることにより、ユーザにドレン水を廃棄処分するように警告するものである。
【0016】
図2(a)は、図1に示すハンドドライヤ1の本体から取り外したケーシング10を内側(設置された壁側)から見た正面図であり、図2(b)は、ハンドドライヤ1に対して前後方向に平行に延びる鉛直断面から見たハンドドライヤ1の側方断面図である。図3は、ハンドドライヤ1の概略的な電気的な回路構成を示すブロック回路図である。ハンドドライヤ1は、ユーザの手が手挿入部11内に挿入されたとき、濡れた手を乾燥させるための乾燥風を形成するための送風モータ42を含む送風部40と、手挿入部11内に紫外線を照射することによりユーザの手の表面を殺菌・滅菌する照明灯52を含む照明部50と、手挿入部11内にユーザの手が挿入されたか否かを検知するための静電容量式の検知センサ20とを有する。またハンドドライヤ1は、送風部40、照明部50、および検知センサ20を制御する制御部30と、これらに適当な直流または交流電源を供給する電源供給部60とを内蔵する。制御部30は、ハンドドライヤ1を構成するその他の電気的部品を実装した回路基板32上に配置してもよい(図2(a))。
【0017】
なお送風モータ42は、濡れた手を乾燥させるために乾燥風を形成するものであれば任意のものを採用することができ、好適には、回転数を制御して、風量を自在に調整できるものが好ましい。また照明灯52についても、殺菌・滅菌作用のある光を照射できるものであれば、当業者に広く知られた任意のものであってもよく、本願発明を限定するものではない。
【0018】
図2(a)および(b)に示すように、ケーシング10は、送風モータ42により形成された乾燥風をユーザの手に向けて案内するための送風口44を有する。また検知センサ20は、制御部30から、送風口44の周囲を介してケーシング10の内壁に沿って手挿入部11まで延びる一対の導電線22a,22bを有する。ハンドドライヤ1の作動時、ユーザは、早期に乾燥させることを期待して、乾燥風が吹き出される送風口44付近に手を移動させる傾向があるので、ユーザの手をより検知しやすくするために、一対の導電線22a,22bは、手挿入部11内において送風口44の周りを取り囲むように形成されていることが好ましい。
【0019】
導電線22a,22bは、たとえば絶縁被膜された導電線(電線、アンテナ線等)であってもよく、誘電体であるユーザの手が手挿入部11内に挿入されたことにより、ケーシング10を介して非接触式に静電容量が変化する導電体であれば任意の材料および構成を採用することができる。この実施の形態においては、検知センサ20は、一対の導電線を有するものとして図示するが、これらの両端を接続して単一の導電線を有するものとしてもよい。
なおユーザの手が手挿入部11内に挿入されたか否かについて、挿入された位置によらず確実に検知するためには、導電線22a,22bは、手挿入部11に対向するケーシング10の内壁のより広い面積において網羅するように構成されることが好ましい。
【0020】
さらに詳細には、図4(a)および(b)に示すように、ケーシング10の内壁に開口部15を含む溝部16を設け、導電線22は、その外径と溝部16の幅が同等となり、かつ、開口部15の幅がその外径より狭小となるように構成して、この開口部15を介して比較的に軟質の絶縁被膜を押し込むことによりケーシング10の内壁に沿って配置される。すなわちケーシング10は、導電線22を溝部16内に収容することを支援する突起部17を有する。このように構成することより、導電線22の配置位置および形状を一定にし、アセンブリの作業効率を改善することができる。この場合、接着テープなどの固定部材を用いて、導電線22をケーシング10に固定する場合に比して、浮遊容量の増加、導電線22の配置位置の安定、作業工数の削減において優れた効果を実現することができる。
【0021】
この変形例として、ケーシング10の内壁において、導電線22の外径より狭小となる開口部15を構成する突起部17を、連続的に形成する代わりに、図5(a)および(b)に示すように、複数位置において断続的に配置しても上記と同様の効果を得ることができる。この変形例は、連続的に延びる突起部17をケーシング10に一体成形することは困難であるが、断続的な突起部17については一体成形することが比較的に容易である場合に、特に有益である。
【0022】
このように構成されたハンドドライヤ1において、ユーザの手が手挿入部11内に挿入されると、検知センサ20が検出する各導電線22a,22bの静電容量が変化する。図6(a)および(b)は、図中破線M1及びM2で示すタイミング期間において霧吹き器(図示せず)で霧状水滴を手挿入部11内に実験的に吹き掛けた後、濡れた手(右手)を挿入したときに、検知センサ20により検出された右手側にある導電線22aの静電容量の経時的変化を示すグラフ(C(t)、細実線)である。この検知センサ20は、たとえばサンプリング周波数を100Hzとしたときに、導電線22aの静電容量を示す静電容量デジタル信号を検出するものであってもよい。このとき、サンプリング間隔(τ)は10msとなる。
【0023】
制御部30は、たとえばサンプリング間隔(τ)の100倍の時間、すなわち過去1秒間(=100×10ms)の移動平均値(A(t))を継続的に算出する。すなわち制御部30は、所定の時点を終点とする所定の期間における(nτ:nは2以上の自然数)静電容量の移動平均値(A(t)、図6(a)中の破線)を算出する。すなわち移動平均値(A(t))は、次式で算出することができる。
【数1】

【0024】
なお詳細説明しないが、本願発明に係る検知センサ20は、手挿入部11内に挿入されたユーザの手などの誘電体により変化する各導電線22a,22bの静電容量を示すアナログ信号を検出し、制御部30は、静電容量アナログ信号を時間積分して単位時間で除算することにより、静電容量の平均値を算出してもよいし、ローパスフィルタ回路(図示せず)を用いて静電容量の平均値信号を出力させてもよい。
【0025】
そして制御部30は、静電容量(C(t))と移動平均値(A(t))との差(D(t)=C(t)−A(t)、図6(a)中の太実線)を算出する。さらに制御部30は、上記差(D(t))が所定のケーシング閾値(ケーシング静電容量差閾値、Dth)より大きいと判断したとき、すなわち次式を満たすとき、ユーザの手が手挿入部11内に挿入されたと判断する。
【数2】

【0026】
制御部30は、ユーザの手が手挿入部11内に挿入されたと判断したとき、送風モータ42を駆動するように送風部40を制御する。すると乾燥風がケーシング10の送風口44からユーザの手に送風され、ユーザの手を乾燥させることができる。
【0027】
たとえばハンドドライヤ1が利用頻度の高い場所に設置された場合、実験的に霧吹き器で霧状水滴を手挿入部11内に吹き掛けた場合のように、多くのユーザの手から乾燥風により吹き飛ばされた飛沫水滴がハンドドライヤ1のケーシング10の外側表面に付着する。すると、検知センサ20が検出する導電線22の静電容量(C(t))は、ユーザの手が手挿入部11内に挿入される前であっても、ケーシング10に付着した強誘電体である飛沫水滴に起因して、高い水準で維持されることになる。すなわち静電容量式の検知センサ20を用いたハンドドライヤ1においては、飛沫水滴による静電容量(C(t))の増大を事前に予定して、図6(b)の一点鎖線で示すようにケーシング閾値(Cth1)を大きく設定しなければならない。
【0028】
ところが、ケーシング閾値(Cth1)を大きく設定すると、逆に、ハンドドライヤ1のケーシング10の外側表面に水滴が付着しておらず、乾燥している場合には、導電線22の静電容量が高い水準のケーシング閾値(Cth1)を越えるように、両手を手挿入部11内に十分に挿入しなければ、ハンドドライヤ1を作動させることはできない。ケーシング10の外側表面が乾燥しており、たとえばユーザは指先だけを乾燥させたい場合、高い水準のケーシング閾値(Cth1)を設定すると、ハンドドライヤ1が作動せず、ユーザに不便を与えることがある。すなわち、ケーシング10の外側表面に水滴が付着していないとき、より高い精度でユーザの手を検知するためには、図6(b)の別の一点鎖線で示すケーシング閾値(Cth2)のように小さく設定する必要がある。
【0029】
このような問題点に鑑み、実施の形態1に係る検知センサ20(制御部30)は、静電容量(C(t))と移動平均値(A(t))との差(D(t)、図6(a)の太実線で示す。)を算出して、この差とケーシング閾値(Dth)とを比較するので、ケーシング10の外側表面に付着する水滴の量に拘わらず、上述のケーシング閾値(Cth1,Cth2)よりケーシング閾値(Dth)を小さく設定できる。したがって実施の形態1に係る検知センサ20は、ケーシング10の外側表面に付着する水滴の多少によらず、より小さいケーシング閾値(Dth、図6(a)に示す一点鎖線)を用いて、ユーザの手が手挿入部11内に挿入されたことをより正確に検知することができる。
【0030】
上述のように、移動平均値(A(t))は、手挿入部11内に挿入されたユーザの手、およびハンドドライヤ1のケーシング10の外側表面に付着した飛沫水滴の両方に依存するものであるから、手挿入部11内にユーザの手が挿入されていない場合には、移動平均値(A(t))は、ケーシング10の外側表面に付着した飛沫水滴等の環境にのみ左右されるものである。よって、この文脈において、手挿入部11内にユーザの手が挿入されていないときの移動平均値(A(t))を「環境ノイズ成分」と云うこともできる。
【0031】
ケーシング10の外側表面は、通常、抗菌・撥水機能を有する材料で構成されているので、ハンドドライヤ1が使用されなくなると、外側表面に付着した飛沫水滴等は、比較的に短時間でドレンタンク12内に回収される。しかし手挿入部11内に汚れまたは異物が持続的に付着した場合には、上記環境ノイズ成分が高い水準で維持される。このような場合、ケーシング10の外側表面を清掃等する必要があることをユーザに告知して、清掃することを促すべきである。
そこで本願発明に係る制御部30は、比較的に長い所定の時間(たとえば10分間)以上にわたって環境ノイズ成分(すなわち移動平均値)が図6(a)の二点鎖線で示す導電線ノイズ閾値(導電線背景閾値、Ath)より高い水準で維持される場合、すなわち次式を満たすとき、ケーシング10の外側表面に汚れまたは異物が付着していると判断する。
【数3】

【0032】
このとき制御部30は、ケーシング10の外側表面に汚れまたは異物が付着していることをユーザに告知するために、本体表示部13の緑色LEDランプの代わりに赤色LEDランプを点灯させるように本体表示部13を制御する。こうして本願発明に係るハンドドライヤ1によれば、ケーシング10の外側表面に付着した汚れまたは異物を取り除くようにユーザに促し、ケーシング10を清掃させることにより、ケーシング10を常に清潔に維持することができる。
【0033】
これに加え、制御部30は、環境ノイズ成分が所定時間以上、導電線ノイズ閾値(Ath)より高いと判断したとき、送風モータ42を駆動させないようにして、清潔でない状態でのハンドドライヤ1の使用を禁止するようにしてもよい。なお、この実施の形態においては、本体表示部13は、動作状態(正常または異常状態)をLEDランプ等により、視覚的に告知するものであるが、たとえばアラーム音等により聴覚的にユーザに告知するものであってもよい。
【0034】
なおケーシング10は、上記説明では単一の送風口44を有するものとしたが、図7(a)および(b)に示すように、送風モータ42からの乾燥風を、ケーシング10の外側表面に直接的に案内する別の送風口46を有し、ケーシング10の外側表面に付着した飛沫水滴を積極的に除去するように構成してもよい。すなわちケーシング10は、送風モータ42からの乾燥風を手挿入部11内のユーザの手に向けて供給するための第1の送風口44と、導電線22a,22bが対向するケーシング10の外壁に沿って供給するための第2の送風口46とを有し、第2の送風口46から供給される乾燥風によりケーシング10の外側表面に付着した水滴を効率的にドレンタンク12に誘導するように設計することができ、これにより環境ノイズ成分を小さく維持することができる。
【0035】
ケーシング10の第2の送風口46は、ケーシング10の外壁に沿って(ケーシング10の外壁にほぼ平行な方向に)乾燥風を供給するものであれば、任意の形態を採用することができる。図8(a)〜(c)は、第2の送風口46を含むケーシング10の一部を示す断面図である。図8(a)および図(b)に示すケーシング10は、互いに重なり合う第1および第2の傾斜部18a,18bを有し、第2の送風口46は、これらの傾斜部18a,18bの間に形成されている。また図8(c)に示すケーシング10は、これと垂直に延びる貫通孔内に挿入された略L字状の乾燥風案内管19を有し、これにより第2の送風口46が形成されている。いずれにおいても、ユーザの手等からの飛沫水滴が第2の送風口46を介してケーシング10内に侵入しないように構成されている。
【0036】
換言すると、ケーシング10の外側表面の撥水効果を支援し、上述のように第2の送風口46から供給される乾燥風により、導電線22a,22bが対向するケーシング10の外側表面に付着した水滴を送風モータ42の作動中に十分に排除することができれば、制御部30は、移動平均値(A(t))を算出するまでもなく、検出された導電線22の静電容量(C(t))が所定の閾値(図示せず)を越えたか否かにより、ユーザの手が手挿入部11内に挿入されたか否かについて判断することもできる。
【0037】
さらに実施の形態1に係る検知センサ20は、図2および図3に示すように、制御部30に電気的に接続され、ドレンタンク12に対向して配置されるドレン導電板24を有する。ドレン導電板24は、たとえば短冊状の錫めっき鋼板であってもよい。ドレン導電板24は、ドレンタンク12に蓄積された排水量(ドレン水量)により静電容量が変化するものであれば、任意の形状および大きさを有していてもよい。実施の形態1に係る検知センサ20は、上記導電線22の静電容量(C(t))と同様、ドレン導電板24の静電容量(E(t))を検出する。そして制御部30は、ドレン導電板24の静電容量(E(t))の移動平均値(F(t))と、これらの差(G(t))とを算出し、これが所定のドレン閾値(ドレン静電容量差閾値、Gth)より大きいと判断したとき、すなわち次式を満たすとき、ドレンタンク12に蓄積された排水が満水状態であると判断する。
【数4】

【0038】
このとき制御部30は、ドレンタンク12が満水状態である(所定の水位を超えた)ことをユーザに告知するために、ドレン表示部(赤色LEDランプ)14を点灯させて、ドレンタンク12をケーシング10から取り外して、ドレン水を廃棄処分するようにユーザに警告することができる。なお、この実施の形態においては、ドレン表示部14はドレンタンク12が満水状態であるか否かをユーザに知らせるものであるが、ドレンタンク12内に蓄積された排水の増大する水位を連続的に知らせるものであってもよい。またドレン表示部14は、ドレンタンク12内の水位について視覚的に告知するものであるが、たとえばアラーム音等により聴覚的にユーザに告知するものであってもよい。このようにドレンタンク12が満水状態であるとき、ドレンタンク12をケーシング10から取り外し、ドレンタンク12内に蓄積された排水を廃棄することをユーザに促すことにより、ドレンタンク12を清潔に維持することができる。
【0039】
制御部30は、ドレン導電板24の静電容量(E(t))の移動平均値(F(t))ではなく、静電容量(E(t))そのものが、これに対する所定の閾値を越えたか否かにより、ドレンタンク12内の排水が満水であるか否かを判断することもできる。ただし、ドレン導電板24の静電容量(E(t))は、手挿入部11に比較的に隣接して配置されるため、ユーザがハンドドライヤ1を使用する際に、手挿入部11に挿入されたユーザの手、またはハンドドライヤ1に接近したユーザの手以外の身体(たとえばユーザの胴体)によって増大し、一時的に上記ドレン閾値を越えて、ドレンタンク12内の排水が満水であると誤って判断される場合がある。したがって、上述のように、制御部30は、ドレン導電板24の静電容量(E(t))と、その移動平均値(F(t))との差(G(t))が、ある程度長い所定期間(たとえば1分間)にわたって所定の静電容量差閾値(Gth)より大きいときに、ドレンタンク12内の排水が満水であると判断することがより好ましい。
【0040】
上述のように、ドレンタンク12内に蓄積された排水以外のものによるドレン導電板24の静電容量(E(t))の増大をできるだけ抑制するために、好適には、ドレンタンク12と手挿入部11との間、およびドレンタンク12の前面等に接地された導電性材料からなるシールド板(図示せず)が配置される。
【0041】
なお本願発明に係る検知センサ20は、誘電体の接近を検知する検知装置として単独で用いることができ、その場合には、上記説明した移動平均値等の計算、各種閾値との比較判定等について、ハンドドライヤ1の制御部30とは別体の専用の制御部(図示せず)を具備する必要があることはいうまでもない。
【0042】
次に、図9のフローチャートを参照しながら、ハンドドライヤ1(検知センサ20および制御部30)の実際の動作方法について以下説明する。
まず図9のステップST01において、ユーザが電源スイッチ62を入れて、AC電源を電源供給部60に供給し、ハンドドライヤ1を初期化する。
【0043】
ステップST02において、検知センサ20はドレン導電板24の静電容量(E(t))を検出し、ステップST03において、制御部30は所定期間におけるその移動平均値(F(t))を継続的に算出する。
【0044】
ステップST04において、制御部30は、現時点におけるドレン導電板24の静電容量(E(t))と、過去一定期間(たとえば1分間)の移動平均値(F(t))との差(移動平均値差、G(t))を算出し、これが所定のドレン閾値(Gth)より大きいか否か、すなわち次式を満たすか否か、判断する。
【数5】

【0045】
ステップST04においてYESの場合、制御部30は、ドレンタンク12に蓄積された排水が満水状態である(ドレンタンク12が異常状態にある)と判断し、ステップST05においてドレン表示部14を点灯させて、ドレンタンク12をケーシング10から取り外して、ドレン水を廃棄するようにユーザに警告する。このとき、本願発明において必須ではないが、制御部30は、ドレン水を廃棄等の清掃を要するものとして、ハンドドライヤ1の使用を中止するよう、送風部40等が作動しないように制御してもよい。
【0046】
ステップST04においてNOの場合(ドレンタンク12が正常状態にある場合)、ステップST06において、検知センサ20はケーシング10の内壁に沿って配置された一対の導電線22a,22bの静電容量(C(t))を検出し、ステップST07において、制御部30は所定期間における移動平均値(A(t))を継続的に算出する。
【0047】
ステップST08において、制御部30は、各導電線22a,22bの静電容量(C(t))と、所定期間における移動平均値(A(t))との差(移動平均値差、D(t))を算出し、これが所定のケーシング閾値(Dth)より大きいか否か、すなわち次式を満たすか否か判断する。
【数6】

【0048】
ステップST08においてYESの場合、制御部30は、ユーザの手が手挿入部11内に挿入されたと判断し、図9のステップAに移行し、送風モータ42を駆動するように送風部40を制御する。こうして、乾燥風がケーシング10の送風口44からユーザの手に送風され、ユーザの濡れた手を乾燥させることができる。
【0049】
ここで、制御部30が送風モータ42を駆動するときの具体的な制御プロセスを示すサブルーチン(ステップ「A」からステップ「B」に至るまで)について、図10のタイミングチャートを用いて説明する。図10(a)は、図6(a)の太い実線で示す差(D(t)、以下単に「移動平均値差」という。)およびケーシング閾値(Dth)を概略的に示し、図10(b)はユーザの手が手挿入部11内に挿入されていると制御部30により判断される期間を示し、図10(c)は送風モータ42が制御部30により駆動される期間を示すタイミングチャートである。なお、実施の形態1に係る検知センサ20は、左右一対の導電線22a,22bを有するものであるが、説明の便宜上、単一の導電線22を有するものとして以下説明する。
【0050】
図10のタイミングチャートにおいて、制御部30は、移動平均値差、D(t)が上記条件式[6]を満たす時間が所定の遅延時間(T)を越えたとき、ユーザの手が手挿入部11内に挿入されたと判断する(ON判定)。このように遅延時間(T)を設けた理由は、図6(a)において実験的に霧状水滴を手挿入部11内に吹き掛けた場合のように、飛沫水滴等をユーザの手と誤認識することを防止するためである。制御部30は、ユーザの手を確実に検知した後、速やかに送風モータ42を駆動するように送風部40を制御する。ただし、制御部30のON判定から、実際に送風モータ42が駆動してユーザの手に乾燥風を供給するまでの間には多少の時間差が生じ得ることから、これを遅延時間(T)と表している。
【0051】
一般に、ハンドドライヤ1においては、ユーザの手を乾燥させるものであり、ユーザは、迅速な乾燥を促すために、手挿入部11内で両手を摺り合わせたり、揉み合わせたりすることがある。このとき、移動平均値差(D(t))は、図10(a)に示すように変動し、上記条件式[6]を満たすか否かのみに基づいて、制御部30がON判定またはOFF判定するとすれば、断続的に送風モータ42が駆動されることになり、両手の摺り合わせ等の動作ができなくなり、ユーザに使用上の不便をもたらし、さらには送風モータ42の断続的な駆動により、ハンドドライヤ1が故障しているのではないかとの不安感および不快感を与えてしまう。
【0052】
そこで制御部30は、移動平均値差(D(t))について上記条件式[6]を満たさない期間(ΔT)が所定の遅延時間(T)を越えたときにのみ(ΔT>T)、ユーザの手が手挿入部11から離脱したと判断(OFF判定)し、期間(ΔT)が遅延時間(T)より小さいとき(ΔT<T)にはON判定を維持する。なお、制御部30のOFF判定から、実際に送風モータ42の駆動を停止するまでの間には若干の時間差が生じ得ることから、これを遅延時間(T)と表している。
このように構成されたハンドドライヤ1によれば、ユーザが手を手挿入部11内で摺り合わせたり、揉み合わせたりしても、送風モータ42が断続的に停止することなく、快適かつ速やかに手を乾燥させることができる。
【0053】
この制御プロセスにおいて、ユーザの手が手挿入部11から離脱したと判断(OFF判定)されたとき、すなわち図10のタイミングチャートに示す一連の動作が完了すると、図9のフローチャートのステップBに戻って、ステップST09からの動作処理を続行する。
また、このフローチャートのステップST08においてNOの場合も同様にステップST09に移行する。そして制御部30は、手挿入部11内に汚れまたは異物が持続的に付着しているか否か判断する。つまり制御部30は、環境ノイズ成分(移動平均値(A(t)))が所定の期間(たとえば10分間)以上にわたって導電線ノイズ閾値(Ath)より高い水準で維持されるか否か判断し、次式を満たす場合にはケーシング10の外側表面に汚れまたは異物が付着していると判断する。
【数7】

【0054】
ケーシング10の外側表面に汚れまたは異物が付着していると判断された場合(ステップST09においてYESの場合)、制御部30は、ステップST10において本体表示部13の赤色LEDランプを点灯させて、その旨をユーザに告知し、清掃させることにより、ケーシング10を常に清潔に維持することができる。
同様に、本願発明において必須ではないが、制御部30は、ステップST10において、ケーシング10の表面の清掃を要するものとして、ハンドドライヤ1の使用を中止すべく、送風モータ42が作動しないように送風部40を制御してもよい。
また上記説明したように、ケーシング10は、送風モータ42からの乾燥風をケーシング10の外壁に沿って供給して、ケーシングの外側表面から飛沫水滴を効率的に取り除くための専用の第2の送風口46を有していてもよい。
【0055】
実施の形態2.
図11を参照しながら、本願発明に係る手乾燥装置の実施の形態2について説明する。実施の形態2のハンドドライヤ1は、ユーザの手が手挿入部11内に挿入されたか否かについて、制御部30のON/OFF判定の方法が異なる点を除き、実施の形態1のハンドドライヤ1と同様の構成を有するので、重複する内容については説明を省略する。
【0056】
実施の形態2の検知センサ20は、実施の形態1と同様、左右一対の導電線22a,22bおよびドレン導電板24を有し、それぞれの静電容量(C(t),E(t))を検出し、所定期間における移動平均値(A(t),F(t))を算出する。
なお実施の形態2に係る発明は、左右一対の導電線22a,22bおよびドレン導電板24について適用できるが、理解を容易にするために、一方の(右側に配置された)導電線22についてのみ、制御部30のON/OFF判定方法を以下説明する。
【0057】
実施の形態2の検知センサ20は、導電線22の静電容量(C(t))を検出し、制御部30は、その移動平均値(A(t))を算出する。図11(a)は、ユーザの手が手挿入部11内に挿入されて、そのまま暫くの間維持された後、離脱した場合に検出された導電線22の静電容量(C(t))について連続的に算出された移動平均値(A(t))を概略的にプロットしたグラフである。
【0058】
静電容量(C(t))および移動平均値(A(t))は、図11(a)で示すように時々刻々とするが、実施の形態2の制御部30は、図示しないメモリ(記憶手段)を用いて経時的に変化する移動平均値(A(t))を記憶する。そして制御部30は、ある時点より前の所定期間(たとえばサンプリング間隔(τ=10ms)の50倍の時間である0.5秒間)における第1の移動平均値(A(t))と、その時点より後の所定時間における第2の移動平均値(A(t))との差(DA(t))を算出する。そして実施の形態2の制御部30は、この差(DA(t))が所定の平均差閾値(DAth)より大きく、かつ、正の値であるとき(増大したとき)にON判定し、負の値であるとき(減少したとき)にOFF判定する。すなわち制御部30は、ユーザの手が手挿入部11内に挿入されたか否か、ユーザの手が手挿入部11から離脱したか否か(ON/OFF判定)を次式により判断する。
【数8】

【0059】
図11(b)は、実施の形態2に係る変形例を示す図11(a)と同様のグラフである。この変形例において、制御部30は、移動平均値(A(t))を算出する際の期間をたとえば0.5秒間と比較的に長い一定の期間に設定しつつ、第1および第2の移動平均値(A(t),A(t))の算出期間を部分的に重複させてON/OFF判定をしてもよい。すなわち、2つの異なる時点(t,t、その時間差をΔt(=t−t)とする。)を設定し、第1の時点(t)を終点とする第1の期間における第1の移動平均値A(t)と、第2の時点(t)を終点とする第2の期間における第2の移動平均値A(t)との差(DA(t))が所定の平均差閾値(DAth)より大きく、かつ、正の値であるとき(増大したとき)にON判定し、負の値であるとき(減少したとき)にOFF判定してもよい。すなわち制御部30は、ユーザの手が手挿入部11内に挿入されたか否か、ユーザの手が手挿入部11から離脱したか否か(ON/OFF判定)を次式により判断する。
【数9】

【0060】
このとき第1および第2の移動平均値(A(t),A(t))の算出期間を任意に設定できることが好ましい。またユーザの手が手挿入部11から離脱した後も、飛沫水滴がケーシング10の外壁に付着する傾向があるので、ON判定するときの平均差閾値(DAth−ON)は、OFF判定するときの平均差閾値(DAth−OFF)より大きく設定することが好ましい。
【0061】
さらに2つの時点(t,t)の時間差Δtは、サンプリング間隔(τ)を小さくすることにより極限的に小さくすることができる。このとき制御部30は、移動平均値A(t)の時間微分係数が正の平均差閾値(DAth)より大きい場合に、ユーザの手が手挿入部11内に挿入されたと検知(ON判定)し、移動平均値A(t)の時間微分係数が負の平均差閾値(DAth)より大きい場合にユーザの手が手挿入部11から離脱したと検知(OFF判定)してもよい。
【0062】
なお、実施の形態2に係る制御部30は、実施の形態1とは独立してON/OFF判定するものとして説明したが、実施の形態1で説明したようにON/OFF判定したことに加え、補足的に実施の形態2に係るON/OFF判定方法を採用して、ユーザの手が手挿入部11内に挿入されたか否かについての検知精度を向上させるようにしてもよい。
【0063】
実施の形態3.
図12を参照しながら、本願発明に係る手乾燥装置の実施の形態3について説明する。実施の形態3のハンドドライヤ1は、ユーザの両方の手が手挿入部11内に挿入されたことを制御部30により判断された場合に限り、送風モータ42の駆動(ハンドドライヤ1の使用)を許可するものである点を除き、実施の形態1または2と同様の構成を有するので、重複する内容については説明を省略する。
【0064】
一般に、外科手術などの医療現場においては、外科医等は、感染症を予防するため、両方の手を洗浄の上、確実に乾燥する必要がある。実施の形態3のハンドドライヤ1は、ユーザの両手が手挿入部11内に確実に挿入されたことを判断したときにのみ、手乾燥装置として使用できるようにしたものである。
【0065】
このハンドドライヤ1は、上述のように、ユーザに対して左右に配置された左側導電線22aおよび右側導電線22bを有し、左側導電線22aおよび右側導電線22bは、制御部30に接続され、送風口44の周囲からケーシング10の内壁に沿って手挿入部11まで延びている。図12(a)は、ユーザの片方の手を手挿入部11の左側端部から右側端部(ともに図示せず)に向かって徐々に位置をずらしたときのユーザの手の位置と、検知センサ20が検出した左側導電線22aの静電容量(C、太実線)および右側導電線22bの静電容量(C、細実線)とをプロットしたものである。静電容量の単位は検知センサ20の出力する相対値であり、手の位置は、手挿入部11の左側端部からの距離に相当する。
【0066】
ただし図12(a)のグラフを得るために用いたハンドドライヤ1は、左側導電線22aおよび右側導電線22bの制御部30からの長さが異なり(図2(a)および(b))、各導電線22a,22bが検出する静電容量の感度にずれが生じるので、それぞれのピーク値が同等となるように、右側導電線22bの静電容量(C)に対して設定可能な感度係数(k)を乗算したものをプロットしている。
なお、制御部30をできるだけ中央に配置して、左側導電線22aおよび右側導電線22bの寸法(長さおよび径等)、ならびに電気特性(静電容量および抵抗値等)を同一のものに設計・作製して、感度係数(k)を1と同程度にするように構成することが望ましい。
【0067】
図12(a)から明らかなように、ユーザが手を手挿入部11の左側端部から徐々に右方へ位置をずらすと、左側導電線22aの静電容量(C)が増大してピーク(極大値)に達し、これに遅れて右側導電線22bの静電容量(C)が増大してピーク(極大値)に達する。誘電体であるユーザが手の位置に応じて左側導電線22aおよび右側導電線22bの静電容量(C,C)のピーク位置が異なる。すなわち、左側導電線22aおよび右側導電線22bの静電容量(C,C)から、ユーザの手の位置を推定することができ、とりわけユーザの両方の手が手挿入部11の適正な位置(中央位置)に挿入されたときは、左側導電線22aおよび右側導電線22bの静電容量(C,C)が同時にピークに達する。
【0068】
すなわち実施の形態3によれば、検知センサ20は左側導電線22aおよび右側導電線22bの静電容量(C,C)を連続的に検出し、制御部30は、次式のように、左側導電線22aの静電容量(C)に、所定の感度係数(k)を掛けた右側導電線22bの静電容量(C)を加えたことにより得られる和信号(CA)を算出し、和信号(CA)が所定の和信号閾値(CAth)より大きいとき、すなわち次式を満たすとき、ユーザの左手および右手の少なくともいずれか一方が左側導電線22aまたは右側導電線22bに接近したと検知するように構成されている。
【数10】

【0069】
さらに制御部30は、上記条件式[10]に加えて、次式のように、左側導電線22aの静電容量(C)から、所定の係数(k)を掛けた右側導電線22bの静電容量(C)を引いたものの絶対値をとることにより得られる差信号(CD)を算出し、差信号(CD)が所定の差信号閾値(CDth)より小さいとき、すなわち次式を満たすとき、ユーザの両方の手が左側導電線22aおよび右側導電線22bに接近したと検知して、送風モータ42を駆動するように送風部40を制御する。
【数11】

【0070】
図12(b)は、ユーザの片方の手を手挿入部11の左側端部から右側端部(ともに図示せず)に向かって徐々に位置をずらしたときの和信号(CA、太実線)と差信号(CD、細実線)とをプロットしたものである。図12(b)から明らかなように、ユーザの両方の手が手挿入部11の適正な位置(中央位置)に挿入されたときは、和信号(CA)は極大値を有し、かつ差信号(CD)は極小値を有する。
【0071】
なお、これらの和信号(CA)および差信号(CD)、ならびに感度係数(k)は、ハンドドライヤ1に採用される検知センサの構造・寸法等に応じて任意に設定することができ、和信号閾値(CAth)および差信号閾値(CDth)との比較に際して、次式のように、任意のゲイン係数(g)を乗算した後に、ユーザの両手が手挿入部11の中央位置に挿入されたか判断してもよい。
【数12】

【0072】
このとき図10のタイミングチャートを用いて説明したように、制御部30は、上記条件式[10]および[11]を満たす時間が所定の遅延時間(T、図示せず)を越えたときに、ユーザの両手が手挿入部11内に挿入されたと判断してもよい。
【0073】
このように実施の形態3のハンドドライヤ1は、ユーザの両手が手挿入部11内に挿入されたことを制御部30により判断された場合にのみ、送風モータ42の駆動を許可するように構成されているので、ユーザの両手を確実に乾燥させることができる。
【0074】
実施の形態4.
図13〜図16を参照しながら、本願発明に係る手乾燥装置の実施の形態4について説明する。実施の形態4のハンドドライヤ2は、本願出願人により、両面ジェット風タイプの「スリム」シリーズとして市販されており、基本的な構成は上記実施の形態で説明したものと同様のものであるので、重複する内容については説明を省略する。
【0075】
図13は実施の形態4に係るハンドドライヤ2を示す斜視図であり、図14(a)および(b)は、ハンドドライヤ2に対して左右方向および前後方向に平行に延びる鉛直断面から見た断面図である。実施の形態4に係るハンドドライヤ2のケーシング10は、概略、ユーザに対して前後に配置された前方フランジ(前方張出部、ユーザから遠い張出部)72および後方フランジ(後方張出部、ユーザにより近い張出部)74を有し、その間に手挿入部11が形成されている。ハンドドライヤ2は、実施の形態1〜3に係るハンドドライヤ1と同様、手挿入部11内にユーザの手が挿入されたか否かを検知するための静電容量式の検知センサ20と、手挿入部11内に挿入されたユーザの濡れた手を乾燥させるための乾燥風を形成するための送風モータ42を含む送風部40と、手挿入部11内に紫外線を照射することによりユーザの手の表面を殺菌・滅菌する照明灯を含む照明部50(図3参照)とを有する。またハンドドライヤ2の送風部40、照明部50、検知センサ20、および制御部30の電気回路構成は、実施の形態1と同様のものである。さらにハンドドライヤ2は、上記実施の形態と同様の着脱可能なドレンタンク12を有する。
【0076】
とりわけ実施の形態4に係るハンドドライヤ2は、ケーシング10の前方フランジ72および後方フランジ74のそれぞれに送風口44a,44bを有し、図14(b)の矢印で示すように、送風モータ42から送風される乾燥風が前方フランジ72および後方フランジ74の内部に形成された風路を通って送風口44a,44bから、ユーザの手のひらおよび手の甲の両面に向けて案内されるように構成されている。
【0077】
また実施の形態4に係る検知センサ20の導電線22a,22bは、制御部30からケーシング10の前方フランジ72のみの内壁に沿って配置され、送風口44aの周囲を取り囲むように形成することにより、ユーザの手をより検知しやすくしている。導電線22a,22bは、好適には絶縁被膜された導電線であり、ユーザの手が手挿入部11内に挿入されたことにより、静電容量が変化する導電体であれば任意の材料および構成を採用することができる。また図14(a)では、導電線22a,22bは、簡単な矩形平面形状を有するものとして図示したが、特に図15(a)に示すような形状を有していてもよく、さらには手挿入部11に対向するケーシング10の前方フランジ72の内壁のより広い面積において網羅するように、たとえばジグザク形状や螺旋形状(図示せず)を有していてもよい。
【0078】
さらにケーシング10は、図16(a)および(b)に示すように、送風モータ42からの乾燥風を手挿入部11内のユーザの手に向けて供給するための第1の送風口44a,44bと、導電線22a,22bが対向するケーシング10の外壁に沿って供給するための第2の送風口46a,46bとを有していてもよい。第2の送風口46a,46bから供給される乾燥風は、ケーシング10の外側表面に付着した水滴を効率的にドレンタンク12に誘導するものである。これによりケーシング10の外側表面に付着した水滴による静電容量の変化(環境ノイズ成分)が低減され、検知センサ20は、ユーザの手が手挿入部11内に挿入されたか否か、より確実に検知することができる。
【0079】
すなわちケーシング10の外側表面の撥水効果を向上させ、第2の送風口46a,46bから供給される乾燥風により、導電線22a,22bが対向するケーシング10の外側表面に付着した水滴を送風モータ42の作動中に十分に排除することができれば、制御部30は、移動平均値(A(t))を算出するまでもなく、検出された導電線22の静電容量(C(t))が所定の閾値(図示せず)を越えたか否かにより、ユーザの手が手挿入部11内に挿入されたか否かについて判断することもできる。
【0080】
ところで、上記実施の形態1〜3に係る「ジェットタオル」シリーズのハンドドライヤ1においては、使用の際、ユーザは両手を手挿入部11に向かって前方へ突き出す必要があるため、ユーザの手以外の胴体等とケーシング10の内壁に沿って配置される導電線22a,22bとの間には比較的に十分な距離が維持される。これに対し、「スリム」シリーズのハンドドライヤ2においては、ユーザは自らの体の一部(胴体)に近い位置に配置された手挿入部11内に両手を下方へ挿入することになるため、ユーザの胴体等が後方フランジ74に接近し、前方フランジ72の内壁に沿って配置される導電線22a,22bとユーザの胴体等との間の距離は、実施の形態1〜3に係るハンドドライヤ1のものに比して短い。このときハンドドライヤ2に係る検知センサ20は、ユーザの胴体等の静電容量が手よりも大きいので、導電線22a,22bに生じる静電容量にもより大きな影響を受ける。そこで実施の形態4に係るハンドドライヤ2は、図16(b)に示すように、ユーザの胴体が接近するケーシング10の後方フランジ74の内壁に沿って、接地された導電性シールド板76を有することが好ましい。これにより、ハンドドライヤ2に係る検知センサ20は、ユーザの胴体等による静電容量の変化を極力抑え、ユーザの手が手挿入部11内に挿入されたか否かについて、より正確に検知することができる。
【符号の説明】
【0081】
1,2…ハンドドライヤ、10…ケーシング(筐体)、11…手挿入部、12…ドレンタンク(排水タンク)、13…本体表示部、14…ドレン表示部、15…開口部、16…溝部、17…突起部、18…傾斜部、19…乾燥風案内管、20…検知センサ、22…導電線、24…ドレン導電板、30…制御部、32…回路基板、40…送風部、42…送風モータ、44,46…送風口、52…照明灯、50…照明部、52…照明灯、60…電源供給部、72…前方フランジ(前方張出部)、74…後方フランジ(後方張出部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体が接近可能な少なくとも1つの導電体と、
所定の周期(τ)で、経時的に変化する前記導電体の静電容量(C(t))を連続的に検出する検出部と、
所定の時点(t)を終点とする所定の期間(nτ:nは2以上の自然数)における静電容量の移動平均値(A(t))を算出する制御部とを備え、
前記制御部は、前記静電容量(C(t))と前記移動平均値(A(t))との差(D(t))が所定の静電容量差閾値(Dth)より大きいとき、すなわち次式を満たすとき、前記誘電体が前記導電体に接近したと検知することを特徴とする検知装置。
【数1】

【請求項2】
誘電体が接近可能な少なくとも1つの導電体と、
所定の周期(τ)で、経時的に変化する前記導電体の静電容量(C(t))を連続的に検出する検出部と、
所定の時点(t)を終点とする所定の期間(nτ:nは2以上の自然数)における静電容量の移動平均値(A(t))を算出する制御部とを備え、
前記制御部は、第1の時点(t)を終点とする第1の期間(nτ)における静電容量の第1の移動平均値A(t)と、第1の時点(t)より後の第2の時点(t)を終点とする第2の期間(nτ)における静電容量の第2の移動平均値A(t)とを算出し、前記第1の移動平均値A(t)と前記第2の移動平均値A(t)との差(DA(t))が所定の平均差閾値(DAth)より大きいとき、すなわち次式を満たすとき、前記誘電体が前記導電体に接近したと検知することを特徴とする検知装置。
【数2】

【請求項3】
請求項1または2に記載の検知装置であって、
導電体は、一対の誘電体が接近可能な第1および第2の導電体を有し、
検出部は、所定の周期(τ)で、経時的に変化する第1および第2の導電体の静電容量(C,C)を連続的に検出し、
制御部は、前記第1の導電体の静電容量(C)に対し、第2の導電体の静電容量(C)に所定の係数(k)を掛けたものを加えたことにより得られる和信号(CA)と、第1の導電体の静電容量(C)と、前記第2の導電体の静電容量(C)に所定の係数(k)を掛けたものとの差の絶対値をとることにより得られる差信号(CD)とを算出するとともに、和信号(CA)が所定の和信号閾値(CAth)より大きく、かつ差信号(CD)が所定の差信号閾値(CDth)より小さいとき、すなわち次式を満たすとき、一対の誘電体がともに第1および第2の導電体に接近したと検知することを特徴とする検知装置。
【数3】

【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1に記載の検知装置を用いた手乾燥装置であって、
送風口および手挿入部を有するケーシングと、
前記送風口から前記手挿入部に乾燥風を供給する送風部とを備え、
検知装置は、前記ケーシング内に配置され、
導電体は、前記手挿入部に隣接して前記ケーシング内に配置された絶縁被膜された導電線を含み、
誘電体は、前記手挿入部に挿入されたユーザの手であり、
検出部は、経時的に変化する前記導電線の静電容量(C(t))を連続的に検出し、
制御部は、静電容量(C(t))と移動平均値(A(t))との差(D(t))が所定の静電容量差閾値(Dth)より大きいとき、ユーザの手が手挿入部内に挿入されたと検知して、前記送風口から前記手挿入部に乾燥風を供給するように前記送風部を制御することを特徴とする手乾燥装置。
【請求項5】
請求項4に記載の手乾燥装置であって、
ケーシングは、前方張出部および後方張出部を有し、
前記ケーシングの前記前方張出部内に導電線が配置され、
前記ケーシングの前記後方張出部内には、接地されたシールド板が配設され、手挿入部に挿入された手以外のユーザの体の一部が前記導電線に接近することに起因する前記導電線の静電容量の変動を抑制することを特徴とする手乾燥装置。
【請求項6】
請求項4に記載の手乾燥装置であって、
ケーシングに配設された本体表示部をさらに有し、
制御部は、導電線の静電容量(C(t))の移動平均値(A(t))が所定期間以上継続して導電線背景閾値(Ath)より高いとき、すなわち次式を満たすとき、前記ケーシングに汚れまたは異物が付着していると検知して、これをユーザに告知するように前記本体表示部を制御することを特徴とする手乾燥装置。
【数4】

【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1に記載の検知装置を用いた手乾燥装置であって、
ケーシングと、
前記ケーシングの下方に配置された排水タンクと、
前記排水タンクに配置された排水表示部とを備え、
検知装置は、前記ケーシング内に配置され、
導電体は、前記排水タンクに隣接して前記ケーシング内に配置されたドレン導電板を含み、
誘電体は、前記排水タンク内に蓄積された排水であり、
検出部は、経時的に変化するドレン導電板の静電容量(E(t))を連続的に検出し、
制御部は、所定の時点(t)を終点とする所定の期間(nτ:nは2以上の自然数)における静電容量の移動平均値(F(t))を算出し、前記静電容量(E(t))と前記移動平均値(F(t))との差(G(t))が所定のドレン閾値(Gth)より大きいとき、すなわち次式を満たすとき、排水タンク内に蓄積された排水が所定の水位を越えたと検知し、これをユーザに告知するように排水表示部を制御することを特徴とする手乾燥装置。
【数5】

【請求項8】
請求項3に記載の検知装置を用いた手乾燥装置であって、
送風口および手挿入部を有するケーシングと、
前記送風口から前記手挿入部に乾燥風を供給する送風部とを備え、
検知装置は、前記ケーシング内に配置され、
第1および第2の導電体は、前記手挿入部に隣接してケーシング内に配置された絶縁被膜された導電線を含み、
誘電体は、前記手挿入部に挿入されたユーザの両方の手であり、
制御部は、和信号(CA)が所定の和信号閾値(CAth)より大きく、かつ差信号(CD)が所定の差信号閾値(CDth)より小さいとき、ユーザの両方の手が手挿入部内に挿入されたと検知して、前記送風口から前記手挿入部に乾燥風を供給するように前記送風部を制御することを特徴とする手乾燥装置。
【請求項9】
所定の周期(τ)で、経時的に変化する導電体の静電容量(C(t))を連続的に検出するステップと、
所定の時点(t)を終点とする所定の期間(nτ:nは2以上の自然数)における静電容量の移動平均値(A(t))を算出するステップと、
前記静電容量(C(t))と前記移動平均値(A(t))との差(D(t))が所定の静電容量差閾値(Dth)より大きいとき、すなわち次式を満たすとき、前記誘電体が前記導電体に接近したと検知するステップとを有することを特徴とする検知方法。
【数6】

【請求項10】
所定の周期(τ)で、経時的に変化する前記導電体の静電容量(C(t))を連続的に検出するステップと、
所定の時点(t)を終点とする所定の期間(nτ:nは2以上の自然数)における静電容量の移動平均値(A(t))を算出するステップと、
第1の時点(t)を終点とする第1の期間(nτ)における静電容量の第1の移動平均値A(t)と、第1の時点(t)より後の第2の時点(t)を終点とする第2の期間(nτ)における静電容量の第2の移動平均値A(t)とを算出するステップと、
前記第1の移動平均値A(t)と前記第2の移動平均値A(t)との差(DA(t))が所定の平均差閾値(DAth)より大きいとき、すなわち次式を満たすとき、前記誘電体が前記導電体に接近したと検知するステップとを有することを特徴とする検知方法。
【数7】

【請求項11】
請求項10または11に記載の検知方法であって、
導電体の静電容量を検出するステップは、所定の周期(τ)で、経時的に変化する第1および第2の導電体の静電容量(C,C)を連続的に検出するステップを含み、
前記第1の導電体の静電容量(C)に対し、第2の導電体の静電容量(C)に所定の係数(k)を掛けたものを加えたことにより得られる和信号(CA)と、第1の導電体の静電容量(C)と、前記第2の導電体の静電容量(C)に所定の係数(k)を掛けたものとの差の絶対値をとることにより得られる差信号(CD)とを算出するステップと、
和信号(CA)が所定の和信号閾値(CAth)より大きく、かつ差信号(CD)が所定の差信号閾値(CDth)より小さいとき、すなわち次式を満たすとき、一対の誘電体がともに第1および第2の導電体に接近したと検知するステップとを有することを特徴とする検知方法。
【数8】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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