説明

業務用景品獲得ゲーム機の景品払出装置

【課題】遊技者の操作によって移動可能な遊戯手段を目標手段に誘導することを遊戯課題とする景品獲得ゲーム機において、遮蔽板を用いることなく遊戯課題の難度を調整可能とする。
【解決手段】
該遊戯空間内に一端に蝶番構造を備えて回動自在とされた扉構造と、該扉構造を閉じた状態で保持可能であるプッシュラッチ手段と、該扉構造に該遊戯手段によって押込可能とされた目標手段とを備え、該プッシュラッチ手段による該扉構造の保持は、該遊戯手段によって該目標手段が押し込まれることによって解除可能とする。また、前記遊戯手段は屈曲変形が可能な棒状体とすることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にゲームセンターなどの遊戯施設に設置される業務用景品獲得ゲーム機に関する。より詳しくは、遊戯者の操作によって制御される可動部を備え、これを用いて遊戯者が一定の課題を達成すれば景品が払い出される業務用景品獲得ゲーム機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ゲームセンターなどの遊戯施設には様々な景品獲得ゲーム機が設置され、遊戯者に楽しまれている。ここで、景品獲得ゲーム機とは、景品獲得ゲーム機の筐体に備えられた可動部(遊戯手段)を、同筐体が備えるボタンなどの操作手段を遊戯者に操作させることで一定の課題の達成に挑戦させ、この課題を首尾よく達成すれば遊戯者に景品が払い出されるというものである。
【0003】
景品獲得ゲーム機の典型的な例として、例えば特開2002−239209号公報の図1等に開示されている、いわゆるクレーンゲーム機をあげることができる。これは、遊戯者によって操作される把持機構によって景品獲得ゲーム機の景品載置台上に載置された景品をうまく把持することができれば、把持した景品が景品払出口から払い出されるというものである。
【0004】
しかし、クレーンゲーム機をはじめとする多くの景品獲得ゲーム機の意匠においては、筐体内に配置された景品自体が、遊戯者の遊戯意欲を喚起する、重要な構成要素である。この点に鑑みると、クレーンゲーム機は市場において大いに成功を収めている景品獲得ゲーム機であるものの、平面的な景品載置台に景品を載置すると、景品の配置時に立体感を得にくく、遊戯者の遊戯意欲を十分に引き出すことができないという課題が存在する。
【0005】
そこで、本願発明者は、景品獲得ゲーム機筐体内で立体的に景品を配置可能とし、遊戯者の遊戯意欲を視覚的に喚起しようと試みてきた。例えば、意匠登録第1208735号意匠公報に開示された景品獲得ゲーム機(以下、「プッシャーゲーム機」という)は、本願発明者の創作に係る景品獲得ゲーム機である。プッシャーゲーム機では、遊戯者はボタン等の操作手段を用いて、遊戯手段である伸縮自在の棒状体を水平面内で移動する。そして、適切な位置で棒状体を停止することができれば、その後、棒状体が下方向に伸長して目標穴を通過し、ボタン等の目標手段に接触して遊戯課題達成となる。この後、景品獲得ゲーム機の備える景品載置棚が駆動され、これに載置された景品が落下して遊戯者に払い出されるのである。
【0006】
このようなプッシャーゲーム機は、市場的に大きな成功を収めているが、本願発明者はプッシャーゲーム機にも課題があると考えた。プッシャーゲーム機の遊戯課題は、遊戯手段である棒状体を正確に目標穴の真上に停止することであり、これに成功すれば、棒状体が下方向に伸長した際に目標穴を通過して目標手段に接触して遊戯課題達成となる。したがって、遊戯課題の難度の調整は目標穴の大きさを調整することで行う必要がある。しかし、これでは、目標穴を設けるための遮蔽板が必要になり、目標手段の視認性が低下する。遮蔽版をアクリルなどの透明素材で構成するなどの工夫により、この課題は相当程度解消するものの、遊戯者から見て、遊戯手段で狙う的である目標手段が遮蔽板の奥に設けられることは、直接的を狙っているという感覚を削ぐものであり、景品獲得ゲーム機で遊戯をする際の迫力が少なくなることは否めない。
【0007】
そこで、本願発明者は、遊戯課題の難度を遮蔽板のような目標手段を遮る構造を用いずに調整可能である景品獲得ゲーム機を実現しようと考えた。この際、本願発明者は、いわゆるプッシュラッチ機構を利用することにした。プッシュラッチ機構とは、例えば、特開2010−242413号公法の図1等に開示された発明の備えるような機構であり、キャビネットの扉などにしばしば備えられるものである。すなわち、キャビネットなどに取り付けられるプッシュラッチ本体と、キャビネットの扉などに取り付けられる保持体からなり、保持体をプッシュラッチ本体に押し付けると、保持体がプッシュラッチ本体に吸着される等して固定される。そして、再度、保持体をプッシュラッチ本体に押し込むと、吸着が解除されて保持体がプッシュラッチ本体から解放される、というものである。プッシュラッチには、機械的な勘合構造によって上記機能を実現するものがあるほか、磁力を利用して、保持体として任意の強磁性材料を利用できるもの等様々なものが提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−239209号公報
【特許文献2】意匠登録第1208735号意匠公報
【特許文献3】特開2010−242413号公法
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、上記の通り、遊戯者が遊戯手段を誘導する目標である目標手段と遊戯者の間に、遮蔽板のような妨害物を設けることなく、様々な難易度設定を行うことが可能な景品獲得ゲーム機を提供することである。また、遊戯者の操作によって遊戯手段が目標手段に正しく誘導されたこと、すなわち、遊戯課題が達成されたことと景品の払い出しが直接的に結びついた景品獲得ゲーム機を提供することをも解決しようとする課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)以上説明した課題を解決するため、本発明においては、
少なくとも一部が透明または半透明の素材で遮蔽された遊戯空間内に、遊戯者の操作によって少なくとも2方向に移動可能な遊戯手段を備え、該遊戯空間内に配置された景品を遊戯者に払い出し可能である景品獲得ゲーム機において、
該遊戯空間内に、一端に蝶番構造を備えて回動自在とされた扉構造と、
該扉構造を閉じた状態で保持可能であるプッシュラッチ手段と、
該扉構造に該遊戯手段によって押込可能とされた目標手段とを備え、
該プッシュラッチ手段による該扉構造の保持は、該遊戯手段によって該目標手段が押し込まれることによって解除可能とされている
ことを特徴とする、景品獲得ゲーム機としている。
【0011】
すでに説明した従来の景品獲得ゲーム機と同様、本発明においても、景品獲得ゲーム機の備えるボタン等の操作手段を操作することにより、遊技者が遊戯空間内の遊戯手段を少なくとも2方向に移動して、遊戯手段を目的手段の位置に誘導することが遊戯課題である。本発明に係る景品獲得ゲーム機においては、遊戯手段は典型的には細長い棒状である。棒状の遊戯手段を首尾よく誘導し、その先端部で目標手段を押し込むことができれば遊戯課題達成となるのである。
【0012】
遊戯空間内には回動自在な扉構造を設ける。扉構造自体は、遊戯空間内に設けた独立した小部屋(陳列部屋)の前面に取り付けることも可能であるし、大きな棚構造(陳列棚)の前面に扉構造を配置することも可能である。このような、陳列部屋や陳列棚に、遊戯課題を達成した際に払い出される景品を格納または陳列するのである。ここで、扉構造は回動自在であり、かつ、プッシュラッチ手段によって閉じた状態での保持が可能であるから、景品を格納または陳列した上で扉構造を閉じた状態とすることができる。なお、遊技者は、景品獲得ゲーム機内に陳列されている景品を見て、遊戯意欲を惹起されるのであるから、扉構造を閉じた状態であっても遊技者から景品が視認可能であることが好ましい。したがって、扉構造は透明な材料、例えば、アクリル樹脂などで構成するとよい。
【0013】
扉構造には、遊戯者が遊戯手段を操作して誘導する目標である的に相当する目標手段を備える。目標手段は典型的には半球型であり、適切に遊戯手段が誘導されれば、遊戯手段がこの部分を押し込む動作をする。後に説明するが、このような目標手段を使用することで、目標手段の手前に遮蔽板を設けることなく難度を設定可能となる。
【0014】
プッシュラッチ手段は、上記したとおり、扉構造を閉じた状態で保持するが、遊戯者に操作される遊戯手段によって目標手段が押し込まれると、扉構造の保持が解除可能とされている。つまり、遊戯者が遊戯手段を適切に移動すると、遊戯手段は扉構造を押し込む動作を行う。こうすると、プッシュラッチ手段による扉構造の保持が解除されるために、扉構造が開く。このように、扉構造を開くことが本発明に係る景品獲得ゲーム機の遊戯課題であり、この後、内部に収納または載置された景品が遊戯者に払い出される。
【0015】
なお、プッシュラッチ手段による扉構造の保持が解除された際に、扉構造が大きく開くことが好ましい。景品を払い出す際に扉構造が障害とならないようにするためであるが、同時に、遊戯課題を達成した際に大きな動きが見えることで、遊戯者がその達成感をより大きく感じることができるからである。従って、プッシュラッチ手段の保持が解除された際に扉構造が大きく開くように、扉構造の蝶番構造を、いわゆるバネ蝶番とすることが好ましい。
【0016】
また、当然ながら扉構造がプッシュラッチ手段で閉状態に保持できなければならない。このため、プッシュラッチ手段に、磁力を用いて対象物を保持する、いわゆるマグネットプッシュラッチを用い、扉構造の該当箇所には保持具を取り付けておくことが好ましい。もっとも、プッシュラッチ本体の備える爪状の部材で保持具の備える凸部を把持するような、機械式のプッシュラッチ手段を用いてもよい。
【0017】
(2)本発明においては、
前記遊戯手段は、可撓変形が可能な棒状体である、
ことを特徴とする、(1)に記載の景品獲得ゲーム機とすることが好ましい。
【0018】
前記の通り、本発明に係る景品獲得ゲーム機の遊戯手段は、典型的には細長い棒形状とし得る。このようにすることで、遊戯者が遊戯手段を操作して移動する際や、遊戯手段の先端が目標手段を押し込む際の視認性が高くなり、より迫力のある景品獲得ゲーム機とすることができるからである。また、遊戯手段は遊戯空間内で遊戯者の操作により少なくとも2つの方向に移動可能とされるが、これは、具体的には2軸のスライダに遊戯手段を取り付けることで実現することができる。この場合、スライダの可動部にはある程度のあそびが設けられることが常であるので、遊戯手段先端部はある程度の範囲で自由に動くことができる。
【0019】
この事実は、本発明に係る景品獲得ゲーム機の遊戯課題に興味深い影響を与える。すなわち、目標手段を半球のような曲面からなる形状とした場合、遊戯手段が目標手段の中心部に接触した場合には、遊戯手段がそのまま目標手段を押し込むことができ、これによってプッシュラッチ手段による扉構造の保持が解除されて遊戯課題達成となる。ところが、遊戯者が遊戯手段を正確に誘導することができず、目標手段の端付近に接触した場合には、接触面は遊戯手段に対して傾いているため、遊戯手段先端部は目標手段表面で滑ってそれてしまい、正常に目標手段を押し込むことができなくなってしまう。つまり、目標手段に遊戯手段が接触したにもかかわらず、遊戯者の目前で遊戯手段が滑ってしまい、惜しくも遊戯課題達成とならなかった、という状況が現出する。
【0020】
あまりにも容易に遊戯課題を達成可能であると、景品獲得ゲーム機を設置するゲームセンター等の遊戯施設が適正な利益を得ることを困難にしてしまうと共に、遊戯性が低下することにもなってしまう。逆に、難度を高めるために単に目標手段を小さくすると、特に初心者である遊戯者にとって、遊戯手段が目標手段にかすりさえしない、という状態が続くので短時間に遊戯意欲を喪失してしまう結果になりやすい。
【0021】
これに対し、上記のような問題は、大きめの目標手段を用いることと合わせて相当程度解消する。すなわち、遊戯を行うと、短期間に遊戯手段が目標手段にあたる程度には上達できるが、遊戯手段は目標手段の表面で滑ってそれてしまい、遊戯課題達成には至らない。しかし、遊戯者は上達を体感できるなど、一定の達成感を得ることができるため、遊戯意欲が持続するという効果が得られる。もちろん、最終的に遊戯手段を目標手段の中央部付近を押し込んで遊戯課題を達成するには、さらに熟練を要するのである。
【0022】
このような効果は、景品獲得ゲーム機にとってまことに好ましいものであるので、本発明に係る景品獲得ゲーム機においては、単にスライダの可動部のあそびに頼るのではなく、積極的に遊戯手段が変形して、目標手段の表面で大きく滑り得るようにすることが好ましい。この為、遊戯手段を可撓変形が可能な棒状体とすることが好ましい。
【0023】
より具体的には、遊戯手段の少なくとも一部をバネやゴムのような弾性体で構成し、遊戯手段が目標手段に垂直に接触した場合にはしっかり押し込めるが、目標手段の斜面部分に接触した場合には、弾性体部分でしなやかに曲がることで、滑ってそれてしまい、目標手段を押し込むことが出来ないように構成するとよい。
【0024】
ところで、前記のような効果をより確実に得るには、遊戯手段の先端と目標手段の表面に引っ掛かりが無く、お互いに滑ることができる必要がある。この為、遊戯手段の先端は平面ではなく、曲面または針状とすることが好ましい。
【0025】
(3)本発明においては、
前記目標手段は、略半球形状とされている、
ことを特徴とする、(1)または(2)に記載の景品獲得ゲーム機とすることが好ましい。
【0026】
前記したとおり、遊戯手段は典型的には細長い棒状であり、この先端部で目標手段を押し込めば遊戯課題達成となる。ここで、目標手段が曲面で構成される略半球形状であれば、遊戯者が遊戯手段を操作して目標手段に接触させることに成功したとしても、その接触位置が目標手段の中心部分付近でなければ、遊戯手段が滑ってそれてしまい、目標手段を押し込むことができない。
【0027】
したがって、比較的大きな目標手段を使用しても、遊戯課題を達成するにはその中央付近の比較的狭い領域を遊戯手段で押し込まなければならないことになる。このような構成にすることによって、たとえ遊戯課題を達成することはできなかった場合でも、少なくとも遊戯課題で目標手段に接触することはできた、というような満足感を遊戯者に与えることができ、これによって、遊戯者にもう一度挑戦してみようという動機を与えることができる。
【0028】
このような工夫が必要な理由は0021段落等ですでに説明したとおりである。従って、遊戯を行うと、短期間に遊戯手段が目標手段にあたる程度には上達できる程度の難度であって、遊戯者が上達を体感できる一方で、最終的に遊戯手段を目標手段の中央部付近を押し込んで遊戯課題を達成するには、さらに熟練を要するというような難度設定ができることが好ましく、これは、目標手段を略半球形状とすることで達成される。
【0029】
(4)本発明においては、
前記目標手段には、少なくとも一か所の平面部または凹部が設けられている、
ことを特徴とする、(3)に記載の景品獲得ゲーム機とすることが好ましい。
【0030】
前記の通り、目標手段を略半球形状とすることで、目標手段が視覚的に大きいにもかかわらず、実際に遊戯手段が接触した際に首尾よく目標手段を押し込んで遊戯課題達成となる領域は中心部付近の狭い領域に限られ、結果として遊戯課題達成の難度を高くすることができる。しかし、あまりにも難度が高くなって遊戯課題の達成がほとんど不可能になり、遊戯者の遊戯意欲を削いでしまう場合も生じかねない。また、遊戯施設の方針や客層によっては、景品獲得ゲーム機の遊戯課題の難度を低めに設定したい場合もある。
【0031】
そこで、略半球形状の目標手段の少なくとも一か所を曲面ではなく平面にすることで、この部分に遊戯手段が接触した際には遊戯手段が滑ってそれてしまうようなことが無く、目標手段を確実に押し込んで遊戯課題達成とすることができる。つまり、平面部の面積を調整することで、遊戯課題達成の難度を比較的自由に調整することが可能となる。なお、平面は、目標手段の中心部付近に設けることが好ましい。そもそも、目標手段の中心部付近は、遊戯手段がほぼ垂直に接触できる部分であり、この付近に遊戯手段を誘導することで遊戯課題が達成できることが遊戯者にとって直感的に自然だからである。
【0032】
また、目標手段の少なくとも一か所に凹部を設けることも可能である。凹部に目標手段の先端部が接触した場合、目標手段は凹部に引っかかって固定した状態となり、遊戯手段が滑ってそれてしまうようなことは皆無となる。従って、特定の一点に正確に遊戯手段を誘導できた場合には、確実に遊戯課題が達成されるという効果が得られる。この場合は、遊戯者にとって、遊戯手段が滑りやすく、非常に難度が高いという印象にもかかわらず、思いがけず遊戯課題が達成されることがあるという、意外性を演出することができる。
【0033】
(5)本発明においては、
前記目標手段は、略蒲鉾形状とされている、
ことを特徴とする、(1)または(2)に記載の景品獲得ゲーム機とすることが好ましい。
【0034】
前記の通り、目標手段を略半球形状とすることで、目標手段が視覚的に大きいにもかかわらず、遊戯課題達成の難度を高くすることができるのであるが、目標手段が略半球形状の場合、遊戯手段を目標手段の中心部付近に2方向で正確に位置決めすることが必要である。景品獲得ゲーム機においては、遊戯者の操作により、遊戯手段を少なくとも2つの方向に移動することが多いが、このそれぞれの移動操作で正確な位置決めが求められることになる。
【0035】
しかし、同じ程度の難度の操作を遊戯者に反復させるよりも、低難度の操作と高難度の操作の両方を組み入れる方が好ましい場合がある。特に初心者である遊戯者は、正確な位置決めを行えないため、高難度の位置決めを2回求めても、単に両方で失敗したという結果に終わることが多く、これでは遊戯意欲が持続しない。一方、低難度の位置決めと、高難度の位置決めが含まれる場合は、前者には成功したが、後者で失敗し、結果として遊戯課題が達成できなかったという、中間段階が発生し得る。こうすると、遊戯課題は非達成であったにもかかわらず、遊戯者は一定の達成感を得ることができるため、継続して遊戯をしようという遊戯意欲が継続しやすい。
【0036】
そこで、目標手段を略半球形状ではなく、略蒲鉾形状とすると、一つの方向(蒲鉾形状の長手方向)については、目標手段のどの位置に遊戯手段を誘導したとしても、遊戯手段の滑りやすさは変わらないこととなり、位置決めの難度は低くなる。しかし、別の方向(蒲鉾形状の曲面をなす方向)については、目標手段の中心部付近に遊戯手段を誘導できなければ、遊戯手段は曲面に沿って滑ってそれてしまい遊戯課題は達成できないこととなる。このように、目標手段を略蒲鉾形状とすることで、遊戯課題が非達成の場合でも、途中までは成功していたという中間段階を演出することができ、これによって遊戯者の遊戯意欲を維持することができるのである。
【0037】
(6)本発明においては、
前記目標手段には、少なくとも一か所の平面部または溝構造が設けられている、
ことを特徴とする、(5)に記載の景品獲得ゲーム機とすることが好ましい。
【0038】
目標手段を略蒲鉾形状とした場合、必要な遊戯手段の位置決め精度は方向によって異なるものの、蒲鉾形状の最上部付近の狭い幅の領域に遊戯手段を接触させなければ、遊戯手段は滑ってそれてしまうために遊戯課題の難度は相当に高くなる。そこで、略半球上の目標手段の場合と同様に、目標手段の少なくとも一か所に平面部を設けることで、遊戯課題の難度を調整することができる。
【0039】
また、平面部に代えて、溝構造を設けることもできる。この効果も、目標手段を略半球形状とした場合の表面に凹部を設けることに対応するものである。
【0040】
(7)本発明においては、
前記扉構造には、景品払出手段が設けられており、
該扉構造が回動すると、該景品払出手段によって景品が押し出され遊技者に払いだされることが可能とされている
ことを特徴とする、(1)から(6)のいずれかに記載の景品獲得ゲーム機とすることが好ましい。
【0041】
すでに説明したとおり、本発明に係る景品獲得ゲーム機の遊戯課題は、遊戯手段を目標手段の位置まで誘導してこれを押し込み、プッシュラッチ手段を解除して扉構造を開くことである。これを達成したならば、適当な方法で扉構造の奥に収納または陳列された景品を遊戯者に払い出せばよい。
【0042】
ところで、景品獲得ゲーム機においては、遊戯課題の達成と景品の払い出しのプロセスが直接的であることが好ましい。遊戯課題達成と景品の払い出しの間に、遊戯者が視認することが不可能な、電子的プロセスが介在すると、遊戯者が意識的・無意識的に胡散臭さのような感情を抱くことの原因になり得るためである。可能な限り、遊戯課題達成によって景品が払い出される、または、遊戯課題達成と景品の払い出しが遊戯者から視認可能な純粋に機械的なプロセスでのみつながっていることが好ましいのである。
【0043】
その意味で、遊戯課題が達成され、扉構造が回動しながら開くことによって景品が遊戯者に払い出されることが好ましい。具体的には、扉構造を形成する板に垂直に板(景品払出手段)が取り付けられており、扉構造が回動しながら開くことに伴って、景品払出手段によって景品が手前に押し出されて落下し、このまま遊戯者に払い出されるようにするとよい。
【0044】
(8)本考案においては、
前記遊戯手段は、その先端が略半球形状とされている
ことを特徴とする、(3)乃至(7)のいずれか一に記載の景品獲得ゲーム機とすることが好ましい。
【0045】
前記の通り、本発明に係る景品獲得ゲーム機の遊戯手段は、典型的には細長い棒形状であり、この先端部で目標手段を押し込めば、プッシュラッチ手段による扉構造の保持が解除され、遊戯課題達成となる。ここで、遊戯手段の先端が凸曲面で構成され、かつ、目標手段も凸曲面で構成されていれば、遊戯者が遊戯手段を操作して目標手段に接触させることに成功したとしても、その接触位置が遊戯手段と目標手段の中心部分付近でなければ、遊戯手段と目標手段の接触部が滑ってそれてしまうため、目標手段を押し込むことができない。
【0046】
もちろん、たとえ遊戯手段の先端が凸曲面で構成されていなくても、細い遊戯手段を使用すれば、正確に目標手段の中心部付近に接触しないかぎりこれを押し込むことができないという機能を実現することができる。しかし、細い遊戯手段は、遊戯者から見て視覚的に頼りない印象を与えると共に、目標手段に接触させることの難度が非常に高そうに見えてしまいがちであり、遊戯意欲を減退させかねないという懸念がある。これに対処するために遊戯手段を太くすると、先端が平面状の場合には遊戯手段のどの位置で目標手段に接触しても遊戯課題達成となるため、遊戯課題の難度があまりに低くなってしまい、遊戯性が低下したり、景品獲得ゲーム機を設置するゲームセンター等の遊戯施設が適正な利益を得ることを困難にしてしまうという問題を招来する。
【0047】
これに対して、遊戯手段の先端を凸曲面とすれば、大きな目標手段と太い遊戯手段を使用しても、実際に遊戯課題を達成するには両者の中央付近の比較的狭い領域同士を接触させなければならないことになり、遊戯課題の難度が低下しすぎるという課題は解決される。また、前記した視覚的な意味での懸念も解消する。もちろん、太い遊戯手段を使用すると、これを誘導した場合に容易に目標手段に接触させることが可能であるので、先に説明した通り遊戯課題達成に至るまでに、遊戯手段と目標手段を接触させることまでは成功したという中間段階ができる。これを通じて遊戯者にもう一度挑戦してみようという動機を与えることができるという効果がますます顕著となるのである。
【0048】
ところで、遊戯手段の先端が略半球形状とは、必ずしも厳密な意味での半球形状を示しているのではなく、おおむね、半球形状と認識される程度の凸曲面とする、という意図である。従って、遊戯施設の方針や客層に応じて適宜曲率を変え、これによって難度を調整することも自由である。
【0049】
(9)本考案においては、
前記遊戯手段には、その先端に少なくとも一か所の平面部が設けられている、
ことを特徴とする、(8)に記載の景品獲得ゲーム機とすることが好ましい。
【0050】
前記の通り、遊戯手段の先端を略半球形状とすることで、遊戯手段や目標手段が視覚的に大きいにもかかわらず、首尾よく目標手段を押し込んで遊戯課題達成となる領域は両者の中心部付近の狭い領域どうしが接触した場合に限られ、結果として遊戯課題達成の難度を高くすることができる。しかし、この発明によれば、遊戯課題の難度が一見低く見えるにもかかわらず、実際の難度が相当に高くなる。しかし、遊戯施設の方針や客層によっては、景品獲得ゲーム機の遊戯課題の難度を低めに設定したい場合があることは、すでに述べた通りである。
【0051】
そこで、目標手段の場合と同様、略半球形状の遊戯手段の先端の少なくとも一か所を曲面ではなく平面にすることで、この部分に目標手段が接触した際には遊戯手段が滑って逸れてしまうことを発生しにくくし、より容易に目標手段を押し込んで遊戯課題が達成されるようにすることができる。この場合、遊戯手段先端の平面の面積を調整することによっても、遊戯課題達成の難度を比較的自由に調整可能である。なお、目標手段側に平面部を設けた場合には、これの面積を調整することでも同様に難度調整を行うことができるが、どちらによって難度調整を行うかは、景品獲得ゲーム機の構成によって決めればよい。例えば、平面部が遊戯者から直接視認されにくい方の平面部を大きくすることが考えられる。具体的には、遊戯者側に向かって配置されている目標手段に向かって遊戯手段が手前から奥側に移動する構成の景品獲得ゲーム機とした場合は、遊戯者から直接視認され難い遊戯手段の先端部の平面部を大きくし、遊戯者に直接視認される目標手段に設ける平面部は小さくすると良い。目標手段に大きな平面部を設けると、これが目立ってしまい、この部分が小さいと気づいた遊戯者が、遊戯課題の達成難度がきわめて高そうであると感じ、遊戯を行うことをためらう場合が発生することが想定されるからである。
【0052】
(10)本考案においては、
前記遊戯手段には、その先端に少なくとも一か所の凹部が設けられている、
ことを特徴とする、(8)または(9)のいずれかに記載の景品獲得ゲーム機とすることが好ましい。
【0053】
遊戯手段の先端の一部に平面を設けるのみならず、凹部を設けることも可能である。凹部とは、すり鉢状の凹みのようなもののみならず、ドリル穴のような形態を含む意図であり、要は主に凸曲面で構成される遊戯手段の表面が部分的に凹んでいる状態になっているということである。ここに、表面形状が凸曲面である目標手段が接触した場合、目標手段表面と凹部が引っかかって固定した状態となり、遊戯手段と目標手段が滑って逸れてしまうことが非常に発生し難くなる。従って、目標手段と遊戯手段を特定の範囲に正確に接触されることができた場合には、確実に遊戯課題が達成されるという効果が得られる。この場合は、遊戯者にとって、遊戯手段や目標手段が滑りやすく、非常に難度が高いという印象にもかかわらず、思いがけず遊戯課題が達成されることがあるという、意外性を演出することができるという効果がある。
【発明の効果】
【0054】
(1)遊戯空間内に回動自在とされた扉構造を設けて、これを閉じた状態で保持可能なプッシュラッチ手段と目標手段とを備え、該プッシュラッチ手段による該扉構造の保持を遊戯手段によって該目標手段が押し込まれることによって解除可能としたので、遊戯者の操作によって少なくとも2つの方向に移動可能な遊戯手段を目標手段の位置に位置決めすることで遊戯課題を解決する景品獲得ゲーム機において、目標手段の手前に遮蔽板を設けることなく難度を設定可能になるという効果が得られる。
【0055】
(2)遊戯手段は、可撓変形が可能な棒状体としたので、遊戯手段が目標手段に垂直に接触した場合にはしっかりおしこめるが、目標手段の斜面部分に接触した場合には、弾性体部分でしなやかに曲がることで、滑ってそれてしまい、目標手段を押し込むことが出来なくなる。これにより、最終的な遊戯課題は達成できない場合であっても、中間段階までは遊戯課題を達成したという一定の達成感を遊戯者に与え、または、初心者である遊戯者が容易に上達を体感できる景品獲得ゲームとすることができる。これにより、遊戯者の遊戯意欲が持続するという効果が得られる。
【0056】
(3)目標手段を略半球形状としたので、遊戯者が遊戯手段を操作して目標手段に接触させることに成功したとしても、その接触位置が目標手段の中心部分付近でなければ、遊戯手段が滑ってそれてしまい、目標手段を押し込むことができないことになる。従って、大きな目標手段を使用しつつ遊戯課題の難度設定を比較的自由に行うことができ、(2)と同様の効果をますます顕著に得られる。
【0057】
(4)目標手段には、少なくとも一か所の平面部または凹部を設けたので、遊戯課題の難度設定をますます自由に設定することが可能となる。
【0058】
(5)目標手段を略蒲鉾形状としたので、遊戯者が、少なくとも2つの方向で遊戯手段の位置決めを行う際に、それぞれの方向での位置決めの難度を大きく変えることが可能となる。これによって、初心者である遊戯者であっても、少なくとも1つの方向における遊戯手段の位置決めを成功させることが容易となり、前記と同様に、最終的な遊戯課題は達成できない場合であっても、中間段階までは遊戯課題を達成したという一定の達成感を遊戯者に与えることができる。また、初心者である遊戯者が容易に上達を体感できるため、遊戯意欲が持続するという効果が得られる。
【0059】
(6)目標手段には、少なくとも一か所の平面部または溝構造を設けたので、(4)と同様の効果が得られる。
【0060】
(7)扉構造に景品払出手段を設け、該扉構造が回動すると、該景品払出手段によって景品が押し出され遊技者に払い出されるようにしたので、遊戯課題達成と景品の払い出しが遊戯者から視認可能な純粋に機械的なプロセスでのみつながることとなり、遊戯者に意識的・無意識的な疑念を抱かせることを防止できるという効果が得られる。
【0061】
(8)本考案においては、遊戯手段の先端を略半球形状としたので、大きな目標手段と太い遊戯手段を使用しても、実際に遊戯課題を達成するには両者の中央付近の比較的狭い領域同士を接触させなければならないことになる。このような構成にすることによって、たとえ遊戯課題を達成することはできなかった場合でも、少なくとも遊戯課題で目標手段に接触することはできた、というような満足感を遊戯者に与えることができ、これによって、遊戯者にもう一度挑戦してみようという動機を与えることができるという効果がますます顕著となる。
【0062】
(9)本考案においては、遊戯手段の先端に少なくとも一か所の平面部を設けたので、この部分に目標手段が接触した際には遊戯手段が滑りにくく、目標手段を容易に押し込んで遊戯課題が達成されるようにすることができる。これにより、遊戯施設の方針や客層によって、景品獲得ゲーム機の遊戯課題の難度を自由に設定することができる。
【0063】
(10)本考案においては、遊戯手段の先端に少なくとも一か所の凹部を設けたので、ここに、表面形状が凸曲面である目標手段が接触した場合、目標手段表面と凹部が引っかかって確実に遊戯課題が達成されるという効果が得られる。これにより、遊戯手段や目標手段が滑りやすく、非常に難度が高いという印象にもかかわらず、思いがけず遊戯課題が達成されることがあるという、意外性を演出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施方法を示した説明図である。
【図2】本発明の実施方法を示した説明図である。
【図3】本発明の実施方法を示した説明図である。
【図4】本発明に係る遊戯手段の実施方法を示した説明図である。
【図5】本発明に係る遊戯手段の実施方法を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下、図面を用いて本発明に係る景品獲得ゲーム機について詳細に説明する。
【実施例1】
【0066】
図1は、本発明に係る景品獲得ゲーム機の一実施例の要部の説明図である。景品獲得ゲーム機には、少なくとも一部が透明または半透明の素材で遮蔽された遊戯空間内を備え、遊戯空間内に備えられる遊戯手段を、景品獲得ゲーム機本体が備える操作手段によって遊戯者が操作可能とされていることが通常であるが、これらは本発明に特有の構造ではないため省略し、図1には本発明の特徴に係る本発明の要部のみを表示している。
【0067】
さて、図示しない遊戯空間内には、遊戯者の操作によって移動可能とされた遊戯手段(1)が備えられ、遊戯手段(1)には、可撓部(2)が設けられている。本実施例では、可撓部はばね構造によって実現した。すなわち、棒状の遊戯手段の本体半ばに、コイルばねを挿入することで、この部分で遊戯手段が自由に折れ曲がることを可能としている。このような可撓部を設けることで、遊戯手段を対象物の面に垂直に押し当てると、ばね部がわずかにたわみながらも対象物を押し込むことができるのだが、対象物の面と遊戯手段の成す角度が大きいと、可撓部が折れ曲がり遊戯手段が面に沿って滑ってしまうことで対象物からそれ、対象物を押し込むことができない。
【0068】
なお、可撓部をばね構造に代えてゴム等の弾性体などによって実現することも可能であることは言うまでもないことである。
【0069】
陳列部屋(5)には、図示しない景品が陳列される。また、陳列部屋(5)には、蝶番構造(4)によって扉構造(3)が設けられている。遊戯者から景品が良好に視認されるように、本実施例では扉構造(3)は透明なアクリル樹脂製の板によって実現した。
【0070】
また、陳列部屋(5)にはプッシュラッチ手段(6)も設けられ、扉構造(3)を閉じた状態で保持可能としている。プッシュラッチ手段(6)は、本実施例ではマグネットプッシュラッチによって実現した。プッシュラッチ手段(6)とは、内蔵された磁石によって強磁性体からなる保持具を吸い付けることで保持するが、保持具を押し込むと保持具の保持を一時的に解除するというものである。本発明においては、扉構造(3)を透明なアクリル樹脂製の板で構成したので、マグネットプッシュラッチの内蔵する磁石で保持されないため、閉じた際にプッシュラッチ手段(6)と対抗する面に磁石に吸い付けられる鉄板製の保持具を貼付している。なお、図では、プッシュラッチ手段(6)の様子を把握しにくくなるため、保持具の表示は省略している。
【0071】
また、蝶番構造(4)には、いわゆるバネ蝶番を使用している。これは、ばねを内蔵することで、常に開こうとする力を発生する蝶番である。これにより、扉構造(3)がプッシュラッチ手段(6)によって保持されている際はもちろん扉構造(3)は閉じた状態を保持するのだが、プッシュラッチ手段(6)の保持が解除されると、扉構造(3)はバネ蝶番の働きによって大きく開くことになる。
【0072】
扉構造(3)には、目標手段(7)を備えている。目標手段(7)は、樹脂製の半球の頂部を一部切り落として平面部(8)を設けたものとした。
【0073】
さて、本実施例においては、遊戯手段は図の上下方向及び左右方向に移動可能とされている。そして、遊戯者が景品獲得ゲーム機の備える図示しないボタン等の操作手段を操作することで遊戯手段(1)を移動し、遊戯手段(1)をある位置に誘導する。その後、遊戯手段(1)は、軸方向に移動するが、目標手段(7)に接触できなければ、遊戯課題は非達成である。
【0074】
そして、遊戯手段(1)が目標手段(7)に接触できたとしても、半球形状の目標手段(7)の周辺部付近に接触したのでは、遊戯手段(1)は可撓部(2)で折れ曲がってしまい、目標手段(7)を押し込むことはできない。この場合も、遊戯課題は非達成である。
【0075】
一方、遊戯手段(1)が目標手段(7)の頂部の平面部(8)に接触できた場合、または、平面部(8)ではなくとも、これに近い場所に接触できた場合は、遊戯手段(1)は折れ曲がってしまうことなく目標手段(1)を押し込むことになる。こうなると、目標手段(7)とともに扉構造(3)が押し込まれ、これによってプッシュラッチ手段(6)ほ保持が解除されることになる。こうなると、バネ蝶番である蝶番構造(4)働きで扉構造(3)は大きく開き、遊戯課題達成である。
【0076】
この後、陳列部屋(5)内の景品は、適当な手段で遊戯者に払い出されるのである。このように、遊戯者が目標手段(7)を、遮蔽板のような障害物に遮られることなく直接的に視認して遊戯を行うことができるので、遊戯の際の迫力を損なうことが無く、また、遊戯者に注目される目標手段(7)の大きさだけでなく、遊戯者からは視認されにくい平面部(8)の大きさによって遊戯課題の難度を調整することが可能であるので、景品獲得ゲーム機を設置するゲームセンターのような遊戯施設が適正な利益を得ることを容易とすることができる。
【実施例2】
【0077】
図2は、本発明に係る景品獲得ゲーム機の一実施例の要部の説明図である。実施例1とほぼ同じ構成であるため、相違点のみについて説明を行う。
【0078】
本実施例では、目標手段(7)が蒲鉾形状(円柱を半分に割った形状)とされており、かつ、その頂部に溝構造(8)を設けた。このようにすることで、遊戯者の操作によって移動された遊戯手段(1)が溝構造(8)に接触した場合、または、これに近い位置に接触した場合には、遊戯手段(1)が可撓部(2)で折れ曲がってしまうことなく、目標手段(7)を押し込んで遊戯手段が達成となる。
【0079】
実施例1に係る半球構造の目標手段では、図の上下方向・左右方向の両方で正確に遊戯手段(1)を位置決めしなければ遊戯手段(1)が可撓部(2)で折れ曲がってしまい、目標手段(7)を押し込むことはできなかった。一方、本実施例においては、図の左右方向の位置決めは正確に行われなければならないが、図の上下方向の位置決めはあまり厳密でなくとも、目標手段(7)を押し込むことが可能である。
【0080】
このようにすることで、遊戯者に難度の高い左右方向での位置決めには失敗したが、少なくとも上下方向の位置決めには成功したという体験をさせることができる。つまり、最終的な遊戯課題の達成はできなかったが、途中までは首尾よく成功していた、という一定の満足感を与えることが可能になり、もう一度挑戦してみようという遊戯者を惹起することができるのである。
【実施例3】
【0081】
図3は、本発明に係る景品獲得ゲーム機の一実施例の上面から観察した断面を示す説明図である。本実施例では、扉構造(3)に、景品払出手段(9)を設けたところが特徴的である。
【0082】
扉構造(3)と景品払出手段(9)は一体とされているため、遊戯者が首尾よく遊戯課題を達成した場合、すなわち、扉構造(3)が開く際には、景品払出手段(9)も扉構造(3)とともに蝶番構造(4)を枢結軸として回転する。これにより、陳列部屋(5)に陳列されていた図示しない景品は、景品払出手段(9)によって押し出され、陳列部屋(5)の外に運ばれる。
【0083】
本実施例では、景品獲得ゲーム機の遊戯空間内に陳列部屋(5)を設けているので、陳列部屋(5)から押し出された景品は陳列部屋(5)から落下することになる。そこで、落下した景品がそのまま景品獲得ゲーム機の備える景品払出口から払い出されるようにしておくことで、遊戯課題の達成と景品の払い出しを直接的に関連付けることができるのである。
【0084】
すでに説明したとおり、遊戯課題達成と景品の払い出しの間に、遊戯者が視認することが不可能な、電子的プロセスが介在すると、遊戯者が意識的・無意識的に胡散臭さのような感情を抱くことになるが、このように、遊戯課題達成によって景品が払い出される構成とすることで、遊戯者が不信感を抱く懸念のない景品獲得ゲーム機が実現される。
【実施例4】
【0085】
本発明に係る景品獲得ゲーム機には、さまざまな形状の遊戯手段を使用することが可能であり、その例を図4、図5を用いて説明する。図4には、遊戯手段のいくつかの先端の形状の例を示している。また、図5には、遊戯手段のいくつかの実施形態の例を示している。
【0086】
本考案に係る景品獲得ゲーム機では、遊戯者は遊戯手段を操作して目標手段に接触させ、これを押し込むことでプッシュラッチ手段の保持が解除され、その後、扉構造が開き、遊戯課題が達成される。ところで、あまりに容易に遊戯課題が達成されると、景品獲得ゲーム機を設置するゲームセンター等の遊戯施設が適正な利益を上げることが困難になり、また、ゲームとしての遊戯性も低下してしまう。遊戯課題の難度を高めるために遊戯手段を細くしたり、目標手段を小さくすることが考えられるが、これは、遊戯者から見て如何にも遊戯手段を目標手段に接触させることが難しく感じられるため、遊戯意欲を減退させてしまうことにつながりかねない。このような懸念を解消する為の遊戯手段の実施例を説明する。遊戯手段以外の景品獲得ゲーム機の構成については、実施例1や実施例2の場合と同様である。
【0087】
図4には、様々な遊戯手段の先端部の形状を示している。ここには先端部のみの形状を示しており、遊戯手段の備えるべき可撓部などの表示は省略している。同図(A)は、単純な丸棒形状であり、この形状では、端部が平らな面であるから、どこかに目標手段の中央部を接触させることができれば、そのまま押し込んで遊戯課題を達成することができる可能性が高い、いわば基本的な形状である。もちろん、あまりに目標手段の中央部から外れた位置に接触した場合には、目標手段の表面の曲面形状に沿って遊戯手段が滑って逸れてしまうのだが、基本的に遊戯課題達成に求められる遊戯手段の位置決めの位置精度は低く、従って、難度は低い。
【0088】
図4(B)は、先端部が曲面とされており、目標手段の中央部を曲面の中央部に接触させることができれば、そのまま目標手段を押し込むことができるが、目標手段の曲面の中央部以外の部分に接触した場合は、押し込む際に曲面に沿って遊戯手段と目標手段が滑って逸れてしまい、これを押し込むことができない。従って、遊戯手段を目標手段に接触させることには成功したが、遊戯課題を達成することができなかった、という状態になる。特に、初心者である遊戯者が、数回の試行で遊戯手段を目標手段に接触させることはできる程度の難易度であれば、上達が体感されるので遊戯意欲が持続されやすいという効果がある。勿論、さらに、遊戯手段の曲面の中央部に目標手段の中央部を接触させることができるようになるには、さらなる試行が必要になる。
【0089】
図4(C)は遊戯手段の先端をとがらせて先端のみを切り落とした、いわば、鉛筆型である。この実施例の効果も、図4(B)のそれと同様であり、先端の平らな面に目標手段の中央部を接触させることができれば遊戯課題が達成される。
【0090】
図4(D)は、遊戯手段の先端部を曲面としたうえで、さらにその最先端部に窪みを設けたものである。先端部が曲面の遊戯手段では、中央付近に目標手段の中央部を接触させなければ遊戯課題達成とならないことはすでに説明したとおりであるが、遊戯施設の客層や方針に鑑みて、これでは難度が高すぎる場合が生じる。そこで、曲面上の遊戯手段の先端部に窪みを設けることで、ここに目標手段の中央部を接触させれば、目標手段の曲面が窪みとはまって滑ってしまうことが皆無となり、確実に遊戯課題が達成できるようになる。窪みの大きさは、目的に応じて適宜調整可能であることは言うまでもないことである。
【0091】
ところで、遊戯手段が目標手段の表面で滑って逸れてしまうことができる機能の必要性はすでに説明した通りであるが、この為には遊戯手段が可撓変形できることが好ましい。図5に、遊戯手段の可撓変形を実現する機能の実施形態の例を示す。同図(A)は、遊戯手段の中間部分を弾力に富むゴムで構成した例であり、遊戯手段の先端部の曲面の中央に目標手段の中央部が接触した場合は、そのまま押し込んで遊戯課題が達成となるが、曲面の中央部以外に目標手段の中央部が接触すると、ゴム部分で折れ曲がってしまって目標手段を押し込むことができないというものである。
【0092】
図5(B)は、遊戯手段の先端を球とし、中央部にコイルばねを設けたものである。この実施例も、同図(A)と同様の効果がある。
【0093】
図5(C)は、遊戯手段の先端の球を、2本の弾性に富む細棒(いわゆるピアノ線またはこれに類するもの)で支持したものである。この遊戯手段では、図の前後方向には遊戯手段が容易に折れ曲がるが、図の上下方向には遊戯手段が容易には折れ曲がらないという性質を示す。方向によって、遊戯者に求める位置決めの精度を変化させることができるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上のように、本発明は、遊戯者が遊戯手段を誘導する目標である目標手段と遊戯者の間に、遮蔽板のような妨害物を設けることなく、様々な難易度設定を行うことが可能な景品獲得ゲーム機を提供するものであり、産業上の価値は極めて高い。
【符号の説明】
【0095】
1 遊戯手段
2 可撓部
3 扉構造
4 蝶番構造
5 陳列部屋
6 プッシュラッチ手段
7 目標手段
8 平面部または溝構造
9 景品払出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が透明または半透明の素材で遮蔽された遊戯空間内に、遊戯者の操作によって少なくとも2方向に移動可能な遊戯手段を備え、該遊戯空間内に配置された景品を遊戯者に払い出し可能である景品獲得ゲーム機において、
該遊戯空間内に一端に蝶番構造を備えて回動自在とされた扉構造と、
該扉構造を閉じた状態で保持可能であるプッシュラッチ手段と、
該扉構造に該遊戯手段によって押込可能とされた目標手段とを備え、
該プッシュラッチ手段による該扉構造の保持は、該遊戯手段によって該目標手段が押し込まれることによって解除可能とされている
ことを特徴とする、景品獲得ゲーム機。
【請求項2】
前記遊戯手段は、可撓変形が可能な棒状体である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の景品獲得ゲーム機。
【請求項3】
前記目標手段は、略半球形状とされている、
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の景品獲得ゲーム機
【請求項4】
前記目標手段には、少なくとも一か所の平面部または凹部が設けられている、
ことを特徴とする、請求項3に記載の景品獲得ゲーム機。
【請求項5】
前記目標手段は、略蒲鉾形状とされている、
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の景品獲得ゲーム機。
【請求項6】
前記目標手段には、少なくとも一か所の平面部または溝構造が設けられている、
ことを特徴とする、請求項5に記載の景品獲得ゲーム機。
【請求項7】
前記扉構造には、景品払出手段が設けられており、
該扉構造が回動すると、該景品払出手段によって景品が押し出され遊技者に払い出されることが可能とされている
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれか一の請求項に記載の景品獲得ゲーム機。
【請求項8】
前記遊戯手段は、その先端が略半球形状とされている
ことを特徴とする、請求項3乃至請求項7のいずれか一の請求項に記載の景品獲得ゲーム機。
【請求項9】
前記遊戯手段には、その先端に少なくとも一か所の平面部が設けられている、
ことを特徴とする、請求項8に記載の景品獲得ゲーム機。
【請求項10】
前記遊戯手段には、その先端に少なくとも一か所の凹部が設けられている、
ことを特徴とする、請求項8または請求項9のいずれかに記載の景品獲得ゲーム機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−106934(P2013−106934A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−26755(P2012−26755)
【出願日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【出願人】(593061846)有限会社楠野製作所 (16)