説明

構造体支持構造、及び構造体支持構造の施工方法

【課題】耐震性能を継続的に確保しつつ、仮設スラブに導入される鉛直方向のせん断力を低減することを目的とする。
【解決手段】第1ブロック30に設けられた凹部30A及び凸部30Bと、第2ブロック32に設けられた凸部32B及び凹部32Aとが、上下方向に相対移動可能に組み合わされている。即ち、第1ブロックの凸部30Bと第2ブロック32の凸部32Bとが、第1ブロック30の幅方向に交互に配置され、凸部30Bと凸部32Bが相互に幅方向の移動を規制する一方で、凸部30Bと凸部32Bが上下方向に干渉しないようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体支持構造、及び構造体支持構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既存建物等の耐震改修としては、積層ゴム等の免震装置によって既存建物を免震化する、いわゆる免震レトロフィットが知られている。免震レトロフィットでは、一般に、仮受けジャッキで建物を一時的に仮支持し、免震装置を設置した後に仮受けジャッキをジャッキダウンして、建物を免震装置に盛り替える。また、建物と、建物の外周に構築された擁壁等との間には、建物の水平移動を許容する免震クリアランスが設けられる。免震クリアランスには、施工期間中、仮受けジャッキで仮支持された建物の水平移動を規制する仮設スラブが一時的に設けられることが多い。
【0003】
ここで、建物を免震装置に盛り替えるときに、仮受けジャッキのジャッキダウンに伴って、建物が僅に沈下する場合がある。これにより、仮設スラブに鉛直方向のせん断力が導入され、仮設スラブと建物の接合部や、仮設スラブと擁壁の接合部にひび割れ等が生じる恐れがある。この問題は、既存建物に対する免震レトロフィットに限らず、新築、改修建物における逆打工法においても、同様に発生する恐れがある。
【0004】
ところで、特許文献1では、仮設スラブに替えてコッター部材を免震クリアランスに着脱可能に設置している。これにより、コッター部材の撤去作業の手間を低減している。しかしながら、特許文献1では、前述した仮受けジャッキのジャッキダウンに伴う建物の沈下の問題は考慮されていない。また、コッター部材が建物及び擁壁に固定されていないため、地震時に擁壁に対して建物が接離すると、コッター部材が脱落する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−277873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の事実を考慮し、耐震性能を継続的に確保しつつ、仮設スラブに導入される鉛直方向のせん断力を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の構造体支持構造は、仮受け部材で仮支持された構造体を免震装置に載せ替えることにより免震化される前記構造体を支持する構造体支持構造であって、前記構造体から外側へ張り出す第1ブロックと、前記構造体の周囲に設けられた擁壁から前記第1ブロックに向かって張り出し、該第1ブロックと対向する第2ブロックと、を備え、前記第1ブロックと前記第2ブロックの対向面には、上下方向へ相対移動可能に組み合う凹部と凸部が設けられている。
【0008】
請求項1に係る発明によれば、地震や風等によって構造体が第1ブロックの幅方向へ水平移動すると、第1ブロック及び第2ブロックの対向面に設けられた凸部同士の間で水平方向のせん断力(以下、「水平せん断力」という)が伝達される。これにより、構造体に作用した地震荷重等が、第1ブロック及び第2ブロックを介して擁壁に伝達される。この結果、構造体の第1ブロックの幅方向の水平移動が規制される。
【0009】
また、凹部と凸部が上下方向へ相対移動可能に組み合うため、仮受け部材による構造体の仮支持の解除に伴って構造体が沈下しても、第2ブロックに対して第1ブロックが下方へ移動するため、第1ブロック及び第2ブロックに導入される鉛直方向(上下方向)のせん断力(以下、「鉛直せん断力」という)が低減される。従って、第1ブロックと構造体の接合部や、第2ブロックと擁壁の接合部においてひび割れ等の発生が防止される。更に、第1ブロックと第2ブロックにより、構造体の水平移動を規制した状態で、構造体を免震装置に載せ替えることができる。従って、耐震性能を継続的に保持することができる。
【0010】
請求項2に記載の構造体支持構造は、請求項1に記載の構造体支持構造において、前記第1ブロックと前記第2ブロックの対向面の各々には、前記第1ブロックと前記第2ブロックの張り出し方向と直交する方向に前記凹部と前記凸部が交互に設けられている。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、構造体に作用した地震荷重等が、第1ブロックと第2ブロックの張り出し方向と直交する方向(以下、「第1ブロックの幅方向」という)に設けられた複数の凸部同士の間で分散して伝達される。従って、第1ブロック及び第2ブロックの凸部の必要水平せん断耐力を低減することができる。
【0012】
請求項3に記載の構造体支持構造は、請求項1又は請求項2に記載の構造体支持構造において、前記構造体には、互いに反対方向へ張り出す2つの前記第1ブロックが設けられ、前記擁壁には、2つの前記第1ブロックとそれぞれ組み合う2つの前記第2ブロックが設けられ、2つの前記第1ブロックの各々は、前記構造体側から見て、該第1ブロックの張り出し方向と直交する直交方向の左端部が共に前記凸部で、該直交方向の右端部が共に前記凹部であり、若しくは該第1ブロックの張り出し方向と直交する直交方向の左端部が共に前記凹部で、該直交方向の右端部が共に前記凸部である。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、構造体には、互いに反対方向へ張り出す2つの第1ブロックが設けられており、これらの第1ブロックに第2ブロックがそれぞれ組み合わされている。また、2つの第1ブロックの各々は、構造体側から見て、当該第1ブロックの張り出し方向と直交する直交方向(以下、「第1ブロックの幅方向」という)の左端部が共に凸部で、第1ブロックの幅方向の右端部が共に凹部とされ、若しくは、当該第1ブロックの幅方向の左端部が共に凹部で、第1ブロックの幅方向の右端部が共に凸部とされている。即ち、互いに反対方向へ張り出す2つの第1ブロックは、凸部と凹部の配列が同じになっている。これにより、2つの第1ブロックの間では、構造体が第1ブロックの幅方向の何れの方向へ水平移動しても、水平せん断力を伝達する凸部の総数が同じになる。従って、第1ブロック及び第2ブロックの水平せん断耐力を効率的に増加することができる。なお、2つの第1ブロックは同一構造に限らず、例えば、一方の第1ブロックの凸部の数と、他方の第1ブロックの凸部の数が異なっていても良い。2つの第2ブロックについても同様である。
【0014】
請求項4に記載の構造体支持構造は、請求項1又は請求項2に記載の構造体支持構造において、前記構造体には、同じ方向に張り出す2つの前記第1ブロックが設けられ、前記擁壁には、2つの前記第1ブロックとそれぞれ組み合う2つの前記第2ブロックが設けられ、2つの前記第1ブロックのうち、一方の前記第1ブロックは、前記構造体側から見て、該第1ブロックの張り出し方向と直交する直交方向の左端部が前記凸部で該直交方向の右端部が前記凹部であり、他方の前記第1ブロックは、前記構造体側から見て、該第1ブロックの張り出し方向と直交する直交方向の左端部が前記凹部で該直交方向の右端部が前記凸部である。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、構造体には、同じ方向に張り出す2つの第1ブロックが設けられており、これらの第1ブロックに第2ブロックがそれぞれ組み合わされている。また、2つの第1ブロックのうち、一方の第1ブロックは、構造体側から見て、当該第1ブロックの張り出し方向と直交する直交方向(以下、「第1ブロックの幅方向」という)の左端部が凸部で、当該第1ブロックの幅方向の右端部が凹部であり、他方の第1ブロックは、構造体側から見て、当該第1ブロックの幅方向の左端部が凹部で、当該第1ブロックの幅方向の右端部が凸部とされている。即ち、同じ方向に張り出す2つの第1ブロックは、凸部と凹部の配列が異なっている。これにより、2つの第1ブロックの間では、構造体が第1ブロックの幅方向の何れの方向へ水平移動しても、水平せん断力を伝達する凸部の総数が同じになる。従って、第1ブロック及び第2ブロックの水平せん断耐力を効率的に増加することができる。なお、2つの第1ブロックは同一構造に限らず、例えば、一方の第1ブロックの凸部の数と、他方の第1ブロックの凸部の数が異なっていても良い。2つの第2ブロックについても同様である。
【0016】
請求項5に記載の構造体支持構造は、請求項4に記載の構造体支持構造において、2つの前記第1ブロックが、上下方向に並んでいる。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、凸部及び凹部の配列が異なる2つの第1ブロックが上下方向に並べられており、これらの第1ブロックに第2ブロックがそれぞれ組み合わされている。このように、第1ブロックを上下方向に並べることにより、1つ当たりの第1ブロック及び第2ブロックの板厚を小さく抑えつつ、水平せん断耐力を容易に増加することができる。
【0018】
請求項6に記載の構造体支持構造の施工方法は、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の構造体支持構造の施工方法であって、前記凹部と前記凸部とを組み合わせた状態で、前記仮受け部材による前記構造体の仮支持を解除し、該構造体を前記免震装置に支持させる。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、凹部と凸部とを組み合わせた状態で、仮受け部材による構造体の仮支持を解除する。従って、構造体の第1ブロックの幅方向の水平移動を規制しつつ、構造体を免震装置に載せ替えることができる。よって、構造体の耐震性能を継続的に確保することができる。更に、仮受け部材による構造体の仮支持の解除に伴って構造体が沈下しても、第2ブロックに対して第1ブロックが下方へ移動するため、第1ブロック及び第2ブロックに導入される鉛直せん断力が低減される。従って、第1ブロックと構造体の接合部や、第2ブロックと擁壁の接合部においてひび割れ等の発生が防止される。
【0020】
請求項7に記載の構造体支持構造の施工方法は、請求項6に記載の構造体支持構造の施工方法において、前記構造体を前記免震装置に支持させた後に、前記凸部を切断して撤去することにより、前記第1ブロックと前記第2ブロックとの間に前記構造体の水平方向の変位を許容する免震クリアランスを形成する。
【0021】
請求項7に係る発明によれば、第1ブロック及び第2ブロックに設けられた凸部を切断して撤去することにより、第1ブロックと第2ブロックとの間に、構造体の水平移動を許容する免震クリアランスを形成する。従って、凹部及び凸部を有しない第1ブロック及び第2ブロックと比較して、短い切断長さで免震クリアランスを形成することができるため、工期を短縮、施工コストの削減を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、上記の構成としたので、耐震性能を継続的に確保しつつ、仮設スラブに導入される鉛直方向のせん断力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る構造体支持構造が適用された建物を示す、図2の1−1線断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る構造体支持構造が適用された建物を示す、平面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る第1ブロック及び第2ブロックを示す、斜視図である。
【図4】(A)及び(B)は、本発明の一実施形態に係る第1ブロック及び第2ブロックを示す、図2の要部拡大図である。
【図5】比較例としての建物を示す図であり、(A)は平面図、(B)は図5(A)の5−5線断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る第2ブロックと擁壁の間のせん断力の伝達イメージを示す、説明図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る構造体が沈下した状態を示す、図1の拡大図に相当する図である。
【図8】(A)〜(D)は、本発明の一実施形態に係る第1ブロック及び第2ブロックを示す、平面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る第1ブロック及び第2ブロックの有効率と、各第1ブロック及び第2ブロックに設けられた凹部の数と凸部の数の合計値との関係を示す、グラフである。
【図10】本発明の一実施形態に係る第1ブロック及び第2ブロックの有効率と、各第1ブロック及び第2ブロックに設けられた凹部の数と凸部の数の合計値との関係を示す、グラフである。
【図11】(A)〜(C)は、本発明の一実施形態に係る第1ブロック及び第2ブロックを示す、平面図である。
【図12】(A)〜(C)は、本発明の一実施形態に係る建物の変形例を示す、平面図である。
【図13】(A)及び(B)は、本発明の一実施形態に係る第1ブロック及び第2ブロックの変形例を示す、平面図である。
【図14】本発明の一実施形態に係る構造体支持構造の変形例を示す、図1に相当する拡大図である。
【図15】(A)及び(B)は、本発明の一実施形態に係る第1ブロック及び第2ブロックの構築方法の変形例を示す、平面図である。
【図16】本発明の一実施形態に係る構造体支持構造の変形例を示す、斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る構造体支持構造の構成について説明する。なお、各図において適宜図示される矢印Xは構造体の平面形状における長手方向を示し、矢印Yは矢印X方向に直交する方向(構造体の平面形状における短手方向)を示し、矢印Zは上下方向(構造体の高さ方向)を示している。
【0025】
図1及び図2には、本発明の一実施形態に係る構造体支持構造が適用された免震化工事(免震レトロフィット)中の建物10が示されている。建物10は、既存の構造体12と、免震化工事に伴って新たに構築された基礎14を備えている。基礎14は、構造体12の下に構築された基礎スラブ16(耐圧板)と、構造体12の外周に設けられた擁壁18を備えている。これらの基礎スラブ16と構造体12との間には、仮受け部材としてのジャッキ20が一時的に設けられている。このジャッキ20によって構造体12が仮支持(仮受け)され、基礎スラブ16と構造体12との間に積層ゴム支承からなる免震装置24の設置スペース(設置高さ)が確保されている。なお、ジャッキ20は、基礎スラブ16及び当該基礎スラブ16の下の地盤22に埋設された杭(図示省略)の頭部に設けられている。また、本実施形態では、仮受け部材として、ジャッキ20を用いたが、一時的に鉄骨支保工等を用いても良い。更に、免震装置24としては、滑り支承や、転がり支承等を用いても良い。
【0026】
図2に示されるように、構造体12は平面視にて長方形に形成されており、各側壁12A、12B、12C、12Dと擁壁18との間に仮設スラブ26、28がそれぞれ設けられている。構造体12の長辺側の側壁12A、12Cに設けられた仮設スラブ26は、ワイヤーソー等のコンクリートカッターで切断され、第1ブロック30と第2ブロック32に分離されている。これらの第1ブロック30及び第2ブロック32は、跳ね出しスラブ形式で、構造体12又は擁壁18に支持されている。第1ブロック30は、構造体12から外側(擁壁18側)へ向かって張り出しており、その張り出し方向の端部に複数の凹部30A及び凸部30B(図3参照)が設けられている。これらの凹部30A及び凸部30Bは、第1ブロック30の幅方向(矢印X方向)に交互に設けられている。一方、第2ブロック32は、擁壁18から構造体12側へ向かって張り出しており、その張り出し方向の端部の端面(対向面)を第1ブロック30の張り出し方向の端面(対向面)に対向させて配置されている。この第2ブロック32の張り出し方向の端部には、凹部32A及び凸部32B(図3参照)が設けられている。これらの凹部32A及び凸部32Bは、第2ブロック32の幅方向に交互に設けられており、第1ブロック30の凸部30B及び凹部30Aがそれぞれ上下方向(図1において、矢印Z方向)に相対移動可能に組み合わされている。即ち、第1ブロックの凸部30Bと第2ブロック32の凸部32Bとが、第1ブロック30の幅方向に交互に配置され、凸部30Bと凸部32Bが相互に幅方向の移動を規制する一方で、凸部30Bと凸部32Bが上下方向に干渉しないようになっている。
【0027】
また、図3に示されるように、本実施形態では、凸部30B、32Bを図中の二点鎖線の位置で切断することより、第1ブロック30と第2ブロック32の間に所定の免震クリアランスHが形成されるようになっている。この免震クリアランスHが許容する範囲内で、免震化された構造体12の水平移動が許容される。なお、凸部30B、32Bを切断する位置は、必要な免震クリアランス寸法が確保される限りにおいては、凸部30B、32Bの根元(図中の二点鎖線)又は根元付近に限らず、凸部30B、32Bの途中でも良い。また、第1ブロック30の各凸部30Bの大きさは適宜変更可能であり、また、各凸部30Bの大きさが異なっていても良い。ただし、第1ブロック30を幅方向に等分して、各凸部30Bの大きさが同じになるように凹部30A及び凸部30Bを形成することが望ましい。各凸部30Bの大きさを揃えることにより、切断された凸部30Bの揚重作業等が容易になるためである。第2ブロック32の凸部32Bについても同様である。更に、第1ブロック30及び第2ブロック32には、補強筋等を適宜埋設しても良い。
【0028】
ここで、図4に示されるように、構造体12を間において対向すると共に、互いに反対方向へ張り出す一対の第1ブロック30は、構造体側12から見て凹部30Aと凸部30Bの配列が同じになっている。具体的には、構造体12の側壁12Aに設けられた第1ブロック30は、当該第1ブロック30を構造体12側から水平視(矢印S方向)したときに、当該第1ブロック30の張り出し方向(矢印Y方向)と直交(交差)する直交方向(矢印X方向、第1ブロック30の幅方向)の左側の端部(一端部)が凸部30Bとされ、当該直交方向の右側の端部(他端部)が凹部30Aとされている。これと同様に、構造体の側壁12Cに設けられた第1ブロック30は、当該第1ブロック30を構造体12側から水平視(矢印T方向)したときに、当該第1ブロック30の幅方向の左側の端部(一端部)が凸部30Bとされ、幅方向の右側の端部(他端部)が凹部30Aとされている。これにより、一対の第1ブロック30では、構造体12が第1ブロック30の幅方向(矢印X方向)の何れの方向へ移動しても、第2ブロック32の凸部32Bに接触する凸部30Bの総数が同じになっている。なお、本実施形態では、第1ブロック30の幅方向の左側の端部を凸部30Bとし、幅方向の右側の端部を凹部30Aとしたが、第1ブロック30の幅方向の左側の端部を凹部30Aとし、幅方向の右側の端部を凸部30Bとしても良い。
【0029】
一方、図2に示されるように、構造体12の短辺側の側壁12B、12Dと擁壁18の間に設けられた仮設スラブ28は、ワイヤーソー等のコンクリートカッターで直線状に切断され、2つのブロック34、36に分離されている。これらのブロック34、36は、仮設スラブ26と異なり、各ブロック34、36の張り出し方向に端部に凹部及び凸部が設けられていない。
【0030】
次に、本発明の一実施形態に係る構造体支持構造の作用について説明する。
【0031】
図4(A)に示されるように、地震荷重や風荷重等によって構造体12が第1ブロック30の幅方向の一方側(矢印X方向)へ水平移動すると、第1ブロック30の凸部30Bと第2ブロック32の凸部32Bとが接触し、水平移動を相互に規制し合う。これにより、第1ブロック30の凸部30Bと第2ブロック32の凸部32Bとの間で水平せん断力が伝達され、構造体12に作用した地震荷重等が、第1ブロック30及び第2ブロック32を介して擁壁18に伝達される。この結果、構造体12の幅方向の一方側の水平移動が規制される。これと同様に、図4(B)に示されるように、構造体12が第1ブロック30の幅方向の他方側(矢印X方向)へ水平移動すると、第1ブロック30の凸部30Bと第2ブロック32の凸部32Bとが接触し、水平移動を相互に規制し合う。この結果、構造体12の幅方向の他方側の水平移動が規制される。
【0032】
このように、第1ブロック30及び第2ブロック32によって構造体12の水平移動が規制されるため、ジャッキ20(図1参照)で仮支持された構造体12の耐震性能が確保される。また、構造体12に作用した地震荷重等が、第1ブロック30及び第2ブロック32を介してせん断力として擁壁18に伝達されるため、擁壁18の必要剛性、耐力を小さく抑えることができる。比較例を用いて具体的に説明すると、図5(A)及び図5(B)には、仮設スラブ300を直線状に切断して形成された2つのブロック302、304が示されている。この構成では、擁壁18に対して構造体12が接近する方向(矢印G方向)へ移動すると、擁壁18に設けられたブロック304に構造体12に設けられたブロック302が押し付けられ、構造体12に作用した地震荷重等が支圧によって擁壁18に伝達される。従って、擁壁18に面外方向(矢印G方向)の荷重が作用し、当該擁壁18の下端部にモーメントM等が発生する。このように地震荷重等を支圧によって擁壁18に伝達すると、擁壁18が面外剛性で抵抗するため、擁壁18の必要強度、必要耐力を大きくなり、擁壁18の厚み等が増加する。特に、地盤22が弱い場合や、本実施形態のように構造体12の平面形状が長方形の場合、短辺側の擁壁18では、長辺側の擁壁18と比較して支圧力の受圧面積が小さくなるため、擁壁18の必要強度、必要耐力が過大になる。
【0033】
これに対して、本実施形態では、図6に示されるように、構造体12に作用した地震荷重等が擁壁18の面内方向に作用する。従って、擁壁18がせん断剛性によって抵抗する。また、擁壁18に伝達された地震荷重等は、擁壁18の背面摩擦(矢印F)や下面摩擦(矢印F)によって地盤22に分散して伝達される。このように、面外剛性と比較して剛性が高いせん断剛性によって擁壁18が地震荷重等に抵抗するため、擁壁18の板厚等を小さく抑えることができる。更に、本実施形態では、構造体12が矢印X方向へ水平移動した場合、構造体12に作用した地震荷重等が、第1ブロック30及び第2ブロック32を介して構造体12の長辺側(側壁12A、12C側)の擁壁18に伝達されるため、受圧面積が小さい短辺側(側壁12B、12C側)の擁壁18に対する支圧力が低減される。従って、構造体12の短辺側に設けられた擁壁18の板厚等を小さく抑えることができる。なお、当然ながら本実施形態においても、第2ブロック32に対する第1ブロック30の支圧によって、構造体12に作用した地震荷重等を擁壁18に伝達可能である。
【0034】
また、複数の凹部30A、32A及び凸部30B、32Bを第1ブロック30及び第2ブロック32の幅方向に交互に設けたことにより、構造体12に作用した地震荷重等が、各凸部30B、32Bに分散して伝達される。従って、凸部30B、32Bの必要水平せん断耐力を小さく抑えることができる。更に、本実施形態では、構造体12と擁壁18を連結する仮設スラブ26を切断するという簡単な施工により、第1ブロック30と第2ブロック32を構築するため、施工性が向上する。
【0035】
また、第1ブロック30と第2ブロック32とは、上下方向に相対移動可能に組み合わされている。従って、図7に示されるように、ジャッキ20をジャッキダウンした際に、構造体12が沈下しても、第2ブロック32に対して第1ブロック30が下方へ移動するため、第1ブロック30と第2ブロック32に鉛直せん断力が導入されない。そのため、第1ブロック30と構造体12の接合部や、第2ブロック32と擁壁18の接合部においてひび割れ等の発生が防止される。また、このひび割れ等を防止するために、構造体18を免震装置24に載せ替える前に免震クリアランスを設けると、構造体12を免震装置24に載せ替えるまでの間、耐震性能が著しく低下してしまうが、本実施形態では、第1ブロック30と第2ブロック32により、構造体12の水平移動を規制した状態で、構造体12を免震装置24に載せ替えることができるため、耐震性能を継続的に保持することができる。更に、ジャッキダウン時に第1ブロック30及び第2ブロック32に鉛直せん断力が導入されないため、ジャッキ20の反力として得られる構造体12の重量(荷重)をより正確に計測することができる。従って、耐震設計(耐震補強設計)で重要となる、構造体12に発生する地震力を正確に把握することができる。
【0036】
なお、構造体12の沈下は、ジャッキダウン時に限らず、構造体12の下の地盤掘削時や、杭打ち時等にも発生し得る。従って、免震化工事の初期段階で、第1ブロック30及び第2ブロック32を形成することが望ましい。ただし、ジャッキダウン時に構造体12が最も沈下し易く、またその沈下量も大きくなるため、少なくともジャッキダウンの直前に第1ブロック30及び第2ブロック32を設ければ良い。
【0037】
また、構造体12を免震装置24に載せ替えた後に、第1ブロック30の凸部30B及び第2ブロック32の凸部32Bを所定位置(図3において、二点鎖線で示す位置)で切断して撤去することにより、第1ブロック30及び第2ブロック32の切断量を最小限に抑えつつ、擁壁18と構造体12との間に免震クリアランスHを形成することができる。例えば、構造体12の側壁12B、12D側に設けられた2つのブロック34、36(図2参照)の間に免震クリアランスを形成する場合、当該ブロック34、36を幅方向(矢印Y方向)に沿って切断する必要があるため、その切断長さが長くなる。これに対して、第1ブロック30及び第2ブロック32では凸部30B、32Bのみを切断するため、その切断長さが短くなる。従って、免震クリアランスHの形成に伴う粉塵、振動、騒音等を低減することができ、更に、工期の短縮、施工コストの削減を図ることができる。特に、免震クリアランスHの施工は免震化工事の最終段階で行うため、他の仕上げ工事や設備工事を並行して行うことが多い。従って、免震クリアランスの施工作業を低減するメリットが大きい。また、免震クリアランスHが形成された後は、一般に、第1ブロック30と第2ブロック32の間にエキスパンジョイント等が架設されるところ、凸部30B、32Bの根元(図3における二点鎖線の位置)を切断することにより、エキスパンジョイントを架設する第1ブロック30と第2ブロック32の間隔が略一定となる。これにより、第1ブロック30の幅方向に併設される複数のエキスパンジョイントの必要長さが略一定となる。従って、異なる長さのエキスパンジョイントを複数用意する必要がないため、コスト削減を図ることができる。更に、従来(例えば、特許文献1)では、構造体及び擁壁の各々から張り出す2つの水平拘束部の間に免震クリアランスを形成するが、これらの水平拘束部の端部には、コッター部材を係止するための凹部が形成される。従って、特許文献1では、水平拘束部の端部に凹部を形成する分、本実施形態よりも構造体と擁壁との間の必要スペースが広くなる。そのため、特許文献1は、敷地面積が狭い等の理由により、構造体と擁壁との間の必要スペースを確保できない建物には適用することができない。これに対して本実施形態では、特許文献1のようなコッター部材を係止するための凹部が不要であるため、構造体と擁壁との間隔が狭い建物についても適用することができる。
【0038】
次に、第1ブロック30の水平せん断耐力について説明する。なお、第2ブロック32の水平せん断耐力は、第1ブロック30と同様であるため説明を省略する。
【0039】
第1ブロック30の水平せん断耐力は、水平せん断力を伝達する凸部30Bの数に略比例する。換言すれば、第1ブロック30の水平せん断耐力は、水平せん断力に対して有効な第1ブロック30の幅、即ち、凸部30Bの幅の合計値に略比例する。従って、第1ブロック30の幅に対する各凸部30Bの幅の合計値の比(以下、「有効率」という)を大きくすることにより、第1ブロック30の水平せん断耐力を高めることができる。
【0040】
ここで、水平せん断力を伝達する凸部30Bの数は、第1ブロック30に設けられた凸部30Bの数と凹部30Aの数の合計値によって変動する。具体的には、凸部30Bの数と凹部30Aの数の合計値が奇数の場合は、構造体12が第1ブロック30の幅方向の一方側及び他方側の何れの方向へ水平移動しても、水平せん断力を伝達する凸部30Bの数が同じになる。これに対して、凸部30Bの数と凹部30Aの数の合計値が偶数の場合は、構造体12の水平移動方向によって水平せん断力を伝達する凸部30Bの数に差が生じる。例えば、図8(A)及び図8(B)には、合計5つ(奇数)の凹部30A(3つ)と凸部30B(2つ)が設けられた第1ブロック30が示されている。この第1ブロック30では、構造体12が第1ブロック30の幅方向の一方側(矢印X方向)及び他方側(矢印X方向)の何れの方向へ水平移動しても、水平せん断力を伝達する凸部30Bの数が2つ(白矢印又は黒矢印)になる。従って、第1ブロック30の幅をL、各凸部30Bの幅をL、Lとすると、水平せん断力に対して有効な第1ブロック30の幅はL+Lとなり、その有効率は(L+L)/Lとなる。
【0041】
一方、図8(C)及び図8(D)に示されるように、合計6つ(偶数)の凹部30A(3つ)と凸部30B(3つ)が設けられた第1ブロック30では、構造体12が第1ブロック30の幅方向の一方側(矢印X方向)へ水平移動した場合は、水平せん断力を伝達する凸部30Bの数が3つ(白矢印)となり、構造体12が第1ブロック30の幅方向の他方側(矢印X方向)へ水平移動した場合は、水平せん断力を伝達する凸部30Bの数が2つ(黒矢印)となる。このように、構造体12が水平移動する方向によって、水平せん断力を伝達する凸部30Bの数に差が生じる。この場合、第1ブロック30の水平せん断耐力は、水平力を伝達する凸部30Bの数が小さい方(2つ)を基準として決定される。従って、水平せん断力に対して有効な第1ブロック30の幅はL+Lとなり、第1ブロック30の幅をLとすると、その有効率は(L+L)/Lとなる。
【0042】
ここで、第1ブロック30を等分して凸部30Bと凹部30Aを形成した場合、その有効率は下記式(1)、式(2)のようになる。従って、図9に示されるグラフのように、凸部30Bの数と凹部30Aの数の合計値が偶数の場合は、その合計値が奇数の場合と比較して有効率が小さくなり、効率が悪くなる。
凸部と凹部の数の合計値が奇数の場合:(N−1)/2N・・・(1)、N≧3
凸部と凹部の数の合計値が偶数の場合:(N−2)/2N・・・(2)、N≧2
但し、N:凹部の数と凸部の数の合計値(第1ブロックの分割数(等分数))である。
【0043】
上記の点を考慮し、本実施形態では、構造体12を間において互いに反対側へ張り出す一対の第1ブロック30の間で凸部30Bと凹部30Aの配列を調整し、水平せん断力を伝達可能な凸部30Bの数の差を相殺している。具体的には、構造体12の側壁12A及び側壁12Cに設けられた2つの第1ブロック30の各々を構造体12側から見たときに、第1ブロック30の幅方向の左端部に凸部30Bを、幅方向の右端部に凹部30Aをそれぞれ設けている。これにより、一対の第1ブロック30の間で、水平せん断力を伝達可能な凸部30Bの数の差が相殺されるため、その有効率が上記式(1)になる。従って、図10に示されるように、第1ブロック30の有効率を向上することができる。なお、第2ブロック32の凹部32A及び凸部32Bの配列は、第1ブロック30の凹部30A及び凸部30Bの配列に応じて調整すれば良い。
【0044】
これにより、例えば、障害物(切梁等の仮設資材など)等によって第1ブロック30の所定位置を切断することができず、又は、後述するように切断された凸部30Bを撤去する際の重量制限等によって、各第1ブロック30の凹部30Aの数と凸部30Bの数の合計値を奇数にできない場合であっても、上記のように一対の第1ブロック30の間で凸部30Bと凹部30Aの配列を調整することで、第1ブロック30の水平せん断耐力を確保することができる。また、第1ブロック30に設ける凹部30Aの数と凸部30Bの数の合計値を奇数及び偶数の中から必要に応じて選択できるため、第1ブロック30に設ける凹部30A及び凸部30Bの数を必要最小限に抑えることができる。従って、凹部30A及び凸部30Bの製作コストを削減することができる。
【0045】
ところで、組み合わされた第1ブロック30と第2ブロック32において、凹部30Aと凸部32Bの間の隙間、及び凸部30Bと凹部32Aの間の隙間にばらつきが生じると、特定の凸部30B、32Bにせん断応力が集中する。例えば、図11(A)に示されるように、第1ブロック30に設けられた3つの凸部30Bのうち左側の凸部30Bは、他の2つの凸部30Bよりも第2ブロック32の凸部32Bとの隙間Dが小さくなっている(D<D)。この場合、図11(B)に示されるように、第1ブロック30における左側の凸部30Bが他の2つの凸部30Bよりも早く第2ブロック32の凸部32Bに接触するため、当該凸部30B、32Bにせん断応力が集中してしまう。このように、特定の凸部30B、32Bにせん断力が集中すると、当該凸部30B、32Bが破損、損傷する恐れがある。この対策として、図11(C)に示される構成では、隣り合う凸部30Bと凸部32Bの隙間Dに板状の隙間調整部材60を設け、当該隙間Dを埋めることにより、隙間Dが隙間Dになるように調整している。これにより、特定の凸部30B、32Bに対するせん断力の集中が低減される。従って、凸部30B及び凹部30Aの破損、損傷が抑制されるため、耐震性能が向上する。なお、隙間調整部材60としては、鋼板、木板(ベニヤ板等)、モルタル、又は押出法ポリスチレンフォーム等の発泡体を用いることができる。また、図示を省略するが、隙間調整部材60としてモルタルを用いる場合は、隣り合う凸部30Bと凸部32Bの隙間にビニール製の袋体を配置し、当該袋体にモルタルを充填しても良い。これにより、モルタルが凸部30B、32Bに付着せず、また、袋体と共にモルタルを撤去することができるため、免震クリアランスH(図3参照)の施工性が向上する。
【0046】
次に、本発明の一実施形態に係る構造体支持構造の変形例について説明する。
【0047】
先ず、第1ブロック30及び第2ブロック32に設けられた凹部30A、32A及び凸部30B、32Bの配列の調整方法の変形例について説明する。なお、第2ブロック32の凹部32A及び凸部32Bの配列は、第1ブロック30の凹部30A及び凸部30Bの配列に応じて調整すれば良いため、説明を省略する。
【0048】
上記実施形態では、構造体12の側壁12A、12Cに設けられた一対の第1ブロック30の間で、凹部30Aと凸部30Bの配列を調整したがこれに限らない。凹部30Aと凸部30Bの配列の調整は、構造体12の平面形状に応じて適宜変更可能である。例えば、図12(A)〜図12(C)に示されるように、平面形状がL型、円形、五角形等の多角形の構造体44では、対となる仮設スラブ46の間、又は対となる仮設スラブ48の間で凸部と凹部の配列を調整すれば良い。なお、符号49は、各構造体44の周囲に設けられた擁壁である。
【0049】
また、図13(A)及び図13(B)に示されるように、構造体12の同じ側壁12Cから同じ方向(矢印S方向)へ張り出す2つの第1ブロック30、50の間で、凹部30A、50A及び凸部30B、50Bの配列を調整しても良い。具体的には、第1ブロック30は、前述したように、当該第1ブロック30を構造体12側から水平視(矢印T方向)したときに、当該第1ブロック30の幅方向(矢印X方向)の左側の端部(一端部)が凸部30Bとされ、右側の端部(他端部)が凹部30Aとされている。一方、第1ブロック50は、第2ブロック52と組み合わされており、当該第1ブロック50を構造体12側から水平視(矢印T方向)したときに、当該第1ブロック50の幅方向(矢印X方向)の左側の端部(一端部)が凹部50Aとされ、右側の端部(他端部)が凸部50Bとされている。これにより、構造体12が第1ブロック30、50の幅方向の何れの方向へ移動しても、第2ブロック32、52の凸部32Bに接触する第1ブロック30、50の凸部30B、50Bの総数が4つ(白矢印、黒矢印)になる。このように構造体12の同じ側壁12Cから同じ方向へ張り出す2つの第1ブロック30、50の間で、凹部30A、50A及び凸部30B、50Bの配列を調整しても良い。また、本変形例のように、調整対象となる2つ第1ブロック30、50では、凹部30A及び凸部30Bの数と、凹部32A及び凸部32Bの数が異なっていても良い。
【0050】
更に、図14に示されるように、構造体12の同じ側壁12Aに上下方向に2つの仮設スラブ26を並べ、各仮設スラブ26の第1ブロック30の間で凹部30A及び凸部30Bの配列を調整しても良い。この構成における凹部30A及び凸部30Bの配列の調整方法は、図13(A)及び図13(B)で説明したものと同様である。このように、2つの第1ブロック30を上下方向に並べることにより、1つ当たり第1ブロック30の板厚を小さく抑えつつ、水平せん断耐力を容易に増加することができる。なお、上下方向に並べる仮設スラブ26の数は2つに限らず、3つ以上でも良い。
【0051】
次に、第1ブロック30及び第2ブロック32の構築方法の変形例について説明する。
【0052】
上記実施形態では、仮設スラブ26を切断して分離することにより、第1ブロック30及び第2ブロック32を構築したがこれに限らない。例えば、打ち込み型枠工法によって第1ブロック30及び第2ブロック32を構築しても良い。具体的には、図15(A)に示されるように、仮設スラブ26を構築する型枠62内に仕切り部材64、66で仕切り、第1ブロック30を構築する区画68と第2ブロック32を構築する区画70を形成する。仕切り部材64は第1ブロック30の外形に沿って配置され、この仕切り部材64によって第1ブロック30の凹部30A及び凸部30Bが形成される。また、仕切り部材66は第2ブロック32の外形に沿って配置され、この仕切り部材64によって第2ブロック32の凹部32A及び凸部32Bが形成される。また、各仕切り部材64、66は対向して配置され、その間に隙間72が形成されている。これらの区画68、70にコンクリートを打設することにより、第1ブロック30及び第2ブロック32が構築される。なお、各区画68、70には、補強筋等を適宜配筋しても良い。このように打ち込み型枠工法を用いることにより、第1ブロック30と第2ブロック32の間に形成される各隙間72の寸法管理が容易となるため、隙間72のばらつきを抑制することができる。従って、前述したように、特定の凸部30B、32B(図11(B)参照)に対するせん断力の集中が低減されるため、耐震性能が向上する。
【0053】
なお、仕切り部材64、66は必ずしも撤去する必要はなく、例えば、図15(B)及び図16に示されるように、仕切り部材74として弾性体、発泡体等の剛性が小さい材料を用いることで、仕切り部材74を撤去せずに、第1ブロック30と第2ブロック32を上下方向に相対移動可能に組み合わせることができる。従って、施工性が向上する。
【0054】
また、図示を省略するが、第1ブロック30及び第2ブロック32をプレキャスト化しても良い。第1ブロック30及び第2ブロック32をプレキャスト化することにより、前述した隙間の寸法管理が更に容易となる。なお、プレキャスト化された第1ブロック30及び第2ブロック32は、PC鋼線、PC鋼棒等のPC鋼材で構造体12又は擁壁18に着脱可能に圧着接合しても良い。これにより、第1ブロック30及び第2ブロック32の撤去が容易となり、また、第1ブロック30又は第2ブロック32を撤去することにより、構造体12と擁壁18との間に免震クリアランスを形成することができるため、施工性が向上する。
【0055】
なお、上記実施形態では、構造体12の側壁12A、12Cと擁壁18の間に第1ブロック30及び第2ブロック32を設けたが、構造体12の側壁12B、12Dと擁壁18との間に設けても良い。また、上記実施形態では、複数組(合計4組)の第1ブロック30及び第2ブロック32を設けたが、少なくとも一組の第1ブロック30及び第2ブロック32があれば良い。更に、上記実施形態では、第1ブロック30及び第2ブロック32に複数の凹部30A、32A、及び複数の凸部30B、32Bを設けたが、第1ブロック30及び第2ブロック32には、凹部30A、32A及び凸部30B、32Bが少なくとも各一つあれば良い。
【0056】
また、上記実施形態に係る構造体支持構造は、ジャッキ20で仮支持された構造体12だけでなく、免震装置24で支持された構造体12についても適用可能である。即ち、上記実施形態に係る構造体支持構造は、構造体12を免震装置24に載せ替える前だけでなく、載せ替えた後においても、構造体12の水平移動を規制して耐震性能を確保することができる。更に、上記実施形態では既存の建物10の免震化工事を例に説明したが、上記実施形態に係る構造体支持構造は、逆打ち工法によって構築される免震構造の新築建物、改築建物にも適用可能である。
【0057】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
12 構造体
18 擁壁
20 ジャッキ(仮受け部材)
24 免震装置
30 第1ブロック
30A 凹部
30B 凸部
32 第2ブロック
32A 凹部
32B 凸部
44 構造体
49 擁壁
50 第1ブロック
50A 凹部
50B 凸部
52 第2ブロック
52A 凹部
52B 凸部
H 免震クリアランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮受け部材で仮支持された構造体を免震装置に載せ替えることにより免震化される前記構造体を支持する構造体支持構造であって、
前記構造体から外側へ張り出す第1ブロックと、
前記構造体の周囲に設けられた擁壁から前記第1ブロックに向かって張り出し、該第1ブロックと対向する第2ブロックと、
を備え、
前記第1ブロックと前記第2ブロックの対向面には、上下方向へ相対移動可能に組み合う凹部と凸部が設けられている構造体支持構造。
【請求項2】
前記第1ブロックと前記第2ブロックの対向面の各々には、前記第1ブロックと前記第2ブロックの張り出し方向と直交する方向に前記凹部と前記凸部が交互に設けられている請求項1に記載の構造体支持構造。
【請求項3】
前記構造体には、互いに反対方向へ張り出す2つの前記第1ブロックが設けられ、
前記擁壁には、2つの前記第1ブロックとそれぞれ組み合う2つの前記第2ブロックが設けられ、
2つの前記第1ブロックの各々は、前記構造体側から見て、該第1ブロックの張り出し方向と直交する直交方向の左端部が共に前記凸部で、該直交方向の右端部が共に前記凹部であり、若しくは該第1ブロックの張り出し方向と直交する直交方向の左端部が共に前記凹部で、該直交方向の右端部が共に前記凸部である請求項1又は請求項2に記載の構造体支持構造。
【請求項4】
前記構造体には、同じ方向に張り出す2つの前記第1ブロックが設けられ、
前記擁壁には、2つの前記第1ブロックとそれぞれ組み合う2つの前記第2ブロックが設けられ、
2つの前記第1ブロックのうち、一方の前記第1ブロックは、前記構造体側から見て、該第1ブロックの張り出し方向と直交する直交方向の左端部が前記凸部で該直交方向の右端部が前記凹部であり、他方の前記第1ブロックは、前記構造体側から見て、該第1ブロックの張り出し方向と直交する直交方向の左端部が前記凹部で該直交方向の右端部が前記凸部である請求項1又は請求項2に記載の構造体支持構造。
【請求項5】
2つの前記第1ブロックが、上下方向に並んでいる請求項4に記載の構造体支持構造。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の構造体支持構造の施工方法であって、
前記凹部と前記凸部とを組み合わせた状態で、前記仮受け部材による前記構造体の仮支持を解除し、該構造体を前記免震装置に支持させる構造体支持構造の施工方法。
【請求項7】
前記構造体を前記免震装置に支持させた後に、前記凸部を切断して撤去することにより、前記第1ブロックと前記第2ブロックとの間に前記構造体の水平方向の変位を許容する免震クリアランスを形成する請求項6に記載の構造体支持構造の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−256621(P2011−256621A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132752(P2010−132752)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】