説明

構造物製造方法及び構造物製造装置

【課題】一対の部材を組み付けて構造物を製造する際に、簡略な作業によって一対の部材を高い精度で位置決めすることが可能な構造物製造方法を提供することにある。
【解決手段】上側パネル31に形成されたターゲット穴33の画像を取得するカメラ41をリアスパー22に設置する撮像手段設置工程と、カメラ41が取得してモニター画面上に表示するターゲット穴33の画像を、モニター画面上に予め設定したターゲットラインに位置合わせしながら、上側パネル31とリアスパー22とを相対移動させることで相対位置を位置決めする位置決め工程と、を含むものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の部材を組み付けることによって構造物を製造する構造物製造方法及び構造物製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一対の部材を組み付けることによって構造物を製造する場合、一方の部材と他方の部材とを正確に位置決めする作業が必要となる。この位置決めの方法としては、糸の一端に錘が取り付けられたいわゆる下げ振りを用いる方法が従来用いられてきた。この下げ振りを用いる場合、まず両方の部材の位置を合わせようとする箇所に、位置決め用の穴をそれぞれ形成する。次に、各部材を上下方向に離間させてそれぞれ配置し、上方に位置する部材の穴に下げ振りの糸を挿通させて、錘を鉛直下方に吊り下げた状態とする。そして、この錘を下方に位置する部材の穴の位置に合わせるように保ちながら、一方の部材を他方の部材に向かって下降させる、または他方の部材を一方の部材に向かって上昇させる。そして、一方の部材の穴と他方の部材の穴とを一致させることにより、一対の部材を正確に位置決めすることができる。
【0003】
この下げ振りを用いた位置決めは、各部材の表面が湾曲面である場合に特に有効な位置決め手段として用いられる。これは、湾曲面に直交して位置決め用の穴をそれぞれ形成すると、一方の部材とその鉛直下方に位置する他方の部材とでは穴の軸線方向が一致せず、一方の部材の穴を通して他方の部材の穴を見ることができない状態だからである。
【0004】
ところで、構造物の一例としては、航空機の主翼のような航空機構造物が挙げられる。本出願人は、高い精度で一方の部材を他方の部材に向かって上昇または下降させることが可能な航空機構造物製造装置を従来提唱している(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−201986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の構造物製造方法によれば、両部材が正確に位置決めされず、位置決め作業のやり直しが発生するという問題があった。より詳細には、下げ振りを用いる場合、一方の部材と他方の部材との間に錘が位置した状態で、いずれかの部材を下降または上昇させる。従って、錘が各部材に干渉するのを防止すべく、両部材が接触する直前に下げ振りを両部材の間から取り除く必要があり、その後は操作者の勘や目測に頼って部材を下降または上昇させることになる。これにより、操作者の技量等によっては両部材の位置決めに誤差が生じる場合があり、この場合、位置決め作業のやり直しが発生する。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、一対の部材を組み付けて構造物を製造する際に、簡略な作業によって一対の部材を高い精度で位置決めすることが可能な構造物製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。すなわち、本発明に係る構造物製造方法は、穴がそれぞれ形成された部材同士を、相対移動させて前記穴同士を合わせるようにして組み付けて構造物を製造する構造物製造方法であって、一方の部材に形成された前記穴の画像を取得する撮像手段を他方の部材に設置する撮像手段設置工程と、前記撮像手段が取得してモニター画面上に表示する前記穴の画像を、前記モニター画面上に予め設定したマーキングに位置合わせしながら、部材同士を相対移動させることで部材同士の相対位置を位置決めする位置決め工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
このような製造方法によれば、撮像手段によって取得されモニター画面上に表示される穴の画像を、モニター画面上のマーキングに位置合わせしながら、部材同士を相対移動させるという簡略な作業により、部材同士を高い精度で位置決めすることができる。また、このような作業は1人の作業者で行うことが可能であるため、人件費の削減によるコストダウンを図ることができる。
また、このような製造方法によれば、各部材に形成された穴の軸線が、部材を相対移動させる方向に対して傾斜している場合でも、他方の部材に設置した撮像手段で一方の部材の穴の画像を確実に取得することができる。これにより、部材同士の正確な位置決めが可能となる。
【0010】
また、本発明に係る構造物製造方法は、前記撮像手段が、他方の部材に形成された穴を通して一方の部材に形成された前記穴の画像を取得することを特徴とする。
【0011】
このような製造方法によれば、位置決め用の穴を用いた簡略な構成により、一方の部材に形成された穴の画像を確実に取得することができる。
【0012】
また、本発明に係る構造物製造方法は、前記構造物が航空機の翼体であって、前記一方の部材が、前記翼体の外面を形成するパネル部材であり、前記他方の部材が、前記翼体の長手方向に配設される桁部材であることを特徴とする。
【0013】
このような製造方法によれば、航空機の翼体のような巨大な構造物であっても、1人の作業者による簡略な作業によって、パネル部材と桁部材とを高い精度で位置決めすることができる。
【0014】
また、本発明に係る構造物製造方法は、前記位置決め工程で前記翼体の基端を位置決めした後に、前記翼体の先端で部材同士の側面の相対位置を位置決めする他の位置決め工程を備えることを特徴とする。
【0015】
このような製造方法によれば、航空機の翼体のような巨大な構造物であっても、基端側を穴基準で位置合わせした後に、先端側を側面基準で位置合わせすることにより、構造体の全体に渡って、パネル部材と桁部材とを高い精度で位置決めすることができる。
【0016】
また、本発明に係る構造物製造装置は、穴がそれぞれ形成された部材同士を、相対移動させて前記穴同士を合わせるようにして組み付けて構造物を製造する構造物製造装置であって、一方の部材に取り付けられ、他方の部材に形成された前記穴の画像を取得する撮像手段と、前記穴の画像に対し、予め設定された前記他方の部材を位置合わせすべきマーキング情報を合成することにより合成画像を生成する合成画像生成手段と、前記合成画像を表示する表示手段と、を備えることを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、合成画像生成手段が、撮像手段によって取得される穴の画像に対し、予め設定されたマーキング情報を合成することにより合成画像を生成する。そしてこの合成画像が、表示手段に表示される。これにより、穴の画像をマーキングに位置合わせしながら、部材同士を相対移動させるという簡略な作業により、部材同士を高い精度で位置決めすることができる。また、このような作業は1人の作業者で行うことが可能であるため、人件費の削減によるコストダウンを図ることができる。
また、このような構成によれば、各部材に形成された穴の軸線が、部材を相対移動させる方向に対して傾斜している場合でも、他方の部材に設置した撮像手段で一方の部材の穴の画像を確実に取得することができる。これにより、部材同士の正確な位置決めが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る構造物製造方法によれば、一対の部材を組み付けて構造物を製造する際に、簡略な作業によって一対の部材を高い精度で位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る主翼の概略構成を示す分解斜視図である。
【図2】主翼の基端部を模式的に示した斜視図である。
【図3】主翼の先端部を模式的に示した断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る主翼製造装置の構成を示す概略正面図である。
【図5】基端部カメラユニットのリアスパーへの取り付け状態を示す概略断面図である。
【図6】カメラホルダーへのカメラの取り付けを説明する概略斜視図である。
【図7】先端部カメラユニットのリアスパーへの取り付け状態を示す概略断面図である。
【図8】主翼製造装置の機能構成を示すブロック図である。
【図9】モニター画面に表示される合成画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。まず、本発明の実施形態に係る構造物製造方法で製造する構造物について説明する。本実施形態では、構造物として航空機の主翼を製造する場合を例に説明する。
【0021】
図1は、主翼1の概略構成を示す分解斜視図である。主翼1は、その長手方向に沿って両側部を形成する一対のスパー2(桁部材)と、その上面及び下面を形成する一対のパネル3と、その内部に設けられる複数のリブ4と、を備えるものである。
【0022】
一対のスパー2は、図1に示すように、主翼1の両側部のうち航空機前方側の側部を形成するフロントスパー21と、航空機後方側の側部を形成するリアスパー22と、を具備している。ここで、図2は、主翼1の基端部すなわち航空機の胴体側の端部を模式的に示した斜視図である。尚、図2ではリブ4の図示を省略している。フロントスパー21及びリアスパー22は、共に断面略U字形状を有する長手部材であって、所定間隔で互いに略平行する一対の平行片22aと、この平行片22aの一端部を接続する接続片22bと、を有している。そして、リアスパー22の基端部には、一対の平行片22aを垂直に貫通して撮影用穴22cがそれぞれ形成されている。
このように構成される一対のスパー2は、それぞれの開口部を互いに向かい合わせるようにして、所定間隔でそれぞれ配置される。
【0023】
一対のパネル3は、図1に示すように、主翼1の上面を形成する上側パネル31と、下面を構成する下側パネル32と、具備している。上側パネル31及び下側パネル32は、湾曲した断面形状を有するパネル本体3aと、このパネル本体3aの一方の面に長手方向に延びるように設けられた複数本のストリンガー3bと、をそれぞれ有している。
【0024】
ここで図2に示すように、上側パネル31のパネル本体3aは、平面視で基端側から先端側に向かって徐々に幅が狭くなるような略台形形状を有し、その基端部における前記リアスパー22の撮影用穴22cに対応する位置には、パネル本体3aを垂直に貫通してターゲット穴33が形成されている。また、下側パネル32のパネル本体3aも、上側パネル31のパネル本体3aと平面視で略同形状を有し、その基端部における前記リアスパー22の撮影用穴22cに対応する位置には、パネル本体3aを垂直に貫通してターゲット穴34が形成されている。
一方、ストリンガー3bは、上側パネル31及び下側パネル32の曲げ剛性を高めるためのものであって、図1に示すように、断面略H字形状を有している。
【0025】
このように構成される上側パネル31及び下側パネル32は、ストリンガー3bを内側に向けた状態で、一対のスパー2の上方及び下方を覆うようにしてそれぞれ配置される。ここで、図3は、主翼1の先端部すなわち航空機の胴体と逆側の端部を模式的に示した断面図である。主翼1の先端部では、上側パネル31及び下側パネル32の幅方向両端は、一対のスパー2より所定距離だけ外側へ突出している。
【0026】
複数のリブ4は、主翼1を構造的に補強するためのものである。このリブ4は、図1に示すように主翼1の長手方向に所定間隔で設けられ、各リブ4の一端はフロントスパー21に他端はリアスパー22にそれぞれ接続されている。これにより、フロントスパー21とリアスパー22は一定間隔で保持されている。
【0027】
次に、本発明の実施形態に係る構造物製造方法で使用する構造物製造装置について説明する。ここで本実施形態では、構造物製造装置として、航空機の主翼1を製造する主翼製造装置を例に説明する。図4は、主翼製造装置10の構成を示す概略正面図である。主翼製造装置10は、主翼1を構成するリアスパー22と上側パネル31とを互いに位置決めする第1位置決め装置11と、リアスパー22と下側パネル32とを互いに位置決めする第2位置決め装置12と、主翼1を構成する各種部材を組み立てる組み立て装置13と、を備えるものである。
【0028】
第1位置決め装置11は、主翼1を構成するリアスパー22の基端部に設置される基端部カメラユニット14と、リアスパー22の先端部に設置される先端部カメラユニット15と、基端部カメラユニット14及び先端部カメラユニット15と配線を介してそれぞれ電気的に接続されるモニター画面16(表示手段)と、を具備している。ここで、図5は、基端部カメラユニット14のリアスパー22への取り付け状態を示す概略断面図である。尚、本実施形態では基端部カメラユニット14及び先端部カメラユニット15を、リアスパー22の基端部及び先端部にそれぞれ設置したが、これに代えてフロントスパー21の基端部及び先端部にそれぞれ設置してもよい。
【0029】
基端部カメラユニット14は、図5に示すように、リアスパー22に固定されるクランプ部17と、リアスパー22の内側面に対して位置決めされる位置決め部18と、カメラを保持するカメラ保持部19と、を備えるものである。
【0030】
前記クランプ部17は、図5に示すように、リアスパー22に当接する当接片20と、この当接片20に螺合されたシャフト21と、このシャフト21の一端に設けられた押圧部材22と、シャフト21の他端に設けられた第1操作ノブ23と、当接片20から突出して側方へ延びる突出片24と、を有している。
このように構成されるクランプ部17によれば、第1操作ノブ23を摘んで回転させると、これに伴ってシャフト21が当接片20に対して進退し、押圧部材22と当接片20との間隔が変化する。これにより、この押圧部材22と当接片20との間にリアスパー22の所定箇所を挟持することによってカメラユニットをリアスパー22に取り付けることが可能となっている。
【0031】
前記位置決め部18は、図5に示すように、突出片24に螺合されたボルト25と、このボルト25の軸部に固定して設けられた第2操作ノブ26と、ボルト25の軸部に螺合されたナット27と、このナット27に対しサポートブラケット28を介して固定された基準ブロック29と、を有している。
このように構成される位置決め部18によれば、第2操作ノブ26を回してボルト25を回転させると、これに螺合されたナット27がボルト25の軸部に沿って移動する。これにより、ナット27に固定された基準ブロック29を上下方向に移動させることが可能となっている。
【0032】
基準ブロック29は、図5に示すように、リアスパー22の平行片22aに当接される第1基準面29aと、リアスパー22の接続片22bに当接される第2基準面29bと、第1基準面29aに突出して設けられた凸部29cと、カメラを挿通させるためのカメラ挿通穴29dと、を有している。ここで、第1基準面29a及び第2基準面29bのなす角度は、リアスパー22の平行片22a及び接続片22bのなす角度と略等しく形成されている。また、凸部29cの断面形状は、平行片22aに形成された撮影用穴22cの断面形状に略合致するよう形成されている。
【0033】
前記カメラ保持部19は、位置決め部18の基準ブロック29に取り付けられるカメラホルダー40と、このカメラホルダー40によって保持されるカメラ41(撮像手段)と、を有している。
【0034】
カメラホルダー40は、図5に示すように、カメラ41が固定されるカメラ固定穴42と、基準ブロック29に固定するための固定ネジ43と、この固定ネジ43を挟んで両側に突出して設けられた一対の位置決めピン44と、を具備している。このように構成されるカメラホルダー40は、一対の位置決めピン44が基準ブロック29に挿入されることで位置決めされた上で、固定ネジ43が基準ブロック29に螺合されることにより、基準ブロック29の内側面に固定される。
【0035】
カメラ41は、図5に示すように、断面略円形の細長い形状を有している。このカメラ41は、カメラホルダー40のカメラ固定穴42に挿通固定される。更にカメラ41は、カメラホルダー40の裏側へ突出して基準ブロック29のカメラ挿通穴29d及び凸部29cを挿通されて、リアスパー22の平行片22aに形成された撮影用穴22cの内部に突出することにより、鉛直上方を向いた状態となっている。
【0036】
ここで、図6は、カメラホルダー40へのカメラ41の取り付けを説明する概略斜視図である。カメラホルダー40にカメラ41を取り付ける際には、カメラ41をカメラ固定穴42の周方向に位置決めした上で、カメラ41を固定する必要がある。そこで、本実施形態では、図6に示すカメラ基準位置確認装置45を用いている。このカメラ基準位置確認装置45は、下台45aと、下台45aから上方へ延びる脚部45bと、脚部45bの上端に下台45aと略平行して設けられた上台45cと、を有している。ここで、上台45cには、カメラ41を挿通可能なカメラ挿通穴45dが貫通形成されるとともに、固定ネジ43を固定するための固定用ネジ穴45eが設けられている。そして、この固定用ネジ穴45eを挟んだ両側には、一対の位置決めピン44を挿入するための一対のピン穴45gがそれぞれ形成されている。また、下台45aには、十字形状の基準ライン45fが表示されており、この基準ライン45fの交点は、カメラ挿通穴45dの中心線から水平方向に所定距離だけ離間している。このような構成によれば、カメラ41が固定されず回転可能な状態で装着されたカメラホルダー40を、カメラ41をカメラ挿通穴45dに挿通させるとともに固定ネジ43を固定用ネジ穴45eに螺合させることにより、上台45cに固定する。そうすると、カメラ41が基準ライン45fの画像を取得し、この画像が不図示のモニター画面に表示される。ここで、このモニター画面上には、基準ライン45fの表示されるべき位置を示すターゲットラインが予め表示されている。従って、カメラ固定穴42及びカメラ挿通穴45dの内部でカメラ41を適宜回転させて、基準ライン45fの画像をターゲットラインに合わせた後、カメラ41の位置を固定すれば、カメラ41を適切な状態でカメラホルダー40に取り付けることができる。
【0037】
一方、図7は、先端部カメラユニット15のリアスパー22への取り付け状態を示す概略断面図である。先端部カメラユニット15は、リアスパー22に固定されるクランプ部46と、リアスパー22の外側面に対して位置決めされる位置決め部47と、カメラ57を保持するカメラ保持部48と、を備えるものである。
【0038】
前記クランプ部46は、図7に示すように、リアスパー22を構成する接続片22bの外側面に当接する当接片49と、この当接片49に螺合されたシャフト50と、シャフト50の一端に設けられた押圧部材51と、シャフト50の他端に設けられた第1操作ノブ52と、を有している。このように構成されるクランプ部46によれば、第1操作ノブ52を摘んで回転させると、これに伴ってシャフト50が当接片49に対して進退し、押圧部材51と当接片49との間隔が変化する。これにより、この押圧部材51と当接片49との間にリアスパー22の所定箇所を挟持することによって先端部カメラユニット15をリアスパー22に取り付けることが可能となっている。
【0039】
前記位置決め部47は、図7に示すように、リアスパー22の接続片22bに沿って進退可能に設けられたL字型の基準ブロック53と、この基準ブロック53から内側へ突出して設けられた位置決め突部54と、を有している。
【0040】
前記カメラ保持部48は、位置決め部47の基準ブロック53に取り付けられるカメラホルダー56と、このカメラホルダー56に挿通固定されて鉛直上方を向いたカメラ57(撮像手段)と、を有している。尚、カメラホルダー56へのカメラ57の取り付け時には、前述のカメラ基準位置確認装置45を用いる。
【0041】
図4に示す第2位置決め装置12は、リアスパー22の基端部に設置される基端部カメラユニット58と、リアスパー22の先端部に設置される先端部カメラユニット59と、基端部カメラユニット58及び先端部カメラユニット59と配線を介してそれぞれ電気的に接続されるモニター画面16(表示手段)と、を具備している。尚、これら各部の構成は第1位置決め装置11と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0042】
図4に示す組み立て装置13は、上側パネル吸着部131と、上側昇降スタンド132と、下側パネル支持部133と、下側昇降スタンド134と、フロントスパー保持部135と、リアスパー保持部136と、搬送部137と、操作盤138と、を備えるものである。
【0043】
上側パネル吸着部131は、主翼1を構成する上側パネル31を吸着して保持するものである。また、上側昇降スタンド132は、上側パネル吸着部131に保持された上側パネル31の動作を制御するものであって、より詳細には水平面内における相直交する2軸方向、鉛直方向、及び鉛直軸回りへの回転方向に、上側パネル31を任意に移動させることができる。
【0044】
下側パネル支持部133は、主翼1を構成する下側パネル32を下方から支持するものである。また、下側昇降スタンド134は、下側パネル支持部133に支持された下側パネル32の動作を制御するものであって、上側昇降スタンド132と同様に4軸方向に上側パネル31を移動させることができる。
【0045】
フロントスパー保持部135及びリアスパー保持部136は、主翼1を構成するフロントスパー21及びリアスパー22を、その開口部を相対向させるようにして側方から保持するものである。これらフロントスパー保持部135及びリアスパー保持部136は、水平方向に進退可能に設けられている。
【0046】
搬送部137は、図4の紙面に略直交する方向へ走行可能に設けられ、下側パネル32を支持した状態の下側パネル支持部133を搬入しまたは搬出するものである。
【0047】
操作盤138は、組み立て装置13の各部の動作を操作するためのものである。この操作盤138の上には、第1位置決め装置11及び第2位置決め装置12を構成するモニター画面16が設置されている。これにより作業者は、モニター画面16を見ながら、操作盤138を操作して組み立て装置13の各部を適宜動作させることができる。
【0048】
次に、主翼製造装置10の機能構成について説明する。図8は、主翼製造装置10の機能構成を示すブロック図である。主翼製造装置10は、カメラ41及び57(撮像手段)と、記憶手段60と、合成画像生成手段61と、モニター画面16(表示手段)と、を備えるものである。
【0049】
カメラ41は、上側パネル31及び下側パネル32にそれぞれ形成されたターゲット穴33,34の画像を取得するものである。また、記憶手段60は、上側パネル31及び下側パネル32を位置合わせすべきターゲットライン情報62(マーキング情報)を予め記憶するものである。また、合成画像生成手段61は、カメラ41から入力された画像と記憶手段60から入力されたターゲットライン情報62とを合成することにより合成画像を生成するものである。また、モニター画面16は、合成画像生成手段61が生成した合成画像を表示するものである。尚、本実施形態では、本発明に係るマーキング情報として線を表示する情報を用いたが、これに限られず点を表示する情報やその他の図形を表示する情報であってもよい。
【0050】
次に、本発明の実施形態に係る構造物製造方法の工程、及びその作用効果について説明する。
【0051】
まず作業者は、リアスパー22にカメラ41を設置する撮像手段設置工程を行う。すなわち作業者は、第1位置決め装置11を構成する基端部カメラユニット14をリアスパー22の基端部に、先端部カメラユニット15をリアスパー22の先端部にそれぞれ設置する。より詳細に説明すると、図5に示すように、リアスパー22の内側面に突出して設けられた突片63を、基端部カメラユニット14のクランプ部17で挟持することにより、基端部カメラユニット14をリアスパー22に仮固定する。そして、位置決め部18の第2操作ノブ26を操作して、基準ブロック29を上方へ移動させることにより、その第1基準面29aを平行片22aに、第2基準面29bを接続片22bに対してそれぞれ当接させる。この時、第1基準面29aに突出した凸部29cを、平行片22aに形成された撮影用穴22cに嵌合させる。このように、基端部カメラユニット14をリアスパー22に対して正確に位置決めすることにより、カメラ保持部19に保持されたカメラ41は鉛直上方を向いた状態となる。尚、図に詳細は示さないが、第2基準面29bについては、所定厚みを有する板状のシムが所定の枚数だけ重ねた状態で取り付けることにより、接続片22bに当接するように予め調節している。
【0052】
また作業者は、図7に示すように、リアスパー22の接続片22bを、先端部カメラユニット15のクランプ部46で挟持し、先端部カメラユニット15をリアスパー22に対して正確に位置決めすることにより、カメラ保持部48に保持されたカメラ57は鉛直上方を向いた状態となる。
【0053】
尚、第2位置決め装置12を構成する基端部カメラユニット58及び先端部カメラユニット59も、第1位置決め装置11と同様に、リアスパー22の基端部及び先端部にそれぞれ設置する。
【0054】
次に作業者は、リアスパー22及びフロントスパー21を設置するスパー設置工程を行う。すなわち作業者は、図4に示すように、フロントスパー保持部135によってフロントスパー21を保持するとともに、リアスパー保持部136によってリアスパー22を保持する。そして、フロントスパー保持部135をリアスパー保持部136から遠ざかる方向へ若干後退させた状態で、リアスパー22にリブ4の一端を固定し、フロントスパー保持部135を前進させてリブ4の他端をフロントスパー21に固定する。これにより、リブ4を介してフロントスパー21とリアスパー22とが一体化される。尚、リアスパー22をリアスパー保持部136で保持した状態では、リアスパー22に形成された図5に示す撮影用穴22cは、その軸線が鉛直方向に対して傾斜した状態となっている。
【0055】
次に作業者は、リアスパー22及びフロントスパー21に対して上側パネル31及び下側パネル32をそれぞれ位置決めする位置決め工程を行う。すなわち作業者は、図4に示すように、上側パネル吸着部131で上側パネル31を保持した状態で、操作盤138を操作して上側昇降スタンド132を駆動することにより、上側パネル31を略鉛直下方に下降させる。尚、上側パネル31を上側パネル131で吸着した状態では、上側パネル31に形成された図5に示すターゲット穴34は、その軸線が鉛直方向に対して傾斜した状態となっている。
【0056】
この時、操作盤138の上に設置されたモニター画面16には、前記合成画像生成手段61が生成した合成画像が表示される。ここで、図9(a)は、モニター画面16に表示される合成画像を示す図である。モニター画面16には、第1位置決め装置11を構成する基端部カメラユニット14のカメラ41が取得した画像、すなわち上側パネル31に形成されたターゲット穴34の画像が表示されるとともに、記憶手段60が予め記憶した縦方向2本×横方向2本の合計4本のターゲットライン64が表示される。尚、図9(a)には、カメラ41が取得したそれ以外の画像、すなわちリアスパー22に形成された撮影用穴22cの開口縁65も表示されている。
【0057】
作業者は、図9(a)に示すように、ターゲット穴34の略円形の画像が、4本のターゲットライン64に内接する状態を保持するようにして、上側パネル31を鉛直下方に徐々に下降させる。尚、ターゲット穴34の画像は、上側パネル31がリアスパー22に近付くに連れて徐々に大きくなる。従って、これに対応してモニター画面16はモード切り替えが可能となっており、縦方向2本のターゲットライン64の間隔、及び横方向2本のターゲットライン64の間隔が、モード切り替えごとにそれぞれ広がるようになっている。
【0058】
そして作業者は、ターゲット穴34の画像と撮影用穴22cの画像とが一致する位置を支点として、上側パネル31を水平面内で回転させることにより、上側パネル31の先端部をリアスパー22の先端部に対して位置決めする。この時、作業者は、モニター画面16の表示を切り替えて、第1位置決め装置11を構成する先端部カメラユニット15のカメラ57が取得した画像を表示させる。ここで、図9(b)は、モニター画面16に表示される合成画像を示す図である。モニター画面16には、先端部カメラユニット15のカメラ57が取得した画像、すなわち上側パネル31のエッジ66が表示されるとともに、記憶手段60が予め記憶した横方向1本のターゲットライン67が表示される。
【0059】
このように、軸線が鉛直方向に対して傾斜した上側パネル31を、同じく軸線が鉛直方向に対して傾斜した撮影用穴22cを有するリアスパー22に対して鉛直方向に組み付ける場合でも、カメラ41が撮影用穴22cを通して鉛直上方を向いた状態で保持されるため、上側パネル31とリアスパー22とが当接するまで、上側パネル31のターゲット穴34の画像を確実に取得することができる。これにより、上側パネル31とリアスパー22との正確な位置決めが可能となる。
【0060】
そして、作業者は、図9(b)に示すように、上側パネル31のエッジ66の画像がターゲットライン67に一致すると、上側パネル31の水平面内での回転を停止させる。これにより、上側パネル31の先端部とリアスパー22の先端部とが互いに位置決めされる。その後、作業者は、上側パネル31とリアスパー22とが当接すると、上側パネル31の下降を停止させる。これにより、ターゲット穴34と撮影用穴22cとが位置合わせされることにより、上側パネル31の基端部とリアスパー22の基端部とが互いに位置決めされる。その後、作業者は、ボルト等の締結具(不図示)を用いることにより、上側パネル31の先端部とリアスパー22の先端部とを固定する。
【0061】
次に作業者は、図4に示すように、下側パネル支持部133で下側パネル32を支持した状態で、操作盤138を操作して下側昇降スタンド134を駆動することにより、下側パネル32を鉛直上方に上昇させる。尚、下側パネル32を下側パネル支持部133で下方から支持した状態では、下側パネル32に形成されたターゲット穴34は、その軸線が鉛直方向に対して傾斜した状態となっている。
【0062】
この時、モニター画面16に合成画像生成手段61が生成した合成画像が表示される点、作業者はこの合成画像を見ながら下側パネル32を鉛直上方に上昇させる点、下側パネル32のターゲット穴34とリアスパー22とが一致すると下側パネル32の上昇を停止させる点、については上側パネル31の手順と同様である。
【0063】
更にその後、リアスパー22に固定した位置を支点として下側パネル32を水平面内で回転させる点、モニター画面16に表示される下側パネル32のエッジ66がターゲットライン67に一致すると下側パネル32の回転を停止させる点、締結具を用いて下側パネル32の基端部とリアスパー22の基端部とを固定する点、締結具を用いて下側パネル32の先端部とリアスパー22の先端部とを固定する点、についても下側パネル32の手順と同様である。
【0064】
尚、本実施形態では上側パネル31及び下側パネル32をリアスパー22に対して位置決めするために、上側パネル31を下降させまたは下側パネル32を上昇させたが、これとは逆に、リアスパー22を上側パネル31に向かって上昇させ、または下側パネル32に向かって下降させてもよい。
【0065】
また、本実施形態では、作業者がモニター画面16を見ながら、操作盤138を操作して上側パネル31を下降させまたは下側パネル32を上昇させたが、これに限られず、不図示の制御部による制御の下、上側パネル31の下降や下側パネル32の上昇を自動化してもよい。すなわち、モニター画面16におけるターゲット穴34とターゲットライン64との位置関係、またはエッジ66とターゲットライン67との位置関係を検知し、その検知結果に基づいて制御部が上側パネル吸着部131や下側パネル支持部133等の動作を制御するようにしてもよい。
【0066】
尚、上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ、或いは動作手順等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 主翼
2 スパー
3 パネル
4 リブ
10 主翼製造装置
11 第1位置決め装置
12 第2位置決め装置
13 組み立て装置
14 基端部カメラユニット
15 先端部カメラユニット
16 モニター画面
17 クランプ部
18 位置決め部
19 カメラ保持部
20 当接片
21 フロントスパー
21 シャフト
22 リアスパー
22 押圧部材
23 第1操作ノブ
24 突出片
25 ボルト
26 第2操作ノブ
27 ナット
28 サポートブラケット
29 基準ブロック
31 上側パネル
32 下側パネル
33 ターゲット穴
34 ターゲット穴
40 カメラホルダー
41 カメラ
42 カメラ固定穴
43 固定ネジ
44 位置決めピン
45 カメラ基準位置確認装置
46 クランプ部
47 位置決め部
48 カメラ保持部
49 当接片
50 シャフト
51 押圧部材
52 第1操作ノブ
53 基準ブロック
54 位置決め突部
56 カメラホルダー
57 カメラ
58 基端部カメラユニット
59 先端部カメラユニット
60 記憶手段
61 合成画像生成手段
62 ターゲットライン情報
63 突片
64 ターゲットライン
65 開口縁
66 エッジ
67 ターゲットライン
131 上側パネル吸着部
132 上側昇降スタンド
133 下側パネル支持部
134 下側昇降スタンド
135 フロントスパー保持部
136 リアスパー保持部
137 搬送部
138 操作盤
22a 平行片
22b 接続片
22c 撮影用穴
29a 第1基準面
29b 第2基準面
29c 凸部
29d カメラ挿通穴
3a パネル本体
3b ストリンガー
45a 下台
45b 脚部
45c 上台
45d カメラ挿通穴
45e 固定用ネジ穴
45f 基準ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穴がそれぞれ形成された部材同士を、相対移動させて前記穴同士を合わせるようにして組み付けて構造物を製造する構造物製造方法であって、
一方の部材に形成された前記穴の画像を取得する撮像手段を他方の部材に設置する撮像手段設置工程と、
前記撮像手段が取得してモニター画面上に表示する前記穴の画像を、前記モニター画面上に予め設定したマーキングに位置合わせしながら、部材同士を相対移動させることで部材同士の相対位置を位置決めする位置決め工程と、
を含むことを特徴とする構造物製造方法。
【請求項2】
前記撮像手段が、他方の部材に形成された穴を通して一方の部材に形成された前記穴の画像を取得することを特徴とする請求項1に記載の構造物製造方法。
【請求項3】
前記構造物が航空機の翼体であって、
前記一方の部材が、前記翼体の外面を形成するパネル部材であり、前記他方の部材が、前記翼体の長手方向に配設される桁部材であることを特徴とする請求項1または2に記載の構造物製造方法。
【請求項4】
前記位置決め工程で前記翼体の基端を位置決めした後に、前記翼体の先端で部材同士の側面の相対位置を位置決めする他の位置決め工程を備えることを特徴とする請求項3に記載の構造物製造方法。
【請求項5】
穴がそれぞれ形成された部材同士を、相対移動させて前記穴同士を合わせるようにして組み付けて構造物を製造する構造物製造装置であって、
一方の部材に取り付けられ、他方の部材に形成された前記穴の画像を取得する撮像手段と、
前記穴の画像に対し、予め設定された前記他方の部材を位置合わせすべきマーキング情報を合成することにより合成画像を生成する合成画像生成手段と、
前記合成画像を表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする構造物製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−131239(P2012−131239A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282369(P2010−282369)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)