構造部材の残留応力改善方法
【課題】ウォータジェットピーニング施工対象部以外のウォータジェットピーニング非施工対象部への衝撃圧の伝播を抑制できる構造部材の残留応力改善方法を提供する。
【解決手段】主ノズル32及びエアノズル37がアニュラス部8内の施工対象物付近に配置される。高圧ポンプ33から吐出された高圧水が主ノズル32から高速ジェット流42となって冷却水46中に噴射される。高速ジェット流42内の気泡43が潰れたとき、衝撃圧44が発生し、この衝撃圧44が施工対象物である炉心シュラウド5に加えられ、炉心シュラウド5に圧縮残留応力が生じる。エア供給機38から供給される空気は、エアノズル37から噴出され、気泡域45を形成する。気泡域45は高速ジェット流42と非施工対象物であるジェットポンプ7の間に形成される。ジェットポンプ7に向う衝撃圧44は気泡域45で弱められる。
【解決手段】主ノズル32及びエアノズル37がアニュラス部8内の施工対象物付近に配置される。高圧ポンプ33から吐出された高圧水が主ノズル32から高速ジェット流42となって冷却水46中に噴射される。高速ジェット流42内の気泡43が潰れたとき、衝撃圧44が発生し、この衝撃圧44が施工対象物である炉心シュラウド5に加えられ、炉心シュラウド5に圧縮残留応力が生じる。エア供給機38から供給される空気は、エアノズル37から噴出され、気泡域45を形成する。気泡域45は高速ジェット流42と非施工対象物であるジェットポンプ7の間に形成される。ジェットポンプ7に向う衝撃圧44は気泡域45で弱められる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造部材の残留応力改善方法に係り、特に、沸騰水型原子炉の内部構造物に適用するのに好適な構造部材の残留応力改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉及び加圧水型原子炉等の原子炉の内部構造物に生じている引っ張り残留応力を圧縮残留応力に改善する方法として、ウォータジェットピーニングが知られている(特開平6−47667号公報、特開平6−71564号公報及び特開2003−337192号公報参照)。
【0003】
構造部材の残留応力改善方法は、例えば、原子炉圧力容器内の冷却水中に噴出ノズルを配置し、ノズルの噴出口を、ウォータジェットピーニングを実施する内部構造物に向け、高速のジェット流をその噴出口から噴出する。ジェット流に含まれる気泡(キャビティ)が崩壊することによって生じるキャビテーションにより強い衝撃圧が内部構造物のウォータジェットピーニング施工対象部(以下、単に、施工対象部という)に加えられる。この結果、その施工対象部に生じていた引張残留応力が圧縮残留応力に改善される。
【0004】
特に、特開平6−47667号公報は、中央部に高速のジェット流を噴出する主噴出口、主噴出口の周囲に空気(または空気飽和水)を低速で噴出する複数の周囲噴出口を有するノズルを用いてウォータジェットピーニングを実施することが記載されている。それらの周囲噴出口は、各噴出口の延長線が主噴出口の延長線と交わるように傾斜している。特開平6−47667号公報に記載されたノズルは、周囲噴出口から噴出された空気を、主噴出口から噴出される高速ジェット流と合流させ、キャビテーションを誘発するために用いている。これにより、施工対象部に衝撃圧が連続的に加えられる。
【0005】
【特許文献1】特開平6−47667号公報
【特許文献2】特開平6−71564号公報
【特許文献3】特開2003−337192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
キャビテーションによって発生した衝撃圧は、周囲の冷却水を介して伝播する際、ノズルからの距離が短い範囲では減衰する。しかしながら、施工対象部の近傍にウォータジェットピーニングを施工しない他の内部構造物が存在する場合、他の内部構造物にその衝撃圧が伝播し、他の内部構造物に振動が発生する可能性があることを、発明者らは見出した。特に、その衝撃圧による施工対象部以外の他の内部構造物への加振力の周波数と他の内部構造物の固有振動数が一致した場合には、共振が生じる恐れも考えられる。
【0007】
本発明の目的は、ウォータジェットピーニングを施工しない非施工対象部の振動を抑制することができる構造部材の残留応力改善方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、水中に配置されたノズルから噴射された水ジェットに含まれる第1気泡が消滅するときに発生する衝撃圧を、水中に存在する施工対象物である第1構造部材に当てることにより、第1構造部材に圧縮残留応力を付与し、少なくとも水ジェットを噴射している間、水中に存在する非施工対象物である第2構造部材と水ジェットの間に、第1気泡とは別の第2気泡が存在する気泡域を形成することにある。
【0009】
噴射された水ジェットと第2構造部材の間に気泡域を形成しているので、水ジェット内で発生した衝撃圧が気泡域で減衰されるので、ウォータジェットピーニングを施工しない非施工対象部への衝撃圧の伝播を抑制することができる。このため、第2構造部材の振動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ウォータジェットピーニングを施工しない非施工対象部の振動を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0012】
沸騰水型原子炉(BWR)に適用した、本発明の好適な一実施例である構造部材の残留応力改善方法を、図を用いて以下に説明する。まず、構造部材の残留応力改善方法が適用されるBWRの概略の構造を、図4から図7を用いて説明する。BWRは、蓋11を有する原子炉圧力容器(以下、RPVという)1を有し、RPV1内に、蒸気乾燥器2、気水分離器3、炉心シュラウド5、ジェットポンプ7、上部格子板15及び炉心支持板16等を配置している。炉心シュラウド5は、シュラウドサポートリング20を介してシュラウドサポートシリンダ4に取り付けられる。シュラウドサポートシリンダ4は、サポートレグ17によって、RPV1の底部に設置される。シュラウドサポートバッフルプレート6が、RPV1の内面及びシュラウドサポートシリンダ4に取り付けられる。炉心支持板16が、炉心シュラウド5内に配置され、炉心シュラウド5に設置される。炉心支持板16の上方に配置される上部格子板15も炉心シュラウド5に設置される。気水分離器3及び蒸気乾燥器2は、上部格子板15より上方に設置される。複数のジェットポンプ7が、RPV1と炉心シュラウド5の間に形成されたアニュラス部(ダウンカマ)8内に配置され、シュラウドサポートバッフルプレート6に設置されている。
【0013】
複数の燃料集合体12が、上部格子板15及び炉心支持板16によって支持されている。RPV1内に給水スパージャ10が配置され、この給水スパージャ10はRPV1に設けられた給水ノズル14に接続される。炉心スプレイ配管9が炉心シュラウド5とRPV1の間に配置される。
【0014】
本実施例の構造部材の残留応力改善方法は、例えば、アニュラス部8における、RPV1とシュラウドサポートバッフルプレート6の溶接部21、シュラウドサポートバッフルプレート6とシュラウドサポートシリンダ4の溶接部22、シュラウドサポートシリンダ4とシュラウドサポートリング20の溶接部23、及び炉心シュラウド5とシュラウドサポートリング20の溶接部24等の溶接部を中心にして、シュラウドサポートシリンダ4、炉心シュラウド5、シュラウドサポートバッフルプレート6及びシュラウドサポートリング20に対してそれぞれ適用される。
【0015】
本実施例の構造部材の残留応力改善方法はBWRの定期検査の期間に行われる。この定期検査においては、RPV1の上方に位置する原子炉ウェル19内に冷却水が充填される。その後、RPV1の蓋11が取り外され、蒸気乾燥器2及び気水分離器3がRPV1から取り出される。定期検査においては、必要に応じて、燃料集合体12をRPV1外に取り出し、炉心シュラウド5の内面及び外面からの検査及びその内面及び外面に対するウォータジェットピーニングが行われる。
【0016】
本実施例の構造部材の残留応力改善方法は、例えば、予防保全装置13を、アニュラス部8に挿入して上記した溶接部付近に位置させて実施される(図5参照)。予防保全装置13は、図7に示すアクセス領域25を通して、運転床18上を走行する燃料交換機あるいは作業台車(図示せず)からの遠隔操作にてアニュラス部8内の上記の位置まで下ろされる。
【0017】
ウォータジェットピーニング装置31の詳細な構成を、図1を用いて説明する。ウォータジェットピーニング装置31は予防保全装置13を有する。予防保全装置13は、主ノズル32及びエアノズル37を含んでいる。ウォータジェットピーニング装置31は、予防保全装置13以外に、高圧ポンプ33、ポンプ制御装置34、エア供給機(例えば、エアコンプレッサ)38及びエア供給機制御装置39を備えている。高圧ホース35が主ノズル32及び高圧ポンプ33に接続される。ポンプ制御装置34に接続された制御ケーブル36が高圧ポンプ33に接続される。エアノズル37は、エアホース40によってエア供給機38に接続される。エア供給機制御装置39に接続された制御ケーブル41がエア供給機38に接続される。高圧ポンプ33、ポンプ制御装置34、エア供給機38及びエア供給機制御装置39は運転床18上に設置される。ポンプ制御装置34及びエア供給機制御装置39をまとめて1つの制御装置にすることも可能である。主ノズル32及びエアノズル37を含む予防保全装置13が、前述したように、アクセス領域25を通してアニュラス部8内で該当する溶接部付近に配置される。この状態で、主ノズル32及びエアノズル37はRPV1内の冷却水46内に存在する。主ノズル32及びエアノズル37は、予防保全装置13と共に、上下方向、RPV1の周方向及びRPV1の半径方向に移動される。これにより、溶接部21,22,23,24のそれぞれに沿ったウォータジェットピーニングを実施することができる。
【0018】
高圧ポンプ33が駆動されると、高圧ポンプ33から吐出された高圧水が高圧ホース35を通って主ノズル32に供給される。この高圧水は、主ノズル32の噴射口(図示せず)から高速ジェット流42となって冷却水46中に噴射される。ポンプ制御装置34は、主ノズル32から噴出される高速ジェット流42が最適な噴射流量及び噴射圧力になるように、高圧ポンプ33を制御する。高速ジェット流42は、溶接部21,22,23及び24を中心として施工対象部であるシュラウドサポートシリンダ4、炉心シュラウド5及びシュラウドサポートリング20に向って順次噴射される。エア供給機38から供給される空気は、高圧ホース40によってエアノズル37に導かれる。この空気は、エアノズル37に形成された噴射口(図示せず)から冷却水46中に噴射され、冷却水46中に気泡域(圧縮性流体領域)45を形成する。エアノズル37は、主ノズル32と、施工対象部以外の他の構造物(例えば、ジェットポンプ7)の間に配置される。エアノズル37からは、空気の替りに、窒素あるいはアルゴンを噴射させてもよい。気泡域45は、主ノズル32から、高速ジェット流42が工対象部に到達するまでの範囲に形成され、高速ジェット流42とジェットポンプ7の間に形成される。
【0019】
主ノズル32から噴射された高速ジェット流42に含まれている気泡(キャビティ)43が崩壊したとき、衝撃圧(衝撃波)44が発生する。この衝撃圧44は、溶接部21,22,23及び24を中心とし、シュラウドサポートシリンダ4、炉心シュラウド5及びシュラウドサポートリング20にそれぞれ順次加えられる。このため、シュラウドサポートシリンダ4、炉心シュラウド5及びシュラウドサポートリング20に生じている引張残留応力が、圧縮残留応力に改善される。引張残留応力は、溶接部23,24における溶接によってシュラウドサポートシリンダ4、炉心シュラウド5及びシュラウドサポートリング20に生じるものである。
【0020】
上記の衝撃圧44は、施工対象部ではない他の構造物、例えば非施工対象部であるジェットポンプ7に向って冷却水46中を伝播する。しかしながら、本実施例は、高速ジェット流42とジェットポンプ7の間で、主ノズル32から、高速ジェット流42が施工対象部に到達するまでの範囲に亘って気泡域45が形成されるので、この気泡域45によって、ジェットポンプ7まで伝播される衝撃圧44が減衰される。このため、衝撃圧44に起因したジェットポンプ7の振動が軽減される。このとき、ジェットポンプ7に発生する応力を、従来例の構造部材の残留応力改善方法との比較で図2に示す。本実施例においてジェットポンプ7に発生する応力は、従来例のそれよりも軽減されている。
【0021】
エア供給機制御装置39は、エア供給機38から吐出される空気の圧力が、エアノズル37の噴射口の直径及び形状に基づいて定まる設定圧力になるように、エア供給機38を制御し、結果として、エアノズル37から冷却水46中に噴射される、気泡域45内の気泡の直径を制御する。この気泡の直径の制御は、主ノズル32から噴射される高速ジェット流42に含まれる気泡43が潰れることによって発生する衝撃圧44に起因してジェットポンプ7に加えられる加振周波数のプロファイルを変えることができる。このため、ジェットポンプ7の固有振動数と衝撃圧44による加振周波数のプロファイルが一致することを避けることができ、ジェットポンプ7の共振を防止することができる。
【0022】
本実施例及び従来例においてジェットポンプ7に発生する振動の周波数特性を図3に示す。具体的には、図3(A)は従来例でジェットポンプ7に発生する振動の周波数特性、及び図3(B)は本実施例でジェットポンプ7に発生する振動の周波数特性を示している。本実施例は、衝撃圧44に起因してジェットポンプ7に生じる振動の周波数特性を、エアノズル37から気泡を噴射させることによって、図3(A)から図3(B)のように変えることができる。このため、フーリエスペクトルのピークの周波数を変えることができ、ジェットポンプ7の共振を防止することができる。
【0023】
なお、エアノズル37から噴射される気体の種類及び温度を変えることによって、気泡域45内での音速が変わるので、衝撃圧44に起因した加振周波数のプロファイルを制御することができ、同様の効果が得られる。
【0024】
本実施例は、主ノズル32から噴射される高速ジェット流42に含まれる気泡43が潰れるときに発生する衝撃圧44を、施工対象部であるシュラウドサポートシリンダ4、炉心シュラウド5及びシュラウドサポートリング20にそれぞれ順次加えるので、施工対象部に生じていた引張残留応力を圧縮残留応力に改善することができる。このため、施工対象部における応力腐食割れの発生を抑制することができる。本実施例は、エアノズル37から噴射される気泡を含む気泡域45が、高速ジェット流42と非施工対象部であるジェットポンプ7との間に形成されるので、気泡域45によって衝撃圧44が減衰され、気泡域45内の気泡の境界面で衝撃圧44が反射される。このため、その衝撃圧44を受けるジェットポンプ7の振動が大幅に軽減される。エアノズル37から少量の空気を噴出させることによって上記の効果を得ることができるので、エア供給機38は小型のものを使用できる。
【0025】
施工対象部に圧縮残留応力を効果的に生成し、ジェットポンプ7の振動を効果的に軽減するためには、エアノズル37に形成された空気の噴射口の軸心を、主ノズル32に形成された高速ジェット流42を噴射する噴射口の軸心に対して実質的に平行に、または前者の噴射口の軸心を後者の噴射口の軸心に対して外側を向くように配置することが望ましい。
【0026】
高速ジェット流42内で発生する衝撃圧44は、高速ジェット流42に含まれる気泡(キャビティ)43が収縮して消滅(体積がゼロ)した瞬間に発生する。特開平6−47667号公報の第2図に記載されたノズルは、周囲噴出口から噴出された空気を、主噴出口から噴出される高速ジェット流と合流させ、高速ジェット流内で衝撃圧を発生する核となる気泡の数を増加させるものである。これにより、衝撃圧の強さを増加させている。
【0027】
発明者らは、エアノズル37の噴射口の軸心を主ノズル32の噴射口の軸心の方に向けてエアノズル37から空気を噴出させる実機条件での試験を行った。この結果、エアノズル37から噴射された気泡が高速ジェット流42に巻き込まれた場合には、発生する衝撃圧の強さが低下することを確認した。エアノズル37から噴射される気泡が高速ジェット流に巻き込まれないように、主ノズル32の噴射口の軸心に対するエアノズル37の噴射口の軸心の角度を設定する必要がある。したがって、エアノズル37に形成された噴射口の軸心を、主ノズル32に形成された噴射口の軸心に対して実質的に平行に、または前者の噴射口の軸心を後者の噴射口の軸心に対して外側を向くように配置するとよい。
【0028】
本実施例は、エアノズル37から噴出される気泡の直径をエア供給機制御装置39によって制御することができるので、衝撃圧44に起因してジェットポンプ(非施工対象部)7に加えられる加振周波数のプロファイルを変えることができる。このため、ジェットポンプ7の固有振動数と衝撃圧44による加振周波数のプロファイルが一致することを避けることができ、ジェットポンプ7の共振を防止することができる。
【実施例2】
【0029】
BWRに適用した、本発明の他の実施例である実施例2の構造部材の残留応力改善方法を、図8〜図10を用いて以下に説明する。本実施例は、ウォータジェットピーニングを実施しているときに、衝撃圧44を受ける非施工対象物であるシュラウドサポートバッフルプレート6及びジェットポンプ7の振動を抑制するものである。
【0030】
本実施例の構造部材の残留応力改善方法に用いられるウォータジェットピーニング装置31Aの構成を、図8〜図10を用いて説明する。ウォータジェットピーニング装置31Aは、ウォータジェットピーニング装置31においてエアノズル37をエアノズル37A,37Bに置き換えた構成を有する。エアノズル37A,37Bは、分岐されたエアホース40によってエア供給機38に接続されている。ウォータジェットピーニング装置31Aの予防保全装置13は、主ノズル32及びエアノズル37A,37Bを含んでいる。ウォータジェットピーニング装置31Aの他の構成は、ウォータジェットピーニング装置31と同じである。
【0031】
本実施例の構造部材の残留応力改善方法を説明する。予防保全装置13は、実施例1と同様に、アクセス領域25を通してアニュラス部8内に移動され、主ノズル32が施工対象部に向き合うように配置される。この状態で、エアノズル37Aは主ノズル32とジェットポンプ7の間に配置され、エアノズル37Bは主ノズル32とシュラウドサポートバッフルプレート6の間に配置される。高圧ポンプ33の駆動により主ノズル323から高速ジェット流42が噴出され、気泡43が潰れることによって発生する衝撃圧44が、施工対象部であるシュラウドサポートシリンダ4、炉心シュラウド5及びシュラウドサポートリング20にそれぞれ加えられる。これらの部材に生じている引張圧縮応力が残留圧縮応力に改善される。
【0032】
エアノズル37Aから噴射された空気により形成される気泡域45Aは、高速ジェット流42と非施工対象部であるジェットポンプ7の間で、主ノズル32から、高速ジェット流42が施工対象部に到達するまでの範囲に形成される。エアノズル37Bから噴射された空気により形成される気泡域45Bは、高速ジェット流42と非施工対象部であるシュラウドサポートバッフルプレート6の間で、主ノズル32から、高速ジェット流42が施工対象部に到達するまでの範囲に形成される。ジェットポンプ7に向って伝播される衝撃圧44は気泡域45Aによって減衰されるので、衝撃圧44によって発生するジェットポンプ7の振動が大幅に軽減される。さらに、シュラウドサポートバッフルプレート6に向って伝播される衝撃圧44は気泡域45Bによって減衰されるので、衝撃圧44によって発生するシュラウドサポートバッフルプレート6の振動も大幅に軽減される。
【0033】
本実施例も、エア供給機制御装置39によってエアノズル37Aから噴射される気泡の直径を制御するので、実施例1と同様に、ジェットポンプ7の共振を防止することができる。さらに、本実施例は、エア供給機制御装置39によってエアノズル37Bから噴射される気泡の直径を制御するので、衝撃圧44に起因してシュラウドサポートバッフルプレート(非施工対象部)6に加えられる加振周波数のプロファイルを変えることができる。このため、シュラウドサポートバッフルプレート6の固有振動数と衝撃圧44による加振周波数のプロファイルが一致することを避けることができ、シュラウドサポートバッフルプレート6の共振を防止することができる。エア供給機制御装置39によるエアノズル37Bから噴射される気泡直径の制御は、実施例1と同じである。
【実施例3】
【0034】
BWRに適用した、本発明の他の実施例である実施例3の構造部材の残留応力改善方法を、図11及び図12を用いて以下に説明する。本実施例の構造部材の残留応力改善方法に用いられるウォータジェットピーニング装置31Bも図11及び図12に示されている。ウォータジェットピーニング装置31Bは、ウォータジェットピーニング装置31Aにおいてエアノズル37A,37Bを環状のエアノズル37Cに替えた構成を有する。ウォータジェットピーニング装置31Bの他の構成は、ウォータジェットピーニング装置31Aと同じである。エア供給機38に連絡されるエアノズル37Cは、主ノズル32を取り囲んでおり、環状の気泡域45Cを形成するように周方向に多数の噴射口を有する。これらの噴射口から空気(気泡)がそれぞれ噴射される。気泡域45Cは高速ジェット流42の周囲を取り囲んでいる。すなわち、気泡域45Cは、高速ジェット流42とジェットポンプ7の間、及び高速ジェット流42とシュラウドサポートバッフルプレート6の間に存在する。
【0035】
したがって、実施例2と同様に、ジェットポンプ7及びシュラウドサポートバッフルプレート6のそれぞれにおける振動が大幅に軽減され、ジェットポンプ7及びシュラウドサポートバッフルプレート6のそれぞれにおける共振をそれぞれ防止することができる。本実施例は、環状の気泡域45Cが形成されるので、ジェットポンプ7及びシュラウドサポートバッフルプレート6のそれぞれにおける振動を実施例2よりも軽減することができる。
【実施例4】
【0036】
BWRに適用した、本発明の他の実施例である実施例4の構造部材の残留応力改善方法を、図13を用いて以下に説明する。本実施例の構造部材の残留応力改善方法に用いられるウォータジェットピーニング装置31Cを、図13を用いて説明する。ウォータジェットピーニング装置31Cは、実施例1に用いられるウォータジェットピーニング装置31に隔離壁(気泡混合防止部材)46を設けた構成を有している。隔離壁46は、主ノズル32及びエアノズル37を含んでいる予防保全装置13に取り付けられている。ウォータジェットピーニング装置31Cでは、2枚の隔離壁46が並行に設けられ、エアノズル37が2枚の隔離壁46の間に配置される。これらの隔離壁46は、主ノズル32及び高速ジェット流42と非施工対象物であるシュラウドサポートバッフルプレート6の間に配置される。隔離壁46は、主ノズル32から、高速ジェット流42が施工対象部(シュラウドサポートシリンダ4、炉心シュラウド5及びシュラウドサポートリング20)に到達するまでの範囲に亘って配置されている。
【0037】
2枚の隔離壁46を高速ジェット流42とジェットポンプ7の間に配置し、それらの隔離壁46の間に図10に示すエアノズル37Aを配置しても良い。
【0038】
主ノズル32から噴射された高速ジェット流42に含まれる気泡43が潰れることによって衝撃圧44が発生し、この衝撃圧44によって施工対象物に圧縮残留応力が付与される。冷却水46中を伝播する衝撃圧44はホワイトノイズに近い周波数特性をもつ波(密度波)である。本実施例は、隔離壁46を配置しているが、隔離壁46自体が衝撃圧44で加振されること、衝撃圧44が回折によって隔離壁46の後ろ側(非施行対象物側)へ伝播すること、及び隔離壁46の固有振動数と同じ周波数成分の衝撃圧44は隔離壁46を透過すること等の理由によって、隔離壁46で衝撃圧44を減衰させることは困難である。このため、本実施例は、高速ジェット流42と非施行対象物(シュラウドサポートバッフルプレート6、ジェットポンプ7)の間に気泡域45を形成している。
【0039】
本実施例は、気泡域45を形成するので、シュラウドサポートバッフルプレート6(及びジェットポンプ7)における振動が軽減され、シュラウドサポートバッフルプレート6(及びジェットポンプ7)における共振をそれぞれ防止することができる。本実施例も、実施例1と同様に、エアノズル37から噴射される気泡の直径を制御する。
【0040】
本実施例は、隔離壁46が設けられているので、エアノズル37から噴射された気泡が高速ジェット流42内に巻き込まれることを防止することができる。このため、発生した衝撃圧44の強さが低下しないので、施工対象物に対するウォータジェットピーニングの効果が低減することを防止できる。
【0041】
本実施例は、2枚の隔離壁46の間にエアノズル37を配置しているので、気泡域45における気泡の流れを制御でき、1枚の隔離壁46を用いた場合に比べて主ノズル32から遠い位置まで拡散させることなく気泡域45を保持することができる。このため、本実施例は、1枚の隔離壁46を用いた場合に比べて気泡域45による衝撃圧44の減衰効果を高めることができる。隔離壁46は1枚にすることも可能である。隔離壁46を1枚にした場合には、1枚の隔離壁は気泡域45と高速ジェット流42との間に配置される。
【実施例5】
【0042】
BWRに適用した、本発明の他の実施例である実施例5の構造部材の残留応力改善方法を、図14を用いて以下に説明する。本実施例の構造部材の残留応力改善方法に用いられるウォータジェットピーニング装置31Dを、図14を用いて説明する。ウォータジェットピーニング装置31Dは、主ノズル32及びエアノズル37を有し、実施例4と同様に隔離壁(隔離壁46A)も有している。
【0043】
本実施例の構造部材の残留応力改善方法は、RPV1の縦断面において主ノズル32の軸心と施工対象物(シュラウドサポートシリンダ4、炉心シュラウド5及びシュラウドサポートリング20)の成す角度θが鋭角の状態で、ウォータジェットピーニングを実施する例である。本実施例では、主ノズル32が、軸心が角度θで傾いた状態でアニュラス部8内に配置されるので、主ノズル32から非施工対象物であるジェットポンプ7までの距離は実施例3におけるその距離よりも長くなる。しかしながら、施工対象物の近くでは、ジェットポンプ7は、主ノズル32から噴射された高速ジェット流42から近い位置にある。このため、高速ジェット流42内で発生する衝撃圧44がジェットポンプ7まで伝播しやすくなる。
【0044】
本実施例は、隔離壁46Aを、主ノズル32と同様に傾斜させてウォータジェットピーニング装置31Dの予防保全装置13に取り付けている。この隔離壁46Aは、高速ジェット流32の下流側でジェットポンプ7と高速ジェット流32の間に配置される。エアノズル37から噴射された気泡によって形成される気泡域45は、隔離壁46Aとジェットポンプ7の間に形成される。その気泡は隔離壁46Aに沿って流れる。
【0045】
本実施例も、実施例4と同様に、施工対象物への圧縮残留応力の付与、ジェットポンプ7の大幅な振動低減、及びジェットポンプ7の共振の防止といった効果を得ることができる。隔離壁46Aを用いているので、気泡域45内の気泡が高速ジェット流42内に巻き込まれることを抑制でき、衝撃圧44の低下を防止できる。このため、施工対象部への圧縮残留応力の付与を効果的に行うことができる。
【0046】
なお、高速ジェット流42とシュラウドサポートバッフルプレート6の間に隔離壁を配置し、この隔離壁とシュラウドサポートバッフルプレート6の間に気泡域45を形成しても良い。
【0047】
気泡域45の替りに気体(例えば空気)が内包された弾性体(例えば、空気を内包する樹脂部材)を用いることが可能である。この弾性体は、実施例4及び5では隔離壁46が配置されている位置に配置される。この弾性体の使用によって、エアノズル32、エア供給機38、エアホース40、エア供給機制御装置39及び隔離壁46が不要になり、ウォータジェットピーニング装置をよりコンパクト化することができる。実施例1から実施例3においても、気泡域の替りにその弾性体を用いることができる。
【0048】
以上に述べた構造部材の残留応力改善方法は、加圧水型原子炉の原子炉容器内の構造部材に対しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の構造部材の残留応力改善方法に用いられるウォータジェットピーニング装置の構成図である。
【図2】高速ジェット流の中心からの距離とジェットポンプに発生する応力の関係を示す特性図である。
【図3】ジェットポンプに発生する振動の周波数特性を示し、(A)は従来例におけるその周波数特性を示す説明図、(B)実施例1におけるその周波数特性を示す説明図である。
【図4】図1に示す構造部材の残留応力改善方法が適用されるBWRの縦断面図である。
【図5】図4のV部の拡大図である。
【図6】図4のVI−VI断面図である。
【図7】図4のVII−VII断面図である。
【図8】本発明の他の実施例である実施例2の構造部材の残留応力改善方法に用いられるウォータジェットピーニング装置の構成図である。
【図9】図8のIX−IX断面図である。
【図10】図9のX−X断面図である。
【図11】本発明の他の実施例である実施例3の構造部材の残留応力改善方法に用いられるウォータジェットピーニング装置の構成図である。
【図12】図11のXII−XII断面図である。
【図13】本発明の他の実施例である実施例4の構造部材の残留応力改善方法に用いられるウォータジェットピーニング装置の構成図である。
【図14】本発明の他の実施例である実施例5の構造部材の残留応力改善方法に用いられるウォータジェットピーニング装置の構成図である。
【符号の説明】
【0050】
1…原子炉圧力容器、4…シュラウドサポートシリンダ、5…炉心シュラウド、6…シュラウドサポートバッフルプレート、7…ジェットポンプ、8…アニュラス部、13…予防保全装置、20…シュラウドサポートリング、21,22,23,24…溶接部、31,31A,31B,31C,31D…ウォータジェットピーニング装置、32…主ノズル、33…高圧ポンプ、34…ポンプ制御装置、37,37A,37B…エアノズル、38…エア供給機、39…エア供給機制御装置、42…高速ジェット流、44…衝撃圧、45,45A,45B…気泡域、46,46A…隔離壁。
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造部材の残留応力改善方法に係り、特に、沸騰水型原子炉の内部構造物に適用するのに好適な構造部材の残留応力改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉及び加圧水型原子炉等の原子炉の内部構造物に生じている引っ張り残留応力を圧縮残留応力に改善する方法として、ウォータジェットピーニングが知られている(特開平6−47667号公報、特開平6−71564号公報及び特開2003−337192号公報参照)。
【0003】
構造部材の残留応力改善方法は、例えば、原子炉圧力容器内の冷却水中に噴出ノズルを配置し、ノズルの噴出口を、ウォータジェットピーニングを実施する内部構造物に向け、高速のジェット流をその噴出口から噴出する。ジェット流に含まれる気泡(キャビティ)が崩壊することによって生じるキャビテーションにより強い衝撃圧が内部構造物のウォータジェットピーニング施工対象部(以下、単に、施工対象部という)に加えられる。この結果、その施工対象部に生じていた引張残留応力が圧縮残留応力に改善される。
【0004】
特に、特開平6−47667号公報は、中央部に高速のジェット流を噴出する主噴出口、主噴出口の周囲に空気(または空気飽和水)を低速で噴出する複数の周囲噴出口を有するノズルを用いてウォータジェットピーニングを実施することが記載されている。それらの周囲噴出口は、各噴出口の延長線が主噴出口の延長線と交わるように傾斜している。特開平6−47667号公報に記載されたノズルは、周囲噴出口から噴出された空気を、主噴出口から噴出される高速ジェット流と合流させ、キャビテーションを誘発するために用いている。これにより、施工対象部に衝撃圧が連続的に加えられる。
【0005】
【特許文献1】特開平6−47667号公報
【特許文献2】特開平6−71564号公報
【特許文献3】特開2003−337192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
キャビテーションによって発生した衝撃圧は、周囲の冷却水を介して伝播する際、ノズルからの距離が短い範囲では減衰する。しかしながら、施工対象部の近傍にウォータジェットピーニングを施工しない他の内部構造物が存在する場合、他の内部構造物にその衝撃圧が伝播し、他の内部構造物に振動が発生する可能性があることを、発明者らは見出した。特に、その衝撃圧による施工対象部以外の他の内部構造物への加振力の周波数と他の内部構造物の固有振動数が一致した場合には、共振が生じる恐れも考えられる。
【0007】
本発明の目的は、ウォータジェットピーニングを施工しない非施工対象部の振動を抑制することができる構造部材の残留応力改善方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、水中に配置されたノズルから噴射された水ジェットに含まれる第1気泡が消滅するときに発生する衝撃圧を、水中に存在する施工対象物である第1構造部材に当てることにより、第1構造部材に圧縮残留応力を付与し、少なくとも水ジェットを噴射している間、水中に存在する非施工対象物である第2構造部材と水ジェットの間に、第1気泡とは別の第2気泡が存在する気泡域を形成することにある。
【0009】
噴射された水ジェットと第2構造部材の間に気泡域を形成しているので、水ジェット内で発生した衝撃圧が気泡域で減衰されるので、ウォータジェットピーニングを施工しない非施工対象部への衝撃圧の伝播を抑制することができる。このため、第2構造部材の振動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ウォータジェットピーニングを施工しない非施工対象部の振動を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0012】
沸騰水型原子炉(BWR)に適用した、本発明の好適な一実施例である構造部材の残留応力改善方法を、図を用いて以下に説明する。まず、構造部材の残留応力改善方法が適用されるBWRの概略の構造を、図4から図7を用いて説明する。BWRは、蓋11を有する原子炉圧力容器(以下、RPVという)1を有し、RPV1内に、蒸気乾燥器2、気水分離器3、炉心シュラウド5、ジェットポンプ7、上部格子板15及び炉心支持板16等を配置している。炉心シュラウド5は、シュラウドサポートリング20を介してシュラウドサポートシリンダ4に取り付けられる。シュラウドサポートシリンダ4は、サポートレグ17によって、RPV1の底部に設置される。シュラウドサポートバッフルプレート6が、RPV1の内面及びシュラウドサポートシリンダ4に取り付けられる。炉心支持板16が、炉心シュラウド5内に配置され、炉心シュラウド5に設置される。炉心支持板16の上方に配置される上部格子板15も炉心シュラウド5に設置される。気水分離器3及び蒸気乾燥器2は、上部格子板15より上方に設置される。複数のジェットポンプ7が、RPV1と炉心シュラウド5の間に形成されたアニュラス部(ダウンカマ)8内に配置され、シュラウドサポートバッフルプレート6に設置されている。
【0013】
複数の燃料集合体12が、上部格子板15及び炉心支持板16によって支持されている。RPV1内に給水スパージャ10が配置され、この給水スパージャ10はRPV1に設けられた給水ノズル14に接続される。炉心スプレイ配管9が炉心シュラウド5とRPV1の間に配置される。
【0014】
本実施例の構造部材の残留応力改善方法は、例えば、アニュラス部8における、RPV1とシュラウドサポートバッフルプレート6の溶接部21、シュラウドサポートバッフルプレート6とシュラウドサポートシリンダ4の溶接部22、シュラウドサポートシリンダ4とシュラウドサポートリング20の溶接部23、及び炉心シュラウド5とシュラウドサポートリング20の溶接部24等の溶接部を中心にして、シュラウドサポートシリンダ4、炉心シュラウド5、シュラウドサポートバッフルプレート6及びシュラウドサポートリング20に対してそれぞれ適用される。
【0015】
本実施例の構造部材の残留応力改善方法はBWRの定期検査の期間に行われる。この定期検査においては、RPV1の上方に位置する原子炉ウェル19内に冷却水が充填される。その後、RPV1の蓋11が取り外され、蒸気乾燥器2及び気水分離器3がRPV1から取り出される。定期検査においては、必要に応じて、燃料集合体12をRPV1外に取り出し、炉心シュラウド5の内面及び外面からの検査及びその内面及び外面に対するウォータジェットピーニングが行われる。
【0016】
本実施例の構造部材の残留応力改善方法は、例えば、予防保全装置13を、アニュラス部8に挿入して上記した溶接部付近に位置させて実施される(図5参照)。予防保全装置13は、図7に示すアクセス領域25を通して、運転床18上を走行する燃料交換機あるいは作業台車(図示せず)からの遠隔操作にてアニュラス部8内の上記の位置まで下ろされる。
【0017】
ウォータジェットピーニング装置31の詳細な構成を、図1を用いて説明する。ウォータジェットピーニング装置31は予防保全装置13を有する。予防保全装置13は、主ノズル32及びエアノズル37を含んでいる。ウォータジェットピーニング装置31は、予防保全装置13以外に、高圧ポンプ33、ポンプ制御装置34、エア供給機(例えば、エアコンプレッサ)38及びエア供給機制御装置39を備えている。高圧ホース35が主ノズル32及び高圧ポンプ33に接続される。ポンプ制御装置34に接続された制御ケーブル36が高圧ポンプ33に接続される。エアノズル37は、エアホース40によってエア供給機38に接続される。エア供給機制御装置39に接続された制御ケーブル41がエア供給機38に接続される。高圧ポンプ33、ポンプ制御装置34、エア供給機38及びエア供給機制御装置39は運転床18上に設置される。ポンプ制御装置34及びエア供給機制御装置39をまとめて1つの制御装置にすることも可能である。主ノズル32及びエアノズル37を含む予防保全装置13が、前述したように、アクセス領域25を通してアニュラス部8内で該当する溶接部付近に配置される。この状態で、主ノズル32及びエアノズル37はRPV1内の冷却水46内に存在する。主ノズル32及びエアノズル37は、予防保全装置13と共に、上下方向、RPV1の周方向及びRPV1の半径方向に移動される。これにより、溶接部21,22,23,24のそれぞれに沿ったウォータジェットピーニングを実施することができる。
【0018】
高圧ポンプ33が駆動されると、高圧ポンプ33から吐出された高圧水が高圧ホース35を通って主ノズル32に供給される。この高圧水は、主ノズル32の噴射口(図示せず)から高速ジェット流42となって冷却水46中に噴射される。ポンプ制御装置34は、主ノズル32から噴出される高速ジェット流42が最適な噴射流量及び噴射圧力になるように、高圧ポンプ33を制御する。高速ジェット流42は、溶接部21,22,23及び24を中心として施工対象部であるシュラウドサポートシリンダ4、炉心シュラウド5及びシュラウドサポートリング20に向って順次噴射される。エア供給機38から供給される空気は、高圧ホース40によってエアノズル37に導かれる。この空気は、エアノズル37に形成された噴射口(図示せず)から冷却水46中に噴射され、冷却水46中に気泡域(圧縮性流体領域)45を形成する。エアノズル37は、主ノズル32と、施工対象部以外の他の構造物(例えば、ジェットポンプ7)の間に配置される。エアノズル37からは、空気の替りに、窒素あるいはアルゴンを噴射させてもよい。気泡域45は、主ノズル32から、高速ジェット流42が工対象部に到達するまでの範囲に形成され、高速ジェット流42とジェットポンプ7の間に形成される。
【0019】
主ノズル32から噴射された高速ジェット流42に含まれている気泡(キャビティ)43が崩壊したとき、衝撃圧(衝撃波)44が発生する。この衝撃圧44は、溶接部21,22,23及び24を中心とし、シュラウドサポートシリンダ4、炉心シュラウド5及びシュラウドサポートリング20にそれぞれ順次加えられる。このため、シュラウドサポートシリンダ4、炉心シュラウド5及びシュラウドサポートリング20に生じている引張残留応力が、圧縮残留応力に改善される。引張残留応力は、溶接部23,24における溶接によってシュラウドサポートシリンダ4、炉心シュラウド5及びシュラウドサポートリング20に生じるものである。
【0020】
上記の衝撃圧44は、施工対象部ではない他の構造物、例えば非施工対象部であるジェットポンプ7に向って冷却水46中を伝播する。しかしながら、本実施例は、高速ジェット流42とジェットポンプ7の間で、主ノズル32から、高速ジェット流42が施工対象部に到達するまでの範囲に亘って気泡域45が形成されるので、この気泡域45によって、ジェットポンプ7まで伝播される衝撃圧44が減衰される。このため、衝撃圧44に起因したジェットポンプ7の振動が軽減される。このとき、ジェットポンプ7に発生する応力を、従来例の構造部材の残留応力改善方法との比較で図2に示す。本実施例においてジェットポンプ7に発生する応力は、従来例のそれよりも軽減されている。
【0021】
エア供給機制御装置39は、エア供給機38から吐出される空気の圧力が、エアノズル37の噴射口の直径及び形状に基づいて定まる設定圧力になるように、エア供給機38を制御し、結果として、エアノズル37から冷却水46中に噴射される、気泡域45内の気泡の直径を制御する。この気泡の直径の制御は、主ノズル32から噴射される高速ジェット流42に含まれる気泡43が潰れることによって発生する衝撃圧44に起因してジェットポンプ7に加えられる加振周波数のプロファイルを変えることができる。このため、ジェットポンプ7の固有振動数と衝撃圧44による加振周波数のプロファイルが一致することを避けることができ、ジェットポンプ7の共振を防止することができる。
【0022】
本実施例及び従来例においてジェットポンプ7に発生する振動の周波数特性を図3に示す。具体的には、図3(A)は従来例でジェットポンプ7に発生する振動の周波数特性、及び図3(B)は本実施例でジェットポンプ7に発生する振動の周波数特性を示している。本実施例は、衝撃圧44に起因してジェットポンプ7に生じる振動の周波数特性を、エアノズル37から気泡を噴射させることによって、図3(A)から図3(B)のように変えることができる。このため、フーリエスペクトルのピークの周波数を変えることができ、ジェットポンプ7の共振を防止することができる。
【0023】
なお、エアノズル37から噴射される気体の種類及び温度を変えることによって、気泡域45内での音速が変わるので、衝撃圧44に起因した加振周波数のプロファイルを制御することができ、同様の効果が得られる。
【0024】
本実施例は、主ノズル32から噴射される高速ジェット流42に含まれる気泡43が潰れるときに発生する衝撃圧44を、施工対象部であるシュラウドサポートシリンダ4、炉心シュラウド5及びシュラウドサポートリング20にそれぞれ順次加えるので、施工対象部に生じていた引張残留応力を圧縮残留応力に改善することができる。このため、施工対象部における応力腐食割れの発生を抑制することができる。本実施例は、エアノズル37から噴射される気泡を含む気泡域45が、高速ジェット流42と非施工対象部であるジェットポンプ7との間に形成されるので、気泡域45によって衝撃圧44が減衰され、気泡域45内の気泡の境界面で衝撃圧44が反射される。このため、その衝撃圧44を受けるジェットポンプ7の振動が大幅に軽減される。エアノズル37から少量の空気を噴出させることによって上記の効果を得ることができるので、エア供給機38は小型のものを使用できる。
【0025】
施工対象部に圧縮残留応力を効果的に生成し、ジェットポンプ7の振動を効果的に軽減するためには、エアノズル37に形成された空気の噴射口の軸心を、主ノズル32に形成された高速ジェット流42を噴射する噴射口の軸心に対して実質的に平行に、または前者の噴射口の軸心を後者の噴射口の軸心に対して外側を向くように配置することが望ましい。
【0026】
高速ジェット流42内で発生する衝撃圧44は、高速ジェット流42に含まれる気泡(キャビティ)43が収縮して消滅(体積がゼロ)した瞬間に発生する。特開平6−47667号公報の第2図に記載されたノズルは、周囲噴出口から噴出された空気を、主噴出口から噴出される高速ジェット流と合流させ、高速ジェット流内で衝撃圧を発生する核となる気泡の数を増加させるものである。これにより、衝撃圧の強さを増加させている。
【0027】
発明者らは、エアノズル37の噴射口の軸心を主ノズル32の噴射口の軸心の方に向けてエアノズル37から空気を噴出させる実機条件での試験を行った。この結果、エアノズル37から噴射された気泡が高速ジェット流42に巻き込まれた場合には、発生する衝撃圧の強さが低下することを確認した。エアノズル37から噴射される気泡が高速ジェット流に巻き込まれないように、主ノズル32の噴射口の軸心に対するエアノズル37の噴射口の軸心の角度を設定する必要がある。したがって、エアノズル37に形成された噴射口の軸心を、主ノズル32に形成された噴射口の軸心に対して実質的に平行に、または前者の噴射口の軸心を後者の噴射口の軸心に対して外側を向くように配置するとよい。
【0028】
本実施例は、エアノズル37から噴出される気泡の直径をエア供給機制御装置39によって制御することができるので、衝撃圧44に起因してジェットポンプ(非施工対象部)7に加えられる加振周波数のプロファイルを変えることができる。このため、ジェットポンプ7の固有振動数と衝撃圧44による加振周波数のプロファイルが一致することを避けることができ、ジェットポンプ7の共振を防止することができる。
【実施例2】
【0029】
BWRに適用した、本発明の他の実施例である実施例2の構造部材の残留応力改善方法を、図8〜図10を用いて以下に説明する。本実施例は、ウォータジェットピーニングを実施しているときに、衝撃圧44を受ける非施工対象物であるシュラウドサポートバッフルプレート6及びジェットポンプ7の振動を抑制するものである。
【0030】
本実施例の構造部材の残留応力改善方法に用いられるウォータジェットピーニング装置31Aの構成を、図8〜図10を用いて説明する。ウォータジェットピーニング装置31Aは、ウォータジェットピーニング装置31においてエアノズル37をエアノズル37A,37Bに置き換えた構成を有する。エアノズル37A,37Bは、分岐されたエアホース40によってエア供給機38に接続されている。ウォータジェットピーニング装置31Aの予防保全装置13は、主ノズル32及びエアノズル37A,37Bを含んでいる。ウォータジェットピーニング装置31Aの他の構成は、ウォータジェットピーニング装置31と同じである。
【0031】
本実施例の構造部材の残留応力改善方法を説明する。予防保全装置13は、実施例1と同様に、アクセス領域25を通してアニュラス部8内に移動され、主ノズル32が施工対象部に向き合うように配置される。この状態で、エアノズル37Aは主ノズル32とジェットポンプ7の間に配置され、エアノズル37Bは主ノズル32とシュラウドサポートバッフルプレート6の間に配置される。高圧ポンプ33の駆動により主ノズル323から高速ジェット流42が噴出され、気泡43が潰れることによって発生する衝撃圧44が、施工対象部であるシュラウドサポートシリンダ4、炉心シュラウド5及びシュラウドサポートリング20にそれぞれ加えられる。これらの部材に生じている引張圧縮応力が残留圧縮応力に改善される。
【0032】
エアノズル37Aから噴射された空気により形成される気泡域45Aは、高速ジェット流42と非施工対象部であるジェットポンプ7の間で、主ノズル32から、高速ジェット流42が施工対象部に到達するまでの範囲に形成される。エアノズル37Bから噴射された空気により形成される気泡域45Bは、高速ジェット流42と非施工対象部であるシュラウドサポートバッフルプレート6の間で、主ノズル32から、高速ジェット流42が施工対象部に到達するまでの範囲に形成される。ジェットポンプ7に向って伝播される衝撃圧44は気泡域45Aによって減衰されるので、衝撃圧44によって発生するジェットポンプ7の振動が大幅に軽減される。さらに、シュラウドサポートバッフルプレート6に向って伝播される衝撃圧44は気泡域45Bによって減衰されるので、衝撃圧44によって発生するシュラウドサポートバッフルプレート6の振動も大幅に軽減される。
【0033】
本実施例も、エア供給機制御装置39によってエアノズル37Aから噴射される気泡の直径を制御するので、実施例1と同様に、ジェットポンプ7の共振を防止することができる。さらに、本実施例は、エア供給機制御装置39によってエアノズル37Bから噴射される気泡の直径を制御するので、衝撃圧44に起因してシュラウドサポートバッフルプレート(非施工対象部)6に加えられる加振周波数のプロファイルを変えることができる。このため、シュラウドサポートバッフルプレート6の固有振動数と衝撃圧44による加振周波数のプロファイルが一致することを避けることができ、シュラウドサポートバッフルプレート6の共振を防止することができる。エア供給機制御装置39によるエアノズル37Bから噴射される気泡直径の制御は、実施例1と同じである。
【実施例3】
【0034】
BWRに適用した、本発明の他の実施例である実施例3の構造部材の残留応力改善方法を、図11及び図12を用いて以下に説明する。本実施例の構造部材の残留応力改善方法に用いられるウォータジェットピーニング装置31Bも図11及び図12に示されている。ウォータジェットピーニング装置31Bは、ウォータジェットピーニング装置31Aにおいてエアノズル37A,37Bを環状のエアノズル37Cに替えた構成を有する。ウォータジェットピーニング装置31Bの他の構成は、ウォータジェットピーニング装置31Aと同じである。エア供給機38に連絡されるエアノズル37Cは、主ノズル32を取り囲んでおり、環状の気泡域45Cを形成するように周方向に多数の噴射口を有する。これらの噴射口から空気(気泡)がそれぞれ噴射される。気泡域45Cは高速ジェット流42の周囲を取り囲んでいる。すなわち、気泡域45Cは、高速ジェット流42とジェットポンプ7の間、及び高速ジェット流42とシュラウドサポートバッフルプレート6の間に存在する。
【0035】
したがって、実施例2と同様に、ジェットポンプ7及びシュラウドサポートバッフルプレート6のそれぞれにおける振動が大幅に軽減され、ジェットポンプ7及びシュラウドサポートバッフルプレート6のそれぞれにおける共振をそれぞれ防止することができる。本実施例は、環状の気泡域45Cが形成されるので、ジェットポンプ7及びシュラウドサポートバッフルプレート6のそれぞれにおける振動を実施例2よりも軽減することができる。
【実施例4】
【0036】
BWRに適用した、本発明の他の実施例である実施例4の構造部材の残留応力改善方法を、図13を用いて以下に説明する。本実施例の構造部材の残留応力改善方法に用いられるウォータジェットピーニング装置31Cを、図13を用いて説明する。ウォータジェットピーニング装置31Cは、実施例1に用いられるウォータジェットピーニング装置31に隔離壁(気泡混合防止部材)46を設けた構成を有している。隔離壁46は、主ノズル32及びエアノズル37を含んでいる予防保全装置13に取り付けられている。ウォータジェットピーニング装置31Cでは、2枚の隔離壁46が並行に設けられ、エアノズル37が2枚の隔離壁46の間に配置される。これらの隔離壁46は、主ノズル32及び高速ジェット流42と非施工対象物であるシュラウドサポートバッフルプレート6の間に配置される。隔離壁46は、主ノズル32から、高速ジェット流42が施工対象部(シュラウドサポートシリンダ4、炉心シュラウド5及びシュラウドサポートリング20)に到達するまでの範囲に亘って配置されている。
【0037】
2枚の隔離壁46を高速ジェット流42とジェットポンプ7の間に配置し、それらの隔離壁46の間に図10に示すエアノズル37Aを配置しても良い。
【0038】
主ノズル32から噴射された高速ジェット流42に含まれる気泡43が潰れることによって衝撃圧44が発生し、この衝撃圧44によって施工対象物に圧縮残留応力が付与される。冷却水46中を伝播する衝撃圧44はホワイトノイズに近い周波数特性をもつ波(密度波)である。本実施例は、隔離壁46を配置しているが、隔離壁46自体が衝撃圧44で加振されること、衝撃圧44が回折によって隔離壁46の後ろ側(非施行対象物側)へ伝播すること、及び隔離壁46の固有振動数と同じ周波数成分の衝撃圧44は隔離壁46を透過すること等の理由によって、隔離壁46で衝撃圧44を減衰させることは困難である。このため、本実施例は、高速ジェット流42と非施行対象物(シュラウドサポートバッフルプレート6、ジェットポンプ7)の間に気泡域45を形成している。
【0039】
本実施例は、気泡域45を形成するので、シュラウドサポートバッフルプレート6(及びジェットポンプ7)における振動が軽減され、シュラウドサポートバッフルプレート6(及びジェットポンプ7)における共振をそれぞれ防止することができる。本実施例も、実施例1と同様に、エアノズル37から噴射される気泡の直径を制御する。
【0040】
本実施例は、隔離壁46が設けられているので、エアノズル37から噴射された気泡が高速ジェット流42内に巻き込まれることを防止することができる。このため、発生した衝撃圧44の強さが低下しないので、施工対象物に対するウォータジェットピーニングの効果が低減することを防止できる。
【0041】
本実施例は、2枚の隔離壁46の間にエアノズル37を配置しているので、気泡域45における気泡の流れを制御でき、1枚の隔離壁46を用いた場合に比べて主ノズル32から遠い位置まで拡散させることなく気泡域45を保持することができる。このため、本実施例は、1枚の隔離壁46を用いた場合に比べて気泡域45による衝撃圧44の減衰効果を高めることができる。隔離壁46は1枚にすることも可能である。隔離壁46を1枚にした場合には、1枚の隔離壁は気泡域45と高速ジェット流42との間に配置される。
【実施例5】
【0042】
BWRに適用した、本発明の他の実施例である実施例5の構造部材の残留応力改善方法を、図14を用いて以下に説明する。本実施例の構造部材の残留応力改善方法に用いられるウォータジェットピーニング装置31Dを、図14を用いて説明する。ウォータジェットピーニング装置31Dは、主ノズル32及びエアノズル37を有し、実施例4と同様に隔離壁(隔離壁46A)も有している。
【0043】
本実施例の構造部材の残留応力改善方法は、RPV1の縦断面において主ノズル32の軸心と施工対象物(シュラウドサポートシリンダ4、炉心シュラウド5及びシュラウドサポートリング20)の成す角度θが鋭角の状態で、ウォータジェットピーニングを実施する例である。本実施例では、主ノズル32が、軸心が角度θで傾いた状態でアニュラス部8内に配置されるので、主ノズル32から非施工対象物であるジェットポンプ7までの距離は実施例3におけるその距離よりも長くなる。しかしながら、施工対象物の近くでは、ジェットポンプ7は、主ノズル32から噴射された高速ジェット流42から近い位置にある。このため、高速ジェット流42内で発生する衝撃圧44がジェットポンプ7まで伝播しやすくなる。
【0044】
本実施例は、隔離壁46Aを、主ノズル32と同様に傾斜させてウォータジェットピーニング装置31Dの予防保全装置13に取り付けている。この隔離壁46Aは、高速ジェット流32の下流側でジェットポンプ7と高速ジェット流32の間に配置される。エアノズル37から噴射された気泡によって形成される気泡域45は、隔離壁46Aとジェットポンプ7の間に形成される。その気泡は隔離壁46Aに沿って流れる。
【0045】
本実施例も、実施例4と同様に、施工対象物への圧縮残留応力の付与、ジェットポンプ7の大幅な振動低減、及びジェットポンプ7の共振の防止といった効果を得ることができる。隔離壁46Aを用いているので、気泡域45内の気泡が高速ジェット流42内に巻き込まれることを抑制でき、衝撃圧44の低下を防止できる。このため、施工対象部への圧縮残留応力の付与を効果的に行うことができる。
【0046】
なお、高速ジェット流42とシュラウドサポートバッフルプレート6の間に隔離壁を配置し、この隔離壁とシュラウドサポートバッフルプレート6の間に気泡域45を形成しても良い。
【0047】
気泡域45の替りに気体(例えば空気)が内包された弾性体(例えば、空気を内包する樹脂部材)を用いることが可能である。この弾性体は、実施例4及び5では隔離壁46が配置されている位置に配置される。この弾性体の使用によって、エアノズル32、エア供給機38、エアホース40、エア供給機制御装置39及び隔離壁46が不要になり、ウォータジェットピーニング装置をよりコンパクト化することができる。実施例1から実施例3においても、気泡域の替りにその弾性体を用いることができる。
【0048】
以上に述べた構造部材の残留応力改善方法は、加圧水型原子炉の原子炉容器内の構造部材に対しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の構造部材の残留応力改善方法に用いられるウォータジェットピーニング装置の構成図である。
【図2】高速ジェット流の中心からの距離とジェットポンプに発生する応力の関係を示す特性図である。
【図3】ジェットポンプに発生する振動の周波数特性を示し、(A)は従来例におけるその周波数特性を示す説明図、(B)実施例1におけるその周波数特性を示す説明図である。
【図4】図1に示す構造部材の残留応力改善方法が適用されるBWRの縦断面図である。
【図5】図4のV部の拡大図である。
【図6】図4のVI−VI断面図である。
【図7】図4のVII−VII断面図である。
【図8】本発明の他の実施例である実施例2の構造部材の残留応力改善方法に用いられるウォータジェットピーニング装置の構成図である。
【図9】図8のIX−IX断面図である。
【図10】図9のX−X断面図である。
【図11】本発明の他の実施例である実施例3の構造部材の残留応力改善方法に用いられるウォータジェットピーニング装置の構成図である。
【図12】図11のXII−XII断面図である。
【図13】本発明の他の実施例である実施例4の構造部材の残留応力改善方法に用いられるウォータジェットピーニング装置の構成図である。
【図14】本発明の他の実施例である実施例5の構造部材の残留応力改善方法に用いられるウォータジェットピーニング装置の構成図である。
【符号の説明】
【0050】
1…原子炉圧力容器、4…シュラウドサポートシリンダ、5…炉心シュラウド、6…シュラウドサポートバッフルプレート、7…ジェットポンプ、8…アニュラス部、13…予防保全装置、20…シュラウドサポートリング、21,22,23,24…溶接部、31,31A,31B,31C,31D…ウォータジェットピーニング装置、32…主ノズル、33…高圧ポンプ、34…ポンプ制御装置、37,37A,37B…エアノズル、38…エア供給機、39…エア供給機制御装置、42…高速ジェット流、44…衝撃圧、45,45A,45B…気泡域、46,46A…隔離壁。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に配置された第1ノズルから水ジェットを噴射し、
この水ジェットに含まれる第1気泡が消滅するときに発生する衝撃圧を、前記水の中に存在する施工対象物である第1構造部材に当てることにより、前記第1構造部材に圧縮残留応力を付与し、
少なくとも前記水ジェットを噴射している間、前記水の中に存在する非施工対象物である第2構造部材と前記水ジェットの間に、前記第1気泡とは別の第2気泡が存在する気泡域を形成することを特徴とする構造部材の残留応力改善方法。
【請求項2】
前記気泡域は、前記水の中に配置された第2ノズルから気体を噴射することによって形成される請求項1に記載の構造部材の残留応力改善方法。
【請求項3】
前記第2ノズルに形成された前記気体を噴射する第2噴射口の軸心が、前記第1ノズルに形成された前記水ジェットを噴射する第1噴射口の軸心に対して実質的に並行にまたは外側に向って配置されている請求項2に記載の構造部材の残留応力改善方法。
【請求項4】
前記水ジェットと前記気泡域の間に気泡混合防止部材を配置した請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の構造部材の残留応力改善方法。
【請求項5】
前記気泡域は、前記水ジェットを取り囲んで環状に形成されている請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の構造部材の残留応力改善方法。
【請求項6】
水中に配置された第1ノズルから水ジェットを噴射し、
この水ジェットに含まれる気泡が消滅するときに発生する衝撃圧を、前記水の中に存在する施工対象物である第1構造部材に当てることにより、前記第1構造部材に圧縮残留応力を付与し、
少なくとも前記水ジェットを噴射している間、前記水の中に存在する非施工対象物である第2構造部材と前記水ジェットの間に、気体を含む衝撃圧緩衝部材を配置していることを特徴とする構造部材の残留応力改善方法。
【請求項7】
原子炉容器内の水中に第1ノズルを浸漬し、
前記第1ノズルから前記水の中に水ジェットを噴射し、
この水ジェットに含まれる第1気泡が消滅するときに発生する衝撃圧を、前記原子炉容器内で前記水の中に存在する施工対象物である第1構造部材に当てることにより、前記第1構造部材に圧縮残留応力を付与し、
少なくとも前記水ジェットを噴射している間、前記原子炉容器内で前記水の中に存在する非施工対象物である第2構造部材と前記水ジェットの間に、前記第1気泡とは別の第2気泡が存在する気泡域を形成することを特徴とする原子力プラントの構造部材の残留応力改善方法。
【請求項8】
前記気泡域は、前記水の中に浸漬された第2ノズルから気体を噴射することによって形成される請求項7に記載の原子力プラントの構造部材の残留応力改善方法。
【請求項9】
前記第2構造部材が前記原子炉容器内に設置されたジェットポンプである請求項7または請求項8に記載の原子力プラントの構造部材の残留応力改善方法。
【請求項1】
水中に配置された第1ノズルから水ジェットを噴射し、
この水ジェットに含まれる第1気泡が消滅するときに発生する衝撃圧を、前記水の中に存在する施工対象物である第1構造部材に当てることにより、前記第1構造部材に圧縮残留応力を付与し、
少なくとも前記水ジェットを噴射している間、前記水の中に存在する非施工対象物である第2構造部材と前記水ジェットの間に、前記第1気泡とは別の第2気泡が存在する気泡域を形成することを特徴とする構造部材の残留応力改善方法。
【請求項2】
前記気泡域は、前記水の中に配置された第2ノズルから気体を噴射することによって形成される請求項1に記載の構造部材の残留応力改善方法。
【請求項3】
前記第2ノズルに形成された前記気体を噴射する第2噴射口の軸心が、前記第1ノズルに形成された前記水ジェットを噴射する第1噴射口の軸心に対して実質的に並行にまたは外側に向って配置されている請求項2に記載の構造部材の残留応力改善方法。
【請求項4】
前記水ジェットと前記気泡域の間に気泡混合防止部材を配置した請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の構造部材の残留応力改善方法。
【請求項5】
前記気泡域は、前記水ジェットを取り囲んで環状に形成されている請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の構造部材の残留応力改善方法。
【請求項6】
水中に配置された第1ノズルから水ジェットを噴射し、
この水ジェットに含まれる気泡が消滅するときに発生する衝撃圧を、前記水の中に存在する施工対象物である第1構造部材に当てることにより、前記第1構造部材に圧縮残留応力を付与し、
少なくとも前記水ジェットを噴射している間、前記水の中に存在する非施工対象物である第2構造部材と前記水ジェットの間に、気体を含む衝撃圧緩衝部材を配置していることを特徴とする構造部材の残留応力改善方法。
【請求項7】
原子炉容器内の水中に第1ノズルを浸漬し、
前記第1ノズルから前記水の中に水ジェットを噴射し、
この水ジェットに含まれる第1気泡が消滅するときに発生する衝撃圧を、前記原子炉容器内で前記水の中に存在する施工対象物である第1構造部材に当てることにより、前記第1構造部材に圧縮残留応力を付与し、
少なくとも前記水ジェットを噴射している間、前記原子炉容器内で前記水の中に存在する非施工対象物である第2構造部材と前記水ジェットの間に、前記第1気泡とは別の第2気泡が存在する気泡域を形成することを特徴とする原子力プラントの構造部材の残留応力改善方法。
【請求項8】
前記気泡域は、前記水の中に浸漬された第2ノズルから気体を噴射することによって形成される請求項7に記載の原子力プラントの構造部材の残留応力改善方法。
【請求項9】
前記第2構造部材が前記原子炉容器内に設置されたジェットポンプである請求項7または請求項8に記載の原子力プラントの構造部材の残留応力改善方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−72859(P2009−72859A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243671(P2007−243671)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
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